モノクロで花火なおすすめアニメランキング 1

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87.5 1 モノクロで花火なアニメランキング1位
色づく世界の明日から(TVアニメ動画)

2018年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (1141)
4886人が棚に入れました
物語の始まりは数⼗後の⻑崎。⽇常の中に⼩さな魔法が残るちょっと不思議な世界。主⼈公の⽉白瞳美は17歳。魔法使い⼀族の末裔。幼い頃に⾊覚を失い、感情の乏しい⼦になった。そんな瞳美の将来を憂えた⼤魔法使いの祖⺟・⽉白琥珀は魔法で瞳美を2018年へ送り出す。突然、⾒知らぬ場所に現れとまどう瞳美の視界に鮮烈な⾊彩が⾶び込んでくる…。

声優・キャラクター
石原夏織、本渡楓、千葉翔也、市ノ瀬加那、東山奈央、前田誠ニ、村瀬歩
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

こぼれたあの色

P.A.WORKS制作。

色彩を知覚できずモノクロの世界で生きる少女。
彼女は自分に魔法をかけた、
{netabare}わたしは幸せになってはいけないと。
17歳の未来の少女が、
時の魔法で17歳の祖母に出会う、{/netabare}
魔法が日常に存在する青春ファンタジー。

この物語には、小さな魔法があり、
心のサプリや探し物を見つけたりと、
日常にそっと寄り添う形で存在しています。
{netabare}少女はなぜ色彩を失ったのか、
少女に色をもたらした絵を描く少年との出会い。{/netabare}

夕焼け、朝露、夜空の花火と、
色彩の世界を描くだけに風景は美しい。
美しいものを美しいままに描く、
こぼれたことば、こぼれたあの色。
色の溢れる世界を取り戻す、
世界を肯定する物語になればと思います。

最終話視聴追記。
言葉より絵や色彩で魅了する作品です。
{netabare}テーマに沿って上手くまとめたのでは思う。
ただこの主題と絵の表現力があれば、
劇場版の尺で良かったのではと思ったり、
映画なら傑作に成り得たかも知れません。{/netabare}

美麗なOPが記憶に残りますね。

投稿 : 2024/11/30
♥ : 93
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

煌めく長崎の街並みと青春の光

アニメーション製作:P.A.WORKS、監督:篠原俊哉、
シリーズ構成:柿原優子、
キャラクターデザイン・総作画監督:秋山有希

魔法使いの子孫でありながら
魔法が嫌いな月白瞳美にとって、世界はモノクロだった。
花火が行われていた夏の日、瞳美は祖母の魔法によって
60年前に飛ばされてしまう。
そこで出会った、葵唯翔の描く絵画は
瞳美が忘れていた色を取り戻させてくれるのだった。

日本のなかで最も好きな都市のひとつが長崎だ。
坂があり港があり、洋風の建物が点在する。
街には路面電車が走り、
日本中から使用されなくなった車体が集められて
再利用されている。
街並みは和風と洋風が融合し、とてもバランスが良い。
街は栄えていて、飲み屋街の思案橋には、
さまざまな種類の美味しい店が軒を連ねている。

個人的には仕事で何度も訪れた懐かしさがあり、
それがP.A.WORKSの美しい絵で堪能できることから、
1話目からとても楽しみにしていた作品だった。
序盤は予想に違わない出来で1話目の作りは、
ほぼ完璧ではないかと感じた。

そんな形で視聴を開始した作品だったが、
中盤くらいから違和感が頭を掠めるようになる。
話がどういう方向を目指しているのか見えてこない。
もちろん、瞳美が自分の抱えている問題を解決させ、
色を取り戻すことが最終的な目的なわけだが、
一向に話が進んでいる感じがしない。

原因のひとつは、世界の色を取り戻すことが
瞳美だけでなく、唯翔にも必要だったことだと思う。
主役のふたりが同じ悩みを抱え、しかも自分から動かないため
話が進んでいかない。ドラマチックな展開にならない。
だから、クライマックスでお互いが心を通わせるシーンでも
全く盛り上がらず、唐突な感じがしてしまう。
これが小説だったら、まだやり方もあったのだろうが、
アニメでふたりとも消極的な性格で、
同じ問題を抱えているため、展開を難しくしている。

