太平洋戦争で小説原作なアニメ映画ランキング 1

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80.1 1 太平洋戦争で小説原作なアニメランキング1位
火垂るの墓(アニメ映画)

1988年4月16日
★★★★☆ 3.8 (843)
5536人が棚に入れました
1945年(昭和20年)9月21日、清太は省線三ノ宮駅構内で衰弱死した。清太の所持品は錆びたドロップ缶。その中には節子の小さな骨片が入っていた。駅員がドロップ缶を見つけ、無造作に草むらへ放り投げる。地面に落ちた缶からこぼれ落ちた遺骨のまわりに蛍がひとしきり飛び交い、やがて静まる。太平洋戦争末期、兵庫県武庫郡御影町に住んでいた4歳の節子とその兄である14歳の清太は6月5日の神戸大空襲で母も家も失い、父の従兄弟の未亡人である西宮市の親戚の家に身を寄せることになる。当初は共同生活はうまくいっていたが、戦争が進むにつれて諍いが絶えなくなる。そのため2人の兄妹は家を出ることを決心し、近くの池のほとりにある防空壕の中で暮らし始めるが、配給は途切れがちになり、情報や近所付き合いもないために思うように食料が得られず、節子は徐々に栄養失調で弱っていく。

声優・キャラクター
辰巳努、白石綾乃、志乃原良子、山口朱美

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

清太の自己責任論と考えていましたが、やっぱり違うかも。

24年8月再レビューです。

 1か月ほど前にレビューしたときに結局清太の責任じゃん、というレビューを書きました。しかしながら、8月という戦争を反省する月に入って、また、世界が不穏な方向に行っている現状で、うーんともう1度考えてしまいました。

 本当に自己責任論でいいか、ですよね。きわめてリバタリアニズム的です。我ながら完全に資本主義に毒されているなあ、と思い直しました。

 まず遠い親戚のおばさんの態度が、清太の反抗的な態度からすると仕方がないと捉えましたが、年齢差や助け合わなければならない状況を考えた場合、おばさんと清太を対等にとらえるのが正しいのか?と思ってしまいました。人間としてのあるべき姿という理想・道徳がすっぽり抜けてしまった考えです。

 あるいは社会として清太がなぜそう育ってしまったか、なぜ、彼をそういう状況に追い込んでしまったか、結果として清太が放置されてしまったのか、という視点が抜けている気もします。

 この作品と現代を比較した場合、軍のエライさんの家に育っている清太の内面を考えた場合、ひょっとして今の子供たちと同じなのではないかと。今の中流家庭の子供は全員貴族の家庭に育っているようなものです。そして、大人たちの余裕の無さ、利己主義、他人の子供に無関心な現状を考えると、マインドは今と全く同じなのかもしれません。
 だから、清太の自己責任という短絡的な答えが出てきた気がしますが、それは完全に今のアメリカ中心の金を稼いだ奴が正義という精神と変わらないと思います。

 そういう反省を踏まえると、やっぱり清太はそういう時代・社会の犠牲としてとらえる見方もするべきだと思いました。もちろん清太の自己認識だと自分の責任は痛感していることでしょう。その贖罪は話のメインテーマとして捉えるべきだと思います。

 結果的にやっぱり戦争の話ではないと思いながらも、今の時代に戦争が起きて、あるいは環境異変で食料危機が起きた場合、何百万人の清太が生まれるのではないか、と思ってしまいます。いや、清太というより大人が全員おばさんになるのでは?と思います。コミュニティで子供を守るというマインドの喪失は当時よりも今の方が極端かもしれません。

 そういう視点で見た場合、社会がまともで大人のふるまいが当然で、全部の悲劇の原因は清太の我儘に見える本作ですが、清太を追い込んだ時代・社会を作った、あるいはその中で利己的なふるまいしかできない大人の責任というのも考えるべきだ、と思いました。それが戦争という極限状況なんだと考えれば、反戦…というより戦争が作り出す社会を清太・節子の死という1部を切り取ってリアルに表現しているのかな、と。

 本作は、長らくずっと清太の自己責任だと思っていましたが、一旦レビューしてみると視点が生まれます。早めに言語化しておけばよかったと思います。



以下 24年6月 初回レビュー

反戦や戦争のリアルではなく清太の過ちと贖罪と捉えました。

 この作品の評価の仕方がわからなくて、レビューがかけずにいました。戦争ものとして有名なんですけど、どうしても戦争云々の話に見えません。清太の意地というか子供らしからぬ部分と妹愛が、かえって2人を不幸にしたように見えます。

 そして大人になってみると叔母さんの気持ちもわからなくはないです。食糧難になってイライラしているのに、清太が生意気なのは頭にも来るでしょう。
 それと清太は結局、一人では生きられたけど節子を失った自責の念で餓死を選んだのでしょうか?妹の死で生きる気力を失ったのでしょうか。とすれば彼の死は何のためなのでしょうか?

