コミュ障でラブレターなおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのコミュ障でラブレターな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月14日の時点で一番のコミュ障でラブレターなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

73.2 1 コミュ障でラブレターなアニメランキング1位
舟を編む(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (669)
2939人が棚に入れました
三浦しをんさんの小説「舟を編む」が原作。

玄武書房に勤める馬締光也(まじめ・みつや)が、辞書編集部で新しい辞書「大渡海」を編集することになる……というストーリー。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる学者、徐々に辞書に愛情を持ち始める“チャラ男”など個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。

声優・キャラクター
櫻井孝宏、神谷浩史、坂本真綾、金尾哲夫、麦人、榊原良子、斎藤千和、日笠陽子
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

色盲の人に色という概念を伝えるにはどう説明したらいいと思いますか?

原作は三浦しをんさんの同名小説。2013年には実写映画化もされたそうです。

辞書の編纂者として抜擢された、生真面目かつ※1エキセントリックな印象の馬締光也(苗字はまじめと読む。そのままじゃないか‥!)と、その同僚で、いかにも世渡り上手な軽~い印象の西岡正志、二人青年を中心に描くお仕事の物語の様です。

耳に心地良い言葉と言うのは簡潔な表現である事が多いもの。アニメとか映画を見ている時に、台詞を聞き逃したり、見逃したりする時、そんな場面には必ずと言って良いほど、独白や会話の中に耳慣れない表現や珍しい単語が含まれるものです。

複雑に入り組んだ言葉の連なりにはそれを口にする人の個性や心情が如実に表れ、時として人物描写をより精彩のあるものとして際立たせますが、一方で不明瞭な表現と取られてしまう可能性を多分に含んでおり、視聴者にとっては優しく無い表現とも言えます。比べるべくもありませんが、それよりもずっと酷いのは、簡潔に表現出来る事柄を難解な言葉で表現するという行為で、これは不合理この上無く、またひどく滑稽なものです。

辞書を編纂するという行為は上記の真逆。言葉の持つ本来の意味、精髄をいかに簡潔な言葉で短くまとめるかに重点が置かれた作業と言えます。

誰が読んでも理解出来る文章を作るというのは簡単な様で難しいもので、誰々だったらどう解釈するのかな?とか、子供だったらどう思うのかな?とか‥、出来得る限り他者との隔てを無くす必要があります。自身を他者に投影するのではなく、他者を自身に投影しなければなりません。独り善がりの表現は禁物なのです。

ブリキ男は過去に知人から「※2色盲の人に色という概念を伝えるにはどう説明したらいいと思う?」と質問された事がありますが、難しい質問だなぁと思った後、ちょっと想像力を働かせて、色盲の人になったつもりで考えてみる事にしました。すると自然と視点は変わり、色という概念を形状や濃淡などの視覚的な認識の一種として広義に解釈する事によって、どうにか説明に至る事が出来たのです。皆さんは"色"をどういう言葉で説明しますか?

作中にて馬締さんが"右"という言葉に与えた定義、これも同様で、"箸を持つ手"や"心臓の無い方"では不十分。左利きの人にも、心臓が右にある人にも、万人に分かる"右"で無くてはなりません。彼の"右"に与えた明瞭な表現、お見事でした。本編にてご確認下され。
{netabare}
馬締さんの"右"の定義、良く考えたら宇宙空間とか他の天体上(系外惑星とか自転していない星とか)では通用しませんでした(汗)壁掛け時計を正面から見据えた時の3時(左なら9時)の方向という言葉で端的に表せますが、エレガントではないですね‥まぁ宇宙で"右"の項引く人なんて皆無でしょうが‥(笑)
{/netabare}
2話の感想とあれこれ
{netabare}
「大渡海」編纂の志、とても崇高なものですが‥優れた辞書があっても言葉の海をすいすいと渡れるのはその辞書を持っている人に限る‥。値段張りそうだし‥。今ではオンライン辞書もかなり役立つし、こういう辞書手に取る人は限られるのかも‥。タウンページの配布とか毎年いらないから、5~6年に1回でもいいから、税金使って各家庭に一冊ずつ国語辞典の配布して欲しいとか思ったりしました。

ちなみに私が今良く使っている国語辞典は「明鏡国語辞典[携帯版]」。2003年出版の定価3000円のやつですが、今だったら中古で何と200~300円程度で手に入る! 古いからってあなどれない、中々のスグレモノなのでオススメです。常にネットにアクセス出来る環境をもっていないので、割と重宝しています。

本はあれこれ読んでいるけど人付き合いの下手な私は、馬締さんに他人とは思えない様な親近感を抱きました。見守っていきたいと思います。
{/netabare}
3話の感想
{netabare}
どんな男だって、夜ベランダで突然女性と出くわしたらびっくりするだろうと思いますが、朝玄関先で会ってもあからさまにたじろぐとは、馬締さん、どういう学園生活を送っていたのだろう? ちょっと気になりました。何というか、好きな子にばったりと出くわした時の高校生並みの反応‥。

作中で描かれた様な一目惚れを推奨する描写は、私的には手放しでは賛同はしかねます。周囲の人達も馬締さんの恋愛に関して全肯定で、当然の様に応援するし‥。なんかサザエさんとか、ちびまる子ちゃんとか、大衆向けアニメで描かれがちな本質の良く見えない恋愛観を見ている様でした。‥本をたくさん読んでいる人って、人の事を良く観察する癖が付いたり、懐疑的になったりする事が多いから、もうちょっとユニークな価値観を持っているのでは? とか思いました‥。

