手紙でファンタジーなTVアニメ動画ランキング 4

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早速見ていきましょう!

87.4 1 手紙でファンタジーなアニメランキング1位
色づく世界の明日から(TVアニメ動画)

2018年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (1141)
4879人が棚に入れました
物語の始まりは数⼗後の⻑崎。⽇常の中に⼩さな魔法が残るちょっと不思議な世界。主⼈公の⽉白瞳美は17歳。魔法使い⼀族の末裔。幼い頃に⾊覚を失い、感情の乏しい⼦になった。そんな瞳美の将来を憂えた⼤魔法使いの祖⺟・⽉白琥珀は魔法で瞳美を2018年へ送り出す。突然、⾒知らぬ場所に現れとまどう瞳美の視界に鮮烈な⾊彩が⾶び込んでくる…。

声優・キャラクター
石原夏織、本渡楓、千葉翔也、市ノ瀬加那、東山奈央、前田誠ニ、村瀬歩
ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

アズライト

色が見えない少女がタイムスリップするお話。

1話
{netabare}
主人公の月白 瞳美は色覚異常で周囲と馴染めません。
周囲が夢中になれる風景であったりを共有できない。
人と馴染めない分、周囲のイメージと違って、瞳美は純粋。
本作がテーマとして扱っている「色」について、
色が見えないから、哀しい、と言うわけではなく、
哀しいから、色が見えないように感じました。
母親との別離、年数の経過、友人の欠如、そういったことから色が見えないのかな。

瞳美は魔法なんて大嫌いという。魔法使いという自分の家系に対するものか、「一人でも大丈夫」という魔法を使ってしまう、自分の心の弱さに入り込むからだろうか。
葵 唯翔の絵(デジタルで・・・)により、瞳美の世界に色が戻る。

今作が瞳美の色を取り戻すためには、何が必要であるのか、それを追っていくことは必要でしょうね。
その中で、心が純粋で脆い瞳美の、細やかでいじらしい感情の動きを期待しています。

サブのポイントとしては、自分の元々持つ、魔法使いと言う血筋や、一人でも大丈夫となってしまった現状で友人の存在について、どのように肯定していくのか、と言う部分を重視してます。

それにしても、瞳美の髪が銀色なのは外人の血でも入ったのだろうか。琥珀ばあちゃんもしくは瞳美の親は外人と結婚したのかな(笑)
キービジュでは、色はそんなに銀色じゃなかったから、アニメ的表現だろうか。
{/netabare}

2話【モノクロ】
{netabare}
二話で多用された瞳美のモノクロの世界と色のある世界の一瞬の切り替え。

モノクロ写真は、色、という情報が抜け落ちて、過去の事象(写真の中に収めた物)をみています。
その時、私は、写真を取った時の時間の流れよりも、自分の生きている時間の流れが、はやいような気がするのです。
なので、瞳美の世界は、私の生きる時間とは少し時間の流れが違うような、そういう錯覚を覚える印象を受けました。

また、色のある世界から、モノクロの世界に変わるシーンは、私の感じる世界がこう見えて、瞳美の世界がこう見えてしまうのか、そういうショッキングさが感じられて、瞳美の抱える色覚障害というものが、瞳美に与える影響の大きさを納得してしまいましたね。

{/netabare}

3話【暗示】
{netabare}

今回は瞳美に対して暗示によってどうなるか、というアプローチがなされていましたね。
ポッキーを杖代わりにした時も(ポポッキーとかいってたかな?)、
曾祖母である瑠璃が「初心者はこういうものをつかったほうがやりやすい」
という事を言っていましたね。
つまり、魔法使いのオールドなイメージ、大きな帽子に杖を携えたような、そんなイメージで、なりきった気分になったほうが使えるということかもしれません。
それは、私は魔法が使える、という思い込み、自己暗示を掛けやすくなるための一つの手助けでしょうね。

そのほかにも、水色の星砂を撒いたので水の上を歩けると思い込んだ瞳美の思い込み、
人に色が見えないことを隠す理由にある、他人への思い込み、
モノクロ写真なら自分にもできるかもしれないという、希望のような思い込み、自己暗示。

彼女が色が見えないことや魔法が使えないことは、彼女自身が自分にアレができるコレができると思い込めるような自己肯定によって、解決されるのかもしれません1ね。


{/netabare}

【魔法が解けるとき】
{netabare}
二話で瞳美が「魔法なんて大キライ」という言葉を、前篇と後編で使い、その心境の変化を、表情や声色で表しましたね。
この言葉を自己暗示のように繰り返していた瞳美。
「一人でも大丈夫」という言葉の小さな魔法、思い込みのように、この言葉も小さな魔法なのかもしれません。
それが二話の後半で言った「魔法なんて大キライ」という言葉はどこか魔法が解けかけたような…そんな印象になりました。
{/netabare} 

4話【世界】

{netabare}
一人のか弱い少女のお話と見ていましたが、世界との向き合い方、セカイ系っぽいお話をするかもしれません。
「魔法の力を与えてくれたこの世界に恩返しがしたいの」
そういった60年前のババ…(ゲフンゲフン)琥珀は、瞳美からみて、大人に見える、もしくは先を見ているように見えたでしょう。

琥珀が作品中で悩みであったりとかを抱えるかどうかは、作品の最終回に深く関わってくるでしょうね。

琥珀は世界を肯定しており、作品世界の理の一部である「魔法」を肯定しています。
つまり、瞳美は、世界の理である魔法の力を有していながらにして、否定していることが、色が見えない原因になっているのだと、今回感じました。
潜在的な瞳美の魔法の力が琥珀の魔法によって引き出されたことからも、彼女の心によって色が見えないことを、彼女の中に内在する魔法が作り出しているのでしょう。
でもそれって…少しおせっかいな世界かなと、思いもするんですよね。

また、写真部の皆の恋や物語も平行して進んで言っていますが、一つ一つの物語に意義があり、それぞれの物語が最終的に帰結する場所へ意味があることを期待させて頂きます。

{/netabare}

5話【魚】
{netabare}

今週は写真部の女性メンバーのあさぎの恋を回収する話も絡めてましたね。
あさぎの恋が、あさぎを成長させる要因として作用する方向に持っていったのは素晴らしいと思います。
ただ、主人公である瞳美をあさぎの成長の間接的な原因としたポジションにおいたままだったため、瞳美とあさぎの距離は縮まっていないことが気がかりです。

さて、今回は瞳美が葵に渡した星砂(懐かしい思い出の星砂)、それをつかうことによってあおいが金色の魚を見るという展開がありました。
ひとみが魚をみたときは、あおいのデジタル絵を見たときです。
つまり、星砂が魔法の類であるならば、あおいのデジタル絵は、別の魔法がかかっているのかもしれません。それは、あおいが絵に込めた思いが、魔法として絵にかかっているということであってほしいですね。


{/netabare}

6話【写真】

{netabare}
今回は色々転換点になりそうですね。

まずはあさぎの恋ですが、部長との関係を「小学生時代の関係のままで良い」から、変えたいと思ってあのように部長の手を振り払った。あさぎの拙さが残るコミュニケーション方法にとても青春を覚えますね。

次に、あおいの絵の中に瞳美が入ってしまったことについて。
情報が多いので整理しましょう。
①絵の中に入る時、アズライトがモノクロの世界で光っているように見えた
②絵の中の奥には、死んだ金色の小魚、死んだ大きな金色の魚がいた。
③瞳美が絵の中の奥で立っていた場所は瞳美曰く「荒れた場所」
④絵の中には渦まきが中心にあるような湖(もしくは海)があって魚はそこにながれた。
⑤渦巻きの中心に行こうとする魚を、網のような物を持って捕まえようとしていた人がいた。
⑥絵の中の事を聞かされたあおいは、なにか思うことがありそうだった。

では、内容を考えてみましょう。
まず①については、絵に入ったのは瞳美の魔法によるものであるという事の裏づけでしょうね。アズライトは魔法の力を増幅させるような意味合いを持ち、それを描いたものです。
②について、これについての疑問点は誰の心の内を描いたものであるのかという事。
これはあおいの心の内を描いたものであるのか、それとも瞳美の中なのか。
というのも、⑥のようにあおいは自分の絵に対しての迷いを描いているように見えつつ、後半で瞳美に色が見えるようになるとき、彼女の心の変化によって大きい魚の状態が変化することがあることが、この描写の疑問点です。
この疑問点については保留しておきたいですね。④と⑤を理由として解釈すると、小魚はあおいの心のもの、大魚は瞳美の心のものであるかもしれません。

③番についてですが、瞳美があおいに、瞳美のために絵を描くから見てほしいという言葉で、荒れた場所に色がついたことから、瞳美のポジションを表現したように見えます。

さて、絵の中についてはこれくらいにして、瞳美の世界に色がもどったことについて考えます。
あおいの干渉によって瞳美の心が変化したために色が見えるようになった、ということは、誰が見ても間違いないでしょう。
なぜ色が見えるようになったかについては、色が見えるようになったとき魚が登場したため、色の見える見えないは魔法の関係していることは明らかかと思われます。
色が見えるようになったときに死んだ大魚が金色になり蘇った事については、瞳美の心の中での変化をえがいたものでしょう。
あおいの干渉というのが、「君のために絵を描くから、君に完成した絵を見てほしい」というのですが、魔法を作り出しているのは瞳美であるために、瞳美の心の内がいまどうなっているのか、という事が重要なのです。
色が見えないのは瞳美が世界を肯定できないせい、と以前書きましたが、
あおいの干渉で、瞳美が世界に肯定できるものが出来た、と考えると、
おのずと今後の展開が見えて来るような気がします。

それと、魔法写真美術部が仮装をして写真を取りにいったとき、瞳美が道のブロックの写真を取っていることが非常に印象的に見えました。
その残った写真は他の人が見ればただブロックを取っている物にしか見えないかもしれない。ですが、写真を取った瞳美がその写真を見れば、この時どういう思いで写真を取ったのか、他に心躍るような景色はそこにあったのに、ブロックを取った理由。写真という映像を保存する媒体が、人の記憶や感情を呼び出す装置になるというのが、とても面白い描写でした。

{/netabare}

7話【好き】
{netabare}
今回は胡桃回でしたね。個人的には胡桃に共感をもてた良回のだけれど、進路の話と捉えるととたんに面白くないと感じる方もいるかもしれません。
私は今回は、「好き」を強く意識させられる回だったと感じています。
その「好き」とは恋愛感情におけるものではなく、物事に対しての「好き」ということ。

物語を考える前に、少し胡桃の状況を整理しましょう。
①胡桃は人生をかけるほどの好きなものが無いことに悩んでいる。
②胡桃の姉が好きなものを仕事にしたことをすごいと思いつつ、①の自分と比較して、劣等感を感じている。
③劣等感を感じていた胡桃であったが、千草によって自分の好きをあせらずに見つけることを気付かされた。


私が共感を感じたのは、胡桃の姉への感情。姉へ尊敬を見せていると同時に劣等感にさいなまれている彼女に、未発達な高校生としての悩みとして適当であることを感じました。
物語としてのこの悩みへの解決について、千草という部内でも胡桃に近い存在であり、お調子者的な性格である事が、よい解決を迎えた理由だと思います。

私なんかは胡桃に対し、自分は自分、他人(姉)と自分を比べるな、と、彼女の好きが見つからないことに対する回答とは別の頓珍漢なことを言いたかったのですが(まあそれは、胡桃の姉に対する劣等感に対しての意見なのですが)、千草は、ひとによって好きの度合いは違う、好きなものはいつか見つかる、あせることはないと、いつもの調子で言い、胡桃を救い上げました。これが胡桃の側にいて、そして高校生であり、お調子者である千草の考え方であり、登場人物の性格の提示がとても上手くいっている回だと思われました。


ちなみに「ヴィーナスの重荷」というタイトルから、荷物を置いて、走りだす胡桃や千草のシーンを考えると、ヴィーナス=胡桃であり、胡桃にとって、好きなものがなければならないというような、足かせのような考え方を重荷と考え、それを置いて走り出すことが、胡桃の悩みの解決シーンとしてさわやかさを演出していましたね。

{/netabare}


8話【光】
{netabare}
さて、いよいよ来ましたね。今まで世界を祝福してきた琥珀のアイデンティティを脅かそうとする展開が。

瞳美の「(未来に)帰りたくないなあ、ここにいたいなあ」という発言が琥珀の気持ちを大きく揺り動かしました。

では、琥珀がなぜその発言で動揺してしまったか。
琥珀は、世界を自分に魔法を与えたことを肯定しており、感謝しており、恩返ししたいと考えています。
その恩返しの手法として、魔法で人を幸せにしたいということで、人の願いを魔法で叶えるために、魔法の勉強にまい進してきたわけです。
瞳美に対しても、いつか帰りたくなるだろうと思い、自分が未来から送ったこともあり、その願いを叶えるために、時間遡行魔法の練習を積み上げていたわけです。
しかし、瞳美の今の思いは異なりました。この時間にいたいという瞳美の願いに対して、モノローグとして「私は魔法で人を幸せにしたい、でも魔法で人を幸せにするのは本当に難しい」と語ります。
琥珀の中に流れた感情を整理しましょう。
①瞳美が幸せだと思うことを叶えてあげたい。
②未来に帰すことは瞳美の幸せだと勝手に思っていた(瞳美は未来に帰りたい?という琥珀の問いは、琥珀自身なら帰りたいと思うエゴイスト的質問だった)
③瞳美のここにいたいという気持ちを、全肯定できない。
④瞳美のこの世界に留まらせることは、瞳美のためになるのか、それとも、幸せになるのか
つまり、琥珀は瞳美は元気になったら帰りたいだろうという、琥珀視点で考えていたのですが、そうではなかったため、瞳美を幸せにする方向性が見えなくなってしまったことが、動揺した理由だと見ています。

この状態に入ったことで、琥珀は瞳美の幸せにすることがどういうことか、自分が魔法で人を幸せにしたいと思っていたがその具体的方法を考えるようになるのはかもしれませんね。
その過程の中で、現状魔法写真美術部のグループの中で誰に支えられることなかった琥珀が、グループの中でのやり取りを通して変化していく展開が見られるんじゃないかと期待しています。

そして、その問いの中に、琥珀が上手くいっていない時間遡行魔法に必要なものが存在しているんじゃないかなと、考えるばかりです。


さて、本筋以外の話から読み解きますが、今回では瞳美の取る写真が雰囲気が変わった事を部内の皆に指摘されていましたね。光の意識が出てきたと。
この作品は色づきを大事にすると共に、光による煌きが重要視されていますが、それを強調するのと同時に、光の当たらない闇の部分を見ることもあるということです。

以前の瞳美は、「光なんていらないという写真が多かった」と部内の人間から言われています。では、瞳美がどこを見ているか、という視点で考えると、部内の人に色が見えないことを告白していない時は、彼女は闇を見ていました。それが告白後は、光を見ている。

つまり、瞳美が今の時間にいることで、色が見えるという希望の光に囚われているならば、光の当たらない闇の部分は、瞳美の目に入っていないもの、魔法写真美術部に依存し、彼女の自立という部分の視点が、瞳美には見えていないという指摘が、琥珀の動揺のシーンにはあるのかもしれません。



追記です。ここからは、琥珀という登場人物について、やはり考えなければだめだろうということを感じています。
私の琥珀に対するイメージは、本音をぶちまければ酷いものですが、
瞳美に対する、私は経験あるからわかるよ感
琥珀の大人びた仕草についているニセモノ感
思春期を経験していないかのような家族との関係
まあ、他にもいろいろ言いたいのですが、それは上記のものと類似事項になりそうなので控えます。
上記のものからもわかるように、琥珀を非常に大人びて見せていますが、素人目にもわかる、うそ臭さ。
この感情を悪いように考えるのではなく、製作者の意図するものだとしたら?
現に8話、あの冒頭で琥珀が「世界にありがとうといいたい、世界に恩返しすることに決めた」なんて、普通の人ならありえないほど世界を最初から肯定するわけです。意図して一般人と乖離、もしくは他の登場人物との差を示しているようにしか見えません。
つまり、この8話から、琥珀の性格が、周りの高校生と乖離しているように見せきったところから、いやいや、彼女にも、弱くて、同年代の子に支えてもらいたい事や変わる事ができるんですよって事を示してくれるんだと、期待しています。
{/netabare}

9話【時間】
{netabare}
今週を告白回と捉えるか、ショウ回と捉えるかそれが問題だ!
はい、ということで、今回はショウ(部長)という人に焦点を向けた回だと思っております。
一番印象深いシーンはあさぎと一緒にショウが撮った写真を見ながら会話するシーンで、ショウが写真で取ったその時間について語っているときです。
日々流れていく人の営みを眺めて、その日常を肯定、愛おしいと思っているのではないかと感じさせてくれます。
同時に、その写真が瞳美と一緒に行きとったものであり、ショウが瞳美を意識していることからも、未来に帰ってしまう瞳美に対する、今一緒にすごしている時間が一瞬かもしれないという辛さを含んでいることも伺えるのかもしれませんね。
{/netabare}


10話【友達】
{netabare}
意外にもあさぎと瞳美のすれ違いはすぐに終わりましたね。
あさぎと瞳美の距離感が埋まっていないことは以前の回に書きましたが、今回の事でかなり近づいた事から、方向性は間違っていません。ただ、物語の構成として、重大なことに見せかけて次の回であっさり解決させてしまうのは、正しいのか、少し疑問です。

さて、今回瞳美の親について、触れられました。
瞳美がショッキングな出来事により色が見えなくなったことは、1話で書いたときにも触れましたし、作品内で瞳美自身が色が見える時期があった事は匂わせていました。
幼少期の瞳美を置いて出て行ってしまった瞳美の母親、ようはネグレクトというものですが、この出来事は母親だけが問題ではないことは、あおいが瞳美を励ます時にいったとおりです。瞳美の母親がネグレクトした原因は、様々な原因に寄るものです。
今回のネグレクトの事案について、琥珀自身はどう考えているでしょうか?
魔法の力を与えてくれた世界に感謝したい琥珀、その琥珀の子供は魔法の力を有さない。という事は、琥珀の子育ては、容易ではなかったはず。
世界に祝福された人間が、祝福されていない人間を育てるようなものです。
どこかで琥珀とその子供の歯車が食い違い、子供の性格に影響を与えたと考えます。瞳美という子供が母親に自分の魔法の力を見てもらい喜んでもらおうとすることに、喜びの感情を得られなかったとするなら、それは瞳美の母親の人格を形成した環境に原因があります。
正しく、いや、100%正しいなんて事象は存在しませんが、もし魔法が使えない母親が、魔法が使える子供が喜んで使う姿を見たときに、その母親が経験してきた、魔法が使えなくて苦しんだ経験を、子供は経験しなくて済むんだと、安堵と喜びを覚えるのが、ゆがんでいない人間です。
そのゆがみがこの瞳美の母親には存在し、周囲の環境、親である琥珀を含め、そういったところからネグレクトの芽は生まれているのだと感じました。
瞳美が色が見えなくなったのが母親のネグレクトだけが原因とするなら、ネグレクトするような母親を作ったのは、琥珀だという事が言えますね。

そしてその話題について、作品内で琥珀に自分の子がネグレクトをする未来が打ち明けられるか?という疑問が出てきます。
シュタインズゲート曰く、世界線の収束により、そのことが伝えられても、琥珀は瞳美へのネグレクトの発生を止めることは出来ないでしょうね。
もしくは、タイムパラドックスの回避のために、そのこと自体が伝えることが出来ないという事になるかもしれません。伝えたらネグレクトが発生しなくなるので、瞳美が過去に来る未来がなくなり、過去にいる瞳美は消滅もしくは帰還するかもしれません。

ラストシーンに瞳美が過去に来た理由を考え始める描写があります。
瞳美は自発的に過去に来ていないという事を含めると、過去の琥珀にその理由を尋ねるところから始まるかもしれません。
しかし、未来の琥珀は「いけばわかるわ」という言葉から、誰かに教えてもらうようなことではないことであるのは明確です。
個人的な考えですが、写真部の人間との会話の中から考えると、この写真の時はこんな事があったよねということを思い出せる、だとか、非常に仲間内での出来事を重要視している事が伺えます。
瞳美が写真部の友達たちと共有した時間の中から、過去に来た答えは瞳美自身により導かれるのではないかな。

それと、今回の見所は、瞳美が泣きじゃくりながら、自分に怒っているシーンですね。ないている内容についてはいいとして、悲しんだり怒ったりする感情の爆発が、瞳美には必要なんだと表現してくれたシーンでした。
つまり様々な感情が彼女の世界の色付きを形成してくれるということなのかもしれませんね。
{/netabare}

11話【琥珀】
{netabare}
他のレビュワーさんのレビューを見る限りでも、良い印象ではない回であることは確かです。
私も、この回について、違和感が感じた事があるのでそれを整理します。

まず、前回までに何も触れていない時間魔法に対する世界の修正力がいきなり出てくる。これは単純にダメですね。
つぎに、前回で過去に来た意味を瞳美が考え始める描写があったが、今回はそれに全く連続性が無い。
これは個人的な感想に入るかもしれませんが、琥珀のおしつけがまさMAX。世界が瞳美を消しちゃうんだからしょうがないといって、グループの意見を納得させることを1話の中で消化するという、急ぎ足で無理やり話をまとめた感を出しています。瞳美の意思と、琥珀の意思がまだ反している演出があるところは、まだ琥珀に期待したいですね。

