ホラーアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のホラー成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年01月05日の時点で一番のホラーアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

63.5 1 ホラーアニメランキング1位
地下幻燈劇画 少女椿(アニメ映画)

1992年5月2日
★★★★☆ 3.4 (62)
226人が棚に入れました
浮世絵のような作風で国内外で人気を博す漫画家・丸尾末広の『少女椿』を原作にした劇場用アニメーション。物語は、両親の死により行く宛がなくなった少女・みどりが主人公。彼女は、手のない者や両手足がない者などが出演する見世物小屋で働くことになる。そこで西洋マジックの使い手・正光と出会い、二人は惹かれ合うようになり、見世物小屋の団長が夜逃げしたことをきっかけに、みどりと正光は再出発をしようとする。しかし、正光が通り魔で刺されてしまい、一人残されたみどりは……。 本作は児童ポルノおよび児童わいせつに関する法律に触れ、東京国際ファンタスティック映画祭2004を最後に、8年間は上映禁止となった問題作。過激な内容と映像表現が特徴の伝説的な作品で、地下上映などの特設会場を設けて公開してきた。

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

カフカ的不条理を昭和カストリ誌的に表現しました…かな?

 本作は不条理系の実存主義的な話…なんでしょう。カフカの田舎医者がショートアニメで作られていて比較的簡単に視聴できるのでそちらも本作を読み解くには参考になるかもしれません。

 こういう訳のわからない作品に出合ったときに注目すべきポイント。主人公は、死を考えているか。神や祈るべきものか規範を持っているか。不幸の原因をどう考えているのか。どういう生き方を選択しているのか、を見ればいいと思います。

 本作は、不幸の連鎖でどん底に堕ちている少女の話です。この時に彼女は自殺を考えません。そして、神にすがりません。この点は重要かな、と。この2つは精神的な死とみなすとしているんだと思います。

 神あるいは超常の絶対者の意思や死後の世界を前提にすると、救済はありますが、人間の生き方としてどうなのか。不条理を受容し、生きている意味を見出すことは出来るかもしれません。が、それは現実から目を背けた逃避であり、この人は主体的に生きていると言えるのだろうか?
 これは自殺とは表裏ですが、一方で同じことだと言えなくはないでしょう。スピリチュアルや心霊に傾倒することは回りまわって、自分の死による断絶の否定です。

 少女は生きようとします。劣悪な環境でも、花を売り母を助けようとします。犬を愛し男を愛し、逃亡を企てます。結果として男は殺されます(ちょっと「君の膵臓が食べたい」を思い出します)。この理不尽な仕打ちに少女は絶望します。家族の団欒を夢想します(ここは「クラナドアフター」を思い出します)。最後は暴れます。このワーっという爆発は「この世界の片隅で」の玉音放送を聞いたすずさんでもあります。

 さて、彼女は死を選ぶでしょうか?多分、理不尽なまま生きて行くでしょう。宗教に傾倒するのではなく、おそらく身体を売ってでも、生に固執する気がします。この見世物小屋の団員たちと将来は同じになるかもしれません。

 この少女は不幸を他責にしていません。自分のせいにもしません。それが世の中だと自然と受け入れます。そして、誰かの施しをプライドで拒絶もしません。幸運として受け入れます。

 本作は原作者の趣味で12歳の少女を使ったこと、実存主義と相性がいいエログロ、レイプ、身体障碍と組み合わせたことで、不遇の作品となりました。ただ、創作物のロリって描き方によっては意味が生まれてくるですけど、とにかく欧米のポピュリズムは形式で見ますから。ケッチャムの「隣の家の少女(閲覧注意)」はOKで本作が駄目というのも解せませんけど。

 本当に人間とは何かを考えるなら、表現の規制があっては絶対描けないものはありますからね。ある歌のフレーズですが「表現を自重する芸術家」というのがあります。少なくとも本作とは無縁でしょう。

 ただ、人の目に届かないと主張はできない、という考えもありますけどね。

 私としては面白くはありましたが、ただ考えるべきことは上で書いたようなカフカ的不条理主義です。見せ方や視点はありますが課題は決まってますからね。その点で新しい考えが私の中で生まれたかというと、ちょっと自信はありません。再考するきっかけにはなりましたが。

