昭和で東京なおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの昭和で東京な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月27日の時点で一番の昭和で東京なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

81.2 1 昭和で東京なアニメランキング1位
昭和元禄落語心中(TVアニメ動画)

2016年冬アニメ
★★★★☆ 4.0 (905)
4165人が棚に入れました
昭和の落語界を舞台にした噺家の愛おしき素顔と業を描いた作品

師匠と交わした約束を 胸にしまって芸を磨き ついに与太郎、真打に。 射止めた名跡は三代目助六。 八雲師匠の為め、助六の血を継ぐ小夏の為め、 焦がれて手にしたはずなのに、 おのれの落語が揺るぎだす――。 八雲と小夏、二人の中の助六を変える為めの 与太郎の落語とは――!?

声優・キャラクター
関智一、石田彰、山寺宏一、小林ゆう、林原めぐみ、家中宏、牛山茂、山口勝平、加瀬康之、須藤翔、茶風林、遊佐浩二、林家しん平
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

芸道修行と愛憎トライアングル - BLコミック出身作家、畏(おそ)るべし -

「落語」「人情噺」「ホモ/BL(※因みにこれは誤情報です)」といったタグがついている本作を視聴する予定は、元々全くなかったのですが、2016年放送・上映アニメの個人的BEST10を作ろうとして、同年の本サイト作品ランキングを確認したところ、本作が第14位(2017/1/31時点)に入っており、かつ、総合 4.0 (物語も 4.0)という高い評価を取っていたので、これを見ないでBEST10を作るのは拙(まず)いだろう・・・と考え直して、さらっと流すつもりで視聴を始めました。

そうしたら、これが第1話(※実質2話分のスペシャル回)から退屈する暇なしの面白さで、ラスト手前(第12話)の山場+謎の回収もピッタリ決まり、最終第13話は投げっぱなしだった第1話ラストに確り話を繋げて、かつ今後の新展開をも期待させる上手い締めくくり方で、見終わった直後から「これはもう一回、最初から確り見直さなければ・・・」という思いに駆られて、そのまま2周目に突入してしまいました。

そうやって、

(1) 1周目は、全体シナリオの整合性が確り保たれている作品なのか?にとくに留意して完走し(=シナリオ・チェック型視聴)、
(2) 2周目は、今度はシナリオは頭に入っているので、それを踏まえて個々の登場キャラクターが、各々のシーンでどのような心の動きをしているのか?そして、そうした心情が果たして映像として過不足なく描き出されている作品なのか?を見極めることに留意して完走し(=感情描写チェック型視聴)、
(3) さらに念を入れての3周目は、OP/EDや、作品中に登場する小ネタ(落語の演目内容や登場キャラクターたちがふと口にする言葉など)に、何か隠された/見落としている含意がないか?等を慎重に見極めつつ、もう一度、シナリオ&感情描写の両方を総合的に確認していく気持ちで完走して(=総まとめ的視聴)、

・・・結局、見始める前は考えもしなかった3周完走となってしまいました。
こうした3周コンプは、2016年放送のTVアニメでは、『Re:ゼロから始める異世界生活』(※個人評価 ★★ 4.6)、『響け!ユーフォニアム2』(※個人評価 ★★ 4.8)に続いて3作品目で、本作に関しては、

①全体シナリオの整合性が確り取れており、
②個々の登場キャラクターの感情描写も的確で、
③なおかつ、OP/EDや個々の会話に秘められた謎解き・含意も楽しめる、

・・・三拍子揃った《優秀作》と認定して、個人評価を『Re:ゼロ』と同点の ★★ 4.6 とすることにしました。


◆作品内容

本作の原作者(雲田はるこ氏)はBLコミック作家として商業デビューした方とのことですが、本作自体は、決して《ホモ/BL作品》ではありません。

本作の内容を強(し)いて挙げるなら、
{netabare}
①同日に落語名人の師匠に弟子入りし、兄弟分として育った落語家の青年同士の、厳しい《芸道修行》と、
②師匠の妾(めかけ)として彼らに出会った年上女性と彼らとの間に生じる《恋情と執着》の進行過程、
③そして迎える《悲劇的な結末》、を描き切った《濃密トライアングル愛憎劇》
{/netabare}
・・・といったところでしょう。


◆制作スタッフ
{netabare}
原作コミック     雲田はるこ
監督         畠山守
シリーズ構成     熊谷純
キャラクターデザイン 細居美恵子
音楽         澁江夏奈
アニメーション制作  スタジオディーン{/netabare}


◆各作品タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

============ 昭和元禄落語心中 (2016年1-3月) ============

- - - - - - 与太郎放浪篇 (昭和50年代) - - - - - -
{netabare}
第1話 ★★ 強次の出所、弟子入り、寄席(出来心、初天神)、失態、八雲師匠の長話 ※約48分(2話分){/netabare}

- - - - 八雲と助六篇 (昭和初期~30年代) - - - -
{netabare}
第2話 ★★ 坊(ぼん)と信さんの弟子入り、初高座(菊比古、初太郎)、二人の実力差
第3話 ☆ お千代との逢瀬、満州皇軍慰問と疎開、終戦、寄席の復活、師匠・信さん帰国、二つ目昇格、みよ吉登場 
第4話 ★ 信さん助六に改名、菊と助六の共同生活、菊とみよ吉の馴れ初め(踊り・小唄の稽古)
第5話 ★★ 助六・菊それぞれの嫉妬、菊とみよ吉の逢瀬、美鈴座(鹿芝居、女形(弁天小僧))
第6話 ★★ 何のための落語、菊の開眼(艶笑噺(えんしょうばなし)・廓噺(くるわばなし)・・・品川心中)
第7話 ★ 助六人気と増長・反感、師匠の巡業同行要請、菊・みよ吉の心のすれ違い
第8話 ★★ 上方巡業、鬼灯(ほおずき)市の宵(助六の懸想、菊・みよ吉破局)、落語の将来、先代助六、名跡の重み
第9話 ★★ 真打昇進披露、別れ話と恨み、助六破門、傷心同士の同棲・転落、助六の本心吐露
第10話 ★★ 入門志願(樋口少年)、師匠の過去話(初代助六との因縁)・葬儀、祖谷(いや)温泉(小夏との出遭い)
第11話 ★★ 助六との再会、芸の肥やし、助六の借金返済、子夏の髪切り・野ざらし
第12話 ★ 有楽亭二人会、助六の人情もの(芝浜)、みよ吉との再会、違え心中 ※脚本は良いが演出が残念×
第13話 ★ 小夏引き取り、八雲襲名・落語心中の断、因果、与太郎の真打昇進内定、三代目助六 ※後半は昭和末期~平成初期{/netabare}
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★★★(神回)0、★★(優秀回)8、★(良回)6、☆(並回)1、×(疑問回)0 個人評価 ★★ 4.6

OP 「薄ら氷心中」(第3-8話、10話、13話) ※第1話のみEDとして使用(背景は文字のみ)
ED 「かは、たれどき」(第2-9話、11話、13話)


※本作(アニメ第1期)は、原作マンガの第1巻~第5巻途中までの内容を収録。
※2017年1月より放送が始まっている続編(アニメ第2期)は、原作マンガの続き~最終第10巻までの内容を、おそらく幾分改変しつつ収録するものと考えます。


◆視聴メモ

{netabare}・昭和16年(1941年)の時点で、信さん・菊比古とも18歳(1923年頃の生まれ)、そして、みよ吉はその5歳年上なので23歳(1918年頃の生まれ)
・第9話で、みよ吉が、まもなく「赤線(※売春防止法施行以前に公娼認可のあった区画)」が廃止されるので置屋(※芸者を置いていた店)から出なくてはいけない、と言っているので、この時点で昭和32年(1957年)頃(→助六&菊比古34歳、みよ吉39歳)
・第10-11話で登場する小夏は、かなりの才覚があるにも関わらず未だ小学校に通っていない様子なので、この時点での彼女の年齢を6歳と仮定すると、昭和38年(1963年)頃(→助六&菊比古40歳、みよ吉45歳)
・第1話で、助六没後20周年特集の落語雑誌が出て来るので、この時点で昭和58年(1983年)頃(→八代目八雲師匠(=もと菊比古)60歳、小夏26歳、与太郎21歳くらいか?)
・第13話後半は、第1話からさらに10年近く経った後の話なので、平成5年(1993年)頃(→八代目八雲師匠70歳、小夏36歳、与太郎31歳くらいか?)
{/netabare}


◆本作のモチーフ考察 : 歌舞伎の《助六心中》の落語家バージョンを狙った?

