ヒューマンドラマでオシャレなアニメ映画ランキング 1

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80.2 1 ヒューマンドラマでオシャレなアニメランキング1位
映画大好きポンポさん(アニメ映画)

2021年6月4日
★★★★★ 4.1 (205)
645人が棚に入れました
敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。映画に心を奪われた彼は、観た映画をすべて記憶している映画通だ。映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと卑屈になる毎日。だが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりに没頭する楽しさを知るのだった。 ある日、ジーンはポンポさんから次に制作する映画『MEISTER』の脚本を渡される。伝説の俳優の復帰作にして、頭がしびれるほど興奮する内容。大ヒットを確信するが……なんと、監督に指名されたのはCMが評価されたジーンだった! ポンポさんの目利きにかなった新人女優をヒロインに迎え、波瀾万丈の撮影が始まろうとしていた。

声優・キャラクター
清水尋也、小原好美、大谷凜香、加隈亜衣、大塚明夫
ネタバレ

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

魔法にかけられし者達の、夢と狂気の舞台裏

2021年7月9日記載

某所にて記載したレビューに加筆・修正・再構成を施した文章となります。
予めご了承下さい。




映画に携わっている人はまるで『魔術師』のようだと、昔から考えてしまう節がありました。
1つ1つのシーンやカットを入念に構築し、大きな1つの映像を紡ぎ上げる中で、時にはあり得ない事、存在しない物も映画にしてしまう選ばれし者達。
ベースとなる世界を作り上げ、皆を物語の世界へ引きずり込む脚本。
表情、心持、佇まいを一瞬の内に変化させ、鑑賞者をもう1つの現実へ導いていく役者。
カメラワークの妙で魅せ方を熟知しつつ、世界観を崩す事無く撮り続ける撮影。
限界表現の領域において、関わった者全てに違和感の与えない基底と昇華を見せ付ける芸術業。
出来上がった全てを、自らの力で語り継ぐ御話として再建築し始める映像編集。
そして、そんな彼等を取り纏め、共に一丸と道を与え続けていく監督諸兄。
そんな此処では全て語り尽くせない魔術師達の技術力。瞬く間に姿形を変えていく展開や描写。それらに幼い頃からときめきを与えられた身としては、まるで「魔法」のようだと思わざるを得ない世界だけが……そこには確かにあったのです。


そう思えるようになったのは『マイク・ザ・ウィザード』と言う作品を観たからと断言出来ます。
皆さん御存知でしょうか、この映画?

https://www.youtube.com/watch?v=IkUSAhAxMxI&ab_channel=hondabrigit

上記URLが日本版劇場予告。こんな内容。大丈夫、ネタバレ予告観てからでも余裕で面白い作品と言えます。
これがかなりのマイナー映画で、VHSとレーザーディスクにはなりましたが、DVD・Blu-ray化はされてない作品。
ただね、本作は「凄く好き!」ってファンの方の協力により、監督のマイク・ジトロフ本人から知識・承認を頂いて、DVDイメージファイルと映画全編公開動画が作られました。
と言う上記の内容からも分かるように、中々のカルト映画。そして製作者本人が了承しているので言いますが、普通に検索すると観れます。日本語吹替版がオススメとだけ言っておきましょう。


で、話を戻すとですよ。僕はこの映画を「映画を作る映画として『文句無しの最高傑作』」と、これまでずっと思ってきました。
1人の映画製作者が傾ける情熱と躍動、そして愛の精神が全てをファンタジックに変えていく。映画内映画の最強作品、奇才が作り上げた至高の傑作と信じて止まないのは今も昔も変わりません。

ただし、その頂点と双璧を成す存在が今年、満を持して現れたんです。

『映画大好きポンポさん』は、僕の中でその「最高傑作」に並び立つ作品となった事を、この場で高らかに宣言しましょう。観終えた際の多幸感に自然と心震わされ、「映画を好きで居続けた過程」全てを肯定される激しくも安らかな90分を、場末の劇場で密かに味わえました。初見時に湧いたこの感覚は、もう映画好きとして……「最上の至福」と述べざるを得ない2度目の最強体験だったと、今でもはっきり思い出せます。
そしてそう至った所以は正に、情熱溢れる魔術師の快進撃のみならず、魔法の一言では決して解決できない選択の連続も植えつけてきた中で……彼なりのこだわりを彼女と、仲間達と示し続けていく展開冥利に、心が揺れ動いたからに他ならないでしょう。