松本先生の辞書編纂に対する姿勢。恋愛も含め、視野を広く持つ必要があるという意見には納得‥でも終幕のテロップの恋についての説明が微妙‥。

「人を好きになり、いつまでもそばにいたいと思う気もち」

"いつまでもそばにいたい"って、相手の事がある程度分かってくればそうなると思いますけど、知り合ったばかりの片思いの段階では、話したり、顔を合わせるのが恐かったり、逃げ出したい気持ちになる事だってあると思います。大雑把過ぎる印象を受けました。

わたしが恋の項を書くとしたら「主に異性に対して抱く病的な好意、または独占欲。」とします‥が、こんな冷たい言葉で綴られたら恋という文字が可愛そうですね(汗)
{/netabare}
4話の感想
{netabare}
今回は西岡さんの有能さが発揮されるお話。この人もまた馬締さんに負けじと劣らず仕事熱心な人でした。「大渡海」編纂中止を阻止すべく奔走します。初回の印象からはとても想像出来ない機転と行動力を見せてくれました。適材適所とは正にこの事。誰かに出来ない事を誰かがやる。そうやって上手いこと歯車が噛み合う様に、人間関係が絡み合ったら世の中もっと円滑に回るのに‥。理想的なチームの一端を見た様でした。

でも西岡さんのやった様な会社の利益に関わる独断専行をしたら、現実ではどうなるのだろう? 私には分かりません。作中の人物の台詞にある様に「ただでは済まない」事になったりして‥。

続く馬締さんと香具矢さんのデートのシーン、偶然と、半ば強引に引き合わされた二人ですが、言葉の分かる異性と会話出来るって事は嬉しい事ですよね‥。二人を応援したくなる周りの大人たちの気持ちも何となく分かってきました。(大人の癖に何を今更‥)

そしてお約束の最後のテロップ、今回は「漸進」でした。

「漸進」の「漸」の文字は水の流れを切って徐々に導き通す事を意味し、そこから「だんだん」とか「次第に」という意味に変わっていったそうです。

作中では「立ち止まらず、少しずつ進む事」とありますが、前回の「恋」に続いてかなり淡白な表現という印象‥。導き通すという所が欠けていますが流れる水のイメージは感じられるので無難な解釈なのかも知れません‥。

言葉の意味を端的に表現する事は辞書編纂において重要な事だとは思いますが、要約が過ぎて本質から外れた意味を持たせると、言葉の精度が落ちてしまう気がします。かと言って複雑過ぎると編纂者の主観が強くなってしまう‥馬締さんの様に活字に耽溺した者のみが持つ微妙なバランス感覚が必要な様です。

「鏡の国のアリス」に登場するハンプティ・ダンプティは、言葉に給料を払えば、その言葉に好きな意味を持たせる事が出来ると豪語していますが、そんな話も少しだけ思い出してしまいました。

※:エンディングの語釈は「三省堂国語辞典」を参考にしている様です。シンプルな語釈で有名な辞書だそう‥。わたしは持ってません(笑)
{/netabare}
5話の感想
{netabare}
馬締さんの恋文は試金石の様なものかも知れませんね。受け入れてくれる人がいれば運命の人、そうでなければ縁が無かったという事‥。自分を偽ればいつか必ず綻びが生まれて後々大変な事にならないとも限りませんので、意外と相手の心を確かめる懸命なやり方なのかも(笑)

揺蕩う(たゆたう)‥ゆらゆらとゆれる。説明これだけでいいんでしょうか? これじゃあ"ゆらめく"と同じ気がします(汗)
{/netabare}
6話の感想
{netabare}
一目惚れに近い感じの馬締さんもそうですが、恋文なのか何なのか分からなかったのに、伝わってきた真剣さだけで「好きです」って言ってしまえる香具矢さんにもちょっと軽薄な印象を受けてしまいました‥。現実ではそうやって付き合い始める人も多いかも知れませんが、ちょっとこの物語にそぐわない恋愛の描き方だった様に思います。お互いの事をまだ良く知っているわけでも無いのに、決断が早過ぎて思慮深さに欠ける印象を受けました。

共振‥前回に続いて他の語に簡単に置き換えられてしまう語釈でがっかり。共鳴と置き換えても差異が全く無い表現でした。言葉を扱う物語なのだからこういう細かいところにも気を使って欲しい気がします。
{/netabare}
7話の感想
{netabare}
大渡海の執筆依頼を受けていた小田先生の原稿が届くお話。

小田先生、伝えられた執筆容量を無視している上に、馬締さんにダメ出しされまくり‥。この人、名声とかはあるのかもしれないけれど能力は甚だ疑問でした。それに人に土下座させて喜ぶ人の精神構造って、小中学生とかのいじめっ子並みに幼い気がします。要はどっちが偉いかという事を確認して喜ぶおばか思考‥。視野が狭い人の様です。

元々商売としての意義は見出せない大渡海編纂なんだから、権威は無くとも若い人の中から優秀な人材を探すべきだった気がしないでもないです。最初から足手まといにしかならないこんな人に頼まなきゃいいのに‥とか思ってしまいました。でも現実ではコネとかで物事が進む事は良くあるので、ある意味リアルな描写なのかも知れません‥。