落語家といえば、《滑稽噺(こっけいばなし)》を次から次へと繰り出して、ひたすら寄席の客を爆笑させる人、という楽しいイメージが強くて、たまにシンミリとする《人情噺》や、冷やっとする《怪談噺》を語りだすことがあっても、さほど深刻な内容にはならずに適当なところで切り上げてしまうもの、という先入観があって、本作についても、見始めたばかりの頃は、《落語》を題材にした作品ということで、幾らかシリアスな展開があるとしても一定の限度があるのだろう、とばかり思ってました。

ところが、第3話で初めて映像付きで流されるOP「薄ら氷心中(うすらひしんじゅう)」を見て、その曲調や歌詞の醸し出す雰囲気が、自分のそれまで持っていた本作のイメージと大きくズレていて、ことにその映像中の女性の描かれ方が、「心中」を示唆する歌詞とともに半端ない違和感を喚起して、本作の主要キャラクターの一人が、「助六」という落語よりは歌舞伎由来の名前であることと併せて、視聴を進めながら不穏な気持ちになってしまいました。

そして、物語に大きな動き({netabare}※助六が師匠から破門され、みよ吉は菊さんから捨てられてしまう{/netabare})があった第9話の真ん中ほどで、{netabare}失意のまま桜咲く河原を一人歩く助六に、同じく傷心のみよ吉が初めて自分から声をかけるシーン{/netabare}が来て・・・

{netabare}「ねえ、お花見は花川戸に限るわね。・・・・花川戸の助六さんね。」
「あたし、菊さんに振られちゃった。」
「何かあったの?話、聞いてあげる。」{/netabare}

ここにでてくる「花川戸(はなかわど)」は東京都台東区の浅草寺境内と隅田川の間に今もある地名で、とくに花川戸公園は桜のちょっとした名所になっているそうです。
だけど、ここで注目すべきは、{netabare}みよ吉が、わざわざ「花川戸の助六さん」と声をかけたこと{/netabare}で、引用が長くなりますが・・・

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◎助六(wikipedia)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A9%E5%85%AD

『助六』(すけろく)は、歌舞伎の演目の一つの通称。
本外題は主役の助六を務める役者によって変わる。
江戸の古典歌舞伎を代表する演目のひとつ。
「粋」を具現化した洗練された江戸文化の極致として後々まで日本文化に決定的な影響を与えた。
歌舞伎宗家市川團十郎家のお家芸である歌舞伎十八番の一つで、その中でも特に上演回数が多く、また上演すれば必ず大入りになるという人気演目である。
(※以下、省略)

◎すけろく【助六】(旺文社古語辞典)

〔人名〕「助六劇」の主人公。
江戸中期、京都で男伊達(おとこだて)万屋(よろずや)助六と島原の遊女揚巻(あげまき)が心中した事件は、上方(かみがた)では「京介六心中」「助六心中紙子(かみこ)姿」など、歌舞伎(かぶき)・浄瑠璃(じょうるり)の「助六心中物」に仕立てられた。
これが江戸に移され「助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」などの「助六劇」として定着した。
江戸では主人公は花川戸助六という侠客(きょうかく)(実は曾我五郎(そがごろう))とされ、江戸っ子の代表として理想化された。

◎すけろく-しんじゅう【助六心中】(精選版日本国語大辞典)

(1) 宝永年間(1704-11)初年に大阪であった万屋助六と島原の遊女揚巻との心中事件。
(2) (1)を脚色した浄瑠璃「紙子仕立両面鑑(かみこじたてりょうめんかがみ)」、歌舞伎脚本「助六心中紙子姿」、一中節(※浄瑠璃節の一流派)「万屋助六道行」などの通称。

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・・・ここまで来て、ようやくOP「薄ら氷心中」のおどろおどろしい曲調・歌詞・映像に合点がいきました。
この後、{netabare}傷心の二人は同棲を始めて、もろともに転落していく{/netabare}のですが、その結末は既にここで暗示されていますね。

以上から、本作は《落語家》の世界を作品舞台としながらも、実際には、《落語》の「滑稽噺」「人情噺」「怪談噺」ではなく、《歌舞伎》の「心中もの」をモチーフとするストーリーを展開させている、という構成になっており、それによって、

(1) 表面上は、「滑稽さ」「人情噺っぽさ」を上手く醸し出しつつも、
(2) その基底部分に、どうにも逃れられない「悲劇性」を潜ませる。

という、両様の魅力を作品に与えることに成功しているように私には感じられました。


現在放送中の第2期にも大いに期待したいと思います。

※2018.8.22 第2期のレビュー投稿。
事前に期待していたほどの出来ではなかったけど、第1期の後日譚としてまずまず楽しめる内容でした(個人評価 ★ 4.1)。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 36
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

実写映画化してもヒットしそうな印象を受けた=シナリオとテーマ性に長けたリアル系のアニメ

[文量→大盛り・内容→雑談系]

【総括】
落語をテーマにした、唯一無二の作品。

声優さんの力を感じる、名作。

アニメ史にキッチリ残すべき作品だと思います。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
まず、ド正面から「落語」に向き合ったアニメってのは珍しいですね。第1話で「出来心」という演目をまるっと見せてしまう(そして、それを楽しんで観られてしまう)驚き! 落語そのものの魅力に自信がある、もしくは伝えたいって気持ちが伝わります。

私は落語には疎いです。実際に落語を観たのも寄席に行ったのも付き合いで数回ってところです。好きな咄家さんもいません。素朴な疑問として、(初見ならまだしも)「ストーリーが分かっている話を何度も聞いて面白いのか?」というものがあります。

それを落語好きな友人に話を聞いてみると、「落語は音楽。歌だって、好きな歌手の好きな歌なら何度でも聞きたいって思うし、ファンなら、年月を重ねるごとの変化、その日の体調や気分によって微妙に変わる歌い(話し)っぷりを楽しめる。それから、同じ曲でも歌い手が変われば、カバー曲みたいで楽しめるよね。客との関係性(即興性)も、例えればジャズだよ」と言われました。

なるほどな~と思うました。私の大学時代の(文学部の)恩師の持論で、「ミステリーは基本的に古典になり得ない」というものがありました。それは、「ミステリーとは基本的にストーリーを楽しむもので、一度読んでオチが分かってしまえば再読しようと思えない。でも、ストーリーが分かっているのに何度も読みたくなる文章というのは確かにある。それは、表現の妙だったり言葉のリズムであったり、そこに日本語の美しさ、心地よさがある文章だからである。そういう作品こそ、再読にも再々読にも耐えられ、読解にも値し、古典になっていける作品である」というものがありました。

アニメでもそうですよね~。例えば私は、「とらドラ」とかストーリー分かっていても何度も観ちゃうけど、あれは「とらドラの空気感に浸りたい」ってのが大きいんですよね。耳に目に、心地いいんですよ。

落語の魅力ってのも、そういう類いのものなのでしょう。「昭和元禄落語心中」にも、そういう「落語の魅力」が詰まっていました。

また、ストーリー的にもそれぞれの登場人物が辛い過去を抱え、その傷を落語を通して乗り越えていこうともがく様子には感動を覚えました。七代目八雲の苦悩、血の繋がりを越えた師弟愛。そして、八代目八雲(菊比古)と助六との友情を越えた絆。月と太陽のような対照的な二人。菊比古が助六に、助六が菊比古に抱く、嫉妬やら憧れやらの混ざりあった複雑な感情。そして、女の怖さ、愛憎劇。偏愛。死。所々、落語の話を元ネタにしたようなストーリーも。(一期の)ラストはちゃんとコメディで占める。なんだか色んなものを詰め込んだのに、それを一本の筋としてまとめきった素晴らしい脚本。それ自体が落語のような物語でした。

最終話でいきなり与太郎が真打ちになってて、? って思ったけど、よくよく考えれば、「前座→二枚目→真打ち」の流れは菊比古編で描いているわけだから、あえてスパッと切ったのは英断ですね。そして与太郎を使い、助六が経験できなかった、真打ちになってからの苦しみや喜びを表現する、と。うん、無駄がない。

さらに、戦争という時代を描いた社会派の物語としても一見の価値あり。戦中戦後に、落語などの日本の伝統的な娯楽産業がどのように落ちぶれていったか、また、その中で落語を残そうともがく人々の様子。終戦後に初めて行われた寄席の緞帳が上がった時の、「何も無ぇ時代だからこそ、舌三寸の落語の腕の見せ所よ」という助六の台詞にはグッときた。昔、ある咄家さんが、「座布団一枚と扇子に着物があれば、どこででも落語は出来る」と言っていたのを思い出し、落語の強さを感じました。

