2020年度の先輩アニメ映画ランキング 1

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82.8 1 2020年度の先輩アニメランキング1位
劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song(アニメ映画)

2020年8月15日
★★★★★ 4.3 (249)
1324人が棚に入れました
「俺は、桜にとっての正義の味方になるって決めたから」少年は、真実からもう目を逸らさない。少女を救うために。自分の選んだ正義を貫くために。魔術師〈マスター〉と英霊〈サーヴァント〉が万能の願望機「聖杯」をめぐり戦う――「聖杯戦争」。その戦いは歪んでいた。ひとりの少女――間桐 桜は犯した罪と共に、昏い闇に溺れてしまった。桜を守ると誓った少年・衛宮士郎は遠坂 凛と共闘し、「聖杯戦争」を終わらせるため、過酷な戦いに身を投じる。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは闘争の真実を知る者として、その運命と向き合い、間桐臓硯は桜を利用して己が悲願を叶えようとする。「だから──歯をくいしばれ、桜」激しい風に抗い、運命に挑む少年の願いは、少女に届くのか。終局を迎える「聖杯戦争」──。最後の戦いが、遂に幕を上げる。

声優・キャラクター
杉山紀彰、下屋則子、川澄綾子、植田佳奈、門脇舞以、伊藤美紀、中田譲治、津嘉山正種、浅川悠、稲田徹

takato さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

悪として軸がブレてる

本当にいつ以来か…、楽しみにしてた映画を見に行くこの感慨。


三部作の完結を見届けに行ってまいりました。


結論から申し上げますに最後まで本作に対する私の印象は変わらなかったというところです。


即ち、バトル作画は超絶だが話やキャラの盛り上がりとリンクしてないから感心しても感動はないのです。


とはいえ、本作のバトル作画を映画館で体験すると、「鬼滅」が子供だましに見えるほどに凄まじいのは認めざるをえません。


空間を広く、三次元的に、超高速感をあまり見辛くないよう表現してる見事さは正に超絶技工。


しかし、一番凄いバトルでも熱くなれないのは、戦ってる二人に乗っかって燃えられる物があまりないのです。


本作は、そういう風にイマイチ上がれないブレーキが所々にかかってしまう。


その原因は、そもそも論として、さくらがヒロインと悪役を兼ねてしまったことで、どちらとしても軸がブレてしまったことに根本があるように思えます。


私は素晴らしい悪役が大好きです。


もはや正義を簡単に信じられなくなった時代において、美しいほどに悪を貫く生き様こそ、小さい者ばかりの世界で巨大な偉容を見せる存在だと思うのです。


弱さ故にではなく強さ故に。迷うことなく、巨大な意志を持って自らの信念を貫徹する。現実にはありえまんせが、フィクションでは偉大な悪がありえるのです。


ちっぽけで日々くよくよしてる私のような人間には、彼等の勇姿は否定したいがそうできない、他にはない魅力があるのです。


しかして本作は、一番強大な力を持っているとはいえ、さくらにはどうしても弱さが目立つ。あんな面にあったとはいえ、メソメソして恨み言を吐いてばかりではイマイチ迫力に欠ける。


怨みで世界を滅ぼそうとするなんて後ろ向き過ぎるし、志が小さい!。歴代の素晴らしい悪役たちが、充実した自分の生を謳歌してるのとのは正反対ではないか。


完全に向こう側にイッちゃってるほうが悪としては良いが、それだとヒロインとして…というのが足を引っ張っているように思えた。


かといって綺礼やゾーケンが真の悪として輝いているか?と言われると、そうでもなくて彼等のが魅力を発揮できそうだが、あくまで脇のキャラに留まっている。


さらに、ヒロインとしても今時可哀想な境遇の彼女を救ってあげなきゃ!ヒロインってどうなの?という印象。それって自分のヒーロー願望じゃね?。


ハッキリ言って、今回なんか実質イリヤがメインヒロインなんじゃ…感すらあったし(だったら士良とイリヤの絆をもっと描いて欲しかった)。



今やヒロインは昔みたいな役割を超えて、独立してて行動的で主人公と同格か、あるいはそれ以上の意志を見せるくらい強い存在に現代ではなってきていると言いたい。


総合すると最後のほうはニヤリとさせられる嬉しい意外な展開があったけど、全体的には今までと大きく評価は変わらないです。


まぁ、私なぞフェイト弱者なので、原作に通じてないから最後の士良の件とかよくわからなかったくらいだから大きな事は言えないですけど。


詳しい方がいたら、是非とも説明不足だったところを教えて頂きたい。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 26
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