そして、瞳美とあおいの恋愛については、紙飛行機を追いかけていったら、二人が出会うのはまだわかるけれども(あおいの元へという魔法がかかっているため)、あった瞬間抱き合う、そんな関係まで発展していたっけ?という、物語の急変ぶりにショックを受けました。

この11話で残念なのは、やはり琥珀について、舞台装置化してしまいそうな不安が残ります。
今回の琥珀は、時間魔法が成功させることができるかどうかについてばかり不安にしていて、瞳美の心に気づけていない、瞳美がここに来させた意味を考えていないという描写であればいいのですが。つまりこの回を、琥珀の失敗回と捉えて、来週が琥珀の成長回と期待できなくはないわけです。
もし、本当に琥珀が時間魔法をするだけの存在であり、瞳美の心を考える友達のポジションを持っていないなら、琥珀は物語の舞台装置であるという、残念な役回りしか与えていなかったという評価になってしまうでしょうね。


前回の感想で、タイムパラドックス回避のために、瞳美が消滅・もしくは帰還するかもしれないということは書いたけど、今回とは全く文脈が違います。琥珀がネグレクトを発生させないようにしたら、瞳美が過去にくるか?という文脈で話しました。

今回出てきた世界の修正力は、二つの発生の理由が考えられます。(作り手のご都合というものを排除した場合)

まず、琥珀が過去に行かなくて済む未来になったから働いた、というのが物語を良心的に見た場合の感想になります。

次に、琥珀の言ったとおり、本当に世界が元通りの世界にしようと修正するために発生したという理由。こちらが本当になると、魔法という力に向き合って、変化してきた瞳美の成長を描いてきた物語が、なかったことにすべきという力であるわけですが、この方向で本当に物語を進めるか不安ですね。
好意的に見れば、瞳美の取り巻く世界は瞳美を祝福しているようには見えないわけです。しかし、琥珀は自分に力を与えた世界を感謝しており、瞳美に対してあまりにも残酷な運命を突きつける世界に対して、世界を愛する琥珀が、世界に何を思うのか、それが気になりますね。


{/netabare}

【幸せ】
{netabare}

瞳美の色が戻った時、母親と見たときの花火や、過去に行く直前に見た花火を思い起こさせて、とても色彩のあるシーンでした。

琥珀については魔法の神様に瞳美がもう少しこの時間にいることを神頼みしたり、未来に変える直前に瞳美に謝っていたりと、琥珀の無力感が際立ったいました。
同時に、瞳美の心に生まれた気持ちを、「それって幸せってことなんじゃない?」と、言い当ててしまう辺り、琥珀は大人なのか、それとも若者なのか、微妙なポジションに立っています。

今回、「幸せ」が宿ることで、瞳美は色が見えるようになったような、そういう印象を受けました。母親と一緒に見た花火の時は、瞳美のなかに幸せがあったのでしょう。1話に瞳美が「誰かと見ても楽しめない」といった沈んだ気持ちを吐露する場面を拾ってきたのが幸せを強調していました。
その為、やはりストーリーの中で、瞳美の変化を出した表現というのは、作品を見る人に大きな感動を与えてくれたと思います。

最終回への次回予告が「私の色は何色なんだろう」という一言で、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」を思い出して、空気も読めずクスリとしてしまいました。

それと、先週から引き続いた瞳美とあおいのハグについて、今週見ればわかるとおり、まだ瞳美もあおいも自分の好意を伝え切れていないように見えました。あのような熱いハグをしておいて恋人関係まで発展しない所が、この二人らしいですね。

最終回を前に少しおさらいといいますか、拾われているかわからなかった描写について。
あおいについて。最初に瞳美があおいの絵の中に入った時、大きな渦の中心に導かれる魚と、それを捕まえようとする影。この描写はあおいの悩みを含んでいたと考えるのが良いでしょうね。あおいの悩みが解決されたと同時に、この描写が示していたことは提示されたのだと思います。
あの金色の魚は、あおいが幼い頃に書いた絵ですが、瞳美との関係は、最終回、明らかにされるのでしょうか?楽しみですね。

それと私がずっとイメージしてきたこの作品の作品像について。
OPの映像で、魔法写真美術部のメンバーが揃って同じ方向を見て並んでいるシーンがあります。同じ時間を共有し、様々な悩みや青春を共に助け合い語り合い経験し、そして繋がりが強くなった友達を得ることが、この作品に求めていたことでした。
だから、琥珀だけが、その輪の中に入りきれていないのが、はがゆかった。
私は、琥珀がもっと魔法写真美術部に、精神的に心をおいてほしかったのだと思います。魔法がうまくいくように、部の皆の協力を得る、ではなく、琥珀自身のメンタルに仲間の存在があって欲しいと思い続けていました。

最終回、どのような物語になっても、私はこの作品を好きでいられると思います。

{/netabare}

13話 【色】
{netabare}
ほぼすべての伏線の回収回なので、非常にすっきりした部分が多いですね。
まず、色について。今作品は陰影による表現を活かしていましたね。光によって照らし出される明るい色と、その光によって生まれる暗い色。明るい色も暗い色も、どちらも併せ持って自分を好きになってほしいと、あおいは瞳美に言い残しました。それは、色とは、瞳美の持つ様々な感情の部分であり、それを肯定することで、瞳美は自分を好きになれる、もしくは母との離別に対する後悔や自責の念に向き合うことができるのだと感じました。

次ですが、未来の琥珀が人生の後悔について語ります。彼女が近くの人を幸せに出来なかったこと、このことについては、琥珀の娘について、魔法が使えないことについて、親族からの目から守ることが出来なかったことや、そして瞳美についてもそれによって色を見えなくしてしまったこと、その後悔が含まれていましたね。
つまり、作品内で17歳の琥珀という人間が成長しない理由は、
60年後にようやく過去の後悔を吐露する未来が決まっていたからでしょうね。
つまり、琥珀が家族に対して省みる力は、60年前の琥珀にはなかった。琥珀が60年前の時点でただの青年であった事を示したのではないでしょうか。

以下、最終話で気になった事。
魔法写真美術のお別れの言葉を言い合うシーンがリアルすぎる。
あおいの絵だけ色が見えることの理由。ずっと好きだった絵本だから、ということなのかな。世界を肯定しているか、の話と絡めると、あおいの絵、または絵本の中の世界が瞳美は幼い頃から好きだったから、色が見えたのかな。

色が見えるようになった理由。これは瞳美の気持ち、世界に色が溢れているという、世界に対して好きになれること、この辺りの問題提起を解決してくれたと思う。
60年後の琥珀が仕掛けた魔法が、琥珀の気持ちを汲み取る魔法であった事。今の琥珀には気持ちを汲み取る力が欠けているので技術的に無理というより人間的に無理なのだろう(ちょっと琥珀に厳しすぎる見方かな?)。



{/netabare}

まとめ
{netabare}
技術的なことや芸術的なことはわかりません。わかりませんというのは、人によって美しいと感じるものは人それぞれだと考えているためです。
特定の色に弱い色覚障害を持った人に、その色を美しいよねといっても、共感が得られない疑問にぶつかってきました。華やかだよね、という言葉ひとつとっても、それぞれの華やかへの定義が違う事に悩んでいました。

この作品において私は、モノクロによって強調された世界であったり、日の当たり方、世界の時間の流れによって作り出された美しいワンシーンであったり、人の感情が抑えきれない時の姿を、直感的に美しいと感じることは出来たと思います。(ただ、私は作品内で色鮮やか、といわれるシーンの一部が、何が素晴らしいのか、よくわかりませんでした。それが人と私の違いだと思います。)
どうやったらこの作品の作画を述べることができるのか、ずっと考えてきました。
ですが、私はアニメの技術的なことは素人であり、直感的に感じた事を、何かしらの言葉にするしかないという考えになりました。それは、美しいと感じた時の感情、喜び、ときめき、わくわく、そういった私の中から生まれる1次的な感情を、性格の違う他人にロスなく伝え、共有したいと考えました。それらの感情を得た時に初めて、作画が良いと、言うことができるのだと私の中での定義ができました。時には、感情が異なりぶつかり合うこともあるけれども、その事象ですら、私はこの作品では悪いものだとは思わなかったです。それは押し付け合いではなく、相互の感情への理解によって生まれるのだと感じています。

この作品は、仲間と共有する時間、時間そのものは世界にある物として、その時間の中で共有した感情の愛おしさを、感じさせてくれる作品でした。

{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 60
ネタバレ

HmFDB75691 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

最終話&総評 瞳美の魔法についての考察

タイトルからはどんな話なのかわからない。作画がきれい、というのが第一印象。

第1話 あの男子は……
{netabare}
瞳美が飛ばされた家の男子は、祖父じゃないかな。
結ばれるために瞳美が必要とか、ベタな展開を考えてしまった。

ただ、瞳美が恋愛すると、パラドックスが起きてしまう。
瞳美がもともと2018年にいたとかなら恋愛もできるか。

色々予想したくなる作品。
きっと花火のシーンはまた出てくるだろう。
{/netabare}

第2話 今後の展開を予想してみた
{netabare}
瞳美の視点で話が進むから、景色はすべて白黒なのが正しいんだろうな。

”唯翔=瞳美のじっちゃん”はありそう。琥珀よりも瞳美のほうが好きになるおいしい展開もあるし。

瞳美は、子供のころまでは色が見えていたけど、魔法でじっちゃんの絵を焼いてしまい、魔法が嫌いになって、色も見えなくなったとか。唯翔の絵だけは色が見えるのはじっちゃんだから。
記憶を取り戻したあと、琥珀に話して、琥珀が魔力を溜めることになる……。

現時点ではこんな感じで予想してみた。
{/netabare}

第3話 よくある入部物語
{netabare}
写真部に入部するパターンってよくある。話も作りやすくて無難な部なんだろう。体育会系でもいいと思うんだけど。

次回は琥珀が登場するから、謎の部分も明らかになるだろう。
予想としては、唯翔と琥珀は仲が悪くて、そのうち瞳美がじっちゃんたちだと気づいて、仲を取り持つ。でも、唯翔は瞳美のほうを好きになっている……。

瞳美が飛ばされたのが唯翔の部屋っていうのが、琥珀と唯翔の関係を示す伏線になっていると思う。

この時点で、瞳美が過去に来た経緯を、琥珀が知っているかどうかが、次回のポイントだと思う。
{/netabare}

第4話 瞳美は恋愛しないのか?
{netabare}
瞳美が未来からきたことを話したの意外。恋愛要素がなくなってしまった。琥珀の恋愛を導く役になるのか。主役が恋愛しないのもどうかと思うけど。

瞳美が色が見えないのは、幼いころにすごい魔法を使ってまわりに迷惑をかけたからかな。唯翔が危ない目にあったときにその魔法が現れて、幼いときの記憶を取り戻すとか。あの魚が伏線なんだろうけど、よくわからん。唯翔が関係している可能性は高いと思う。
{/netabare}

第5話 予想を考え直してみた
{netabare}
よく考えたら、唯翔が瞳美のじっちゃんなら、名前くらい憶えているはず。つまり、メインキャラのなかに、琥珀の相手はいないことになる。古本屋のお兄さんがちょっとあやしいかな。本を買うのが目的でないとか、ベタな感じで。

予想を考え直してみる。
色が見えなくなったのは、瞳美が幼いときで、未来の唯翔となんか関係がある。瞳美が未来からきたのを唯翔は知っているので、幼い瞳美と再会しても気づくはず。この再会したときに、なにかがあって、色が見えなくなった。

あの魚は未来の唯翔が描いたものだとパラドックスが起きてしまう。高校時代に見せられた魚をモチーフにして描いたことになるから。幼い瞳美が魔法で出したと考えられる。

色が見えなくなったのは、なんかすごい魔法を使ったから。それをまた学校で出したときに、(未来の)唯翔も思い出す……そんな感じで予想しておく。
{/netabare}

第6話 絵筆に変えるんじゃないか
{netabare}
瞳美が色が見えなくなった要因が、唯翔にもあるのがほぼ確定したと思う。

気になるのは、唯翔が教えるまえから、瞳美は金の魚を知っていたのか、という点。
瞳美が魔法で見たのは、絵がうまく描けない唯翔の心理描写だから、金色の魚も唯翔の心理面から出たのかもしれない。

金色の魚については、二つ考えられる。
・幼いころに見せてもらった記憶が呼びさまされて魔法で出てきた
・唯翔の心の中にあるものを魔法で出した

いまのところ、瞳美が色が見えなくなったのは、未来の唯翔の絵(金色の魚?)を台無しにしたのが原因と予想している。タブレットだから微妙と思ったけど、金の魚を描いたころを思い出して、筆に変えるかもしれない。
{/netabare}

ここまでの予想と考察
{netabare}
1クールなら半分なので、これまでの予想と考察をまとめてみた。

・瞳美が色が見えなくなった原因は、未来の唯翔と関係がある
唯翔の部屋に飛ばされたのは意味があるはず。
唯翔が絵を描く気になったのをきっかけに色が見えたから(一時的か)。
有名な画家になった唯翔の絵を魔法で台無しにしたのか?


・唯翔は絵筆で描く
タブレットだとデータが残るので、瞳美が未来の唯翔の絵を台無しにする展開にできないため。
キャンバスに向かってるほうが絵になる。


・琥珀の相手、瞳美のじっちゃんは、メインキャラにはいない
名前くらい憶えているはず。
琥珀が会っていて、瞳美が会っていない男性。古本屋のお兄さんが有望。


・瞳美の魔法は、記憶のなかにあるものを表示させるのか?
琥珀の汽車と唯翔の魚から。
なにかとトラブルになりそうな魔法でもある。


・未来に戻ってから(花火はまだ続いている)、あさぎと将の孫と出会う
さらに、唯翔によく似た男子が現れて……。


・パラドックス
過去に飛ばされた経緯を瞳美から聞いて、未来の琥珀が魔法を使ったとすると、パラドックスが起きる。
魔法を使う動機が生まれたのが、魔法を使ったあとにあるからだ。
{/netabare}

第7話 なにを話すのか予想してみた
{netabare}
瞳美が気になることを言って終わっているけど、伏線っぽいのがないのでそれほど重要とは思えない。こんな感じかな。

「わたし、そろそろ未来に帰ろうと思うの」

馴染み過ぎて視聴者も忘れてそうだから。
ほかに思いつかない。瞳美は主人公なんだけど、色が見えない以外はそれほどの存在感がない気もする。
{/netabare}

第8話 伏線回か
{netabare}
予想して観てる者には伏線回にしか思えなかった。
色が見えなくなった要因に唯翔が関係しているのは予想済み。

琥珀の相手と考えている古本屋のお兄さんがふたたび登場。かなり有力になったと思う。
さらに、琥珀が初めて魔法を使って、襖に穴をあけた点。これと同じことを瞳美がやってしまったのではないか。穴をあけたのは、未来の唯翔の絵かな。
絵本という新たな伏線が出てきた。現時点ではイラストを唯翔が担当してたと想像するくらい。

何十年もかけて瞳美を過去に送ったんだから、戻すときも何十年もかかると考えられる。だけど、そうならないはず。瞳美が未来に戻りたいと思った瞬間に戻れる気はする。

瞳美のセリフも伏線のような気がしてならない。

部員といるほうがいいと思う心情の変化がわかりにくい。瞳美がいた未来では、冷たい人間ばかりなのか?
問題なのは瞳美の心の内なんだと思う。
瞳美が未来に戻ろうとする心の変化がどう描かれるか、そこが重要な気がする。
{/netabare}

第9話 恋愛要素は伏線なのか?
{netabare}
未来からやってきた人と結ばれる映画はあったけど、その場合、生まれた子供が未来を救うという伏線になっていた。
瞳美と唯翔の恋愛は伏線なのか?

ちなみに、琥珀の場合はこう予想している。
瞳美のために魔法を勉強する→本屋に通う回数が増える→店員のお兄さんと結ばれる

瞳美が現れたことによって、琥珀もあさぎも恋愛感情が大きく変わった、そういう流れなのか。生まれていない瞳美が変化を及ぼすとパラドックスだと思うけど。

瞳美と唯翔の恋愛要素は、別れの切なさを演出するためか。
それなら、別れる以上の未来に帰る理由がないといけない。

第1話を少し見直した。
たぶん、母親とのエピソードがあるだろう。母親が読んだ絵本のなかに唯翔の絵が出てきたのかも。
あと、瞳美に声をかけてきた二人の女子生徒の髪の色は、あさぎと胡桃と同じ気がする。孫じゃないか。
{/netabare}

第10話 ある程度予想できる展開
{netabare}
第1話を見ていたら、今回の話はある程度予想できる。
ただ、こういったエピソードを入れると、ストーリーのバランスが悪くなると考えていた。
なぜなら、

琥珀は魔力を溜めるより、生まれてくる娘の教育方針を考えたり、色が見えなくなる孫の症状を未然に防ぐほうがいいからだ。
運命は変えられない(既定路線)とするなら、あさぎの運命を変えているのが不自然になる。


瞳美を過去に送ったのは、唯翔に会わせるため、と考えるのが自然。
過去を変えるためとは考えにくい。それなら、琥珀が行くほうがいい。

ただし、瞳美が飛ばされた過去で、瞳美を過去に行かせる理由を作ったら、パラドックスになる。
だから、琥珀は理由を知らないと考えられる。

パラドックスを回避するところに、理由があるのかもしれない。
未来に戻る理由は母親に会うため、というのが有望になったと思う。
{/netabare}

パラドックス回避についての考察
{netabare}
問題なのは、時間魔法を使った琥珀の動機。
いまのところ、

瞳美を過去に送ったのは、瞳美が未来から送られてきたから

となっているため、原因(動機)と結果が同じになっている。
瞳美が未来からきたという記憶があるかぎり、パラドックスは起きる。
だから、琥珀(その他大勢)の記憶消去。これがパラドックス回避の必須条件となる。

記憶がなければ動機も消える。さらに、娘や孫の変化に対応していない琥珀の不自然さも解消される。
写真は残るので、瞳美は謎の美少女として語り継がれる。

動機が消えたので、新たに作る必要がある。
書き置きが定番だろう。ただし、

高校時代に瞳美が現れたことを、いっさい書いてはいけない

瞳美に関する情報を与えた時点で、パラドックスが起きるからだ。
60年後に孫が大変なことになるから魔力溜めといて、といったメッセージにするしかない。

未来改変でも回避できるが、このアニメはそういった雰囲気はない。
回避せずにそのままいく可能性はある。
{/netabare}

第11話 そんな魔法を、孫にかけるなよ
{netabare}
レビューを読むと、あまり評判がよくないようだ。
急展開とはあまり思わなかった。
将の前フリがあるから、唯翔の告白はあるだろうし、瞳美もそろそろ帰るだろうから、この二つが同時に進んでもおかしくない。
唯翔が告白した瞬間に、瞳美が未来に帰って、60年後に返事すると予想している。

ただ、時のあわいは唐突。

そんな危険な魔法を、孫にかけるなよッ!