う~ん、このアニメはやっぱり、タイトルで損している気がする。私も、「元禄」「心中」あたりにひっかかってて、視聴を避けてましたし。あ~、観て良かった♪

最後に、やはりこのアニメで光ったのは声優陣の凄さでした。いや、だって、落語になってるしね(汗)どれだけ練習したんでしょう? 凄いね、声優って。

2期決定らしいですね。1話最後に八雲が、「長い夜になりそうだ」と言っていたけど、(2~3話の過去編かと思っていたのに)ここまで長い夜になるとは思わなかった(笑) 2期前提ってことだったのでしょう。2期ではきっと、与太郎の成長が見られるのだろうし、楽しみです!!
{/netabare}

【余談 ~実写化した場合の配役案w~】
→以前書いた文章
多分、いつか実写化するはず。そして、この中の何人かは当たる気もする(笑)

→やっぱり実写化されましたね。実際の配役は、

八代目 有楽亭八雲(菊比古)…岡田将生。
有楽亭与太郎…竜星涼。
小夏…成海璃子。
みよ吉…大政絢。
有楽亭助六(初太郎)…山崎育三郎。
松田さん…篠井英介。

でした。アニメ放送当時に希望した、私の配役案と、どっちが良いですかね?(笑)

{netabare}
与太郎編の配役。 ( )内は第2希望

与太郎→生田斗真(小栗旬)
八雲→堺雅人(佐々木蔵之介)→白髪バージョンは無しの方向でw
小夏→二階堂ふみ(戸田恵梨香)
松田さん→近藤正臣(中原丈雄)
ヤクザ兄貴→やべきょうすけ(千原ジュニアw 落語大好きだし)
ゲスト出演→春風亭昇太(か、林家たい平。笑点メンバーのガチな落語を観たい人は多いはず。落語界にもメリットはある)


菊比古編の配役(妄想)

菊比古→二宮和也(窪田正孝)
初太郎→桐谷健太(山田孝之)
七代目八雲→立川談春(風間杜夫)
みよ吉→菜々緒(仲間由紀恵)

こんな感じでどうでしょう(笑) 全体的に(原作に比べて)年齢層高めになっちゃったのと、与太郎と小夏、菊比子とみよ吉の年齢が逆転しちゃったのが難点ですが、イメージ重視の配役です(だって、10代の演技力無いジャニタレには落語は無理そうだし、そうなると、相対的にアラフォー女優さんになるけど、それで若い人を呼べるか疑問にも思うから)。

さて、レビュータイトルの件ですが、素直にそう思いました。このアニメ、とても良いアニメで久々に(このすば以来の評価5で)夢中になれましたが、このリアリティある作風に重厚なストーリー。冷静に考えればあえてアニメである必要はないとも思いました。むしろ、実写向きでは?

与太郎は、ジャニーズでもイケメン若手俳優でもいけそうだし、小夏も、若手の人気女優(清純派女優の新たな一面を見せるとか)いけそうだし、(8代目)八雲に関しては、堺雅人さんにしか思えない(笑) あとは、リアルガチな大物咄家さんをゲスト出演させれば、話題は作れる。最近は落語ブームで、若い女性も観に行くらしいですし、中年以降の落語ファンにもウケそう。イメージは「ちはやふる(劇場版)」。

ストーリー(八雲と助六の過去編)を短縮(か省略)させて、(おそらく2期で描かれる)与太郎の成長にしぼれば映画の尺でもいけそう! そしてヒットしたら、八雲&助六の過去編をスピンオフで劇場公開(笑) もしくは、先に八雲&助六の過去編を公開。続いて後編として与太郎編を公開(アニメ通りの構成)。うまくいけば、落語ブームという社会現象を起こせるかもよw
{/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 61

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

流行に阿らない作品?(NHKで実写ドラマ化、10/12より放送)

同タイトルの漫画が原作らしい。(原作未読)
このレビューは1期目のもので、2期目の制作が決まっているらしい。

本作の登場人物には落語を演じるシーンが必要な人がいるわけだが、それらのキャストのオーディションでの当落基準に「落語を演じられること」というのがあったらしい。

その真偽は確認していないが、それが信じられるくらいにキャストは落語を熱演している。

そして本作品の登場人物のの人間臭さと、噺の中の登場人物の人間臭さとが重ねあわされるようなストーリーにはなかなか重厚感があると思う。

キャラクターデザインはおそらく原作を踏襲しているのだと思うが、いわゆる「アニメ絵」風ではない。だがそれは「キャラクターデザインの問題」であって、作画が悪いということではなくむしろ良い。

演出や美術なども近年の作品にはあまりない感じであまり似ている作品は思い浮かばない。(もしかしたら『御先祖様万々歳!』とかは少し似ているかも? でもあれはもっと「舞台劇風」な画面だしなあ…。)

いかにも老舗のスタジオディーンが制作しているっぽい作品である。

とにかく作品全体から「世の中に愛される『落語』であって欲しい」という願い、危機感みたいなものが随所に感じられることと「落語は人生そのものだ」みたいな娯楽としての落語の意味みたいなものがにじみ出ている。

すごく面白かったが、これがアニメ作品として売れるかどうかは良くわからない。売れたら良いね…。

2018.10.6追記:
10/12よりNHK ドラマ10枠で連続ドラマとして放送されるそうです。さて、どうなることか…?

投稿 : 2024/12/21
♥ : 70

71.8 2 昭和で東京なアニメランキング2位
風立ちぬ(アニメ映画)

2013年7月20日
★★★★☆ 3.8 (815)
4290人が棚に入れました
かつて、日本で戦争があった。大正から昭和へ、1920年代の日本は、不景気と貧乏、病気、そして大震災と、まことに生きるのに辛い時代だった。そして、日本は戦争へ突入していった。当時の若者たちは、そんな時代をどう生きたのか?イタリアのカプローニへの時空を超えた尊敬と友情、後に神話と化した零戦の誕生、薄幸の少女菜穂子との出会いと別れ。この映画は、実在の人物、堀越二郎の半生を描く──。堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて。生きねば。

声優・キャラクター
庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

この映画には大正ロマンがある、昭和モダンがある、美しいメカがあって、薄幸の美少女がいて、正義と恋と挑戦と、挫折と人情と幸せに満ちている。そして宮さんは僕の期待を裏切らない

まずネタバレを気にしている方はこのレビューどころか【予告編を観てはいけない】
あれはほとんど全部を端的に晒してしまっていますからね(笑)










そもそもの出発点は宮さんが模型誌に連載させた【妄想爆発気味】の漫画
零戦の設計者として著名な天才設計士、堀越二郎を主人公のモデルとし
さらに薄幸の美少女との恋物語を描いた堀辰雄の同名小説に着想を得ている【完全なフィクション】


だから間違ってはいけないポイントなのがほとんどの部分が宮さんの妄想であり、そもそも里見菜穂子なるヒロインの存在やイタリアのカプローニが堀越二郎に影響を与えたというのも宮さんの壮大な妄想に過ぎません
だからプロジェクトXどころではなく、かわぐちかいじ辺りを読んでるつもりで心して掛からないとついつい「堀越二郎はこーゆー人なんや」と伝記や再現ドラマでも観ているかのような誤解に引き込まれてしまうわけっす
これには気をつけたい


それと具体的な恋愛描写や航空機技術を延々と語るシークエンスがあるため、子供やメカニックトークに全く興味のない人には【残念ながらオススメすることが出来ません】
予めご了承ください


物語は真面目で正義感が強い秀才として育った青年の堀越二郎が、夢の中で出会ったイタリアのカプローニと飛行機設計士になる夢を語らいながら上京、就職し
その後の様々な困難や挫折を経ても一切挫けず、ひた向きに夢へと前進していく半生を映し出します


大学在学中に関東大震災に見舞われ、偶然にも良家のお嬢様を助けたことが縁となってその後に再会した彼女と結ばれる
しかし彼女の体は結核に蝕まれており、周囲の反対を押しのけての婚約や激務に追われながらの新婚生活では宮さん作品らしからぬ濃厚なラブシーンが描かれます
【深窓の令嬢萌え】を描きたがる72歳、それが宮さん


