完璧でカタルシスなおすすめアニメランキング 2

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ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年04月08日の時点で一番の完璧でカタルシスなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

75.3 1 完璧でカタルシスなアニメランキング1位
負けヒロインが多すぎる!(TVアニメ動画)

2024年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (356)
952人が棚に入れました
第15回 小学館ライトノベル大賞《ガガガ賞》受賞作、待望のTVアニメ化!想い人の恋人の座を勝ち取れなかった女の子——「負けヒロイン」。食いしん坊な幼なじみ系ヒロイン・八奈見杏菜。元気いっぱいのスポーツ系ヒロイン・焼塩檸檬。人見知りの小動物系ヒロイン・小鞠知花。ちょっと残念な負けヒロイン——マケインたちに絡まれる、新感覚・はちゃめちゃ敗走系青春ストーリーがここに幕を開ける!負けて輝け、マケインたち!
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8

11話 小鞠をいじめる話が不快。温水に全く感情移入できず

1話 作画や背景がかなりハイレベル。ハーレムの様でハーレムでない感じ?

{netabare} まず、面白いのはとても面白いと思います。ラブコメのコメディ要素が60~70%くらいありそうなハーレムもの…なんでしょうか?他の男に未練があるなら、そこがハーレムの様でハーレムではないということにもなりそうです。

 この調整ですよね。あまり他の男に未練がありすぎると結構つらい立場になるし、あまり女子がチョロいのも面白くないと思います。ある程度NTR感を残しつつも、可能性を感じるくらい?

 メインヒロインが他の男が好きって「とらドラ」とかありますが見ている方はやきもきした記憶があるので、緊張感とコメディのバランスが上手く取れれば面白くなりそうです。NTRとかあるとストレスでしょうけど、雰囲気的にはかなりマイルドなのでしょう。

 ちょっと発想を変えると女子が見たらどう感じるのだろう?という気はします。リアリティがあって身につまされるのか「そんな女子いねーよ」となるのか。その辺の人間模様の描写が見どころなんでしょう。

 キービジュアルで3人の少女が出てますが、この3人が負けヒロインで妹を含むののかどうか、くらいでしょうか。そうそうあのドジっ娘?先生はどうなるの?先生含めばちょっと大人な感じのエピソードも入れられて面白くなりそうですけど。

 しかし、作画がいいですね。キャラの作画がハイレベルだし、なにより背景美術がすごくいいです。一時期、気が抜けたような背景の作品が結構増えてましたけど、今季は背景が良い作品が増えました。その中でもかなりいい方だと思います。

 構図も小物ももちろんレベルが高いです。弁当のシーンなど気が抜けた画面作りだと退屈なシーンになりそうですけど、絵だけで結構見れるレベルだし演出もテンポも良かったです。

 なお作品名が出ると検索する癖があるのですが「君は無邪気な闇の女王」という作品は実在しませんでした。「君は淫らな僕の女王(横槍メンゴ氏)」と「君は無邪気な夜の希望(ブルアカ?)」というのはあるようですけど。オリジナルはもちろん「月は無邪気な夜の女王(ハインライン)」ですね。{/netabare}



2話 1クール完走は楽勝でしょうね。メチャメチャなコメディですけど、結構心が痛い。

{netabare} 随分印象的なOPですが、クレジットで「スタッフ名(A1picture)」という表示になっていましたけど、普通そうでしたっけ?品質保証?差別化?

 内容です。体育倉庫に鍵をかける前に中確認しますよね?だって、掃除当番だったんでしょ?そして冷却スプレープレイとは…熱中症のときに冷やす場所を間違えているし、万が一ああいう場面になったらマリモ入りでも飲むべきでしょう。けど、何でマリモがいるの?そもそも熱中症の症状ってあんな感じでしたっけ?(一応、せん妄も熱中症の症状らしいですけど…)

 あんこサンデー×2プラスハンバーグで、1000円くらいだった?サイゼとかだとそれで行けるのかな?
 あと、駅でつないできた妹の手ですけど、ちょっと大きすぎな気が…だまされたと思いましたが、意図的な誤誘導というよりCGの関係?

 保健の先生のひそかな楽しみを含めて、そういうノリの作品だということですね。突っ込みどころが満載のドタバタですけど面白いのは確かです。1クール楽勝で楽しめそうですね。

 かなりコメディ要素強めですが、ちょっとだけシリアスシーンがありますが…ちょっと心が痛いです。そのシリアスの要素が1クールのシリーズ構成でラストにあるのかどうか…真面目にやりすぎるときついなあ、とは思います。{/netabare}


3話 日焼け表現が素晴らしい。小鞠ちゃんの結論は痛すぎて見たくないなあ。

{netabare} 部活のユニフォームとは違う形の水着を着て、白い日焼けしていない肌を見せつけるキャラと言えば「長瀞さん」が印象的でしたが、結構それに肉薄する素晴らしい作画とキャラデザでした。作画大変そうですけど衣装の模様と考えればそうでもないのでしょうか。その割にこの表現使っているアニメは結構少ない気がします。

 一方今回初めて違和感を覚えたのが制服のリボンなんですけど、何で四連装なんでしたっけ?小鞠ちゃん回で、彼女のリボンのカラーリングがカラフルなので非常に目立ちました。謎制服NO1かもしれません。