 それ以上に節子の死はなんだったのでしょう?節子の描写があまりにも幼く、ともすれば死という概念を知らないがゆえに、客観的に言えば可哀そうではありますが、主観的に可哀そうに感じられません。言い方が難しいですね。子供の命を守れないもどかしさとか戦争が作った状況というのもわかるんですけど、結局清太がうまくいかない犠牲になった、意思を持たない「なにか」に見えてしまいます。

 もちろんですが小さな子供が飢えているのです。この悲惨な物語に心はざわめきます。戦争がない現代に生きていれば、ああいう死の上に我々は生きているということは感じます。

 そもそもこの作品は何を描きたかったんでしょう?もちろん、題名にもなった火垂るの光は、魂の事でしょう。2人だけでなく戦争の犠牲になった子供たちが天に上る話だとは思います。

 本当にありのままの感想をレビューすると、悪いのは戦争でも叔母でもなく清太だと。その贖罪のために妹と同じ死に方を選んだという無力な少年の物語ととるなら、そこに文学性はあるかもしれません。ただ、可哀そうというより、清太少年への嫌悪感の方が先立ってしまいます。

 ひょっとしたら私は人の心を失っているのかもしれませんが、そういう感想です。そしてさらに素直に言えば、高畑作品はあまり感動した記憶がありません。相性の問題かもしれません。

 評価は…まあ、作画はさすがですので5。ストーリーも私のとり方で言えば4ですが、本当に反戦だとしたら2ですね。
 キャラは好悪で言えば嫌いなキャラばかりですが、描けているので4とします。
 そうですね。評価は「反戦」ではなく「清太の過ち」というテーマの作品として評価するとオール4で作画が5という感じですね。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 7
ネタバレ

◎TARGET さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

戦争の悲しみを疑似体験できる映画

❏高畑勲と宮崎駿

高畑勲監督は宮崎駿監督と違って説教臭くて理屈っぽい
映画が多く、他の作品はそれほど好きじゃないのだが、
この作品は説教や理屈という感じは全くない。

宮崎氏はアニメ監督だけあって、脚本やセリフだけに頼らず
絵(映像)で伝えようという意気込みと熱意がどの作品も
ひしひしと伝わってくるのだが、高畑氏の作品はどうしても
絵よりもセリフや言葉で伝えようとする感じを受けてしまう。
しかし、この「火垂るの墓」は絵でも伝わってくるものがあった。


❏総評

戦時下の理不尽な運命に翻弄された2人の不幸な兄弟の
生き様が、切々と描かれており、視聴者はそれをただただ
受け入れるしかない映画。それはまるで戦時下の不幸な
感情を疑似体験してるかのような非常につらいものである。
(人生経験、年齢、世代によって人それぞれだと思うが…)

昔見たときはあまり感情移入できずに、
「辛気臭くて悲しい映画だなぁ」でオシマイだったが、
今見たら色々想うところがあり涙が止まらなかった。


❏ネタバレレビュー

以下、ネタバレレビュー
{netabare}
清太と親戚の叔母さんの関係がギクシャクしだしたのが
不幸の始まりだが、私的にはどちらも責められない。

清太はお兄さんに見えてまだ14歳だし、親しくない叔母さんに
あれだけ嫌味を言われたら、出てくしかなかったんだと思う。
妹と自分の命を最優先に考え、プライドを捨てて叔母さんに
ゴマを擦りながら、うまくやってくような処世術は14歳の子には
まだまだ難しいのではないだろうか。むしろ思春期で自我が出始める
時期なので自分一人で全部しょいこんでしまって
裏目に出ちゃったのでしょう。

親戚の叔母さんに関しては言い方が少々キツメだったが、
言ってることは全て正論だ。運良く、叔母さんの性格が
穏やかで懐が深い人間性だったら清太をやさしく導いていく
ことも可能だったのかもしれないが、戦時中の余裕が無い中で
そこまで悠長な事ができるような人は、そう居ないのではないだろうか。

だからこれは誰が悪いとかっていうよりも
戦争は人間をこのように不幸にする理不尽なものなのだ
というのが私の感想。

節子はまだ4歳で、色々とわがままを言いたい盛りだろうし、
お母さんにもまだまだ甘えたかったはずなのに、作中では
わがままも言わずに、健気にお兄ちゃんと2人で生きてる様が
描かれていて泣かずにはいられなかった。

フィクションなのはわかっているが、
節子が死ぬのはどうにもやりきれない。

人生は時に理不尽なものだが、
幼い子がこのように死んでいくのは正直きつい。(泣)

