2023年度の不思議の国のアリスおすすめアニメランキング 1

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68.7 1 2023年度の不思議の国のアリスアニメランキング1位
君たちはどう生きるか(アニメ映画)

2023年7月14日
★★★★☆ 3.6 (68)
323人が棚に入れました
宮崎駿監督が「風立ちぬ」以来10年ぶりに手がける長編アニメーション作品。
宮崎監督が原作・脚本も務めたオリジナルストーリーとなり、タイトルは、宮崎監督が少年時代に読み、感動したという吉野源三郎の著書「君たちはどう生きるか」から借りたものとなっている。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

考察は無力。エロスとタナトスについて感じればいいと思います。

 この作品、ネタバレ禁止、イメージ禁止でしたが、これは戦略というより苦肉の策でしょう。だって、紹介の仕様がないですこんな話。別に悪いというわけでは無いです。まあ、どういう意味かは見た人ならわかると思います。

 1回しか見てないです。それで思ったのはこの作品の考察はすべて役に立たないと思った方がいいです。解答を欲しがっては駄目です。自分で考えるから意味が出ると感じました。なので、これから書くのはたわごとだと思って下さい。

 さて、本作の1つ目にして最大のひっかかりポイントは、ここまで露骨なプライベートなストーリーが映画作品として許されるかどうかという問題です。
 少年が疎開する、父親が飛行機工場を経営しているというのは宮崎駿の子供時代そのままでであることから彼を投影している作品というのはわかります。

 が、あまりにも露骨に散りばめられたジブリ作品要素が沢山あります。王蟲の風防から始まって、トトロの森のトンネル、もののけのコダマ、ナウシカの菌糸、紅の豚の飛行機(船)の列とか庭園のガゼボ、最後の方のカリオストロなどです。多分全作品分あるのでしょう。それはデータベース的な楽しみとして私は嫌いですけどいいとします。が、 ネタバレレビューを読むでしょう。自分の業績をたたえているだけ。本物は俺の作品しかない、と言っているように見えます。

 これは私小説ですらない何かなのではないか?と思ってしまいます。私小説は体験をそのまま描くにしても、少なくとも作品世界の登場人物として描く必要があると思うのです。
 が、本作のこの部分、過去作を連想させる要素は、ジブリ作品を見ていること、宮崎駿という人間を知っていることを強要しているように感じました。もし本作を視聴するのに、外面的な宮崎駿像を知っていないと読み取れないものがあるとすれば、まともな映画作品ではないと思います。
 本人が私小説と言っているわけではないですが、じゃあ、この部分について我々は何を見せられているんだ?という話です。

 これが「宮崎駿物語」とかいう題名で、露骨にそういう話だよと言われているなら分かりますが、本当にこれが劇場用アニメとして許されるのか?という疑問がわきました。

 そして、鳥ですね。どういう文脈でつかわれているか、というと、やはり目だと思います。なにを考えているかわからない不気味な目です。インコが顕著でしたが、インコ=大衆あるいはインコ=ジブリ社員とも見えました。あの塔はどう考えてもジブリを表現していると思います。

 本が沢山あった意味は何かです。ジブリがアーカイブ化したということでしょうか。アオサギは鈴木敏夫氏にしか見えません。少年と最後の老人は両方とも宮崎駿かなあと思いました。


 2つ目。継母と実母の描き方です。これはすごかったですね。テーマとしてはこちらの方が優れていましたが、これが宮崎駿の内面なのかは分かりません。
 冒頭の主人公が寝てしまったときの継母が見せた表情はぞっとしました。あの和洋折衷の屋敷の不思議な感じと描写の美しさ。7人の小人=老婆=妖精のようなイメージ。すべてが高レベルでした。

 夜の自分の知らない両親の顔。妊娠や寝顔や作りものの肉体など、継母から感じるエロスはものすごかったです。手塚のケモナーに対応するのは宮崎氏はロリコンだと思ってましたが、継母=近親相姦的な想いもあったのでしょうか?
 実母と同行した老婆についてです。ネタバレレビューを読む

 この点をしっかり描けていたので、私小説的な不満が気にならなくなるわけではないですが、ここはさすがジブリという描写でした。もちろん冒頭の火災のシーンはすごかったですが、ちょっと風立ちぬの震災のシーンの焼き直しに感じました。


 3つめ。エロスとタナトス。海のイメージと弱肉強食的な生命の循環、昇天=成仏=生まれ変わりのイメージ。魚の解体と内臓。巨石の墓、地下世界という黄泉的な映像。船は言語的には女性のイメージでもあります。弱ったペリカンに対する視点の切り替えなども印象的でした。
 
