エンタメで女性向けなおすすめアニメランキング 2

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早速見ていきましょう!

75.1 1 エンタメで女性向けなアニメランキング1位
劇場版ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉(アニメ映画)

2024年5月24日
★★★★★ 4.1 (47)
137人が棚に入れました
メディアミックスコンテンツ「ウマ娘 プリティーダービー」を初の映画化。
国民的人気スポーツエンタテインメント「トゥインクル・シリーズ」でのフジキセキの走りに衝撃を受けたジャングルポケットは、最強を目指すべく、レースの世界へ飛び込む。トレーナーと共にデビューを果たしたジャングルポケットは、一生に一度しか走れない栄誉あるクラシック三冠レースに挑む。だが、そんな彼女の前に、天才的な頭脳を持つアグネスタキオンやミステリアスなマンハッタンカフェといった同世代のライバルたちが立ちはだかる。
ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

映像◎物語▲

本作は、Cygamesによるメディアミックスプロジェクト「ウマ娘 プリティーダービー」を原案とした映画作品。
上映時間は、108分。監督は山本健。制作は、『勇気爆発バーンブレイバーン』、『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』などのCygamesPictures。
(2024.7.16投稿)

アプリゲーム『ウマ娘』のゲーム内アイテムのおまけ付きチケットで観てきました(ゲームユーザー的には、おまけが本体という話も(笑))。

本作については、概ねここでの評価もそれ以外から聞こえてくる評価もキタサンブラックが主人公で酷評の多かった『ウマ娘3期』と比べて、好意的なものが多い印象です。

ただ、興行収入自体は、今のところ10億円超らしいので、大コケではないけれど、売れたともいえない数字になっています。

その原因の1つは、本作も基本的にリアル日本競馬とウマ娘についての最低限の知識がないと楽しめない内容になっているからだと思います(アプリゲームの人気が凋落しているところに、新規に対する視聴のハードルが高く間口が狭くなっています。要は、「とっつきにくい」。ただし、もともと興味のある人が観た場合は、好意的な印象を持つ可能性が高い内容になっていると思います。)

もっとも、そこまでディープな知識がなくても楽しめるとは思います。

例えば、数ある日本競馬のビックレースの中でも「日本ダービーに勝つ」ことが最高の栄誉とされ、そこでジャングルポケットが勝ったので、本作の主人公になっているくらいの知識が必要でしょうか(※判断基準としては、これをディープな知識と思うかどうか(笑))。


【あらすじ】
本作は、2001年における史実の日本競馬を「ウマ娘」として擬人化した作品。主人公は、その年の日本ダービーを制したジャングルポケット(CV.藤本侑里)。そのライバルとして主にアグネスタキオン(CV.上坂すみれ)が登場。

ナリタトップロード(CV.中村カンナ)が主人公で1999年の史実のクラシック戦線をウマ娘化した『Road to the Top』の2年後の話。
ちなみに、翌年の2000年、20世紀最後の年は、1999年の皐月賞馬であるテイエムオペラオー(CV.徳井青空)が、天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念のG1の5勝を含む年間8戦全勝という前人(?)未到の記録を作り、その圧倒的な強さから『北斗の拳』のラオウになぞらえ「世紀末覇王」と称された。


【映像◎】
さて、私は、アニメの視聴傾向としてストーリー重視ということもあり、本作のストーリーに対する評価はそれほど高くありません。
ただ、特にレースの作画と演出は、過去の『ウマ娘』作品の集大成といっていい素晴らしい出来栄えだったと思います。

思い返せば、『ウマ娘1期』のレースシーンでは、主に真横からのアングルで内側の柵(内ラチ)がどれだけ早く過ぎ去って行くかで「ウマ娘の速さ」を表していた。
それが、期を重ねるごとに、実際のレース映像や騎手目線のアングルが増え、レースの臨場感が増していったというレース描写の進化の歴史がありました。

ただ、『ウマ娘3期』のレースシーンでは、声優の絶叫の細かい演じ分けという、「いや、そこ拘るのは別にいいんだけどさ、アニメなんだからアプリゲームの固有スキルの演出とか参考にして、もっと「見た目」的にわかりやすい演出にすればいいんじゃね?」と思った人も私だけではないはず(笑)