って突っ込んだ。

無事に戻るのだろうけど、瞳美がどの時間帯に戻るかで、少し変わってくる。

1.琥珀が時間魔法を使うまえ
この場合、瞳美は二人いて、一人は花火に行っている。
無事に未来に戻ったので、琥珀は時間魔法を使う決意をする。

2.琥珀が時間魔法を使ったあと
この場合、瞳美は一人だから、問題ない。
だけど、無事に戻ってくるかわからずに、琥珀は時間魔法を使ったことになる。

安全を確認してから過去に送りそうなので、1の可能性が高そう。
ただし、視聴者に突っ込まれる可能性も高くなる。
{/netabare}

パラドックス回避についての考察 2
{netabare}
このアニメのパラドックスを説明するには、瞳美と琥珀にこんな会話をさせるといい。

「どうして、琥珀が高校生のときだったの?」
「だって、瞳美が高校二年のときに現れたから」
「そうじゃなくて、どうして高校二年を選んだの?」
「だからあ、わたしが高校二年生のときに瞳美が現れたからだって」
「そうじゃなくて、ああ、もう、琥珀のばかあ」

琥珀が高校二年を選んだ動機があいまいなのがわかる。
唯翔と恋愛し、瞳美の症状が改善したから、という理由ができても、パラドックスは回避できない。
「高校二年のときに、瞳美が唯翔と恋愛したから、高校二年を選んだ」となるからだ。


・なぜ、瞳美は、あさぎを知らないのか

瞳美が生まれたら、あさぎは会いに行くはず。うさぎのぬいぐるみを持って。
唯翔には魔法を封印した理由も話している。それなのに、幼い瞳美に関わっている様子はない。

歴史の修正力で、記憶が消えていると推測できる。魔法使いにも働くので、瞳美と琥珀からも記憶が消える。

記憶が消えたことで、瞳美を過去に送る動機も消え、パラドックスを回避できる。ただし、時間魔法を学ぶ動機も消え、留学先から帰ってきた理由も変わることになる。
{/netabare}

第12話 なぜ、琥珀に聞かないのか?
{netabare}
高校生=文化祭は定番すぎる。瞳美と唯翔にもっと特別な時間を設けたほうがよかった。
最終回直前なのに、とくに盛り上がりそうな前フリもない。
告白されて色が見えて終わる気がする。

琥珀の"お相手"が貸本屋(古本屋だと思ってた)のお兄さんなのは、ほぼ確定かな。瞳美が首をかしげたのは、ちょっと露骨な演出だった。

幼い瞳美に見せるために、唯翔が絵を描きそうな前フリも見られた。
絵本の伏線があるから、それの回収だろう。だけど、絵本を見せても、瞳美は色が見えるわけではない。都合のいいところだけ未来改変するかもしれないが。

瞳美は過去にきた意味を考えている。なぜ、琥珀に聞かないのか。自然現象ではなく、琥珀が送ったのだから、琥珀に聞けばいいだけ。なんの前フリなのかわからない。

色々疑問点が残っているので、最終回のまえに、考察してみる予定。
・なぜ、高校生の唯翔なのか。未来の唯翔ではダメな理由とは
・未来の病院では治療できないのか
・未来の高校生には、あさぎのようないい子はいないのか
{/netabare}

最終回を予想してみた
{netabare}
1.唯翔が告白した瞬間、瞳美は返事をする間もなく、未来に戻される

2.60年後、家のなかに、瞳美が現れる

3.無事に戻ってきたので、琥珀は、花火を観に行っているもう一人の瞳美のもとに駆けつける

4.過去から戻ってきた瞳美は、金色の魚が描かれた絵本を見つける

5.唯翔からのメッセージとわかり、さらに母親に読んでもらったときの幸せな時間を思い出し、絵本を懐に抱きながら涙する→視聴者も涙

6."時間魔法を使ったあと"の琥珀のもとに、瞳美が駆けつける

7.第1話で声をかけられた女の子たちが、あさぎと胡桃の孫だと気づく

8.花火を見ながら絵を描く高校生男子を見つける

9.唯翔の孫だとすぐにわかり、告白の返事(声をかけるだけかも)をする

10.すべての色が見える→視聴者感動


疑問点を考察したけど、残り1話では解決しないと結論に至った。
だから、シンプルなラストを考えてみた。

あさぎと胡桃の孫を見つけて、意外と近くに『幸せ』はあって、それに気づかせるために、瞳美は過去に行ったのだった……そんな最終回を予想しておく。
{/netabare}

最終話&総評 瞳美の魔法についての考察
{netabare}
色が見える瞬間はもう少し華やさが欲しかった。
モノクロの世界で『幸せ』を見つけたのに、モノクロの世界が瓦解する描き方は違和感があった。
瞳美が瞳を閉じて、ひらいた瞬間、色づけばよかった。ひ・と・みだけに。


【総評】
・作画について
キャラデザも含めて、星5をあげられるレベル。
作画の評価が、そのまま作品の評価につながるのは当然のこと。ストーリーにツッコミどころがなければ、傑作として歴史に残っただろう。

・パラドックスについて
結局回避はなかった。
色が見えたのが先か、時間魔法が先か、考えても答えは出ない。その結果、なぜ過去に送る必要があったのか、というテーマと言えるものが疑問のままになった。
時間のあわいよりは、パラドックスを回避してほしかった

・瞳美の魔法について
人を色で表したシーンがいくつかあった。色=心としていいだろう。いっぽう、瞳美の魔法は、記憶や心のなかのものを具象化(抽象化?)させるものと考えられる。これらのことから

瞳美にとって、色を見ることと、魔法を使うことは同等、なのではなかろうか。

瞳美は、魔法を使えない魔法使いになろうとして、自分に魔法をかけた。その結果、色が見えなくなった。モノクロの世界が瓦解したシーンは、色が見えた瞬間というより、自分にかけた魔法が解けた瞬間と考えれば、また違った感想が出てきそうだ。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 17
ネタバレ

やぎゃあ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

素敵な物語でした

(物語の感想は長いので最後に後回し。「P.S.」以降の文章で少しネタバレに触れますので、そこだけセクションで隠しています)

【作画】ーーーーーーーーーーーーーーー

P.A.Worksらしく、とても美しい作画でした。

特に「色」をテーマにしていること、芸術を嗜む少年少女たちの物語だったこともあり、作中では様々な色彩、画風を取り入れており、物語抜きで評価しても「美しい作品だな」と感じました。


【キャラ・声優】ーーーーーーーーーーー

キャラデザはこれまたP.A.Worksらしく、出てくるキャラはみんな美男美女でした。モブキャラですら美少女なあたり、P.A.Worksの力の入れ様は恐ろしいw

声優さんは、各々キャラクターの雰囲気と完全にマッチしていましたし、演技力も申し分なかったので、しっかり物語に没入できました。

本作は「クセの強すぎるキャラ」は出てこず、物語を無駄にかき乱すこともないので、綺麗にまとまってました。たぶんこの作品はそれで良かったと思います。


【音楽】ーーーーーーーーーーーーーーー

OP/EDともに良かったですが、特にOPの雰囲気が物語の世界観に合っていて、最高に良かったです。Aメロのアルペジオから希望と不安と儚さを感じ、サビでは明るさもありつつ、切なさを感じるコード進行で・・・とにかく美しいと感じました。

映像自体も、サビに合わせて主人公が駆け出すだけでもう・・・期待が膨らんじゃいます(定番ですけどw)。それら全てまとめて「青春だなぁ」と感じられるOPでした。

EDも流石のやなぎなぎさんです。「凪のあすから」の時もEDと挿入歌がやなぎなぎさんでしたが、やなぎなぎさんのバラードとP.A.Works作品の相性は抜群だなって。物語に漂う「切なさ」の面をぐっと引き立ててくれます。


【物語】ーーーーーーーーーーーーーーー

完全に事前情報なしで観初めて、タイトルや イメージデザインからは想像してなかった「ファンタジーもの」で少し驚きましたw 正確には『ファンタジー + 青春』といったところですかね。

イメージデザインでは、制服姿の女子2人(瞳美と琥珀)が描かれているだけなので「よくある青春学園もの」かとは予想していましたが・・・そう単純な話ではありませんでした。物語の導入で「時間逆行」という要素を知り、 俄然 期待が膨らみました。

(追記:順序が逆ですが、最終話を観終えてからPV第1〜3弾を観たら、大事な設定はだいたい説明されてたんですねw)

第一話の冒頭で主人公が抱えている問題(障害)に触れ、この作品タイトルの意味を察してみると、中々に秀逸なタイトルだなと感心しました。「色づく世界」・・・なるほど魅力的なテーマでした。

また、第一話の冒頭、魔法使いの家系である月白 瞳美(主人公)と祖母の琥珀の会話、『高校二年生の私(60年前の祖母)に会いに行きなさい』という導入からしてもう秀逸だな、と。だとすると、現に今こうして相対している瞳美と祖母の関係はいったい・・・と、期待せずにはいられませんでした。

「時間逆行」という導入からして、「結末の展開」はほぼ運命づけられてしまうものの、その過程をどのように描くのかという点で、期待を大きく上回る物語を用意してくれていました。

時間逆行や魔法使いといったファンタジー要素に、部活動の青春や恋愛模様、そして主人公が抱える障害などなど、様々な要素が混じりあう作品でしたが・・・観終わってみれば、それらすべての要素が効果的に機能していたな、無駄な要素は一つも無かったな、という感想に至りました。

物語が目まぐるしく展開したり、劇的な展開があるわけではないので(クライマックスを除く)、人によって本作の評価は分かれるかもしれませんが・・・

私は「登場人物たちの心がどのように動くのか」という点を大事にしており、本作は主要人物たちの心が大事に描かれていると感じられたので、私はとても満足できました。久々に温かい気持ちになれる作品に出会えました。



[P.S.] ここからは視聴済みの方へ

この作品を最後まで好きでいられた方は、最終話を迎えたのち、もう一度 物語冒頭を振り返ってみて欲しいです。なんだったら、もう一度 第1話を視聴するのもオススメです。私はそうしました。

祖母「やっと準備が整ったわ」
瞳美「星砂時計・・・」
祖母「そう。時間魔法の必需品。今日のために60年分、満月の光を浴びさせ続けてきたのよ」

祖母「あなたは今から、高校2年生の私に会いに行きなさい」
祖母「いきなり言われて戸惑うのも無理はないけど、これは決められたことなのよ」
瞳美「どうして?」
祖母「あっそれは・・・行けばわかる♪(満面の笑み)」

祖母「まぁ友達や恋人と別れたくはないとか、そういうのはあるだろうけどw」
瞳美「別に・・・そういうの・・・どうでもいい」
祖母「・・・あなたの悪いクセよ(両頬に手を添えて目を合わすように促す)」
祖母「(抱きしめながら)瞳をそらさないこと。せっかく行くんだから、楽しんでらっしゃい」

少なくとも第1話の時点では、物語の導入のための会話でしかありませんでした。祖母はいたって明るい口調で・・・「時間旅行だと思って楽しんできなさいな♪」くらいの気軽さで話しかけているようにも思えました。

しかし物語の全てに触れた上で、もう一度 冒頭の祖母との会話を思い返すと、全く違う印象を受けるはずです。

冒頭で {netabare}祖母がしたためている手紙、瞳美を送り出すために待ち合わせ場所に向かう祖母の心境、祖母が言った「準備」が指す意味、祖母が過ごした「60年」の日々、そして瞳美を送り届けた場所{/netabare}・・・などなど。祖母の言葉の1つ1つ、祖母の一挙手一投足に、どれだけの想いが込められていたかを想像してみて欲しいです。

琥珀(祖母)が最終話で自分は何者だと自覚し、60年後のその日を迎えるまでにどれだけの「準備」をしてきたのか・・・明確に描かなくたって、明確に言葉にしなくたって、想像に難くないですからね。私はそこがこの作品の一番素敵な点だと感じました。

ちなみに「60年」という時の流れの意味について、作中で触れていましたっけ?触れていれば私の聞き逃しになりますが・・・、とりあえず私なりに妄想してみました。

{netabare}60年とは、単純に「満月の光の “充填期間” としてそれだけの歳月が必要だった」というだけの話なのでしょうか?

私はそうではなく「琥珀が常に時間魔法と向き合い続けても、完成に至るまでに60年という歳月がかかってしまった」ということなんじゃないかと解釈しました。

それは、最終話の琥珀の心の声が裏付けていると思います。

『瞳美を未来に返したのは、私の時間魔法じゃない・・・。そのことは私だけが知っている。瞳美の無意識の魔法が解けることが、旅のリミットだったんだ。未来の私がかけた大きな魔法は・・・今はまだ、届かない。けど・・・いつか、きっと・・・』と。

また、この心の声より前にも「本当にすごいのは、私じゃなくて瞳美の方だった」とも言っていたはずですし。つまり「自分はまだ、何者でもない」ということを自覚しているんですよね。

その『いつか』にたどり着くために、まだ何者でもない自分が、時間魔法を操る『大魔法使い』と呼ばれる域に達するまでに、『60年』という歳月が流れてしまったのではないでしょうか。

ちゃんと時の流れも追ってみましょう。

祖母としての琥珀は、できることならすぐにだって瞳美の問題を解決してあげたかったはずです。もっと言えば『瞳美が問題を抱えることになる原因』を突き止められれば、問題を抱える前にそれ自体をどうにかしたかったはずです。

ただ・・・その原因を突き止めることは叶わず、瞳美が問題を抱えてしまう様を指をくわえて見ていることしかできなかった・・・。また、今すぐどうにかしてやれる手立てもない。史実を知っていながら、何も成す術がなかった。それでもいつかは瞳美の問題をどうにかしてあげたいと、時間魔法を求め続けた。そうやって何度も悔しい想いをしながら、ようやく『いつか』の日を迎えられた・・・。これが琥珀の辿った「60年」の日々なんじゃないかと想像しました。

だからこそ、最終話の現代で再開した際の言葉に繋がるのでしょうね。

『私の願いは、魔法で人を幸せにすること・・・。でも、一番近しい人たちを幸せにすることはできなかった。許してちょうだい・・・』と、涙を流しながら。

そして瞳美からも「ううん。私の方こそ・・・琥珀がどれだけ私のことを思ってくれていたか・・・気づかなくてごめんなさい。私、もう大丈夫よ」と言ってもらえて、そこでようやく琥珀が辿った60年の日々は報われたのでしょうね。

なんかもう・・・素敵すぎです。

それに、祖母は瞳美のことを「単なる孫娘」とは思ってはいなかったってことですもんね。『かつての親友』であり『これから親友になる』という、とても不思議な関係なのだから。

瞳美が生まれてからの17年間、この特別な想いをずっと抑えながら、瞳美の成長を見守ってきたんですよね・・・そんなことを説明されたって瞳美が混乱するだけだから。改めてOP主題歌の『17才』というタイトルも深いなぁ・・・って感じました。

こんなふうに、琥珀はいろんな想いを抱えながら、60年間、時間魔法と向き合ってきたんですよね。琥珀の人生を想像すると、いろんな感情で胸が締め付けられます。

もちろん琥珀は結婚もし、子も孫も生まれ、幸せなことはたくさんあったでしょう。ただ琥珀の過ごした60年、背負っていたものの重みは、常人のそれとは違うものだったでしょうね。{/netabare}

解釈が正しいかどうかなんてわかりませんが、私はこのように「物語の中で明確には描かれなかった背景や心情」に想いを馳せるのが好きです(ちゃんと説明が必要な部分を省かれるのは好きじゃないですが)。登場人物たちの心を、描かれなかった部分まで含めてちゃんと追いかけたいなぁ、と。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 8

76.9 2 手紙でファンタジーなアニメランキング2位
夏目友人帳 伍(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (667)
3552人が棚に入れました
小さい頃から妖怪を見ることができた少年・夏目貴志。彼は、祖母レイコが妖怪を子分とする証にその名を書かせた契約書の束である「友人帳」を
継いで以来、自称用心棒の妖怪・ニャンコ先生と共に、妖怪たちに名を返す日々。
夏目は、さまざまな妖怪や心優しい人たちと出会い、あたたかな場所を築いていく中で、人と妖、大切なものの守り方について想いを巡らせていく……。

声優・キャラクター
神谷浩史、井上和彦、小林沙苗、石田彰、堀江一眞、沢城みゆき、佐藤利奈、木村良平、菅沼久義、伊藤美紀、伊藤栄次、諏訪部順一
ネタバレ

さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

タイトルなし

1話
2012年の夏目友人帳から4年、待ってました最新シリーズ!!
第一話のタイトルが「変わらぬ姿」とはなんとも感慨深いです。
{netabare}
あらすじ
夏目は祖母のことが知りたかった。
出先で父方の親戚に会った夏目は祖母のことを尋ねようとするが、出てくるのは変わり者や恐ろしい人といった悪評ばかり。落胆し、別れたところで友人の田沼に遭遇し、悩みを打ち明けたのだ。

夏目レイコに人形を盗まれたから、夏目の大切なものを奪ってやる、と言ってきた壺の妖怪に、大切な人を守るため抗う夏目。
人形を探し返そうとするが、汚れてしまった人形を自分のものとは思えないらしく拒まれてしまう。襲撃に備える一方で、「やってみたいことがある」と塔子の力を借り人形を修繕を行い、玄関前に置いておくと、綺麗な人形に満足した壺の妖怪は喜ばしげに帰っていったのだった。

所感
2つのエピソードを通してレイコさんの正体を夏目君が探し、見つける話を描いており、レイコさんと夏目君の関係をわかりやすく描いた1話になっていて大変素晴らしいです。
後半の話は、怖い話でも、最後はほっこりさせてくれる夏目友人帳らしい物語だったのも良いですね。

「挨拶はしっかりしなさい。」と怒る藤原夫妻は相変わらず育ちが良くて可愛らしかったです。前半の親戚の人と比べると人の良さがにじみ出て、穏やかで羨ましい環境だなとしみじみ思います。
公式のキャラクター紹介には名取さん・的場さんが居りますが、登場するのかな?とても楽しみです。{/netabare}

2話
{netabare}あらすじ
急な雨に降られ急いで帰る途中タオルを拾った夏目。そのそばに現れた少女の妖怪が持ち主のようだったが、同級生に囃し立てられ不安がりながらも帰宅すると、タオルを探しにやってきた少女の妖怪が家にやってきた。
少女の妖怪のお願いでタオルの持ち主を探す夏目。本来妖怪は人にみえることはないもどかしさがテーマになっている。

所感
落し物を探した妖怪が夏目の家に乗り込んでくるという1話に似た事象を描きながら、全く異なる過程を踏んで結末にたどり着く物語を選んだことにより、序盤は怖い妖怪だろうかという不安と緊張感が増幅されたように感じます。しかし、後半になると対照的に少女の妖怪のかわいらしさや純粋さが描かれ、大局的な感情が後半の少女の妖怪の可愛さをさらに引き立て、どうにか願いを叶えてあげたいという気持ちになりました。
奇跡は起こらないものの、心温まる良い話でした。{/netabare}

3話
{netabare}あらすじ
自宅に的場からの手紙が届き動揺する夏目。相談をしようとニャンコ先生を探すが、その道中に新米除霊師の除霊を見かけ、除霊時の衝撃により手紙を紛失してしまう。慌てて夏目は手紙を探すが、新米除霊師に見つかりそうになり、通りがかりのニャンコ先生に助けられたのだった。
除霊師が去った後、その場に残された妖の封印された壺を吟味する夏目とニャンコ先生はそのままではすぐに封印が解けてしまうと察知し、再封印の為に名取の元を訪れる。そして、名取から最近の術師のごたごたについて聞かされるのだった。

所感
手紙から始まる的場接触のルートと、新米除霊師遭遇からの名取接触ルートが交互に絡みながら物語を展開させており、物語の構成力の上手さを感じることができました。
物語はまだ続くのですが、前篇・後篇と言うより、シリーズものの小説の1巻と言いますか…除霊師シリーズの的場遭遇の章のような歯切れの良さを含みつつ、今後の展開に期待出来る話になっているので、物語の進度がとても良く感じます。
(BLEACHの戦闘シーンだけで1話終わる話と進撃の巨人の暗中模索の話を思い浮かべながら夏目を称賛しました。もちろん、BLEACHにはBLEACHの良さが、進撃の巨人には進撃の巨人の良さがあるので一概に比べることはできませんが…)
毎週リアルタイムで観るのに適した話だなと感じました。{/netabare}

4話
{netabare}あらすじ
的場さんの別宅で開かれる祓い屋を集めた会合に的場の依頼を受けて参加した夏目がお面の妖怪を探して駆け回る。

所感
夏目を門下に入れようとちょいちょいお誘いしてくる的場さんと、影から夏目を守ろうとする名取さんと、式の振りをして駆け回る夏目が、一部のファンにとっても受けそうな回でした。
薄い本が熱くなりそうだ{/netabare}

5話
{netabare}あらすじ
黒板一面に書かれた、人には見えない落書きを発見し、モサモサした妖怪の気配を察知した夏目。ニャンコ先生に相談するとどうやら多軌と関係があるようすだ。
様子を探るために多軌の家を訪れると、モサモサした妖怪の他にもうさぎの妖がおり、その妖は多軌の家ではぐれた同種の妖を探しているという。それを受けてうさぎの妖を捜索する夏目一行。はぐれたうさぎの妖怪を無事救出し、うさぎの妖とモサモサした妖怪は無事多軌の家を離れたのだった。

所感
最初のつかみはホラーかと思いましたが、後半は意外や意外、ラブコメとしてまとまっていて見事に物語に惹き込まれました。
まさか黒板の落書きが多軌への想いを綴ったポエムだったとはね…ww
可愛い妖怪もいたものです。
4話などで触れた多軌の禁術に対し、今度は妖怪の面から長所として描かれます。これにより、多軌の禁術は早急に対処すべきものではなくなりましたが、祓い屋と多軌側で、いずれ問題になる日が来るのではないかな…?とどきどきしています。{/netabare}

6話
{netabare}あらすじ
小物の妖怪に襲われ声を封じられてしまった夏目は鳥のような妖怪に助けられる。

所感
5期が始まって以来、割とシリアスな話が続き、ようやくのはねやすめ…
最初から最後までコミカルで気軽に楽しめるお話でした。
個人的にツボだったのは鳥みたいな妖怪のしゃべり方、ハッキリしない発音ですがゆっくりと話して聞き心地の悪くない声でフランクに話してくる独特のしゃべり方が癖になります。犬夜叉の冥加爺さんにも似た顔も相まって超~おもしろいキャラ~です。
ただ、ゆるゆる具合が強すぎて、塔子さんが危ない!というシーンで全く緊張感が感じられなかったのは気になりました。

しかし、久々にヒノエたちが見れたのも嬉しかったですし、声の出ない夏目の演技は流石声優さんだなーと感心させられました。
{/netabare}

7話
{netabare}あらすじ
田沼の親戚が経営する民宿の手伝いにやってきた夏目達。夏目は手伝いの合間に人に変装した妖怪に遭遇する。妖怪(イトさん)は襲われたくなければ、盗まれたお面を探すのを手伝え、そして祭りが終わるまでは他の人に自分の正体を話してはいけないと一方的に持ち掛ける。

所感
前半は祖母と夏目の関係についてのストーリーがメインでしたが、後半は人と妖怪の関係についての物語が多くなってきましたね。
田沼もイトさんに対し何かを感じていた風でしたが、もし、はっきり妖怪だとわかったらやはり関係は崩れてしまうのでしょうか。
なんとなく田沼は大丈夫な気がするのですが、きっと反応は人によって違うでしょう。そう考えた時に、イトさんが姿を消そうとしたのは正しいのかもしれませんね。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 13
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

