2024年度のヒューマンドラマおすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの2024年度のヒューマンドラマ成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年04月09日の時点で一番の2024年度のヒューマンドラマおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

72.0 1 2024年度のヒューマンドラマアニメランキング1位
忘却バッテリー(TVアニメ動画)

2024年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (167)
477人が棚に入れました
中学球界で名を馳せた完全無欠の剛腕投手・清峰葉流火、切れ者捕手の“智将”・要圭の怪物バッテリー。全国の強豪校からスカウトを受けていた彼らが進学したのは何故か野球無名校の東京都立小手指高校だった。さらに圭は記憶喪失で野球に関する知識も失っていた。 そしてかつて彼らに敗れ散り野球から遠ざかっていた天才たちも、偶然同じ高校に入学しており…。 巡り合い、再び動き出す彼らの高校野球ストーリーがいま始まる―!
ネタバレ

Witch さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

従来のスポ根モノよりは一歩引いた視点が面白さに繋がっている(心理描写が丁寧)

【レビューNo.139】(初回登録:2024/8/18)
コミック原作で2024年作品。全12話。
キャッチコピーは
「天才たちは出会ってしまった…!」
「気づいてしまった もう、逃げられない。」
などのようですね。


(ストーリー)
中学野球界で圧倒的な力を見せつけ、相手の心をへし折ってきた清峰葉流火・
要圭の天才バッテリーコンビ。
過去に対戦した山田太郎も野球を辞める決意をして、野球部のない小手指高校
に進学するが、そこで清峰と要に出会ってしまう。
・要が「記憶喪失」により野球素人になっていた
・清峰は”要と野球をすること”にしか興味がない
2人は強豪校の誘いを断り、同校に入学していたのだった。
同校ではちょうど野球同好会が発足したばかりで、清峰は再び要と野球を始め
るために山田を誘うのだった。
そして同校には同じように清峰と要に心をへし折られ、野球と決別した天才プ
レイヤーの藤堂葵と千早瞬平も入学しており・・・
出会ってしまった天才たちの時間が再び動き出す。


(評 価)
・終わってみればコメディは必要だった
 本作はこの手のスポーツモノでは珍しい、ギャグをどんどんぶっ込んでくる
 のコメディ色の強い作品になっています。
 最初は宮野守さん演じる要のハイテンションなギャグについていけず、昔読
 んだ漫画『泣くようぐいす』が頭をよぎりましたね(笑)
 (同じようなギャグ&結構シリアスな野球描写だが打ち切りにw)
 なので、最初は「こんなギャグいるんか?!」と。
 でもキャラの関係性が構築されてくると、山田あたりがギャグやボケをしっ
 かり拾ってくれるので(ギャグ自体は寒くでも)意外とコメディとして成立
 してくるんでよね。
 それに最終話をみると、
 {netabare}「要の『お調子者キャラ』は壮大な伏線だったのか!」
 と受け取ることもでき、なかなか侮れない作品ですね。
 (最後まで視聴すると「滑り芸的なものも狙ってやってたのか?!」という
  気もしてくるw){/netabare}


・野球作品としてはかなり面白い
 ストーリーとしては、弱小校にワケありの才能あふれる主人公が入学してき
 て、さらに才能あるプレイヤーを説得しながら、イチからチームを作り上げ
 ていくという王道展開ですね。
 清峰・要の天才バッテリーコンビに加え、藤堂と千早も性格やプレースタイ
 ル等キャラがしっかり確立しており
 「この4人が同じチームでプレイしたらどうなるんだ!」
 という期待感がハンパないんですよね。
 特に藤堂と千早については
 ・頑なに入部を拒む2人を説得~入部への流れ
 ・清峰と要に心をへし折られたのは実はきっかけのひとつで、野球を辞める
  ことになった本当の理由
 かなり掘り下げられるので、キャラがより魅力的に描かれていきますし。
 {netabare}また要も一時的に記憶が戻り「智将ムーブ」を発動してくれましたし。{/netabare}

 そして山田太郎という有能なサブキャラもポイント高いかなっと。
 主人公は清峰と要のバッテリーコンビらしいのですが
 ・清峰:唯我独尊で言葉足らずのコミュ障
 ・要:「記憶喪失」でアホの子
 ということで、山田が語り部を担っています。
 山田自身は地道に努力してそこそこの実力者ではあるものの、4人の天才に
 は及ばない、いわば普通の高校球児なんですよね。
 そんな彼の視点から天才たちを語っていくという構成は、なかなか上手いや
 り方だったのでは思います。
 また山田の温厚で常識人というキャラは
 ・上述の通りコメディ展開の有能なツッコミ役
 ・個性派揃いの天才の中でのバランサー役
 ・持ち前の安心感あるキャラで要所でのチームの支え役
  (チーム内の人望も勝ち取っている模様)
 4人の天才が悪くいえば投げっぱなしのキャラなので、そこを山田を使って
 上手くフォローしているという印象ですね。

 でも個人的に一番のお気に入りは、土屋和季の加入シーンかな。
 {netabare}内野はタレント揃いだが外野が弱い。で、メンバー探しですが・・・
 彼も4人のような天才ではないのですが足という武器を待っていて、そこに
 (守備範囲の広い)センターという重要なピースが埋まる瞬間が最高にテン
 ションが上がるんですよね。
 「何やこのチーム!めっちゃ面白そうやん!!」{/netabare}

