やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価
4.0
心に焦げ付く重厚サスペンス作品★
本作およびレビュー内容にはR18になりそうな過激な言語表現が含まれていますので、嫌な方は読まないで下さい。
■評価
テーマ性 :★★★★☆ 4.1
エログロ度:★★★★ 4.0
純愛度 :★★★★☆ 4.3
シリアス度:★★★★☆ 4.3
おススメ度:★★★★☆ 4.1
■ストーリー
未成年売春婦のバロットは専属の雇い主であるカジノオーナー・シェルに突如焼殺される。しかし、生きる希望を持たぬバロットに救いの手を差し伸べたのは一匹のネズミであるウフコック・ペンティーノだった。そして、一命をとり止めたバロットは自身が焼殺された謎をウフコックたちと共に追っていくストーリー。『圧縮』『燃焼』『排気』の全3話 劇場版作品。
■感想
本作は著者:冲方丁さんの日本SF大賞を受賞した小説をアニメ化したもので、私は原作小説をすべて既読済です。本作はSF作品となっていますが、科学的な考察などは皆無であり、あくまでSF設定を用いたハードボイルド・サスペンス作品となります。(攻殻の様な世界観は求めない方が良いです)
個人的な感想としては、原作小説は超えられなかったが、難しい言語表現がならぶ小説の世界観を巧みに表現した良作だと思います。本シリーズは『生きる事とは何か?』というシンプルなテーマを持ち、一つの殺人未遂事件から真相を追う過程を、肉弾戦・頭脳戦・心理戦を用いて楽しませてくれる内容になっています。
そして、未成年売春・幼児虐待・強姦・近親相姦・暴力・ドラッグ・汚職・金・権力という人間の汚物と血反吐にまみれた世界観の中で、そのストーリの本質が生きる苦しさ、そして純愛という人の生臭さを描いているので本シリーズのテーマが光ってみえます。
また本作を鑑賞すると『生きる事は何なのか?』と考えさせられ、それは『自身や他者の存在を必要とし、必要とされる事』そんな分かりきった答えを理解しながらも、想い通りにはいかない人生の虚しさ(焦げ付き)や他者に愛される幸福感を本作品は感じさせてくれます。これぞハードボイルドの真骨頂です。
ただ、尺が足りない事でエンターテイメント性が薄れている点は残念です。個人的に本シリーズ通しての見所は、カジノでの頭脳戦・心理戦になりますが、このシーンでのバロットやウフコックの心理描写や、結果に対する過程の説明が少し足りないので、緊張感や悲壮感に物足りなさを感じます。
非常に惜しいです。
総じて、本シリーズはエログロ鬱なので、万人受けする作品ではありませんが、個人的には本作の続編(前章譚)であるボイルドが主人公のマルドゥック・ヴェロシティーのアニメ化も強く祈願しております。みんな~オラにパワーをぉぉぉ!!
レビューはここで一旦しめさせてもらいます。
ご拝読有り難うございました。
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■本作の謎とポイント
ネタバレになりますので、興味のない方は
読み飛ばしてくださいましm(_ _)m
{netabare}
Q1:バロットはなぜシェルに焼殺(未遂)されたの?
A1:原作小説から引用すると、生きる実感を得るために
バロットは思いつきで自身の身元を確認してしまった
事で、マネーロンダリングの秘密に触れたと思われ
シェルに殺害される事になります。
(本シリーズではよく描かれていませんでした)
Q2:ウフコックって何者?
A2:世界大戦期に楽園にいた三博士の一人に設計開発
された人口知能をもったネズミ型万能兵器です。
(ドラえもんのネズミ版です)
仕組みは全くわかりませんが、異次元に物体を
無限・永久的に保存し、必要なときに現次元に
呼び出す様な構造になっていたと理解しています。
そのためウフコックが銃になれば弾は無限に供給され
続けます。
Q3:シェルって何者?少女達を殺害した動機は?
