ようす さんの感想・評価
4.1
「ロミオの涙や笑顔を吸い込んだ、ミラノの空。それは、目に染みるような深く青い空でした。」
「世界名作劇場」の第21作目。
1995年に放送された作品です。
名前はよく聞いていたけれど、
どんな話なのかは全く知らなかったので、
いつか観たいなあと思っていたのです。
イメージとして不幸な主人公の、
悲しいお話だと思っていたので、
やや身構えていました。
(悲しいだけの話は苦手なので…)
しかし、全話見終わってみると、心の中に残ったのは、清々しくて温かい、生きていく勇気のようなものでした。
「名作劇場」と呼ばれるシリーズ名も納得です。
全33話です。
● ストーリー
11歳の少年ロミオはスイスのソノーニョ村で暮らしている。
今年は村全体の作物が不作。
家は貧しいけれど、家族と笑顔いっぱいに幸せに過ごしていた。
村に“死神”と呼ばれる男・ルイニが訪れ、
ロミオを売らないかと父親をそそのかすが、
父は頑なに拒み続けた。
そして死神はロミオの家の畑を燃やし、
父親はその時に負った怪我で生死を彷徨う。
ロミオは自ら死神に交渉を持ちかけ、
医者を呼んで父を治療するお金を得る代わりに、
ミラノへ煙突掃除の仕事へ向かうことにする。
春になれば村へ帰れると信じて…。
行動力があって家族思いの優しいロミオ。
思い合っている家族が離れ離れになってしまうという展開に、
最初の3話は毎回涙してました(´;ω;`)
そしてロミオはミラノへ行き、
そこで煙突掃除夫として働く中で、
様々な人や仲間と出会う。
序盤の説明や描写ではひどい扱いを受け、
春に帰ってくることは難しそうでしたが、
作品の雰囲気は悲しみや苦しみだけで終わらず、
辛いことや悲しみを乗り越えていく強さの方が多く感じられました。
物語のざっくりとした序盤の展開としては、
・ミラノへ向かう
・ミラノに着いて煙突掃除夫として買われる
・買われた家では働かされるも食事さえ与えられない
という不幸の連続です。
しかしロミオは負けません。
持ち前の素直さと心の強さで、
彼を取り巻く状況が少しずつ変わっていきます。
その過程で出会うのが、
ロミオの心を支える人たち。
特に、ミラノへ向かう道中で出会った少年アルフレドは、
ロミオの親友としてかけがえのない存在です。
この作品は「黒い兄弟」という小説が原作です。
(未読なのでwikiで情報をちらっと見た程度。)
“黒い兄弟”は、作中で煙突掃除夫の少年たちが集まって結成する同盟です。
提案者&リーダーはアルフレド。
町の不良集団・狼団(おおかみだん)に対抗すべく、
仲間が困っているときはみんなで助け合おうという仲間。
黒い兄弟が結成されるのは物語の中盤あたり。
そこからがこの作品の本領発揮。
原作とはかなり雰囲気も展開も変えられているようですが、
アニメの展開の方がかなりマイルドに明るくなっているようですね。
≪ ロミオがミラノで得たもの ≫
覚悟を決めてミラノへやってきたロミオ。
最初は辛いことばかり。
しかし、ミラノにいた半年の間にロミオはとても成長しました。
それは人との出会いがあったから。
いじわるをする人もたくさんいた。
だけど、親切な人にも、助け合える仲間にも出会えた。
親切な人や仲間というのは、一緒にいるだけで自分の心を支えてくれる。頑張ろうという勇気をくれる。
そういう人たちから、作品に触れている私たちもまた、かけがえのないことを学ぶ。
仲間の大切さ、学ぶことの尊さ、人に優しくあることの心の美しさ。
働くことの大変さや、子どもらしく過ごせることの幸せ、
お腹いっぱい食べられること、家族と一緒にいられることの幸せ。
たとえ理想とする暮らしが手に入らなくても、
人として大切なことを忘れずに生きる心の強さ。