馬締さんと西岡さんコンビの「西行」修正シーンは、この作品ならではの面白さを見出せて大満足でした。文字の海の中で戯れる二人の姿は素敵なおもちゃを与えられて喜ぶ子供の様でした。

「遍歴する人、流れ者」という拡大解釈を追記するに至った動機については、西岡さんの「この意味を載せれば心強く思う人がいる」という情に偏った意見に依存しますが、客観性をそれほど無視した選択ではないとも思われたので好感が持てました。

ただ今回の山場、西岡さんの小田先生へ向けた止めの一言「地球のコアより固く、マグマより熱い」という大仰な表現については蛇足気味で、あまり心に響きませんでした。こういう"してやったり"な展開自体わたしは好きではありませんが、最後の台詞がバトルものにありそうな大見得なのでさらに残念。人物や作風にそぐわない気がしました。
{/netabare}
8話の感想
{netabare}
馬締さんと香具矢さんいつの間にか結婚してる(笑)というのは置いといて。

終幕近くのシーン、辞書編集部に新しく入ってきた岸部さんの"右"の説明が1話の馬締さんのものと同じだった点には作為的なものを感じました。性別の違いも経験の違いもあるし、あれこれ違っても良かろうと思われました‥。違った説明を考えるのが面倒なのと、それに続く西岡さんの「君、辞書向いてるよ」という台詞を言わせたかっただけの様に邪推してしまいました‥。

お約束の終幕の語釈について、今回は"編む"でしたが、「文章・歌などを集めて本にまとめる」との事。編むには当然他の意味もあるので、いくつかある語釈の内の一つだとして、それでもかなり雑な印象を受けました。

先ず文章と歌という語が並列に扱われているのがおかしいのと、用例もそれに合わせて「辞書を-」となっている所に強引さがあります。

"など"と入っているので文章という語と用例の辞書からは離れて、歌と並べて記すなら"物語"とし(他に"思想"とかもあるけれど‥)、文章という語は完成品を指す語なので後に置くのが適切かと思われます。二つ例を挙げると‥

「物語、歌などを集めて本にまとめる。」

「物語、歌などを文章にして本にまとめる。」

となりました。まぁ、いつもながら要約し過ぎな気もしますけれど(汗)
{/netabare}
9話の感想
{netabare}
前回に続き製本までの流れを描くお話。

西岡さんのいたずらは端的に馬締さんの性格を伝えようとした試みかも知れませんが、ラブレターのコピーを無断で読ませるって結構ヒドイ気が‥。西岡さんだからしょうがないんですが(笑)

松本先生の"言葉を大事にする"の説明シーン、内容そのものはなるほどと思わせるものでしたが、先の恋文の話の続きとしてみると、流れが間逆の方向に進んでいる様で若干の違和感がありました。馬締さんは例の恋文の中で言葉を大事にしていたのだろうかと‥。

後半、あけぼの製紙の宮本さんが岸辺さんをデートに誘うお話と予期せぬトラブルのお話がありましたが、ドラマ部分はやはり、毎度の取って付けた感があり馴染めませんでした。後者については編纂作業にPCを導入していれば回避出来たかも知れない問題なので、辞書編集部の頭の固さに閉口(汗)作業効率も格段に上がるでしょうに何故そうしないんでしょう‥理由は不明。

文章について、専門書など特定の読者層を想定して編まれた本と違って、辞書やこのレビューの様に、不特定の読者に向けた文章というのは平易な文体を心掛ける事は元より、多くの人にストレス無く読んでもらえるよう、専門用語、難解な表現は極力避けて綴られねばなりません。かと言って平た過ぎる文章には面白みが無いし、情報の詰まった文章というのは面白いもの。やはりバランスが肝要‥。

万人に理解されうる文章にする為には語彙を限定せねばならず、そうすると必然的に表現の幅が狭まり、大まかな意味は伝わっても精密さの欠ける曖昧な文章となってしまいます。逆に馬締さんの恋文の様に知力を総動員して綴った文章では理解が困難になる可能性が生じます。

言葉は生き物と作中にありましたが、その生き物を使って生き物である人間に意志を伝えるという難しさ、今もまたひしひしと感じるブリキ男なのでした。
{/netabare}
10話の感想
{netabare}
大渡海に"血潮"が抜けていたので再チェックというお話。

これまでのお話で既に語られた、未だに用例カードの集積をデータベースとして利用しているという設定にも驚きましたが、今回の24万語の手作業によるチェック作業もかなりきつそうでした。作業量もさる事ながらヒューマンエラーによる問題が次々と出そう‥。時代設定が現代であるという事も相まってPCを利用せずに行う人員を動員しての力技にはやはり前時代的な印象がありました。

日本では辞書などの手書きデータの電子化は80年代あたりから着々と進んでおり、1985年三修社によって発売された日本最初のCD-ROMコンテンツ「最新科学技術用語辞典」を皮切りに、翌々年1987年には「広辞苑第三版CD-ROM版」が発売されていたとの事。当時富士通のワープロ専用機(価格が200万円位もしたらしい)のソフトとして利用可能だったそうです。