 それと、ガロ的なというか昭和初期のエログロナンセンス的なカストリ誌的イメージを作りすぎている気がしました。コミック版だといいんですけど、アニメとの相性はどうなんでしょうか。実写版があるそうでそっちも機会があれば確認したいですね。

 万人にお勧めしませんが、たまにはこういう作品で気持ち悪くなるのも、良いかもしれません。プラスの感情にせよ、マイナスの感情にせよ時間の無駄ではないと思います。


追記 ヒロインが社会の中で生かされていて、彼女の選択は主体的に見えて主体的ではない。戦後の資本主義…民主主義の中で生まれた最下層だという見方をすれば構造主義的な見方ですがこっちの感じでもない気がしました。
 ただ、ヒロインは選択しているか…といえば選ばされている気もします。

 作家の意思で構造主義、実存主義というのが使い分けられるのかは私はまだ理解できていません。例えばカフカを構造主義的に読むことが可能で、構造主義の中に実存主義は包含されていると考えるのか、実存主義的な創作や読解は既にできないですべては構造主義なのだ、と考えるのかは勉強中です。



 

 

 

投稿 : 2025/01/04
♥ : 5

あぱぱ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

不幸と闇

ご存知ある方は年配であると思いますが、児童文庫版の江戸川乱歩や
横溝正史の小説表紙、楳図かずおの単行本の表紙を見た時と
同じ感覚になる作品。

推測ですが、最初は怖いもの見たさから戻れなくなってしまうような
不思議な世界です。

物語は全体を通して少女ミドリの不幸と、ささやかな幸せが描かれています。

昭和初期の時代設定なので「見世物小屋」という、今のご時勢では
明らかに規制がかかる舞台が取り上げられている。

この物語から何を感じるのかと言いますと

「不幸を抱えた者同士が、さらに不幸な人から幸せを奪いあう」

というような、人間の闇を感じられます。

人の不幸を見るのが好きな方には興味あるかもしれませんが
歪んだ人間像になりかねないのでオススメはしません。

個人的ですが作画や世界観は気に入っています。
中途半端に作り上げた安っぽい暗さより、生々しい暗さは評価できます。

実写映画もR-15でありますので、興味があればそちらも
視聴されてください。

(余談)

児童が読むグリム童話でもありますが
「怖い」「見たくない」「気分が滅入る」
といった感情は過剰に受け入れる必要もないのですが
受け入れることを拒むと気持ちの耐性がつきません。

綺麗な絵空事ばかり受け入れても、恐怖は現実に存在します。

現実で怖い事件などがあっても、真実味(危機感)を
感じなくなってしまったら、恐怖から逃避しているかもしれません。

恐怖という感情は積み重なることが難しいと感じています。
機会があれば適度に恐怖を味わうことも必要かもしれないですね。

恐怖を感じられる人は、自分以外が感じる恐怖を理解できるのでは
ないかと私は思います。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 9

ぴろむー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

はまる人ははまる!

人に勧められて観ました。


観始め→え・・・何これ、なんかおどろおどろしい雰囲気で怖そう(・.・;)

中盤→なんか気持ち悪いけど惹かれる・・・!

観終わって→なんかボーっとする(;´Д`)


とにかく世界観に圧倒される!ストーリーは至ってシンプルな気が・・もう一度観たらもっと理解できるのかもですが、観る勇気が出ない。でももう一回観たい、でもなぜか観れない!


エッチしてるシーンやグロい場面の記憶はあまりないのに、なぜかエログロの極みを感じました。
妖しい、艶かしい、生々しい、おどろおどろしい、そして吐き気を催す、なのに魅力的。理屈じゃなく五感に訴えてくるような作品。


顔を両手で覆って指の間から観るような、そんな怖いもの見たさみたいな気持ちで鑑賞しました。

気持ちわるいのになぜ惹かれてしまうのか未だにわからない。
はまる人は何度も観てしまうと思います!