 一つ一つの意味性を考察するより、こういったエロスとタナトスを象徴するイメージが見事に描かれていました。これは良かったですね。恐らく神話とか美術作品などから引用したと思われる映像が沢山ありました。私は全部ひろいきれませんでしたが、ここで見せた生死観は素晴らしかったです。

 不思議の国のアリスのようなワンダーランド的な冒険譚と、あの世を旅する神話のようなイメージが見事に融合していました。


 で、最後にタイトルですけど、これはまあ訳わからないですね。別に解説も聞く必要もないです。「君たちはどう生きるか」と宮崎駿が問いかけられて、ジブリを作る=映画に人生を捧げてきた。それが自分にとっての真実だったという話かな、と思っています。正解じゃなくて全然かまいません。

 多分もう1回見れば、それっぽい事を沢山かけると思いますが、やっぱり1回に留めて、上の2番目と3番目のポイントを感じてモヤモヤするのが大事かなと思います。ただ、うーん。もう1回…迷いどころですねえ…

 しかし、この作品は考察すればするほど意味性が出てきてしまい、その分作品を見た意味が希薄になる気がします。

 ただ、そうか。レビューを書いてて気が付きましたが「君たちはどう生きるか」は、「君たちは」ですから人から答えを貰うんじゃなくて自分の体験や感性で考えろ、かもしれません。つまり、宮崎駿氏としては「どう生きるか」は自分で考え続ける事だから、この作品がどういう作品かはそれぞれが感じてくださいという意味かもしれません。
 つまり「どう生きるか」とは考察で教えてもらうな=視点や解答を外部に求めるな、ということかもしれません。

 うん。やっぱり宮崎氏の生い立ちや経歴・家族なんかを分解したり、アニメーターとしての影響とか、過去作その他がどこに反映しているかを見つけても、意味はなさそうです。逆にそれらは反映しているでしょうがそれは宮崎氏の「サイン」でしかない気がします。私小説と取られて仕方がないとは思いますが。

 作画はものすごいですけど、そっちの印象よりストーリーというか視点の切り替えが早いので、そちらに気を取られてどこが凄いのかははっきり覚えていません。

 なお、2週間以上前に見てすぐに書いた他の映画サイトのレビューにはかなり低い点数つけました。が、こうやって時間がたってから考えると印象も変わるし不思議な余韻があるので、文学的な味わいでは優れていたと思います。

 ただ、総合点は2点で十分と思えば、それも正しい気もします。




 