大人が「名作劇場」と名付けたくなるのもよくわかる。
子どもに感じてほしい要素がいろいろとあるし、
大人が見ても感じることがたくさんありました。
そしてロミオは、広がった世界の先に夢を持つ。
大人になったら…。
≪ 子どもの頃に持った夢 ≫
私が子どもの頃はわくわくスリルのあることが好きで、
旅人とか小説家とか探偵とか、
そういうどこか自由な大人に憧れを持っていました。
成長するにつれて現実的な目標を見つけなくてはいけなくて、
でも「これになりたい!」という決定的なものはなくて。
そして行きついたのが「人を幸せにしたいな」という夢でした。
そこへ導いてくれたのもまた、いろいろな人たちとの出会いでした。
それが今の仕事につながり、結果として夢を叶える舞台には立てているはずなのに、最近はどうも後ろ向きで。
目の前の仕事をこなすことに必死で、
とりあえず失敗しないように、誰かに嫌な思いをさせないように、
淡々とこなせばいいかと投げやりになってしまっていました。
同じ仕事をしていても、情熱を持っている人ほど苦しむんですよね、悲しいことに。笑
多分大人はこうやって夢や情熱をなくしていく…。
夢を持ったロミオやアルフレドの姿を見ていると、
今の自分は昔の自分の夢に恥じない生き方ができているのかな、と、
忘れていた気持ちを思い出させてくれました。
きっと人を幸せにするというのは、
人に希望を与えるということ。
希望を与え、希望をもらった人がまた別の誰かに希望を与えたいと願う…。そういう世界になればいいな。そして今まで希望をもらってきた自分も、次は希望を与えられる存在でいたいな。
勇気の炎、ロミオ達からしっかり受け取りました^^
● キャラクター
ロミオは素直で優しい少年、男の子らしくやんちゃでにぎやか、
決めたことはやり通す心の強さを持っています。
アルフレドは賢さや優しさによって
たくさんの人を惹きつけるカリスマ性の持ち主。
そんな二人が参加する“黒い兄弟”には、
10人程度の煙突掃除夫の少年たちが集っている。
仲間達と絆を強め、助け合うことの素晴らしさや仲間の尊さを描いたストーリー。
もちろんロミオ自身の頑張りがたくさんあったけれど、
黒い兄弟がいたから、いろんなことを乗り越えられた。
いろんな人物が登場したけれど、
様々な出会いがロミオ達を大きくしたんだと思うと、
最終話を見終わった今、感慨深いものがあります。
あと、ロミオが最終的に誰と結婚するのかが最後まで気になっていましたw
● 音楽
【 OP「空へ…」/ 笠原弘子 】
こんな名曲を今まで知らなかったなんて!
切なく、しっとりとした曲調は青い空がよく似合う。
ロミオの心の強さを表現しているような歌詞も素晴らしい。
大好きです。
【 ED「Si Si Ciao 〜ロマナの丘で〜」/ 笠原弘子 】
こちらは楽しい曲♪
足踏みを続けるロミオと跳ね続けるピッコロ(オコジョ)が可愛い。
● まとめ
原作は少年売買や過酷な労働を描いているようです。
アニメではそこまで強い描写はありませんでしたが、
最終話のナレーションが心に残っています。↓↓
(ストーリーのネタバレには影響しませんが、一応とじておきますね。)
{netabare}
「今もなお、戦争や貧困によって困難な生き方を強いられている子ども達が世界中にいることは変わりありません。ロミオが愛した青い空の下で、子どもたち一人ひとりが尊く、自由であれと願ってやみません。」
{/netabare}
この作品が教えてくれることは山のようにありますが、これこそが一番大きな願いで、力を合わせて叶えるべき夢なのです。
なんだか語り尽くせていない気がするのですが、
とにかくとてもいい作品でした。
大好きな作品となりました。