もの凄い魅力あると思いますが、ものすごーーーい人を選ぶ作品です。


物語は☆4くらい、声優はヒロインみどりちゃんの声がかわいすぎ、キャラは好きなキャラはいません(;´Д`)
雰囲気・世界観が☆6くらいだったので、適当に上乗せしました(*´艸`*)

投稿 : 2025/01/04
♥ : 2

計測不能 2 ホラーアニメランキング2位
鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(アニメ映画)

★★★★★ 4.1 (59)
130人が棚に入れました
詳細不明

声優・キャラクター
沢城みゆき、野沢雅子
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

全ての日本人に心の貧困という核心を突き付ける地獄の前日譚(プリクエル)

原作未読。TVアニメもまともに観たのは第3シリーズ(1985-1988)くらい。
最近のシリーズも6期で猫娘が随分と萌えキャラ化したなw以外は予備知識もほぼありませんでした。
ですが近年の『ゲゲゲ』の好評は聞き及んでいて興味はあったので、
入り込みやすくハズレがない前日譚である本作から、
30年ぶりにイマドキの『鬼太郎』をかじってみることに。


【物語 4.5点】
表層は昭和30年代。怪しげな因習が残る閉鎖された村・哭倉(なぐら)村にて、
地元を取り仕切る名家の相続絡みで起こる連続猟奇殺人事件という『八ツ墓村』型サスペンスのプロット。

が、そこで炙り出される人間の愚かさは、陰鬱とした田舎特有の物ではなく、
鬼太郎誕生に隠された、人間と妖怪にまつわる、えげつなさ過ぎる人の業の暴露と共に、
村境を越え、時代を越え、古今の日本全体に、
愛を捨ててまで欲望を追求する人間の狂気という重たいテーマを突き付ける。

(※核心的ネタバレ){netabare} 幽霊族の血液{/netabare} から生成する血液製剤“M”はかつて日清・日露でも使用され不死身の兵隊たちが日本を勝利に導き、
戦後の今また“企業戦士”に投与し日本復活を目論んでいるという件。

バブル景気の頃、24時間働けますか?とドリンク剤投与して過重労働でナンバーワンを目指すも幻に終わった、
あの徒労感を想起させるようで苦笑しました。

怖いと言うより核心を突く痛恨の一撃を受け呆然とする感じ。


原作者の故・水木 しげる氏は大戦中、南方戦線で左腕を失った帰還兵。
その原体験から、物質ばかり豊かになっても心が貧しいままでは人間は幸せになれない。
と作品内外で終世発信されて来たお方。

主人公視点を、東京・血液銀行社員で南方戦線帰りの水木に置き、
哭倉村に鑑賞者をナビゲートする役割を担わせる辺りにもリスペクトを感じました。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・東映アニメーション

赤にカラーを絞って村の猟奇を表現したり、
時にはモノクロを基調に強調したい人や物をカラーにする演出を仕掛けるなど、
見応えがある絵作りで狂気に呑まれた村を好表現。
龍賀製薬社長・克典の金歯の強調にも成金趣味の末路を示すようで、こだわりを感じましたし。
何より鬼太郎の両親がデートで召し上がっていたメロンクリームソーダが美味しそうでした。

昭和30年代・白黒映画作品のエッセンスを意識したということもあってか、
喫煙率が高めなのも特徴的。
出世による生き残りの野心を抱く社畜・水木が、社長の葉巻にむせ返るカットには、
人の心を捨てて上へ行っても破滅するだけとの皮肉がこもっているようで印象的。
葉巻をカットする道具などプロップデザインのレベルから力が入っていました。

かつての小児喘息患者の私から見たら序盤、
ろくに分煙もされていない昭和の列車内で、
呼吸器疾患と思しき少女が咳き込んでいるにも関わらず、
煙草をふかす乗客たちの描写も示唆的でした。
ここも思いやりを忘れて高度成長へと猛進する日本の行く末を暗示しているかのよう。

昭和30年代を意識して制作してはいるが、決してノスタルジーには陶酔せず、突き放すべきは突き放す。
このバランス感覚が全世代の鑑賞に耐え得る作品を実現させていると感じました。