人に頼る事で繋がる絆を知りつつある夏目の姿があった

4年ぶりに復活のテレビシリーズ「夏目友人帳」の第5期に当たる作品です。

今回のシリーズでは4期に続き、人と妖怪の関わりもさる事ながら、人と人との心の距離を描く事に重きを置いている印象を受けました。シリーズお馴染みの妖怪に名前を返すシーンが描かれるお話も今期ではただ1話のみとなっています。

1期から続く夏目と田沼君の、不器用さありありの距離感は相変らずままですが、今期1話の夏目の台詞、「いや、聞いてくれ」には彼の大きな成長の片鱗が見て取れました。

優しい人は大切に思っている人への思いやりから、その人に頼るという事を嫌煙しがちで、悩みを自分の内にのみ溜め込む傾向がありますが、頼られる立場の人間はそれを迷惑に思うどころか、喜びと思う事の方が多いのではないでしょうか? 私見ですが。異性からでも同性からでも、人から頼られるという事以上の喜びはそうそうあるものではないと私は思います。

愛の力は偉大(笑)なもので、自分の為だけなら大した事が出来なくとも、人の為と思えば普段の自分には出来ない事が出来てしまうという事は往々にしてあるものです。そんな覚えのある人なれば尚更の事、たまには逆の立場に立って、人を信じて頼ってみる事も必要なのでは無いでしょうか? それは相手にこちらの友愛を示すと同時に弱点を晒す行為でもあります。それ故に照れくさかったり、怖かったりで踏み切るのがなかなか難しいのですが‥創作物で描かれがちな完璧過ぎる思いやりや、理想的な反応が返って来るとは限りませんが、あなたの信じるその人ならば、きっと何らかの助け舟を出してくれる事でしょう。

実の両親では無いという理由から生じる遠慮も手伝って、夏目は未だに塔子さんと滋さんに自身の抱えている妖怪に関する悩みを話す事が出来ませんが、私は今後少しずつでも、それらの悩みを夏目が2人に打ち明けていく展開があればいいなと思います。見える者と見えない者、決して埋める事の出来ない視野の隔たりがあるゆえ、直接手を差し伸べる事は出来ないとしても、両者間の心のわだかまりがいくらかでも減り、少しは心が軽くなると思うので‥。

夏目の危惧している様に、それは自身の抱えている問題に他者を巻き込む行為に他なりませんが、大切な人たちにだからこそ、自らの持つ信頼を伝えて置く事は大事なのではないかと私は思います。まぁ、家族ならともかく、むやみやたらと人に頼るのは利己心の表れなのでダメなんですけど‥(汗)

大人は子供よりかはいくらかずる賢いので、打算的になったり、体裁を気にしたり、卑屈に振舞う事が多い生き物ですが、生来ヒトの持ち得る利他的精神を強く成長させている大人も少なからずいます。そんな大人達は年若い人達が頼ってくれる事を心待ちにしているものです。(と思います。)

甘ちゃんな考えかもしれませんが、そうして人と人とが互いの悩みや秘密をちょっとずつでも打ち明け合い、支え合って生きていければ、大抵の困難は乗り越えられるのでは?‥とか思う事はあります。心優しい人たちが手を取り合って支え合う関係を築いてゆく‥奇麗事でも素晴らしい事だと思います。人は一人では生きてはいけないとは言いませんが、結構しんどいものでしょうから‥。

現実の話、田沼君みたいな同性の友人に優しくされ過ぎたら私だったら困ってしまいますが、それでも自分の事を気遣ってくれる人が一人でもいるっていう事は嬉しい事ですよね? もし異性だったら? 多分惚れちゃうのでしょう(笑)
{netabare}
3、4話は祓い屋関連の話、8話では的場さんと名取さんの過去の話も描かれます。4期の七瀬さんのお話の時にも感じましたが、事情が複雑に絡み合い、その結果見える、ただ一面だけが、七瀬さんや的場さんの、一見すると冷酷にも思える表層であるのだとしたら、彼女等もまた悩み傷付き選択している、自分を繕いながらも必死に生きている不器用な大人たちの一人と言えるのではないかと思われました。

私は出来ていない人間なので、他人の事情を良く知らずに、その人の行為や言動を持って、悩んだり疑ったりする事が度々ありますが、もしかしたらそんな事の多くは邪推で根っからの悪人というのはこの世にはいないのかも知れません。(だといいな‥)どんなに酷い行いにも何かしら原因があるものです。

10話は滋さんと塔子さんのお話。この二人の、奥ゆかしさの中からもしみじみと感じられる深い愛情と信頼を目にすると、結婚願望の薄い私ですら、ひと時の気の迷いの様な、羨望に似た感情が芽生えてしまいます。年を重ねても変わらずお互いを思いやれるお二方、とても素敵ですね。ひとりぼっちに見えたカラスに優しく話しかける塔子さんの姿も可愛らしかったです。うちの母も野良ねこさんに「ねこさん、ねこさん」って話しかける事ありますが、これについては微笑ましくもありますが、自分の母親なだけにちょっぴり恥ずかしくなる光景だったりして‥(笑)
{/netabare}
自ずと穏やかな気持ちで綴りたくなる、夏目とそのかたわらにいる人や妖怪、友人たちの優しさに満ちた、いつもと変わらぬ夏目友人帳なのでした。

蛇足に、特別編「ニャンコ先生とはじめてのおつかい」を含めれば、これまでのシリーズよりも1話少ないだけですが、あっという間に終わってしまったという印象の第5期でした。もっと見たいな‥と思っていたら今年6期が公開される予定だそうですね。嬉しいお知らせでした。


※:5話でやっとタキさん登場ですよ。OPムービーには映像あったけれど、本編にはずっと登場せず、いつ姿を見せてくれるのか少しだけ心配だっただけにとても嬉しかったです。夏目の頼もしき理解者の一人ですからね。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 35
ネタバレ

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

「人と妖。もともと触れ合わなければ、思いを残すことなんかなかったのに。」

人気シリーズ・夏目友人帳5期。

1話完結のお話が多いので
シリーズの途中からの視聴でも問題はありませんが、

1期から観ないのはもったいないと、
個人的には思います。笑

私は夏目友人帳シリーズが大好きなので、
アニメ制作が長く続いてとても嬉しいです♪

5期は全11話+特別編「一夜盃」「遊戯の宴」です。


● ストーリー
霊力が強く、
妖の類が見える高校生・夏目貴志(なつめ たかし)。

祖母・夏目レイコの遺品にあった「友人帳(ゆうじんちょう)」には、
妖の名が束ねられていた。

強い力を持つ友人帳。

それを他の妖から守るにゃんこ先生と共に過ごしながら、
夏目は妖たちに名を返すことを決意する。


この作品はとにかく「優しくて温かい」。

それは、

主人公の夏目自身の、

誰かを想う気持ちを持った妖たちの、

夏目の周りにいる人たちの、

みんなの優しい気持ちが
至る所で痛いほど伝わってくるから。

相変わらず1話完結のクオリティの高さが半端ない。
心の涙腺崩壊しまくりです(´;ω;`)

登場人物たちの誰かを想う優しさに、
心が強く揺さぶられる。

“感動”という言葉では弱いの。
この気持ちを言葉にできないもどかしさ…!

心の奥底で求め続けながらも、
滅多に満たされる事のない気持ち。

それを、この作品では満たし続けてくれます。

各話のエピソードや名言を振り返っていると、
それだけでまた泣けてくるよ…(´;ω;`)


≪ 妖と人 ≫

夏目のように
妖が見える人は少ない。

だけど時に偶然が、
人と妖を引き合わせてしまうことがある。

しかしそれは本当に気まぐれな出来事で、
何度も起きることはなく…。

一度つながってしまった絆は、
自分ではどうしようもなく妖たちの身を絡めとる。

自分には見えているのに、語り続けているのに、
届かない声と気持ち。

そんな妖の切ない気持ちと、
見えないけれど想いに答えようとする人の優しさに、

何度うるっときたか(´;ω;`)

特に2話の、
雨の日のバス停のタオルの話が好きでした。


≪ 人と人 ≫

幼い頃から妖が見えることで、
いろいろと苦労をしてきた夏目。

今は優しい藤原夫妻に引き取られ、
友人にも恵まれ、幸せな日々。

夏目と、夏目の周りの優しい人たちとの関係にもまた涙(´;ω;`)

特に10話が神回。

夏目と出会う前の藤原夫妻のお話も、
日々の中で感じる気持ちを丁寧に拾っていく塔子(とうこ)さんの魅力も、
もう全部素敵だった!!

この作品の主人公は夏目ですが、
変わらない温かさと安心感の源は塔子さんな気がします。

夏目も十分優しくて魅力的な主人公なのだけど、
塔子さんが強すぎるのよ。笑


● 音楽
【 OP「タカラバコ」/ ササノマリイ 】

またぴったりなアーティストを見つけてきましたね。笑

優しい歌声がこの作品の雰囲気とよく合っています♪
EDと比べると明るめな曲。

いい感じです♪


【 ED「茜さす」/ Aimer 】

このEDが、やばい。
夏目友人帳の本気を感じました。笑

感動的なストーリーと余韻
 ↓
イントロ

の連携プレーが強すぎて、
イントロによってより感動が増幅されていました。

特に、切ない話の後には
壊滅的に心に沁みる曲でした(´;ω;`)

映像は秋でした。


● まとめ
これまでと比べると威力が弱まったと感じるエピソードもありましたが、
全体としては、やはりこの作品が持つ力はすごいです。

優しさとは何か、
人が人を想う気持ちとは何か、
“愛”とは何か…。

その答えが、
この作品には詰まっている気がします。

辛い経験をした人は、
誰かに優しくなれる人でもある。

優しさに気付き、
心から感謝できる人である。

普通の毎日にささやかな幸せを感じられる人である。

夏目は、
きっとそんな人。



「阿呆なのは我らか。
 いつか散るとわかっていても性懲りもなく、見入ってしまうのだから。」

{netabare} 人の命は儚く、あっけない。

だから美しいなんて、残された者には思えない。
ただただ、受け入れたくなくて、寂しくて。

厳しい言葉にも見守る笑顔にも、たくさん支えられていました。
これまでと変わらない笑顔で、どうかお幸せに。 {/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 26

63.4 3 手紙でファンタジーなアニメランキング3位
ユリ熊嵐(TVアニメ動画)

2015年冬アニメ
★★★★☆ 3.5 (542)
2355人が棚に入れました
あるとき、宇宙に浮かぶ小惑星「クマリア」が爆発し、その破片が隕石となって地球に降り注いだ。するとこれに呼応するように地球上の全てのクマが突然凶暴化し人間を襲うようになる。かくして人間とクマの長い戦いが始まり、いつしかお互いへの憎しみから両者を隔てる「断絶の壁」が築かれた。
そんなある日。人間側にある「嵐が丘学園」に百合城銀子と百合ヶ咲るるという2人の転校生がやってきた。だがこの2人、その正体は「断絶の壁」を越え、人間に化けた「人食クマ」だったのだ。

声優・キャラクター
荒川美穂、生田善子、山根希美、諏訪部順一、斎賀みつき、山本和臣、小倉唯、悠木碧、小清水亜美、日笠陽子、井上喜久子、遠藤綾
ネタバレ

麦茶 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

Viens avec moi. J'ai besoin de toi.

[ 熱中度:S ] [ 好み:S+ ] [ 楽しさ:S ] [ 面白さ:S+ ]
[ 作画:S+ ] [ 演出・絵コンテ:S ] [ キャラ:S ] [ 音楽:S ]

<< 総合評価:S >>

いや~本当に面白い作品って言葉で表現できませんね。

前半の少し抽象的なストーリーの掴みとは打って変わって、後半はわかりやすく王道的に話を進めてくれました。その点、先のレビューでも書いた通り視聴者に歩み寄ってくれている配慮を感じますね。
ただ、それが逆に言えば直球すぎというか、前半をあれだけ想像力豊かに脳みそを使わせてきたのだから、後半ももう少しひねりを加えても良かったんじゃないかな~と贅沢なことを思っちゃったりもしますw あ、決して今回のストーリーが悪かったというワケではありませんよ!

1クールの中に作者のやりたいことを詰め込みに詰め込んだ、本当にカロリーの高いアニメでした。
やっぱり何を魅せたいのかがちゃんと伝わってくるアニメって強いですね~。

ここまで感動したのは久しぶりです。ありがとうございました。



【僕もキスがもらえない】(2015.2/2)

「私たちは、最初から貴方たちが大キライで、最初から貴方たちが大スキだった。」
「だから、本当の友達になりたかった。あの壁を越えて・・・。」

今回はルルの過去回想。銀子と出会って、断絶の壁を越えるまでのお話。
裁判長の語りと紙芝居的な演出も交えながら寓話チックに物語を進めていく第4話。

前回までで既に卓越された語感センスにニヤニヤしっぱなしでしたが、それは今回も止まらず、「デザイア~」とか「じゃまじゃまジャマー」とかされた日にはもうね、完全にね。あ~ほんとルル可愛いなチクショウ!
でも凄いのはこの語感センスだけでなく、映像表現もさることながら、一話の中でかなり練り込まれた最高のストーリー。まさかこの作品で泣くとは思いませんでした。

今回はそこらへんも踏まえつつ、また例によっていつも通り内容の方を整理していこうと思います。
毎度のことですが、個人的な妄想の垂れ流しなのでテキトーに聞き流していただければ幸いです。


{netabare}(1)ルル姫と蜂

百合ヶ咲るるになる以前までの人生。ルル姫は王国1番の存在で、すべての人々から愛を享受していたみたい。でもルル姫に近寄ってくるのは、事務的なスキを与えるだけの侍女だったり、利欲的なスキを築こうとする他国の王子だったり、跡継ぎのことしか頭にない両親のスキだったり・・・。

彼女の「お姫様」というポジションから考えても、度々押し付けられる空っぽなスキを無意識下では拒んでるんじゃないかな。それが蜂となってパーソナルスペース(心の壁)を作り、「入ってくるな~!」と普段からアピールしているように見えます。家族3人で並んで映っているカットでも、両親ですらこのエリアの外側にいたのは何だか悲しいですね・・・。

彼らの「愛(スキ)」は本物ではない・・・と、そう語っているワンシーンに思えました。

それでも皆の1番であることにルルがまんざらでもないのは、まだ「本物のスキ」を知らないから。
これがある出来事によって変わっていきます。

【キーワード:蜂(ハチ)】・・・ルルの無意識の感情(好意・敵意)を表す


(2)みるん王子と約束のキス

>「『本物のスキ』はお星様になるって本当?」
>「・・・本当よ。『本物のスキ』は天に昇ってお星様になるの。」
>「そして流れ星となって地上に落ちたお星様は、『約束のキス』になるのです。」
>「フン、『スキ』が『キス』になるなんてバカな昔話、萎えるガウ~。」

惑星クマリアが爆発し、その流れ星が城に落ちた直後に誕生したルルの弟。

>「じゃあボクがお姉たまに『約束のキス』を取ってきてあげる!」
>「ボクはお姉たまが大スキだから、今の流れ星はボクの『スキ』なんだっ」
>「きっと何処かに落ちてるよ~!」

男の子なので、当然跡継ぎはみるん王子となり、王国1番の座を奪われてしまったルル姫。そんな彼女から受ける執拗なイジメを物ともせず、『約束のキス』と呼ばれる蜜瓶をみるん王子は届け続ける。

ここで少し内容を整理します。

まず2人の会話から「流れ星=約束のキス」という仮説が立ちます。
そして『約束のキス』と呼ばれている瓶の中には「蜂蜜」のようなものが入っていました。
蜂蜜とは、所謂「お星様」のような黄色をしていると同時に、「蜂」が作るもの。

つまり、これはお星様が地上に落ちて生まれたみるん王子の「本物のスキ」であると共に、ルル姫の無意識(蜂)にある「本物のスキ」が生み出したものだと考えることができるのではないでしょうか。

>「これ・・・君の弟の?」(蜜瓶を差し出す)
>「そ、そうよ。」
>「谷の向こうに落ちてた。だから届けに来た。君が捨てたの?」
>「・・・そうよ。」
>「でも『君のモノ』だ。」

終盤でルル姫が銀子と出会ったときに、蜜瓶を弟のものと認めた上で「でも君のモノだ」と銀子に返されるシーンがありましたね。この台詞のあとにもう一度ルル姫とみるん王子の会話を聞くと、さきほどの「2人が創りだした」という仮説にも信憑性が増してくるような気がします。

つまり『約束のキス』とは、本物のスキを持つもの同士の愛の結晶・・・的な?
(ちょっと言葉にすると恥ずかしいw)

まあ映像と話の流れから読み取れることはこんな感じですが、みるん王子がなぜ「本物のスキ」を持ってるのかというのは、流れ星関連の難しいことを考えなくとも、あんなに純粋で無垢な彼の愛情を見れば誰に聞いても(1)の人たちとは違う「本物のスキ」だってわかりますよね。
ルル姫は、心の奥底では、そんなみるん王子のことが『スキ』だったんです。(蜂が2人を囲ってくるくる回る)

だから「私は、最初からあなたが大キライで、『最初からあなたが大スキ』だったんだ」となるワケですね。

ちなみに『大キライ』の部分は、ルル姫が何度もみるん王子を騙して崖から突き落とすシーンで説明されています。箱に書いてあるとおり『愛(みるん王子のスキ)』を足蹴にしながら、自分の無意識の中にあるスキを、自分のスキの中にいるみるんを何度も心の奥底へ追いやろうとするルル姫。

>「ルル姫様は、みるん王子が届けた『約束のキス』を投げ捨てました。」
>「ルル姫様が欲しかったのは、そんなものではなかったからです。」

みるん王子が拾ってきた蜜瓶を投げ捨てようとする行為も同じですね。

この場合、蜜瓶とは『ルル姫の愛』で、こうすることで、ルル姫は無意識に『スキを諦めよう』としているんです。なぜなら、スキを諦めないと、邪魔者を消してしまわないと王国1番の座が手に入らないから。彼は生まれたときからそんなルル姫のデザイア~にとって邪魔な存在だったので『最初から』大キライとなるワケですね。
しかし、みるん王子は蜜瓶を必ず持って帰ってきてしまいます。自分のスキを届けることを、そしてルル姫の中にあるスキを諦めさせません。

このときにも、ルルの蜂(無意識)がみるん王子を受け入れている演出を挟むのが何だか憎いです・・・。

【キーワード:約束のキス】・・・相思相愛の証(みたいな感じの何か)。


(3)みるん王子の死

そんな折、ルル姫のもとへ訃報が入ります。

>「た、大変です!みるん様が・・・お亡くなりになりました。」

侍女が部屋に入ってきたときのドア音を聞いて、ルル姫は「またみるんか」みたいな顔をするんですけど、この顔がどことなく楽しげで・・・。なんというか、世話のかかる弟が「遊んで遊んで」とせがんで来るのを煙たがるお姉ちゃんみたいな。

>「ともかく・・・思い通りになったわね。」

そのあとのこの台詞。誰がどう見ても、ルル姫の胸にはつっかえがあるんです。
もうこれがホントに切なくて・・・とまあそれはいいでしょうw

>「そんなワケで、人々の感心、権力、愛の言葉。ルル姫様の欲しかったものは全て手に入りました。」
>「それもこれも、みるん王子が死んでくれたおかげです。」
>「それなのに、ルル姫様は一向に嬉しい気持ちになりません。それどころか何か・・・」
>「大事なモノをどこかに置き忘れたような、ひどく虚しい気分に襲われるのです。」

冒頭(1)で書いたように、今までルル姫は「本物のスキ」とは無縁の生活を送っていました。そこにみるん王子が現れ、だんだんとルル姫も「本物のスキ」に気付きかけていたんじゃないのかな。
みるん王子に触れたことで、今まで自分が他人から受けていた、また今受けている「スキ」も偽物なんだと薄っすら分かってしまう。自分でもまだそれがどんな感情なのか理解してはいないみたいだけれど、今まで通り王国の1番になっても嬉しい気持ちにはなれないのはそのためでしょう。

そして何より「本物のスキ(みるん王子)」がいなくなった穴・・・ これが一番大きいと思います。

『失って初めて気付く』とはよく聞く言葉ですが、空虚な愛を手に入れるために、自分が本当に欲しかったものを足蹴にしていたなんて、何とも皮肉な話です。しかも失ってなお、お姫様はその感情を理解できないというのは・・・残酷なものですね。

果たして、あのとき夢の中のルル姫は、『約束のキス』を受け取ることができたのでしょうか・・・。
あ~もうホント切ないぜチクショウ!!なんて良い話を書くんだ幾原ァ!!!


