nyaro さんの感想・評価
3.0
3巻 設定は多いけど使っているのは人間とアミクスの感情問題だけ。
1話 9割方を置いてけぼりにする第1話。一応アシモフ的SFです。
{netabare} あらすじを見て、SF刑事もの…サイバーパンクの匂いがするので楽しみにしていました。
あらすじでは「秘密 トップシークレット」みたいな感じですけど、うなじからのコードを見ると「攻殻機動隊」のような感じです。アミクスというのがロボットだとすると、ロボット3原則のような「敬愛規律」というのがあるのでアシモフのロボットものが入ってきそうです。ロボットと人間のバディ刑事ものだとすると「鋼鉄都市」のような可能性もあります。
冒頭は空港にビガという少女を見送りに行っています。そして、いきなり通り魔事件のようなシーンが入って、ダリアという女性の事件が発生します。ハロルドというアミクスがいきなり容疑者になっています。
で、RFモデルというアミクスの問題として話が展開して行き、プログラムと敬愛規律の問題が出てきます。ペテルブルグの悪夢という事件ですね。スティーブというアミクスが、捜査官を打ったという事例があったという話が唐突に出てきます。
デンサクという作業が脳へのダイブの様です。デンサク官と補助官、バディがいないと操作ができないという設定。ここがこの作品のSF的な骨子になりそうです。ダイブして記憶を探る作業。記憶ではなく抽象的な夢まで絡んでくるようです。マービンに二コラ、レクシー博士。固有名詞が沢山出てきます。ヒロインはアミクスが嫌い、嫌いだったようです。
これは正直言えば、9割方を置いていく展開だったと思います。キャラ、世界観、設定、そもそも事件の何が不思議なのか。何もわからないまま、怒涛のように1話が過ぎてしまいました。これはかなりの悪手だと思います。私はこうして文章にまとめながら見たので、何となくストーリーや世界観が見えなくはないですが、それでも、まったく手がかりというかとっかかりがありません。期待したサイバーパンク感もあまりありません。それ故にどこに魅力を感じればいいか戸惑っています。現状では、キャラの誰の視点に乗っかれるのかすらわかりません。
今1話で起きている事件は、通常ならヒロインとハロルドの関係性の構築をして、1つか2つ事件を解決したあと、バディとして視聴者が認知してから始まるような事件です。それをいきなり説明も無しに「このモデルは欠陥品だ」から始めるのは正直、構成としては上手くないと感じます。
SFものですので、3話までは付き合いたいと思います。多分導入の事件はそこまででケリをつけたいので、この無茶な導入なのでしょう。
追記 でもそうか…アシモフの「鋼鉄都市」以降のロボットものは、三原則にかかわらず、ロボットが殺人に関与するような話が多いので、そこを狙ったのかもしれません。「敬愛規律」でいう「敬愛」とは何か。人間の定義の問題、人間を本質的に敬い愛することとはどういうことか、トロッコ問題のような何か、人間と人類の概念をどう処理するのか、などの話が展開するのかもしれません。
だったらなおのこと、アミクスがロボットと人間性の狭間にあるようなエピソードや、詳細な設定を理解させるエピソードが必要だったと思いますけどね。
あとは、三原則で嫌な記憶は「メタリックルージュ」ですねえ。あれはまあ…ですので、アシモフに挑戦するハードルをどう乗り越えてくるのか。不安な1話でした。
再追記 原作1巻と2巻の冒頭読みました。
3巻まで購入。1巻の内容は本シリーズの導入のような位置づけです。2巻のアニメ化された部分を確認。アニメを見るのを優先するか、この後を読んでしまうかは今考慮中です。
1巻の話は「鋼鉄都市」というより同シリーズの3作目「夜明けのロボット」をモチーフにしていると思われます。(「夜明けのロボット」はたしか絶版なので入手するにしても古書になるでしょう)
陽電子頭脳の第1人者であるハンファストルフ博士と娘のヴァジリア博士の確執がヒエダ親子と重なります。ジスカルドというロボットの存在は「姉」だし、RFシリーズはヒューマンフォームロボットのダニールとジャンダーのことでしょう。
グレディアという未亡人とジャンダーの関係は、ダリアという未亡人とハロルドとの関係。ファストルフ博士と対立するアマディロ博士の関係はマトイ父とテイラーの関係でしょう。
