サイバーパンクで人工知能なおすすめアニメランキング 9

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92.1 1 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング1位
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX[スタンドアローン・コンプレックス](TVアニメ動画)

2002年秋アニメ
★★★★★ 4.3 (5059)
21537人が棚に入れました
西暦2030年…あらゆるネットが眼根を巡らせ、光や電子となった意思をある一方向に向かわせたとしても「孤人」が複合体としての「個」になるほどには情報化されていない時代…。
情報ネットワーク化が加速度的に進展し、犯罪が複雑化の一途を遂げる社会的混乱の中、事前に犯罪の芽を探し出し、これを除去する攻性の組織が設立された。内務省直属の独立部隊公安9課、通称「攻殻機動隊」である。
公安9課の役割は、深刻な電脳犯罪への対処、国内における要人の援護、政治家の汚職摘発、凶悪殺人の捜査から極秘裏の暗殺まで、多岐に渡っている。彼らは電脳戦を最も得意としつつ、高性能義体を生かした物理的な戦闘においても特筆すべき能力を発揮する、精鋭部隊である。

声優・キャラクター
田中敦子、阪脩、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、山口太郎、小野塚貴志、玉川砂記子
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

指先のその先にあるもの

1989年ヤングマガジン海賊版にて発表された漫画「※1攻殻機動隊」の世界観をベースに据えたSFアニメ。

近未来刑事物としての体を取りつつ、政治、経済、医療、テクノロジーへの問題提起など、多岐に渡るテーマを公安9課の活躍と共に描きます。

SFは現在から地続きの未来の世界を描く事を基調としているので(特に近未来ものは)すでに積み上げられてきた科学の基盤を踏まえなければならず、それゆえ制約が多いもの。科学考証に何らかの誤魔化しや綻びがあれば、それはすでにファンタジーの領分に片足を踏み入れたも同然で、SFとしての精度は低いものとなってしまいます。

本作の特筆すべき点の一つは、その様なあやふやさを可能な限り排除した※2設定の隙の無さであり、地に足の着いた説明可能なテクノロジーで形作られる、科学的矛盾を感じさせない世界観にあります。攻殻の世界における未来の技術、物語上で様々な事件を引き起こす発端となる電脳と電脳ネットについても当然合理的な説明がなされており、これらは現代のわたしたちの利用するPC(あるいはスマホなど)とインターネットの直系の子孫という事が出来ます。

テクノロジーとは広範に捉えれば"道具"という言葉で表す事が出来ますが、例えばあなたの指先の延長上にあるものが原始的で単純な構造のナイフなら見た目通りの、ずっと複雑になってピストルならもっと強力な(持ってる人まずいないと思うけど)さらに複雑になってクルマのハンドルとアクセルならかな~り危険な、でももしそれがネットに繋がったPCのマウスとかキーボードなら、先に挙げた3つ以上に大きな力と直結している事を私たちは肝に銘じねばなりません。殺傷能力は(多分)低いけれども、どこまでも届き、とてつもなく早い、弾丸は言葉、音、映像、ソフトウェアとか、それをこうして簡単に世界中に打ち出す事(アウトプット)が出来てしまう装置(端末)がコレ‥。

PCの魔術的でパワフルな働きは、控え目に評価しても古代人が夢見た神々の発明品の威力に匹敵すると言えます。そんなものを奴隷から王様まで(例えですよ)誰も彼もが持っているのがこの世界。攻殻の世界では脳を直接ネットに繋げちゃうんだから※3もっとスゴイ。神様たちも真っ青な実に怖ろしい世界じゃありませんか。

PCとインターネットによって、私たちの欲しいもの(物・情報)を収集する(インプット)量も格段に上がりましたが、そんな個人が負うには大き過ぎる力、多過ぎる情報をわたし達はどう租借しているのでしょう? ヒトの脳ミソがあらゆる情報を錯覚する事により、効率良く知識を蓄えられる様に進化してきたところに秘密がありそうです。私たちは自己を肯定してくれる情報を見つけやすく覚えやすく、逆に否定する情報を見逃しやすく忘れやすい性質を持っている様なのです。

アニメに話を戻すと、本作で描かれる「笑い男事件」の、それに付随して起きたSACという現象も、発端となった事件の情報が曖昧なものでも、それを受けた者達にとって解り易く受け入れやすい要素(義憤に満ちたスーパーハッカーの若者の姿)があれば、それを汲み取って、ヒーローという偶像に転化せしめてしまった一例で、言い換えれば乏しい情報の中から直感的に理解し易い要素だけを選び取った結果と言えます。作中で笑い男(仮)の残したシンプルでポップなマークが流行った理由もこれと同じですね‥。

不特定多数の人間の内にある思いが言葉や行動となって同時多発的に表面化してゆく様は、ある種宗教染みた連帯感の様にも見えますが、これと似た現象は私たちの身近でも割と当たり前の様に起きている気はします。

ニコ動やYoutubeとかで何らかの動画がアップされた時の視聴者の反応とか、SNSとかブログとかで起こりがちな炎上とか、学校なんかで頻発するいじめとかが、私の感じるそれで、沸点に達し得ず表層に現れない多くの声が同時多発的にあふれ出す現象、そんな中に私はSACとの類似を見ます。作中表現を見る限りSACにも引き金となる要素が必ずあり、模倣というよりは便乗あるいは衝動という形でリアクションが発生している所にも特徴があります。

群集心理の研究における※4創発規範説というものがこの様な現象の一部を良く説明していますが、加えて利権や名声へのしがらみが「笑い男事件」の真相を濁らせ、より複雑怪奇なものにしているという印象でした。人は見たいものだけ見ようとすると、複雑なものを単純に、あるいは単純なものを複雑に、コロッと作り変えてしまう事が出来る様です。そんな錯覚が生み出すトリックもまた、攻殻SACの面白さの一つと言えるのでは無いでしょうか?