聖杯なんかより衛宮家のご飯一杯の方が価値がある

原作ゲームは未プレイ。アニメは『~S/N』『~UBW』に『~Zero』などを視聴。
本三部作は第二章までは配信、録画視聴で追い掛け、この第三章のみ劇場鑑賞。

【物語 4.0点】
“最終ルート”のクライマックスとあって、ファン向けの集大成。
聖杯の成り立ちなど、コンテンツの根幹が掘り下げられ、
“トゥルーエンド”に向け、各々、宿命を背負った者同士の
高密度な戦いが繰り広げられる。

私もセイバー、凛ルートはアニメでおさえたから……
位では、分らない部分も出て来たので(苦笑)
例えば{netabare}士郎の肉体と魂の状況{/netabare}などは、鑑賞後ググりましたw

本三部作だけでも概況は分るが、他ルートや外伝も押さえておけばおくほど、
回収される伏線にも反応でき、感動ポイントも多くなる。

何より、納得度が段違いだと思います。
要するに……(※割と核心的なネタバレ)
{netabare}一人を悪者にして世界を救うという聖杯の大義に対して、
罪を背負った、たった一人を救うために聖杯を破壊するというシナリオ。

セイバー&凛ルートにて、正義にしろ、悪にしろ、
人間が掲げる論理に完璧なものなどなく、皆、欠陥や矛盾を抱えつつ、
己が信念に基づいて戦っているという描写で散々思い知らされた後だと、
ならば、好いた女がどんなに罪で穢れていようとも、世界を敵に回して救済しよう
という選択に対して、より許容できる確率が上がると思います。

因みに本ルートも最後は……{netabare} 全員生き残ることはできません。
“トゥルーエンド”にしては苦いラストですが、
私はこれも選択の重みが感じられる幕引きとして好感できました。{/netabare}{/netabare}


【作画 5.0点】
戦闘シーンでは最高峰のアクション作画が連発。
これだけでも劇場に足を運ぶ価値がある。

エフェクトは黒を強調したダークな風味。
その描写にグロだけじゃない、登場人物の業を感じるのは、
三部作を通じて、ふとした日常で垣間見せる、
例えば、桜の言葉にできない、不幸感や劣等感、姉に対する嫉妬などを
繊細に描いた表情描写があったからこそ。

『Fate』と言えば、聖杯周辺で掲げられる大義と、
衛宮家の平凡だが、かけがえのない日常との対比が
テーマの深化に寄与しているが、
この『~[Heaven's Feel]』は衛宮家の生活感を出すカットが特に素晴らしい。

作画の力で、世界の救済より「おかえりなさい」が一層、光り輝く。


【キャラ 4.5点】
士郎&桜以外では、言峰綺礼の深掘りも目立った本作。

近頃は人様の不幸という蜜の味と、あとは激辛料理に溺れるw
アブナイ神父様との風評に流されがちな私でしたが、
彼もまた士郎の酔狂な正義に対峙し得る悪の権化として信念を見せ、
選択する人間の力強さを士郎との{netabare}拳VS拳の肉弾戦{/netabare}で体現してくれます。

聖杯戦争を通じて人の業を一番俯瞰して来たのは綺礼であることを、
思い出させてくれる活躍&解説ぶりでした♪

正義と悪の類型について、ここまで見事に比較論評されたら、
また『~Zero』の切嗣との争点辺りから、復習したくなってしまいますw


あとは、このルートのライダーはどうしちゃたんだ?って位カッコいいです♪


【声優 4.0点】
衛宮士郎役の杉山 紀彰さん、間桐桜役の下屋 則子さんが感情を振り切って、青春を熱演する傍ら。

“攻略ルート”から外れたセイバー役の川澄 綾子さんと遠坂凛役の植田 佳奈さんは、
抑え気味なボイスで冷静な演技。

これがまた渋くて良いです。
セイバーや凛ってこんなにクールビューティーだったんだなと。
他ルートにて、彼女たちをデレさせた士郎は大したモンですw


【音楽 4.5点】
音楽担当の梶浦 由記氏が“梶浦語”も駆使して戦いをアシスト。
本章でも要所で過去の主題歌がBGM化され作品を盛り上げる。
劇場で体感するシリーズ伝統の処刑用BGM“エミヤ”。シビれました。

梶浦氏の作詞・作曲により桜の心情を代弁して来た
Aimerの三部作・主題歌も、本作の「春はゆく」でファイナル。

振り返れば、当初3月公開予定だった本作が、コロナ禍で延期になる中、
主題歌だけは予定通りリリース……。

しんしんと降り積もる時の中、
この春、屈指のスプリングソングとして街中で歌だけが聞こえて来るという、
お預け状態が続いて来ましたが、夏になって、ようやく春が来ました。