現場の事など何も知らないわたしとしては、上記の流れからすると電子化作業は現在ではとっくに完了している様にも思えてしまいますが、実際の所はどうなんでしょう? 近い未来に紙媒体の印刷物自体が無くなる事など、まずあり得ませんが、作業効率の向上や生産コストの削減という観点からすれば、電子化は必然の成り行きとも言えるので、今回の様な時代錯誤とも言える非効率なやり方にはどうしても疑問を抱いてしまいました。

終幕の語釈については特に思う所が無いので今回もはしょります。
{/netabare}
11話の感想
{netabare}
後半の松本先生の死、「大渡海」初版刊行のお話はエピローグ扱いと受け取り、私は前半の松本先生の家の縁側のシーン、延いては荒木さんと真締さんが駅のホームで言葉を交わすシーンをこの作品の終幕と受け止めました。

松本先生の話によれば、日本では辞書編纂に公金が使われた例は皆無との事、それゆえ権威付けや支配の道具として使われる事も無いという‥。以前私はこのレビューで"タウンページの代わりに辞書を配って欲しい"と考え無しに綴ってしまった事がありましたが、いつもながらに浅知恵でした。

日本では一般的な書に関しては、人権侵害や著作権の侵害による出版の差し止めを除き、検閲が禁止されているため、法制度上の発禁は原則として存在しないというのが建前だそうですが、菊タブーだの鶴タブーだのという、いくつかの言論の禁忌に当たるものも確かに存在し、それらを避けなければならない暗黙の了解もある様です。報道についてはその傾向が特に顕著だそうな‥。責任の所在はマスコミ自体にあるそうですが、暴力的なものも含め様々な圧力が掛かる中で公正な記事を書くというのも難しい事なのだと推察されます。

言葉によって綴られる文章の内容については言うまでもありませんが、言葉そのものにまでその様な規制が掛かってしまうと、さらに窮屈この上ない社会になってしまいそうですね‥。松本先生の懸念はもっともな事だと思いました。

「大渡海」出版を待たずして逝ってしまった松本先生でしたが、生前に自分の仕事を引き継いでくれる荒木さん、真締さん、西岡さんを始めとする何人もの人たちと出会えた事は幸運であったと思います。「循環する命の営みほど我々にとって励みになるものはありません。」と話した松本先生は、辞書作りには完成が無い事を誰よりも深く理解してました。世には辞書編纂に限らず様々な未完成品が存在しますが、個人の死により永遠に未完となるものもあれば、引き継がれ完成に至るものもあります。松本先生は引継ぎ先を、命のバトンを渡すべき相手を見つけ、心安らかに息を引き取っていった事でしょう。結果よりも過程に意味があると常々考える私はそう信じます。

人の命もまた、廃れ編み直される辞書の如きに死に生まれ行くもの‥。定まった目的に向かって進む事も時として大事ですが、毎日を悔いなく過ごす様に努める人生の方にこそ真に尊いものがあると改めて教えられたブリキ男なのでした。
{/netabare}

主人公の馬締さんの声を演じるのはサイコパスの槙島聖護役でも有名な櫻井孝宏さん。西岡さん役は、こちらも言わずと知れた人気者、神谷浩史さん。それにしても馬締さんど~りで堂に入った話し方をする訳で‥紙の本とはよほど相性の良い方の様です(笑)朗読とかドラマCDとかの語りが好きな方なら櫻井孝宏さんの淡々とした言葉運びを耳に心地良く感じる事でしょう。

起伏のあるドラマを期待出来る様な作品では無いと思いますが、台詞そのものと落ち着いた作風に魅力を感じました。目に楽しいねこさん作画、丁寧なお料理描写も相まって、最後まで飽きずに視聴する事が出来そうです。

最後まで観終えて、一足飛びで目まぐるしく進む展開には戸惑いを覚える事もありましたが、辞書編纂というお仕事の一端、それに掛ける人々の情熱、真摯さの伝わってくる素晴らしいドラマだったと思います。

アニメのキャラについつい敬称を付けたがるわたしですが、それも極々自然な事と今更ながら確認出来たアニメでもありました。松本朋佑というキャラに対しては"松本先生"と言う呼び方以外は考え付きませんでしたもの‥。本作の落ち着きのある作風を根幹から支える、自ずと敬意を抱きたくなる好人物でした。


※1:奇人、変人と訳される事もあるあまり有り難く無い言葉? 女性名詞"不思議ちゃん"もこれに含まれるらしい。

※2:知人は白と黒しか知覚出来ない全色盲を指していた様でした。

※:"舟を編む"と言う言葉、ちょっと不思議な響きですが、編む様にして作られる舟は実在します。私が知っている限りではアリュート・インディアンの作る伝統的な船"バイダルカ"がそれに当たります。無数のパーツを何本もの紐でしっかりと結わえ付けて作られる、剛性、柔軟性を備えたカヌーで、"バイダルカには間接がある"とまで称されています。

アニメとは全然関係ないけれど、ケネス・ブラウアー著「宇宙船とカヌー」に詳しい描写がありますので、ご興味が湧いた方は是非ご一読を。素晴らしい書です。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 56

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

とっても「ノイタミナ」…。

同名の原作小説があり、そこから実写映画化もされています。が、原作は読んでいませんし映画も観ていません。

良くも悪くもすごく「ノイタミナ」っぽいアニメ作品だと思います。『図書館戦争』や『四畳半神話大系』同様、たぶんノイタミナ枠でしかTVシリーズのアニメ作品として作られることはなさそうな感じです。