 
・部活動への問題提起とタイトル「忘却」に込めた思い
 まあ「問題提起」はちょっと盛ってますが(笑)
 象徴的なのが土屋のエピソードですが
 {netabare}・中学時代、体育会系のノリや上下関係の厳しさに馴染めなかった
 ・また野球部を辞めたことで”根性なし”扱いされることになった
 ということで2Dの野球に失望して、3Dへ逃げ込んだ経緯があるんですよね。
 スポ根モノなら、強キャラ主人公がそいつらをぶっ飛ばしてスカッと展開に
 なるんでしょうが、現実はそうもいかないわけで・・・
 「厳しい規律と上下関係というシステム。そのせいで埋もれてしまった才能
  もたくさんあるかもしれないと」
 山田のモノローグがなかなかに染みますね。{/netabare}

 また要についても
 {netabare}・元々は今の調子者キャラだったが
 ・清峰を一流投手にするために、努力で「智将キャラ」に変貌
 ・しかし勝ち続けていく中で、自分を厳しく律してきた負担や心をへし折っ
  てきた相手への罪悪感からいつしか「野球が楽しい」と思えなくなった
 ・そんな心の反動が「記憶喪失」
  (正確には「解離性同一性障害による人格交代」らしいが)
 という感じで「勝利至上主義」へ一石を投じるような描写がみられるんです
 よね。
 この辺は少し深読みしすぎな気もしますが、最終話で『要圭』という人間が
 描かれた上で、タイトル「忘却」に込めた作者の思いとは・・・
 単に「記憶喪失」いう意味だけでなく、「過去からの解放」といったものが
 含まれているのかもしれません。
 本作でも最後に
 「もし一つだけ何かを忘れられるとしたら、俺は・・・」
 で含みを持たせていますし。
 今後この辺りも明かされていくのでしょうか。

 「記憶喪失」によりお調子者で野球素人になってしまった要ですが、皆でイ
 チから野球に取り組んでいる姿はノビノビしていて、過去との対比を意識し
 ているようにも感じますね。{/netabare}


そんな感じで、
・序盤のギャグ展開は合わずに眉を顰めていたが
・イチからチームが出来上がっていくワクワク感
・キャラ同士の深まる関係性
・原作者の描きたいテーマ性
回を追うごとに積み重ねが生まれ、面白さが増していく作品なのかなっと。
今期では練習試合まででしたが、今後このチームが公式戦でどこまでいけるの
か純粋にみてみたいと思いますし。

原作者は女性の方のようですが、(男性目線の)従来のスポ根モノよりは一歩
引いた視点から描いてる感じが、独自の面白さに繋がっている感じがしますね。
(山田の語り部や独自性のある丁寧な心理描写が印象的だったかな)

OP「ライラック/Mrs. GREEN APPLE」
ED「忘レナ唄/マカロニえんぴつ」
・こういう方々がこぞって参戦しているのをみると、アニソンという分野も
 レッドオーシャン化しているのをつくづく感じますね。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 23
ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

野球初心者から経験者まで

みかわ絵子による原作漫画は、『少年ジャンプ+』(集英社)で連載中(既刊18巻、原作未読)。
アニメは、全12話(2024年)。監督は中園真登。制作は、『呪術廻戦』、『ダンス・ダンス・ダンスール』などのMAPPA。
(2024.8.10投稿)

野球経験者なので野球アニメにうるさいといえばうるさいのですが(笑)、とりあえず評判が良かったので観始める。


【あらすじ】
主人公は、シニアリーグ(中学硬式野球)で圧倒的な才能を見せ、多くの有望な中学生選手たちのプライドをへし折ってきた天才バッテリーの清峰葉流火(きよみねはるか:CV.増田俊樹)と要圭(かなめけい:CV.宮野真守)の二人。

彼らの圧倒的な才能を目の当たりにした山田太郎(CV.梶裕貴)は、自らの才能の限界を感じて野球を辞める決意をし、野球部のない都立小手指(こてさし)高校に進学。しかし、そこでいるはずのない野球エリートたちと再会することに。

事故による記憶喪失により野球素人となってしまった捕手・要。幼馴染の要にくっついてきた投手・清峰。そして、太郎と同様に清峰・要バッテリーに心をへし折られ、それぞれの事情から野球を辞める決意をした遊撃手・藤堂葵(CV.阿座上洋平)と二塁手・千早瞬平(CV.島崎信長)。

出会うはずのない場所で出会ってしまった天才たちは、発足したばかりの野球部に入って甲子園を目指すことに…


もっとも、本作では、ようやくメンバーを揃えて練習試合をするところまでなので、本格的には続編に期待といったところ。


【要圭は宮野真守ありきのキャラクター】
主人公の要圭は、「宮野真守ありきのキャラクター」といってもいいくらいのはまり役(※作中でも中の人が顔出しで登場(笑))。

要(かなめ)は、シニアリーグ時代、冷静沈着な智将としてカリスマ性もあったのに、記憶喪失により野球に関する知識と興味だけ失って本来のお調子者キャラに(※あまりにも都合のよすぎる記憶喪失に疑問があったのですが、本当は、{netabare}記憶喪失ではなく、解離性同一性障害、いわゆる「多重人格」。{/netabare})

もっとも、要は、話数が進むと、{netabare}一時的に記憶を取り戻します(※本当は智将キャラに人格交代)。{/netabare}

「お調子者」キャラでは、一発ギャグで「パイ毛」(※乳首に生える毛)と堂々と言ってのけるコミカルな演技をみせるかと思えば、「智将」キャラでは、『銀河英雄伝説』のラインハルトのようなシリアスな演技をみせる。

