ようす さんの感想・評価
3.9
理想郷のような都市の、真の姿と闇に立ち向かう少年たち。
「バッテリー」で有名な
あさのさつこさんの小説を原作とするアニメ。
「NO.6」は児童文学の中でも
青年前期の子どもを対象とした小説だったと思います。
なぜこんなことを覚えているのかと言うと、
中学生の頃「バッテリー」にドハマリし、
あさのあつこさんの小説を読み漁っていたからですw
当時の私は「バッテリー」のような
爽やかな純文学をよく読んでいたので、
この「NO.6」を初めて読んだときは
スリル満点で刺激が強い作風に、もう大興奮でした。
さらに中学校の図書館司書の先生に誘われ、
あさのあつこさんと直接会って話せる機会もいただき!
緊張と口下手さゆえ、
この作品をいかに好きかということをきちんと伝えられなかったこと、
今でも悔やんでいますww
さて、そんな思い出があるもので、
このアニメを見るのは正直かなりためらいました。
小説を読んで傑作だと思った当時の想いを大事にしたくて。
自分が読んで感じた世界観を大事にしていたくて…。
今でも覚えているあの時の興奮や、
なんとなく抱えている登場人物たちの像を
壊してしまうことになるのではないか…。
そんな不安があったからです。
結論としては、
見て後悔はありませんでした。
もちろん、初めはキャラデザに違和感ありありでしたけど。
印象的だと思っていたシーンもあっさりで拍子抜けでしたけど。
だけど、久しぶりにストーリーに触れて
あの時感じた面白さは本物だったと確信が持てましたし、
やっぱりこの作品が好きだな、と改めて思えました。
原作より簡略化されている印象だったので、
今度原作も読んでみよう♪
(中学卒業後は本から離れてしまったため、
この原作も読むのを途中でやめてしまっていたので…^^;)
前置きが長くてすみません^^;
全11話です。
● ストーリー
NO.6(ナンバーシックス)と呼ばれる近未来都市。
都市の英才教育を受け、何不自由ない生活を送ってきた紫苑(しおん)。
しかし、そんな生活にどこか満たされない気持ちも持っていた。
ある嵐の夜、
犯罪者として追われていたネズミと名乗る少年を部屋にかくまう。
その出会いが、
自分に足りない何かを満たしてくれた気がした。
そして数年後、
紫苑はネズミと再会を果たす。
この都市の謎、迫る恐怖に対する真実を求めて
ネズミと共に歩む道を選ぶ。
小説全9巻に対して、11話と話数が短いので、
きちんと終わりを迎えられるのか、とても不安に思っていましたが、
11話できれいに収まっていました。
もちろん、省略されているエピソードもたくさんありますが。
それでも十分面白かったと思います♪
引き込まれたし、続きが気になって仕方がありませんでした。
毎回、EDの曲を使った引きも上手だったしなー。
≪ 友情を越えた感情 ≫
あさのあつこさんの小説は、
男の子2人が主人公な作品が多い気がします。
この「NO.6」もそうです。
紫苑とネズミ。
みんなが幸せに暮らせる理想論を大真面目に語り、
ネズミと分かり合いたいと願う紫苑と、
現実の厳しさと理想論だけでは生きていけないことを知っているが、
紫苑という人物に惹かれてしまうネズミ。
天然で素直な紫苑と、
紫苑を大切に想う気持ちを認めたくないツンデレなネズミw
あさのあつこさんは
ただ単に男の子の友情が好きなだけかもしれませんが、
私はいつもBLな空気を感じ取ってしまうんだよなー。笑
今回も友情を越え、親友を越え、
さらなる強い絆を感じました。笑
とても自然に世界観に取り込まれているので、
違和感はないのですけどね。
むしろ、
2人の強い絆を強く感じられるのですけどね。
≪ NO.6という都市 ≫
NO.6は徹底した管理社会。
少しでもNO.6に対して忠誠がない思われる存在は、
処分の対象となる。
一見あらゆることに満たされているような生活だけど、
裏では精神的な束縛がある。そんな社会です。
日本もいつかこんな社会になってしまうかも…と
ゾッとするようなところがあります。
原作の1巻が刊行されたのは15年ほど前ですが、
その時から日本の社会情勢も変化しています。
例えば共謀罪法案。
例えば道徳の教科化。
「ここにはこんな恐怖が…。」という話を聞きますが、
結局私には難しいことはよくわかりません^^;
だけど、考えることをやめ、政治への関心がなくなり、
何でも思うようにさせていると、
気が付いた時にはNO.6のような社会になっているかもしれないな、
という恐怖は感じました。
● キャラクター
原作を読んだとき、
私はキャラクターに強く惹かれました。
それは恋とか、ときめきとか、
そういう惹かれ方ではなく。
紫苑には柔らかさの中の強さ、
ネズミには影の中の信念と優しさ。
それは、アニメの中でも感じることができました。
そしてやっぱり、2人に惹かれました。
紫苑(cv.梶裕貴)とネズミ(cv.細谷佳正)というキャストもよかった♪
ネズミの歌声、
とてもよかったわー♪
● 音楽
【 OP「Spell」/ LAMA 】
嫌いではないけれど、
特別好きでもありません。笑
作品の世界観には合っているかな。
【 ED「六等星の夜」/ Aimer 】
私はこちらの方が好きでした♪
毎話、切ない終わり方が多かったので、
その切なさをより引き立てていた曲だと感じました。
● まとめ
やっぱりストーリーが面白いなと再確認。
アニメだと展開がさくさく進むので、
むしろ見やすくてよかったかも♪
最終話を観終わった後は、
なんともいえない余韻でいっぱいでした。
いい作品だったとは思う。
だけど物足りないもどかしさもある。
その物足りなさは、もっともっと、
最終話で感じた余韻に浸っていたかったからかもしれない。
後日談があればよかったのになー、と思っていたら、
どうやら後日談はアニメ化の後に刊行されていたのですね。
気になります!