2017年度の宝島社おすすめアニメランキング 1

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78.3 1 2017年度の宝島社アニメランキング1位
劇場版 響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~(アニメ映画)

2017年9月30日
★★★★★ 4.2 (268)
1440人が棚に入れました
私は、先輩のことが――。吹奏楽コンクール全国大会出場を控えた、私たち北宇治高校吹奏楽部。うだるような夏の暑さが去り、秋の涼しげな気配が近づいたころ。先輩が退部するかもしれない……。私たちを襲った衝撃は大きく、不安をそう簡単に拭うことができなかった。美人でカリスマ性があって、ユーフォが上手くて、みんなから頼りにされている「特別」な先輩。でも、ふとした瞬間に見せる氷のように冷たい表情、他人を突き放すような瞳、誰にも本当の自分を見せない先輩。「全国に出たい」誰よりもそう思っているのに、ただの高校生のくせに無理に大人ぶろうとする先輩。そんな先輩が私は苦手で……、もしかしたら嫌いだったかもしれない。だけど私は――。あなたと一緒に響かせたい。あのあたたかいメロディーを。だって、私は先輩のことが大好きだから――。

声優・キャラクター
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、寿美菜子、早見沙織、茅原実里、石谷春貴、沼倉愛美、櫻井孝宏
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

一人一人の届けたいメロディ

2018.12.04記


1期2期視聴済


公式にもありますし、キービジュアルからも想像できるように久美子とあすかの物語。
2期第5話以降から最終話までを切り出し、ごっそり削って再構築した印象。TV版の要所は押さえつつ、総集編という単語ではくくれない全くの新作と言ってもよいでしょう。それこそうまいことリフォームしたな、という構成になってます。


『全く別の作品のように見えてTV版の本筋との差異はない ※1』
  ※1 一部TV版と時系列が違う描写があります。


総集編かと高をくくっていた私の全編観終わっての率直な感想です。


以下両者ともイケそうです。
①TV版観てない人
②TV版2期まで観た人

私は②。おそらくこのレビューをご覧の多くの方がそうでしょう。TV版では前後関係を基に想像で補ったりしてた箇所の大部分が補完されており、従来ファンも納得の内容です。いや納得どころか非常に満足する一品でした。
さらに①のご新規さんにとっても許容範囲ではないでしょうか。それは、TV版のみならず、最初の劇場版~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~を観てない人も含みます。もちろん②が望ましいところですが、お時間ない方や興味薄い方には一考の価値があると思います。
全くさらの状態、、、冒頭からあすかと久美子、とりわけあすかについてだいぶ尺を取って取り上げており、この二人の物語であることがわかりやすく提示されます。そこに、あすかとあすか父の関係、久美子と麻美子の姉妹関係が絡むTV版の屋台骨はそのまま。あたる焦点が限定的なため焦点がぼやけず、初見さんにも優しいとするのはこういったところが理由になります。


副題の~届けたいメロディ~。
あすかから久美子へ、久美子からあすかへ、あすかからあすか父へ、久美子から麻美子へ、北宇治の音を全国でという部の動向と並行するかたちで、各々の届けたいメロディが奏でられてることがわかると思います。見方によっては、あすか父からあすかへ、麻美子から久美子へ、も含まれますね。これはお見事な編集だったと言えるんじゃないでしょうか。

{netabare}「プロヴァンスの風フルVer」「三日月の舞全国大会Ver」「長尺の駅ビルコンサート」「あすかのちびっこ時代」{/netabare}
この劇場版で追加されたカットは数多くあります。劇場版に合わせてなのか演奏シーンの追加はうれしいところ。曲の盛り上がりどころで一段ボリューム上がるなど作画のみならず音響面の演出にも工夫がみられました。


ご新規さんも既存ファンもウェルカム!
少なくとも既存ファンは必見の劇場版でしょう。控えめにいってオススメです。



■劇場版ユーフォって
「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」「届けたいメロディ」「リズと青い鳥」(2018年12月現在)、どれも既存客にも新規客にも遡及できる作りになってるように思えます。
3作とも群像劇の色を極力減らし、ごく限られた少人数に絞って一対一関係を浮き立たせる仕様でした。前二作は編集の妙に唸りました。TV版製作にあたりキャラ設定を練りこんだからこそできたことだと今は思ってます。リズに至っては、TV版主人公黄前久美子はその他扱いでしたが、裏を返せば脇を固めるキャラが魅力的であることの証左と言えるでしょう。
群像劇といった特長を捨てても物語を構築できるTV版ユーフォの懐の深さを再認識するとともに、焦点絞ったことで生じる“わかりやすさ”は、あくまで他の総集編的な劇場版と比較して、という前提はあるものの、一見さんを置いてけぼりにしないことに繋がっているのでは?と思いもします。