その幅広い演技は、同じように幅広い演技で定評のある神谷明さんのあとを継いで『キン肉マン』の声優を射止めたのも納得です。


【野球初心者から経験者まで】
こんな宮野さんのコミカルな演技と、まずは野球部のメンバー集めから始まるので、特に序盤(5話まで)は、ゴリゴリの野球アニメというよりかは、学園モノなのでとっつきやすいかも。

また、要が記憶喪失で野球素人になってしまっているので、野球の基礎的な用語の説明なんかもしてくれます。

もっとも、坊主頭の強制など悪しき因習が未だに色濃く残る野球部に馴染めない問題、極度の緊張や精神的なプレッシャーが原因となって筋肉がこわばって体が思うように動かなくなってしまう「イップス」の問題なんかにも真面目に触れていて、野球経験者として好印象でした。

さて、肝心の野球のプレイシーンですが、主人公のチームにド素人が混じっているので、全般的ではなく部分的に緊迫感がある感じ。両チームの実力者同士の対決は、駆け引き含めてきちんと描かれています。

ただ、全体的にはよく動いているのですが、CGのせいなのか細かい動きに「硬さ」が感じられ(例えば、球をリリースするときの指の動きや、投球する際の腕の動きなどに柔らかさを感じない)、経験者的には実際の動きとの間に若干違和感があります。


というわけで、概ね野球初心者から経験者まで観ることができる内容になっていると思います。


【魅力的なキャラクター】
あとは、かっこいいキャラクターが多いので、キャラ人気が出そう。

しかも、ただ単にかっこいいだけではなくて、要はコミカルな面、清峰はコミュニケーション下手、藤堂はヤンキーキャラだけど繊細、千早はそつなくなんでもこなしているようで実は悩んでいたりと、それぞれギャップあり。

ただ、山田太郎といえば故水島新司先生の不朽の野球漫画『ドカベン』の主人公と同姓同名なのですが、本作の山田太郎は、体格は小柄で才能はそこそこ、清峰、要、藤堂、千早の4人の天才を冷静に俯瞰する狂言回し的な役回りとなってます。


【音楽】
オープニングは、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」
エンディングは、マカロニえんぴつの「忘レナ唄」

本作と同じような軽快な感じ

投稿 : 2025/04/05
♥ : 6

鬼戦車 t89 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

広い世代にウケるものを制作するのは難しい様で…。

 最終話(12話)まで観ました。2024.07.03

 結局、主人公は野球と言う呪いに囚われていたんですねぇ…。ラストは何となく不穏な感じで締めました。

 最強バッテリーが他の選手を殺す(実力差を見せつけて野球の夢を潰す)のがテーマですが、実際の野球選手は脳筋で自分を客観視出来ない集団なので、そんなに気にすることあるのかな?

 日本のプロ選手を見ていると、絶対にメジャーで通用しないだろ?と素人でも分かる様な選手がメジャーに挑戦して、やっぱり活躍出来ずに逃げ帰って来ます。

 野球はサッカーとかより個人スポーツで、個人データが全てなのに、なぜメジャーへ行く?

 筒香選手なんかも、速球に弱いと言われていたのに、日本より速い球をガンガン投げてくる投手がめちゃくちゃたくさんいるメジャーでどうして通用すると思ったのか?

 データが全ての野球で、しかもプロですらこの有り様なのに、シニア程度の話でそんなに他選手の夢を喰えるか?アマの野球選手なんて実力差すら認識出来ないじゃないの?

 なんつーか、色々疑問でしたが、ボロが出る前に綺麗に終わって良かったと思います。野球界の闇は深いで!
………………………………………………………………………

 8話まで観ました。2024.06.08

 原作漫画既読です。原作は野球を揶揄したギャグ漫画ですが、アニメはスポ根路線にする様です。これは正しい改変の様な気がします。

 野球…それは昭和の悪い部分を煮詰めた様なスポーツです。軍隊式の組織、意味の無いシゴキ、途中で部活を脱落しようものなら、玉無しの落伍者として学生生活は終わり…。女子生徒にも嘲笑され続けます。

 弱小チームでも人格の陶冶のためにシゴかれるという、今ならブラック部活の典型みたいな地獄が各地で展開されていました。

 それでも、昭和世代にとって、スポーツの選択肢は、ほぼ野球しかありませんでした。なんだかんだ言って野球が好きなのです。

 もう、2度と野球はやりたくないないけれど、血の汗を流したあの頃を馬鹿にされるのは許せない…。若い子には親父達のノスタルジーは理解出来ないでしょう。

 アストロ球団に登場した、巨人軍に恨みを持つ選手で構成されたブラック球団みたいなもんで、「親父は巨人軍にか◯わにされたー!」とか言って、殺人野球を仕掛けてくるけど、一応野球で復讐するという…。

 多分、原作のママだと、野球に対してアンビバレントな感情を持った旧世代には受け入れられないという判断なんでしょう。

 原作のケレン味は後退していますが、何とか昭和世代の視聴に耐えるアニメになっております。虎の尾を踏まない様にするのは大変ですね。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 3

66.4 2 2024年度のヒューマンドラマアニメランキング2位
ネガポジアングラー(TVアニメ動画)