※1~4
{netabare}
※1:公安9課の通称という事になっていますが、この語が本編で使われるのは1回?だけ(汗)イギリス陸軍の特殊部隊SASを参考に作られた組織という設定。でもこちらは警察とスパイ(内偵とか暗殺とかする)を足したみたいなもの。装備は軍隊並みですけど戦争屋ではない。

"攻殻"って妙な言葉ですが、原作によればタチコマの前身に当たる「やまとん1号」が攻撃型装甲外骨殻という名目のメカだったので、その略称を取って"攻殻"だそうです。それと"機動隊"を合わせて「攻殻機動隊」としたとか、他にも攻性の組織+殻=義体とかの説も‥。士郎正宗先生自身は元々「GHOST IN THE SHELL」の方を正式タイトルに据えていた様です。

※2:攻殻機動隊はそのルーツと言われるW・ギブスン氏のニューロマンサー(クローム襲撃)を始めとするサイバースペースものからの影響が絶大ですが、ギブスン氏の小説と比べると士郎先生の漫画(特に1巻)の方が説明はずっと丁寧な印象。義体の描写及び解説は取り分け精密で、SF好きにとっては垂涎を禁じえない内容となっています(笑)でも作者をして"ファンタジー"の他に"ニセ科学"や"猿マネ"なんかのレッテルが貼られている(汗
↓続き
SFやファンタジーと現代劇の決定的な違いは、置き換え可能な要素があるか無いかで、もしウルトラスーパーギガトン爆弾というのがあったとしても、水爆とそっくり置き換えられてしまえばそれはSFらしくないし、魔法の杖だって自動食器洗い機とか懐中電灯の代わりに使うんだったら、ファンタジーらしくないと言えます。科学は魔術と等しくなりうるので、ここら辺の線引きはとても難しく、また時代とともに変遷していくものですが、本質的には全く同じものの外見(そとみ)だけを代えてもあまり面白くはない気はします。でも攻殻も元を辿ればけっこう古い作品なので、今や非SF的刑事ドラマになりつつあるのかも?

※3:知識だけでなく感覚の共有とかも出来るので。電脳化にメリットがある事は確かですけど、便利なものには必ず代償がついて回るもので、情報や感覚の海に溺れて戻って来れなくなっちゃう人が現代よりも更に多くなりそうですし、そもそも脳にマイクロマシンを入れたり、首の後ろにインターフェース付けたり、生理的な嫌悪を踏み倒してまで電脳化を望む人がそれほどいるのかな? というのが今の目で見たわたしの感想でした。(タチコマに馬鹿にされそう‥)

電脳も義体も身体に何らかの障害を抱える人にとっては新たな選択肢を与える(ハンデを持つ事は必ずしもマイナスでは無いので、敢えて拒否する人もいると思う)技術ですが、五体満足な人にとっては生身の健康を維持する以上に心を縛る枷となる気がしないでもないです。定期のメンテナンスやら経年劣化による部品交換やら色々と面倒そうだし‥(汗)

※4:「群集という集合現象の場において形成される固有の社会規範の成立とともに、その規範に適合する行動を容認、促進し、不適合な行動を抑制、禁止する社会的圧力が働くために、群集行動が全体として均質化する(社会心理学者R・H・ターナーの著書からの抜粋)」とwikiでは説明されてました。スメルサーの集合行動論というのも合わせて読むと面白いかも知れません。こちらもネットに概要が落ちてます。
{/netabare}

原作漫画の色ではないテクノロジー+文学という組み合わせについて、わたしは割と好きなんですが、本作における引用が適切だったかと言えばまた別の話で、物語に一貫性を持たせる為とは言えサリンジャー由来の要素が多過ぎる気はしました。
{netabare}
学術的なものを含めた膨大量の書物を網羅しているであろうグレートな読書家のアオイ君が「ライ麦畑でつかまえて」に傾倒し過ぎている所がちょっと不自然だったり、所帯持ちで既に刑事としての実績もあるエリートのトグサさんまで※マーク・チャップマンを髣髴させる行動に走ったりと、びっくりなシーンも‥、特に後者、初見ではトグサさんゴーストハックでもかけられたのかな?とか誤解しちゃいましたよわたし(汗)

※:ライ麦畑の愛読者でジョン・レノンをピストルで殺害した人。読者の中でこんな人は極々稀だし、今更になって(15年以上も前だけど)こういうプロパガンダ的な脚本を挟むのはかな~り節操無いなと思いました。
{/netabare}
後に製作された、同じくSFアニメの「サイコパス」でも本からの引用が沢山ありましたが、あちらは量の割にせいぜいスパイス程度で、本で人を語らせるのでなく、ちゃんと人が本を語っている所にそつなさがあった様に思います。どちらにせよこれって中二病‥ではなくて、寓話を用いてSFというジャンルの影に隠れた人間的な要素をかいつまんで、あるいは租借して説明する一つの手法ではないかと思われます。遠い未来のお話であっても本のページを一枚噛ませると(笑)そこに現代の私たちと何ら変わる所の無い人間がいる事を実感出来るのです。ファッションや料理と同じく一種の舞台装置とも言えますね。

キャラデザについて、9課メンバーの面構えが濃過ぎる!というのは置いといて、現実にいる政治家の人とか、映画俳優の誰かさんをモデルにしたであろう個性的な風貌のキャラが目立ちます。アニメの作画(声優さんの演技含む)は、文章の文体に相当しますが、リアリティのある劇を見せるのであれば、端正な顔立ちのキャラだらけでは違和感が出てしまうと思うので、理にかなった描写になっていると思います。士郎先生の漫画にも出てくる内務大臣の顔ヂカラは特にスゴイ! 例外なのは没個性的な役回りのアンドロイドとか、アニメオリジナルキャラのアオイ君とか※5クルツコワさんとかフェムさんとか‥。後者から数えて二人は何となく萌えキャラっぽくて、ちょっとだけ別のアニメから引っ張ってきたよーな印象がありました(笑

よく話題になる少佐のコスチュームについては原作にも似た様なのがあるんですけど、TPOを守ってないとやっぱり浮いて見えてしまいます。初見では課長の執務室でのあの格好にはぎょっとさせられましたし、SACの現代寄りの世界観と調和しなかった所為もあって他の場面でも違和感ありありでした。慣れると無視出来る様にはなりますが、何とかならなかったのかなとは思います(二期以降では改善されている。)

音楽について、ORIGAさんの歌声の美しさが際立つOPの「inner universe」と、突入シーンでよく使われる「run rabbit junk」が特に印象に残りましたが、硬い世界を柔らかくするドラマチックなBGMたちも素敵でした。どんなジャンルの音楽も作れちゃう菅野よう子さんの才能はスペシャルですね。最高評価とさせて頂きました。

構成について、物語を縫う様にして現れては消える「笑い男」関連のお話が中心ですが、それとは直接関係の無い一話完結のお話も半分位あります。張り詰めた刑事ドラマの中にも人情味溢れるお話がちょくちょく顔を覗かせますので、やや長めの2クール全26話、立ち止まらずに進む事が出来るのでは無いでしょうか? わびさびが効いていてとても見やすいと思います。