(無理だけど)作品の世界に入っていってご飯を食べさせて
医者につれてってあげたい気持ちでいっぱいだった。
{/netabare}


❏戦争と飢餓

原作は事実を元に脚色したフィクションだが、
実際このような話や、もっと悲惨で壮絶な話は
当時いくらでもあったのではないかと思う。
だとすれば、なんか心が痛む。
(靖国神社にお参りに行こうかな。)

ちなみに我々日本人にとっては随分昔の話だが
世界中では現在進行形で同じような目に会ってる子が
たくさんいるんだよね。

イスラエル周辺、中東、ロシア国境沿い、アフリカ等
戦争や内戦で多くの子供達が死んでいってるし、
第三世界では戦争に関係なく飢餓で多くの子供が死んでいる。

でも今すぐ自分でどうにもならないし、どうにもできないけどね。
日本を含む先進国は幸せだね。ただ今の平和を満喫したい。とそう思う。

一個人で戦争は避けることはできないけど、
いざ戦争や災害になった時に、彼らのような子供達を
助ける事ができるような力を持った人間になりたい。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 3
ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

暗く救われない物語

世界観:5
ストーリー:5
リアリティ:9
キャラクター:4
情感:6
合計:29

終戦間近の神戸に突然B29の大編隊が襲いかかった。清太と節子の兄妹は空襲の混乱の中、母親を亡くし、家を焼け出される。路頭に迷った兄妹はやむなく小母の家へ身を寄せることにするが、そこでも生活が苦しくなるに従って小母とのいさかいが絶えなくなり、清太は家を出る決心をする。荷物をリヤカーに積み込み、横穴壕でままごとのような二人の新しい生活が始まるが、やがて食糧も尽き…。
(Amazonより)

先の戦争を市民の視点から描いたアニメ映画として「この世界の片隅で」と比較されていたり、外国人のLive Reactionでもいくつか見たことと、ちょうど8月ということもあり、この機会に視聴してみました。

冒頭から、{netabare}主人公兄妹(清太と節子)が死んでしまうことがわかり、開始早々、戦争末期の本土空襲を受けて母親が死亡。父親は出征中という状況でしたが、その後、艦隊とともに沈んでしまった模様。兄妹はおばの家に世話になりますが、生活が苦しくなるにつれ、ぞんざいな扱いを受けることとなり、兄弟は他にあてもなくその家を出て防空壕で自活を始め、栄養失調による病気で亡くなるという、何とも暗く救われない話です。{/netabare}

しかしながら、敵国に関するエピソードはほとんどなく、直接の反戦的表現はありません。淡々と、苦しい生活を営む人間を描いています(この点、リアリティが高く感じられます)。

外国人のLive Reactionで泣いたり絶賛している人を見て、感動する前提の心持ちで視聴したのがいけなかったのかもしれませんが、終わりまで大きな感動の波は訪れなかったです。

{netabare}冷たい視点かもしれませんが、私はこの兄妹の年で家を出て自然の中で生活することの難しさを痛感しました。おばの態度は確かに悪いものですが、おばの理性に基づく言動の範囲であり、清太は自分のプライドのために、節子(結局自分も)を犠牲にしてしまったのではないか、と。おばの家の仕事の手伝いをするとか、何か食べ物を探してくるとか、家計の足しになる努力はできなかったのでしょうか。住まわせてもらえることの感謝を、伝えなかったのでしょうか。清太も小さいので、そこまで考えが及ばないというのもリアルと受け取れますが、節子のために、おばとうまくやってほしかった(作品としては、そこまでやって駄目だったというシーンを入れてほしかった)と、思ってしまうのでした。

清太らは何も悪いこともしていないのに理不尽な環境に陥り、やるせない気持ちになったと思います。そういう状況で、腐らない気持ちを持つことができるか、自分に置き換えると自信はないのですが、自分のプライドを守ろうとした結果、他人の畑を荒らし、捕まれば妹の病気のせいにする、弱く醜い人間となってしまい、結末も完全なバッドエンドとなってしまったのは非常に重いですね。

他者への隣人愛は、衣食住の環境が整ってはじめて与えることができるものであり、自分が生きるのに精一杯という場合にはなかなか難しい、ゆえに、人々の基本的生活を窮地に陥れる戦争はいけないものだというメッセージでしょうか。言外に教訓が盛り込まれた作品だと思いました。{/netabare}

無論、希望があり、主人公らに親しみを持てる「この世界の片隅に」のほうが好きですね。

北朝鮮と米国の緊張関係が続いており、いつ、私たちもこのような事態に巻き込まれるかわかりませんが、どんな状況に追い込まれようとも、死ぬまで精神を腐らせずに生きたいと願うばかりです。

(参考評価:3.6)
(2017.8視聴)

投稿 : 2024/09/07
♥ : 19
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