デザインの土台から意図があり、それでいてバトルシーンも、場合によっては線を大胆に崩す描画からスピード感が伝わり見応えがある。
総じて本年でも上位に入るリッチな作画でしたが、グロも容赦なくガードは必須。
と言うより、これでPG12指定で済ました映倫は冒頭10分しかチェックしていないのでは?との疑念を抱いてしまいますw


【キャラ 4.5点】
人間側の主人公・水木。
戦場で味わった人間への絶望から他者を打算でしか見れなくなってしまった哀れなサラリーマン。
本作は、“見えるように”なってしまった妖怪から、死相があると指摘されるほど終わってる水木が、
愛の価値を認識する物語でもあり、その筋書きが鬱展開が続く中でも一筋の光明となる。

「愛をとりもどせ!!since1956」
私がレビュタイに考えていたもう一つの痛いタイトルですw

水木の価値観を投影する合わせ鏡として重宝したのが、
村を束ねる龍賀家の娘・沙代。
閉塞した村から東京への憧れを抱き、水木に想いを寄せる。
水木が目的のため、乙女の純心を無下にしたり、思い直して拾い直してみたり。
愛を巡る主人公の心の揺れ動きを拡張する良ヒロインでした。

水木に愛に関する問答等をもたらすのが、妖怪側の主人公・鬼太郎の父(後の目玉おやじ)
要所で主人公心理の現在地を確認し合うチェックポイントがあり、
心の機微を捉えやすくて助かりました。

軽快なフットワークで展開を動かす役割を果たしたのが少年時代のねずみ男。
鬼太郎父の代から、付かず離れずの腐れ縁w


【声優 4.5点】
龍賀家のキャストには亡き当主・時貞役の白鳥 哲さん以下、
脂の乗り切った声優たちが固める盤石の布陣で、
愛蔵渦巻く伏魔殿ぶりを確立し、主人公らの前に立ちはだかる。

紗代役の種崎 敦美さん。
この秋アニメでも無双している種崎さんですが、
幅広い役柄に対応できる能力を本作でも遺憾なく発揮。

掛け合いでは水木役の木内 秀信さんと鬼太郎の父役の関 俊彦さんの墓場での酒飲み話が味でした。
人生走るのに疲れた時なんかに晩酌しつつ思い出して噛み締めたいと思います。

鬼太郎の母役には現・鬼太郎役の沢城 みゆきさん。
ここも愛の継承を印象付けられる粋なキャスティングです。


【音楽 4.5点】
劇伴担当・川井 憲次氏。
SF・ロボット作品での勇壮なコーラスによる戦闘曲が持ち味で、
本作のバトルBGMでも威力を発揮します。
一方で、伝奇・サスペンスでの川井氏のサウンドにも捨て難い魅力があります。
尺八の音色をアレンジした和風BGMが鑑賞者を魔境・哭倉村へナビゲートしてくれます。

そしてあらゆるジャンルで川井氏の音楽が心の琴線に触れるのは、
人情に寄り添ったピアノとストリングスの心情曲。
その意味でも本作の川井氏は上々でした。

EDも安直に宣伝用の歌手を起用したりせず、
往年のTVアニメ版・EDテーマ「カランコロンの歌」の川井氏によるインストverで締めくくったのも、
突きつけられたテーマを咀嚼して余韻に浸れる好判断でした。


【感想】
人の好みはそれぞれなので、これは観るべきとかあまり言いたくない私ですが、
本作は全ての日本人が観るべき作品だとの感想がまず浮かんで来ました。
鬼太郎なんて今更……と避けて通るのはもったいないです。

受け止める覚悟のある方には是非オススメしたい良作映画です。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 24

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.3

「犬神家の一族」過ぎだし、水木氏の解釈が違う気がしました。

 市川崑監督の「犬神家の一族」(1976年)を映像的にも演出的にも舞台設定にしても、あまりに模倣しすぎてオマージュの域を超えている印象が最後までノイズになりました。
 私が邦画の中で非常に好きな作品の一つで十回以上見ている作品なのが大きなマイナスに作用しました。