サブタイ表示中の背景色で続き物と一話完結のいずれかが区別出来る様になっていますので、一周した人は※6どちらか一方だけを続けて視聴するというのも乙ではないかと‥。
(青=笑い男:4.5.6.9.11.20~26話 緑=1話完結:1.2.3.7.8.10.12~19話)

原作や派生作品の「RD潜脳調査室」や「紅殻のパンドラ」などでは重要テーマの一つとなっている※7人間と機械の距離が埋まる事によって変容する意識についてのお話はやや控えめで、前面に置かれた刑事ドラマの影に隠れた形でとてもコンパクトにまとめられています。作中でこの問題について人よりもむしろロボのタチコマに多くを語らせているのは、無邪気なタチコマを通した方が説明的でストレートな台詞を喋らせ易いからなんでしょうね。人に同じ役をやらせても楽しそうですけど、うざったらしくなる事間違い無し(笑)霊や階層構造(2期では※8上部構造という言葉で語られる)と言った抽象概念を織り交ぜて未来の世界が語られる原作1巻や2巻とはかなりの部分で異なっており、本作の放送と同時期に出版された純刑事物寄りの「攻殻機動隊1.5」に近い作風と感じました。

本編終了後のオマケコーナー「タチコマな日々」も短いながらもちょっと楽しい。SACの貴重な笑い所となっており、脳が疲れてゴーストの囁きが聴こえなくなった時の丁度良い箸休めとなっています(笑)


再視聴を終えて
{netabare}
原作から色々な要素を削ぎ落とした(必要な事だとは思うけれど)結果、概ね万人受けする娯楽作品として成功した本作ですが、反面、監督の神山健治氏が強調した社会正義というテーマが強過ぎて、登場人物達の価値観がやや画一的に見えてしまった印象は残りました。それと悪玉に相当する政治家や医療関係者、警察関係者と言ったエライ人たちの関心事が金と名声に集中しているのを見ると、こちらについては割とリアルな描写なのかも知れませんけど、古典的な悪人像を見る様で、情けなくて、せこくて、心底呆れちゃいました‥(汗)

一方影の主役、世の中のインチキを相手に回して孤独に戦うアオイ君ですが、こちらには明確なモデルがいて、一見してライ麦畑のホールデンそのものなんですが、力と行動力を備えている点に大きな違いがあり、青臭いと揶揄されそうな剥き出しの正義感を掲げながら、疲れ、葛藤しつつ、それを行使していく姿が危なっかしくも痛快です。欠点のある英雄未満なキャラなので、見ていてついつい応援したくなりました。エピローグで彼の被っていた赤帽に耳当てが無いのに気付いた少佐の台詞は意味深‥。新作に再登場するフラグになっていたりして。

神山監督によれば、正義のあり様について、アオイ君、トグサさん、荒巻課長と世代毎に区別しているそうですが、確かに、暴走気味で浮き沈みのあるアオイ君、私生活を守り自分の立ち位置で堅実に仕事をこなすトグサさん、鉄の信念に殉ずる常に攻性!な荒巻課長と、三者三様な感じではあります。ただアオイ君にしても9課の人達にしても、目的の為には手段を選ばず、才能や人脈を最大限に行使して、時として法の目さえも掻い潜って目的を遂げようとしている点で共通しています。法律は権力者にとって都合の良い様に作られている側面もありますので、それと戦う彼らがそうするのは当然といえば当然で、前提として彼らは法律=正義と置かず、せいぜいゲームで言う所のルール程度としか捉えておらず、バグを利用して近道出来るなら積極的に利用し、審判の目を欺けるのなら危険なラフプレーも辞さないというスタイルで悪に肉薄するのです。

正義の定義については右も左も知らぬ私が複雑な事をあれこれ書けませんが、少なくともその根源は宗教や道徳や法律という言葉で形式化されたものではなく、より古く、世代を経て研磨されてきたヒトの遺伝的性質に根ざしたものの様に思えます。ありていに言えば利他的精神なのですが、血縁関係にない他者や異種族である動植物をも擁護するヒトの行動は、あたかもそれら全てを自身の属する群れと見なしている様にも見えます。群れ全体の利益を優先する行動を仮に正義とすると、その対極にある利己的行動を悪と言える気もしないでもないですが、実際にはその両者のバランスの崩壊こそが悪となるケースが殆どでは無いでしょうか。混じり気の無い利他的精神も利己的精神もプログラムされたソフトウェアみたいなものにしか宿らないと思うので。

14話「全自動資本主義 ¥€$」でも上に関するお話がちょこっとだけありましたが、経済活動が社会ぐるみで推奨され、お金儲けによる自己肯定感が増すと、人は富そのものが目的になってもそれを許容し、どこからそれを得ているのかという事にさえ無関心になれる様です。為替の売買とか株取引なんかは特にその傾向が顕著で、投資は別として、投機でお金を回している人なんて殆どゲーム感覚だし、例外なく利己的ですものね‥。原作の荒巻"部長"の言葉にも「人の心はもろい…世の中の回転に呑まれて快楽中心になると利益効率追及機械やただの消費単位になってしまう」なんてのがありましたが、見たいもの(オカネや快楽)しか見えていないという点では、これもまた先に触れた錯覚の類と言えます(汗)

でもまぁ、作中の独善街道まっしぐらなアオイ君やフェムさんみたいに、腐った世の中に天誅!なんて事していたら(できないし)、まず身が持ちませんし、荒巻課長みたいな無私無欲の正義の人にも逆立ちしてもなれませんけど、フィクションと言えど、彼等の様な自己犠牲を厭わぬ人たちの行動を目の当たりにすると、大人の端くれとして、せめて自分の目の前にあるインチキ的なものに対しては、物申す事が出来る位の勇気と活力は常に備えておきたいものだなぁと思う凡夫なブリキ男なのでした。

総評として、綻びのない未来社会の映像化は警告や予言としてそれ自体に大きな価値が有り、作画もそれを表現するのに十二分な水準に達しており、脚本は実際に起きた事件や映画などからの引用が多くあるものの※9その作り込みは極めて濃密、今もって色褪せない魅力を持つ作品である事を確認させて頂きました。

押井監督の作品では省かれてしまっているフチコマ(タチコマ)の登場もとても嬉しい要素ですね。玉川紗己子さんが様々な声色を使い分けて情感豊かに演じられています。12話の「タチコマの家出 映画監督の夢」の前半と、15話の「機械たちの時間」はなんとタチコマ主役回。ロボ好き必見のお話になっています。全編を通してのわたしの泣き所って殆どタチコマ関連のシーンだったりして。
{/netabare}
更新に更新を重ね原形を損ねてしまった初見当時の記憶と今回の再視聴で得た記憶を並列化しつつ(笑)楽しく書かせて頂きました。


