パニック障害でサーカスなおすすめアニメランキング 1

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66.1 1 パニック障害でサーカスなアニメランキング1位
空中ブランコ(TVアニメ動画)

2009年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (269)
1411人が棚に入れました
不眠症を患うサーカスの空中ブランコ乗り・山下公平は、着ぐるみを着た謎の精神科医、伊良部(いらぶ)一郎の診察を受けた。
それからというもの往診と称し公平につきまとう伊良部だが、公平のもとを訪れるヘッピリ腰の区役所職員やスキーゴーグル着用のヤクザといった、ちょっと変な人々をおもしろがってばかりいた…。

声優・キャラクター
三ツ矢雄二、朴璐美、杉本有美、森川智之、三木眞一郎、浪川大輔、平田広明、入野自由、高橋広樹、岩田光央、羽多野渉、置鮎龍太郎、古谷徹

四畳半愛好家 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

伊良部先生…なんか変に格好良すぎない?(求めてない)

 簡単に言うと、精神科医伊良部の元に、たくさんの精神的な問題を抱えた患者たちが現れ、回復していく短編集。
 なかなかポジティブな気持ちになれる良い作品です。
 
 原作は奥田英朗の「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」「町長選挙」の伊良部シリーズの既刊三作(2016春現在)から。
 私は奥田ファンでもあるので、すべて読んでいて、特に「空中ブランコ」は直木賞を立派に受賞している名作。「イン・ザ・プール」はギャグ色ばかりが強く、「町長選挙」は正直つまらない。「空中ブランコ」はギャグと一種の感動も詰まっている名作なので、読むならこれだと思う。(時間があるならイン・ザ・プールから読むべきですし、普通にオススメしときます。)

 このアニメ「空中ブランコ」についてですが、独特な作画・演出に独特な内容…変わったアニメが観たい方はチェックしとくべき作品です。
 いい感じにスッキリEDに入る話が多くて、気分のいい作品だと思います。
 電気グルーブのOP・EDは凄く癖になるいい曲です。


以下やや批判的な長めの駄文

このアニメの好き嫌いが分かれそうな演出
・患者の男たちを演じる声優が豪華なんですが、たびたびキャラの顔が演じられている声優さんのものになる
・福井謙二アナウンサーがたびたび解説を加える
・エロい感じのナースが実写である
・色合いが過剰にカラフル
・主人公「伊良部」への原作イメージが崩れないよう伊良部は3パターンある

 個人的に声優の顔になる演出は、慣れたので大丈夫でした。
 アナの解説は、正直いらないです。ただ、トンデモ医学って感じの原作に比べ、アニメ伊良部は割としっかり医学してるみたいなので、解説はあっていいのかも…
 ナース実写も、色合いも正直好きじゃないです。伊良部は変わった人間ですが、あんな芸術的な部屋で診療してるイメージは全くありません。

 そして伊良部に3パターンの演出ですが…正直意味が分からないです。伊良部は「色白のデブ」で「マザコン」で「小学生並みの思考」で「常識が一切通じない」タイプだったはずでは?
 アニメの伊良部は基本的に知的であり、ふざけてるシーンも計算で、決めるところはクールに決める、まるでイケメンな感じの精神科医。
 一方原作伊良部は、適当な解説を加えつつも、基本的に考えずに行動して患者を振り回し、患者さんはあきれる中でヒントをもらい、勝手に回復に向かっていく…。まさに「愛すべき馬鹿医者」
 テイストが全くもって異なっていて、イメージを壊さないための演出だとするなら、感性が全くもってずれている気がする。
 むしろ原作との乖離を際立たせる演出だと思います。

 最後に物語ですが、一話「空中ブランコ」を観た全国の原作ファンは「違う、そうじゃない!」と感じたでしょう。クスッと笑える良いラストシーンなのに…何故変えた!伊良部の阿呆さ加減を変更しているのだから仕方ない気もしますが、勿体ない!話もなんかフワフワしていて、分かりづらく、これだと1話で離れてしまう方が多い気が…。

 あと3話の「恋愛小説家」は原作では「女流作家」なのですが、患者の友人のキャラが個人的に大好きなのに、一介のモブに格下げされていて、目茶苦茶がっかりしました。本当に格好いいキャラだと思うんですが…是非原作「空中ブランコ」をチェック!