 もう1つ、どこがおいしい水道かの談義は何かの伏線なんでしょうか?真面目に追ってないとダメ?なお、朝の水道管にたまった塩素は蒸発せずかえって濃度が高まりカルキ臭がきつくなります。健康のためにも水が冷たくなるまで出し切ってから飲みましょう、と昔何かで読んだ記憶があります。

 で、今回のメインの小鞠ちゃんですが、まあ、性格的にはデフォルメされていますが、見覚えがある性格の子ですよね。もちろん自分自身のことですが多かれ少なかれ非モテ時代があれば、ああいうひねくれた感じにはなるものです。それだけに感情も乗っかりやすく、今回のラストは来週見たくねー、と思う程度には感情に来ました。

 そして赤飯は伏線?妹が文芸部と絡みだすのでしょうか?

 冷静に考えると、話としてはテンプレなんですけどね。演出なのかエピソードなのかキャラなのか。その総合力なんでしょうけど、妙に面白い作品ですよね。昔のラノベを素直にアップデートさせた感じがいいのでしょうか?{/netabare}


4話 忘れていた痛みの感情を思い出す話でした。

{netabare} 恋愛は辛くて痛いのはわかっていても、ティーンのころの恋愛中心主義の時代に振られる痛みを思い出すのは嫌なものです。ただ、このころの辛い経験があると人生が楽になるので頑張りましょう。

 という感想が出るくらい痛い回でしたね。しかし、です。ここで騙されてはいけません。この主人公は負け組でしょうか?原作者がサディストで徹底的にこの主人公を痛めつけたいなら別ですけど、今の時点で3人の女性の友達ができたわけです。彼には無限の可能性があります。

 この感じゼロ年代初期のラノベでは良く見られた展開だと思いますが、最近とんと見なくなった痛みです。「俺ガイル」なんかは確かに痛みはありましたが、結局は比企谷は誰からも振られてませんからね。

 その意味で非常に珍しい展開で、面白いというより自分の昔どこかに忘れた感情がよみがえってくるような痛みが新鮮でした。{/netabare}


5話 ドタバタ劇で終わるのかな?面白いですが、何かの視点が欲しい気もします。

{netabare} 相変わらず面白いです。登場人物が多すぎる気もしますが、まだ消化できていると思います。
 そうめんは笑いますけどね。ただ、給料の現物支給は違法です。賞与ならいいですけど。勝ち組にも心配はある、ということで、その視点は面白かったと思います。

 で、この作品こういう面白ポイントを上げてゆくこともできるし、4話の痛みはかなり良かったと思います。思いますが、キャラが多すぎて焦点が絞れていない気もします。
 中心にいる温水がいろんな娘のガス抜きというかよりどころになる感じになるのかな、と思ったらそうでもないですし。杏菜1本に絞られるのでしょうか。

 ちょっとその辺、視点をどこにもっていけばいいのかそろそろ提示してほしい気もします。こういうドタバタも悪くないですけど、それだと見終わって「ああ、面白かった」で終わってしまう気もします。{/netabare}


6話 話が強引すぎる気がします。レモンの「負けヒロイン」の辛さが弱いかも。

{netabare} 単なる中だるみならいいのですが、もうネタ切れなのか引き延ばしに入ったのかわかりませんけど、結構面白さが弱くなった気がします。キャラの奇異な言動は面白いとは思いますし、特に杏菜の面白さはわかりますがもう6話です。少し工夫が欲しいなあ。

 それとさすがにちょっと「レモンと一緒にいる理由」が「恋愛相談」なのは強引だし、理由が弱すぎる気がします。その時の「レモンの辛さ」が見えてこないので「負けヒロイン」感が弱いし、5話6話全体がちょっと茶番というか無駄に見えてしまいました。これで7話も引っ張るんですよね?4話までちゃんとそれぞれのキャラにあった「痛み」が全然伝わってきません。

 出落ちとは言いません。4話まではかなり面白かったですし、5・6話もそれなりには面白いです。ですが、何かパワーダウン感を感じました。{/netabare}


7話 普通過ぎるくらい普通の話で、負けヒロインを笑えない。

{netabare} うーん、こんなに普通の話を延々と3話見せられても…という気がしなくはないです。正直、内容そのものは陳腐すぎるくらい陳腐です。しかもキャラで魅せる話だっただけに、この真面目路線にはいるとキャラの独自の魅力が薄まるんですよね。

 失恋というその時の当事者にとっては最高の痛みであっても、振り返ってみれば滑稽だし、何も見えていなかったことに気づく、みたいなものを4話までは視点として楽しんでいたんですけど、これじゃあ、普通の…普通過ぎるラブコメです。そしてこの話で笑えないと意味がない気がします。ラストの八奈見のセリフが唯一の救いだったかな。

 恐らくこれを続けていると、皆善人になってセリフで心情を語って話が立ち行かなくなるでしょう。結果として無理な事件とか新キャラだよりになりそうです。ラノベの1巻の出来だけ良くて…のパターンの気がします。