でも、ノイタミナは本来そういう枠だと思ってますのでけっこう楽しんで観ていました。CM明けの「辞書コント」も私は好きです(笑)。

あと、作中でやっていた用例採集は楽しそうだと思いました。

ちなみに作中でも紹介された大槻文彦が編纂した「言海」ですが、一応最初は国家プロジェクトで国費が出ていたんですよ。

政府としてのプロジェクトが打ち切りとなりその後、保管されて埃をかぶっていた作成途中の書類を大槻が引き取って仕事を続けて最終的に私費で完成させて出版したという経緯があります。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 45

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

「言葉は、言葉を紡ぐ人の心は、自由であるべきです。」

三浦しをんによる小説を原作とするアニメ。

実写映画も話題になりましたよね。
(まだ観ていないので、今度観ようと思っています。)

いやー、期待以上に良い作品でした。

最終話は涙が止まらなくて困りました(´;ω;`)

全11話です。


● ストーリー
玄武書房辞書編集部は、
新しい辞書『大渡海(だいとかい)』を作る計画に乗り出していた。

辞書編集部の西岡正志(にしおか まさし)は、
頼りない営業部の馬締光也(まじめ みつや)に出逢った。

彼は、言葉のいろんな意味を瞬時に、真面目に考える青年だった。

馬締を辞書編集部に迎え、
いよいよ辞書作りが本格的に始まった。


辞書を作る、なんて全然知らない世界だから、
新しく知ることばかりでとても引き込まれました^^

地味な作業が多いけれど、
出来事の描き方がうまくて、ドラマのよう。

とても根気のいる作業でもあり、
実際作中では13年以上の時が流れます。

季節が何度も移り変わり…
たくさんの人が関わって情熱を傾け…

そしてようやく1冊の辞書が完成するのです。

特に、『大渡海』の監修を行っている松本先生の生き様が、
私には一番印象深く残りました。


≪ 辞書 ≫

辞書というのは、
言葉の世界への招待状だと思います。

人と人とが分かり合おうとする限り、
この世に言葉は溢れ続ける。

人が自分の想いを伝えることをあきらめない限り、
この世に新たな言葉が生まれ続ける。

人々が言葉の海に溺れてしまわないよう、
陰から支えてくれるのが、辞書の役目。

自分の知らない言葉と出会える無限の可能性が、
そこには隠れているのですね。


愛用していた電子辞書が壊れてしまってからは、
私も紙の辞書を愛用しています。

本でも漫画でもそうだけど、
紙に触れるのが好きなのです(*´ω`*)

電子辞書だと、
調べたい言葉の意味の正解を探すことだけに集中してしまいますが、

紙の辞書だと、
すべての意味がすぐに目に飛び込んでくるから、わかりやすい。

そしてちょっと視線をずらすと、
すぐそばに違う言葉がたくさん並んでいて、
「こんな言葉もあるんだ。」という新しい発見もある。

この作品を観れば、
きっと辞書に触れたくなること間違いなしですよ^^


≪ 言葉 ≫

毎回タイトルには
ひとつの言葉がつけられています。

その意味は、EDのイントロで紹介されるのですが、
それが素敵…!

なんと話や登場人物の心情を的確に表現した言葉なのか…!としびれる!

するすると、ゆったりと流れていくストーリーも心地よいですが、

何より言葉に惹きつけられる。言葉に魅せられる。
言葉の魅力におぼれてしまいます。


● 音楽
【 OP「潮風」/ 岡崎体育 】

OPはアップテンポで楽しい気分になる曲ですね♪

どちらかというと静かである作品の雰囲気とは正反対な気もしますが、
まったく違和感はありません。

むしろ好きです^^


【 ED「I&I」/ Leola 】

こちらはしっとりとしたラブソング。

作品の雰囲気から考えると、
この曲はぴったり♪

歌詞は香具矢(かぐや)さんの気持ちなのかしら…と
思うと、よりうっとり(*´ω`)


● まとめ
辞書作りに情熱を注ぐ人たちのお話。

穏やかで優しくて、
激しくてアツくて、
しんどくて終わりがなくて、
沈んでも沈んでも底が見えなくて。

言葉の海の魅力に魅せられました。

とても好きな作品となりました^^

投稿 : 2024/11/09
♥ : 41

65.4 2 コミュ障でラブレターなアニメランキング2位
超訳百人一首 うた恋い。(TVアニメ動画)

2012年夏アニメ
★★★★☆ 3.6 (371)
1671人が棚に入れました
はるかな昔から、歌い継がれ、愛されてきた百人一首。 藤原定家が選定した百の和歌には、現代の私たちも共感できる 普遍的な“人の思い”がみごとに詠みこまれている。 とりわけ、「恋」の和歌にこめられた思いは、驚くほど昔も今も変わらない。 そんな百人一首の深い魅力を、恋の歌を中心に、アニメと超訳でわかりやすく お届けします。