本作では、その辺がきっちり改善されてます。相変わらず絶叫はしてますが、これまでの実際のレース映像や騎手目線のアングルに加えて、前に勝利への道筋が見える的な演出だったりと視覚的な表現が増えてます。
したがって、過去の『ウマ娘』作品の集大成といっていいレースシーンになっています(※ただ、今作もゲームの『ウマ娘』に登場していない競走馬の扱いが軽いので、レース中の他のウマ娘との駆け引きといった心理描写は薄いです。なお、同じウマ娘でも『シンデレラグレイ』では、この辺をきちんとやってます。)。
あと、映画なので「音」の臨場感がすごい。一緒に走っているような錯覚に陥りました。


まあ、映画というでっかいスクリーンと大迫力の音響で観るという表現媒体の特性を考えると、「映像で魅せる」という、この戦略自体は間違いではなかったと思います。それに、2時間弱という上映時間を考えると、テーマを絞らないと丁寧にストーリーを描く尺の余裕もない。

なので、特にウマ娘関連作品をこれまであまり観てこなかった人は、ストーリーはよくわかんないけど、なんかレースシーンがすごかったという感想になりそうです。


【「物語▲」】
本作のサブタイトルは「新時代の扉」なのですが、これは、「勝ったのはジャングルポケット、2着にダンツフレーム!マル外開放元年、新時代の扉をこじ開けたのは、内国産馬・ジャングルポケット!」というフジテレビアナウンサー・三宅正治さんの2001年の日本ダービーの実況に由来していると思われます。

「マル外」というのは、簡単にいうと外国産馬のこと。日本ダービーでは、主に北海道に多い競走馬の国内生産者を守るため、歴史的に外国産馬の出走が制限されてきました(※競馬は海外の方が歴史が深いため、歴史的に外国産馬が強かった。)。しかし、それが一部解禁されることとなった2001年に実際に勝った馬は、国内で生産されたジャングルポケットでした。
したがって、ここでいっている「新時代の扉」とは、これまで強いとされてきた外国産馬に内国産馬が実力で勝つ時代が来たのだということでしょう。

ちなみに、この年の日本ダービーでは、外国産馬として5着に入った「クロフネ」がいました(※作中では「ペリースチーム」。ただし、有名な個人馬主さんでゲーム内実装キャラではないため、扱いが非常に軽いです。)。


もっとも、本作のストーリー的には、馬名の使用許諾の関係上クロフネにスポットを当てられないこともあってか(ゲーム内未実装キャラにあてる宣伝費はない的な大人の事情なんですかね…)、2001年のジャパンカップで「世紀末覇王」ことテイエムオペラオーにジャングルポケットが勝ったことを指して、「絶対王者の終焉」、すなわち「新時代の扉」が開かれたということなのだと思います(※ポスターでもラスボス的な位置に描かれているのは、オペラオーです。)。

別に違うレースの実況をサブタイトルの元ネタにしていることを批判するつもりはなくて、そういう解釈もできると思うのですが、じゃあ、本作は、オペラオー世代とジャンポケ世代の世代交代がメインテーマだったかといわれれば、そうでもない(※ジャンポケとオペラオーとの絡みがほとんどない)。

したがって、「新時代の扉」というサブタイトルでありながら、そこに向けて物語が徐々に盛り上がっていくという作りにはなっていないので、テーマが漠然となっている印象を受けました。
例えば、{netabare}ジャンポケがタキオンに対して抱いていた圧倒的な速さに対する恐怖、それと同じものをオペラオーにも感じていたというわけでもない。まあ、史実のオペラオーは、いつも僅差の勝利でタキオンと違って圧倒的な速さで勝っていたわけではないのですが…
また、フジキセキ(CV.松井恵理子)とそのトレーナーの思いがオペラオーと関係があったようにも見えませんでした。あと、ジャンポケと同期のダンツフレーム(CV.福嶋晴菜)とマンハッタンカフェ(CV.小倉唯)の掘り下げが中途半端なので、ジャンポケが同期の思いを代表していたという感じでもない。
なので、それぞれのエピソードが絡み合って1つのストーリーとして相乗効果を発揮していたとは思えませんでした。{/netabare}