最後まで観終えて思ったこと
ネタバレレビューを読む



『映画大好きポンポさん』をただのアニメ映画と侮る勿れ。間違いなく今年観た中でも「文句無しの最高傑作」であり、「(アニメ)映画史」において燦然と輝き続ける最強の人生賛歌、最狂の映画賛歌で満ち満ちた凄まじき逸品です。『オッドタクシー』をTVアニメ界の至宝とするなら、『映画大好きポンポさん』は映画界の珠玉として、僕の中では目出度く君臨を果たしました。

僕の住んでいる場所の映画館では、『映画大好きポンポさん』大好評記念と準えて、作中キャラクターの好きな映画をリバイバル上映する企画が、今日から始動致します(この情報で住所分かっちゃうだろうなあ)
昨年から続く危機の影響で、映画館と言う最高の娯楽施設自体が存続の危機に陥って。僕がよく通っていた映画館も1館だけ、残念な事に休館となってしまいました(コロナウイルス関連による休館ではないと風聞されていますがね)
だから最近思うのです。当たり前にあったモノの大切をもう1度見つめ直し、自分が好きだと思える対象だけは、何としても死守せねばと。

だからこれから何度でも、多くの映画を観ようと思わせるきっかけを与えてくれた『映画大好きポンポさん』は、僕の中で最高の魔法映画なんです。

まだ観てない方には強く薦めます。
新作映画を、リバイバルを、そしてポンポさんを……最大限に楽しみたいなら、絶対大画面のスクリーンで! ジーンと感覚を追体験して!! ご覧になって観て下さい。
映画を愛する者、支えてくれる全ての人に感謝を覚える至福の一品。
揺るぎなき90分の魔法、どうか多くの人にもっとその煌めきが届く事を。強く強く祈る僕なのでした。





ネタバレレビューを読む

投稿 : 2025/03/01
♥ : 13
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

🏅クレイジーなくらい活きが良い映画と対峙する喜び

“ニャリウッド”にて映画監督に憧れる根暗なアシスタント青年が、
敏腕プロデューサーの“ポンポさん”に抜擢され、
映画人としての階段を駆け上がって行く。

元・深夜ショートアニメの没企画を、
pixivでコミックとして公開した同名作品の劇場版。
(鑑賞後、無料公開部分を閲覧)

【物語 5.0点】
泣かせ映画で感動させるより、おバカ映画で感動させる方がかっこいい。
2時間以上の集中を観客に求めるのは現代の娯楽としてやさしくない。

映画制作物ということで、登場人物に、
理想のエンタメ論を代弁させる本作自体が、有言実行してみせる所が、
格好良すぎて感動します。

作中、理想の編集を求めて七転八倒する新人監督に報いるように、
序盤の何気ないシーンを終盤に回収する伏線芸、
劇中劇内の人物と制作者をシンクロさせる心情描写
など、映画好きならこれくらいキャッチできるよな?
と受け手の想像力も信じて、リアリティより夢のある映画実現のために培われて来た
脚本、編集の秘術を次々に投げ込んでくる快刀乱麻ぶり。


見た目はロリ、中身は大人のポンポさんを光源に、
明るい作風の中で心を弾ませつつ
夢の実現のために何かを犠牲にする狂気にも踏み込むなど、
軸もシッカリしている。
「幸福は創造の敵」の真意。凄く納得させられました。


何より気に入っているのが、
ネタバレレビューを読む


【作画 5.0点】
アニメーション制作・CLAP

人物作画で特徴的なのがカラフルな主線。
昼光にはグリーン、ネオンにはパープル、水面反射光にはブルーと、
使い分けることで、照明を追求する主人公ジーンの撮影へのこだわりを、ここでも体現。

画面分割、ワイプ(次の画面が前の画面を押しのける)
背景も昼夜で違う表情を見せる街並みを描き込み、
タイムラプス撮影(低速度撮影によるコマ送り風動画)による
日常シーンの早送り、巻き戻し演出を再現する。
など演出、編集手法も多彩で、
好テンポ追求という劇中劇との共通課題の解決に貢献。