2024年秋アニメ
★★★★☆ 3.4 (103)
249人が棚に入れました
多額の借金を抱え、さらに医者から余命2年を宣告された大学生、佐々木常宏。 鬱々とした日々を過ごす常宏は、ある日借金取りに追われ海に転落したところを、釣り好きの少女ハナとその釣り仲間の貴明たちに助けられる。 ハナに勧められるまま人生初の釣りを経験し、その釣り仲間とも親交を深める常宏。 ハナや貴明の働くコンビニでバイトも始め、難解な釣り用語や生アミの匂いに苦戦しながらも、徐々に釣りにハマっていく。 手元に伝わるアタリは、生の実感――。 転落し続け世界を見上げるだけの人生は、そう簡単に変わらない。 そんな常宏が釣りを通して見つけたものとは……?
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

メッセージはいいんですけど、キャラに入り込めない感じがもったいなかった。

 うーん、メッセージは伝わります。私が考えていたメッセージとはちょっと違いましたが。人生の幸福を時間の長さで計るな、という「妻、小学生なる」のメッセージが強烈だっただけに、本作の結末は、ちょっと物足りないかもしれません。

 ほっとするし、さわやかな気分も感じましたので、視聴後感は悪くないんですけど、後から余韻を味わう何かを自ら放棄してしまった感じもします。安易な結末と言えば安易な結末、転落するに身を任せるよりも自分の運命の中で上を見れば何かが見えてくるという点を描けていたと言えばそうとも取れます。

 釣りと人生…チグハグな描き方ではなかったですが、彼の病気や借金の設定をもう少しご都合主義ではない何かにできなかったのでしょうか。転落を象徴しただけで物語に上手く絡んできません。
 また、躑躅森の弟と家庭の話、何よりもハナの活かし方ですよね。どこか中途半端です。サブキャラの深堀りをしている話があるなら、こっちをもう2、3話使って上手く構成できなかったのか。

 ただ、ちゃんと咀嚼して解釈すると違う考え方もできます。死を安易に扱わなかった。躑躅森の過去に常守のバッドエンドのIFを重ねられた。ハナは釣りをとことん楽しむ少女と言う人生のお手本にもなっています。だから、恋愛とか彼女の家族関係を深掘りせず少し距離があるところから描いたので、かえって常守からの視点と視聴者の視点を重ねられたのか。さまざまなキャラの生き方を見せることで、人生に正解はないというメッセージにもなっています。借金も人生はお金じゃないよ、と。これらを説明ではなく物語で描けた点は、なかなかレベルが高いと思います。

 つまり、メッセージ、脚本、結末、構成は決してご都合主義、安易、短絡的とはいえません。むしろ、このご時世に必要な大学生で人生に絶望した特に少年(青年)に必要な話だったのかもしれません。釣りに仮託して「死」ではなく「生」を扱った作品とも言えます。

 うーん、迷いますね。結果的に12話を見ると何が描きたかったのか見えてきますし、その内容は良いと思います。一方で11話までモヤモヤしたので決してシーズン通じて楽しめたかというとそうでもなかったので。その点ではシリーズ構成とキャラの使い方に難はあったのかも。エンタメ不足ということではなく、ちぐはぐな感じが常にしたからです。だから、感情移入という点で少し作品と距離感が生まれてしまい、出来の良さが味わえませんでした。


 
1話 釣りに人生を仮託して何かを語れるのか。感動ポルノで終わるのか。

{netabare}  死の意味を釣りと釣り仲間に仮託して、どれだけ描けるかにかかっているでしょうね。私は死が結末=泣かすだけなら感動ポルノ、人生や死生観、人とのつながりなどの意味を考えさせるなら物語だと思っています。

 感動ポルノでもいい作品はありますが、基本的に浅い作品が多いし余韻がなく一過性です。つまり、泣いておしまいです。「泣ける話」=名作と定義する人もいますので人それぞれだとは思います。私はそれがどんな号泣だったとしても、あまり高く評価はしないです。
 もし、主人公その他の人物の死が、見ている側の人生について考えるヒントになるなら、それは「物語」でしょう。

 本作は淡々とした雰囲気の中で、しかも男でクズ主人公です。泣かすだけならもっといいひと美少女を主人公にするでしょう。そして仲間ももっとエモく設定するでしょう。そこに期待があります。彼の人生の意味について余韻が残るような結末を見せてほしいなあと思います。
 そして、それが他人事じゃなくて、人間の死は彼の2年=一般の余命(最長100年)の差でしかないからですね。普遍性があればもっといいです。

 オリジナル作品でわざわざこれを始める以上は、何かを見せてほしいです。その期待は持てるスタートでした。ぜひ、単なる泣いて終わりにならないようにお願いします。 {/netabare}


2話 ネガとポジは画像の反転ですね。釣り=人生ならコスパへのアンチテーゼかな?

{netabare} ネガ、ポジとは昔のフィルム式カメラのフィルムを現像したモノです。ネガは印画紙に投影して感光させる元で色が反転しています。ポジはスライドなどで投影する元で色は自然な色をしています。そして、もちろんネガティブ、ポジティブの事でもあります。アングラーは釣り人の事です。また、カメラ用語だとするとアングルは角度ですね。

 本作において主人公は意味がないとぼやきます。これはコスパタイパ意識の強い現代の若者のカリカチュアでしょう。また、生死の境に彼はいます。キャラ造形としては「チェンソーマン」のデンジに状況は似ています。

 題名と「意味がない」というぼやきの若者、そして生死の話に釣りが絡んできますから、そして見方の反転の問題ネガ、ポジが出てきます。人生を語るなら、人生を意味のあるものにするかどうかは心の持ちよう、世間の見方という話になるのではないでしょうか。釣りも魚を喰うだけならスーパーで買った方が安いですからね。しかし、やる事に意味があるならそれは意味がある。