その影響から物語が動かず、どこに向かっているのか
分からないように感じてしまう。
瞳美に積極性がないので、母との関係性についてなのか、
自分の時代に戻ることなのか、色を取り戻したいのか、
恋人を作りたいのか、友達を作りたいのか、
魔法への意欲を持ちたいのか、ほとんど見えてこない。

これは私の好みの問題でもあるのだが、
登場人物の想いをしっかり伝えて欲しいと思う。
この作品の場合、瞳美と唯翔が大切なものを
取り戻すことが大きなテーマになっているのに、
彼らの切迫感や渇きの心情がほとんど伝わってこない。
伝わってくるのは、諦めと苛立ちだけなのだ。
原因は、彼らの望んだ幸せな世界が
物語として、映像として表現されていないからだろう。
{netabare} 例えば、瞳美なら母の、唯翔なら祖父のイメージが
少しでも表現されたなら違ってきたのだろうが、 {/netabare}
終始ぼんやりしたお話になってしまっているように感じてしまう。

若者の閉塞感を表現したという点では、
リアルと言えるのかもしれない。
思春期の若者の心情を描いているのは、
分からないでもないのだが、イメージばかりを先行させすぎて、
物語に活かされていない。

それと、絵が美しいのは素晴らしいのだが、
あまりにも綺麗過ぎて、キャラクターの造形の粗が
逆に目立ってしまうのもマイナスポイントになってしまっている。
唯翔と千草のキャラデザが似すぎているのも良くなかった。
何となく観ていると、どちらか分からないことがあった。

目指したのはハインラインの『夏への扉』や
スピルバーグ監督の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だろうが、
中盤があまりにも退屈すぎる。
このテーマで物語を作るのなら、安易に魔法などというものを
持ち出さないで、正面から取り組んだほうが個人的には好感を持てた。

難点ばかりを挙げてきたが、唯翔の描く絵画の世界や
そこから浮かぶイメージは挑戦的な作風だったと思う。
OPの美しさ、タイトル書体の選別、長崎の街並みなど、
美術面にこだわり抜いているのが感じられる。
描かれている世界は、とても鮮やかだった。
記憶に残る作品だったと思う。
(2019年2月3日初投稿)

投稿 : 2024/11/30
♥ : 92
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

全13話+“60年”の時の重みに思いを馳せてみる

2019.01.02記


P.A.WORKSによるオリジナルアニメ


前評判の良さとキービジュアル。数年前旅行で訪れたお気に入りの街“長崎”が舞台とあって、スルーする理由が見当たりません。
“眼鏡橋”“グラバー園”観光スポットもそうですが、地味に“石橋”行の路面電車や“思案橋”の信号機なんかも懐かしいですね。また行きたいです。
そして1話EDクレジットに島本須美さんの文字が! 断念する理由も無くなりました。


最初から最後までただひたすら美しい作品でした。作画や音楽だけではなくストーリーもです。棘の無いやや起伏に乏しい物語は物足りなさという弱みと裏返しでしたね。

見える風景がモノクロになり、自分の殻に閉じこもっている月白瞳美が主人公。「高校時代のあたしに会って・・・」と説明もそこそこに祖母である月白琥珀の時間魔法で60年前の過去へと飛ばされた後、高校生の琥珀とその友人たちと交流を重ねていくお話になります。
魔法/魔法使いが社会に受け入れられているのはファンタジーで、その魔法も私たちが想像するような仰々しいものではなく、“頭がすっきりする”“そこにない風景が見える”“ちょっと物体が動く”といったもの。祖母琥珀が使った時間魔法は上位魔法で習得難度が高いという設定はあるものの、普段使いの魔法は他愛のない、琥珀に言わせれば、

“日常を彩るサプリみたいなもの”