というわけで、私が本作のストーリーを高く評価していない理由は主にこの辺にあります。


【まとめ】
本作も、特に3期のレビューで私が問題提起したのと同様の根本的な問題を抱えていて、Cygames原案でゲーム『ウマ娘』の販促という側面や、競走馬の名前の使用許諾など、色々と表現の制約があったかと思います(※個人的には、今後、アニメ化されるであろう『シンデレラグレイ』にこういった悪影響がでることを懸念しています。)。
そう考えると、テーマがある程度漠然となってしまったのは已むを得なかったのかもしれません。

しかし、それを差し引いても、特にレースシーンについては、過去の『ウマ娘』作品の集大成といっていい素晴らしい出来栄えであったと思いました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 3
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

超光速で越えてゆけ!

【物語 4.0点】
ジャングルポケットを主役に、2001年クラシック世代を描いた『ウマ娘』劇場アニメ化作品(108分)。

競馬には“最強世代”と称される時代がいくつかありますが、ポッケの世代もその一つ。
{netabare}“世紀末覇王”テイエムオペラオーに引導を渡し新世紀の始まりを告げた世代でもあり、
アグネスタキオン、マンハッタンカフェは後年種牡馬としてもリーディングサイヤーに輝き、
サンデーサイレンス系は流行るだけ流行って廃れていくのでは?との疑念を払拭。{/netabare}

様々なトピックがあった中で、本作が特にクローズアップしたのが未知のスピード。
本作にはポッケの史実でも同厩舎の“先輩”だったフジキセキが、
ライバルとして“超光速の粒子”を名に込めたアグネスタキオンが登場。
共に{netabare} 早期引退した{/netabare} 故に底知れないスピードと可能性について、競馬ファンの間でも議論が盛り上がるifが豊富なサラブレッド。

『ウマ娘』は競走馬のスランプと覚醒に潜む史実の空白を、キャラクター相関の掘り下げで埋めていくシナリオ運びが秀逸ですが、
今回のポッケの場合は、タキオンとのレースで体感した圧倒的なスピードへのトラウマと、その克服を軸にプロットを構築。

競馬のifのさばき方についても、中盤{netabare} ポッケとフジキセキの河川敷でのマッチレース、{/netabare}
ラスト{netabare} “復帰”したタキオンを含めた4人総集結のレース開催か?{/netabare}
で、余白を残し、史実を守りつつ、スピードと可能性というテーマについても鑑賞者に意識させる、熟練のif活用術。

狂気のスピード実験を重ねるタキオン視点を通じて、ウマ娘は何故走るのか?
まで探求される。


新世紀、世代交代、『ウマ娘』の新境地。
様々な『新時代の扉』を開いた野心作だったと思います。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・CygamesPictures

実験的な探求映像で鑑賞者も未知のスピードを体感する。

ポッケが味わったタキオンのスピードという恐怖。
“超光速”で異次元空間に誘われるようなエフェクトてんこ盛りな映像で殴りつけることで、
競技者だけにしか分からない、言語化が難しいトラウマを好表現。

後年、本作は、ウマ娘がど根性で表情を歪める顔芸一辺倒だけではない、
多彩なスピード表現を開拓した作品として評価されることになるのだと思います。

心がかげったキャラは日陰に、心が晴れたキャラは日向に置く。
光と影の心情表現は本作でも用いられますが、
タキオン関連については、しばしば“白い闇”に包まれる倒錯したトラウマ表現が繰り出されます。
白んだ光の中で、ポッケがタキオンに頭を抑えられて脚が進まなくなるスランプ表現の反復が痛切です。


ポッケのペンダントや、タキオンの実験室に備えられた、
光を乱反射するプリズムを有した多面体の小物も、
ウマ娘を競争に駆り立てる心情のアシストに重宝しました。


レース映像で個人的に一番嬉しかったのが、
{netabare} テイエムオペラオーの20世紀最後の有馬記念。
道中、他馬から完全包囲される絶望的な位置取りから、
ハナ差でねじ伏せて古馬中長距離G1完全制覇を達成した私の中でも伝説のグランプリ。

しばしば、成績表だけ見て、着差が少ないとか難癖を付けられるオペラオーですが、
実際のレース映像を見たら、こりゃどうにもならんくらい強いと思い知らされる。
そんな“世紀末覇王”の“ハナ差圧勝”劇を、敗北したウマ娘の絶望の表情からも堪能できる至福のひと時でした。{/netabare}