 ここをどう見るかですね。はじめの鬼太郎・猫娘で期待を持ったのですが、数分後には水木作品というよりも横溝正史のアニメ化?と思うほどでした。

 犬神家の一族との類似点としては、製薬業であること、湖のほとり、葬儀の場面から始まること、ボートのシーン、島に秘密がある、遺産相続、弁護士が遺産を読み上げる場面や龍賀時貞の写真がずれる場面、死体発見の場面、布団の上でたばこを吸うシーンなど。
 キャライメージは、時貞=佐平、時麿=助清、沙代=珠代、乙米・丙江・庚子=松子・竹子・梅子、弁護士や猿蔵など…あげればきりがないくらいです。

 もちろん話は冒頭30分以降はずれて行くのですが、なんとなく時代考証をさぼるために、あるいは時代の雰囲気を出すために手抜きをしたのか?と感じてしまい、集中できませんでした。

 それと昭和31年の設定らしいですが、髪型が現代的すぎるのもメタ的な視点になる原因となりました。特に沙代の髪型は当時の雰囲気ではないです。

 それとM=ヒロポンだと思うのですが、そこまでオカルトにしなくても現実に出回っていた薬です。「サザエさん」のタラちゃんがキメてしまったシーンで有名です。これは題材としてどうなの?と思います。

 それが戦争の兵隊=企業戦士、戦争と高度経済成長という構造が、妻や子供=家族の犠牲の上にというテーマがあって、当時の時代性をしっかり描けているならまだわかるのですが、そこが非常にとってつけた感があります。薬を取りつつ戦う・働くこと、それで儲ける人間性…という部分が描き切れてないです。
 話としてはゲゲ郎の妻の話を持ち出しても、単なる復讐譚になってしまいました。
 沙代の素性もそれは必要な設定だった?と思わなくはないです。そこにストーリーやテーマと重なるものがあったでしょうか?

 水木という名前に故水木しげる氏の戦争体験を重ねようとして、どこか観念的な悲惨さで終わっているのも少し残念ポイントでした。水木氏はもっと戦争とか生死感を超越した達観があったからこそ、妖怪の世界に入り込めるある種のシャーマンです。主人公を水木という名前にしたのもちょっと解釈が違うんじゃない?という気がしました。

 ですので、ストーリーとしての評価は犬神家の一族すぎて手抜きか?ということと、水木氏という存在のとらえ方がちょっと私とは違う感じ、そしてとってつけたような話…というよりありきたりな話であまり評価できませんでした。

 映像はもちろん犬神家の一族で見た場面ばかりなので、目新しさはないです。ただ、アニメ映像のクオリティはすごかったと思います。

 うーん、無料サブスクで見たとはいえ、映画の評価は厳しめになります。ストーリー、キャラは2ですね。映像はアニメ技術はすごいですが、借り物なので3.5。音楽と声優は…うーん、まあ評価せずの3でいいですかね…やっぱり調整で2にします。
 点数はひどくないですが、私はこの作品の制作者のマインドがちょっと…という気がして主観的にはひどい印象でした。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 5

ねるる さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

侮るなかれ!クオリティの高さが続く104分間!ゲゲゲの鬼太郎の父、目玉おやじの過去を描く傑作劇場版

2023/11/29 2度目の劇場視聴。加筆レビュー。
原作未読。SNSでの評判が良かったため劇場視聴。
PG12作品、上映時間104分。

日本人なら大人から子供まで、1度は耳にしたことのある作品、『ゲゲゲの鬼太郎』。主人公鬼太郎の誕生秘話、そして、鬼太郎の父についてが描かれる、原作者水木しげる生誕100周年記念作品。

正直なめてました。どうせ子供向けだろと、ド〇えもん、クレヨンしん〇ゃん、その辺と変わらんのだろという気持ちでしたが、正直凄かった、物語も作画もここ最近で見た中でも特別に素晴らしいアニメーション作品でした。

まず作画が素晴らしい。のどかな田舎の村の風景、緊迫感のあるおぞましいシーン、終始クオリティの高い画が続きます。ゲゲゲの父の戦闘シーンは瞬き禁止のスピード感と迫力のあるモーションで映画館で見る価値が間違いなくあります。