であり、魔法が全面にでてくるかというのとはちょっと違い、綴られた物語は高校生の青春です。
・なぜ祖母の琥珀(77歳)は孫の瞳美(17歳)を過去に送ったのか?
・なぜ瞳美は色を失ってしまったのか?
謎というほどではないかもしれませんが、{netabare}『瞳美が色を取り戻していく物語』{/netabare}作品のテーマとなります。


繰り返しになりますが、ただひたすら美しいです。

OP「17才」ED「未明の君と薄明の魔法」、2018年秋クールの中でも群を抜いてました。OPED両方とも一話たりとも飛ばさなかった唯一の作品です。
{netabare}最終話で「17才」イントロ流れた瞬間、歌詞の「虹がかかるよ」が頭に浮かび涙腺が・・・ 二番も良い歌詞です。{/netabare}
{netabare}モノクロから始まり、街灯のオレンジ色から街の夜景へと繋がるED画も神秘的でやなぎなぎの曲調もしっくりきます。{/netabare}

高品質な作画も最後まで安定してました。夕暮れ、夜景、太陽の照り返し、光の滲み具合。色使い・彩度の加減は下手な劇場版より綺麗かもしれません。モノクロと豊かな色彩の対比が物語の柱でもあるため、気合が入ってました。
{netabare}序盤第2話:夕暮れ時の校舎の風景作画は引き込まれました。岩崎良美「青春(タッチED)」がよく似合います。※年寄りは付いてきてね。{/netabare}
それと舞台が長崎ということで背景作画のハードル上がってたんじゃないかしら?
少しばかりの平地を除いて丘・山そして海。小高いところに建造物が立っている坂が多い街。風景絵が田舎なら青空+雲、都会なら定規でひけるビル群とかで済みそうなところが、そうはいきません。特に夜景は、空の黒と山間の黒そして海の黒とに区別つけた上で、適度に生活の灯りを散らさなければなりません。路地は曲がりくねった石畳ですし、作画班はほんとにお疲れ様でした。


肝心の物語は薄めです。キャラも心情描写をしっかり見せるわけでなく物足りなさを感じるほど。どちらかというと心象風景を見せる感じ。いかんせんヒロインの瞳美がわかりづらいし反感買いそうなキャラ。作画だけの作品なのね…残念、、、途中までの印象です。
風向きが少し変わったのが{netabare}11話と{/netabare}終盤で、最終13話の出来が良かったので少し考えをあらためました。
{netabare}この物語は、途中経過や最終話の締め方も含めて、いろいろ余計なものを付け加えると野暮になってた気がします。むしろあの程度と抑えめで良かった。{/netabare}


■最終話を観終わって ※以下ネタバレタグは視聴済みの方向け
良く出来た最終回です。そこに至るまでの過程に起伏があればさらに良しとしたことでしょう。ただしちょっと待ってください。これって完走後に、

{netabare}『瞳美が2078年に戻ってからの魔法写真美術部員の60年を想像して補完する』楽しみが残されてますよね。{/netabare}

全13話で完結というより描かれてない空白部分がむしろ重要で、そこの受け取り方で評価が別れるんだろうと思います。

{netabare}60年後、瞳美と魔法写真美術部員との再会がなかったことが空白部分を考えるきっかけでした。物語の舞台が2018年。自分に置き換えても2078年には生きていないでしょうから余計にそう思わせるのかもしれません。
瞳美が去った後、琥珀は、唯翔は、あさぎは、胡桃は、将は、千草はどんな人生を送ったのでしょう?瞳美がやってきたことでどんな変化を彼らにもたらしたのでしょう?