 右肩下がりが急角度です。8話で判断ですかね。{/netabare}


8話 八奈見が上手く使えてないかも。7話からは持ち直したかな。

{netabare} シリアスにするのは正直言えば簡単です。人を泣かせる技法は確立しているので、それをテンプレでやるのは本当にやめてほしい。3話も使って。

 今回のようにコメディをキチンとやって、その中に痛みをどう入れてゆくかが大事だと思います。その意味で今回は持ち直した気がします。
 ただし、妹や八奈見が上手く使えていない、少しハーレム展開の匂いがしなくはない、負けヒロインの意味が希薄になった、という気がしました。そういうところで1~4話のレベルは維持できていないかな。

 ただ、3人の負けヒロインにこだわりすぎてしまうと、作劇が難しいなら新キャラだよりでもいいでしょう。生徒会VSがテンプレにならないことを祈ります。平凡なドタバタラノベ感が出てきているので、持ち直してほしい。{/netabare}


9話 普通のいい話など期待していません。新キャラがどうなるかですけど…

{netabare} 普通のいい話などこの作品に期待してません。痛くて恥ずかしくて本音で、それでいて面白いストーリーかなと思っていたんですけど。そしてコマリの物語はあまりにありきたりで、主人公の対応はいい人すぎます。痛みのリアリティからどんどん乖離している気がします。

 うーん…どうしましょうね?9話まで見ましたが結構評価は低くなっています。いったん切りましょうかね?ただ、新キャラがいるからなあ…ただ、さや当て的な何かで終わる気もするので、やっぱり最後まで確認しようかなあ。

 ボーダーギリギリではあります。{/netabare}


10話 心の痛みに泣きながらも笑い飛ばすようなものを期待したのですが…

{netabare} コマリの話って4話で終わったんじゃなかったんだ…コマリを文化祭でまた使っているので何かと思いましたが…うーん…まあ、人気作なので私一人くらい低評価にしてもいいでしょう。4話までだったらかなりの秀作だったと思います。

 そうそう、演出の面白さとコミカルな部分の出来は良かったと思います。それがあるから痛みが相対化されて、泣きながらも笑い飛ばせる話かなと思っていたんですけど、そこが分離しちゃった感じですね。今は感動ものとコメディが並行しているだけです。
 1話のヤナミのストローのシーンからの流れが傑作だっただけに、そこが頂点でしたね。普通の感動ものを見たいわけじゃないし、その点で言えば単純すぎます。

 低評価というほど低評価はつかないですけど、4話までなら78点。5~7話が35点、8~9話が60点、10話が40点という感じです。一応最後まで見ますが、暫定ではトータルで60点を切るくらいかなと思います。終わったら総評を書くかもしれません。{/netabare}


11話 小鞠をいじめて話を作っている感じが不快。中断にします。

 さすがに最後まで見るかなと思ってたら、今回の話はちょっとひどいですね。もし、小鞠が極端な人見知りというなら頑張って部長をしようとしている小鞠に対して温水はひどすぎます。動物園のセリフも部長会も。高校生なら失敗を引き受ける覚悟も必要ですし、その覚悟を聞いた以上は余計なお世話というか人間としてどうよという気がしました。それに症状的には吃音ですし…

 なんか、8話以降小鞠をいじめて話を作っている姿勢が負けヒロインというよりは、精神的に苦しんでいる子を弄んでいるだけに見えてきました。興味があったテーマとはかけ離れた感じです。

 それと負けヒロイン達の心理状態にあるのは「心の隙間あるいは傷」です。作品の構造上結果的にそこに付け込まざるを得ない、温水=原作者はそれを自覚しているかどうかだと思うのですが、そこが無自覚なのがちょっとなあという気がします。負けヒロインとの恋愛は偽の恋愛にならざるを得ないということですね。

 で、挙句の果てに非常階段のシーンですか。うーん…音楽とエモいモノローグ盛り上げてますけど…そのまとめ方はメチャクチャじゃない?一番重要なのは小鞠は感情的にそうなる?その心の動きは自然なの?温水の行動はそれだけで許せるの?

 これ以上、文句を言いながら見ても仕方ないので中断扱いにします。温水にまったく感情移入も出来ないので、キャラの評価をかなり落とします。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 17
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

マケインで 光輝け 豊橋市

恋愛ラブコメでメインヒロインに敗北する“負けヒロイン(マケイン)”を題材にした、
同名ライトノベル(未読)の連続アニメ化作品(全12話)

【物語 4.0点】
原作者の雨森 たきび氏は中々、異色の経歴のラノベ作家。
大学時代、ラノベ新人賞に数回応募するも1次選考敗退……。
その後、事務職に就職し、執筆活動からは離れていたが、
40代前半に入り、仕事にも余裕が出てきて。
体力や頭の回転があるうちに「今できることをやりたい」と、
応募再挑戦した内の一作である本原作で受賞してデビュー。
そして今回のアニメ化に至る(※1)

しばしば“ロスジェネ”と揶揄されたりもするこの世代。
敗北、喪失の経験と取り扱いならお手の物。
何者にもなれなかったと自嘲する声が多いのも同世代の特徴ですが。
この原作者エピソードを見ると、40代から大谷翔平選手を目指すのは流石に無理にしても、
敗北も含めた、これまでの人生を伏線にして、挑戦や再起を志せば、
何某かにはなれるのだなと考えさせられます。