※5~9
{netabare}
※5:クルツコワさんは金髪隻眼の美人さんで工作員。漫画版「紅殻のパンドラ」ではまさかの萌えキャラ化を果たしており(笑)祖国の為に誠心誠意で(悪事を)がんばるポンコツ少女?として描かれています。フェムさんは泣きぼくろが可愛いおだんごヘアーの中華娘でヒットマン(汗

※6:笑い男事件だけを切り抜き、新作映像、新規アフレコを追加して158分にまとめた再編集版「The Laughing Man」なんてのもあります。むつかしい台詞を端折ってより見易くしている印象でした。チャットルームのお話が抜けているのは残念でした(汗

※7:人間がサイボーグ化、あるいはロボットが人間に近づく事によって起きる意識の変化について。前者に関してはW・ギブスン氏に先んじて石ノ森章太郎先生がサイボーグ009の「天使編」で初めて触れたのかも‥、でも現代の私たちってもうとっくにサイボーグ化してる気がします。PCやスマホ無しでは生活する事さえままならなかったり、外部記憶装置のデータが失われた時なんかはそれ相応の精神的なダメージを被ったり‥。PCは己が肉体を、その枠組みを超えて存在するという感覚をまざまざと見せ付けてくれる機械ですが、人は太古から認識出来るもの全てを外部記憶装置として利用しているきらいがあります。

後者のロボットの自我についてのお話は映画「メトロポリス」やアシモフ先生の小説、漫画「鉄腕アトム」「8マン」とかで有名ですけど、その起源はかな~り古い。鍛冶の神ヘパイストスが発明したとされる黄金の召使とか、クレタ島のタロスとか。人造人間のお話はもっと古い。近年ではAIの知能が人間に迫る勢いで成長を続けていますが、自我を持ったロボットは一体何を望むんでしょう? "I will destroy humans."とかはさらっと言われたくないですね(汗)

※8:三省堂の大辞林によると「政治的・法律的諸制度と、それに照応する社会の政治的・法律的・宗教的・道徳的・哲学的・芸術的意識形態をさす語」となっていましたが、攻殻で言う所のそれは幾重にも連なる階層構造の一部を指すのみで、上部構造と下部構造の2つに単純には分けられていない模様。古典的な"神が人の中に入る"という表現では、神が上部構造にいて、人が下部構造にいるという解釈になると思います。作中のハッカーがゴーストハックした人を操る様は、神話や伝説の中の神や悪魔が人に憑依してその心に干渉する様に良く似ています。

※9:脚本が悪いのか演出が悪いのか、1話の突入シーンの光学迷彩で隠れるタイミングとか、2話の「我々は攻殻機動隊だ」とか、9課なのに度々税金の無駄遣いをやらかしている所なんかはちょっとNGだと思いました。(でもそれが感情表現として有効になっている場面もちらほら。トグサさんの射撃訓練じゃないよ)
{/netabare}

付録・用語解説など
{netabare}
電脳:脳内にマイクロマシンを送り込みニューロンに取り付かせ、それで脳波を読み取りデータ化、首の後ろに取り付けたインターフェースとかで送受信する技術。これによって"人やデータ"と感覚や情報を共有出来る。

電通:電脳通信の略。電脳化したもの同士が有線や無線で通信を行なうこと。口の動かない会話シーンを作れるのでアニメーターさんもちょっと助かる(笑)

脳殻:脳と脊髄を収める接続端子付きの器。素材は軽くて丈夫な発砲素材とか頑丈なチタンとか。持ち運びしたり交換したり出来る(汗

義体:電気信号で動く機械の体。義手、義足、義眼などの総称。最近では増幅された脳波で動作する義手や義足、逆に電気信号を脳に送って機能する人工網膜や人工内耳なども実用化されており、義体化技術はかなりの部分で実現していると言えます。他方で施術を必要とせず、ヘッドギアやグローブの電極を通して情報の受け渡しを可能にする技術も開発されつつある様で、それで離れた場所にあるロボットを操作したり、ロボットのセンサーを通して触覚などの感覚を受信したりという事も可能だそうな。作中に登場する遠隔操作義体そのものですね。近い将来にも家にいながらにして(擬似)海外旅行とかが出来る様になったりして‥。味気ない?

光学迷彩:見えない様に見せる技術。実在するものの中には背景画像をカメラで撮影し、反対側(表側)のスクリーンに出力するか、プロジェクターで投影する方式、あるいは負の屈折率を持つメタマテリアル(人工物質)を通して光を迂回させて対象物の背景を見せる方式がある様です。現時点では前者は(可視光)光学迷彩、後者はレーダーに影を落とさない熱工学迷彩に近いかも知れません。耳がひじょーに良い猫耳アンドロイドとかには聴覚で見破られてしまう(笑)水や埃にもやや弱い。
↓続き
少佐の様な前身義体の人はともかくとして、トグサさんとか(ほぼ)生身の人間の体のどこにカメラとかプロジェクターが装備されてるの?という疑問を持たれる方もいるかも知れませんが、これについては押井監督の映画が公開された頃に販売されていた「ビジュアル解説ハンドブック INDEX2029(薄い本ですが内容は濃い)」という小冊子に"迷彩塗装"との記述がありましたのでマイクロマシンをスプレー塗布していると想像出来ます。眼球はコンタクトレンズとかで補えるかも知れませんが、髪の毛とかは大変そう。士郎先生に色々と訊いてみたい(笑)

アームスーツ:強化外骨格。日本ではパワードスーツという呼称が一般的。人型だけでなくクモ型のタチコマもこれに含まれる。

思考戦車:AIを搭載した戦車の事。本来はアームスーツであるタチコマがこう呼ばれる事もある。経験を積み成長する。

並列化:演算処理の方法ではなく、作中では個々の持つ情報を共有すると言う意味合いで使われる単語。タチコマの場合、一部ではなく、それぞれのAIが蓄積した情報全てを共有するので思考力が劇的にレベルアップする。

枝:作中「枝を張る」とか「枝が付く」とかいう表現がありますが、概ね盗聴する為の何かを残す、盗聴される痕跡を残すとかを意味している様です。

IRシステム:IRは赤外線を意味するInfraRedの略。公安が管理しているカメラによる監視システム。幹線道路、駅、空港などを中心に日本中至る所に設置されているらしい。さすがにトイレの中には無い。ディストピアSF御用達システム(汗