(4)ルルの蜂と事故死

>「わたくしは確かに見ていました。『完全』に『単なる』事故でした。『事故死』です。」
>「本当にいつものように、大スキなルル姫様に蜂蜜を届けるのだとおっしゃって、蜂の巣に近づき・・・」
>「そして蜂に刺されてお亡くなりになりました。あっという間でした。」

ここまで、蜂はルル姫の無意識の感情を表していました。それが今回、みるん王子を殺してしまった。多分・・・冒頭の赤い光(蜂)とコテッと倒れるクマが映っていたシーンはこの瞬間じゃないかな。

実はみるん王子が入っていた箱の「愛」という張り紙にはもうひとつの意味がありまして、それがここでは重要になってきます。一体何故、崖から突き落とすとき、ルル姫は毎回『あえて』みるん王子をダンボール箱の中に入れたのでしょうか。そして、どんなに過酷な状況に追いやっても、『箱に入っていた』みるん王子が死の淵から舞い戻ってきたのは何故でしょうか。

私は・・・箱の張り紙には、『ルル姫の愛』も含まれていたんじゃないかと思うんです。

どんなに憎い弟でも、本気では殺すことができない。そんなルル姫の葛藤が、ダンボール箱となって「跡継ぎを消す」という露骨な悪意からみるん王子を守っていたのではないでしょうか。つまり、ルル姫の殺意を『姉弟喧嘩』の範疇に収まってることを示していたのが、あのダンボール箱だったというワケなんです。

しかし、みるん王子は死んでしまった・・・。

そう、ダンボール箱で戯れ合う姉弟喧嘩とは異なる『自分自身ではどうにもできない蜂(無意識)の針』で。

現実の幼い姉弟でもよくありますよね。
>どこへ遊びに行くのにも着いてくる弟に嫌気がさしてしまうお姉ちゃん。
>そんなときに幼さ故の意地悪で、弟に嘘をつき置き去りにしてしまった。
>でもやっぱり心配になって戻ってみると、姉の姿を見つけ笑顔で走り寄ってくる弟の横から車が・・・。

直接的には関わってないにしろ、ルル姫の『意地悪』によってみるん王子の死を招いてしまった。それを侍女の台詞でも『事故死』と露骨に強調することで、『本気の殺意とは真逆のもの』だったということを表現しているのではないかと思います。

もうこれ書いてるだけで悲しくなってきますわ・・・。


(5)『失ったものを忘れたら、本当に失ってしまうよ。』

銀子が、蜜瓶を捨てたルル姫に投げかけた台詞。第4話の総まとめ的な言葉。
ルル姫の失ったものとは、みるん王子のことであり、ルル姫にとっての『本物のスキ』。

>「私は・・・最初からあなたが大キライで、最初から・・・あなたが、大スキだったんだ。」

銀子の言葉で、ルル姫はようやく、本当にようやく自分の心の真ん中にある隙間にみるん王子(本物のスキ)を見つけたのです。同時に、みるん王子の死が自分のしてきた「愛の拒絶」の結果だと気付いてしまいます。これ以降、好意も敵意も無意識ではなくなり、蜂は物語から消え去っています。

そして、『蜜瓶(約束のキス)』はルル姫の手元にしっかり留まるようになったワケです。
(ルルが自分の中の無意識、スキを自覚し『約束のキス=相思相愛』が完成した)

>「銀子、るるね。銀子に会ったあの日のこと、絶対忘れないよ。」
>「銀子が私のスキを見つけてくれた、届けてくれた。」
>「だから・・・るるは何があっても、スキを諦めないよ。」

第3話にあったルルのモノローグも、今聞けばどんな意味だったのかすんなり入ってきますね。
「スキを諦めない」については、次の項目で触れることにします。


(6)ユリ裁判とスキを諦めないクマ

>「そう、あなたは失う前の私。ううん、違う。多分、あなたは一度失ってる。」
>「それでも、もう一度会える人が、そこにいるなら・・・たとえ、壁の向こうでも!」

断絶の壁を越えて、ヒトの世界へ「スキを返しに行く」と言う銀子。
その背中に自分と同じものを見たルルは、一緒に断絶の壁を越える決心をする。

スキを諦めない銀子と、好きを諦めようとしていたルル姫。
そして今、彼女は自分のしてきた罪と正面から向き合うのです。

>「私も・・・罪熊だから。」

銀子に出会う前は、ルル姫はスキを諦めるクマでした。お城の人たちとの空っぽな上辺だけの関係も甘んじて受け入れ、周囲の流れに身を委ねる。つまり「透明」な状態。
実は3話までと内容的には同じで、スキを外部から壊すものとして登場していた『透明な嵐』を、今回は自分の中の葛藤として描いています。この場合の透明な嵐とは「王国1番の座に戻りたい」という暗い欲求で、そのときのルル姫の行動だけを汲み取ると「自分が透明だった状態に戻そう」という同調圧力が働いているようにも見えますよね。

結果的に『約束のキス=相思相愛』は届けられ、ルル姫はスキを諦めなかったわけですが、せっかく自分のスキを透明な嵐の中から見つけたのに、せっかく自分の中のスキに気付くことができたのに、肝心のみるん王子はもういません。
紅羽にとっての純花と同じく、透明な嵐によって既に消されてしまっています。

>「失ったものを忘れたら、本当に失ってしまうよ。」

だから、ルル姫は『スキを諦めない』。この気持ちを忘れてしまったら、みるん王子を本当に失うことになるから。そう誓って、彼女は約束のキス・・・今は亡きみるん王子との愛の証を抱き続けるのです。

>「それでは被告グマ、百合ヶ咲るるに問います。」
>「あなたはスキを諦めますか?それともキスを諦めますか?」
>「私はスキを諦めない。『キス』を諦めます!」
>「・・・ッ!」
>「そうすれば、あなたはキスを永遠に失うことになるのですよ?」
>「私のキスは、既に失われた。もう二度と会えない。」

『キス』とは、愛を受け入れるということ。
『スキ』が愛することだとしたら、文字通りその逆という認識で良さそうですね。

しかし、『ルル姫のキス=みるん王子からの愛』は既に失われた。もう二度とみるん王子と会うことはできない。そんなルル姫がキスを諦めることに何の躊躇いもないのは不思議ではないと思います。むしろ、諦めるしかないのですから。
つまり、彼女はみるん王子とのキスを諦めて、全てのキスを諦めた。誰からの愛も受け取らない、愛されなくて良い・・・と。もちろんみるん以外とのキスは可能だったのでしょうけれど、これがルルの選んだ決意・贖罪。

そんな一方通行で報われない、彼女の『無償の愛』を聞いて、裁判員たちも少し動揺していたように見えます。みるん王子の「おねがい、『キス』して?」という必死な訴えも、『キス』というワードの意味を考えると少し重みが変わってきそうな気がしますね。

>「でも、銀子は会えるから!きっと私の代わりに、約束のキスを果たしてくれる。」
>「つまり、自分の果たせなかった希みを百合城銀子に託す・・・というワケですか?」
>「それで自己自制を謀ろうというのは自己満足に過ぎません。傲慢、罪・・・ですよ?」
>「いいの、私は罪熊なんだから!」

でも銀子は違う。もう失ってしまった自分とは違って、また会うことができる。
それを叶えることができれば、私はもう一度みるんに会えるような気がするから・・・と言う。

>「わかりました。判決を申し渡します。」
>「・・・ユリ、承認!」

そしてルル姫は人間となり、銀子と一緒に断絶の壁の向こうへ旅立つ。
さて、約束のキスは果たされるのか・・・それとも。

それがセクシー、シャバダドゥ。{/netabare}


とそんな感じで、第4話は幕を閉じたわけです。はー長かったw
ラストシーンでは2人のキャラの『約束のキス』っぽいアイテムが対比で描かれていたので、またいつか銀子の回想もやりそうですね。やっぱりあのペンダントは{netabare}紅羽の母親のもの{/netabare}だったのかな。

他にもメインのストーリーからは少し外れていますが、まだまだ気になったことはかなりたくさんあったのですけど、さすがに長くなりすぎた気がするので今回はこのくらいで終わりにしておきます。

一応これは私の妄想が過度に入っているということを、再度お伝えしておきますね。
貴方の目には、第4話はどんなふうに映ったでしょうか?それではまたお会いしましょうノシ

シャバダ~シャバダバダ~バ~。


【ドヤ顔ダブルピース宣言】(2015.1/23)

{netabare}ちょ、ちょっとこれ3話ヤバくないですか!?

見てる途中、見終わった後、てかこの作品に触れてる最中はもう戦慄が止まりませんでしたよ・・・。いや~今まで曖昧だった部分がいっきに晴れて、全てのピースがパカッとはまりましたね。ところどころ2話までの私の見解と近いところもあったのでかなりスッキリしました。

今回、アニメの起点となる第3話というわけですが、このタイミングで「透明な嵐」というタイトルを持ってくるという脚本家、もとい監督の完璧な采配には感服しました。ホントにもう世界観の構築からキャラの会話、ストーリーの運び方に至るまでの全てが完璧です。

1話から既に「ユリ熊嵐」という世界はこれでもかと言うくらい確立されていましたが、今回外堀を埋めるという形で視聴者にそれを明確に認識させることで、世界を作るだけではなく「入り込ませる」工夫を魅せてくれたのは大きいと思います。

ここが今までの幾原監督作品との一番の違いであり、私が何より良いと思ったポイントです。
端的に言えば「分かりやすい」。視聴者に歩み寄ってくれているのが伝わりました。

そしてそれは、表面的なサラッとすくうことができる浅いものではなく、アニメを見ることでじんわりと理解が染みこんでくるという分かりやすさ。キャラの言葉や情景描写だけではなく、1話から続く物語の連続性、映像表現やその他演出全てがこの作品を語っているんです。

やっぱりアニメ好きとしては、ここまでアニメーションで勝負してくる作品をもってこられたらたまんないですね。監督と脚本が同じ作品は魅せたいものがハッキリとしていて分かりやすいです。


さて、こんな感じでレビューの出だしを切ったところで、今回も例によって内容の方をサクッとまとめていこうと思います。ネタバレを多分に含みますので、ご閲覧いただく際はご注意くださいませ。


◆透明な嵐◆

>「私たちは、透明な存在であらねばなりません。」
>「それでは『排除の儀』を始めましょう。」

大方、2話までの私の見解通り「透明な嵐=同調圧力」ですね。ここで明確に「空気を読めない=悪」というテロップも出ました。クマにやられた純花は仕方なかった、彼女は「悪」だったのだから・・・と。

こんなに明るみな社会の闇も珍しいですね。イジメカッコワルイ。

>「私たちは、次に排除する『悪』を決めねばなりません。」
>「Let's search evil!!」

まとまりを保つためには不穏分子は潰さなきゃいけない。そのための排除の儀。
なんか投票シーンを見て少し前に流行った「人狼」っていうゲームを思い出しちゃいました。

>「セレクト!ついにこの時がきた!!!」
>「私はあの子を、椿輝紅羽を食べる!・・・ジュルリ。」

自分の思惑通りになってご満悦の委員長ちゃん。「透明な嵐」がくるのを望んでいたのは紅羽が美味しくなるのを待っていたワケではなく、やっぱり食べるための口実ができるからのようですね。

なるほどなるほど、見えてきましたよ~。

①人間は「排除の儀」によって、足並みを乱す『悪』を決める

これは群れの空気を保つための必要悪とも言えますね。もし何かのキッカケでこのまとまりが瓦解してしまったら、自分たちの身を守るすべがなくなってしまうワケですから。まあ逆に言えば、皆が「スキ」という感情を持てば、それでもまとまり合えるということだとは思いますけど。

②『悪』となった人間は群れから追い出される(=ヒトの世界から追い出される)

ここで1話にあったライフ・クールの言葉を思い出してください

>「ヒトとクマの間には、断絶という越えられない壁があるのです。」
>「被告らはそれを越え、ヒトの世界に侵入しています。これは明らかに『食べ過ぎ』です。」

やっぱりクマはヒトの世界から追い出された人間だけを食べていたんじゃないですか?

だから委員長は「透明な嵐」を待っていた。ヒトの世界から排除された獲物が来るのを。
物理的には断絶の壁を越えてますが、この作中では概念的なものと考えていいでしょう。

これは以前の投稿から「断絶の壁=人間のルール」と書いている通り、この壁が、人間が群れを作るための括りであり、クマはその群れから追い出された(壁から外に出た)人間を狙って食べていたわけですね。

しかし、この秩序を無視し、群れから排除されていない人間を「食べる」クマがいます。
それが次に「ユリ裁判」でお話する銀子&るるたちです。


◆ユリ裁判◆

①まず1話で銀子&るるが食べていたのは誰?

これはラストシーンで語られた、赤江カチューシャという子だったようですね。靴下を折っていたのが純花ちゃんだけだったので、私も最初はすっかり騙されちゃいましたw 見返してみると、赤江ちゃんの足元は1回も映っていないんですよね~。ここでひとつのミスリードがあったわけです。

そして、それを偶然目撃した委員長ちゃんが驚いた・・・と。

②クマは排除された人間しか食べられないんじゃないの?

上記のようなことが起こったので、当然これが問題になってきます。赤江ちゃんは可愛い顔して1話でモブとヒソヒソ陰口叩いますからね。悪意があるかどうかはともかく、それを見る限り「透明な嵐」の一員であることは間違いないでしょう。当然排除の対象にはなっていません。

>「裁判長、今すぐユリ承認を!椿輝紅羽を助けたい!ガウガウ!」
>「私たち・・・人を食べます。食べなきゃ、銀子のスキが守れないんです!」

しかし、3話にして分かりやすく言葉に出してきてくれました。
銀子のスキを守るためには、人を食べなきゃいけない。透明な嵐を止めなきゃいけない。

ここで1話の捕食シーン「たとえ罪でも食べるよ。スキを壊すものは許さない。」に繋がるんです。

この流れからして、ユリの花壇を伐採したのは大方この赤江ちゃんでしょう。次のシーンのカメラアングルのせいで銀子たちが投げたのかと思わせていたレンガも、多分この子の仕業です。銀子たちは建物の上から赤江ちゃんの悪行の一部始終を見ていたわけですね。

>「貴女は透明になりますか?それとも、人間食べますか?」

透明になるとは、スキを諦めるということ。
そして銀子たちは人間を食べる選択をする。『私はスキを諦めない』。

このような過程を経て、3話ラストに鬼山江梨子ちゃんへ放った「これからキミを・・・食べるから。ジュルリ。」となるわけですね。ここまでが、ユリ裁判とそこで毎回決議されている「食べる」対象についての諸々になります。

問題は次です・・・w


◆ユリ承認◆

いや~さっきは調子こいて「全てのピースがはまった」とか言ってましたけど、良く考えたら全然そんなことありませんでしたね。正直このシーンで何をしているのかサッパリわかりません!!w

一応「対象外の人間を食べる」ことに対して承認してるような節はあると思うのですけど、そんな局所的な意味ではなく、もっと広いなにか大きな、大局を指しているような雰囲気があるんですよね。
だって、もしこのユリ承認が「人間を食べる」ことに対してのみ行われたものだったら、そのあとのペロペロも、襲われたハズの紅羽が無事なことも説明がつきませんからね。

そこで一つたどり着いた結論が

「ユリ承認には、輪るピングドラムで言うところの『運命の乗り換え』的な何かがあるのでは?」

ということです。

実は、1話のときに少し引っかかっていた裁判長の言葉がありまして・・・。
>「ようこそ・・・断絶のコートへ。さあ、扉は開かれました。」
>「生きとし生けるもの全て、そう、ヒトとクマの『彼岸』もここなんです。」
当初はあまり意識していなかったのですが、今思うとちょっと意味深に感じます。

『彼岸(ひがん)』:仏語。生死の迷いを河・海に例えたその向こう岸。悟りの境地をいう。

つまり何が言いたいかというと「紅羽はあのとき一度死んでいるんじゃないか?」ということです。
そして、例によって運命の乗り換えには「対価」が必要ですからね。それがあのペロペロかな~と。

紅羽から伸びたユリの花から滴る蜜をすするクマ2匹・・・。

まだ一体これがどう絡んでくるのかは分かりませんけど、大きな力にはそれなりの代償が必要というのが世の常ですからね。もしかしたら、紅羽の「スキという感情」を舐めとっているのかもしれません。

最終的にどうなるかは・・・まあ、あくまで予想の範疇を出ませんけども。

>「・・・いける!約束のキスを、私にッ!!(ダーン)」

銀子たちの想いは届き、ユリを承認された紅羽は運命を乗り換えます。そして確変を起こし、サンライズ立ちからの一撃をかましたり、それ以前の話では襲われる前の状態に戻ったりしていたワケです。
委員長ちゃんは多分生きてると思いますけどね~。腕章がちぎれた描写だけですし。

ということで、ユリ裁判と承認の見解についてはまあ、かなりコジツケもありますがこんな感じですかね。


◆その他気になったこと◆

・第3話冒頭でアップになっていた鳥型の紋様

かなり強調してましたが、何か意味があるんでしょうかね~。一応東京都の鳥に「ユリカモメ」が指定されていますけど、特に何かの象徴というわけでもなさそうですし・・・。
東京が舞台なのかな?でもそれってそんな重要なことなのかな~。

箱仲ユリーカ・・・ユリーカ・・・ユリーカモメ・・・ユリカモメ・・・ハッ!
いやいやいやいやそんなまさかね。

・学園長と紅羽の母

旧知の仲だったようですね。紅羽たちの前、二人でユリの花壇を育てていたという。
まあつまり百合だったわけですが、その箱仲ユリーカさんが今は学園長をしている・・・と。

これまで出てきたクマの名前を見る限り、「ユリ」と入ってるこの人も怪しいとは思うのですが、普通にいい人そうなんですよね。これからどう絡んでくるんでしょうか。

・銀子とるる

家の地下室で射撃の練習をしている紅羽を見つめる銀子。
るるは紅羽ばっかりで構ってくれない銀子に対してスネてしまう。

>「椿輝紅羽、きっとすごく美味しい女の子なんだよね・・・。」

この台詞がホントに切なくて、一気にるるのことが好きになりました。

きっとるるは、銀子のスキをちゃんとは理解できてないんじゃないかな~。
「何でこんな紅羽に執着してるの?他の女の子(食べ物)と何が違うの?」的な。
銀子が好きだから、銀子のためだから協力してる感じ。

しかもここまで想われている銀子はまったくるるのこと相手にしてないんですよね。いつもるる以外を見てるんです。記憶が曖昧ですけど、まだ銀子は作中で名前を読んだり、目を合わせたりしたことないんじゃないですか?w
ほんとに儚くて心にキますわ・・・。

まったくるるちゃん可愛すぎるぜ。

>「銀子、るるね。銀子に会ったあの日のこと、絶対忘れないよ。」
>「銀子が私のスキを見つけてくれた、届けてくれた。」
>「だから・・・るるは何があっても、スキを諦めないよ。」

この台詞も何かありそうですよね。これから過去のことも掘り下げてくれると嬉しいです。

・百合園 蜜子

第3話で一番良かったポイントを聞かれて、即答できるレベルで感動しました。
いやだって・・・もうこれはさすがにイカンでしょw 悠木碧さんの圧倒的な演技もさることながら、あの畳み掛けるような煽り。私も紅羽と一緒になって感情が昂ぶりましたね。

てかこんなにキャラの台詞で怒りを覚えたのは初めてかもしれません。
それほど最高なワンシーンでした。年明けからいいもの見れましたよホント。



まあこんな感じで、第3話はとても満足いく結果で幕を下ろせたんじゃないでしょうか。

それにしても、いきなり「ユリダァク~」ってきたときはお茶を鼻から吹きましたねw ほんとこういう細かいところがイチイチ私の琴線に触れてくれます。あ~書いてたらもう一度見たくなってきちゃいました。

それでは長くなりましたが、今回のレビューはこれくらいでお開きにします。
閲覧ありがとうございました。{/netabare}


【2話ショック!!】(2015.1/17)

{netabare}2話で少しですがクマサイドのことも見えてきましたね。

1話の投稿で気になった点も加味して、今回も内容の方を整理していきたいと思います。
まあ言ってしまえば自分用のメモみたいなものです(殴

それでは、まずは特に重要そうなところから書いていきます。


◆1話で銀子&るるが食べていたのは純花ではなかった!?◆

>「散々食い散らかしてようやく分かったわ。排除されてる個体だけが、本当に美味しいってこと。」
>「スキを諦めない娘の肉だけが、ザクロと蜜の味がする。私の飢えを満たしてくれる。」
>「泉乃純花、貴女はとても美味しかった。」

委員長ちゃんのセリフ。紅羽が狙われる理由も一緒に説明してくれましたね。
そうなると、1話で銀子たちが食べていたのは誰だったんだろう・・・?

>「もうすぐ・・・『透明な嵐』がもうすぐ来る。・・・あぁ待ち遠しい!」
>「早く・・・早く食べたぁい。椿輝紅羽を!ギャウギャーウ!」

「透明な嵐」が来ないと紅羽のことは食べられないっぽい。
それとも嵐にさらされて美味しくなるのを待っている?

純花はその嵐に合ったから食べられたというのは分かるけど、他の被害者はどうなんだろう?

>「椿輝紅羽は、泉乃純花へのスキを諦めなかった。」
>「群れの空気を読まぬモノは、排除の対象になる。そういう仕組みですものね。」

委員長&このみの会話。「スキ」は群れの空気を壊すもので、それは排除の対象になる。
つまり「スキ」を持った子が透明な嵐に合い、クマに食べられてしまう。

そういえば1話でも「クマにとって私たちはか弱い獲物だから常に群れていなくちゃ」とかモブが言っていまいたね。透明な嵐によって群れから追い出され、クマに狙われる隙ができてしまうって感じなのかな?