主人公のイライジャベイリが地球にいるときは喫煙者でした。ヒロインは…本作だとタバコを吸ってないのかな?1巻では電子タバコを吸っていて、その描写が丁寧なのはそのせいでしょう。
これらの内容を詳しく書くと1巻のネタバレになるのでやめておきますが、その構造が「夜明けのロボット」をそのまま持ちこんだような感じで、多大なる影響を受けたのは明らかでした。
そして、何が言いたいのかと言うと、マトイとハロルドの関係性のみならず、その行動原理や内面、バックグラウンド、世界観などは1巻を読んで初めて理解できることです。
特にRFタイプの特殊性と一般のアミクスの違い、社会におけるRFタイプへの接し方が前提としてわかっていないと「敬愛規律」そのものをテーマにするだろうストーリーを理解するのはかなり難しいと思います。
2巻は冒頭しか読んでいないので、なんとも言えませんが、RFタイプの高性能な感情表現が人間に与える影響が生み出す悲劇として、描かれるような感じです。性愛まで行き着くのかわかりませんが「夜明けのロボット」をテーマにしているなら、ある程度の人間とロボットの愛情と肉体関係まで行くだろうし、それが人間を傷つけるジレンマの問題も出てくると思います。
そうなると…うーん、1巻を飛ばして大丈夫…でしょうか?ビガというキャラが配置された意味とか、ヒロインの内面の出自や弱さ、RFの特殊性、世界観を理解しないまま突き進むのでしょうか。
そして1番の問題は1巻を読んだとしても、ロボット、AIもののSFを読む気で読まないと、未来刑事バディもので終わってしまいます。テーマを汲むにはSF素養が必要な気がしました。そこを平易に解釈しやすいよう見せるのがアニメの役割だと思うのですが…これで出来がイマイチな印象だと、ちょっと原作者が可哀そうかも。{/netabare}
2話 SFではなくサスペンスメロドラマかな。思ったよりは…ですね。
{netabare} 原作6巻途中まで読みました。もちろんネタバレはしませんが、印象としてこのシリーズはSFではないということです。
SF風ではあるし、テーマ的にAIの感情問題や人とのつながりを扱っています。
1話と1巻を読んだ時点で感じたとおりアイザックアシモフの「夜明けのロボット」の印象が強いです。ただ、その中身は巻を追うごとに、どんどんメロドラマつまり情緒的になってゆきます。人間とロボットの中間として高性能のAIロボットを配置した結果起こる人間とロボットの葛藤ですが、そこにSF的な深味はあまり感じられません。
イケメンロボットハーレム+残念美少女の構造から、印象としては女性作家か?と思わなくはないですが、あるいは男性でもハードSFや科学記事のインプットが少ないSF好き、アニメレベルのSFを楽しんできた人という気がします。
中身は、ブラックボックスの問題もあります。チューリングテストですね。人間と同じ反応をするAIは人間と同じ思考をしているのか問題です。それと「ビートレス」で言えば人型のロボットが人間の感情に与える影響、つまり「アナログハック」という点があります。そこだけとればSFです。
ただ、そういう借り物のガワは一生懸命SF風にしているんですけど…まあ、これ以上は書評になりますのでやめておきます。サスペンスとしてはわからなくはないです。
逆に言えば、なぜ1巻をカットしたか。それは1巻だけは「夜明けのロボット」の題材を使っているのでSFになっているんです。なので、2巻以降とは小説としてのカテゴリーが変わってしまっている気がします。サスペンスメロドラマと言えばいいのでしょうか。
4巻までやると一区切りなので、という面もあるでしょう。だから尺の関係で1巻を飛ばしたのかも。それでも、なんとなく1巻と2巻以降のつなぎは悪い気はしました。少し残念な展開かな。{/netabare}
3巻 設定は多いけど使っているのは人間とアミクスの感情問題だけ。
要するに中断しますというレビューですが、原作6巻途中の状況で整理がてらネタバレ的に記載します。最大の問題は表題の通りです。
この話の世界観では、ユアフォルマという脳の拡張技術、アミクスというAIロボット、RFシリーズというアミクスがいる。アミクスには敬愛規律という人間に服従し傷つけない何かが組み込まれている。