舞台となる1920年代は震災、世界恐慌、貧困、そして戦争という現代の話題と重なる部分も多々見られながらも兎にも角にも生きるのに苦しい時代であると示唆
宮さんなりに「生きろ」や「生きねば」の問い掛けに答えを出しているのかと思いつつ
その一方で主人公の周辺人物達はその時代では一部の富裕層だけに許されていた贅沢を堪能しており、辛い時代とかキャッチコピーを打った割には矛盾している
しかしこの大正ロマンや昭和初期のレトロモダンといった当時で言うところの華やかなで優雅な暮らしが現代のオイラ達のノスタルジーと憧れを奮い起こします
この辺は時代背景こそ異なるものの『コクリコ坂から』の魅力にも通じるものがある


さらに堀越二郎を取り囲む人々の人情味あふれるキャラクター的魅力も忘れてはいけない
特に同期生(であるとされていますが実在人物は無関係)の本庄くんとのライバル関係とも取れる互いを切磋琢磨しあう近過ぎず遠過ぎない距離感の友情
この辺りはバディもの好きな、特にインテリ系男子に殺されがちな方にはヨダレものでしょう(いやw真面目にw)


そして何より堀越の才能をいち早く見抜き、あえて千尋の谷に落とすかのような難題を突き付けつつも、公私に跨って堀越をフォローし続けた堅物の上司、黒川
菜穂子の健気さに心打たれ、愛する二人の仲人となる役を買って出る黒川夫人
この二人を演じる西村雅彦と大竹しのぶの芝居はもはやアカデミー賞ものの味わい
ホントいい人、理想の上司と理想の妻の姿がここにあります


そして宮さんが渾身を込めて送り出す最終兵器【妹キャラ】、堀越加代
「にぃにぃさんはいつもこんなに遅いのですか?」
これはもうオイラの中で流行語大賞
よくやりましたわ、宮さん
そしてあ~、どっかで聞いた覚えのある声やと思い出せんかったがエンドロールで志田未来ちゃんだと気付くと全て納得であります
そぉよ皆々様方、「アリエッティですよ!」
ジブリ作品へのご帰還、オカエリナサイませですよ


メカヲタ、ミリヲタにとっては劇中でgdgdと語られる航空機技術は興奮モノ
たぶん普通の人にとっては今作の最もツマラン部分になることは必至です(笑)
興味深いのが劇中でも「創造的人生は10年」言われている通り、堀越が戦前に試作した七試艦上戦闘機
そしてインバーターガルウイングが美しい九試単座戦闘機のエピソードのみがピックアップされています
だから肝心要の『ゼロ』を初めとする戦中、戦後のエピソードは一切なし
兵器を描いても戦争は描かないってのは『紅の豚』と一緒で、ミリヲタの癖に戦争反対を訴えている宮さんらしいポインツ
実在の堀越氏が兵器としての飛行機に興味が無かったのかは定かでは無い


本来ならばけたたましい轟音を発する航空機エンジンの騒音も、例の人間が口から発する音だけで作ったという効果音のお蔭でだいぶデフォルメ(というかこの場合は美化)されているのもそんなところからなのか


ちなみに劇中に出て来る枕頭鋲(ちんとうびょう)ってのはリベットのこと
あとインバーターガルウイングは見た目がカッコイイからやるんでなくてプロペラを大きくしたり主脚を短くしたりする工夫です
実名企業の三菱が出ていることや当時の三菱のヘボいエンジンを辞めて中島製エンジンを使用するよう打診した実際の堀越氏のエピソードは語られないため、戦前の三菱の技術力(日本のものづくり力)を賛美するかのようなうさん臭いお話っぽくなってしまっていますが、何度も言うように【宮さんの妄想】なので気にしたら負け


しかしまあw結婚式のくだりの辺りからオイラはニヤニヤがまるでとまらんかったw
72歳の偏屈なおじいさんが作った映画の主演を、53歳のこれまた偏屈なおじさんがやって
その映画のラブシーンで2828してしまう26歳のオイラ
さぞ隣の席のお客に迷惑を掛けたことでしょうw
こりゃ「妻には見られたくない」とアンノが言うわけです
2013年夏、【一番萌えられる映画は間違いなくコレ】


個人的には今までのジブリの中で一番好きな作品になるやもしれません
レトロモダンハァハァ的にも、メカヲタ的観点からも
『コクリコ坂から』のレビューにも同じようなことを書いてしまった気がしますがw


唯一悲しい偶然かな、今年のアカデミー賞で短編アニメーション部門を受賞したジョン・カース監督のディズニー作品『紙ひこうき』(シュガーラッシュと併映)と今作の馴れ初めが“丸被り”しているのには笑いましたがねw
興味ある方はこっちも是非チェックしてもらいたい


最後になりましたが劇中に出てくる『シベリア』なる謎のお菓子は羊羹をカステラで挟んだものですね
(発祥、創作者、名称由来など全てが謎でそもそも洋菓子なのか和菓子なのかすら怪しい)
映画の人気で一時的に復刻したお店もいくつか出ましたが・・・日常的に食べたいのでもっと作ってくれ(笑)

投稿 : 2024/12/21
♥ : 40

にゃんぴ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

引退作品、主題歌「ひこうき雲」

最初の雰囲気は「火垂るの墓」と似てる気がする...
そして、ただ淡々と展開していった
主人公の成長を伴って、なんか心がギュっとなった・・・
私の文章力では、ちょっと上手く言えません。
一言では表せませんが、あえて言うなら、
宮崎駿の集大成とも言えるふさわしい引退作品だと思います。

主題歌「ひこうき雲」 作詞・作曲・歌 - 荒井由実  映画の内容とはぴったりで感動で素晴らしい歌です!!
聞いてて泣きそうになる......

投稿 : 2024/12/21
♥ : 91
ネタバレ

Britannia さんの感想・評価

★☆☆☆☆ 1.0

不評、この作品が好きな人は見ない方が良いです。

■視聴し感じた、自分の独断と偏見ですのであしからず

{netabare}宮崎駿、堀辰雄、庵野秀明
畑違い。

内容、宮崎作品なので期待して視聴

噂通りらしくない、実在人物を取り入れ大人向けな作りらしいが
純粋にアニメとして面白くない。
そもそも宮崎作品にそんな物を求めていない。

喫煙シーンにて、時代背景に必要だかしらんが反対を押し切って
まで入れてあの描写って、ガキ臭い絵に合わな過ぎで違和感がある。

夢の様なファンタジーで見せたいのか、リアルに見せたいのか
どっちつかずで感情移入しない。
実在人物入れてリアルな作品、作りたいなら実写でやれば良かったんじゃないの

声優にて、感情も無く棒読み。デビューらしい演技ですね
アニメと実写を織り交ぜる監督らしい
俳優起用する、こんな作品なら通用するんじゃねーの{/netabare}



■ネットのコピー
感想を公にするのがはばかられる風潮もあるという。
幼いころからジブリ映画を観て育ったという男性A氏(24歳・大学院生)は、次のように語る。
「細かい心理描写などはとてもすばらしかったのですが、正直ベストワンだと思えませんでした。
それをSNSに書いたら、『ジブリを偉そうに語るやつってサブカルかぶれでウザイ』『こういう作品を酷評してる自分が好きなだけだろ』などと、知らない人から“攻撃”されてしまったんです。
宮崎監督最後の作品で、かつ戦争を描いているということもあるからか『この作品は批判してはいけない風潮』を感じました」(A氏)



■メッセージが有ったので今後の為、追記

あくまで自分の為にデータ化しているので
周りに遠慮して評価を変えていたらやってる意味が無い。
【★1=2度と見ない為のメモとしてます】
※全てが嫌で1な訳ではありません。

自分の好きな作品でも当然嫌いな人はいるでしょうし、感じ方は人それぞれで良いと思います。
低評価でも高評価でも共感してくれる方と話せれば
楽しいし、真逆の方との釈明・喧嘩する為に書いてる訳では無いです。

嫌なら好きな作品の低評価を読まなければ良い
評価を突き詰めれば好きか嫌いかでしかない。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 21

77.1 3 昭和で東京なアニメランキング3位
ジョーカー・ゲーム(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (991)
5038人が棚に入れました
世界大戦の火種がくすぶる昭和初期を舞台に、帝国陸軍の“スパイマスター”結城中佐によって設立されたスパイ養成部門「D機関」の活躍が描かれている。

声優・キャラクター
堀内賢雄、下野紘、木村良平、細谷佳正、森川智之、梶裕貴、福山潤、中井和哉、櫻井孝宏、津田健次郎、関智一
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