 2話まで見るとそういう話になるのではないかと思います。テーマは凡庸ですが、ドラマによっては深く心を揺さぶられる可能性もありそうです。{/netabare}


3話 主人公は現代の問題点の縮図ですね。少子化の原因そのままでしょう。

{netabare} 今のネットで氾濫している他責のコメントをそのままキャラにしたような主人公ですね。非常にムカつくし、見ていて勝手に死ねばと思わなくはないです。それ故にこの作品の言いたいことは、この主人公が変わってゆく物語なんだろうなと思います。

 志望大学に行ける頭がなければ働けばいいだけの話です。FXに手を出せば破滅しかないです。他人と同じでなければ幸せを感じられない、生まれと運のせいにする感覚、そして努力をしていないのに頑張っていると言う認識、安易な解決手段。自分で自分を不幸にすることに熱心なようにしか見えません。

 悲惨すぎて目もあてられませんが、しかし、これが今の若者どころか社会全体の感覚だとすれば、そりゃあ停滞感しかないでしょう。
 こんな価値観の人間なら究極の利他である育児や妻を支えるなどできるわけはないです。少子化の原因をそのまま絵にかいて形にしたような主人公です。


 ただ、母親がどうも毒親っぽい雰囲気もあります。その点でいえば、バブルの恩恵はあずかれなかったけど、金と見栄えに翻弄された世代の被害者とも言えなくはないです。
 他人と同じでないと不幸。金が無いと不幸。格差や出自でスタートが違うのが許せない。人間社会の当たり前を当たり前でないと教育したせいかもしれません。
 ただそれは社会を俯瞰した世代論であって、個人個人は考え方でなんとでもなります。

「釣り」でもなんでもいいですけど、生きている意味は自分で見つけるしかありません。そして、逆に言えば、幸福論を極論すれば生きる意味を日々の何かの中に見つけられる人が幸福な人となります。
ただし、先ほどもいいましたが、利他ですよね。あるいは人とのつながりです。これがなくて、個人だけで生きる意味があるのか。「釣り」なのか「釣り仲間」なのか。
 今季の「結婚するって本当ですか」のヒロインにも同じテーマを感じています。「結婚…」の方がテーマは狭いですけどね。そこがどう展開するかでしょう。


 そして、その問いをしながら生きているのが躑躅森でしょう。過去に何かあったんでしょう。その何かを取り戻す物語になるのだと思います。

 正直、見ていて面白いかと言われるとエンタメとしてはそうでもないです。ですが、このオリジナルアニメを企画して、このメッセージを発しようという企画は大変興味深いです。どうやって展開するんでしょうか。{/netabare}


4話 ハナの日常に溶け込んだ釣りの描写がとても良かった。

{netabare} ヒロインのハナちゃんの生活を見ると好きな事に全集中ですね。こういう生き方だと貧しいとか金持ちとか関係ない気がします。彼女の生活パタンを淡々と見せるシーンに結構感動しました…が、設定が金持ちばあさんの孫というのが、ちょっと「持てるものの余裕」という気がしなくはないのがノイズかもしれません。ただ、そこはあまりこだわりすぎるのも良くなさそうです。家族の問題もあるようですし、彼女の性格造形はそこじゃない気がします。

 もちろん、ハナにとっては釣りがすべてです。釣りのシーンは細かい用語は出てくるものの体系的ではありません。しかし、雰囲気はいいですね。釣りが日常になっている人々をよく表していました。全体的に生きる意味という大上段のテーマではなく、幸福論のような気がします。日々をどうやって生きるか。その一つの形としてハナの描写が性格造形も含めて面白い回でした。{/netabare}


5話 男の趣味あるある。とりあえず最高級ギアから入る。

{netabare} 成果がでないとつまらない、成果がでると面白くなる。成功体験という奴ですね。そして、可愛い女子は大きなモチベーションになります。この辺は男の特徴でしたね。そして、道具ですよね、道具。どんな趣味でも男はギア(道具一式。単品はツールですが誤用が転じてギアも単品の意味で使う例も見かける)から入ります。それも最高級ギアを知ってしまうと、欲しくて欲しくて眠れなくなります。カタログや情報を集め、数日後には手元に金があれば買ってしまっています。

 ゴルフ、釣り、キャンプ、サバゲー…いろんな趣味がありますが、男はとりあえず最高級ギアです。「ゆるキャン△」とかで女子たちが少しづつ道具をそろえていったのと対照的です。
 男は釣果で、女子はとりあえず食事のメニューという部分は男女の思考方法の差ですね。

 ということで今回は男の趣味あるあるでした。釣りアニメらしくなってきましたが、余命2年はどこに行ったの?という気もします。{/netabare}


6話 タイのモデルのお姉さんがエロくないのはかなり意図的な気がします。

{netabare} さて、本題らしき展開でしたね。2年間の過ごし方として好きな事をやる、そして、その2年は自分だけのものではなく周囲の人間にとってはどういう意味になるのか。タイ釣りになにか意味性があるかわかりません。タイとタイを引っかけただけかもしれません。

 ですが、皆で釣りに行く、その釣果で皆がお祝いをしてくれる、その釣り仲間ができたことから感じられるものはもちろんあります。嫌いなはずのパクチーへも挑戦しました。タイという南国の人をあえて持ってきたのも意味はあるでしょう。何もなくても生きようと思えば生きられるような意味も含んでいました。
 この調子で最期まで淡々といってもいいし、何かドラマがあってもいい気がします。