>「ダメね。やっぱり透明な娘は透明な味しかしない。」

しかし『透明な嵐(社会の同調圧力)』によって『透明(スキを諦めた)』になってしまった子は美味しくない。ラストシーンで委員長が食べてたのは「スキを諦めない子」ではなかったみたい。

この被害者は、2話序盤にモブが話していた「遺体の見つからない行方不明の子」ですね。


◆実は1話屋上で紅羽を襲ったのは委員長&このみだった!?◆

確証があるワケではないのですが、私もすっかり騙されていました。

1話で紅羽を襲ったクマ2匹の「目」をもう一度良く確認してみてください。
右の黒いクマは切れ長で、もう一方の茶色いクマは横に長い楕円形なんですよね。

色だけなら銀子&るるの可能性もありますが、「目」が委員長&このみのクマと酷似しているんです。

このことを合わせて考えると、どうやって1話終盤に屋上で倒れている紅羽をどこからか突然湧いた委員長ちゃんが最初に見つけて保健室に運んだのか、2話でこのみを射殺したときに委員長ちゃんがあそこまで2匹目のクマに警戒心を抱かなかったのか。

これらに説明がつきそうな気がしてきますよね。


◆それじゃあ「ユリ裁判」って一体何?◆

上記の事実に気付いたとき、真っ先に浮かんだ疑問がコレです。

最初は銀子&るるが紅羽に襲いかかったから、1話であの3人がユリ裁判に出席したのかと思っていたけど、1話も2話も襲いかかったのは別人・・・というか別クマ。

『ユリ裁判の流れ』

①裁判官から意味深な電話が掛かってくる

>「貴女のスキは本物?これは断絶の壁からの挑戦です、椿輝紅羽。」
>「貴女のスキが本物なら、屋上へ行くがいい。クマが貴女を待っている。」
>「その身をクマに委ねれば、貴女のスキは承認される。」

②屋上でクマに襲われて謎空間に落ちる

これが裁判官の言っていた貴女を待っているクマ?
そしてこのクマに身を委ねれば「貴女のスキ(ユリ)」は承認される?

委ねるのは銀子&るるかとも思ったけど、それだとここでクマに襲われる過程に意味がなくなっちゃうような・・・ これがユリ裁判のトリガーになってるのかな?

④出席するのはいつも紅羽&銀子&るる

クマに襲われた紅羽と、何故か登場する2匹のクマ。

⑤「人間食べます」からの「ユリ承認」

やっぱり銀子の「食べる」は違う意味っぽいな~。
でも1話ラストで物理的に誰かをガリゴリ食べていたときも「食べる」って言ってたしな~あ。

少なくとも委員長とかこのみとは違う特別なクマなのかな?そんな感じがする。

でもまあ、その「ユリを承認する」ってことの意味がまだ全くわからないんだけどもw
百合を舐めるシーンも含めて、これだけはいつまで経っても何も見えてこないですね~。

そういえば、1話だとユリ裁判のあと紅羽は「気を失って倒れていた」らしいけど、2話では意識もあるし、クマに襲われる前の状態に戻っていますよね。ここも何か関係があるのかな~・・・。


◆その他気になったこと◆

・アバンのモノローグ

>「私たちは、最初からあなたたちが大キライで、最初からあなたたちが大スキだった。」
>「だから、『本当の友達』になりたかった。あの壁を越えて。」

毎回入れてくるのかな?繰り返し視聴者に聞かせるということは、この台詞がキーになってくるのでしょうね。まだ深い意味は掴めませんが『本当の友達』については前回の投稿でまとめた方向に攻めていくつもりです。

・先生の意味深なセリフ

>「泉乃純花さんの『地上での生』は、終わりを迎えました」

また妙な言い回し。普通に「天国へ逝った」というそのままの意味にも受け取れるけど、この作品内であえて登場人物にこういう言い方をさせるのは少し気になりますね。

>「可哀想に・・・あの子は『また』、大切な人を失ったのね。」

紅羽に対して発せられたであろう言葉。『また』って言ってますね。
大方1人目の「大切な人」に当たる人物は母親のことでしょう。

学園の先生だから、家庭のことを知っていても不思議ではないけど・・・
何かもっと深く入りこんでそうな臭いがしますね~。
しかも学園内に霊安室のようなものが?ここに被害者の遺影をしまっているみたい。

・クマが捕食をする場所

紅羽が純花と大事に育てていたユリの花壇・・・。
クマが人間を食べる現場って、2話までを見る限り必ずその裏側なんですよね。

ここを「人間の心」と見立て白椿の花言葉「理想的な愛情」の件も加味して考えてみると、この二人が育んできた愛情(百合)を『本物のスキ』と仮定するのならば、その裏側に当たるものは「暗い肉欲」?

つまり『愛情』と『性欲(本能)』の軋轢。
このシーンからは、そんな対比のメッセージを感じます。

・紅羽と銀子の会話

>銀「知ってる?悲しい、寂しいときの涙はご馳走の味がするんだ。」
>銀「紅羽のスキは本物だ。涙の味・・・紅羽のスキは本物だ。ガウガウ。」
>紅「貴女に何がわかるの?」
>銀「分かるよ。私のスキも本物だから。」

『本物』と『偽物』。本物というのは、上記の「理想的な愛情」のことでしょう。
委員長やこのみの「スキ」は肉欲だった。しかし、銀子のは違うということ?

>銀「椿輝紅羽・・・会いたかった。私たちはキミに会うためにここに来たんだ。」
>紅「どういう、こと?」
>銀「匂うよ・・・デリシャスメル、ガウガウ。キミに私のスキを・・・。」

やはり銀子は普通のクマとは少し違うみたいですね。
まだ核心には遠いですが、何か秘密があることは2話全体を通して明らかになりました。

スキが本物だからこそ「食べる」という行為も、他のクマのように物理的なモノにならないのかもしれませんね(百合の蜜を舐めとるような)。でもこの考えでいくと、1話ラストで銀子が「罪でも食べる」と言ってガリゴリ捕食していたことと繋がらないんですよね~w

これはアバンでも言っているように、クマの習性とも取れますが・・・。
(>「クマは人間を食べる!そういう生き物!」)
もしかしたら、紅羽をイジメた人間を裁いたのかもしれませんね。
つまり「透明な嵐」に当たる誰かを。

う~ん難しい。まだもう少しヒントが欲しいところです。


◆2話のまとめ◆

①純花を食べたのは委員長ちゃん
②1話で紅羽を襲ったのは委員長&このみのクマ
③「スキ」を抱くと透明な嵐に襲われて、クマに食べられる
④「スキを諦めない子」がデリシャスメル
⑤紅羽のスキと、銀子のスキは同じ本物
⑥銀子&るるは普通とは違う特別なクマ?

やっぱりまだユリ裁判のところと、1話ラストで銀子&るるが何を食べていたのか。
この2つがけっこう引っかかっていますね~。

次はいよいよ第3話。そう、ユリ熊嵐というアニメの彼岸もここなんです!
どんなふうに展開していくのか楽しみですね~。{/netabare}


【クマショック!!】(2015.1/10)

{netabare}ちょっと編集するときにエラー出て、最初の投稿とここらへん一帯が消えちゃいました\(^o^)/
なんか1月10日の私が1話について書いてたみたいなので、お暇だったら見てあげてくださいw


それでは、気になったことや重要そうなワードから見ていきます。

(1)ユリ熊嵐というタイトル

「熊嵐」とは、熊を仕留めたあとに吹き荒れると言われている強い風のことみたいです。
ユリ+熊嵐・・・ どういう意味なんでしょうね。

(2)花壇に咲いたユリ

これはほぼ同性愛(百合)のメタファーで間違いないでしょう。
それを紅羽と純花で育てて(はぐくんで)きたわけですね。

(3)断絶の壁

これについては、OP直後に世界観の解説で抽象的にですが言及されていました。
>「人間たちは、断絶の壁を作って私たちクマを自分たちの世界から追いだそうとしたけど~。」
>「でもでも、人間のルールなんて、通用しないんだからね!ガウ!」

これは「断絶の壁=人間のルール」と解釈していいのかな。
人間たちが、道徳や倫理を盾にして身を守ってる気になってるけど、そんなのクマには関係ないよってこと?とりあえず、これによって人間の世界とクマの世界が隔てられた・・・と。

(4)クマ

メインだけあって必ずキーになってくるのでしょうけど、1話の段階ではどういう立ち位置なのかまったく把握できませんね。以前投稿した際に適当こきましたけど、見ればみるほど意味が分からなくなってくる存在です。

分かっているのは、爆発した「小惑星クマリア」の破片が地球に降り注ぎ、その影響でクマが人間を襲うようになってしまったこと。「クマは人間を食べる!そういう生き物!」みたいだけど、無差別に狙うワケではない?こと。

>「私達は、最初から貴女たちが大キライで、最初から貴女たちが大スキだった。」
>「だから、本当の友達になりたかった。あの壁を越えて。」

アバンのモノローグ。「本当の友達」、「スキ」と「キライ」。うーん、重要そうなワードですね。

(5)椿輝 紅羽(人間)

今作の主人公(だと思う)。名前に入っている椿という花を英訳すると「カメリア」。
そして、キャラの髪色に重なる白椿の花言葉は「理想的な愛情」。

小惑星「クマリア」と椿の花「カメリア」。な~~~んかありそうでなさそう。

(6)登場人物の名前

クマ:「百合」城 銀子
クマ:「百合」ヶ咲 るる
人間:※椿輝 紅羽
人間:※泉乃 純花
人間:「百合」園 蜜子
人間:「百合」川 このみ
人間:箱根「ユリ」ーカ
人間:赤江 カチューシャ
人間:鬼山 江梨子

キャラ名のあちこちで見受けられる「百合」という文字。
そして、初登場する女性キャラすべての名前テロップ下にタグ付けされた「ユリ」という言葉。
名前に「百合」以外の花を持つ※二人のキャラクター。

何かありそうな匂いがプンプンしますねぇ~。

(7)先生の「クマが出没したので友達と一緒に行動するように」という発言

ここの台詞に違和感というか「友達と」というところを強調しているようなイメージを受けました。

(8)透明な嵐

花壇のユリが全部刈り取られているシーン。

>「嵐が・・・追いかけてきた。これが最初。大切なものから壊していくっていう警告。」
>「透明な嵐は、全てを壊していく。私たちがすり減って消えてしまうまで・・・。」

これは(11)の「透明」という言葉と合わせて考えてみると、社会の同調圧力や排他的悪意を表しているような気がしました。いわゆる「イジメ」ですね。そう言ったどうしようもない大きな流れのようなものを自然災害になぞらえて「嵐」と呼んでいる?

>「たとえ何をされても、私は紅羽ちゃんを・・・『スキ』を諦めないよ。」

「スキを諦めない」って不自然な台詞ですよね。
この「スキ」という単語に含みを持たせている印象があります。

(9)二人の汚れた手

これもほぼ間違いなく「罪、悪いこと」のメタファーでしょう。
つまり「罪=禁じられた恋(百合)」で、委員長さんは透明な嵐(同調圧力)に逆らおうとする共犯者ということで、一緒に手を汚していますね。

(10)「そう、だから今度こそ大切な人は・・・この手で守る!」

過去に何かを臭わせるような紅羽のセリフ。母親っぽい人と映っている写真をあえてここのシーンで見せているのに、家の中に紅羽以外の気配を感じない。紅羽のクマに対する敵愾心とこの状況を加味して考えると、昔クマに母親を食べられた?
そして何故か、銀子がつけている首輪と紅羽ママのネックレスが酷似しているんですよね。
これは絶対なにかありますよ・・・。

(11)モブの「透明にならないからいけないのよ」という言葉

クマに襲われて行方不明になってしまった純花に対して囁かれたもの。この場合の「透明になる」とは、言葉のニュアンスと、その前にあったモブたちの会話とを合わせて考えてみると「社会の流れに従う」みたいな感じ?

>「一人でいるのが悪いのよ・・・。」
>「生き延びるには、友達が必要!」
>「クマにとって私たちは、か弱い獲物だもん。常に群れていなくちゃ。」
>「そうよ、群れの空気が一番大切なんだから!」

また「友達」というワードが登場。先生の忠告(7)のこともあってなんだか意味深ですね。
ここまで通して見ていくと、どうしても「集団」を意識しているような描写が目立ちます。

>「でもこれで、次の透明な嵐は・・・。」

次の・・・? どういう意味だろう。

(12)裁判官「あなたの『スキ』は本物?これは断絶の壁からの挑戦です。」

アニメ内でたびたび口に出される「スキ」という言葉。
「断絶の壁=人間のルール」という考えでいくと、これは社会を敵に回してでも純花を好きでい続ける覚悟はあるか?という問いに思えますね。

(13)裁判官「その身をクマに委ねれば、あなたの『スキ』は『承認』される。」

これはそのままの意味にも取れるけど・・・終盤を見るとよく分からなくなってくる~。

(14)ユリ裁判

問題のシーン。紅羽がクマに襲われたと思ったらいきなり謎空間に落ちていき、
「食べたい・・・今すぐあの娘が食べたぁ~い!」という掛け声と共にイケメンボイスで開廷。
なにが「かいてーーーい」だよアホwww頭パンクするわボケwwwwww

ここでは「食べる」と「スキ」の二つの言葉がピックアップされていました。

>①「被告グマ、あなた方は罪熊であることを認めますか?」
>②「ガゥ~・・・ でもぉ~私たち、お腹がペコリンなんですぅ~。」
>③「私たちは『スキ』をあきらめない。」

①→②の会話の流れだと「人間を食べる=罪」だけどお腹が減って、という訴えに見えます。
しかし、③のセリフが入ってくると全く意味が分からない会話に・・・「食べる=スキ」・・・なのか?
クマが人間を食べることは一種の愛情表現・・・? いやいや。

>「ヒトとクマの間には、断絶という越えられない壁があるのです。」
>「被告らはそれを越え、ヒトの世界に侵入しています。これは明らかに『食べ過ぎ』です。」

ん?んんん?「食べ過ぎ」?これは一体どういうことだろう。
クマの世界で食べる分にはいいけど、ヒトの世界にまで行って食べるのはやりすぎって意味?
つまり普段はクマの世界に入り込んできた人間を食べていた?

>「では被告グマに問います。あなたは『透明になりますか?』それとも『人間食べますか?』」

頭がカチ割れそうだ・・・。今までの内容(8)(11)で考えると、やはり「透明になる=社会の流れに従う」という意味になるのかな。ここでの社会とはクマの世界のもので、ライフ・クールの訴えを素直に聞き入れてヒトの世界から手を引くか、それとも・・・って感じ?

>「ユリ、承認!」

なぜここでいきなり「ユリ」という言葉が!?
やっぱり「食べる=スキ」だから同性愛でユリ(百合)、そしてそれを承認っていう流れなの?w

(15)謎空間での出来ごと

輪るピングドラムでお馴染みのシーン。
今回は「生存戦略ゥー!!!」の代わりに「ユリ承認ー!!!」

>銀子「紅羽・・・私はあなたを『食べる』。」
>紅羽「私の望むものはどこ?」

>紅羽「透明な嵐の中、私は探す。」
>銀子&るる「どこを探すの?」「何を探すの?」
>紅羽「約束のキスを・・・私に!」

透明な嵐の中、つまり逆境に合いつつも紅羽には探さなきゃいけないものがあるみたい。

映像としてはユリ承認されたクマが何故か変身、擬人化して紅羽から伸びるユリの花から滴る蜜を舐めているという艶美なもの。そして3人が手を重ねて終了。あぁ^~頭が破裂しそうなんじゃあ^~。

また「食べる」という言葉が出てきましたね。
そして食べられたハズの紅羽の体には何も異変がない?

やっぱり「食べる」という言葉は普通とは違う意味で使われているみたいです。
(13)で言われていた「委ねる」とは今のような状況のことで、「承認される」とはこういうこと?
つまり「食べる=承認」? スキだったり承認だったり頭がこんがらがってきた~。

そういえば、OP映像では紅羽&銀子&るるの3人が仲良さそうにしてるけど、これも何か関係があるのかな~。それに銀子と紅花がキスしようとしてるし・・・「約束のキス」・・・うーん。

(16)意識が戻ってからの紅羽

謎空間から戻ると保健室のベッドの上に。
横で看ていた委員長ちゃんによると「1人で倒れていた」とのこと。

>「嘘よ・・・だって屋上にクマが!純花を、純花を返すって!!」

そんなことクマ言ってたっけ? (13)の言葉をそう解釈したのかな。
とにかく純花はまだ戻っていないらしい。

(17)問題のラストシーン

>「ガリガリ、ゴリゴリ、ガリガリ、ゴリゴリ・・・」

この引きのせいで今まで積み上げてきたピースが音を立てていっきに崩れていきました(白目)
えぇ~「食べる」って・・・えぇ~。もうどういうことやねん!!!

この擬音からして間違いなく「物理的」に食べられてますよね?w
多分、被食者は行方不明中の純花ちゃん・・・。

>「ガゥ~、やっぱり美味しいね!人間の女の子は。」
>「たとえ罪でも『食べる』よ。ガウガウ。『スキ』を壊すものは、許さない。」

ここでの罪というのは、ユリ裁判(14)で言われていた「ヒトの世界に侵入して食べる行為」のこと?
でも食べるってこういう意味じゃなかったんじゃないの!?w

(15)で「あなたを『食べる』」って銀子に言われてた紅羽は食べられてないのに・・・。

そしてまた登場した「スキ」という単語。しかも今度は「壊す」という意味深な言葉付き。
純花が「スキを壊すもの」で、それが許せないから「罪」でも「食べる」?

本格的にこんがらがってきたあああああああああああああ。



とまあ、今分かってる(?)ことを箇条書きにするとこんな感じですね~。
これら(1)~(17)の話をまとめると・・・

①紅羽と純花は愛し合っている(2)
②しかし、それは罪であり(9)社会の理解は得られない
③理解できない、浮いたものには同調圧力が働く(8)
④そのためヒトは、排他されないように集まり、群れて行動する(7)(11)
⑤その集合体における個人を「友達」と呼ぶ

なんか良くある学園ドラマで描かれるドロドロ劇に似た何かを感じますよね。特に女子のw
ハブられないように、嫌われないように周りに合わせるだけな表面上の社会。

そんな中で、紅羽と純花は「真実の関係」を築いていくワケです。

これが「ユリ熊嵐」の中におけるヒトの世界を表す構図だと思います。
そして、そんな世界が「断罪の壁=人間のルール」に囲われているんですね。
なんだか(4)の「本当の友達」に繋がりそうな気がしてきますね~。
(5)の花言葉「理想的な愛情」も一緒に考えると面白そうです。


で、ここにクマが絡んでくるワケなんですが・・・。
まあこのクマのことが存在から言ってることまで、その全てがまったく理解できないんですよね~。一応、以前投稿した際に書いたような「対極的存在」じゃない・・・とは思うのですが、まだいまいち掴めてないのでハッキリとした答えは出せません。

せめてラストの捕食シーンがなければ考えようはあったのですが・・・w


つまり何が言いたいかというと、ここまで色々まとめた結果「何も分からなかった」ということです!!