映像もストーリーもよく練られたスパイもの<原作読了、追記あり>

本作は繊細な描写が魅力で小説や洋画(特に古い名作)のような印象の、スパイを主人公としたミステリー作品。
何回も視聴して想像や考察をしながらじっくり楽しむのが吉です。

アニメよりも実写向きと感じるような作りですし、エピソードごと時系列を入れ替えていたり、メインキャラクターを意図して見分けがつきにくくデザインしているなど、アニメとしては尖ったところもあります。

エンターテイメント的なアニメを好む人や、キャラクターの掘り下げを望む人には向かないかもしれませんが、シリアスなアニメや他の媒体の作品も好む人には逆に入りやすいのではないでしょうか。

【ビジュアル面】
キャラクター原案は三輪士郎さんで、キャラクターデザインの矢萩利幸さんがアニメの方向性に合わせてより地味なイメージに落とし込んでいます。
ことD機関のスパイ8名は全員目立たないモブ顔を設定するという方法を取りました。アニメキャラクターは一目で見分けがつくべき、という考え方からすれば思い切っていますが、機関員8名はスパイとして目立たず活動する作品なのでこれで正解だったと思います。

作画は安定感と美しさでリアリティを追求している点が最大の特長。動きもデフォルメが少なめ、色彩も暗めなので若干泥臭いイメージにもなっていて、そういう部分が好きですね。
安定した作画でキャラクターの仕草や表情が細かく、緊張感やリアルな雰囲気が途切れなかったことが一番素晴らしい点だと思います。

背景もやはりリアルで美しく、地に足の着いた映像作りがされていて、世界観をよく表現していました。


【キャラクターと声優】 {netabare}
大御所がいっぱいでしたw演技に関しては本当に素晴らしかったの一言です。

結城中佐はほんの僅かに人間味を見せることが実は少なくなく、長いスパイ活動を経てもその人間性を捨て去っていない点がかえって恐ろしいと同時に素晴らしいキャラクター。
堀内賢雄さんは感情を見せない語り口、時折見せるかすかな人間性、変装時の演じ分けなど最初から最後まで、本当に素晴らしかったです。個人的に賢雄さんはシリアスキャラがすごく好きなので嬉しかったです。

ゲストキャラクターではヴォルフ大佐と、その声を当てた銀河万丈さんがとても印象深いです。若い頃との演じ分けも好きですし、判断力に優れた面、冷徹な印象や威圧感、結城中佐に対する一種の執着などその人間性がとても感じられました。
{/netabare}


【ストーリー面】 {netabare}
オムニバス形式 で各話独立した物語として展開、八人の機関員にそれぞれスポットが当たる構成です。
あえて時系列を入れ替え最初(1,2話)と最後(12話)にキャラクターの人間性を描くタイプのエピソードを配置。3話がいきなり荒唐無稽なストーリーなのは気になるものの、話数が進むほど視聴者を引き込む作りになっており、おかげで右肩上がりに面白くなったと感じました。

そして最終話がいつも通りに始まりいつも通りに終わる、というのが実に本作らしい。そういう終わり方になるだろうとは思っていましたし、私自身それを期待していました。
スパイたちの人生にも活動にも終わりはなく、視聴者はそのいくつかの出来事を覗き見しただけと思っていましたし、時系列の入れ替えのおかげでそれが自然だと感じられました。

ラストの結城中佐の台詞は第1話最初の台詞と同じで、これが格好良かった!全体のまとまりも感じられて良かったです。
佐久間さんに対しては「これまでの考え方を捨てろ」、小田切さんに対しては「ここでの経験を忘れるな」という意味もありそうですね。
原作からは改変されているそうですが、スタッフが最後までアニメとしてより良い作品を作ろうとしたと思えて、なんとも粋で、正直燃えました。そういうアニメじゃないけどこれw
{/netabare}

【本作の2つの柱】 {netabare}
本作を1クールで展開する上での柱だと私が感じたのは「スパイの生き様」「虚構」の2つです。しかもその2つの要素は密接にリンクして、綺麗に全12話で起承転結にまとめられていました。

まず1、2話で佐久間が初めて機関員(スパイ)の「虚構」を認識します。佐久間は視聴者目線に立つ存在でもあります。
そして機関員は優秀なスパイで、その存在は「虚構」であり、影となって状況をコントロールするという、その仕事ぶりでスパイを語るという構造なのですね。
3話~7話で機関員たちが主役でないのは当然のことです。スパイの生き様は色々ですが、諜報戦から降りざるを得なくなった者だけが「虚構」を捨て去り(あるいは剥がされ)、初めて物語の主役になるわけです。
そういう意味では、軍人であることを捨て去れない風機関の人間はそもそも諜報戦に参加することすらできませんでした。

結城中佐は上に立つ人間ですし身体的ハンデが特徴になるので影にはなれませんが、逆に掴まれている情報を餌に「虚構」を構築することで状況をコントロールし、アーロンを引退に追い込んでいます。結城中佐の過去話かとおもいきや、10話の主役はアーロンさんなんですよね。
11話は三好が真木という「虚構」を被ったまま人生に幕を下ろす物語でもあり、同時に結城中佐の「虚構」が危うく崩れかける物語でもありました。ニアミスしたのがヴォルフ大佐だったら、一切偽装していない結城中佐は実体をつかまれていたでしょう。
そして、最終話では自己を捨てきれない小田切を描くことで、相対的に視聴者に機関員の「虚構」を再認識させているのです。(キャストの役名が「飛崎弘行(小田切)」になってることに今になって気がつきました。細かい!)

もともと虚構であるアニメーションでは、いかにリアリティを持たせるかが大切です。
本作は映像からはリアリティを追求しているように感じますが、実際は「虚構」を描く作品でした。本作中でキャラクターの語る偽情報すら映像が付いていたのは、視聴者を引っ掛けるフェイクだったのでしょう。原作ファンを引っ掛ける改変もあったようで、そう言われると原作がさらに気になりますw

実写ドラマでも面白いかも知れないと最初は思いましたが、人の手でゼロから創り上げられる虚構(アニメ)だからこそ、本作は魅力的なのかも。
{/netabare}


【雑感】 {netabare}
感情移入が出来ないとのめり込めない私が全話面白く見られたのは、一見淡白に見えても、ストーリー(ミステリー)の中に人情噺のような側面を必ず入れていたからだと思います。
ストーリーを引っ張るのは機関員ですが、他のキャラクターはきちんと人物描写されていて、仕草や表情も見逃せなくて毎回画面に釘付けになってました。

それから自分としては意外だったのが、三好の死がめっちゃショックだったこと。
原作ファンの方の書き込みを目にする機会があって、視聴前から知っていたのにズシンと来ました…普通なら嫌いなタイプのキャラクターなのに…
なんというか三好が、というより「人間の死」というもののあっけなさ、迷いも後悔も心の中に一切無いスパイの死に様が重かったですね。ドラマチックな演出が一切ないからこそ辛かったです…

考える頭脳があるのに日本軍人として生きると決意している佐久間、スパイとして秘密を保って死んだ三好、暗い時代に孤独と苦難の道を歩む機関員たち、それとはまた違う厳しい道を選択した小田切、誰にも見せない苦悩を抱えているであろう結城中佐。
キャラに感情移入するアニメじゃないのに私が嵌ったのは、彼らに想像の余地を残してくれているからです。
本作で何を見て何を考えるかは視聴者に委ねられています。そこがとても好きですね。
{/netabare}

本当にスタッフに恵まれた作品でした。
本作を見ているとわからないことも沢山ありましたが、本作の公式サイトには時系列表やコラム等があり、理解の助けになりました。かなり内容が充実していて頭が下がります。

振り返ると無駄な話はひとつもなかったと思いますし、繰り返し視聴するのが楽しい作品です。
こういう新作が定期的に出てくれると個人的にはとても嬉しいですね。(2016,6,27)


本日原作を読了しました。
キャリアのある作家さんだけあって読みやすく情報量も多く、描く要素も一貫していてとても面白かったです。時系列は原作もばらばらで、アニメだけではなかったんですねw
アニメ版が気に入った方には是非読んでみて欲しいです。

原作のひとつの特徴として、小説というビジュアルのない媒体だからこそ出来る登場人物の「無名性」があります。{netabare}登場するスパイ達は偽名しか付けられていませんし、スパイが主役となる物語は最後にその人物の"スパイとしての死"が示唆されることが殆どです。{/netabare}
アニメ版に私が感じた「虚構」は原作から引き継がれた重要な要素だったのですね。

