ぺー さんの感想・評価
4.3
人生で最もへたくそな時期に捧ぐ
岡田麿里氏が原作から絡んで脚本やって、な作品。原作は未読です。
タイトルからして生々しく、しかも思春期男女(特に女)の心理描写には定評のある岡田氏の作品。
「岡田作品は苦手だけど荒乙は面白い」との推薦を複数いただいてて、楽しみにしてました。
作品自体は思春期の“性”をテーマに、右往左往する文芸部の女子高生5名が各々の答えらしきものを見つけるまでを追った青春群像劇です。
吾輩は○○である 名前はまだない
整理しきれぬ名付けもできぬ感情は存在し、その多くは経験の蓄積によって落とし所が見つかるもの。
青春群像劇では私たちがかつて通過してきたであろう感情や衝動なりを作品の中に見つけて、自分の思考パターンや嗜好のルーツとなった立ち位置を確認する作業でもあります。
高校を卒業すれば進路はバラバラ。得られる経験も分岐して汎用性に乏しいことが、高校卒業以降を追った作品が少ない理由なのかもしれません。
そして汎用性があるようなないような題材が今回のテーマ。
“性”に対する考え方は個人によって差が相当あるもの。
そんな本人にしかわかり得ぬ感情。いや本人でさえわからない感情について同じようにバラバラだろう相手の感情とを擦り合わせる難儀なことを人生で初めてする作業が思春期世代の恋なんだと思います。
個人差があるのは当然で、ひとつの事象とっても男女で考え方も捉え方も違うことを想像できなかったり、違いはあると自覚しても何がなんなのか袋小路に迷い込んだり。
例えばこの連載は別冊マガジンですが『別マ』と言われて男子は『マガジン』を女子は『マーガレット』を想像し、お互いの前提がずれてる中言葉のキャッチボールを交わしてるうちに悶々としてしまう。
ほんの少し先になれば『マガジン』も『マーガレット』もあるって気づくものです。それがなかなかそうはならないもどかしさを作品で表現することは難儀なことでしょう。
前置き長くなりましたが、つまり、
これまで数多語られてきたけどまとめられんのかいな?
好きだ惚れたから一層も二層も踏み込んで、本来同じカテゴリーなのにあえて切り離すことで物語を作りやすくしていた“性”なるものに焦点を当てちゃった本作。
個人差が激しいネタについて、きっとそんな時期を通過したであろう私たちにリアルな質感をもって届けてくれるかに着目したわけであります。
結果、文芸部員5名それぞれに異なる立ち位置を与え、かつそれぞれに対となるパートナーをあてがい、パズルのピースをはめていくようなストーリーに仕上がっていました。男はあくまで彼女たちを輝かせるための舞台装置。主役はあくまで乙女たちです。
よくパズル組めたな~。率直な感想です。一覧は以下。当然1対1とは限らないのですが詳細は本編参照。
【文芸部員】
小野寺和紗(CV河野ひより)
菅原新菜(CV安済知佳)
曾根崎り香(CV上坂すみれ)
須藤百々子(CV麻倉もも)
本郷ひと葉(CV黒沢ともよ)
【パートナー(仮)】
典元泉(CV土屋神葉):ネタバレレビューを読む
天城駿(CV広瀬裕也):ネタバレレビューを読む
山岸知明(CV福山潤):ネタバレレビューを読む
三枝久(CV 咲野俊介):ネタバレレビューを読む
杉本悟(CV花江夏樹):ネタバレレビューを読む
実のところパズルが組み立てられた時点でおおむね満足しています。いいもの見せてもらいました。
リアルな質感があったかどうかは個人差によるものはあるでしょう。具体的にはこんなところが良かったなぁと私が思ったところは以下、
■OPを飛ばしちゃダメ
曲中に文芸部員たちの独白みたいな合いの手が入るわけですが、全OP一定ではなく変わっていきます。
作品世界をよく表したOPなので飛ばすのももったいないのもありーの、その回冒頭から集中を促す効果がありました。
■結局全員荒ぶる
キャラの掘り下げが全員できてたという意味ではなく、5名ともきちんと荒ぶってました。
■ざわつく
岡田脚本の特色なのか、円満にしときゃいーのにそれ要るかな?ってネタを挟んでおり、またそれがリアルな質感がありました。
安心安全なピュアピュアな恋愛を期待するのも野暮というほどさらりと毒を盛り込んできます。
ネタバレレビューを読む
最初はインパクトのある下ネタという飛び道具を織り交ぜながら、「おいおい大丈夫かよ」とくぎ付けになり、適度に乙女たちが荒ぶりながら最後の最後でぶつかり合ってという青春ど真ん中をいく良作でした。
端的に言えば序盤から終盤ネタバレレビューを読む までのわりと緻密な展開と打って変わっての後半の勢い。
慌てて畳んだ感が無くもないと言えますが、ここは『荒ぶる』感が出ていたと好意的に解釈してます。
ネタバレレビューを読む
個人差ありまくりの“性”の捉え方に関して、本作でのそれについてはノーコメント。
ただしきっと、登場キャラのうちに「あ、これ私だ!僕だ!」な子だったり言動行動が見つかるのではないか?と思えるほど網羅性は高いように見えますね。
現在進行形の方はがっつり共感して。はるか彼方の御仁は軽くキュン死しながら悶え狂いましょう。私も悶えました。おすすめです。
※ネタバレ所感
■パズルのピースについて
ほうぼう荒ぶっておきながらしっかり着地できたのって、主演女優5名と対になった野郎どもとが似たもの同士だったからではないかと思います。
・和沙VS泉
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・曾根崎先輩VS天城
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・本郷ちゃんVSミロ
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・菅原氏VS三枝
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・もーちんVS杉本
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合ってるかどうかは知りませぬ。それは違うさーというのも笑いながらツッコんでみてください。
最後に、、、
なんだかんだ本郷先輩の今後が気になるところです。
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視聴時期:2019年7月~9月 リアタイ視聴
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2019.09.28 初稿
2020.04.10 タイトル修正/修正