本作は作者が数年前アニメで見かけた青髪の“負けヒロイン”が、
恋愛に負け続けながらも、自分の気持ちに向き合いながら、もがく姿に感動したことから着想を得ているとのことで(※2)

本作には青髪の八奈見さんを始め三人のメイン“マケイン”が登場しますが、
それぞれ三者三様の身の処し方、想いの伝え方で玉砕する見事な負けっぷりで、
心を揺さぶって来ます。

この“マケイン”たち、心残りがないように自分の想いを吐き出しているからか、
恋愛に負けても、経験をいかに糧にできるかという人生においては、
むしろ勝ってるのではと感じます。
逆に恋愛の勝者であるはずの一部“勝ちヒロイン”の方が、
刹那の恋愛勝ちポジションを失う不安を抱えて、思い詰めている感すらあります。

人生では負けより価値がない不戦敗ばかりの自分が言うのもおこがましいですが(苦笑)
原作者の来歴含めて、瞬間負けて強くなった人間こそが人生では勝つという教訓を意識させられたラブコメ作品でした。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・A-1 Pictures

舞台となった作者出身地の愛知県・豊橋市。
現在私が暮らす名古屋から日帰り出来るということで、
この夏、聖地巡礼に行って参りました。
(近いと言っても片道80キロはあります。
返す返す尾張と三河を同県にしたのって、まぁまぁ酔狂な廃藩置県です)

尾張・名古屋城、西三河・岡崎城などに比べて、
インバウンドまで見込める観光資源には乏しい印象だった東三河・豊橋市。
一応、豊橋にも吉田城の櫓くらいは残っていますが、観光地としては正直……。

それだけに路面を走るヤマサちくわのラッピング電車や、パン生菓子のボン.千賀など、
日常風景から魅力的な舞台を切り取って来るロケハンと、
それらを再現する背景美術の仕事には感銘を受け、
気が付けば、この夏もクソ暑かったのに自然と豊橋に足が向いていました。

作中でも巡礼でも特に心に残ったのは、主人公たち高校生の登下校シーンの舞台。
リアルでは愛知大学前駅のホーム。
キャンパスの森をバックにした通学シーンは最高に絵になります。


これらの舞台で躍動するキャラクターの作画も、
通常ワンパターンの影の付け方しかない所、場面に合わせて複数パターン使い分けて心情表現。

さらには、プロップデザイン担当者に「料理作監」を特命し描き込み、食いしん坊の八奈見さんの演出をサポート。

そして第九話。サブの勝ちヒロインのために特設された“姫宮華恋バストコーディネーター”による狂気のプルプル感w

作画コスト度返しで、クオリティを追求するこだわりが半端なかったです。


主人公たちが通う“県立時習館高校”の女子制服。
襟から縦に4つ連なったリボンも、キャラ個性出しに寄与していました。
メインの“マケイン”たちばかりでなく、
バックのモブの女生徒に至るまで一人ひとりちゃんとリボンカラーが異なっている辺りが、本作の妥協なき所。
この作品“マケイン”だけでなくモブキャラも輝いていました。

本作が初監督だという北村 翔太郎氏。今後の活動に注目です。


【キャラ 4.5点】
青髪の“プロ”幼馴染・八奈見杏菜。
褐色ショートヘアの陸上部・焼塩檸檬。
片目が隠れた小心文芸部の小鞠知花。

ビジュアルからして既に「戦う前から負けている」w“マケイン”たち。
焼塩檸檬に至っては名前からして、
平安貴族が藻塩焼いて袖を濡らす失恋歌でも詠みそうな凄まじい“マケイン”名。
私も思わずレビュタイ五七五にしちゃいましたがw


この夏アニメはラブコメが渋滞気味で、
本作も実は初回視聴は後回しになっていた私。

目が覚めたのが、初回放送後ネット界隈で出回った、
校舎屋上にて、やまさチクワをくわえる“マケイン” 八奈見さんの衝撃カット。

令和時代に獅志丸(『忍者ハットリくん』の伊賀忍犬。古くてスイマセンw)以来のちくわキャラ爆誕か!?
と色めき立ち視聴しだした次第。
(実際には、八奈見さん、ちくわ喰ってたの初回だけでしたが)

食いしん坊の八奈見さんが、お弁当などを持参して、
主人公男子の温水くんへの借りを返済していくネタも、
視聴動機を持続させる“連載ネタ”として有効でしたね。


“連載ネタ”と言えば、小鞠と温水の水道水談義。
私も小学生の頃、あの洗面台は端っこの上向き蛇口が一番冷えていて旨いと蛇口による味の違いを知る人間であった栄華?を思い出し懐かしくなりましたがw
流石に、時間帯や階層まで計算に入れて水分補給はしていませんでしたw

公式HPも“八奈見杏奈カロリーメーター”や“マケイン水道探索”を随時更新するなど、ノリノリでしたねw


温水くんと“マケイン”たちの今後については、
“正妻感”は圧倒的に八奈見さんで、肉体的に濃厚接触していたのは{netabare} 用具室の汗だく{/netabare} 檸檬ですが。
掛け合いに将来の夫婦感出ていたのは小鞠だった印象。
小鞠ちゃんの温水に対してだけ毒舌が先鋭化する姿はある意味アットホームでしたし。