まあここまで色々考えてる時点でかなりハマってるということだけでも伝われば・・・w
とそんな感じで、これからも楽しみにしながら見ていきたい作品筆頭ですね。

癖はかなり強いですが、世界観がとても魅力的で、映像だけでも楽しめるくらいの出来だとは思うので、気になった方は一度視聴してみて欲しいです。

それでは長くなりましたがここらへんで失礼します。
閲覧ありがとうございました。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 35
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

クマを捕まえに行こうかな

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。


 とうとう最終話が終わってしまいましたね。完結したのでネットの情報を解禁してみたのですが、案の定第一話への風当たりは強かったようです。まぁしょうがないか。食わず嫌いせずにチャレンジして欲しいですけどね。私は全体を通して非常に楽しめたので満足しています。PVでは現代の神話を謳っていましたけど、童話(絵本)の雰囲気を作ろうとしていたのは伝わってきましたし、童話特有のめでたしめでたしな感じもあったと思います。

 幾原監督作品は、去年の9月ごろにウテナの劇場版とテレビ版、同じく11月ごろにピンドラを見ていました。劇場版以外に関して今更ながら明かしてしまうと、どちらも中盤は倍速で見たり、BGM状態になっていたりと、あまりきちんと見ていなかったんですよね。最初と最後だけはかなりしっかりと見ましたけど。
 冬アニメで新作としてユリ熊嵐が登場したのは単なる偶然だったんですけど、いい機会だから毎週きちんと見てみようかなと考えました。で、サボらないようにと自分への縛りとして、各話更新レビューを導入したんですが…、筆舌に尽くしがたいほどに大変でした! こういう企画は多分もう二度とやらないですね。心がポッキンしそうでしたから。各話更新しているには人には「すごい!」の一言しか出ませんね。

 そして、これが最後のレビューになるわけですが、各話の内容、エンディングへの経緯なんかはほとんど書き尽くしてしまったので、正直あまり書くことが無い。感想でもいいのかなぁと思ったのですが、私は感想を書くのが大の苦手。
 というわけで、私はユリ熊嵐をこう見ました、という話をしていきたいと思います。全体の復習をしてから、第12話のレビューにつなげます。過去の11話分のレビューを再掲するとかなり長くなってしまいますし、今更各話の流れに合わせる必要もないので、用語集的な感じにざっくりとまとめていきます。
 各話レビューで追いかけて来てくれてた人には新要素はありませんから、直接第12話のレビューへどうぞ。


★用語集的な何か{netabare}

幾原監督の作家性と世界観:{netabare}
 ユリ熊嵐を理解する一番の助けになるのは、作中のセリフや表現よりも幾原監督の過去作だと思います。幾原監督の主張は、過去作からかなり一貫していますから、まずはここを確認するのが一番楽。

 ウテナのメインテーマは「革命」で、それは「心が変われば世界が変わる」ということ。自分の心が変わると世界の見え方が変わるよね、ってことでもあるけど、本当に世界そのものを変革しちゃうところに幾原監督の特徴がある。今ある世界はダメな世界だから、良い世界に作り変えちゃおう、というのが基本的な考え方。この傾向は、次作のピンドラでも一緒。幾原監督の物語作りの基礎になっている。

 そして、世界の変革以外に軸となっているのが、愛と自己犠牲の話。ウテナでももちろんあったけど、概念として極まったのはピンドラのとき。なぜなら、ピンドラのベースに宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を置いたから。目指す「真実の愛」を「普遍的な愛」に固定して、愛のためには「自己犠牲」は厭わないはずだと結論付けてる。そして、生きるためには愛が必要だと描いていた。愛し愛されることが生きることだという話。
 で、この「普遍的な愛」はもう一つの作用をもたらした。ウテナにおける愛の普遍性は、男女ではなく女性同士、つまり性別を超えた愛だったんだけど、ピンドラでは親子愛の要素が入ってきて、愛の範囲が拡大した。

 「自己犠牲」しても構わないと思えるほどの「真実の愛」を成就させて、「世界の変革」を成し遂げちゃおう。これが幾原監督の作る話。一対一の愛の成就を求めちゃうとバッドエンドのようにも見えるかもしれないけど、自分の好きな人のために「希望のある世界」を残せたと考えるとハッピーエンドに見える。こういうモヤモヤが残るエンディングを作る人。

 以上が過去作の話。この世界観をベースにすると、ユリ熊嵐という作品が結構見やすくなる(気がする)。
{/netabare}

(キャッキャウフフの)ユリと熊:{netabare}
 ユリと熊は、「真実の愛」や「普遍的な愛」を説明するための単なる要素。
 ユリに関しては、キャッキャウフフはあんまり関係ない。ユリを使うことで、男女の愛ではなく、過去作と同じ性別を超えた愛を描こうとしている。男女だと「恋愛」が前面に出てきて、「真実の愛」が分かりづらくなるから嫌ったんだと思う。ピンドラにあった親子愛は今作ではクレハママが担ってる。この二つで過去作までの「普遍的な愛」の要素が充足できてる。

 で、今作で追加された愛の要素が熊。つまり、種族を超えた愛。捕食者と被捕食者の別をも越える愛。これを入れることで「普遍的な愛」にもう一歩近づくことができた。
{/netabare}

嵐(排除の儀):{netabare}
 こっちは「世界の変革」を説明するための要素。ダメな世界や愛のない世界を説明のために透明な嵐や排除の儀がある。
 で、良い世界や愛のある世界の説明のためにあるのが、クマリア様。

 幾原監督が作る話は、「世界の変革」「真実の愛」「自己犠牲」の三本柱だと書いたけど、タイトルの『ユリ熊嵐』だけで「世界の変革」と「真実の愛」の二つが含まれてるのが分かる。足りないのは、「自己犠牲」のところだけ。これがサブタイトルの「LoveBullet」なんだけど、詳しくは後述する。
{/netabare}

クマリア様と(植物の)ユリ:{netabare}
 クマリア様は普遍的な愛の象徴。これはもちろん、キリスト教のマリア様から来てる。マリア様は処女性のモチーフとしても使われる。クレハのお父さんが問題にならないのは、マリア様が処女受胎だから。
 そして、白ユリは清浄のモチーフ。これはマリア様を象徴するものだから。マリア様が描かれる絵画には大体白ユリも一緒に描かれる。転じて、白ユリ単体でもマリア様と同じ清浄のモチーフとして機能する。
 ユリ熊嵐では、その対義語として黒ユリというのが存在している。
{/netabare}

ジャッジメンズとユリ裁判(ユリ承認):{netabare}
 ジャッジメンズは、クマリア様に仕える天使的な何かなのかなぁと思っていたけど、ちょっと違った。クマリア様の砕け散った破片の一部とか、クマリア様の化身とかがより適切なんだと思う。彼らの目的はクマリア様の復活。

 ユリ裁判では、キャッキャウフフの方のユリじゃなく、植物のユリの方の思いを判断してる。白ユリ裁判でも、黒ユリ裁判でもなく、ユリ裁判。何がどんな作用でクマリア様の普遍的な愛につながるか分からないから、清浄でピュアな思いならルールに則って何でも承認してしまう。それがツミであろうともピュアさを重視して承認する。ユリ承認はピュア承認。
{/netabare}

スキとキス:{netabare}
 これは愛と自己犠牲に関連するところ。このうちの愛の話がスキとキス。
 目指すのは「真実の愛」だけど、それ以外にも愛の形はいろいろある。ピンドラを引用するなら、愛の中には「恋<一対一の愛(個人的な愛の成就)<一対全の愛(普遍的な愛の成就)」という段階が組まれてる。

 恋に対応するのがスキ。スキがないと、どんな愛にも至らないし、どんな愛も成就されない。一番の基礎になるところ。だから「スキをあきらめない」ことが重要になる。でも、相手からのスキ(=キス)をあきらめてしまうと、一方通行の思いで終わってしまう。作中ではルル。キスをあきらめてしまったルルの、一方通行な叶わぬ思い。
 「本物のスキ」は、相手のためには自分が犠牲になっても構わないと思えるほどの強いスキのこと。

 一対一の愛に対応するのがキス。自分のスキに対して相手からスキ、すなわちキスが還ってくると一対一の愛が成就できる。個人的には一番求めたくなるけど、「本物のスキ」を無視して、ここを目的にしちゃうとエゴになる。それは「ヒトリジメ」になる。作中ではギンコ。ギンコは、クレハのキスが欲しかったけど、「ヒトリジメ」だったからツミを重ねてしまった。「食べたい」という「ヒトリジメ」願望から離れて、献身的な「本物のスキ」に気付かなければならなかった。

 で、普遍的な愛を授けてくれるのがクマリア様。種族を超えた愛すらも承認してくれる。「スキをあきらめない」で、「キスをあきらめない」のならば、結ばれたどんな二人をも祝福してくれる。
{/netabare}

ミツとツミ、LoveBullet:{netabare}
 これも愛と自己犠牲に関連するところ。このうちの自己犠牲の話がミツとツミ。

 ミツは愛が物体として表出したもの。「スキが本物」なら、その相手のためには自己犠牲も厭わないはず。自分を犠牲にしてでも相手を守ろうとするはず。つまり、自分を犠牲にしてでも相手のために尽くすこと。これがミツの概念。作中で一番分かりやすいのはミルン。ミルンは自分に傷を負いながら、ルルへのスキをミツとして届けようと献身を見せていた。
 「鏡に向かって撃つ」は、この自己犠牲への覚悟。鏡に向かって銃が撃てますか? 自分に向かって銃が撃てますか? 自分を犠牲にする覚悟がありますか? この自己犠牲の覚悟を乗せた弾こそがサブタイトルの「LoveBullet」。タイトルと併せて、三本柱の全てが充足される。「嵐に飛び込む」も同じ自己犠牲への覚悟の話。

 ツミはミツの逆の概念。相手を犠牲にしてまで自分の利益を求めること。エゴな「傲慢」や「ヒトリジメ」は「本物のスキ」ではない上に、ツミを誘発しやすくなる。
 ルルのツミは、自分の立場を守るために、ミルンとミルンのスキを犠牲にしたこと。
 ギンコのツミは二つ。一つ目は、自分を守ろうとした幼きクレハを排除の犠牲にしたこと。二つ目は、クレハのスキを「ヒトリジメ」するために、スミカを犠牲にしたこと。
 クレハのツミは、自分がクマになるのではなく、ギンコが人になることを願ったこと。つまり、自分のために相手を変えようとした。実際には、ギンコは自分の願いで人になってるけど、クレハの傲慢のツミは消えなかった。
{/netabare}

人の世界とクマの世界:{netabare}
 人の世界とクマの世界は、どちらも排除がある点では一緒。でも、中身は全然違う。
 クレハやスミカは、スキに芽生えていたから透明な嵐から排除されてた。排除しているのは愛のない人たち。
 ギンコは、ヒトリカブトで、愛の承認がされなかったから排除されてた。排除しているのは愛のある人たち。
 これが世界観のベース。人の世界は愛のない世界で、クマの世界は愛のある世界。愛のない人の世界が、エンディングを経てどうなったのかがとても大事。これが「世界の変革」の内容になる。

 でも、クマの世界はもう一つ別の顔を持つ。愛のないクマたちを集めて、クマリア様の承認を与えようとするクマリア教なる団体がある。この中では、愛のない側がマジョリティ。「スキをあきらめない」と宣言したギンコは、ここからも排除されてしまう。クマの世界だけは、愛のある世界の中に愛のない世界がある。二重構造になっている。
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 かなりざっくりにしてしまいましたが、以上が私が見たユリ熊嵐の内容ですね。次は第12話の単体レビューです。


★第12話「ユリ熊嵐」

クレハのツミとクマ化:{netabare}
 幼きクレハは「傲慢」を理解しておらず、「熊は排除されちゃうから、ギンコを人にする」ことで問題を解決しようとしていました。ですが、「本物のスキ」は自分が犠牲になるほどの覚悟がないと達成されません。それなのに、クレハは自分ではなく、ギンコの方を変えようとしてしまいました。クレハのツミですね。
 このあと「ギンコを人にするか、スキをあきらめるか」の選択肢が用意されましたが、自分のスキを「本物のスキ」だと思っているクレハは「スキをあきらめないけど、ギンコを人にして」という「傲慢」な結論を出します。ですが、このスキは「本物のスキ」ではないですから、記憶とともに失われることになります。
 ギンコは自身の裁判で人になっていますから、クレハの願いで人になったわけではないと思います。クレハの願いでギンコの裁判が開催が決定されたとか、ギンコの同意は不可欠だったとかでしょうかね。

 そして、現在に至ってクレハは記憶を取り戻します。過去の「傲慢」を自覚し、「本物のスキ」を理解するわけですが、このきっかけこそが、スミカが見せてくれた自己犠牲的な愛です。ここからは、嵐の中に飛び込み、クマリア様を召喚し、鏡越しの自分を撃ち、6体目のクマへと展開しました。クレハがギンコのために自分自身を犠牲にすることで、ギンコへの「本物のスキ」が証明されました。
 一方通行ではない、ギンコとクレハの双方向のスキが達成され、相互のキスにて決着です。
{/netabare}

エンディング:{netabare}
 排除勢の銃撃により、排除が達成されたと述べられていました。ただ、銃撃が始まる直前に扉が開いていましたので、おそらくギンコとクレハは無事だと思います。
 そして、二人が向かった先は「人と熊の彼岸」だと思われます。彼岸というのは、ここ(此岸)ではない世界という意味ですから、「人と熊の彼岸」というのは、人の世界でも熊の世界でもない第三の世界なのでしょうね。ただ、この世界からは消えていますから、人の世界からは排除が達成されたように見えていたのだと思います。絵本のラストが「どうなったか分からない」のも、二人が全く別の世界に赴いたからでしょう。

 ルルとミルンは、クマの(死後の)世界にいましたね。ルルが(死んじゃったとしても)ハッピーエンドになって本当に良かったです。カッコ書きがクッソ邪魔ですけど。無視無視。二人ともスキのために犠牲になってしまったけど、「本物のスキ」を知ってるからこそのハッピーエンドですね。キスをくれくれ言わずに、自分から飛び込めば良かったのです。

 今作の世界の変革は、世界をまるごと入れ替えるようなものではなかったですが、断絶の壁が取り払われることで概念的には大きく変わりました。ギンコとクレハはいなくなりましたが、「愛のない世界」である人の世界にスキという希望が残りました。クマリア様の言う「世界はあなたのスキで目覚め、変わってゆくものなのですから」ということですね。
 今作も「心が変われば世界が変わる」お話だと明かされました。メッセージとしては「今の世界がイヤで、この世界を変えたいと思っているのなら、まずは自分の心を変えましょう。主体的にならないと何も変わらないんだから」ってところですね。いつもの幾原作品のいつものメッセージです。

 で、この希望の一つがこのみクマロボだったわけですが、彼女の救済は本当にうれしかったですね。不憫すぎて何とかならんものかと苦慮していたので、とても安心しました。エンドクレジットで確認したところ、相手の女の子の名前は「亜衣撃子」となっていました。この名前から察するにこのみクマロボも大丈夫そうですね。

※キャラクターの名前については、第4話のレビューでこんな風に書いています(コピペ)。
 この作品での「愛」は「蜜」です。この「蜜」が生まれるのは「花」から。そして、クマは「(ハチ)蜜」が好き。「花」の周りには、クマを殺し得る「蜂」が飛ぶ。この「愛」「蜜」「花」「クマ」「蜂」の関係は、この作品の基礎を形作るので意識しておいた方が良いと思います。

 この話の後に「幾原監督は概念からキャラを配置するタイプの監督だ」「キャラクターの名前は概念に対応しているはずだ」みたいなことを書いていたのですが、長いし大した話じゃないから貼りません。
 具体例を挙げると、「スミカは純花と書き、ツバキやユリという個別の花ではなく花そのものを冠してる、異常だし重要です」とか「針島薫は針=蜂だからクマに取っては危険、ギンルル気を付けて」とかですね。
 同じように「亜衣撃子」は「愛(相?)撃つ子=LoveBullet」なんだから、きっと鏡に向かって撃てるよね。このみのハッピーエンドは確定的だよねってことです。
{/netabare}

クマリア様:{netabare}
 大勢には影響がないと思っているので、あまり触れなくてもいい気はするのですが、ちょっとだけ。クマリア様はスミカの姿を採っていました。
 スミカがもともとクマリア様だったというのは少し違和感があります。スミカは自己犠牲や献身を真っ先に見せてくれはしましたが、普遍的な愛を見せてくれたかとなると、そこまでではなかったように思えます。
 個人的には、クレハにとってのクマリア様がスミカの姿で見えていた、くらいに考えています。心の中のクマリア様は、人それぞれ違うんじゃないかなってことですね。
{/netabare}

おわりに:{netabare}
 今作では、ハッピーエンド?ではなく、ハッピーエンド!になっていました。過去作とほぼ同じことをやっているのに、なぜ?が!に変わったかというと、理由はたった一つ、犠牲の描き方が変わったからですね。
 今作の犠牲は、「命をささげること」ではなく、「命をささげる覚悟」として説明されています。スキが本物であることを証明するために、実際に命をささげるのではなく、その覚悟を見せれば良かった。過程では多くの犠牲が伴いましたが、最後の最後にこの違いが機能してくれました。ハッピーエンド好きの私にはうれしい誤算でした。


 『ユリ熊嵐』について、「過去作を見るのが一番楽」と書いてしまいましたが、これには「序盤から物語を理解するためには」という枕詞が尽きます。最後まで見ることを前提にすれば、幾原作品の入門としては一番いい気がします。

 ウテナのテレビ版は分かりやすいけど、すごく長くてテーマを見失いそうになる。ウテナの映画版は、短いけど追加されたテーマがビックリするくらい読み難い。ピンドラは、『銀河鉄道の夜』を参照することが前提になる。カンバがカンパネルラでショウマがジョバンニってところから始まって、リンゴやサソリの概念まで。だから最初のハードルが高め。でも、ここを超えてしまえばかなり楽な作品。

 どれも一長一短あるんですが、『ユリ熊嵐』は至ってシンプル。短いし、前提も必要ないし、何よりも分かりやすい。過去作では考えられないくらいに、解説が充実しています。
 唯一の問題点をあげるなら、ベストガールを決めるのに苦労することですね。ルルを推したいけど、ギンコやクレハだって好きだし、蜜子やユリーカ先生も捨てがたい。やっぱり名言の多いルルかなぁ。う~ん…。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 21

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

テーマ性が表面に出すぎて、面白さが味わいづらいのでは?

 ピングドラムを視聴してやっとある程度納得の行く考察が出来た気がしたので、今回初視聴です。
 1,2話くらいの印象だと、考察ありきの面倒なアニメで思いっきりけなしてやろうかとも思ったんですけど、ちゃんと謎も展開もあり、ストーリーとして面白くないわけではないです。

 独特な世界観。謎と事件から入って、人間クマの思惑が絡み合って過去から現在に至るまでにどんなことがあったんだろう?という興味がもてる展開にはなっていました。絵も奇麗だし、百合の場面も耽美でいいです。バンクシステムを使いすぎなのは幾原氏お得意の演出です。


 今回はむしろテーマ性が表面に出すぎというか、押し付けというか、分かりやすさというか分かりづらさというか、そちらの方がちょっと鬱陶しかったです。そのせいでせっかく面白いストーリーなのにそこが味わえず、ポカーンとなってしまう気がします。

 断絶の壁があって、椿輝紅羽の家がY字路に建てられていて、道路の表示を見るとそのままストーリーの説明です。断絶を取るか取らないかですね。家のデザインも独特で部屋の内部もいろいろ含意がありそうです。

 ユリ側、空気、悪の投票、ミニスカ制服。現代の同調圧力、SNSなどの象徴なのはすぐに読み取れます。スキがテーマですから自分の価値観と、キス=コミュニケーションの話で、ビル工事はどんどん悪いほうへ進んでいる象徴でしょう。学校を取り巻く環境が資本主義的でした。
 引き出しはなんでしょうね?ハートの下半分みたいなデザインです。

 クマ側が王政を引いていて、古い価値観なのはそちらに必ずしも正義があるわけではないということだと思います。が、少なくとも野生=行動・欲望・感情・本能・そして好き嫌い。そういったものの象徴になっていると思います。
 あるいは食べる=性行為とも見えます。

「羆嵐」という小説=三毛別事件を模しているなら、野生を持った人間の犯罪=レイプとも取れますし、コンテンツの女性の性消費の問題にも見えます。健全な恋愛をしなくなったことで性行為が出来なくなった=飢えた羆という読み取り方もできます。 
 
 女性しかいないハズなのに、なぜ子供が生まれるのか?椿輝紅羽の母は誰と子をなしたか?ですね。そこにクマ(箱仲ユリーカ)との交流がありました。この嫉妬は、他に好きになった男性がいるという意味かもしれません。

 クマ側に男性がいて、ユリ側に男がいないのは、今の男は去勢されているということでしょう。ユリ=女性、クマ=男性ではないです。

 ここで分かりづらいのは百合という漢字が名前に入ったキャラはクマだ、ということですね。箱仲ユリーカがカタカナなのは、転向組だからでしょう。この人間の中のクマは制服で表現されてもいました。
 同調している振りをして、野生を持っている人もいるんだぞ、という感じでしょう。
 この人たちが「ユリ熊」=人の世にいる野生を持った人という概念になっていますが、そうなると熊の世界は何のアナロジーだ?と分かりづらくなります。
 断絶は世代ととも取れますが、草食系と肉食系でもいいでしょう。あるいは考えない人と考える人、つまり大衆と超人。つまり、ニーチェのツァラストラです。ただ、神を象徴にもってきてますので、そこまでは言ってないかもしれません。

 これは心の中の問題かもしれないです。結局断絶の向こうは、具体的なアナロジーではなく漠然とした野生を持った人間性なのかもしれません。

 2015年は「響け!ユーフォニアム」もありました。「みんなと同じでいいのか?」という問題意識が高まっていたのでしょう。 


 ライフ・セクシー、ビューティー、クールは基本自分で行動する人には承認を与えます。これは価値基準が自分の行動を決めるのではなく、そうしたいと思えばそうれが承認なんだ、ということでしょうか。つまり、自己承認で決めていいんだと言う風にも見えます。
 一方で人間=スキを捨てる。つまり感情をすて他人の価値観に身をゆだねると言う風にもとれます。
 もし、クマ=「性行為をする人」だとすると、人を食べますか?=セックスを捨てますか?ということにもつながります。

 友達の壁の前に鏡があるのは自分自身を良く自分で知って、その上で己を捨てる=相手の事を優先する=スキが実践できますか?ととれます。


 椿輝紅羽は椿姫のヴァイオレッタの事で、泉乃純花は泉鏡花?嵐が丘学園だからそんな考察も出来るかもしれません。全部悲恋ですね。まあ、お遊びなのか含意があるのかは、1回目なので良くわかりません。



 で、以上のように言いたい事はおぼろげながらわかるとして、これはメッセージの伝え方としてはどうなんでしょう?7年前なので当時の感覚がわかりませんし、かなり「何の話か」は分かりやすく表現はしています。一方で「何が読み取れるのか」は分かりづらいです。
 断絶を男女と取りかねませんし、下手をするとクマは人殺してるというシーンをそのまま受け取ってしまうのでは?