インターセプター:目で見た光景を第三者に送る技術。視神経に素子を取り付ける必要がある。

防壁:ファイヤーウォールの類。脳を焼き切る攻性防壁・侵入者を足止めする防壁迷路・逆襲回避の身替わり防壁とかがある。首に取り付けるU字型のデバイスが身替わり防壁。

S.A.C.:造語。スタンド・アローン・コンプレックスの略。説明はレビュー本文にて。

ゴースト:個人を特定する要素。魂という言葉に近いと思います。

他にも色々ありますが主なものを掲載。視聴時のストレス軽減目的の要約版とさせて頂きました。新作に備えてのおさらいも兼ねて。もっと詳しく知りたい人は「攻殻 用語」でぐぐってみると面白いかも‥。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 46
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

'70学生運動世代(ベトナム戦争世代)の思考が透けて見える有名シリーズ

※以下は、攻殻シリーズ(旧作)の一括レビューです。

2013年頃、あにこれに来て一寸驚いたのが、当時この作品が全作品ランキングで1位だったことで(※今は3位に下がっています)、今でも無批判にこの作品を「内容がある」とか「深い」とか言って褒めちぎる人が多いので、このシリーズのひとつの見方を簡単に提示しておきます。


◆アニメ有名シリーズと制作者(監督)の世代論

(1) ガンダムの富野氏は1941年11月生まれ、
(2) ジブリの宮崎駿氏も1941年1月生まれ

⇒つまり、ともに1960年の安保闘争当時、現役学生だった世代。

(3) これに対して、攻殻劇場版監督の押井守氏は1951年8月生まれ
→1970年の安保反対運動当時、現役学生だった世代で、ついでにいうと、1970年11月には三島由紀夫自決事件も起きている(※攻殻TVシリーズ第2期のモチーフにもなってますね←この世代の思考・行動パターンが「口では平和を唱えながら、やたら暴力的」みたいにチグハグになってしまった一つの原因か?)。
(4) なお、攻殻TVシリーズ監督の神山健治氏はもっと下の世代(1966年3月生まれ)ですが、押井氏に師事して頭角を現し、TVシリーズ第2期では同氏をストーリー・コンセプト担当に仰ぐなど同氏の影響が非常に強いと思われます。

⇒ということで、ガンダム・ジブリ作品が60年安保世代の発想だとしたら、攻殻シリーズは70年安保世代(全共闘世代、ベトナム戦争世代)の発想が色濃い作品と考えます。
(※とくに、TVシリーズ第2期を最後まで観ると強くそう感じます(※下記の各話感想を参照))

(5) ちなみに、エヴァンゲリオン・シリーズの庵野秀明氏は1960年5月生まれ
(6) また、マクロス・シリーズの河森正治氏は1960年2月生まれ
(7) さらに、「まどマギ」&物語シリーズの新房昭之氏は1961年9月生まれ

⇒押井氏から丁度10年後に学生時代をおくったこの世代(※シラケ世代?)の作品からは、見事に変な思想臭が消えていて、その分見易く親しみ易くなっています。

※この、どの世代の制作者(監督)の作品を好むかは、人それぞれですが、予備知識として上記を押さえておくと、作品の見え方がまた一味変わってくるかも知れません。


◆作品別評価(TVシリーズ、劇場版)

(1) TV第1期 ★ 4.1  「STAND ALONE COMPLEX」  (2002年10月-2003年11月)
(2) TV第2期 ☆ 3.7  「S.A.C. 2nd GIG」  (2004年1月-2005年1月)
(3) OVA    ☆ 3.5  「Solid State Society」 (2006年9月)
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  総合    ☆  3.8   ※(1)~(3) 神山健治監督
              ※なお (2) のみ押井守ストーリーコンセプト


(4) 劇場版1 ☆ 3.7  「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」 (1995年11月)
(5) 劇場版2 ☆ 3.7  「イノセンス」 (2004年3月)
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  総合    ☆  3.7   ※(4)~(5) 押井守監督


◆制作情報(TVシリーズ第1-2期、OVA)
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原作マンガ       士郎正宗
監督・シリーズ構成  神山健治
ストーリーコンセプト  押井守(2期のみ)
脚本           神山健治、藤咲淳一、櫻井圭記、佐藤大、菅正太郎、寺戸信寿(1期のみ)、松家雄一郎(2期のみ)
キャラクターデザイン 下村一(1期)、後藤隆幸・西尾鉄也(2期&OVA)
音楽           菅野よう子
アニメーション制作  Production I.G{/netabare}


◆視聴メモ(TVシリーズ)

(1) 第1期「STAND ALONE COMPLEX」
{netabare}
・第2話視聴終了時点
ん?これって安っぽいヒューマニズム系作品なの?
・第3話視聴終了時点
心身問題(mind-body problem)にチョイ掠り
・第10話視聴終了時点
「米帝」は巨悪だ!という前提が如何にも"ベトナム戦争世代"だなと・・・
・第15話視聴終了時点
再び「心身問題」・・・「自己言及のパラドックス」「チューリングマシン」「ゴースト」等それっぽいキーワードを小出ししてるけど内容自体は踏み込みが浅くて余り評価できない。
・第21話視聴終了時点
ここから山場の展開だが、「米帝」がBig Brother(G.オーウェル『1984年』の全能の支配機構)という設定が何とも・・・
・第25話視聴終了時点
「自由意志」が芽生えたタチコマが自己犠牲を払ってバトーさんを救い全滅しました・・・って、事態打開の方法が如何にも安直じゃありませんか?{/netabare}

(2) 第2期「S.A.C. 2nd GIG」
{netabare}
・第5話視聴終了時点
そこはかとなく漂う5.15事件へのシンパシーが微妙・・・
・第12話視聴終了時点
鹿児島・鹿屋の特攻隊出撃基地近くの戦没者慰霊塔を無造作に使っちゃってる点が×
・第23話視聴終了時点
親中派で米帝の軍産複合体の謀略に強い危機感を持ち国連査察に期待する首相って・・・いつの時代の感覚?
・第25話視聴終了時点
クゼの目的が「肉体を失った人々のゴーストを束ねた霊的上部構造の構築」って・・・これってオカルト話だったの?
・第26話視聴終了時点
シナイオライターは米中露等距離外交・国連協調路線が好きなんだね。{/netabare}


◆各話タイトル&評価(TVシリーズ)