アニメーションではビジュアルが絶対に必要ですから、やり方を間違えると本作の魅力を大きく損なう難しい要素だったんだなと読んでみて思いました。機関員のキャラクターデザインはとても良いバランスだったと思います。

物語としても、キャラクター数や情報量を減らしながらも物語の筋はきちんと通り、そのために原作を分解・再構築することを恐れないよく練られた作品でした。

動画配信サイトが再放送など行ってくれていることもあり、良い評価を受けているようで一ファンとしてとても嬉しく思います。
(2016.7.8追記)

投稿 : 2024/12/21
♥ : 51

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ラストのセリフに痺れる

昭和初期の東京、横浜、
そして上海、倫敦で繰り広げられる、
歴史の闇に埋もれたスパイミステリー。

帝国陸軍内に創設されたD機関の暗躍。
歴史の舵取りはどこが握るのか!?
心の拠り所さえ、裏切り捨て去る、
それがスパイなのである。

スタイリッシュな映像美で魅せる、
美術や背景を見てるだけでも痺れる。
淫靡で雑多な上海や当時の伊勢丹、
ダットサン(初期の車)が最高ですね。
物語は結城中佐を軸に語られるオムニバス形式。
お勧めは「魔都」「ダブルジョーカー」です。

世界大戦の火種がくすぶる、
あの時代に興味のある方にぜひお勧め。
テーマや設定が重過ぎるように感じますが、
キャラも良く、音楽もセリフも粋な物語です。
各国の諜報機関も雰囲気持っていますね。
原作の評判も良いのでは試してみては。

最終話「XX」、
最後の結城中佐のセリフに痺れる。
見事な幕引である。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 63

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

趣の異なった『主人公最強系』?

原作未読。

ジャンルはスパイ&ミステリー系かな?
日本が世界大戦に参戦する直前頃、結城中佐の発案で作られたD機関と呼ばれるスパイ養成学校の8人の訓練生たちが活躍する話。

今まであまり見なかったジャンルなので、楽しさ半分、好奇心半分くらいで視聴開始。

まず、作画の綺麗さにビックリ。

OP、ED曲とも作品のイメージにぴったり。

登場人物の姿形に特徴が少ないため、誰が誰だか見分けにくいけど、表情が豊かな部分は高評価。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 59

72.0 4 昭和で東京なアニメランキング4位
千年女優(アニメ映画)

2002年9月14日
★★★★☆ 3.9 (447)
2166人が棚に入れました
芸能界を引退して久しい伝説の大女優・藤原千代子は、自分の所属していた映画会社「銀映」の古い撮影所が老朽化によって取り壊されることについてのインタビューの依頼を承諾し、それまで一切受けなかった取材に30年ぶりに応じた。千代子のファンだった立花源也は、カメラマンの井田恭二と共にインタビュアーとして千代子の家を訪れるが、立花はインタビューの前に千代子に小さな箱を渡す。その中に入っていたのは、古めかしい鍵だった。そして鍵を手に取った千代子は、鍵を見つめながら小声で呟いた。「一番大切なものを開ける鍵…」
少しずつ自分の過去を語りだす千代子。しかし千代子の話が進むにつれて、彼女の半生の記憶と映画の世界が段々と混じりあっていく…。

声優・キャラクター
荘司美代子、小山茉美、折笠富美子、飯塚昭三、津田匠子、鈴置洋孝、京田尚子、徳丸完、片岡富枝、石森達幸、佐藤政道、小野坂昌也、小形満、麻生智久、遊佐浩二、肥後誠、坂口候一、志村知幸、木村亜希子、サエキトモ、野島裕史、浅野るり、大中寛子、園部好德、大黒優美子、山寺宏一、津嘉山正種

shisune さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

だって私…

主人公の藤原千代子の半生をインタビューを通して思い返していく、というお話。
場面の移り変わりがおもしろいんですが、若干混乱しました(最初だけ)。
千代子の一途な恋心がなんとも言えません。

物語のラスト、おもいっきり、監督に突き飛ばされましたね~。
五キロくらい吹っ飛ばされた気がしました。
まさに衝撃のラストです。
最後のシーン、思わず声に出してしまいました(笑。
ものすごい裏切りです。

なんといっても今敏監督。万人におすすめできる良質のアニメーションです。
ほんとに、もっともっと監督のアニメを見たかったです。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 4

お茶 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

千年を納得させる女優の回廊

今敏監督作。

本作は大女優千代子に、取材を行い談笑しながら物語が進まれる。名女優ゆえ、めったに取材に応じないが、何かを開ける鍵を渡すため訪れた取材陣。ただ話はソファーに座りながら、その一女優の出演作を時代と合わせ、女優の年齢の順に流されていく。

本作の面白い所は、何の前触れもなくその映画の世界に入り込ませ、そんな中、取材者2人も同じ世界に入り込み取材を行うという疑似パラレルな展開。それを現代の取材時間(ソファーでの取材)と、疑似パラレルの取材時間(映画の中)を唐突に移り変えて、時間の感覚をずらしてきやがる所。

最初の出演作で女優になる決意をした彼女と同じように、見てる側にも映画(本作)を見る価値ある、風な演出ほどこし、彼女は恋人を探して疑似パラレルの幾つもの世界を渡り歩くことになる。

出てくる疑似パラレルは、関東大震災、満州、戦時中の投獄等々。時代劇からSF風までの彷徨う時の回廊。ここが社会派アニメ的にも魅せられ、深みみたいなものを感じるし、勘ぐって社会派としても見ちゃった回廊。

疑似パラレルの変化を通して様々な役をこなしながら幾つもの物語を魅せてくるし、取材野郎も役者としても噛んでいたりして、一癖あるドキュメンタリーなのか、ロマンティックな恋なのか、社会派アニメなのか、鍵という伏線によるサスペンスなのか、と、いうフェイクらしいものを入れてくる。

「現在の取材による時間」「様々な疑似パラレルによる時間」
「疑似パラレルの中で経過する役と年齢」「演出のフェイクによる感情変化」
そんな側面を持ちながら、一つ芯を通した鍵と恋。だがその芯にも癖演出。

千年を感じさせる為に用意された幾つもの疑似パラレルやメッセージ的フェイクは、重みと不思議な軽さを伴った、心が安堵したような悲しい心地よさに包まれた。私ごときが、ことの顛末まで書くのは野暮ですなこりゃw視聴して頂きたい一作。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 37

もちすい さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

淡くて激しくてしたたかな

とある大女優が自分の人生を“恋心”という部分に焦点を当てて振り返る、という物語。

終始インタビュアー&カメラマンの二人組みとの会話~回想シーンという映像が続くのですが、女優ということで、回想を映画の演技シーンになぞらえて、さらには回想にも二人組が入り込んでくる、という、実験的で、かなり奇抜な映像表現がこの作品の特徴です。

これ、本当に面白い表現だと思うし、この題材とこの表現を組み合わせることを前提にした脚本は完璧すぎるぐらいうまいんですけど、回想と演技のシーンを重ねるということは、どうしても視聴者にとっては感情移入の妨げになると思われます。
回想に入り込んでくる二人組も、説明役、場面転換のアクセント、と効果的な働きもしているのですが、やっぱりこれも感情移入したい人にとってはノイズになってしまいます。

ということで、映像表現としてはとても面白いのですが、同時にあまりの奇抜さに面食らってしまって、全く作品に入り込めない、ということになる可能性もあります。
私の場合は初見がそうで、2回目に観たときにやっと落ち着いて観れました。

あとは感情移入を求める人も注意が必要です。
感情移入できないこともないですが、かなり女性向け、しかも対象年齢高め、と、ものすごく観る人を選ぶ作品です。

とはいえ、今敏さんの作品は、アニメーションという媒体に対してのアプローチがあまりにも個性的で、多くのアニメ作品とは全く違ったベクトルを持っているので、合う合わないは別として、「こういうアニメもあるんだ」と、観ておいて損はないと思いますよー。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 13

61.3 5 昭和で東京なアニメランキング5位
青い文学シリーズ(TVアニメ動画)