 それにしてもタイ人でモデルであるアイスの造形は本来ならかなりの美女だと思いますが、彼女だけカートゥン的なのは、本作からエロを排除したかったんだろうな、という気がします。5話のこずえはちょっと煽情的でしたけどね。モデル設定や声優さんの演技、アイスの弟の造形を見てもそれはかなりこだわった意図でしょうね。

 ということで、6話まできましたがちょっとずつ面白さが増している気がします。アニメ的な面白さという点で損をする可能性がある内容ですが、100ワニではないですが感じるものがある作品です。{/netabare}


7話 主人公が病気なんですよね?あまりに無関心でトリックを疑いますが…

{netabare} 無駄に死を意識した話にする必要はありませんが、余命2年の若者の描き方としてそろそろ違和感を感じてきました。普通治療しますが…それが勘違いとか親の事ペットの事でした…ではないんですよね?自分が病気だって明言していない気もしてましたが確認するのは面倒なのでしていません。

 冒頭の病院のシーンの感じだと若干仕掛けをしたような印象もありますが、そういうトリックを弄するなら最悪の話になってしまいますので、さすがにそれはやらないでしょう。というか、そこは制作は裏切らないですよね?

 とはいっても、釣りに惹かれて主人公が現実から逃げるという表現かとも思っていましたが、ちょっと不自然だよなあという気もするので、そろそろ病気と向き合う場面もないと不安になってきました。

 釣りの話にはなってきました。知らないことは調べる、前準備が大事。それはわかりますし、普通の釣りの話なら面白いしためになると思いますが、余命2年の使い方に違和感がでてきました。そうそう、夢落ちとか幽霊とかでもないんですよね?{/netabare}


8話 群像劇なら看板に偽りあり。主人公が死と向き合う物語じゃないの?

{netabare} うーん、主人公の生死と向き合うテーマがもうちょっとあると思ったんですけど、期待と違いました。1エピドード1エピソードでサブキャラの掘り下げっていう手法は、もういい加減にしてほしいなあという気がします。

 アイドルものからなのか知りませんが、このキャラ深掘り手法のせいで、作品のテーマやメッセージを大きな物語を描く脚本力が無くなってしまった気がします。グループ全体の複数キャラが主人公という構造の物語ならそれでもわかりますが、本作のような明確な主人公がいるならそれは違うでしょう。

 あるいはそういう群像劇の中に主人公が自分の生きる意味を考えるならいいですけど。そもそも、はじめから釣りの群像劇でいろんな人の釣り人生を見せるというならそういう話で初めればいいと思います。

 この後、主人公の話に戻ったとしても、どうひねくっても感動ポルノで終わる気もします。それは少しでもいいからエピソードに死と向き合う態度が見られないからです。どう考えても説明くさいテンプレの感動にせざるを得ません。

 細切れのエピソードの果てに死の問題が唐突に訪れる感動ポルノエンドとかそもそも余命2年が勘違いエンドとか絶対やめてほしいです。せめて9話からはもうその問題に入らないと…{/netabare}


9話 多分期待外れの予感がしています。ここまで見たら最後まで見ますけどね。

{netabare} モデルのお姉さんを一応頭身高くして美人っぽく描くようになったんですね。今回気が付いたので、何話か前からそうなっていたのかもしれません。

 それはいいとして、金貸しの人たちの意味深な感じですけど、それがこの物語の収束の伏線なんだとは思います。今回、何かツネヒロの良い思い出的な回想も入りましたし。
 ただ、もう9話なんですよね。いままでの1話1話に意味があるのかどうかです。なんとなく4話で終わる話を引き延ばしたような脚本になる気がします。思い出に意味がないとはいいませんけど、その思い出がツネヒロの生死感に寄与しているかどうか。寄与していたとしても、言葉だけで終わらないか。セリフだけで泣かせようというなら、それを感動ポルノといいます。

 ここまで来たら、最後まで見ますけどね。期待値がかなり下がりましたね。{/netabare}


11話 釣りと人生の対比をどう活かすのかが今のところ見えません。

 多分あと1話ですよね。彼の病気は本当の様でその点は変な仕掛けがなくてよかったです。彼の死を望んでいるわけではないですが、物語としての問題で死に向き合う描写が欲しいと思います。

 で、釣りと人生。この対比が上手くいっているか、ですね。コミュニティに参加することで彼の人生が最期で豊かになるなら幸いですが、作品としてその構造が活きていたか。そこが最終話になってくると思います。ヒロインと思われたハナが全くキャラとして活躍できませんでしたが、そこがどうなるのか。まあ、何をやってもセリフだけの付け焼刃にはなるでしょうけど。そこを上手くまとめてほしいなあ、と切に思います。

 

 

投稿 : 2025/04/05
♥ : 10
ネタバレ

てぶくろ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

差別化は大事だけど…。

 {netabare} 釣りアニメといえば自然の中でのびのびと青春をテーマにした作品がパッと思いつきますが、本作品は東京湾沿岸を舞台とした本格的な趣味としての釣りが描かれていてなかなか興味深かったです。
 