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

======= 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX (2002年10月-2003年11月) =======
{netabare}
第1話 公安9課 SECTION-9 ★ 西暦2030年、公安9課のロボット芸者鎮圧、脳殻入れ替え技術(スパイ亡命阻止)
第2話 暴走の証明 TESTATION ☆ 剣菱重工製戦車暴走
第3話 ささやかな反乱 ANDROID AND I  ★ カナダ大使子息とアンドロイドの恋人、心身問題(mind-body problem)
第4話 視覚素子は笑う INTERCEPTER ★ 笑い男事件(トグサ同期(特捜ヤマモト)の不審死、事件再発(警視総監殺害予告))
第5話 マネキドリは謡う DECOY ★ 続き(6年前の事件、ナナオ・A容疑者監視の顛末)
第6話 模倣者は踊る MEME ★ 続き(大堂警視総監連続襲撃事件、荒巻9課課長の挑戦状)
第7話 偶像崇拝 IDOLATER ☆ コピー・ゴースト技術(南米麻薬王・革命の英雄の来日)
第8話 恵まれし者たち MISSING HEARTS ☆ 医学生の悪質な臓器ビジネス
第9話 ネットの闇に棲む男 CHAT! CHAT! CHAT! ★ 笑い男事件の続き(ネット座談会への素子潜入)
第10話 密林航路にうってつけの日 JUNGLE CRUISE × 連続猟奇殺人事件(バトーとマルコの因縁、米帝CIAの画策)
第11話 亜成虫の森で PORTRAITZ ★ トグサの授産(電脳閉殻症患者隔離)施設内偵
第12話 タチコマの家出 映画監督の夢 ESCAPE FROM ☆ 特定タチコマ個体の冒険(少女との交流)、ゴーストの宿る箱
第13話 ≠テロリスト NOT EQUAL ☆ 東シナ海廃棄プラント潜入、「興国の旅団」リーダー確保
第14話 全自動資本主義 \?$ ☆ 大富豪・投資家横瀬氏保護任務 ※オチのない回
第15話 機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES ★★ 心身問題(※第3話参照)、タチコマの運用凍結
第16話 心の隙間 Ag2O ★ タチコマのラボ送り、バトーvs.元ボクシングチャンプ(ザイツェフ海上自衛軍格闘技指導員)
第17話 未完成ラヴロマンスの真相 ANGELS' SHARE ★ ロンドン銀行籠城事件(荒巻課長活躍回)
第18話 暗殺の二重奏 LOST HERITAGE ☆ 中国・金外務次官暗殺阻止任務(荒巻課長の戦友・故辻崎陸自調査部長のゴーストの復讐未遂)
第19話 偽装網に抱かれて CAPTIVATED ★ ロシア系北方マフィア「目隠しイワン」の未成年女性集団拉致事件、神崎元総理の感謝
第20話 消された薬 RE-VIEW ★ 電脳硬化症特効薬(村井ワクチン)接種者リスト紛失、トグサの「ひまわりの会」内偵、厚生省強制介入班の襲撃
第21話 置き去りの軌跡 ERASER ★★ 村井ワクチン不認可の真相、9課VS.介入班、今来栖殺害、笑い男の正体
第22話 疑獄 SCANDAL ★★ 新見厚生労働省医薬局長逮捕、荒巻課長&素子の危機、笑い男の依頼、義体換装
第23話 善悪の彼岸 EQUINOX ★ 瀬良野社長再誘拐、6年前の事件の真相、黒幕・薬島与党幹事長
第24話 孤城落日 ANNIHILATION ★ 荒巻&総理の直談判、軍特殊部隊(海坊主)の公安9課強襲、9課離散
第25話 硝煙弾雨 BARRAGE ★ タチコマの自由意思(バトー救援)、公安9課壊滅? ※ピンチの解消方法が安直×
第26話 公安9課、再び STAND ALONE COMPLEX ☆ 3ヶ月後(薬島幹事長疑惑追及、9課メンバー再集合)、笑い男と荒巻の対面{/netabare} 
---------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)3、★(良回)14、☆(並回)8、×(疑問回)1 ※個人評価 ★ 4.1

OP 「inner universe」
ED 「lithium flower」


========= 攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG (2004年1月-2005年1月) ============
{netabare}
第1話 再起動 REEMBODY ★ 個別の11人中国大使館籠城事件、反動保守の新政権(茅葺首相)、公安9課再建
第2話 飽食の僕 NIGHT CRUISE ☆ ギノ操縦士の妄想癖 ※「哀れなほど真実を知らないプロレタリア」って・・・
第3話 土曜の夜と日曜の朝 CASH EYE ☆ 田所元経団連会長内偵、政財界大物秘密パーティ潜入
第4話 天敵 NATURAL ENEMY ☆ 内閣情報庁・合田補佐官の9課接触、暴走自衛隊ヘリ群鎮圧任務
第5話 動機ある者たち INDUCTANCE ★ 茅葺首相暗殺予告(仇∞士)、首相警護任務、革命の聖典『個別の11人』、クゼの首相襲撃・撃退
第6話 潜在熱源 EXCAVATION ☆ トグサのエネルギー省脅迫被疑者身元調査(旧首都・東京へ、大深度地下の秘密原発発見)
第7話 狂想は亡国の調べ Pu239 ☆ 「個別の11人」プルトニウム強奪阻止任務(合田の9課介入)
第8話 素食の晩餐 FAKE FOOD ☆ 合田の経歴調査、「個別の11人」感染者のメディア露出、内庁の不可解な情報操作
第9話 絶望という名の希望 AMBIVALENCE ★ 同時多発的無差別自爆テロ、招慰難民の犯行?、素子の内庁潜入、合田の野望(国家改造の英雄プロデュース)
第10話 イカレルオトコ TRIAL ☆ トグサの人命救助失敗と拘留、不毛な裁判
第11話 草迷宮 affection ★ 素子の過去(クゼとの出会い、全身義体化と折り紙の記憶)
第12話 名も無き者へ SELECON ★ 首相暗殺未遂犯の行動再開、ウィルス発症条件、「個別の11人」鹿児島終結・九州電波塔集団自決事件
第13話 顔 MAKE UP ☆ 自決事件報道の影響、パズの因縁の相手、未遂犯の氏名判明(クゼ・ヒデオ)
第14話 左眼に気をつけろ POKER FACE ★ 隻眼スナイパー・サイトーの過去(メキシコでの素子etc.との死闘)
第15話 機械たちの午後 PAT ☆ タチコマ開発者(有須田博士)亡命阻止
第16話 そこにいること ANOTHER CHANCE ☆ 難民の長崎流入問題と日米安保改訂問題、電脳世界のハブ形成、クゼの過去(新義州PKF)
第17話 修好母子 RED DATA ★ 素子の台湾渡航任務(難民達のカリスマ・クゼ)
第18話 天使の詩 TRANS PARENT ☆ 9課のベルリン渡航(「天使の羽」掃討任務、バトーの気迷い)
第19話 相対の連鎖 CHAIN REACTION ★ 出島の難民自治区宣言、合田暗躍、素子とクゼの電脳空間での接触、9課の出島襲撃・クゼ拿捕失敗(新人殉職)
第20話 北端の混迷 FABRICATE FOG ★ 素子の沈鬱、択捉島・ロシアマフィア&クゼのプルトニウム取引への陸自介入、クゼvs.バトー
第21話 敗走 EMBARRASSMENT ★★ 続き、クゼ協力者の自爆・オスプレイ破壊(イシカワ負傷)、合田暗躍(クゼ長崎出島帰還)
第22話 無人街 REVERSAL PROCESS ★★ 九州の戒厳令発令、電波塔の爆弾解体処理・プルトニウム回収、バトーの合田問い詰め(個別の11人自決事件の真相、不確定要素の介在、殉教者の条件)
第23話 橋が落ちる日 MARTIAL LAW ☆ 高倉官房長官・合田内庁補佐官の策動進行(茅葺首相の懸念、陸自の出島封鎖、出島事変発生(自衛軍vs.暴走難民))、素子のメッセージ(対クゼ) 
第24話 出島、空爆 NUCLEAR POWER ★ 茅葺首相拘束、陸自特殊部隊の出島突入・バトー隊との交戦、米帝原潜浮上(合田の最終目的判明・・・難民暴走を装った核爆弾投下・出島&難民一挙消滅)
第25話 楽園の向こうへTHIS SIDE OF JUSTICE × 素子とクゼの接触、トグサの茅葺首相救出 
第26話 憂国への帰還 ENDLESS∞GIG  × 素子のクゼへの協力、米帝原潜の核弾頭発射、タチコマの命令無視・自己犠牲、バトーの素子救出、高倉逮捕・合田射殺、クゼ死亡{/netabare}
---------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)2、★(良回)10、☆(並回)12、×(疑問回)2 ※個人評価 ☆ 3.7