こういうカットがあるから映画が好きになれたんだと
思い出させてくれる映像構築が
多数再現された玉手箱を開ける至福。


ジーンが身を切るようにフィルムを編集カットする
“アクションシーン”もクレイジーで圧巻♪


【キャラ 4.5点】
プロデューサーのポンポさん。
「ポンポさんが○○に来たぞーっ!」などと、
状況説明とキャラ立ちを両立させる軽快な口調でテンポアップに貢献しつつ、
随所に敏腕の哲学と言動を垣間見せる。

ポンポさんに埋もれた才能を見出す審美眼や、夢を阻む障壁を撤去する豪腕を持たせ、
常識を超えたポジションに確立することで、
新入りアシスタント・ジーンや、新人女優・ナタリーの抜擢という、
夢のようなサクセスストーリーに説得力を持たせる。
リアリストの“ご都合主義”批判など、
トラブルすら逆手に取ってマーケティングに生かす
ポンポさんが暗躍してシャットアウトするぞーっw


アニオリキャラの銀行員・アラン。
元・万能“陽キャ”の伸び悩んでるサラリーマン。

正直、私はクリエイターを描いた作品は別世界の住民を見ているようで、
あまり得意ではありませんが、
アランが夢を追う人間を見つめる一般人代表として
間口を広げてくれたのは有り難かったです。
影の主役として共感度の高いキャラでした。


【声優 4.0点】
ジーン役の清水 尋也さん&ナタリー役の大谷 凛香さん。
夢世界に引き上げられる新人役には敢えてタレント俳優陣をオーディションで起用。
拙い演技も映画業界に飛び込んだばかりの若者の初々しさを狙ってのことと、一応は容認できる。

清水さんは狂気を孕んだイケメンの役作り等に実績がある俳優。
(実写版『ちはやふる』の須藤役とか)
エキセントリックな演技が、終盤開花するジーンの映画人としての本性にマッチ。


ポンポ役の小原 好美さんは安定のキャラ作りだけでなく、
女優経験もある声優としてアドバイスを送ることでも、上記二人をサポート。

アニメ映画主演にどうしてもタレント、俳優を使いたいスタッフの皆さん。
一本に一台。脇に小原さんを置いときましょう♪


“世界一の俳優”マーティン・ブラドック役には大塚 明夫さん。
頼もしいベテランがいると制作も楽そうです。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は松隈 ケンタ氏。
序盤はコメディタッチも交えて軽快に、
終盤は音楽をテーマにした劇中劇制作ドラマの佳境に、オーケストラ等も交えて重厚に。
BiSHなど豊富な音楽プロデュース経験に基いて、多彩なジャンルを動員する引き出しの多さで対応。

主題歌・挿入歌はKAMITSUBAKIスタジオのアーティスト陣が提供。
エネルギッシュなバンドサウンドや前のめり歌詞が爽快だが、
音楽が場面を引っ張る感じではなく、
既に感情や芸術が爆発しているシーンに追い打ちをかけて来る感じなので、
気持ちよく突き抜けることができます。


【感想】
シナリオだけでなく、作品自体の出来の良さに、
こういう映画を待っていたんだと泣けて来る、会心の劇場鑑賞でした♪

最近、映画がつまらなくて、エンドロールまで立たずに観られたためしがない。
そんな方にこそオススメしたい快作です♪

投稿 : 2025/03/01
♥ : 34

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

神がかる

この作品は、とても面白かったです。
かなりおすすめです。

以上です。

ここから先は、私がこの作品を観ながらなんとなく思ったことを書いていきます。
"つれづれなるままに"なので、あまり突っ込まないでください。

***

「神がかる」とは
常識では計り知れない、神霊の仕業かとも思われるような様子を表す言葉である。

"成功"しているプロジェクトには、少なからずこの現象がある。
なぜだか上手くいってしまうと言うやつだ。
例えば、偶然にキーマンに出会う、思いがけない人から連絡をもらう。
ピンチのときに何故か救いの手が差し伸べられる、土壇場で妙案が思いつく。
とにかく成功するプロジェクトとは、不思議と上手くいく現象がある。
それも1回や2回ではない。
タイミングが良すぎることが連続するのだ。
これを「神がかる」と言う。