 全体通してそこそこ楽しめはしましたが、正直なところ 本PVを視聴した際の期待値のハードルは越えてこなかったな という印象です。

 本作品の見どころとして、人生どん底で人間関係にも消極的な主人公・佐々木 常宏が釣りを通じて仲間と出会い成長していくドラマに引き込まれる、と紹介されています。
 確かに常宏は釣りを通じて人と出会い他人の考えに触れはしましたが、それを自分の中で消化し反芻して成長に繋げそれがドラマになっていたかというと疑問が残ります。
 貴重な前半三話を使って 常宏 の人となりを紹介したものの 深掘りする程のキャラじゃないな と感じた気持ちを覆してはくれませんでした。
 
 ぶっちゃけ、この作品に 生と死 というテーマのヒューマンドラマが必要だったとは思えません。
 常宏の 余命2年を宣告されている という設定は冒頭にインパクトを出すためとオチをつけるためだけの舞台装置でしかありませんでした。

 ですので、純粋な釣りアニメとして見るにはヒューマンドラマの部分が不要に感じますし、釣りを通したヒューマンドラマのアニメとして見るにはエピソードが表面的すぎて弱い。(どうせなら、本当に常宏は2年後に死んだ くらいの裏切りがあってもいいのに)

 なんというか…他の釣りアニメとの差別化を図るために取ってつけた感が凄いんですよね…。
 女の子で青春が多いから、男の友情でヒューマンドラマっていう感じで…。

 だったら、ネガティブな大学生 常宏 とエブリマートの釣り好きな変人たちとの交流を描いた日常モノで良かったし、なんだったら女の子主人公でハナちゃんとのやり取りを主軸に置いてくれても良かった気がします。

 エンディングの空気感がもっと作中に盛り込まれていたならきっと印象はもう少し変わったと思います。
 

          {/netabare}

投稿 : 2025/04/05
♥ : 3

たナか さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ガチ寄り釣りアニメ

アングラー=釣り人
真面目に釣りアニメをするぽい雰囲気

CG釣り描写は美麗でリアル寄りだが、キャラは昭和まんが等身混在のカオス時空で美少女アニメではない作り。こっっちは真面目に作ってんだよ、絶対に性的消費などさせてなるものか、という矜持を感じる。サクサクご都合展開の嫌味を昭和まんがキャラでリアリティラインをぼかしつつ、実は真面目な人間ドラマをやりたい雰囲気。釣りモチーフは啓蒙ではなく、アニメ濫造時代の競合対策カブリ回避の意味合いのほうが強そう。

02
強引な進め方が気にならないレベルには面白い

ひたすら主人公サゲなのはまずはイケメンの株を上げるためか。ここまでやればイケメンアレルギーでも拒否反応が出ないくらいに、派手髪タレ目長身イケメンの嫌味は消えるはず。男からみてもめちゃくちゃいいやつ。釣りプロになる話でもないので成長譚のカタルシスの伸び代確保のためには好感度の初期値を低めに設定するのはしゃーないか。

すでに出来上がってるグループに新規参入する際の、お互いに腹を探りつつ距離を縮めていくこの感じ。いいですねー。若き青春時代を思い返します。モチーフも素人の趣味釣りと地味目。ビックリドッキリエログロちゃぶ台返しで伏線‼️神‼️とか美少女萌えのような深夜アニメでもないしキラキラメルヘンニチアサでもない作風は、今の時代だからこそ可能になった企画かな。でも一応萌えキャラっぽい清楚系女子も置いとく優しさもある隙の無さ。

アクスタ広告動画やシノギなろうとは違う真面目さだがアニメの楽しさもきちんとある。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 1

68.1 3 2024年度のヒューマンドラマアニメランキング3位
機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(TVアニメ動画)

2024年秋アニメ
★★★★☆ 3.5 (27)
117人が棚に入れました
宇宙世紀0079年、ジオン公国は地球連邦政府からの独立を宣言し戦争状態に突入した。新兵器モビルスーツの活躍により序盤こそ優位を保ったジオン軍だったが、地球の全面制圧を行う戦力はなく戦況は膠着する。そして開戦から11ヶ月後、東欧のジオン軍占領下にある基地の一つが連邦軍に奪取される。その奪還に向かう混成大隊の中に、宇宙から降りてきたばかりのモビルスーツ小隊、ソラリたちレッド・ウルフ隊の姿もあった――

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.1

テーマ・キャラ・話のどれも評価できず。演技が致命的でした。

 CG表現に期待して見ましたが、動き(演技)に人間、モビルスーツのどちらもかなり違和感を感じます。リアリティは全く感じませんでした。切り取られた写真のように鑑賞してCGすごいならわかります。

 ファーストガンダムは結構作画ひどいですけど、ランバラル・ハモンとアムロが酒場で出会うシーンは動きは少ないけどものすごいリアリティを感じました。ミハルが空に散るシーンは止め絵です。それでもひどく感情を動かされます。演技・演出の効果だと思いますが、本作はそれがまったくできていません。

 例えばですけど、文楽の人形そのものは人間には見えませんが、その動きに我々は人間を見ます。その延長にあるのがリミテッドアニメで記号ではありますが、受け手個々人の中にある体験・経験・知識により立派に生きている人間に見えます。演出によってそれが見事にできています。
 その全く逆を本作はやっている感じです。大げさな演技というか余計な動きが非人間的非モビルスーツ的でそっちがノイズで物語そのものは楽しめません。

 また、話の内容もスケールが小さく「スターウォーズローグワン」で感じた、何を見せられたんだろう?という気持ちになりました。裏の歴史的なものって、やっぱりメインキャラ、正史とはずれた部分なので大きな物語を作るのが難しい部分です。