ですが、これは結婚相手ではなく、1年以内に7割破局するという高校生カップル(なんて世知辛い初回冒頭ナレだw)
に至るかどうかの論点なんですよね。

やっぱり八奈見さん?と思い直しつつ、
もういっそ妹の佳樹に甘えて、お友だちいないんですねと憐れまれるモラトリアムに逃げ込みたい心境もw


【声優 4.0点】
八奈見杏菜役の遠野 ひかるさん、焼塩檸檬役の若山 詩音さん、
小鞠知花役の寺澤 百花さん。

“マケイン”たちの三者三様のボイスは目を瞑っていても判別できるレベルでキャラ立ち良好。

その中でも特に寺澤さんの陰キャ演技に感心させられました。
アニメ観ていると、相当、声を張り上げる元気キャラでも、セリフが聞き取れないシーンがあったりしますが、
小鞠の声に関しては、ボソボソ濁声でありながら、つぶやき一つに至るまで明瞭に聞き取れたのが凄いと思いました。

これは音響の調整による所も大きいのかもしれませんが。
寺澤 百花さん。昨年初レギュラーの新人ながら、中々侮れない声優さんです。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は、うたたね 歌菜氏。
基本は多彩な音で会話劇を下支えするミニマル・ミュージックに徹する。
が、ピアノやストリングスのアレンジが盛られた際は、
宮廷ファンタジーBGM並みに優雅かつ繊細で、
いつの間にかキャラ心情を視聴者のハートに注入されている油断ならないお仕事ぶり。

が、“BGM”として何より優秀だと感じたのが蝉の声などのSE。
夏は前半で終わってしまう本作ですが、
私の中では巡礼も相まって、青空が眩しい夏アニメとして記憶されるのだと思います。

OP主題歌は、ぼっちぼろまる「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」
冒頭から“負け”を連発し、遊んでいると思わせておいて、
歌詞世界では負けて強くなる“マケイン”の本懐を捉える良作アニソン♪

ED主題歌。
八奈見杏菜「LOVE2000」(hitomi)
焼塩檸檬「CRAZY FOR YOU」(Kylee)
小鞠知花「feel my soul」(YUI)
“マケイン”たちによる平成懐メロリサイタル。

その中でも八奈見さんの「LOVE2000」のカバー。
実写の豊橋市の背景に、セルアニメ制作でキャラを重ねて、8mmフィルムで撮影処理したというED映像。
「2013年9月29日のサザエさん以来、10年9か月ぶり」だという新作セルアニメがいっそう平成ノスタルジーを醸す。


【参考文献】(※1、※2)東愛知新聞「東三河のサブカルチャー③ 豊橋出身のラノベ作家 雨森たきびさん」

投稿 : 2025/04/05
♥ : 27
ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

黙っていれば勝ちヒロイン!

雨森たきびによる原作小説は、『ガガガ文庫』(小学館)から刊行中(既刊8巻、原作未読)。
アニメは全12話(2024年)。監督は北村翔太郎。制作は、『冴えない彼女の育てかた』シリーズ、『ヲタクに恋は難しい』などのA-1 Pictures。
(2024.10.29 投稿 11.4 追記)

本作は第15回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞を受賞。受賞時のタイトルは、『俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか』。
最終話のタイトルが受賞時のタイトルと同じなので無事にタイトル回収したものの、『負けヒロインが多すぎる!』にタイトル変更して大成功でしたね。わかりやすく、キャッチーなタイトルって大事。


【生き生きとしたキャラクター】
本作に登場する「負けヒロイン」は全部で3人(八奈見杏菜(CV.遠野ひかる)、焼塩檸檬(CV.若山詩音)、小鞠知花(CV.寺澤百花))。そして、「負けヒロイン」なので、それぞれに「勝ちヒロイン」と「好きな相手」がいて(3×2=6人)、他の主要人物は、主人公(温水和彦(CV.梅田修一朗))とその妹(温水佳樹(CV.田中美海))、担任と養護教諭。したがって、本作に登場する主要なキャラクターは計13人。

各キャラクターの性格は、誇張のあるデフォルメされたものではあるものの、これらすべてに人として不自然なところがないように肉付けしてキャラ立てすることは簡単なようで難しい。

なぜなら、キャラの源泉は、詰まるところ原作者という「一人の人間」だから。キャラを描き分けられるということは、それだけ自分の中に様々なキャラクターのストックがあるということ。
他人を参考にするとしても、原作者のこれまでの様々な年代、地域、職種等の人たちとのコミュニケーションの経験値といえるからです。

本作の原作者は、大学時代に新人賞へ応募するも一次選考落ち。一旦は才能がないと小説家を諦め就職していたものの、40代前半に一念発起して執筆活動を再開したそう(Wikipedia「雨森たきび」参照)。

なるほど本作に登場する生き生きとしたキャラクターたちは、原作者のこれまでの人生経験と人間観察の賜物という感じを受けました。

本作は、この主要13人の濃いキャラクターたちが織りなす基本学園恋愛コメディです(ただ、「負けヒロインたちとその好きな相手との失恋」は描かれていても、「主人公と負けヒロインたちの恋愛」がほとんど描かれていないので、今後の展開次第なところもあります(※後述))。