そして、物語。
メインの謎に包まれた一族の話は、しっかりとサスペンスホラーとして描かれ、飽きさせない展開が続きます。始まりから色々な伏線が貼られてますが、物語にのめり込むうちに自然と回収できるので、モヤモヤも残らずすっと繋がっていくのがなんともいい難易度で素晴らしい。

キャラクターも魅力的。主人公の水木は、根が真面目で優しさを捨てきれない苦労人なところがCV木内さんの好演もあって非常に良いし、飄々とした鬼太郎父とのタッグも最高の相性でした。腐った一族に囚われてるキャラ達もそれぞれバックボーンを考えるとまた沼が深そうで魅力的でした。もっともっと知りたくなる沼。

そして、今作の一番沼ったキャラ鬼太郎父。
鬼太郎作品には特に思い入れありませんでしたが、今回鬼太郎父(後の目玉おやじ)がメインとして活躍する姿を見て、まあ大好きになりました。愛でした。父から子への愛、夫婦愛、家族愛。
腐りきった一族の話がある一方で、鬼太郎父の生き物としての考え方がとても大人で優しく、深い愛で溢れていて、惚れるしかないキャラクターでした。見た目も抜群にオタクに刺さる。
本編のゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじはちょいキモのマスコットキャラクターと化してますが、なんとも深い、良いキャラクターな事が分かり大好きになりました。

PG12作品で、評判ではかなりエグイと聞いてましたが、グロさもエグさも個人的にはそこまで気分害するほどではなかったです。血が苦手な人は注意が必要です。

人気を得るための要らない楽曲コラボや、声優人気に媚びたキャスティングもなく、シンプルに作りたい伝えたいものをそれぞれのプロたちが制作し、磨かれ抜いた作品に感じました。
ゲゲゲ初心者でも充分に楽しめたし、なんなら昨今アニメで溢れる世の中ですが、作画も物語もメッセージ性も特段素晴らしい作品だったので、時間ある方はぜひ見て頂きたいです。非常にオススメです。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 15

57.6 3 ホラーアニメランキング3位
アラーニェの虫籠(アニメ映画)

2018年8月18日
★★★☆☆ 2.9 (25)
108人が棚に入れました
郊外の工場跡地に建つ巨大集合住宅。最近では、女子高生の変死体が発見され、不可解な心霊現象が目撃されるなど、いわくつきの噂が絶えない場所だった。ここに引っ越してきた18歳の女子大生りんは、ふとしたきっかけで怪異に見舞われる。死の呪いの恐怖におびえる彼女は、やがてこの建物の謎を探る民俗学者の時世や、呪術師の斉恩らとの出会いを通して、自らも怪異の正体に迫っていく。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

面白いが普通のサイコホラーかな?エンタメが不足かな。

 アマプラでリファイン版というのを見ました。内容の違いがあるかわかりません。本作も旧版も73分で時間は一緒でした。

 まずこの作品は「好きな子がめがねをわすれた」と関係ないのでしょうか?ヒロインもCGの雰囲気もそっくりです。が、本作は坂本サク氏という方が1人の人間が作ったとあります。関係があるのかないのか。

 先にちょっと気を付けて欲しいのはせっかくいい雰囲気で始まったのに花澤香菜さんの名前が黒地に白く大きくクレジットされます。ここでせっかくの没入感が現実に引き戻されてしまいます。

 細かい点ですが、洗面所でガラスのコップで薬を飲むのって米映画の影響ですよね?薬のビンも日本では見かけないタイプですし。このホラー的演出は陳腐かな、と思います。

 冒頭でこの2発が来たのでちょっと首をかしげたくなりますが、最後まで見て面白くなくはないです。ただ頭では面白いんですけど、若干映像や演出がありきたりで刺激が足りず飽きる場面はありました。

 で、本作ですがちょっとネタバレを含む感想です。というのは解釈しないと作品の中身の感想が言えないからです。ただ、その解釈を楽しむ作品なので見る気がある人はお気を付けください。