声優・キャラクター
梶裕貴、諏訪部順一、早見沙織、遠藤綾、内田夕夜、千葉進歩、下野紘、大原さやか、遠藤大智、小林沙苗、森久保祥太郎、宝木久美、代永翼、佐藤祐四

Key’s さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

これは昔の人が記した恋の記録の物語

原作は知らないですが少女マンガっぽい雰囲気ですね
まさにダークホースでしたw
期待せずに見てたら意外と面白かったですw

僕が恋の話が好きなのと
国語が好きなのが上手くハマった作品w

もちろんキャラの性格や見た目などは
史実とは違うが
別段気にはならなかった

歌の解釈はいろんな解釈があると思うが
こんな風な軽い感じであっていると思う
良い感じで史実とフィクションが混ざっていて
物語として面白かった

OPがすごく気に入った
作品とも合っていたと思うし

1話完結なので流れとかは
特に気にせず気楽に見れた
途中からでも普通に楽しめると思う

まぁ知っていたがやっぱり
失恋の歌が多いなw
その分やっぱり実らない悲しい恋が多かったな・・・
個人的には2話の陽成院の話が一番好きだった
感動もできた

何気にギャグも好きw
あのいきなり始まったわけが分からない
カードバトルとかw

恋の話や国語の短歌や歴史が
好きな人は絶対気に入ると思う
その分短歌とか嫌いな人は
感情移入しにくいのかな?

僕は楽しめたので
恋の話好きにはおすすめしたい作品ですね♪
何気に二期を希望(無理かなw?)

投稿 : 2024/11/09
♥ : 54
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

<最終回まで視聴完了> 恋する想いはどれほど時代を経ようとも

<最終回の感想>

百人一首の選者であり、全話を通してパーソナリティ役を務めていた定家が
今回の主人公となり、とてもきれいにまとまった最終回だった。

この作品が一番言いたかったこと。
定家自身もそう想って百人一首を選んでいたのではと
思わせてくれるような説得力があった。

また全話通して、当時の身分の差からくるせつなく哀しい想いや男女のルール、
雅やかな衣装と歌の世界を、現代語を交えた斬新なシナリオで見せ
わかりやすかったし、引き込まれたエピソードも多かった。
結局、どれほど時代が変わっても、やはり恋というものはいつの世も
同じ想いに駆られるものなのだということを、時には面白おかしく
時には親心なども交えて幅広い世代に共感を呼んだのではないだろうか。

キャラデザや作画、演出には好みが分かれるかもしれないし
最新の技術を駆使したスピード感あふれるアニメに慣れた人からは
いくらか退屈な部分があったかもしれないけれど、そのあたりは
平安の世を描いていたからこそ、逆にこれで良かったのかもと思うし
個人的には毎回楽しみにできた大好きな作品の1つになった。

残念ながら1クールだったので当然百首には叶わず、恋を詠んだ歌も
まだまだ他にあるのだけれど、仕方ない。
でも最近また、百人一首の解説本を引っ張り出して読んでいたりして、
そんなきっかけを作ってくれた嬉しい作品だった。

今回の最終回で式子が言った言葉・・・
{netabare}
「不自由さの中、歌だけが自由で、歌の中でだけは自由でいられるのです」
{/netabare}

・・・あまりにも深く共感しすぎてなんだか耳から離れない。
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<12話の感想>

せつない話が続いて今回は身分の違いから結ばれぬ運命にある2人の悲恋。
身分など考えなければ、ワイルドな雰囲気の道雅と
無邪気で明るい当子はお似合いのカップル。
しかも出会いは当子が幼い頃で、きっかけはとある約束ときた。
同じエピソードの流れを前半は道雅視点で、後半は当子視点で描き
どこでどうすれ違っていったのか、よくわかったけれど
この演出法を25分間の間で見せるのはいささか、もったいない気がした。

それに、娘とその恋人の仲を引き裂いておきながら、
娘の恋路に理解を示してやれないとかで世を墓なんで出家を
考える父親ってどうなの??
いくら天皇だからとはいえ、出家するくらいならその勢いで
娘の想いをもう少し汲んであげても良かったのでは・・などと
思ってしまうのは、半分以上現代風にアレンジされた作品だから
なのかもしれない。

さて来週は最終回のようで・・どんなお話でまとめられるのか楽しみ。

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<11話の感想>

これまたせつないお話で。
そのせつなさは、あの時代の女性同士だからこその部分もありつつ、
現代にも通じるものがあるなぁと。
「女のクセに」と言われながら才気を発揮していった香子(のちの紫式部)と
「女のクセに」と言われながらお転婆の限り腕力をふるった藤子。

「男になんか負けない」と目標を持ち、笑いあっていた年月も過ぎ、
その先に立ちはだかるそれぞれの壁。

藤子に「あなたが男だったら良かったのに」と言われ
かつて父親からも「男に生まれてくれたら良かった・・」と言われた香子が
唯一の理解者であった親友・藤子を想う気持ちは、
痛いほど伝わってきた。
そして再会を素直に喜べないまま無視してしまった藤子の想いも
わからなくはなかった。

視聴しているこちら側としては、双方の心の揺れも昂ぶりも
しっかり観れているから納得するけれども、
当の本人達は電話もメールもない時代で、心を打ち明けるとしたら
それはもう文しかないわけで。

紫式部の「めぐりあひて 見しやそれともわかぬまに
雲隠れにし 夜半の月かな」というあの歌が
焦がれ親しんだかつての友を想うものだったとは、知らなかった。
とはいえ、これは百合的に描かれたまま観るべきものではなく、
幼馴染で育ったという環境が背景にあって、なおかつ
逆境の中でお互いの才能の唯一の理解者だったということが深い友情を
生んだのだし、そこを履き違えてはいけない気がした。
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<10話の感想>