A3:オクトーバー社と結託し、身寄りのない少女達の
戸籍を利用したマネーロンダリングを行う悪党です。
そして、シェル(殻)という名の通り、過去の母親殺し
という罪と苦しみから逃げるために、マネーロンダリ
ングの証拠隠滅と併せて、自身の記憶の抜き取りを
繰り返し、結局は中身のない殻の様な男に成り下がり
ました。また動機ですが、どの少女も自分の事を
知ろうとしてしまう事でシェルの過去の罪の苦しみや
恐怖をフラッシュバックさせてしまい、A1の内容と
あいまって動機となり殺害に及んでいました。
Q5:ボイルドって何者?
A5:彼は元々は戦術爆撃機のパイロットであり、過度の
過労と処方されたオクトーバー社製ドラッグが要因
で、誤って見方を爆撃してしまう罪を犯します。
そして楽園に人体改造のモルモットとして送られ
ますが、ウフコックという愛を与えてくれる存在と
出会い希望を見出した人間でした・・・。
Q6:バロットはなぜ人体改造の順応率が高くて強いの?
主人公だから?
A6:半分合っています。
バロットは幼少期から大人の欲望に蹂躙される経験を
もち、その経験から無意識の防衛本能により、自分の
体の感覚を自由に無感・無心にする術を身に着けて
いました。そのため、繊細なコントロールが必要な
スナーク機能とバロットの愛称がよく順能率が
あがった事になっています。
Q7:ボイルドは重力を操って弾丸をはじく程、無敵なのに
なぜバロットの銃弾が当たったの?
A7:バロットが持つ能力はスナーク機能となっており
電子機器の遠隔制御やハッキング、そして自身の肌
から放出する電磁波をソナー代わりにして、物体の
接近や動作を察知します。
この機能を駆使してボイルドが銃を撃つ際に
重力の壁に隙間ができる事を察知し、その隙間に
銃弾を打ち込む事でボイルドは初めて被弾したのです。
そのため、終盤のボイルドはチャクグレネードを使い
バロットのスナーク機能を封じようとしたのです。
Q8:ボイルドのもっている銃は何?威力ありすぎでは?
A8:65口径のモンスター・マグナムです。通常の人間が
撃てば両腕が脱臼するほどの威力ですが、ボイルドは
重力でその衝撃を抑えて使用しています。
現代でも55口径の拳銃が最大です。
詳細はヴェロシティーで!!
Q9:ボイルドとウフコックは過去に何があったの?
A9:ボイルドとウフコックは楽園からでてからも
マルドゥックスクランブルO-9の有用性を証明する
ために、相棒として日夜事件と戦っていました。
しかし、オクトーバー社の陰謀によりマルドゥック
スクランブルO-9の遵守が難しい(ウフコックが処分
される)と思った彼は、その陰謀を潰すため
自分たちに不利な証言をする一般人たちを口封じの
ために次々と暗殺したのです。
その事が原因でウフコックはボイルドと離別し
単独で任務に励みますが、実はボイルドのお陰で
存在できているのです。そんなボイルドの愛を
知っているからこそ、ラストシーンでウフコックは
あんなにも落ち込んでいたのです。
ここで何でボイルドはオクトーバー社側に
ついてるの?という疑問が沸きますが、詳細は
ヴェロシティーで!!
Q10:冲方丁さんは虚淵玄さんの二番煎じの脚本家
じゃないの??
A10:私は違うと思います。
冲方丁さんは数多くのアニメ作品を手がける私の
好きな脚本家さんですが、私は虚淵玄さんも好きです。
このお二方の共通点は触れ幅の激しいストーリーと
鬱展開だと思っていますが、決定的に違う点が
あると思います。
それは虚淵さんは、容赦なき『死に様』を描いて
強烈な心の傷(印象)を残しますが、冲方さんは
主人公の過酷な『生き様』を描いて、苦しみと絶望を
心にジワリジワリと染み込ませてきます。
この似ているけど異なるすばらしき脚本家さん達の
活躍に今後も期待しています。
少しでも本作を楽しむ糧にして頂いたら幸いです。
{/netabare}
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