【黙っていれば勝ちヒロイン!】
そのキャラクターの中でも一番魅力を感じたのは、やはり八奈見杏菜でしょうか。「負けヒロイン」は、一応「負け」でも「ヒロイン」なので魅力はあるのだけれど、「負け」なので「正ヒロイン」に勝てない、何か残念なところが…

「幼馴染」や「青い髪」の負けヒロイン率は高いといわれていますが、その属性を持つ杏菜であっても、間違いなく「黙っていれば勝ちヒロイン!」(いわゆる「残念美人」)

その見た目は、クラスや学校で注目されるほどの美貌を持ち、視聴者が心配するような食いしん坊ではあるものの、一応男である温水が着れるTシャツが入らない程度には出るところが出た「1年ぶり15回目のナイスバディ」の持ち主(※その言葉のセンスがさあ(笑)。そういうとこだよ、八奈見さん(笑))。

一方、第1話で「勝ちヒロイン」の放つ圧倒的な輝きに負け、好きな人を譲ってしまうほどの「お人好し」でありながら、どうしても諦めきれず、ファミレスで好きな人の恋愛相談に乗った後、その人が残していった飲みさしのストローに口をつける残念っぷり(笑)

また、口を開けば、温水に一方的に愚痴を言っては、それをまともに相手にしない温水に対して、「そういうとこだよ、温水くん」と言い放つ理不尽さ(笑)
杏菜には、利き手のスナップを利かせながら「ちょっと私の愚痴くらい聞きなさいよ。あなた、どうせ暇なんでしょう。何なら私はモテないあなたの今後の参考のために言ってるの。」、「いや、僕、君の夫でも彼氏でもないし…」という両者の心の声が聞こえてきそうな「オバサン気質」を感じます(笑)

作者曰く、杏菜は「男性から見て、女性の分かりにくいところを盛り込んだキャラクター」というコンセプト通りに、作者のこれまでの人生経験が活かされたキャラだと感じました。

さらに、杏菜の声優には、『ウマ娘』で、鼻血を出してG1レースに出走できなかったという稀代の天然エピソードを持つマチカネタンホイザ役をしている遠野ひかるさん。
「実力を持ちながら上手くそれを発揮できない。でも、そこにどこか憎めない愛嬌を感じる」演技が見事にマッチ。これは本当に配役の妙。


まあ、残念な部分は人間的な魅力ともいえるので、本作は、この杏菜と気の利かない主人公である温水のやり取りが、特に人間味を感じる面白い作品だったと思いました。
また、他の二人の「負けヒロイン」の豪快な負けっぷりも「青春の1ページ」として、しっかりと描かれているので、これも見所です。


【温水はモブキャラから主人公キャラになれるのか?(※感想)】
{netabare}全12話を観て思ったことは、主人公である温水と、杏菜以外の負けヒロインである檸檬と知花との関係は、今後の関係の発展を感じさせたけれど…
杏奈は、「負けヒロイン」として残念な性格に設定されてしまったがゆえに人間味あふれるものの、「本作の正ヒロイン」として冷静に見たとき、恋愛対象として見れるかは結構ハードル高いのではないかということ(※温水は既に杏菜の中身を深く知ってしまったので外見から入れない(笑))。

私が本作を観た後に、ちょっと引っかかっていたことがコレ。
杏菜は、設定として残念な「負けヒロイン」なんだけど、本作では「正ヒロイン」(多分?ティザービジュアルでは真ん中に描かれてるし…)になるはずだというところ。

友達がいなかった「モブキャラ」温水くんも、負けヒロインたちと交流するうちに、他人と積極的にコミュニケーションをとったり文芸部の部長になったりと、友達も増え自分に自信を持ち始めてきたという成長を感じました。

また、杏菜も少しずつですが、そんな温水を意識し始めているようにも見えます。

でも、特に杏菜と温水については、今の「いい相棒」という関係性を大転換するような大きなイベント(※多分、ここが本作全体の評価を左右する大きな山場になりそうな予感)でもない限り、個人的には恋愛関係に発展する未来が見えないんですよ。
(※特に会話が魅力的な作品なので無理に恋愛ものにする必要も、杏菜以外のヒロインとくっついてもいいんですが、いずれにせよオチをどうするのか。
原作者が本作を書いた動機は、自分が好きだった(「青髪」の)「負けヒロイン」を救済することだったようなのですが、本作では、温水がいずれかの「負けヒロイン」と付き合ってしまうと、救済どころか「負けヒロイン」がさらに「負ける」という「より過酷な状況」を生むことに(笑)。そうかといって、温水は全員と付き合うハーレムものの主人公という感じでもないんですよね…(11.4追記))

さて、どうやって今まで散々作ってきた「負けヒロイン」という杏菜のイメージを払拭して、本作の「正ヒロイン」に据えるのか。はたまた全員の負けヒロインたちが救われる道があるのか。
そして、温水は、ラノベの「恋愛・ハーレムもの」のモブキャラから主人公キャラになれるのか。

本作は、アニメ放送後に原作小説が重版しまくってるらしいので、おそらく2期も制作されると思われます。なので、2期以降では、特に杏菜と温水の関係性の発展に注目したいと思っています。{/netabare}

投稿 : 2025/04/05
♥ : 15

計測不能 2 完璧でカタルシスなアニメランキング2位
野生の島のロズ(アニメ映画)