OP 「Rise」
ED 「living inside the shell」


=== 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society(S.A.C. SSS) (2006年9月) ===

全1話 ☆ 3.5 {netabare}ウィザード級ハッカー傀儡廻しvs.素子の抜けた9課&素子(単独行動) ※孤立老人の介護問題を絡めたサスペンス仕立ての話だが特に観るべき点なし{/netabare} ※約1時間49分

OP 「player」
ED 「date of rebirth」


///////////////////////////////////////////////////////////////

◆制作情報(劇場版1&2)
{netabare}
原作マンガ      士郎正宗(講談社『ヤングマガジン海賊版』1989年5月)
監督         押井守
脚本         伊藤和典
キャラクターデザイン 沖浦啓之
音楽         川井憲次
アニメーション制作  Production I.G{/netabare}


========= GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 (1995年11月) ===========

全1話 ☆ 3.7 {netabare}素子との融合を望む"人形使い"との闘い ※何でここまで東南アジアの華人街っぽい背景が多用されるのか謎(これ、香港映画?と思うほど){/netabare} ※約1時間22分


===================== イノセンス (2004年3月) ===================

全1話 ☆ 3.7 {netabare}バトー&トグサ・コンビのガイノイド連続暴走事件調査 ※まるで未来の日本は香港にでもなったような設定が酷い{/netabare}  ※約1時間39分

投稿 : 2024/11/02
♥ : 27
ネタバレ

ラスコーリニコフ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

あにこれでの攻殻の順位変動

■攻殻の順位変動について

自分があにこれに来たのは2011年の夏、招待制だった頃で、その頃
の攻殻の総合順位は7~9位くらいだった気がする。

たしか1位がとらドラ!、2位エヴァ、3位がCLANNADのAFだったかな。

CLANNAD、あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。も現在よりは
上位だったはず。

その後、一部のエヴァアンチによる悪意のある工作(明らかに1人の
人間が大量のIDを用い低評価を付けまくり)により、エヴァの順位が
やや低下。シュタゲとコードギアスが徐々に上昇。

あとは自身何度か休止を挟んでいるので、正確な事は分からないです
けど、大きな動きは無かったような。

2013年の6月、化物語が急にトップに、攻殻も一気に順位を上げる。

詳しくは

化物・攻殻の大躍進
http://www.anikore.jp/board/608/

自分は2013年の6月下旬~11月中旬まであにこれを休止しているので、
どう変化したのか分からないですが、気付くと攻殻が1位になっていた。


■攻殻機動隊が1位の弊害

レビューサイトとしての信頼度は上がる気がするものの、あまり良い
事では無いよーな・・。


・視聴のハードルが高い

あにこれに初めて来た人が最初にチェックするのは、総合1位の作品と
そのレビューだろうし、それがよく知らない作品だったとする。

普通は見る。自分が来た時も、まずは「とらドラ!」を見た訳ですよ。

釘宮病だったので掘り出し物を見つけた気はしたものの、ストーリー
はそんなに面白く無かった、なんでこんなもんが1位なんだよ、と。

とはいえ、とらドラ!だったら多分どんな人でも完走出来るだろうし、
死ぬほどつまらない、なんて事も無いはず。

少なくとも「話が難しくてよく分からん」という事はまずない。攻殻
だと結構な確率でそれがある訳です。

「初っ端で挫折する人が出て来る」、これが問題の1つ。

タグに社会派ドラマとかあるけど、巷で話題の半沢直樹とかとは受け
入れの広さが違う。

「やられたらやり返す。倍返しだ!」で、キャッキャするよーな事は
できねー訳です。


・レビューも書きにくい

頑張って完走したとする、そうなると次はレビューです。

レビューを書くのが初だったら、まずは人の真似をして書いて慣れる。

あ~みんな 感動した 最高だった 神アニメだった って書いてる。

よし、じゃあ自分もそんな感じで書こう、と。

そんなノリで書いたレビューは段々消したくなるのですが、仮に後に
消したり書き直す事になるとしても「慣れるために必要な事」な訳で、
攻殻の場合はそのハードルが非常に高い。

「え~、こんな視点で見て、こんな事を書かなきゃいけないの~」

なレビューが沢山並んでいる訳です。当然、脱落する人が出て来る。


■一部の人用の作品

○攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 【全13巻】
巻数  初動  2週計  累計   発売日
01巻 *8,722 **,*** 19,680 02.12.21

○攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 【全13巻】
巻数  初動  2週計  累計   発売日
01巻 11,533 14,576 20,158 04.03.26 