設定は、電索官という人の記憶にダイブできる技能者がいる。そのためには特殊な能力と補助官という存在が必要。ヒエダは複数の人間に同時にダイブできる唯一の特殊技能を持っている。それを補助できるのは人間には無理でそのためにハロルドと組んでいる。
ハロルドは昔捜査官として人間のパートナーがいて、その人物はハロルドの目の前で殺されている。ペテルスブルグの悪夢。その奥さんのダリアと2人で暮らしている。
{netabare} RF型は3体作成され、表面的には敬愛規律の規格を満たしているが、実はレクシーによって隠ぺいされたブラックボックスの内部構造がある。RFシリーズは昔売り飛ばされて野良アミクスになっていた。
ヒエダは父親にネグレクトの虐待を受けている。電子的な架空の姉に依存している。その変わりとしてハロルドに頼っている。
機械派と機械否定派という、ユアフォルマの肯定・否定派に分かれている。また、アミクスの肯定、否定にも重なっている。機械否定派の住居エリアは別れていて、ユアフォルマのネットワークが使えない。
人間が自分の脳内に検索できる膨大な情報を抱えると、脳の機能が違う形になってしまう可能性の示唆がある。
以前の事件でビガという少女がいてこれはユアフォルマに影響を与えるドラッグ的なものが作れる。以前はドラッグに手を染めていて、ヒエダとハロルドに捜索されている。ハロルドに対して恋愛感情を持っている。
後に、これらの世界観に何かを仕掛けている存在が知られていなかった人物が登場します。モリアーティーみたいなすべての黒幕のような感じで。ただ、それは多分アニメの範囲から超えてきます。
ちょっと思いつくだけでこれだけの設定があります。テーマとしては、アミクスの敬愛規律が本当に機能しているのかという問題、人間と同じ思考・感情を持っているのか問題(ブラックボックス)、機械肯定・否定の問題。
ヒエダの父親に対するコンプレックス、疑似姉への依存とハロルドへの感情の問題があります。感情問題はダリアとビガにもあります。 {/netabare}
この作品がSFではないという理由は、これらの膨大な設定のうち、ブラックボックス問題=ハロルドの恋愛感情として、ヒエダとハロルドの関係性にテーマが矮小化されてしまうことです。お互いの感情の探り合いだけで6巻まで過ぎてしまいます。それゆえに、イケメンロボットとの恋愛ということで、メロドラマとしてはいいんですけどSFとは言えません。いろんな作品からの借り物のSF設定を使いきれていない感じがします。
そして最大の問題は、電索という捜査方法がほぼ機能していないことです。もちろん捜査には使っていますが、そこから人間の本質とか機械との付き合い方のようなテーマ性が現状では扱えていません。要するにハロルドとヒエダをつなぐ言い訳にしかなっていません。
作中でもいろいろ話を工夫しますが、それは状況の工夫であってSF的な工夫ではありません。
ビガやダリアとの関係性が使いこなせないのも、ハロルド=ヒエダに内容が固定されているので発展性がないです。
まあ、そういうわけでSFとしてはそれほど楽しめる作品ではないし、原作を読んだので、もういいかなという気持ちもあります。が、アニメとしてはどうなのかという気持ちと拮抗しています。
もちろん、アニメとしての説明不足に問題があるのは事実ですが、この作品は前提条件として実はSF的な盛り上がりがあまりありません。ダラダラとヒエダの悩みとハロルドの葛藤を見るメロドラマです。ブラックボックス問題は残りますが、扱うのは感情問題で同じことに帰結します。ですのでアニメ化のレベルが悪いのか、原作が悪いのかは判断が付かないところです。
1巻はアシモフ、攻殻機動隊、洗脳調査などいろんなSF要素があって、基本SFです。ですが、2巻以降は上記のようにメロドラマなので、1巻の設定を知る事にあまり意味がないし、余計な脳みそを使わせるので、切らざるを得ないというジレンマはあった気がします。要するに表層の世界観と設定だけ2巻以降のアニメ化で説明するほうが、分かりやすくなるという判断はわからなくはないです。
うーん、やっぱり一回中断かなあ。今季はSFでいいのが多いし。ただ、ある程度進んだところでチェックはすると思います。