【キャラ 4.0点】
主人公ジャングルポケットは野良レース上がりのベロ出しヤンキー風。
ライバル・アグネスタキオンはウマ娘に眠る更なる可能性を追求するマッドサイエンティスト。
濃厚なデフォルメキャラがレースでさらに狂気に囚われ、
どこが娘だw萌えって一体wって感じのメインキャラ2人。
マンハッタンカフェも終盤までは{netabare} 病弱キャラ{/netabare} ですし。

“最強(狂)世代”の中で、ささやかな萌えを提供するのがダンツフレーム。
胸の谷間が、新時代の扉フルオープン過ぎる?wフジキセキ先輩と共に、
巨乳枠として、束の間の癒やしを提供。


ポッケ、タキオン、マンハッタンカフェと、
『ウマ娘』が権利取り難航してきた印象の、社台グループ、ノーザンファーム関連のウマ娘化のいっそうの進展により、
従来アニメ化が難しそうだった時代も描く見通しが立ってきたのも収穫。

が、唯一、クロフネだけ権利取れずに“ペリースチーム”に留まったのが惜しかったです。
クロフネさえ押さえれば“最強世代”完成って感じだっただけに、ダメージが大きかったです。
やはりディープインパクトなどの金子真人HDの牙城は難攻不落なのでしょうか。


【声優 4.0点】
主演ジャングルポケット役の藤本 侑里さん。
競走馬ジャングルポケットと言えば、{netabare} 日本ダービー{/netabare} にて、レース後“雄叫び”を上げるワイルドなカットが象徴的。
ポニーキャニオンから出ているDVDサブタイトルも『~新世紀への咆哮』
不慣れな叫ぶ演技で苦労されたとのことですが、劇中ではシャウトもバッチリ決まってました。

ポッケのオラオラボイスを、舐めるようなネットリ科学者ボイスでいなすのがアグネスタキオン役の上坂 すみれさん。
冷静だったタキオンが熱く豹変する演技が終盤の沸点。


タナベトレーナー役には緒方 賢一さん。
フジキセキで叶わなかったダービー制覇の悲願をポッケに託す。
渋いボイスの中に溢れる熱い想いをベテランが好演。
やっぱり『ウマ娘』はトレーナー役が存在感を発揮してこそ。


【音楽 4.0点】
劇伴担当には新たに横山 克氏を迎え、こちらも新時代。
特に異次元体験となるレース映像では、例えば皐月賞の「2.00.3」に至っては音楽というより電子音を千切って投げつけるような挑戦的なBGMで、
鑑賞者との不思議体験共有に一役買って、作曲者自身も新機軸で魅せる。

ウマ娘たちの足音も無難な蹄鉄音だけでなく、時に電子音化するなどSEも
未知のスピード空間への誘導に効果的。


OP主題歌「Ready!! Steady!! Derby!!」はポッケら“最強世代”の4人。
4人は、ライブシーンの「PRISMATIC SPURT!!!!!」で、
プリズムの小物で示唆した諸要素も回収して、可能性の未来を示す。
ポッケのキャラソン挿入歌となった「Beyond the Finale」と合わせて、
推進力のある楽曲群で、淀みのない作品スピードを下支え。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

4dx版が最高というのは罪深い…。意味や目的を超えた先に、条理も不条理も超えた先にあるものは。

 to the topに続いて本命のこちらも見てきました。公開する前からポッケ君主役で濃厚なドラマを描けるか心配でしたが、予想通りその面は正直大したことなかったです。ただ、シンプルで面倒くさい要素がないので、凄いコクはないけどスッキリ見易い作品ではありました。


 タキオンが良いキャラなのは勿論、特にフジ先輩にこんなに花を持たせるとは思ってもみませんでした。丹下ジムみたいな橋の下の貧乏ジムの緒方さんな老トレーナーも良い。ただ、嘘理論でもいいからこういう理屈の特訓をやったからポッケ君は強くなれました〜という流れで、緒方さんトレーナーの有能ぶりを描いて欲しくもあった。あと、カフェをもっと活躍させてよぉ〜!!(ちょいちょい入るくすぐりなネタは嫌いじゃなかったです)。