2025年2月7日
★★★★★ 4.2 (9)
20人が棚に入れました
無人島で起動した最新型アシスト・ロボットに愛情が芽生え、島の動物たちを巻き込んで起こす奇跡の物語。
未来的な都市生活に合わせてプログラミングされた最新型アシスト・ロボットのロズは、大自然に覆われた無人島で目覚めるが、野生の島ではまったく機能せず、動物たちの行動や言葉を学習しながら少しずつ順応していく。ある日、雁の卵を見つけ、孵化させたロズは、雛鳥に「キラリ」と名付けて動物たちと一緒に育てる。成長し巣立っていくキラリを見送り、厳しい冬を越えた頃、回収ロボットがロズを探しに島にやって来る。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

突然変異が世界を変える驚異を活写した快作

野生の島にて、目覚めた人間生活アシストロボットのROZZUM(ロッザム) 7134(ロズ)が、
自然界にアジャストできずに、もがきつつも奮闘し、
やがて自身にも周囲にも大きな変化をもたらしていく、
米国のSF児童小説『野生のロボット』(2016、未読)の劇場アニメ化作品(102分)

【物語 4.5点】
イレギュラーな存在が、科学、自然、双方に変化をもたらす、懐の深さが、
作品のスケール感につながっている。


野生で活動するロボットが{netabare} 雁(ガン)の雛鳥の子育て{/netabare} を通じて、
プログラムを超えた心を獲得していく。
ここまでなら近年量産されている、凡庸な多様性映画でもできる芸当。

が、本作が非凡なのは、変化を迫られるのが科学サイドのみに留まらず、
ロボの言動を受容した自然界もまた、
弱肉強食の掟を超えて変容していく点にあると感じます。
これが凡作なら、自然は大事だ、科学文明が変われと一方的に説教する、
自然共生ならぬ自然“強制”作に終わっていたと私は思います。

昨今、自分たちのイデオロギーは正しく、変化すべきはお前たちだけだと、
糾弾しあって、分断を深めている輩にはない、包容力が本作にはあります。

近頃は、私も、ポリコレアレルギーをこじらせて、
多様性を押し付けるななどと、方方で毒を吐いておりますが。
本作の、この文脈なら、イレギュラーも受容する寛容さこそが、
社会や世界の進化をもたらすのだというメッセージも素直に受け入れられます。


上記のような捻くれ者の感想はさておきw
本作は、人とAIの関係といったトレンディなテーマから、
親子愛などの普遍的なテーマまで、
幅広い層に思い出となる要素が敷き詰められた王道娯楽作。

洋画離れが叫ばれる今日この頃ですが、
久々に洋画で世界の人々を一つにでき得る作品が公開されたと嬉しい気持ちになります。


【作画 5.0点】
アニメーション制作・ドリームワークス・アニメーション

例えばディズニー映画『塔の上のラプンツェル』のランタンを上げるシーンなど、
後々まで語り継がれる作品には、アイコンとなり鑑賞者の心に刻まれる名場面があるものですが、
本作の場合は、サムネにも描かれている{netabare} 雛から育て上げたキラリが、ついに雁の渡りに参加して飛び立つのを両手を広げたロズが並走しながら見送るシーン{/netabare} が該当するのではないでしょうか。

あのワンカットだけで、描いた鳥・28,000羽超、羽の総数1億オーバーを費やしたという渾身の一撃。
私の胸にもしかと刻まれました。

圧倒的物量で押す力技だけでなく、ロズの瞳の“表情”など心情描写の小技も巧み。

ここまでならまだ4.5点なのですが、満点まで突き抜けたのは、
フォトリアル風と絵画調の使い分け。

リアルタッチで無機質なロボット・ロズの描写に対して、
島の動物たちや背景美術はマネ、モネなど印象派の画風も彷彿とさせる有機的なタッチ。
ロズが厳しい自然界で生きる内に、“生傷”も増え、年季が入り、
キャラデザの面でも有機的な野生の色に染まって行く。

科学と自然の融合と変化という作品テーマを、
作画、背景も体現しているのがお見事でした。

そのグラデーションを感知できたドルビーシネマ鑑賞。
追加料金に見合う価値は十二分にありました。


【キャラ 4.5点】
私が一番好きなキャラはキツネのチャッカリ。
弱肉強食の自然界をちゃっかり生き抜くキツネらしい、島でも嫌われ者の狡猾なキャラなのですが、
ロボットのロズとは、はぐれ物同士気も合うのか、
何かと気にかけてフォローしてくれる可愛い奴です。

思えば私が好きなディズニー映画の『ズートピア』でも、
キツネの詐欺師・ニック・ワイルドの相棒ぶりが作品を牽引していました。
キツネがキツネらしい海外アニメ映画に外れはないようです。

7匹の子供たちに{netabare} 死んだふり{/netabare} を仕込んで厳しい大自然を説諭する、
オポッサムの母親・ピンクシッポの子育て指南も毒が効いていてスパイシーでしたし。


使えないと思っていた奴が、いざという時役に立つというのも、
多様性を扱う映画ではお約束。
私も分かっていましたが、{netabare} 巨木を倒す無意味な行動ばかりしていると皆から笑われていたビーバーのパドラー{/netabare} が、
島の危機を救う鍵になるシーンはグッと来ました。