【感想】
『Fate~』はアニメだけという私にとっては、
“黒桜の部屋”などネタでしか知らなかった黒桜が堪能できて感無量でしたw

集大成作でありながら、観たら関連作に改めて触れたくなる、
コンテンツ拡大力もヒシヒシと感じた本作。

私は帰宅後、『衛宮さんちの今日のごはん』に手を付けましたw
だって、本作を観たら……{netabare} 皆で「いただきます」する夢……見たくなるじゃん……。{/netabare}

投稿 : 2024/11/16
♥ : 29

フェイルン さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

その日々は夢のように

まずは鑑賞している私の条件から。

・Fate/stay night アニメ作品鑑賞済み。(deen版・UBW・HF)
・Fate/stay night原作ゲーム全ENDプレイ済。
・Fate/stay night hollow ataraxia全ENDプレイ済。
・Fate/Zero全鑑賞済み。
・空の境界全章鑑賞済み。
・月姫プレイ済。
・魔法使いの夜プレイ済。
・FGOはほぼ未プレイ。
・アニメーション製作会社ufotableは「空の境界」からのファン


本作品はどんな人向けか。
いきなりFateも知らない人が観て分かるような作品では無いでしょう。
Fateの原作ゲームをプレイもしくは今までに出て来たFate/stay nightのアニメ作品を一通り観ないと分からないでしょう。
FGOは知らなくて良いでしょうが、Fate/stay nightについての知識がかなり必要です。
Fateへの愛が試される作品かもしれません。


2020/3/28公開予定だった本作品が、新型コロナウイルスによる延期やufotableの某事件により公開がどうなるか分からぬ状態でしたが、2020/08/15に公開されました。
ufotableについては空の境界の頃から応援しているアニメーション製作会社ですが、ここ最近は良くない事も耳に入り、今後について心配なところもありました。しかし、Fate/stay night Heaven's Feel 3部作の最終章である本作が無事に公開されて非常にうれしいです。しかも、2章同等にレベルの高いアニメーションは待っているかいがありました。
期待に胸を膨らませながら仕事は休みを取り、気合を入れて公開初日の舞台挨拶ライブビューイング回を観に行きました。

細かな内容はネタバレになるので省いた少し違う形でレビューします。


◎感想
まずは感無量。ほぼ非の打ち所がない。言い過ぎでしょうかね?
バトルは2章と同じくらいに激しく、内容は2章を超える密度の濃さです。出来ればもう1時間伸ばしても良いくらい。
観終えて、満足なのと同時にFate作品は終わったのかという喪失感が沸々と増していきます。
というのも、私にとってのFateはFate/stay nightが殆どを占めており、本作でアニメーションとしての映像化も一端終わりを迎え喪失感が半端ない。嗚呼、これで終わってしまったのかと寂しさがありますね。
その日々は夢のように……。
あと、Fateというのか、聖杯戦争とは何ぞや?というのも答えも本作のテーマであり、須藤監督の解釈だと思われますが、ゲームでここまで表現されていたかなと思えるくらいに分かりやすく味付けされていました。魅せたいシーンを逆算するような部分もあったので、見返すとまた新しく気がつく事も多いかも知れません。
何度か見返したくなる要素が結構あります。
セイバーもですが、ライダーも同じくらい好きなキャラクターなので、やっとカッコイイ所を見せてくれて痺れました。知っていても激アツですね。
作中では、空の境界や月姫からのゲストもいて、TYPE-MOONの原点的な作品もまたプレイしたくなりました。


◎三章を通して
須藤監督の桜に対する愛からの解釈、ufotableスタッフによる高いアニメーション技術と密度の濃い映像、梶浦由記さんの音楽にAimerさんの桜の各章の心境がそのまま反映されたかのような唄。
特に音楽関係では3部作通して梶浦由記さんとAimerさんの起用は実に良い方向に働いているように感じます。
不幸で日陰者な桜の雰囲気が音楽や唄により何倍にも表現されていて、3部作全体を通して暗めの雰囲気作りに大いに影響していましたのでは無いでしょうか。

◎舞台挨拶(ライブビューイング)より
舞台挨拶(ライブビューイング)では桜役の下屋さんが何度か泣いていました。
桜が今まで押さえていた気持ちを凛にぶつけるシーンはかなり辛かったそうです。あと15年ですかね。なかなか光の当たらなかった桜がやっと光が当たって感極まったのでしょうね。
セイバー役の川澄さんも泣いていました。セイバーオルタという今までとはある意味逆の立場で敵となり四郎達と戦うのが辛かったそうです。
ジョージさんは言峰綺礼のコスプレをしながら黒鍵を構えていて、声を出して笑えなかったので映画館で観ている皆さん辛そうでしたよ。

Aimerさんのライブは、とても気持ちがこもっていて価値がありました。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 6
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