 ネタバレ考察 1回目視聴時

{netabare} この作品の大きな構造を解釈すると黒髪のJKの方のナスハが、同じマンションのリンちゃんを事件で殺してしまった。その結果2重人格になったということでしょうか。もしくはリンのイメージの格好をしているだけかもしれません。少なくとも虫が肌の上や皮下を這う妄想は統合失調症なのでしょう。

 というのは、ナスハじゃないと分からないはずの母親とのフラッシュバックがあるからです。首の傷も伏線なんでしょう。新築のマンションに越してきたナスハの母子が母が何かのきっかけでナスハを虐待するようになった。それでリンがうらやましくなったということでしょう。

 首が傾くは、自分の首の怪我の関係でどうしても傾けてしまうのか。心理的なものか。蛾というのは成長したい生まれ変わりたいという象徴の気もします。

 で、蛾と病気ですが、歴史上の記事・記録、民俗学者、マンションに本当に起きた事件なのかという点においてあいまいです。ただ、マンションの荒廃した様子からいって何かがあったのだとは思います。リンあるいは母が死んだ等の事故物件としてなのかどうかもわかりません。

 最後のシーンで生命反応的なものが全部ゼロになっています。これがナスハの心が死んでリンとして人格が統合されたという意味なのか、本当に死んでしまったのかが読み取れませんが、飾ってある花から言って実際に死んだのではないかと思います。

 ではなぜ死んだかというと、民族学者的な男が実は連続殺人犯で殺されたととるのがいいのでしょうか?ナスハが昔の事件の記事に触発されて殺人犯を犯していた。で、車にはねられただとちょっと読み過ぎかなという気もします。素直にとれば母親に刺されたということかもしれません。 {/netabare}

 という感じで短いシーンや細かな表現でヒントがあるのでは?と思わなくはないのですが、エンタメとしての面白みが若干足りないのでもう1回見て考察するのをどうしようかな、という気がします。
 昔の実験の表現が無ければもっとわかりやすかったんでしょうけど、1人の人が全部作ったということで多分その辺は計算しているんだとは思います。

 評価は映像は結構良かったです。声優さんはさすがの花澤香菜さんですが聞きなれた声なのでこういう映画に向いているかどうかはあります。音楽はまあ普通。ストーリーは考察は面白いですが、謎は普通のサイコホラー…に今のところ見えます。エンタメ度は不足です。なのでうーん、キャラ含めて3点…まあ3.5点でもいいかな、という感じでした。


 

投稿 : 2025/01/04
♥ : 8

Fanatic さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

原作・脚本・作画・音楽……監督が一人で手がけた劇場アニメ

アラーニエとは、女性と蜘蛛が混合した怪物のことで、アラクネの語源です。

何の予備知識もなく、タイトルが気になってなんとなく観始めたたら、クレジットでいきなり花澤香菜さんの文字が。
説明不要かとは思いますが、PSYCHO-PASSの常守朱や、ニセコイの小野寺小咲など、数多くの作品に出演していらっしゃる人気声優さんです。

タイトルから単なるB級ホラーかと思っていたのに、そんな一流どころを使うほどの大作だったの?とびっくりしましたが……。
内容は、B級ホラーでした。

後から調べて分かったことですが、この作品、監督の坂本サクさんが監督・原作・脚本・アニメーション・音楽を一人で手掛けられた劇場アニメだそうです。
劇場アニメにも関わらず、画面全体から滲み出ていたチープさはそのせいだったのか……と納得でしたが、一人でこれだけのアニメって作れるものなのかと、逆にびっくりもしました。

作画は3Dキャラと実写を組み合わせたような感じで、アニメ映画というよりは3Dホラーゲームのような印象を受けました。
キャラの表情が乏しいとか、手ブレ演出がくどいとか……前述した通り滲み出るチープ感は隠し切れませんが、お一人で制作されたことを思えば、逆に恐ろしいクオリティの高さです。

内容は、主人公のりんが不気味なマンションで怪異に襲われるお話。
舞台装置や全体の色調、雰囲気は、なんとなく「サイレントヒル」を思い起こさせます。

ストーリーは、正直、ほとんど分かりませんでした。
途中、斉恩(呪術師)のセリフの中に、設定的なものを端的に説明していた箇所がありましたので、そのまま書き起こしてみます。