 アニオリについては、10話と最終回の11話は、アニメオリジナルだと思うのですが、10話の「オーナー」は演出を含め、凄く良かったです。逆に、最終回の「カナリア」はなんか嫌でした。無理矢理最終回っぽくしたって感じですかね…

 なんか長くいらないこと書いた感じですが、すごく特徴的なアニメで、合う人には合うアニメです。アニメ好きならチャレンジしてみてはいかが?

投稿 : 2024/11/02
♥ : 10
ネタバレ

manabu3 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

この滅茶苦茶な作品は「完璧なものは存在しない」と身を以て示している

色々な意味でぶっとんだ作品。作画には実写が混じり、主人公は三体に分裂し、色彩は眩しいほど派手やかで、扱う内容はデリケートな「心の病」という、一癖も二癖もあるアニメ。お勧め出来る作品とは決して言えないものの、心の病という日の当たらないテーマを扱ったことだけでも意義があり一見に値する。精神科が舞台とはいえ内容は重くなく(寧ろ軽い)、症状も身近なものを扱っている。話は一話完結型であるが、すべての話が繋がっており一つの作品としてしっかりと完成されている。

主人公である精神科医・伊良部一郎はとにかく破天荒だ。そんな主人公の元に様々な症状を患った人々が訪れるのだが、訪れた患者は「とりあえず」ビタミン注射を打たれてしまう。主人公と患者、「どちらが症状を患っているのか?」、そんなことすら思うほど主人公(クマ)の破天荒ぶりは凄絶だ。それをイラッと感じるか、クスッとするかは人によるだろうが、精神疾患という微妙な題材故に好みや評価は極端に分かれるかもしれない。それに加えてこのアニメは「ふざけること」に主眼を置いているようにも思える。

{netabare}このアニメの最後は「No one is perfect!(完璧な人間なんて存在しない)」という言葉で締めくくられる。みんなどこか欠けているから人間は人間であるのだと感じさせる言葉だ。全知全能の神さまじゃない人間は(当たり前だけど)欠点を持つ。辞書には「欠点、欠ける」について「短所、劣っていること、あって当然なことがないこと」と説明してあるが、(辞書の意味を否定するつもりはないけど)それはあくまで考え方の問題であり、必ずしも「悪い意味」に直結しないと私は思う。何故なら繰り返しになるが人は根本的に完璧ではないし、そもそも「欠けていること」は善悪の問題なのかに疑念を抱くからだ。

話は逸れたが、この作品が示唆するであろうことの一つは、もし何か「欠点」で悩みを抱えていることがあるのなら、それは本当に精神を病むほどまで悩む問題であるのかを一度熟慮する必要がある、ということである。詰まる所、作画・色彩・主人公に至るまで「何故か」滅茶苦茶なこの作品は、「自分のことをオカシイと思っているアナタより、この作品の方がよっぽどぶっとんでるよ(笑)」と、身を以て示しているように私には思えるからだ。殊に「医者」の言動・風貌が来訪した「患者」より「狂っている」ように思えたのだが、それは以上のような理由からだろう。デリケートなテーマの中でのそんな型破りの主人公に私は笑ってしまった。些細な悩みが一瞬だけぶっ飛んだような気がした。とはいえ、「狂っている」と上記したが、主人公の治療法は(専門家ではないので分からないが)あながちアリかなとも思える。

