けみかけ さんの感想・評価
3.8
明治、大正、そして昭和へ
『パルムの樹』、『ファンタジックチルドレン』の「なかむらたかし」による実に8年半ぶりの監督作品
タイトルの読みは「しゃしんかん」
丘の上に佇む写真館を営む主人の元を訪れた一組の夫婦、しかし婦人は恥ずかしがって俯いてばかり
主人はあの手この手を用いてやっとの思いで婦人の笑顔を一枚の写真に収めた
やがて婦人は夫婦の間に出来た一人の娘を連れて写真館を訪ねてきた
しかし娘は何やら不機嫌なようで全く笑顔を見せてくれない
そして時は移り変わり明治から大正へ、そして昭和へ・・・
全編セリフなし、限定された登場人物、舞台となるのは丘の上の写真館の一点のみ、と絞り込んだ条件でただただ移り変わっていく時代と共に生きる人の様子を描く短編
監督としてはもちろんながら、なかむらたかしの真骨頂はやはり【作画】だと思います
今作では全編の原画をなかむら一人で担当しております
明治~昭和が舞台ということでレトロモダンでお洒落な雰囲気を醸し出す背景美術、静けさの中に響く市川淳のクラシックピアノソロ
そんな中でなかむらが描写するのは登場人物達の細かな表情、その奥に見えてくる心模様です
しっとりとした、けど心温まる作品はココですよー?
わずか18分、少しお時間がある時、是非ご覧になっていただきたい一作です