投稿 : 2025/04/19
♥ : 14
ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

宮崎駿氏の天命か、ジブリからの報奨か

冒頭、久しぶりのトトロの絵に、時代の流れを感じました。
そして、心なし、佇まいがしゃんとなる自分が可笑しく思えました。

10年ぶりを噛みしめるのは、捉えどころのない官能感です。
120分の長座ですが、満喫も堪能も、一期一会として欲張りました。

~  ~  ~

官能というと、何やら妖しげです。

言うなら、根源的な生命の営みに "ブルルッ" と震えてみたり、奇遇な縁に "カヘヘッ" と歓んでみたり。

五感の昂ぶりに浮き沈みする記憶の疼きだったり。
甘やかな陶酔感だったり、色さえ失う極致感だったり。

宮崎氏のペンタッチは、いつだって逞しい想像力と類を見ない表現力で踊っています。
彼の絵コンテは、どんな風にもファンタジーのフィルムに花と宝石をちりばめています。

2013年9月、氏は引退宣言をします。
でも、アニマを形にせずにはいられない職人でもあります。

その10年もの筆まめが本作品です。
ついに日の目に適うクオリティーに仕上げられたということでしょう。

その集大成という触れ込みです。
一見の価値、一考の余地が十二分にあるはずと、居ても立っても居られませんでした。

~  ~  ~

さて、感想です。

「アニメーションにはアニメーションで返したい。」
そう声に出るほどの強い思いに当てられました。

羨望に応えてくれたのは、底なしの想像へのアプローチでした。
憧憬に見てとれるのは、底ぬけの創作へのトリビュートでした。

ここまで求めてこれた・・。
ここから始めていければ・・。

その非凡さで、宮崎氏は地球儀を回していく。
のぼる朝日に刮目し、沈む夕日に目尻を細めるのです。

~  ~  ~

驚いたのは、時空の縛りに囚われないクリエイターとしての気迫と、一期一会にまみえる商才とのイニシアチブコンフリクトが見られたことです。

端的に申し上げれば、10年余の時計の巡りに問いかける宮崎氏のリアリズムに対して、なんの手間もかけない告知と番宣に工夫を入れた鈴木氏のスピリットの衝突です。

この話題性は巷を盛り上げましたね。
衆口一致の第一歩は、うまく踏み出しているように感じました。

とは言え、正直なところ、お二人の歩調に合わせるのは、かなりの骨折りでした。
でも、両者のバトンワークの "妙" は、胸に沁みこむような "種" にもなりました。

~  ~  ~

ストーリーを追うのなら、参考に足る本がいくつかあります。
ただ、私はそれらを読んでいないので、あからさまな情報弱者です。

君たちはどう生きるか?
この問いかけは、わたしは何のために生まれ、何を成し遂げるのか?に反射されます。

ナウシカ、シータ。
あなたたちは、どんな風に乗っていたのでしょう?

さつき、千尋、雫。
あなたたちの瞳には、何が映っていたのでしょう?

生と死、光と影。
大人と子ども、個人と社会。

その構造にうかがえるビジョンは、内心に矛盾を満たしながら、外界との衝突は否めないものです。
もしも、前後左右を見回すのなら、大地に居場所を定め、風に帆を立てねばならないでしょう。

目にそびえ立つ障壁を、どう乗り越えるか。
耳をざわめかせる喧噪と、どう折り合うのか。

主人公たちの気構えに心を寄せながら、愛を打つ試金石に自分を重ねるような小旅行でした。

~  ~  ~

主人公の少年・牧眞人は、宮崎駿氏の生き方をトレースしているようでもあるし、高畑勲氏の生きざまを映しているようにも感じます。

だから、既存の作品を手元に引き寄せながら、一つひとつの演出を論じるもよいでしょう。
あるいは、新境地と割り切って、いわく言い難い思惑やもと酔いしれるスタンスも良きです。

お二人が、畑を深くたがやし、丹念に水を蒔き、たわわに実らせてきた果実の結晶です。
次代につなぐリュックに詰め込んで、さぁ君たちの番だとエールを送っているようです。

~  ~  ~

鳥たちは不思議な存在です。

クリエイティビティに躍動し、自己と集団とをぐいぐいと主張しています。
生きるために蜜を求め、華やかな社交場や煌びやかな勲をずかずかと欲しています。

閉じられた門を開こうとし、高い空へと羽ばたこうともし、逸る気持ちにそれぞれのオープニングを飾ろうとしています。

ついにその塔は形を失せ、力を失ってしまいますが、それでもジブリのマジックを存分に受け取れとばかりのオーラを放ち続けるのでしょう。

鳥たちの羅針盤になり、置き土産となり、止まり木ともなるのならという祈りを、その残滓に潜ませてあるように感じました。



~  ~  ~

過去を省み、未来を鑑み、さて、今日のわたしはどのように過ごしていきましょうか。

斬新なインスピレーションにハミングを楽しんだり、軽やかなミームに囲まれて暮らしを彩ったり。


生きろ。
生きねば。
生きていく。


素晴らしいアニメーションには、素晴らしいアニメーターたちがお返しをしてほしい。

今は、ただそう願うばかりの私です。



おまけ
ネタバレレビューを読む

投稿 : 2025/04/19
♥ : 17
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

流石にこれで最後だと思った宮崎駿監督の集大成

(※内容は先日某所で投稿した内容とほぼ同じになります)

私は、あらすじ程度は踏まえないと何も語れないでしょ?との方針の元、
“ネタバレなし”レビューを核心部分はタグで隠した上で投稿しています。

ですが本作は、あらすじはおろか、キャストや、ジャンル等、公開前に事前情報がほとんど伏せられた作品なので、
本レビューは全面的にタグで隠させて頂きます。


レビュー前に、劇場鑑賞した雑感だけ

面白いの?……良作。劇場鑑賞するだけの価値は十分あったと思います。特に作画、音響面。

傑作なの?……自分の中では良作止まり。2023年マイベストアニメ映画も今後、良作公開が続けば本作はベスト10に入れるか微妙な位。
マイベストジブリ映画という観点でも、ほぼ良作以上しかないジブリ作品の中では本作は下位グループ。

オススメなの?……宮崎 駿監督作品が好きならオススメ。が、“国民的アニメ映画”になり得るかは不透明。近作の『ポニョ』や『風立ちぬ』から何かを感じられる方じゃないと厳しいかと。

ここまで事前情報隠した意味あるの?……ある。事前公開設定で苦手かもと“ゼロ話切り”する風潮下では、ジャンルどうなるのか?というワクワク感も貴重なエンタメ体験ではないかと。


以下レビュー。
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投稿 : 2025/04/19
♥ : 12
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