この作品の中で行われる映画製作も「神がかっている」と言える。
では、はたしてそれは、本当に「神」の仕業なのだろうか。

プロジェクトは、"人"が集まってできている。
"人"にはそれぞれ波長があり、想いにベクトル(方向性と強さ)がある。
波長は、重なり合えば増幅される。
同じ方向のベクトルが掛け合わせれば、より大きなベクトルとなる。

一人ひとりが持っている波動やベクトルは、たかだか知れている。
想いはあるけど、一人では大きなことができないのはそのためだ。
しかし、同じ波長、同じ方向のベクトルを持った人々が集まるとすごい事が起こる。
波動はより大きく増幅され、ベクトルはより収束し、指向性は強くなる。
これは、もはやレーザー光線である。
その力はすさまじく、前に立ちはだかる困難をも打ち砕く。

しかし、人々の目に見えるものではないので、そこで何が起きたのか分からない。
よって、人々は、それを「神がかっている」と感じるのだ。

また、こう言うプロジェクトの現場は、「"場"の雰囲"気"が良い」と言う。
私は、"気"のことは良く分からないが、何か目に見えないものを言うのだと思う。
"場"とは、もちろん、波動やベクトル等の力が作用する空間である。
昔の人は、"場"とか"気"とかよく言ったものだと感心する。
成功する集団は、"場"の雰囲"気"がポジティブに物事を捉えようとするのだ。

ここまでは、"人"についての話である。
実際、成功しているプロジェクトは、"天"までもが味方をしてくれるように思う。
やはり、最後は、"天"や運まかせなのだろうか?

この作品でも、映画の撮影中に雨に見舞われるシーンが出てくる。
実は、それを運が悪いとみるか、好機とみるかは、その"場"の雰囲"気"次第なのだ。
この物語でも、撮影現"場"が、それを好機ととらえ良いシーンの撮影に成功した。
つまり、"天が味方をした"のではなく、"天を味方につけた"のだ。
やはり、最後は、"人"なのである。

一度、神がかったプロジェクトは、あとが速い。
好循環が好循環を生み、あれよあれよと言う間に成功してしまう。

さて、その好循環の源はもちろん"人"の集まりである。
正確に言えば、好循環の環の真ん中には、人の集まりがあると言うことである。
その人の集まりとは、人と人の出会いから始まる。
人は、それを"縁"と呼ぶ。

主人公がポンポさんに出会わなければ、この成功はもちろんなかった。
成功は、ポンポさんのおかげだ。
しかし、そんなポンポさんに出会ったのは、主人公である。
つまり、この成功は主人公が引き寄せたものだとも言えるのだ。
また、その出会いを引き寄せたのは、主人公の誰にも負けない映画への想いだ。

オーディションに落ちまくっていた一人の女の子も人一倍女優への想いが強かった。
そして、その想いがポンポさんとの出会いを引き寄せ女優になった。

この作品の登場人物たちには、とても熱い想いがあるのだ。
その熱い想いを人は、"情熱"と呼ぶ。
人は、冷たいところよりも暖かいところの方が好きだ。
そして、太陽のような熱さには惹かれるものがある。
"太陽のような人"と言ったら、それは魅力がある人のことを言う。
人は、"情熱"に集まってくる、"魅力"に集まってくるのだ。
"魅力"とは、"力"である。それは、一種の"引力"である。

つまり、良い"縁"とは、ただ、ぼーっと待っているだけでは巡ってこないのだ。
熱い想いと言う"引力"が引き寄せる出会い、それが、"縁"なのだ。


"縁"が"縁"を呼び、情熱を持った人たちが集まってくると、さらに熱くなる。
熱くなると化学反応が起こる。
化学反応が起こるとさらに燃え上がり、"熱く"なる。
もうこの時点では、"熱"が先なのか、化学反応が先なのかが分からなくなる。
波長が重なり、ベクトルが掛け合わさり、情熱が化学反応を起こして燃え上がる。
その結果こそが、"成功"なのだ。

"成功"の裏には、人が説明できないような「神がかり」が起こる。
しかし、そこには、必ず"人"がいて、"縁"がある。

この作品を観ていて、そう感じたのである。

投稿 : 2025/03/01
♥ : 26
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