今回は百人一首の中になぜ、定子様の歌が選ばれなかったのか、そして
「枕草子」に清少納言が託した想いとは・・という2つの話だった。
一方、行成とのその後、実方のその後も描かれ、せつなかった。

また、悲運に見舞われた定子の、死の直前に詠まれた歌は
あまりにも悲しいもので。
でも枕草子には、定子との楽しかった日々のみが書かれており、
それを見た藤原定家が何を感じ取ったかは、すごく共感できた。

楽しかった思い出は前向きに今を頑張るためにある。
という言葉がとても印象に残った。

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<9話の感想>

ともに親が有名な歌人であるがゆえに和歌が苦手と言うことで
意気投合した藤原行成と清少納言のお話。
気が合う部分が多くても、すぐに恋愛に発展するわけではなく
苦手な和歌で無理やり、やりとりをするより、手紙の往復。
その文章にしても、会った時の会話にしても、なかなかスパイシー(笑)
一筋縄ではいかない関係に、周囲も無関心になっていき。。
だからなのか、すごく余裕を感じさせるし、面白かった。
でもあんな皮肉ばかり言ってる会話は、実際疲れそうだし
長い期間そんなことしてると本当に友達のままになってしまうよね(苦笑)
次回はそんな2人のゆくえも描かれるようで、すごく楽しみ。

この作品の今までの話を振り返ってみて、小野小町のエピも良かったけれど、
清少納言にまつわるエピは重なる部分や共感する部分が多いからか、
さらに心を揺さぶられてしまう・・

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<8話の感想>

前半は、後の清少納言となる諾子の兄の、遠距離恋愛の話。
信じるものが何も無い人生は死に等しい・・確かにそうかも。
けれど、信じ続ける、想い続けるのは難しく、人の心は移ろうもの。
前半の話にもけっこう共感できたけれど、少し幼い感じがして、
それゆえにか後半の話がとても大人の恋に思え、感動した。

のちの清少納言となる諾子と藤原実方との恋の行方。
彼女の才能を何よりも愛した彼の決断と、その本音。
自分の出世より彼を愛する想いを優先させたい彼女の気持ち。

記憶と重なるセリフや想いに、観ていて思わず
心揺さぶられてしまった。
そして今回、実方の表情が特に繊細に描かれていて素晴らしかった。
気づいたらボロ泣き。
それに今回、前半と後半の2つの話の組み合わせ方が秀逸。

{netabare}
在原業平と同様、光源氏のモデルとも言われた彼、藤原実方。
意地悪な見方をすれば、プレイボーイらしい別れ方なのかもしれないが、
自分が見込んだ彼女の才能が開花した華々しい姿を見届けるために
あえて一緒にならない道を選ぶことや、予想通り羽ばたいている彼女の
成功をみつめながら冗談を交わすそのひそかな愛情は、とても切なく、
そんな身の焦がし方は大人の恋ならではと感じた。

想うままに自分の傍に引き寄せることばかりが愛じゃなく、
あえて突き放したあと、男女の友情を成り立たせてしまう。
実際はそのほうが長続きする関係も多い。
さすがだわ実方様(笑) 鮮やか過ぎて何も言えへん~
{/netabare}

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<7話の感想>

リアルタイムで観た時、ちょっと酔っていてうろ覚え。
2回目観て共感しながら後半爆睡。
3回目観ながら和歌を堪能、もう一度確認したくて4回目視聴。
なぜかこの7話だけ4回も観てしまった(笑)

対照的な男性2人だけれど、どちらもなかなか魅力的。
前半の源保光の娘の素直なしとやかさも良かったけれど
後半の高階貴子の結婚に対しての固定観念がなかなかリアルで
興味深かった。
どっちの結婚が幸せかなんて野暮なことは考えないけれど
観終えた後でじわじわ、いろいろ考えてしまう回だった。

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<6話の感想>

いやはや、番組間違えて録画してしまったかと思ったよw
今回は完全なるパロディ回。
G1だったり、徹子の部屋や新婚さんいらっしゃいだったり、
ホストクラブやカジノも登場~で、設定はしっかりしてるのがミソ。
なかなか盛りだくさんな構成でいながら、よくまとまってたし
最初から最後まで笑い通しだったせいもあり、あっという間に終わったw

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<5話までの感想>

百人一首の中でも、主に恋にちなんだ短歌をテーマにした
コメディ・タッチのストーリー。

平安時代の歌の世界観や人物たちの会話の中、「オタク」や「コスプレ」
「聖地巡礼」や「スルー」などといった流行語や現代語を交えた言葉や
現代訳が登場するので、古典を本格的に楽しみたい方からは賛否両論
あるかもしれないが、間違った解釈はしていないし、現代人にはとても
わかりやすく共感しやすくなっている分、親しみも感じやすい。

OPやEDの音楽も、百人一首の世界を意識した歌詞でありながら、
あえて現代の先端をいくような音楽にしていることに意味があるというか。
短歌という限られた文字数の中に想いを含ませ、恋する気持ちや
自分の本音をしたためた平安時代も、根底に流れている想いは現代と同じ。
時代がどれほど変わっても、恋する想い、愛する気持ちは変わらない
ってことが言いたいのだろう。

恋をすると誰しも、詩人になったりするしね。
また、今の世に名と作品を残している平安時代の歌人もまた、
現代の詩人や作詞家と同じように、歌を自分の居場所とし
形あるものとして残していくことに、自分の存在意義を感じていたのだなと
そんなことを思えると嬉しくなる。

