Witch さんの感想・評価
4.2
『ファントムトリガー』のやりたいことがかなり明確になった良作
【レビューNo.163】(初回登録:2025/1/2)
ゲーム原作で2020年の映画作品。60分程度
前回OVAのレビューを書きましたが、2025冬アニメがゲームのvol.4からという
ことで、vol.3分の劇場版も押さえておこうかと。
(詳細は【レビューNo.162】OVA作品参照)
(ストーリー)
美浜学園の生徒たちは聖エール外国人学校との夏季合同合宿のためフィリピン
の山へ向かう。
しかしそこで脱柵した聖エールの狙撃手・グミを追う「脱柵者狩り」に協力す
るよう依頼を受ける。
10日前、グミは先輩・シホと共に武器密造組織の壊滅作戦に参加していたが、
作戦は失敗しシホが死亡。
生還してもCIRF基地司令から理不尽に略式裁判へ出頭させられてしまうことか
ら、グミはシホの仇を討つべくそのまま行方をくらませたのだった。
(評 価)
・今回はトーカが主役
前回OVA第2話はレナ回でしたが、今回はトーカ回ですね。
トーカはデレのないツン担当の小柄な狙撃手です。
{netabare}・冒頭はトーカの回想で彼女の家族について語られ、父親との間にわだかま
りがある描写がなされ
・またグミのパートナー・シホは、以前トーカが聖エール外国人学校に在籍
していた頃のパートナーでもあったことが明かされる
・復讐を遂げようとするそんなグミに過去の自分を重ね、
「復讐なんて割に合わない」
という心境を吐露し、そのことをグミに伝えたいと願い
・自身の狙撃によりグミを追いつめ身柄を確保
・そしてムラサキとの会話劇で自身も父親への思いに一区切りをつけ
・処分軽減のため聖エールから除籍され、美浜学園預かりとなったグミの面
倒をみることで、自身も過去にハルトの世話になったことを思い出し
「誰かの背中を見て追いかける立場から誰かに背中を見せて引っ張ってい
く立場になる」
それが成長するということだと実感して物語が終わるという
それまでは周りと少し距離を置きクールに振舞っていたトーカが、グミの面
倒をみることで生まれる柔らかな表情で締めるラストがホントよかったです。{/netabare}
またグミも
{netabare}「自分にはやらなければいけないことがあるのであります。~志半ば倒れた
シホ先輩の無念たるや~その無念を晴らさずしてオメオメと日本に帰るな
ど聖エールの恥さらしであります。」
・シホ先輩への強い愛情
・真面目で責任感が強くまた融通の利かない(不器用な)軍人気質
・ラストでみせる押し殺していた感情があふれ出す普通の少女らしい一面
といったキャラ描写がしっかりしていてよかったと思います。{/netabare}
・アクションシーンはさすがの劇場版クオリティ
今回は前回の大立ち回りで療養中のレナとマキはお留守番なので
・美浜学園側は狙撃手・トーカの後方支援(サポートはムラサキ)
・(山岳猟兵の育成をメインとした)聖エールの強襲班
という部隊編成になっており、作戦指揮はハルトが担います。
{netabare}第1目的はグミの身柄確保でしたが、グミの動きが予想以上に早かったので
作戦は変更、グミを援護しつつ武器密造組織の殲滅行動に移ります。
トーカの正確な狙撃も見事でしたが、修道服に身を包んだ聖エールの強襲も
鮮やかでした。
特に隊長ベルさんのイカレっぷりはなかなかにキャラ立ちしてましたね。
やはり劇場版というだけあって、アクションシーンの作画は見応えがあり
さすがでした。
まあ相手に強キャラがいなかったので、電光石火で殲滅って感じでしたがw{/netabare}
前作のOVAでは見えづらかった『ファントムトリガー』としてのエッジが今作
ではかなり明確に描かれていたように思います。
・『グリザイアシリーズ』らしくヒロインたちを深堀しつつ
・”工作諜報員”という設定を活かし、アクションをより強く押し出していく
この辺りOVAでは少しぼやけた感じがありましたが、今回はかなりよくなって
いたように感じましたね。
レナとマキの活躍がなかったのが惜しまれますが、トーカををメインで魅せる
構成や聖エールとの相性を考えると妥当な判断とも言えますね。
新たにグミも仲間に加わるようですし、この冬アニメにも期待ということで。