 それを言うなら08小隊、0080、0083もそうですけどね。そう、この3作の宇宙世紀としての大きな物語としての無意味さにちょっと近いものを感じました。ただ、これらのOVAはエピソード、アニメのクオリティでは相当なレベルです。本作はエピソードとしてもクオリティとしても弱いなあと思います。

 テーマですが…例えばモビルスーツの恐怖で言えば、「ハサウェイ」のホテルが襲われるシーンの方がモビルスーツの暴力・理不尽さを短時間で表していたかなあ。

 それと、ニュータイプの扱いが中途半端すぎて、どうでも良かった気がします。中途半端なヒューマンドラマのためでしょうか。

 しかも「スターウォーズローグワン」はキャラのバラエティで見られましたが、本作はキャラがステレオタイプすぎでしょう。それこそヒロインはハリウッド的女性兵士のステレオタイプでしかありません。そして、本作のサブキャラは噴飯ものでひどいです。女性の性格悪そうな奴とかなんのために描いたのか全く理解できません。

「ハサウェイ」のギギと本作のヒロインのどっちのバックグラウンドに深みを感じるかと言われると、圧倒的にギギです。セリフの一つ一つを味わおうという気になるキャラでした。本作はセリフを言い散らかしているだけに聞こえました。たった1作の中途半端な映画であるハサウェイに完全に負けている気がしました。
 
 要するにCG表現、演技・動き、テーマ、大きなガンダムストーリーとしての位置づけ、キャラ…どれをとってもスピンオフの意味が希薄すぎます。IPを使いたかっただけにしか見せません。まあ、正味2時間程度なので時間の無駄とは言いませんが、評価はかなり低くせざるを得ません。

 演技・演出をCGに含めて売りであろう作画にも2をつけます。音楽はよくわかりませんので3のデフォルト。声優は演技がうるさく優秀な戦士としての気迫が感じられませんので、2.5。ストーリー・キャラは上記の理由で1.5とします。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 4

たナか さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

インヴェイダーズ・ナイトメア

ネトフリ製ジオン視点のガンダム各話35分全6話

世界観こそ完璧なまでのガンダムワールドだが、お話的には戦場を舞台にしたパニックホラースラッシャームービーと言っていい。ジオン陣営を軽々と蹂躙していくガンダムがマジで怖い。ジオンは侵攻側なので乏しい資源をやりくりしつつ頑張ってるが、連邦の白い悪魔はひょいっと単騎でやってきては無双アンド無双。目の前で展開される無慈悲な虐殺ショーになすすべもないジオン兵。

撃たれる前にかわす超反応。瞬時に距離を詰める超機動。射程外から貫通するビームライフル。サクサクと機体を刻むビームサーベル。ええい!連邦の〜とか言ってる場合じゃない。一般兵は見たら死ぬ。まさに悪魔。

リアル寄りのCGだがメインキャラはわかりやすいデザイン。軽口を叩く兵士たちによる超人のいない世界観は一般的な戦争映画っぽいノリ。しかし途中で出てくるいかにもマンガっぽいやつがマンガっぽい作戦を指示するのでやや興醒め。クズ上司はずっとクズなのでカタルシスも弱め。ネタバレは控えるがアメリカ戦争映画のラストのように男女がキスしてUSA!USA!にはならないので安心してください。

モビルスーツがカッコよければ良かろうなのだ!

最新機のちょうつよいガンダムに劣勢ながらも現地即席改修機体で足掻くロマンとカタルシス。みんなだいすきグフカスちょーかっけえ。やたらと異次元なガンダムを除いて、ザクやグフはゲームみたいにピョンピョンし過ぎず、かといってアクションを楽しめる程度には鈍重過ぎない調整で画面映えするファンタジーバランス。そもそも兵器が人型である必要ガーなひとはこんなの観てはいけない。

ミリタリー萌えの御仁にはご褒美でしかない映像美。マゼラアタックやザクタンクやガンタンクなどのモビルアーマーはもちろん、AFVは当然としてトラックや輸送車なんかの軍用車両もいちいちカッコいい。眼福。しかし人物のCGは正直もっと頑張って欲しかった。不意に出てきたモロ実写の手で笑う。

幽白は絶望的だがこれは続編作って欲しい。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 3

lumy さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

英語学習用3【役立ち度★★★☆☆】

ガンダムはにわかなので、詳しい設定は知りません。
でも、本作のPVはすごかったので、
本編を観たら、あっという間に6話を観終わりました。

とにかく、映像がやばい。
ほぼ映画クオリティで作成された3D映像は、
ネトフリの潤沢な資金供給がなせる業でしょう。
特に、モビルスーツの動きがいい。
宇宙ではなく地球が戦闘の舞台なので、
重力がある状態でのモビルスーツの動きに
こだわりを感じました。

本作を観ていると、パシフィックリム1を思い出しました。
アニメ的じゃなくて、真面目にロボット工学を考えると
この辺りが説得力のある稼働だよね思わせる点が同じだと思います。
パシリムは、アメリカ映画にありがちなビックリシーンが
あるので、このガンダムはそういうのがない分、
純粋にメカアクションを楽しめました。
(しかも戦闘シーン多め!)

なお、一応英語学習用に全編英語で観ました。
戦争モノなので、専門用語が多くすんなりと理解することは難しい
ですが、英語版をメインに作成されているようなので
映像とのマッチングに違和感はありませんでした。
ネトフリオリジナル作品だと、字幕と音声が合っているので
学習面では助かります。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 10
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