 あしたのジョーの力石ポジにタキオンがいるみたいなもんだから、カーロスにあたりそうなカフェとか、ホセにあたるオペラオーの描き込みこそもっと必要だったような。


 それにしてもタキオンが一番興味深いキャラで最後の展開とかは、「こうなったらいいなぁ〜」と思ってたのに少し近かったけど、もっと詰めて欲しかった。データキャラや博士キャラは、最終的に合理性だけじゃ限界を超えられないって展開とセットでこそ素晴らしくなる。


タキオンはもう自分の脚の限界、ここが自分の最高点だと皐月賞で察したからこそあの判断だったのだろう。合理的に考えればそれは決して間違いではない。しかし、それでも…な展開こそ一番の要だったように思えた。


タキオン 「全く三女神とやらは残酷だよ…。」


     「ウマ娘の才能とは祝福ではなく一種の呪いだったんだ。」


     「もうあの絶頂は望み得ないのに。」


     「脚が完全に壊れ、走るどころか歩くことすらできなくなるかもしれないのに。」


     「ウマ娘の本能…、いや一般化して誤魔化すのはもうよそう…。」


     「才能という名の呪いを受けてしまった私は…。」


     「彼等に、なにより私自身に突き動かされる!。」


     「合理も不条理も走破しろ!その脚と魂で走破しろ!と。」


     「意味も目的も超えた先に…。求め続け走り続けること自体に…。答えは、ある!。』

    
 みたいなぁ〜ダメ押しがあったら傑作認定だったんですけどねぇ〜。未実装のポッケ君はやはり主人公というより狂言回しなポジションの方が良かったかも。



 というと、本作はそんな大したことない作品なのかというとそうでもなく、こちらは予想通りだが期待を大きく超えてきた作画アニメとしての力が迸ってました!。とにかく作画がもはや異常の域に達しているテンションで、to the topの時に垣間見えた領域の遥か先にいってます。それも、それも演出も手のこりようも過剰も過剰!もうマシマシです。


 昨今では様々な面でソフト化が進んで、作画に於いても平均的に整ってること、スーパーな作画場面でも1カットずつ止め絵としても見れるくらいの丁寧さの方に傾きがちで、荒々しいほどのエネルギーの奔流の如きアニメーションが好きな自分としては、「良い子ちゃん」過ぎる風潮は少々不満でした。


しかし、本作はもうそういった時流の対極も対極です。ぶっとい筆で描いてるような線で表されるオペラオーの勇姿、目も眩むようなエフェクト作画の乱舞、「走る」という下手すると単調なアニメーションになりがちなところ避けるアングルや撮り方の妙、全てがハイパー状態です。



 正直作画が殆ど目的化しているアニメはあんまり好きじゃないのですが、本作はシンプルなストーリーキャラという確かな足場の上で、しかも猛烈なテンションを発散しているので心が離れちゃうことなく最後まで見れました。


 正直凄い傑作!とは太鼓判は押せないですが、時代の波に逆らい我道を征くアニメーター監督の志には打たれたので◯。ウマ娘という大人気コンテンツという後ろ盾、それもストーリー性はそこまで強くない作品だったからこその冒険だったのかもですが、こういうラーメン二郎的、反時代的なまでの熱量と勢いは応援し続けたいので今後も楽しみです。   


(後記)


 フジ汁ブシャーと聞いて4dx版も見に行ってきましたが驚きました…。4dxはある程度見てきたし、最近マッドマックスも見ましたがこれはそれらを遥かに超える4dx最高傑作かもしれません。


 とにかく走っているウマ娘たちの感覚と高揚をここまでより追体験できるようになるとは見事としか言いようがない…。とにかく作画の過剰さと4dxの過剰な演出が組み合って、今までにない喜びに達しています。広やかさが伝わる涼やかな風、高揚を伝える吹き上げる熱風、レース終盤の興奮がいや増す地震並みの揺れ。4dxのアクションの演出さんに初めて頭を垂れたくなりました。


 あらすじやテーマの巧拙さとかではなく、作画の「表現」としての強さが魅力な本作の味わいが明らかにマシマシになってます。あと、やはりフジ先輩は最高!。理屈を超えて体感できる映画、というかアトラクションとして新たな扉を本作は開いてしまったかもしれない。音楽や映像のように「意味」を理解することより、浴びるように「表現」を感じる。もっかい見てもいかも。