2009年秋アニメ
★★★★☆ 3.5 (159)
903人が棚に入れました
 本作は、太宰治の「人間失格」と「走れメロス」、坂口安吾の「桜の森の満開の下」、夏目漱石の「こゝろ」、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、「地獄変」の6作品からなる全12話のTVアニメ。ただし物語や設定は大幅に変更・脚色されており、必ずしも原作小説に忠実な内容ではない。
 企画の発端は、2007年6月に集英社文庫の「夏の一冊 ナツイチフェア」企画として週刊少年ジャンプで連載する漫画家が、名作の表紙を新たに描きおろしたこと、さらに太宰治生誕100周年という節目の年であるということから始まった。それぞれ、「人間失格」と「こゝろ」を『DEATH NOTE』や『ヒカルの碁』の小畑健、「桜の森の満開の下」「蜘蛛の糸」「地獄変」を『BLEACH』の久保帯人、「走れメロス」を『テニスの王子様』の許斐剛がカバーイラストを担当。アニメ化にあたり、カバーイラストを担当した漫画家がキャラクター原案を担当し、それぞれの作品は、オムニバス形式で放送された。
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

文豪の名作×人気漫画作家によるオムニバスコラボ

文豪の名作×人気漫画作家によるコラボを
全12話のオムニバスにしたアニメ作品。
しかしながら、原作を忠実にアニメ化したわけではなく、
作品によってはかなり勝手な解釈による脚色や書き換えもある。
でも、「走れメロス」など、作品によってはそれがすごく良かったりもして、
独自の切り込み方での脚色も悪くないものだなと思った。
また、こういうオムニバスは好きな作品から観ていけるのも良いよね。

■1話~4話 『人間失格』(太宰治)

キャラクター原案=小畑 健(「DEATH NOTE」、「バクマン。」)
脚本=鈴木 智
美術監督=清水友幸

表題作だけあって、この物語だけ4話使っていた。
個人的に好きな昭和一ケタの時代背景と
東京の銀座を中心にした街並みが、アニメで観れたのは嬉しかった。

幼少の頃から、自分という人間にもがき苦しみ続けた主人公の
波乱に満ちた半生と、行き場のない生き地獄を味わいながら堕落し
狂っていく姿は、小畑氏の得意とするダークで繊細な人物描写が
すごくマッチしていたと思う。

また、主人公の父親が発する「人間失格」についての言葉、
主人公が苦悩の末ふともらす「生まれてきてすみません」という台詞、
タバコ屋の娘の「世間なんてひとりひとりの集まりじゃないですか」
という台詞は、自分の中のある想いに、特に強く心に響いた。


■5話~6話 『桜の森の満開の下』(坂口安吾)

キャラクター原案=久保帯人(「BLEACH」)
脚本=飯塚 健
美術監督=一色美緒

いきなりコミカルな山賊のお出ましで、わぁ~これはまた。。と。
原作から僕がイメージしていた世界とはかけ離れすぎていて、
唖然としてしまった。それに、大柄で筋肉質な主人公の雰囲気に、
堺雅人氏のか細い声はまったく合っていなかった。
背景からくる不気味さと狂気が伝わる美しさだけはあるものの、
途中の変なギャグで台無しになってるとしか思えなかった。
桜がとても美しく妖しげに描かれていただけに、残念。


■7話~8話 『こころ』(夏目漱石)

キャラクター原案=小畑 健(「DEATH NOTE」「バクマン。」)
脚本=阿部美佳
美術監督=上原伸一

前編を冬編、後編を夏編として、2通りの解釈による設定と展開で
見せたのが秀逸。 原作をどう受け取るかという問題そのものを
物語に組み込んだのは、すごく面白いなと思った。

登場人物は、先生、Kという男、お嬢さん、未亡人の4人だけ。
Kが自殺をするまでの出来事を、冬編でのお嬢さんは奥ゆかしく、
夏編でのお嬢さんは積極的でしたたかな女性という設定のもと、
物語の中の大まかな台詞は同じなのに、ニュアンスの違う言い方にして
まるで正反対の展開になってしまうところが、興味深かった。


■9話~10話『走れメロス』(太宰治)

キャラクター原案=許斐剛(「新テニスの王子様」)
脚本=川嶋澄乃
美術監督=金子英俊

物語が始まってまず、自分の大好きなアニメ作品の『魍魎の匣』と
まったく同じ演出と音楽と語り口だったことに感動してしまった。
なるほど、スタッフが同じだったので納得。

縁側に舞い込む桜の花びら、やわらかな光に包まれた部屋、
穏やかで懐かしいピアノのメロディー、美しすぎる万年筆やインク瓶。
それだけでも個人的にはしっかり鷲づかみにされたのだが、
原作の『走れメロス』を劇中劇としてうまく取り入れて再現しつつ、
原作のテーマとなっている約束と友情と信頼を、
このアニメの主人公である作家とかつての親友との甘くて苦い過去に
うまく重ね合わせてあって、それがまた僕の甘くて苦い記憶と
ぴったり一致してしまったものだから、
つきあげる胸の苦しみで、どうにも切なくなってしまった。

川嶋さんの練られた脚本に、胸をこじ開けられて参ったw
心の奥底に仕舞い込んでいたはずのものが一気にあふれ、
「うわぁ~~やられたな・・」と、しばし身動きできなかった。

待つほうがつらいのか、待たせるほうがつらいのか。
{netabare}
「待つことも待たせることも必要なくなってしまうことが一番つらい」
と主人公の独白に、自分も深く共感。
{/netabare}

ただし、どの作品にも言えることだけれど、観る人によっては
まったく違う解釈や感じ方があって当然なわけで、
自分が感動した、良い作品と思ったからといって、
感じる部分は人それぞれだし、逆に受け付けない人もいるとは思う。

でも・・・ほんとうに、この中の『走れメロス』は、
このオムニバスの中でひときわ美しく、味わい深い作品だった。


■11話   『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)

キャラクター原案=久保帯人(「BLEACH」)
脚本=小林雄次
美術監督=金子英俊

全体通して原色を使い、特に赤と緑と青が強烈な印象を残す。
サイケデリックで不気味な地獄の様子や、悪の限りを尽くした主人公の
殺戮シーンは、なかなか迫力があった。
それだけのことをしておきながら、子どもに刺された後の彼が、
目の前にいる蜘蛛を殺さなかったのはなぜか。
それがやがて、地獄での蜘蛛の糸に繋がるわけなのだが、
蜘蛛にささやかな情をかけたあの心理描写には、
もう少し丁寧さが欲しかったなと思った。
しかし・・・悪人は地獄に堕ちても悪人というこの物語、
なかなかシュール。


■12話   『地獄変』(芥川龍之介)

キャラクター原案:久保帯人(「BLEACH」)
脚本=小林雄次/いしづかあつこ
美術監督=金子英俊

「蜘蛛の糸」から物語は続いており、
こちらでは国王の悪人ぶりが描かれる。
地位と名声を得ながらも、愚かな人間はどこまでも愚かで。
そしてその国王に目をかけられている絵師の、「地獄を描きたい」
という欲望が強烈で悲惨な犠牲を生み出すにも関わらず、
絵師はどこまでも絵師で・・・
なんとも、最終話にして一番後味の悪いエンディングだった。

それでも、アジアンチックな雰囲気を独特の色彩で描いた背景は
強い個性が感じられて、なかなか良かった。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 31

ソーカー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

名作も真っ青?

各エピソードとも作画も演出もまるで違うので、各々別物として見る必要があります。

「人間失格」
原作既読。ほとんど覚えてないので純粋に楽しめたと言えば楽しめました。
しかし自分のイメージしていた主人公像とちょっと違っていた気がします。
共感出来る部分が結構あったと思うんですが、このアニメの主人公はあまりそういう部分がなかった。
しかし、綺麗に纏めていてぐっとくる内容だったので、アニメとしての出来は非常に良かった。
いずれ読み返したいと思わせる面白さだったので、全然アリだと思います。

「桜の森の満開の下」
原作は読んだこと無ければ粗筋すら知らないが・・・これは唖然とした。
打って変わってコメディタッチで描かれてるわけですが、
時代劇なのに英語喋ったりミュージカルしたり意図がよく分からない。
内容は至極残酷なものなので、そのギャップが悪趣味にしか映らなかったです。
オチの意味もよく分からなかったですが、原作がどんなもんか知りたくはなりますね。

「こころ」
原作既読。Kが自殺に至るまでを過程を2つの解釈で描いた作品。
前編は先生の視点、後編はKの視点で展開されている。
先生からの視点の回は、Kの容姿・性格・心理描写全て酷すぎる出来に映ったのですが、
原作にはないKからの視点の回を見てみると、Kの心理描写はまだまともになりました。
ただ、全ての登場人物が原作と乖離しすぎているので、解釈として成立しているとは思えないです。
作品の要であるKの自殺理由を扱うのであれば、Kの人物像だけは守るべきだと思うんですが・・・
「こころ」を真っ二つにしているような酷い出来だと思いますw