なので史実に基づいた忠実な再現ドラマにするのではなく、
ある程度は資料を基にした関係や事実だとしても、今風に置き換え、
最終的には百人一首を深く理解していれば良いのだと思う。

構成も見やすく、毎話・・その回に登場する詠み人を主人公に
それぞれエピソードを展開ながら想いや交流を描いている。

監督は『ハチミツとクローバー』や『のだめカンタービレ』などで
おなじみのカサヰケンイチ氏
シリーズ構成は『うたプリ』などの金春智子さん。
キャラクターデザインは『君と僕。』『ちはやふる』
『銀河へキックオフ!』のつなきあき氏。
ってことで、スタッフ見ただけでも観る気満々だったが
キャストのほうも、以下の通り豪華な顔ぶれ。
もともと古典は好きだし、もう観ないわけないやんって感じで
今現在、第5話まで視聴済み。

個人的には2話の「貞明と桜子 陽成院」に、ちょっと泣けてしまったり
3話の「宗貞と吉子 僧正遍昭」の、幼馴染であった吉子(小野小町)と宗貞の
兄妹のような関係にせつなくなってしまったり、
5話「東下り 小野小町」での老いてしまった小野小町の想いに
つい共感してしまったりと、毎回飽きることなく楽しめている。

というわけで最終話まで何度か、感想を更新しながら編集していく予定。
なので☆評価はそれまでの間、暫定です。

藤原定家 - 梶裕貴
在原業平 - 諏訪部順一
藤原高子 - 早見沙織
小野小町 - 遠藤綾
良岑宗貞 - 内田夕夜
文屋康秀 - 千葉進歩
宇都宮頼綱 - 下野紘
式子内親王 - 大原さやか
在原行平 - 遠藤大智
弘子 - 小林沙苗
陽成院 - 森久保祥太郎
綏子内親王 - 宝木久美
紀貫之 - 代永翼
喜撰法師 - 佐藤祐四
藤原義孝 - 石田彰
高内侍 - 平田絵里子
藤原道隆 - 楠大典
清少納言 - 茅原実里
藤原実方 - 子安武人
藤原行成 - 寺島拓篤
藤原斉信 - 曽世海司
藤原公任 - 岸尾だいすけ
清原元輔 - 中博史
清原致信 - 豊永利行
末の松山 - 南里侑香
源保光の娘 - 潘めぐみ
中宮定子 - 折笠富美子

投稿 : 2024/11/09
♥ : 47

こたろう さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

惚れた腫れたは時代を超える

視聴層はおそらく女性向け。
百人一首に名を連ねる歌人達の恋物語を、その歌の内容から想像して創造しているお話です。
歌や文を交わして親交を深める平安貴族の風雅で優美な色恋を綴った素敵な世界。
現実ににそうであったか史実はさておき、メロメロな愛のドラマが盛り沢山な作品となっています。


ストーリーテラーとして、百人一首を編纂した藤原定家が進行を勤めますが、特定の主人公はなく、歌人達の群像劇となっています。
あたりまえですが、各話が百人一首に読まれた歌、またはその詠み人にちなんだお話。
基本的には一話完結形式ですがが、それぞれのキャラクターには繋がりがあって、数話を繋げて1人の歌人の生き様を表現していたりで案外と凝った構成。
小野小町、清少納言、紫式部などなど、誰もが知る有名な歌人、特に女性の扱いが大きいです。

平安の時代、お堅いイメージがありますが、性に関しては結構フリーダムな時代。
加えて貴族ですから、後宮にあがったり寵姫に仕官したりの立場の方が多くて、そっち系にナマナマしいです(〃'▽'〃)
こういうお話は大人の淑女達が好むところですね。
優美で切なさも入り混じった物語となっています。


作画は独特。
線が太く、和柄の貼りつけなどが使用されており、メリハリはありますが、動きはあまりありません。
キャラデザ的にはイケメンや美女をとされるキャラを書いていますが、取り立てて綺麗という事もなくモッサリとした感じ。
嫌悪感はありませんが、決して良質とは言い難い映像です。
歌を詠むシーンなどは気合の作画を見せて欲しかったですが、そういう部分に尽力する作風でもなさそうなので、そこを期待するのも酷な気がします。
アニメというより、動きのある絵巻といった印象でしょうか。

絵で魅せるタイプではないので、キャラの語りと演技が重要。
この点ではベテラン声優さんが頑張っていました。
感情を荒げるような事は少ないですが、恋にまつわる悲喜交々を、気品があって情熱的なキャラとして演じきっているのはさすがです。
雅な雰囲気は決して崩さずに、それでいてコミカルな部分では肩の力が抜けた歌人達。キャラ立ちはどれも良くできていて魅力的です。


ちょっと独特な味を持ったアニメでした。
歴史ものになるので堅苦しいイメージがありましたが、百人一首や登場する歌人は我々に馴染みが深く、とっつきにくさありませんでした。
特に、第一話で詠まれた歌は、古今集より在原業平(ありわらのなりひら)の歌。
↓つまり、これ。

ちはやぶる 
 神代も聞かず竜田川
  たつたがは韓紅に
   水くくるとは

グーゼン?
いや、意識してチョイスしてますよねぇ?^^;

投稿 : 2024/11/09
♥ : 27
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