(後記の後記)


 結局二回目の4dx。流石に来週には終わっちゃうかもだろうから多分もう二度体験できないかもな鑑賞。


 それにしても、やはり私は何かに愛されている。入プレの複製原画カードは、割とだいたい当たりだなぁ〜と思ってたら唯一微妙だと思ってたオッチャホイことダンツの(好きな方には申し訳ないが)…。

 

投稿 : 2024/11/02
♥ : 12

71.2 2 エンタメで女性向けなアニメランキング2位
ふれる。(アニメ映画)

2024年10月4日
★★★★☆ 3.8 (13)
48人が棚に入れました
同じ島で育った幼なじみの秋と諒と優太は、東京の高田馬場で共同生活を始め、20歳になっても親友同士。それは趣味も個性も違う彼らを、島から連れてきた不思議な生き物「ふれる」がテレパシーのような力で結びつけていたから。彼らは身体に触れてお互いの心の声を聴いていたが、ある事件をきっかけに聴こえなくなる。「ふれる」に隠されたもう一つの力が徐々に明らかになり、3人の友情は大きく揺れ動く。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

私にとっては地味にフィフスインパクト

【物語 4.0点】
監督・長井 龍雪氏、脚本・岡田 麿里氏、
キャラクターデザイン・総作画監督・田中 将賀氏。

『あの花』など秩父を舞台にした青春三部作を終えた同チームが、
次に挑んだのは、東京の古民家でルームシェアする20歳の男女5人が織り成す人間ドラマ。

孤島の不思議生物“ふれる”の力により、互いの心が読めるようになった男子3人。

不思議生物“ふれる”はSNSをキャラクター化した側面もあるでしょうか。
心の声を波風立てないように取捨選択して、わざわざ口に出して、相手の腹を探る。
リアルの面倒なコミュニケーションの手順をすっ飛ばして、
男子3人が心の声で繋がって友情を育めてしまう。

しかも“ふれる”は(※核心的ネタバレ){netabare} 生活が逼迫した孤島でのギスギスしがちな人間関係の円滑化のため、心の声から火種になりそうな要素を自動的に除去する能力を有する。
“ふれる”を介した人間同士は真っ白な信頼の置ける存在と安心できてしまう。
いわば自動ミュート&ブロック機能付きの{/netabare} 超高性能&余計なお世話なSNS媒体。

“ふれる”が便利過ぎて、男子3人は、狭いフィルターバブルの中に閉じこもりがち。
本作に登場する3人以外の他者は、平気で猫を被るし嘘も付く、目的のためなら打算で他人を利用する。
腹の内では何考えているか分からない。一般社会における“普通の人間”たち。
リアルの人間関係の怖さの好表現により、“ふれる”に依存していたい男子3人の尻込みに説得力を持たせています。

そんな男子3人の元に、“ふれる”なんかに頼らずに友情を築いて来た幼馴染の女子2人、秋の空の女心が来訪。
年頃の男女が、ひとつ屋根の下で、混ざり合うことで、恋の予感も醸される中、
“ふれる”を介した3人の関係性にも変化が、便利な“ふれる”に頼り続けて来たしっぺ返しが訪れる。


終盤には“ふれる”の機能の核心に迫るファンタジー展開もありますが、
主軸はリアルで他者と関わる憂鬱さを描いた、
胃もたれしそうな人間ドラマ。

展開は地味だったはずなのに、私は結構惹き込まれました。


【作画 4.5点】
アニメーション制作は『空青』からこの座組と関わっているCloverWorksが続投。

メインの男子3人の表面上の関係性は“ふれる”を介して明快に説明される。
が、それ以外の人間関係については、例えば意味深な表情から、読み解く労力を、
鑑賞者の側も要求されます。

本音を示唆する表情描写という要求にも同スタジオは流石の解答。
取り扱いに難儀するリアルの他者の気持ち悪さが作画でも詳述されており、私も冷や汗をかきました。

料理の作画、プロップデザインを通じたルームシェアの生活感の変化も味でした。
女子2人が加わると、洗面所に歯ブラシが増え、台所に従来レパートリーになかった新たな調味料が加わる。
その過程が何かエロかったですw