カッコいいと思ったのが、鷲のサンダーボルト先輩。
{netabare} キラリは小柄だが小回りは効く{/netabare} などと、
短所も長所と認めて、無償の激励をしてくる辺りに漢気を感じます。


【声優 4.0点】
日本語吹替版を劇場鑑賞。

メイン吹替キャストは俳優陣中心。

ロボット・ロズ役の綾瀬 はるかさんは、
過去に映画『僕の彼女はサイボーグ』にて人造人間役もこなしており、
心を獲得していくロボットの演技ならお手の物。

キツネのチャッカリ役の柄本 明さんは、
集団を斜に見るポジションから、徐々に溶け込んで来て、粋な言動をさせていく役をやらせたら、
卓越した演技力を発揮する役者さん。

雁のキラリ役の鈴木 福さんはドラマ『マルモのおきて』にて子役として一世を風靡した経験が、
子供からたくましい青少年へと成長していく過程を表現するのに重宝しますし。

この辺りの洋画アニメの的確なリサーチ力に基づいたキャスティング。
宣伝ありきで俳優・タレントのミスキャストをやらかしている、
一部の日本アニメ映画は見習って欲しいと返す返す思います。


そんな中、アニメ声優界からも、千葉 繁さんが雁の群れの長老・クビナガ役を好演。
若い奴を見守る落ち着いた語り口には円熟味を感じます。

種崎 敦美さんも、{netabare} ユニバーサル・ダイナミクス社の刺客ロボ・ヴォントラ役として登場。
無機質な声色で、心を得たロズをイレギュラーとして葬送いやwデータ抹消(デリート)を試みる無機質なボイスがハマってました。{/netabare}


【音楽 4.0点】
劇伴担当はクリス・バワーズ氏。
オーケストラ音源を前面に押し出し、高揚感のあるメインフレーズで大作感を醸し出す。
そのオケ音源を、BGMをコミカルシーンの効果音としても活用する米国アニメの伝統芸にも惜しげも無く使う。

劇伴はバックグラウンドに潜む方が好みの私にとっては、あまり好みの作風ではありませんが、
本作の物語、作画には、音楽に負けないだけのスケール感はありました。
実際、上記の鳥・28,000羽超の名シーンは、大迫力のオーケストラあっての場面だと思いますし。

あとは、ロズがお手伝いロボットのサービス提供をアピールする際に鳴り響く、
スタートアップBGMの押し売り感w
私は嫌いではありません。


主題歌にはグラミー賞・カントリー歌手・マレン・モリスを起用し必勝体制。
個人的にはED主題歌の「Even When I`m Not」よりも、
挿入歌「Kiss the Sky」が印象的。
空を飛ぶことがストーリーラインの軸となる本作にとって、
同曲は推進剤として機能していました。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 14

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

今年ベストアニメ映画は決定しました…。嗚咽レベルで泣きそうになったのはいつ以来か。

 いやぁ〜もう今年ベストが出ちゃいました。予告を見た時点でこれ実際に見たらやべぇなと思ってましたが、もう中盤で既に泣き、クライマックスはもう嗚咽レベルの号泣でした。


 とにかく王道なキャラクターストーリーを見事に抑え、それでいて巧みにテーマ性も盛り込んでいくというワタシ好みをほぼ完璧にやっている!それだけで最高の一言。「ヒックとドラゴン」を超える作品がついに出来ちゃいました。


 なにより中盤のモンタージュシーンの正解+「ヒックとドラゴン」と同じ飛行シーンに最高のカタルシスを持ってくるという合せ技にはこの時点でもう完全にやられました。


 前々から考えていた、モンタージュを上手くやるにはその前時点で感情のセットアップが出来てなきゃいかんし、工夫ある努力パートなくちゃ意味ないよという私の考えを完全に裏付けてくれる正解を見せられては泣くしかない!。しかも、意外なあの人が助けてくれる展開まで足してくるなんてこちらを殺すために作られた展開かよぉ〜!!と唸らざるをえない。


 アニメーションの高揚が、音楽と、ストリートと、感情と呼応する。そんな単純な事がここまでのレベルに至ればこれほどに魂を震わせるのかと再認識しました。


 そういった基本を丁寧に積み上げるという普通なことを普通にこなすという最大の難事をこなしてるからこそ桁違いの映像もテーマ性もビンビンくる。


 ここまで自然の世界、動物をCGでこなすことを達成したことはなかった。更に、単なる現実の模倣を超えた飛躍も見事に成功していることもなかった。山火事のシーンをここまで美しく描けたのは、「長靴をはいた猫」でも見られたスパイダーバース的な表現力を取り込んだ結果の達成だろう。


 そして、テーマ性も単なるポリコレのおざなり的ないい加減さがない。親離れ子離れ、共存、異端こそが集団を救いうるという「フリー・ガイ」に通ずる綺麗事を超えた説得力がある。何故なら乗りやすい上に最高にしっかりとした物語の生きた言葉になっているから。


 とにかく今年これを超える作品はもう出ないだろうと思います。少なくても大規模な正攻法の作品では。興奮冷めやらぬのであと何回も見ると思います。絶対見逃せない一本間違いなし。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 9
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