●琥珀:魔法の能力に目覚めた幼少期から「私は魔法でみんなを幸せにしたい」が信条だったのに、一番近しい人たちを救えなかったことは身を引き裂かれる思いだったことは想像に難くありません。娘の失踪と孫が色を失った理由はそれぞれその時に知ったのではないでしょうか?10話で瞳美は唯翔にだけ事情を話してますが、あの唯翔が琥珀に話すとはどうしても思えないのです。
瞳美が帰る時に自分の時間魔法の未熟さを実感して、以降腕を磨こうと研鑽を重ねただろうし、そのために最適な伴侶を選びました。瞳美がいなくなった後になぜ未来の自分が瞳美を遣わしたのかを考え続けた人生なはずです。
孫が帰還し一緒に母を探すと言ってもらえてどれほど嬉しかったことでしょうか。
「幸せになっていいんだよね?」孫から言われた時に70年越しの琥珀の思いが報われた気がしました。

※12話での瞳美「あれ?おじいちゃん?」の控えめリアクションが微笑ましい。
※年齢って英語でLEVELと表記するかは知らんが、「あんたはまだまだよ」的なエールは三つ子の魂百までの茶目っ気を感じる。すなわち“LEVEL17 vs LEVEL77”

●唯翔:瞳美は唯翔から、唯翔は瞳美から大事なものを受け取りました。彼が愛する女性に対してできること。“色を失った理由を直接聞いた(10話)”“魔法の中で幼少期の瞳美に会った(10話)”“幼少期一冊だけ色が見えてた絵本があったと直接聞いた(8話)”
「あの時俺が小さな瞳美に伝えたかったこと 自分を閉じ込めてほしくなかった 諦めないでほしかった」
必ず瞳美に届けたかった執念の絵本だったはずです。唯翔なら爺さんになって再開し思い出話に花を咲かせる気などさらさらなかったでしょう。進路も絵の道には進んだでしょうが、職業替えしたかもしれないし、結婚したかもしれないですが些細なことだと思います。
心を閉ざした“小さな瞳美”に伝えたかったことを伝える役目を果たした時に彼がどんな表情をしてたのかを想像するととても切ないものがあります。

※墓参は瞳美一人でした。琥珀が気を利かせたのだと思います。もしもお世話になった曾祖母ら月白家の墓なら琥珀は一緒に行ったでしょう。

●あさぎ-将くん:占い外れたみたいでなによりです。 “うさぎさんは犬さんのとなりに立って海のにおいをかいでます”

●胡桃-千草:不明。だけどお似合いでした。{/netabare}


{netabare}色を取り戻した瞳美はどんな人生を送るのでしょう?
最終話EDで、同級生二人に自ら声をかけ、その一歩を踏み出した瞳美。この二人、髪の色とかリアクションからしてどこかしらあさぎと胡桃らしき面影がありましたね。きっと孫娘なんでしょう。
彼女らは第1話で、浴衣姿で瞳美に声をかけてた二人でもあります。両シーンとも彼女らは瞳美に親しげです。受け取る瞳美側の心の持ちようが第一話と最終話では違うという対比にもなってます。{/netabare}


{netabare}“葵”“琥珀”“山吹”“あさぎ”“胡桃”“千草”、全て色を表す言葉。六色がもたらすものは、これまで“誰にも愛されてないと感じた夜”を幾重にも重ねてきた少女の心を溶かしました。物語としてはこれで万事めでたしめでたしです。
さらに、瞳美が色を取り戻す前の彼らと過ごした半年の時間でさえ、月“白”と合わせて七色の虹は架かっていたのです。この七人にとっての色褪せることのない大切な時間でした。唯翔が絵本を通して瞳美に残したかった想い。未来でも笑ってられますように、と。{/netabare}

やはり、美しい物語でした。
空白の60年間に想いを馳せると時の重みに切なさや愛おしさを感じる良作です。


しかしよくよく考えると、夏休みの最終日に宿題をあわてて片付けたと言えなくもない。



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2019.06.13追記
《配点を修正》


未来のお話って別世界の話として見る向きがあったのですが、本作は現在との繋がりを強く意識させるものでした。2078年には自分は退場しているはずでしょうが、孫かひ孫あたりの世代に自分の想いは伝わっていて、って素敵だと思ったわけです。

加点しときます。

投稿 : 2024/11/30
♥ : 91
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