この感度で、小物や、男女の生活ルールにまつわるシチュエーションの変化なども捉えると、
説明セリフなど無くとも、恋愛の進展なんかが、ちゃんとアンテナに引っかかって来る。
終始とても読み解きがいのある背景、作画でした。


不思議生物“ふれる”。
トゲをワサワサと震わせながら、動き回る“ふれる”の挙動には、
セリフがない生物とは思えないほどの存在感はありました。
恋愛の波動を媒介したら赤面する様子も愛らしかったです。

ただ、田中 将賀氏が最初に書いた一発で、制作チームの内輪であっさり決まったと言う、
黄色いハリネズミみたいな“ふれる”のキャラデザ。
私はもっと各方面と突き合わせて試行錯誤して、
“ふれる”自体が鑑賞動機になり得る位のマスコット性を追求して欲しかったかなと、
売れ残った“ふれる”ピンズセットを眺めて思いました。


【キャラ 4.0点】
小野田 秋
BARでアルバイトする長身男子。よく鴨居に頭をぶつけている。
両親不仲な家庭環境のギスギスから、口に出して伝えることに徒労感を覚える生い立ち。
他者と仲良くなりたいと思っていても、口より先に手が出てしまう典型的なヘッジホッグジレンマ。
喋りたくないけど繋がりたい。その想いが“ふれる”を呼び寄せる。

祖父江 諒
体育会系な不動産屋で叱り飛ばされる新人サラリーマン。
何とかなるさという感じで3人の関係性を見守る兄貴分なムードメーカーだが、
その軽さがクレームや人間関係トラブルを招くことも。

井ノ原 優太
デザイナー志望の専門学校生。
口に出して伝えるのも面倒だが、手も出せずに卑屈になってしまう。
秋とは違ったタイプのこじらせボッチ気質。

以上のメイン3人に、
姉御肌の樹里さんと、八方美人なトラブル引き寄せ気質の奈南(なな)さんが、関わってトライアングルなどを絡めて来る構図。


“ふれる”バブル内の人間以外は腹の底が読めないのは上述の通りですが、
それ以上に読めないのは人々を媒介してきた“ふれる”の真意。
登場人物の本音は、言葉にすることで概ね解答されますが、
“ふれる”は無口なので、行動については、最後まで鑑賞者の想像に委ねられる形。

ここでどれだけ“ふれる”含めて感情移入できるかが、終盤ファンタジー局面での感動度を左右しますが、
私は少しは言ってくれなきゃ分からないのでイマイチ感動できず。
この辺りが、人間のみならキャラ4.5点だった評点が4.0点に落ち着いた理由です。


【声優 3.5点】
主演・小野田 秋役・キンプリ・永瀬 廉さん。
祖父江 諒役・俳優・坂東 龍汰さん。
井ノ原 優太役・俳優・前田 拳太郎さん。

メイン男子3人のキャストは若手俳優、タレントをオーディション選出。
永瀬さんは映画『ドラえもん のび太と空の理想郷』でアフレコ経験もあり。
近年、若手俳優らを選りすぐると、自分は声優にも憧れていました、
秩父三部作も観てましたとアニメに理解がある才能が集うので確率が高い。

演技はややたどたどしい面もありましたが、
前向きな姿勢が3人の掛け合いからも伝わって来たのでそこは好感しました。

もっともタレント俳優キャスト陣の中で一番良い味出していたのは、
メイン3人の小学校時代の担任・脇田役の皆川 猿時さんの呑んだくれ演技でしたが。


一方で、樹里役には白石 晴香さん、奈南役には石見 舞菜香さん。
男子3人と交錯する女子2人には実力者声優を配する。
普段なら実力差が引っかかる所ですが、
本作は男子より女子の方が一枚上手なので不思議と違和感は少なめでした。

脇で最近もP王国・異端審問官として活躍されている津田 健次郎さんも登場。
お馴染みのネットリボイスで(※核心的ネタバレ){netabare} ビ◯チ{/netabare} とか言わせちゃイケマセンw(一応褒め言葉のつもりですw)