切り取り方もテーマがあって好感です。

「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」
構成:1期全般
特色:やや総集編の色合い強め。総花的な内容のため新規取り込みにやや軸足を置いてる印象。スポコン色強めのTV版を反映した内容。

「届けたいメロディ」
構成:2期後半部分
特色:やや再構築の色合い強め。前作より抽出する話数が少ないことで新規カットを盛り既存客向けにやや軸足を置いてる印象。人間ドラマ色強めのTV版を反映した内容。

「リズと青い鳥」
構成:2期前半部分を起点としたスピンオフ
特色:完全新作。TV版で丁寧に描かれた人気キャラ二人に絞った山田監督の意欲作。ユーフォの冠がないので、新規も既存もいらっしゃいな内容。



これは私自身の願望もありますが、これまで3作ともに単独での鑑賞に堪えうる作品になっているとの前提に立てば、これはもう「いくらでも続編作れますよ」と。キャラ設定の緻密さや安易な総集編を作らないスタッフであれば可能なことと思います。
“ポニテ先輩と優子先輩”“あすか・中世古・小笠原の三年組”“後藤夫妻”“立華高校の面々”主要キャラならどこ切り取ってもそれなりのを作れる気がします。事実、小説では番外編が出てますからね。
主要どころでなくても“パーカス一同”“希美たちが1年生だった頃の話”“滝先生の学生時代”。夢は膨らみます。



再構築された物語を堪能しつつ、いつまでもユーフォを堪能し続けたいなぁと思わされる秀作でした。


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2019.02.14追記
《配点を修正》

投稿 : 2024/10/19
♥ : 63
ネタバレ

〇ojima さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ユーフォ観た人の見たかった場面がしっかりあります。

あにこれの方のレビュー観て興味が湧きましたので行ってきました。
これはいいです!!
ユーフォ観た人は是非視聴をおすすめします!
表題の通り、ユーフォ観た人の「あの見たかった場面」がしっかりあります。
焦点は 主人公の黄前ちゃん 主役のあすか先輩で進んで行きます。
2期で省かれた演奏はしっかりやってますし
ほとんど新規で作っているのではないかと思うくらい補填された内容が充実しています。
各演奏終了後には思わず観客として拍手してしまいそうな位、映像と演奏の一体感が素晴らしい出来です。
またまた京都アニメーションさんの凄さによって感動させていただきました。
因みに {netabare}滝先生及び麗奈の恋愛要素は0%でした。この切りっぷりもすばらしい!(笑){/netabare}

投稿 : 2024/10/19
♥ : 76

変態王 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

いい加減さの肯定と正しさの留保

進路、人生設計、親子関係。大人になること、「正しい」選択肢。これらに宙釣られるあすか先輩や黄前姉に、今「響い」ちゃっていいんじゃないと久美子が彼女らに語りかけ、また旋律にのせて鑑賞者にそれを届かせる。その「響け!」の部分に確信や理屈はない、なくてもいいじゃないか、と久美子の愚直さがそれを教えてくれる。キッズでいることの肯定、いい加減であることの肯定、その為なら「正しさ」さえも一旦留保してしまえることの肯定。

もともと彼女らは一旦選んだ「正しさ」によって絶望の現前をみる。「正しさ」だけでは人の想いを響かせることも届けることもできない。久美子が「みんな戻ってきてほしい」と部の一部員として振舞った正しさが副部長の絶望的な一言をつくってしまったように。「だって高校生じゃないですか!」という久美子の叫びが、想いがあすか先輩をその「正しさ」から解放する。

思えば劇中の久美子が麗奈に「麗奈は大人っぽい」と茶化したことに対して麗奈が「なんか、ムカつく」と答えたシークエンスはこの作品のテーマを象徴している。なぜなら彼女達は高校生なのだから!正しさを留保し、自らの欲望の運動によって生起した想いを響かせ、届けることの許されるキッズなのだから!さて、キッズは彼女達だけなのだろうか。私達視聴者にそのいい加減さを許してくれる者はいないのか。その問いに対しては、黄前姉が答えてくれている。人の思いや生き方の「いい加減さ」を肯定してくれる作品。今自由自在に、響け!
自分もそんないい加減さを肯定し続けられる人生を生きたいと思った。

投稿 : 2024/10/19
♥ : 10
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