最後に、最終話での「カナリア」についての(真面目な)話は示唆に富む描写だった。心の病を患った「カナリア」は、我々が気付かないだけで身近に存在するし、我々自身無意識にカナリアになっているのかもしれない。殊に「カナリアは周りがおかしいことを知らせてくれる英雄」という言葉には考えさせられた。カナリアは「周り(自分も含む!)がおかしいから」カナリアになったのかもしれない。
まず、カナリアの声に気付くこと。
そして、問題の根源はカナリアだけではないということ。
カナリアになるには、理由がある。それは必ずしも先天的なものとは限らない。自らの言動を自己省察すれば「“おまえは”おかしい」という言葉は自ずと使わなくなるのではないか。そしてきっと「カナリア」も減少するのではないかと思う。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 5
ネタバレ

じぇりー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「精神科」を題材にしているという時点で、既に賞賛に値する

かなり視聴者の間で賛否の分かれたという、斬新なテーマ性と演出が際立つ本作だが、私は大いに「賛」の方に一票入れたい。

今でこそようやく日本でも「メンタルヘルス」などという言葉が聞かれるようになり、精神疾患に対する認識も広がっては来ていると思うが、まだまだ偏見や誤解は多い。

この手の病に関わったことのない人がこのアニメを見ると、主人公の精神科医・伊良部を「心を病んだ患者に破天荒な荒療治を施すアホ医者」と評するかもしれない。

逆だ。確かにアニメとして・娯楽作品のエッセンスとして、現実離れしたぶっ飛んだ行動を伊良部は取っているが、本質的には実際の治療で用いられる「行動療法」を、人を食ったような態度を取りつつも、その実、一人一人の患者の症状に合わせて、向き合い・実践している。

これができる医者は現実には少ない。伊良部はそういった意味では十分過ぎる程に、名医なのである。

演出に関しては、ビビッドな色使い、3変化する伊良部、実写のナース、通行人などのモブキャラは段ボールに絵を描いたようなペラペラ姿…というだけで、他に類を見ない演出だというのに、加えて…

各話の主人公となる患者の声優の顔が、アニメにコラージュされて、時々(顔だけ)実写になるという点には驚いた。新しすぎる。

しかし、作り手側にとって本アニメの最も挑戦的だったであろうこの「声優の顔コラージュ」に関しては、関連項目の★を下げさせてもらった。

なぜならば、重要なシーンでの患者の表情がアップになる場面や、そのエピソードに於いては最もキーとなる台詞が語られる場面で、急に患者の顔がアニメから実写になると…

「金歯…」「わ!この人、女の子みたいに眉剃ってる!」「ここで、その表情はないわー…」

…と内容に集中できず、気が散ってしまうのだ。
何気ないシーンにだけ、実写顔を使っていたら、「面白い!新しい!」と思えたのだろうけれど…

逆に、作中最も雑な扱いを受けているのが、段ボールタッチで描かれているモブキャラ達である。

仮に「モブキャラ=健常人・社会全般」と捉えると、この描き方に私はある種の爽快感を感じたが、実はこれ考えようによっては非常に残酷な現実を表している。

要はこういう「薄っぺらな社会」や「他人の気持ちを顧みない人々」が、不器用でも真面目に生きようと懸命にもがいたり、繊細な心を持つ人々を「病」に追いやっているのだ。

最終話で伊良部が放つ{netabare}「普通の人が一番厄介」「あなたは気付かなきゃいけないね。周りにいるすべてのカナリア(精神疾患を持つ人あるいはその予備軍、と私は捉える)の声に。」という言葉{/netabare} は、実に「その通り!」と私は声を大にして言いたい。

一見ギャグタッチで描かれ、現実離れしているように見える本作だが、内容そのものは決してオーバーではない。
特に患者の言動や症状は、どれもある種テンプレート的な典型例だ。

あらゆる人に、是非お勧めしたい作品。

そして、これを見て身近に似たような状態の人が思い当たるようなら、できる範囲で手を差し伸べてあげてほしい。

ただ、伊良部のようなアプローチ方法は、超高等技術なので絶対に真似してはいけない!(笑)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 13
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