人気タレント俳優陣をメインキャストにすることで、
朝の情報番組でも取り上げられ、まずまずの上映館数と、
私が行った映画館では1番スクリーンもおさえることができた本作。
が、公開初週日曜の席はガラガラ……。

こんなことならキャスト全員アニメ声優でも変わらなかったのでは?
ちょっと親しげにおしゃべりできたからって樹里さんも、奈南さんも
すぐに次の段階に進める程、人間関係は単純ではありませんし、
イケメンアイドルや俳優でホイホイ客が釣れるほど興行は簡単ではありません。
女子はそんなに甘くないと思います。

やはりこのキャスト布陣はベストではないとの私の邪念は消えずこの評点。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は横山 克氏とTeddyLoid氏。
最近の横山氏はピアノ、ストリングス、エレクトロの中でも、
エレクトロ成分アレンジへの傾倒が目立つ印象ですが本作でも同様。
今回は電子サウンドを得意とするTeddyLoid氏と再び絡み、
渋い人間ドラマとは裏腹に、サウンドは意外と気分爽快。

EDはYOASOBI「モノトーン」で初の劇場アニメ主題歌を担当。
今回も脚本・岡田麿里氏書き下ろしの“原作小説”「ふれる。の、前夜」から
歌詞を書き起こしているため作品解像度は上々。

この原作小説、HPでボイスドラマ配信されているので、
本編ではダイジェストされた学生時代の男子3人、
優太が急激に太って、また元に戻った経緯などを知りたい方は、
一聴されてみてはいかがでしょうか。


【余談】
20歳の男子3人メインのビジュアルに今ひとつ鑑賞欲求が湧いてこなかった俺氏。
引っかかったのが“ふれる”の刺々しいデザイン。
これTVアニメ版『エヴァンゲリオン』でも登場したヘッジホッグジレンマ(ハリネズミのジレンマ)を具現化したような風貌だな。
それで気になって劇場に足を運んだ次第。

『エヴァ』は数次に亘るインパクトの末、
大人になったシンジ君が他者との関係に向き合う覚悟が決まっていくお話でしたが。
大人になり切れない自分にはシンジ君に取り残された感も抱えていまして(苦笑)

そんな私にとって完全に分かり合えない他者の気持ち悪さや、
他者との心の境界が無くなる恐怖などに、改めて向き合った本作は、
東京の一角、相当、小規模ながらフィフスインパクトだったのかなとも感じました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 9

あと さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人は1人では生きていけない、それでも1人で生きていく

 「超平和バスターズ」最新作。今まで思春期の男女関係の衝突やすれ違いを描いてきた岡田麿里さんが描く青年期に変化する人間関係と心の触れ合いのヒューマンドラマ。主人公秋くんが察しの悪いコミュ障で人に触れ合うことが苦手ながら寂しさを嫌う、という現代の若者らしい設定。されどイケメン。タイトルにもあるふれる。という可愛い謎生物によって秘密を共有しながら相手に自分の心を伝えられる能力で男3人組の仲を強固にし、田舎の島から上京し新生活を始め、環境や人間関係、やりたいことが変わってくる変化の過程が丁寧に描かれる。ファンタジーを生かした設定や生々しい会話をするキャラクターたち、コミュ障故になかなか表現もままならず言いたいことも伝えられず、何をやっても上手くいかない生活が続き衝突の末、絶望的な状況にまで陥る。ここまでストレスを溜めるのも今までないが、あくまでこの主人公たちの衝突はふれる。により起こるものというのも面白い。
 作品自体は田中将賀さんのいつものキャラクターデザインで非常に見覚えがある絵なのだが、キャラに魅力がないというか、可愛いキャラがいないのは女性向けなのかとも思うが、それであっても女性キャラの性格が悪い意味でいい感じ(見ればわかります)なのはちょっとキツいんじゃないのか。終盤にかける盛り上がりは新海誠風味なんだけど、あくまでローファンタジーでエンタメ映画にはならないところはあった。岡田麿里さんの脚本は100点。これまた素晴らしい人間関係の衝突にどうにもならない苦悩。まとめ方もメッセージ性も上手く畳んだ印象だった。
 総評としては抜群に面白い映画では無いけど何か世界の見方が変わる映画だった。良作ではあるけど、まあおすすめはできないし、何度も見れるような映画でもない…。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 3
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