「心霊蟲のいなくなった肉体が魄(はく)、
死ねない体となった肉体が死を求めて人を狩る。
最初は人の死の予兆が見えるようになる。
やがて首が傾き始め、体中の心霊蟲を追い出し、
意思を持たない死魄兵となる。
死魄兵は人工的に生み出された人形だ。
どこかに元凶となる人間がいる」

……だ、そうです。
って、それだけじゃ何のことやら分からないと思いますが、まあ、そんな感じの話です(笑)

中盤以降は、リアルとノンリアルの狭間で、暗示的・抽象的なカットを繋ぎ合わせたようなシーンが続きます。
難解な構成なので、一度観ただけでは正確な解に辿り着けそうにはありません。

説明臭くなる表現は意識的に削ぎ落とされているようですし、監督も「解釈は自由」と仰ってるので、観客それぞれが好き勝手に想像しながら観ることを前提に作られているのでしょう。

花澤さんの演技は良かったですが、ホラーとしての怖さは、まあまあかな?
物語として「おすすめ」とは言えませんが、一人でどこまで作れるのか……という興味だけでも、一見の価あるかもしれません。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 1

たナか さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

花澤香菜×Jホラー

個人制作ホラー映画アニメという尖った作品。
高密度高層住宅団地で繰り広げられるシチュエーション・スリラー。

キャラの魅力ガーwwww

ざーさんがナイス。アニメ声すぎて現代劇には向いてないがホラーだとリアリティのなさがかえって効いてる。ホラー映画のビビり演技のウザさが減るうえ、絶叫をやりすぎなくてもきちんと差分が生まれる。音響も悪くない。

キャラの作画は妥協なのか意図的なのか不明だがこれはこれで独特の雰囲気。画面は全体的に呪怨やリングなどのJホラーやホラーゲームのムービーみたいな絵作りで、アニメなのにもかかわらずホラー映画独特の不気味さを醸し出すことには成功していると思う。それなら実写でいいじゃんとなりそうだが、ホラーをアニメならではの表現に挑戦することに意義があるのでしょう。実写でこれやったらすげえ怖いというか虫モノをフォトリアルなCGでやったらあまりにもキモすぎる。

キャラ萌えは置いとくとして「わかる」ことが重要視される媒体のアニメでこれをやる勇気。というかこれ個人でなければできないわな。監督のネームバリューがない限りスポンサーが絶対つかないやつ。でも人間は「わからないもの」を怖がるのできちんとホラーの文脈で作劇するならその場で全部説明はできない。という意味でホラーとアニメはすこぶる相性が悪い。

そのうえ虚構と現実が入り混じり現在と過去が交差するという欧米実写映画さながらの複雑なプロット。あえて全部説明しないモヤモヤ系。男どもは丁寧にヒントをくれますが、いかにも重要キャラのようにこれみよがしに登場するくせにあっさり死ぬので毎回消化不良。流石に全員これだとオマエモカーという可笑しみさえあるが、そもそもりん以外は…。

ムシのキモさを押し出したキモグロスプラッタにはしたくなかったのでしょうが、バイオハザードみたいな要素が浮いてるのは残念。軍隊の生物兵器とかは擦られだが鉄板なので悪くはない。しかしアスリート並みのパワー・スピード・スタミナを兼ね備えているりんは昔運動部で身体能力抜群!みたいな方便くらいは欲しかったかな。

ちょっと欲張りすぎたかなあという印象。実写モヤモヤホラーの傑作「CUBE」や「プラットフォーム」のように一発ネタのシンプルなギミックで興味を引く作りならまだ見やすくなったとは思う。「結局あれはなんやねん」ってオチなのは変わらないけど。

巨大高層マンションの不気味さは出来てたし絵作りのセンスは感じられる。今のお絵描きAIの技術でやったらもっといいものができると思うのでまた挑戦して欲しい。

悪食的な怖いもの見たさ、もしくはざーさんファン以外は観なくていいかも。

投稿 : 2025/01/04
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