「走れメロス」
原作既読。これは鮮明に覚えています。
アニメ「魍魎の匣」のスタッフということで、さすがという出来。
走れメロスの劇と小説家をリンクさせるというやり方はありがちではありますが
原作を巧く活かしてるという面では一番良い印象を受けました。
ただ本当に小説を執筆する様や汽笛の音まで「魍魎の匣」とかぶり過ぎて笑ってしまったw

「蜘蛛の糸」「地獄変」
「蜘蛛の糸」は既読。「地獄変」は未読。アニメでは同じ世界観で続きものとなっています。
カンダタの生前の描写から始まるのですが・・・とにかく色彩鮮やかな作画が美しかったなと。
地獄の禍々しさとか炎に包まれるところは素晴らしかったと思います。
「地獄変」はよく知らないので、内容についてはなんとも言い難いですが。

原作を結構改変してるので、この辺をどう受け取るかですよね。
良いと思えた作品と悪いと思えてしまった作品の差は結構激しかったです。
原作を読み返そうという気にはさせられたので、そういう意味では良かったのかな。
ただこのアニメを見る時は原作とは違うということを念頭に置かないとひどく痛い目に合う。
繊細な人物描写を、割合とざっくり描写してしまっているのは残念ではあるけど
アニメとして表現するのであれば、ある程度は仕方ないことではあるんでしょうね。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 22

ポール星人/小っさ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

地獄変のみ視聴

太宰・坂口安吾はお恥ずかしながら読んだことが無いので、とりあえず12話の地獄変のみ見てみました。
シリーズ全話見てませんので、評価点は付けてません。

 あにこれ上ではちゃんと文学読み解ける方がいいレビュー書かれてると思いますので、私のはド素人の戯言と思っていただければと。

正直な感想として、原作とはちょっと違うんじゃ?と思いました。

私は身内さえ芸術の為の贄として厭わない絵師良秀の狂気とも言える美の探求の話として読んでたので、若干違和感有りました。
良秀の娘も奉公に出されて大殿の伽までさせられそうになる幼い無垢な少女ではなく、良秀のよき理解者であり助手に変えられてます。
この娘の位置付けと最期が地獄変と言う作品にエロティシズムを付加する重要なエッセンスと思っていましたが、TVアニメという事を意識しての改変だったのでしょうか。

良秀自身の書き方も、アニメでは支配階層の虚栄の陰の庶民の気持ちの代弁者として絵を描いてます。原作は平素より絵の為に自分の弟子を鳥に突かせる常軌を逸した男として書かれてたと思いますが。

個人的感想は、これは芥川の地獄変じゃないと思います。
但し、独立したアニメ作品としては悪くないかなと思います。堺雅人の声が妙に浮いてると思いますが、絵も綺麗ですし絵師と娘の支配者に対する命を賭した断罪の話としては纏まってたのではないかと。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 7

63.4 6 昭和で東京なアニメランキング6位
時空の旅人(OVA)

1986年12月20日
★★★★☆ 3.4 (34)
106人が棚に入れました
17歳の女子高生、早坂哲子はカメラマンの兄の撮影につき合うため、ロケ用のマイクロバスに乗り込んでいた。兄が車を離れたすきに、奇妙な少年が運転席に駆け込んで、持っていた機械をバスにセットしスイッチを入れた。たまたま居合わせた哲子の同級生、信夫、真一、教師の北もバスに乗り込み、タイムトリップしてしまう。彼らは1945年の東京大空襲のまっ只中に到着した。哲子は戦火の中で救ってくれた学生服の若者に心魅かれた。バスは再び超時空に飛び出した。少年はアギノ・ジロと名乗り、自分の住んでいた未来が嫌になり、過去へ逃亡してきた未来人だと告げた。しかも、バスに仕掛けたタイムマシンは過去にしか行けず、二度と逆戻りはできないと言う。その時バスのエネルギーが切れかかり、江戸幕末に不時着。燃料を補給してホッとした彼らを、未来からジロを追って来た逃亡者ハンター、クタジマ・トシトが急襲してきた。

声優・キャラクター
村田博美、戸田恵子、岩田光央、熊谷誠二、青野武、津嘉山正種、井上真樹夫、堀川りょう、阪脩、金内吉男

◎TARGET さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

【SF】タイムスリップした先は1945年東京大空襲の真っ只中だった…

❏総評

 1986年の作品。正直古いし期待してなかったのだが楽しめた。

 ジャンルはSF。

 ネタバレしない程度に、あらすじ。(導入部分)

 時は未来、場所はNEO TOKYO、少年アギノ・ジロはとある追手から
 逃げていた。しかし逃げても逃げても追手をふりきれず、
 時間調整装置を使って過去へ逃げたのだった。

 時は現代、17歳の女子高生、早坂哲子と同級生と先生がたまたま
 居合わせたマイクロバスに、突如、奇妙な少年が乗り込んできた。
 その少年(アギノ・ジロ)は持っていた機械をバスに取り付け、
 スイッチを入れた。

 そしてバスは
 1945年、東京大空襲の真っ只中にタイムスリップしてしまう…

 追手は何故ジロを追っているのか?
 少年アギノ・ジロの真の目的は?
 そしてジロと追手に巻き込まれた哲子たちの運命は?

 そして最後に衝撃の事実が…


❏戸田恵子

 ジロは男の子なのだが、声優はなんとあの戸田恵子さん。
 ジロ以外の主役級のキャラが軒並み残念なので、
 タダでさえイケてる戸田さんの巧さが際立ちまくり。
 (先生役の青野武さんもよかったけどね。)

 その他マイクロバスチーム以外の脇役の声優さんは
 言うことなしかな。


❏1986年の割にはイケてるサントラ

 サウンドトラックは中々よかった。同時代の作品でいうと
 坂本龍一の「オネアミスの翼」のサントラとまでは言わないが
 単体でも聞けるレベルの音が創られてる。

 通常のBGMトラックだけでなく挿入歌とエンディングテーマも
 力が入っている。なんと80年代を代表するシンガー
 「竹内まりや」が歌ってる。

 結構アニメの挿入歌とか正直微妙なのばっかりなのだが
 ばっちりハマっててよかった。


❏惜しい

 ・音楽に予算取られて、声優に金がまわらなかったのかな?
 ・もうちょいマイクロバス組のキャラを生かして欲しかった。
 ・ストーリーの骨格はいいけど、ディティールの詰めが粗い。


❏最後に

 こんなにレビューが少ないのが意外。

 80年代の作品なので最近のアニメよりは粗いとこもあるが
 しょーもない作品とかではない。

 見ても損はしないと思う。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 4

08261216 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

懐かしく切ない

子供の頃嵌りました。
ぬいぐるみに蘭丸と名前を付けた程に。

今見ても音楽がいいですね。
近未来~現代~過去

蘭丸の行方(希望があるのがいい)

歴史を変えたい未来人が登場しますが
もし、織田信長が生きていたら?と思う歴史ファンは多いはず。
私もその一人です。

古いアニメなので、作画と声優の声ずれなどさすがに気にはなりますが
当時は人気があった様に思います。
小さかったので、記憶が曖昧ですが、レコードだったか。アニメ本も買った覚えがあります。(買ってもらったのでしょうね)

今見ても切ないエンディングです。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 0
ネタバレ

ato00 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

古い作品には古い作品の良さがある。

タイムマシンで逃れてきた未来人。
それに巻き込まれ、現代人がともに過去へ。
東京大空襲→幕末?→関ケ原の戦い→本能寺の変。
シンプル&ベタな時間遡行もの古典的アニメです。

80年代の作品だから、古いです。
絵柄もストーリーも声優さんの演技も。
ヒロインの娘なんて、今のアニメで慣れている眼にはほぼ化石状態。
ツッコミ所は多々ありますが、ストレートな物語には好感がもてました。

{netabare}未来は究極の管理社会。
ゆえに、それを変えたい気持ちが過去への干渉を決意させるんでしょう。
過去は過去で使命に燃えた人々がいたり。
その化学反応を興味深く感じました。{/netabare}

SF小説界の大物眉村卓さん原作。
有名漫画家萩尾望都さんキャラデザ。
未来からの少年のc.vが戸田恵子さん。
と歴史掛っていますが、意外と楽しめました。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 13
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