 が、手遅れな気もします。アニメの人気の出方が年々表面的な要素になって言っている気がします。ユリのなんだかわからない話…で終わってしまうのではないでしょうか。しかも2022年現在だと…うーん。

 幾原氏の手法がいつまで通用するかですね。含意を読み取ろうという能動的な見方をする人じゃないと通じない気もします。
 逆に露骨な百合を出すことで興味を引こうとしたのでしょうか?だとするとちょっと望まれる百合の感覚が違うと思います。

 結論はテーマ・メッセージの分かりやすさとしつこさのせいで、面白くはあるけど中途半端な面白さになっていると感じます。
 ウテナのようなエンタメ・メッセージの両面から完成度が高い作品と比べると、また、ピングドラムのような、メッセージ性が非常に深いゆえに、結果的に感動が深まるような作品と比べると、小粒感が否めません。

 本作の含意が私が思っている以上に深いとしても、もっと考えないと私には読み取れません。ですが、これ以上の考察をするほどストーリーに重層性は感じないし、キャラ愛も生まれないです。
 要するにストーリーもキャラも面白いけど中途半端で、ウテナ、ピングドラムほどのめり込む気がしません。
 それは現代のアニメ作品として成立するのか?ですね。

 これから「さらざんまい」も見ようと思いますが、うーん。アニメ視聴者のアニメの消費の仕方の変化について行けるのでしょうか?ちょっと心配です。

 評価は難しいです。いい事を言っているのかもしれませんが、それでもアニメの優先順位はエンターテイメント性です。せっかくのストーリーをしつこいテーマ性が打ち消している気がします。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 10

68.8 4 手紙でファンタジーなアニメランキング4位
ミイラの飼い方(TVアニメ動画)

2018年冬アニメ
★★★★☆ 3.5 (221)
836人が棚に入れました
ごく普通の生活を送る男子高校生・柏木空はある日、旅先のエジプトにいる自称"冒険家"の父から突然、ミイラを送りつけられる。「面白いミイラを見つけたからお前に預けることにした!」と書かれた父の手紙におののく空。だが、送られてきた大きな棺から現れたのは、全長12cm!?なんと手のひらサイズのミイラだった・・・。小さい上に、臆病で、泣き虫、でも何ともいえない可愛さのミイラにミーくんと名づけ面倒を見ることになる空。一つ屋根の下、一緒に暮らし始める空とミーくんの共同生活とは・・・・。

声優・キャラクター
田村睦心、河本啓佑、茜屋日海夏、茅野愛衣、山下誠一郎
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ミイラに似たなにか

5話までの感想{netabare}
5話まで見て…おや?これ結構切り込んでく系?と思い始めました。

どうしても序盤…3話までの間「何故ミイラ?」というのがやっぱり気になってしまい、正直キツかった。
カッパやドラゴンなんかの想像上の生き物ではなく、ミイラってのはちゃんと実在してて(動きはしないが)、博物館なんかに置いてあって、その正体は人間(人間以外もあるか、とりあえず動物)の死骸が中に詰まってて。
そんなことを考えてしまうと作中のミイラに違和感しかなく…。
要はミイラは「人が作り出したもの」であって「まだ人類に発見(認知)されてないだけで、居てもおかしくはない」っていう妖怪なんかとは一線を隔してるだろう、と。
それとも妖怪に作られたってことなんだろうか?
また、ミイラに限らず想像上の生き物でも、その名前を聞いてパっと思い付く共通認識から大きく外れたモノを持ってきて「どう?驚いたでしょ?」っていう一発ネタにしか思えないというか。
更にはその…OPがなーんか物悲しい感じがするせいもあるのかな?
あんなサイズのミイラが実際に存在するとしたら──死産した赤ん坊を嘆く両親が復活を願ってミイラ化した?な~~んてことまで考えてしまったり。
ってか単純に、生態もワカラン生き物をペットにしようとしないでくれ(切実)、ってかそのために調べようと思うのは当然だし、それをしようとした神谷を止める柏木には狂気を感じた。
ドッグフードだってカブトムシにスイカ与えてるようなもんなのかも知れんぞ?

──と辛口になってしまったけど、文章として書き起こしたらそうなってしまったってだけで、別に目くじら立てて怒る程でもないし、そのままダラーっと見続けてたのですが…。
今まで謎だった世界設定が4話にして明らかに。
ああいう不思議生物はそこら辺に居て、けど人に見付かると迫害されるから普段は隠れてて、主人公の柏木はそんな差別しないで助けてくれるからよく集まって来る、って世界らしい。
それでもミイラのミーくんは別格に不思議な存在ってことっぽい。
あっそうなん?
今まで抱えてた違和感が氷解した気分。
…。
1話で説明せーや!
同じ4話内だけど、その説明がされる以前の神谷と妹の小鬼に対する態度は、もはやホラーだったぞ。
まぁ無いよりは良いんだけど…というより、これって原作がマンガなんだっけ?
もしかして原作でも自分が思ってたようなツッコミは多く寄せられて、途中から弁解がてらの設定紹介をしたとかだったりして?
果たしてそれをアニメでまるっきり再現しちゃうのもどうかとは思うけど…その場合は自分が思ってた違和感はそんなに特別じゃないってことにもなるワケで、3話までの間に切っちゃった人も多いんじゃなかろうか。
なんか勿体ないな。

そして5話。
この回では更に切り込んで、「ミーくんが故郷に帰ろうと思わないのは何でだろう?」と柏木が不思議がることに。
お、マジか、この問題掘り下げてくれる?
もししっかりと掘り下げてくれたら、そこらの異世界転生モノより上行けるんじゃなかろうか。
掘り下げてくれるかどうかはまだ不明だけどねー、俄然今後が楽しみになってきました。

とはいえ…エンジンかかるのおっそいッスね、今期そういうアニメが妙に多い気がする。{/netabare}

8話までの感想{netabare}
↑で書いた推察、もしかして正解?
要は、後先考えずに思い付きネタでマンガを始めた…のはいいけど、あれこれツッコミ(ミイラである必要性やどういう世界なのかの説明や掘り下げ等)をされて「確かにそれ描写しなきゃアカンかも?」と思って後付けながら世界設定等を追加して行ってる?
原作者自身が新人なのかな?見切り発車もどうかと思うが4話から世界観の説明が始まりそれ以降も掘り下げが続いてて、なんつーか…謎の小動物を眺めてほっこりするよりも、作者の成長を見てほっこりする楽しみ方をしてる自分が居ることに気付きました。

具体的には──
6話
「人間に害成す不思議生物は居ないの?」→「マンドレイクご用意致しました」
7話
「新たにバク出すのは構わんけど理由無きゃダメだよ」→「立秋はバクを引き付ける悪夢を見ます、何故そんな悪夢を見るのかは伏線張っときました(首筋のアザ)」
8話
「不思議生物は人目を避けてるだけでそこら中に居るんだよね?ならそこらで生活もしてるよね」→「生活ぶりを描きました」
また、地蔵に「おや?」と言わせて立秋の伏線の継続にも余念がない

とりあえず何も考えずに不思議生物をホイホイ出してるのとは違うっぽい、途中から。
あ、立秋の首筋のアザが本当に伏線かどうかは分かりません、けど「これ関係あるんじゃない?」と思わせるだけでも“引き”にはなるワケで。
8話はつぐももか?と思わせる位の豹変ぶりでやり過ぎな感もあるけど、どうにかして違和感の払拭(世界観のすり合わせ)をしようと頑張ってる様に見える。
また、地蔵や神様が居るのなら1話の段階で「ミイラって何を食べるんだろう?」と狼狽えたりせず聞きに行きゃあいいハズで、やっぱり後付けだと思います。


上記の文章はあくまで推測ですけどねー、原作の掲載方式すら知らんし。
で、もしそれが正解だとすると不思議なのは、なんでアニメでその順番通りにしちゃったかなぁ、と。
4話を1話に持ってくれば視聴切りした人の数は減らせたんじゃないかと…ってのは前回の感想でも書きましたね。
作者の成長ぶりを楽しむって視点はめっちゃ上級者向け(自分がそうだとは言わない、自分も3話まで辛かったし)だと思うんだが…。

推測ついでに今後の予想。
立秋の悪夢の原因を解除→もう悪夢見ないのでバクが居なくなる?と大騒ぎ→去らずに留まってくれることになってメデタシメデタシ
当たるも八卦当たらぬも八卦。
それプラスミーくんの謎(エジプトへ帰りたがらない理由など)に迫ってくれると良いんだけどなー、どうかなー。{/netabare}

最終回まで見て{netabare}
↑で書いた予想外れちゃいました、タハハ。
本編はそれ以上に急展開で、人の理とは別の妖怪の世界が存在してて──それだけなら今までも描写はあったが──そいつらが一同に会してモノケダンスやるとは思わんかった。
もっと個体数少なくて点在してるものだと思ってたました。
ってか祭には招待状が無いとエラい目に遭うって…神隠しにでもあうんだろうか。
うっかり迷い込んで帰ってこれなくなった人とか結構居るんじゃないの?
この作品ってそんな怖い話だったのか…。
そして「すっかり鬼太郎みたいな世界になったなー」と思ってたら“コレクター”(=密猟者)が出てきて今度はジャングル大帝チックに。
…。

迷走しとらんか?

迷走といえば妖怪のお祭りエピソード前にあったアヌビスの件。
あくまで本物のアヌビス神(ミイラの神)ではなく置物が付喪神化したって設定で、その口からミーくんを「これはミイラではない」と語ります。
本物のアヌビス神じゃないからそれが事実なのかどうかちょっと断言できない、って感じで煙に巻いた形(本当にミイラかどうか疑わしい、けど確証はないって状態)になるけど、やっぱり読者から「これ全然ミイラじゃねーじゃん」って突っ込みは多数寄せられてたんじゃないか?
どうにか誤魔化すためにアヌビス登場させたって気がしてならない、ってかそれ以外に登場させた理由が存在しないし(他の方も指摘されてますが登場エピソ-ド以降は空気)。
とりあえず自分はミーくんはミイラではなく“ミイラモドキ”だと思ってるし、ミイラの定義をwikiったらそもそも包帯グルグル巻きはミイラの条件ではないし(包帯巻いてないミイラも存在する。包帯グルグル巻きをミイラ呼びするのは「そういうミイラもある」ことからの比喩に過ぎない)、それこそミイラを模した人形が付喪神化しただけかも知れない。
作者は思い付きで始めたものの後になって頭抱えてるんじゃなかろうか。
伏線(ミーくんがエジプトへ帰りたがらない理由、立秋の首のアザ)投げっ放しで終わっちゃったけど、もうどうでもいいや。

あとこれは「アニメなんだし別にいいじゃん」って範疇になるけど、海外の“土”は輸入できません。
なんでエジプトの土って言っちゃったかな…砂だったらギリギリセーフなのに。{/netabare}

総評
これから見ようかなと思ってる方は4話から見た方が良いかも?
「4話までガマンしよう」ではなく「4話から」。
もしくは8話から、または11話から。
最初に無茶な設定デッチ上げてしまったのでその言い訳に後付け設定が次から次へと追加されたとしか思えない作りですので(何でアニメがその順番通りに再現してしまったのかは謎)。
なので順番通りに見てくと「あれ、そんな設定なの?」「そんな世界だったの?」と戸惑うことが多数。
まぁなにより「それミイラじゃねーよ」と1話にして戸惑うのが大半だと思いますが…これに関してはミイラではなくミイラモドキだと思えば違和感は緩和されるかと。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 7
ネタバレ

ヱルリラ☆ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

誰でも安心して楽しめるほのぼの日常コメディ

「ミイラの飼い方」は原作の方がcomicoの方で連載されており、
私は原作から入ったのでアニメ化をとても楽しみにしていました~ヽ(*>∇<)ノ
アニメで興味を持たれた方は、ぜひぜひこちらもチェックしてみてくださいね!

~最新話までの全体の感想~
ミイラという本来はホラー要因になりそうなキャラを、
逆にいかに可愛らしく見せるかがこの話のキーポイントですね!
アニメとなると、漫画では表現の難しいミーくんのちょっとした仕草とか、
歩くたびにちっちゃく効果音が鳴るところが可愛すぎる!!
特に、小鬼のコニーがグッd(^_^o)ってする時の音が好きです笑
「ミイラの飼い方」はミーくんを初めとしたアニマル(?)達との
日常系ストーリーなので、基本ほっこり見れるお話です
基本的には、、、。第4話くらいから少しずつ、
重い部分が見えてきますけどね汗
ともかく、作者さんのこのお話に対するモットーが
「恋愛なし、エログロなし、悪口なし」(←確か!また確認します)
ということですので、万人が楽しめる作品には間違いありません!

ただ、少し残念だったのが主人公空くんの声かなぁ(・-・`*
想像していたよりも、というかかなり女性寄りの声になってましたね。
確かに、典型的イケメンボイスのイメージでないのは確かですが、
なんだか違和感が、、、。少年声ではあるけれどすこし憂いを帯びた印象
(たとえば花江さんとか)を期待していました。他月、モギ(茂木朝)ちゃんの
声はぴったりでした!

それから、原作ファンとしてはもう少し原作に沿った進行にして貰いたかったかも。
ある意味の見せ場がカットですからね-。ちょっと盛り上がりに欠けた感が。
ともあれ、今後も楽しみにしています( ˘͈ ᵕ ˘͈ )♡
(更新日:2月3日)

以下、各話ごとネタバレありありの感想になります


第1話 しろくてまるくてちいさくてとてもなきむしだけどがんばる
{netabare} 始まりました!ミイラの飼い方!
いやもうオープニングから可愛すぎるでしょ!!
あんなミイラがいたら私でもペットにしたいですね笑笑 
みーくんとぽちのわんわん合戦も楽しかったです。
一時、ミー君が番犬みたいな鳴き声だったらどうしよって
考えていた時もあったんですけど、まぁそんな筈もなく、、、安心した笑 
最初の方の話を振り返るのは久しぶりなので、アニメでもキレキレな
空くんのツッコミに初視聴者のごとく笑わせて貰いました。
みーくんの心の声も、漫画っぽさを残したコマで表現してくれていたので、
よかったかな。次回は、ミー君が来てから初の大きめな事件が起こるので、
楽しみにしたいと思います(✿´ ꒳ ` ) {/netabare}


第2話 いじわるされたりおいかけられたり小さいということはとてもたいへん
{netabare} 今回はもぎちゃん(茂木朝)の出てくる回でしたね!
もぎちゃんはさばさばっとしたタイプの女の子なので、
あんまり甘すぎる声じゃいやだなぁ~と思っていたのですが、
だいぶイメージに近い声で安心しました!

ただ、この回は空くんの見せ場でもあったので、
原作と少し違っていたのが結構残念でした。
もしかすると、ちょっとアニメとして放送するにはグレーな部分であったのと、
尺の関係かもしれないんですが、、、。
私としては、この話でぐっとストーリーに引き込まれた印象があるので、
できればカットしてほしくなかったかな。
盛り上がりに欠けちゃったような気がします。

まぁ、でもこれはこれで、出てきたキャラが皆いい人で終わったので
めでたしなのかな、、、。あと、今回大地くんがちょこっとだけ登場しましたね。
原作では、彼が出てくるまで結構話数を踏んでいるので、
やはりかなり詰め詰めでの進行なんだろうな( ̄▽ ̄)
できることなら、急がずクールを分けるなどして展開してほしいと思いました。{/netabare}


第3話 たいせつなひとが風をひいたらとてもしんぱい
{netabare} たいせつなひと=みーくんにとっての空くんですね!
今回は、空くんのおばさんであるカエデさんがしっかりと登場した回でした。
カエデさんはメガネをかけると性格が豹変してしまうという、
一気にコメディ感が増すキャラです笑 ホントは空くんや他月、
みーくんたちにいたるまで、すごく気にかけてくれる
優しいお姉さんなんですけどね、、、。

さて、今回も少し展開が早く、もう「風邪回」がきてしまいました。
いちいちみーくんが可愛すぎて、風邪なんか引いている暇ありませんね。
それにしても、冷えピタの代わりになるとは、なんとも斬新なミイラの活用法、、、
いや、なんでもありません笑 今後の展開にどう絡ませてくるかは、
アニメで何処までやるかによりますが、所々に伏線がちりばめられていたなぁと。
みーくんの謎はさらに深まりましたね。まさかあんな方法で風邪を治すとは!
そしてそして、最後のアレは何なのか!?
次回、アレと他月の関わりを楽しみにしたいと思います♪{/netabare}


第4話 おにごっこはひとりではできないしいっしょは楽しい

{netabare}
さて、前回の最後に登場した子鬼が、いかにして空達の仲間になるかのお話でした。
コニーはまたみーくんとは対照的な、マイペースで素直じゃない(他月にそっくり)
なキャラですね。この話は、それぞれの人物の元にくるキャラが、
飼い主とどんな絡みを見せてくれるかというのも魅力の一つだと思います。
さて、今回ちょこっとだけ他月の闇のような部分が見えてきましたね。
公園で発見したドラゴンを助けることができなかったという他月。
詳しい出来事はまだ触れられてないですが、どうやらそれが他月がコニーとの仲を
深めることに躊躇してしまう大本の原因みたいです。このあたりから、
どうやらこの物語は単なるほのぼの系だけではない、という部分が
見え隠れしてきましたね。
来週はOPに登場したり、4話でもちらりと触れられていたドラゴンが出てくる模様。
楽しみです♪{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 9

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

もちもちぷにぷに! 手のひらサイズの不思議な生き物!

この物語の原作は未読です。
この作品も何の事前情報も無しで視聴を始めた作品でした。
ただ、ミイラという単語からイメージされる「おどろおどろしい何か」の様な先入観を持っていましたが、1話であっさり払拭されました。

この物語の主人公は、高校2年生の柏木空。
父親が世界を飛び回る冒険家…旅先で面白いモノを見つけては息子の空に色々と送っていました。
そして今回も父親から荷物が届いたのですが、届いたのは今にもドラキュラが出てきそうな棺桶と、大量の書類…
その書類を読み進めて分かったのは、棺桶の中に入っているのはドラキュラではなくミイラであること…
そして次の瞬間、棺桶がガタガタと動き出したと思ったら「ギィーッ…」と蓋がスライドしてミイラが出てきたのですが、ビックリだったのはミイラが思っていた以上に小さいこと…
そしてミイラという単語から凡そ思いつかない程可愛らしかったこと…

そのミイラ…可愛いだけじゃなく、役に立とうと一生懸命頑張ろうとするんです。
もちろん、手のひらサイズですから出来ることには限りがあります。
それでも一生懸命なんです…
その理由は、空と一緒に居たいから…それがひしひしと伝わってくるんです。
「ミー君」と名付けられたミイラと空との生活が始まり…物語が動いていきます。

いくら可愛いとはいえ、ミイラとの生活…全ては手探り状態です。
そんな五里霧中の状態の空をそっと励ますのが、保育園からの幼馴染である神谷他月…
空は性格と人当たりが一緒で優しさが滲み出ているような直球だとすると、他月は外見はクールだけど中味のあったかい変化球系…
でもとても良いコンビであるのが、二人のやり取りを見ていると伝わってきます。

この物語はミイラが登場する時点でファンタジーなのですが、ファンタジー要素はミイラだけではありません。
何て言ったら良いんだろう…物語が進むごとに、ファンタジー要素が「大盛り」「メガ盛り」「テンコ盛り」とバージョンアップしていく感じなんです。

でも増えていくのはファンタジー要素だけではありません。
人との繋がりも同じように強く固い絆が広がっていくんです。
勿論、ファンタジー要素と人間関係は等しい訳じゃないのでタイムラグもありますし紆余曲折だってあります。
でも、空の周りに集まってくる人たちって…結局みんな友達思いであったかい心の持ち主なんです。

この作品の心地良い部分でもあると思います。
自分が自分で居られる場所…
飾らない素のままの自分を、ありのまま受け止めて貰える場所…
こういう場所って大切ですよね。

そしてみんなが大切だと思える場所だから、みんなの大切を共有する…
困ったときには助け合うのが当たり前…
優先順位の一番は決して自分じゃない…
みんなが笑っていることが、自分の居場所の心地良さに還ってくることをみんな知っているから…
優しさが身に染みる作品…そう言っても過言ではないと思います。

私はどちらかというと殺伐とした環境で暮らしてきたので、そういう場所には憧れを感じます。
別に好きで殺伐とした環境に身を置いた訳じゃ無いんですけれどね。
でも学生時代ならではのしがらみに縛られていましたから仕方無いんですけれど…

完走してwikiをチラ見しました。
そこにはこれまで抱いていた謎の答えが記されていました。
でも謎のままで良かったかも…謎のままの方が良かったかも…
私個人的には結構衝撃的…でも知って「成る程」と思えたのも事実です。
ここでは伏せておきますね。

この作品ならではの優しさ…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、つりビットさんの「不思議な旅はつづくのさ」
エンディングテーマは、イケてるハーツさんの「ロゼッタ・ストーン」
エンディングの楽曲提供者は志倉千代丸さんです。
志倉さん、と言われなければ絶対に気付かない曲調だったのでちょっとビックリでした。

1クール12話の物語でした。
ミー君の可愛らしさと居場所の優しさ…
日常生活でそういう成分が不足した際、しっかりと気持ちが充電できる作品だと思います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 10
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