ほぼ同時期に出ているガンダムSEED

○機動戦士ガンダムSEED 【全13巻】
巻数 初動   2週計  累計   発売日
01巻 30,147 38,685 71,081 03.03.28

売上が全てという事では無いですが、圧倒的に負けている訳でして、
性質としては あにこれでの順位は876位、総合得点は64.7点 の

○頭文字D Fourth Stage 【全12巻】
巻数  初動  2週計  累計  発売日
01巻 22,008 29,647 44,169 04.06.16

に近い。「特定の事に興味がなければ普通は見ない、けど、その一部
をほぼ確実に掴める」攻殻もそういった類のものです。


◯涼宮ハルヒの憂鬱 【全8巻】
巻数  初動  2週計  累計  発売日
00巻 28,729 33,892 35,176 06.06.23

○コードギアス 反逆のルルーシュ
DVD版 【全9巻】
巻数  初動  2週計  累計  発売日
01巻 36,634 45,593 62,527 07.01.26

○魔法少女まどか☆マギカ 【全6巻】
巻数    初動       2週計      累計
      BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 52,944(*9,097) 57,767(10,295) 68,547(11,542)

○化物語 【全6巻】
巻数    初動       2週計       累計
      DVD(BD)    DVD(BD)     DVD(BD)
01巻 15,513(29,372) 19,103(37,251) 24,755(58,048) 

○けいおん! 【全7巻】
巻数    初動       2週計      累計
      BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 32,503(*7,949) 35,220(*9,418) 42,625(10,847) 

○進撃の巨人 【全9巻】
巻数    初動       2週計      累計
      BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 37,339(19,454) 40,488(21,852) 51,473(29,252)


もっと色々見たければ、

検索 TVアニメ 先発累計平均5000超作品一覧 除外方式 2000年以降


つまり「1位の作品を見る」という気持ちでは、見ない方が良いです。

現在たまたま1位ですが無理して手を出すよーなものではない、内容
に興味がある一部の人だけが勝手に見て、勝手に盛り上がる代物。

自分も含めて、攻殻好きは「理屈っぽくて面倒臭いイメージがある」
ので、レビューを書いたらマイナスになる事もあると思います。


■下がんねーかな順位・・

見て面白くなかったら、積極的に面白くねー、つまらねーと書くのが
良いです。

所詮メスゴリラとむさい男共とハゲジジイが社会の隅っこで色々な事
をしてるだけの話で、2ndに出て来る茅葺総理の雰囲気が少しエロい事
以外は女っ気の欠片もない。

美女、美少女不足は現代アニメとしては「重大な欠点」な訳で、欠陥
商品にはいくら文句を言っても問題ねーです。


大昔に書いた少し恥ずかしいレビュー
(をやや修正、主に「読むに堪えない暑苦しい部分」をカット)
{netabare}

レビュータイトル:よし、そろそろ熱い想いを込めて書こう。

このサイトに来て半月程。
長文書くのは久々だったし、そもそもレビューを書くのは初体験で
この作品への思い入れが強過ぎたせいでこれのレビューを書くのを
後回しにして来たけど、大分慣れて来たんでそろそろ書く事にする。


■一部の人用の作品、マニア用、無駄な凝り具合

普通のアニメとは凝り具合が完全に別方向。

自分は、これ以外の作品ではどれだけ評価が高いものでも気に食
わないと言いたい放題書いてきたし、レビューの内容はそれで良い
と思います。


■科学崇拝

とある魔術の~の話じゃなくて、科学崇拝者ホイホイ作品という話。

【エヴァの自分のレビューの一部】

(エヴァレビューにはひどい事を書き過ぎた為、少し反省、控えめ
 に書き直しを行い、今はこの部分は残ってないです)

ーーーーーーーーー
「攻殻」-「立証可能な理論、現実性」+「ウジウジ君」=エヴァ

「現実を元にした虚構」=攻殻 「虚構を元にした虚構」=エヴァ

背景にあるのがエヴァの場合は宗教と現実味の無い哲学で、攻殻
の場合は、背景が科学と推論としての哲学、あと文学少々。

攻殻は実際ある理論を元に今後ありそーな世界で、ありそーな事を
やってる訳で、両方メッセージ性で話題になった事あるけど、違いは
理解して頂きたい。
ーーーーーーーーー

攻殻を絶賛していたアニオタの友人達は皆が数学、物理、科学等の
崇拝者でして、情緒面よりも科学、エロ、萌え、そして金。と。

検索 空想科学読本

この本中身を知らずにバスで読んで笑いが止まらなくなって困った
事があったんですが、多分この手の作品が好きな人がハマる傾向が
あるのが攻殻。

つまり理系用作品、文系でこの作品の中身にまで興味を持った人は、
相当偏差値が高く良い高校や大学へ行っている(た)人な気がする。

ちなみに「攻機」じゃなく「攻殻」と略しているのは、何の作品なのかが
分かりやすくなるようにする為。口頭でも「攻機」と言ってしまうと通じ
ない場合があるので「攻殻」と言う癖が付いてます。


■銃器、兵器、他陸自等、軍事オタホイホイ

作品には架空のもの実在のものが出て来て、攻殻はかなり凝って
ます。興味ないと評価できないでしょうけど、これも売りの一つ。

ブラックラグーンとかでも少し出て来る話で、
(「軍人達は皆プラグマティストだ、憶測じゃ動かない」だったかな)

軍事はプラグマティズム(実用主義、道具主義、実際主義、行為主義)
の塊なので、科学崇拝者達とは非常に相性が良い。


■攻殻は近未来の日本が舞台の話

2030年頃の日本を舞台にした話なんですけど、2019年の事とかも
あるので、現在2011年ですけど、ちょっとリアル科学は攻殻に追い
つきそうにないですね。追いつくと思ったのになー・・残念だ。


■本当にありそーな設定、無茶とは言い切れない設定

「立証可能な理論、現実性」「現実を元にした虚構」

・・、立証可能な理論って言葉の使い方おかしいけど、他に言葉も
浮かばないから、イメージとして理解して頂きたい。

(実証、証明・・とも少し違うよーな、やはり立証が一番近い気がする。
理論を立証するって言い方はあるから、立証可能な理論でOKなはず)

そういった現実からの発展、推測、推論、未来予測が元になってる
作品なので「そんな未来があり得そう」な訳です。


■その発想力と設定の細かさ

ここのレビューの限界文字数知らないけど、本気で書くと多分余裕
でオーバーするので、設定は解説サイト見て来ると良いです。

架空の話なんだから、そんなとこまで細かく設定する事ねーよ!な
内容で、それ故にマニアが食い付く。


■出てくるキャラ

メスゴリラ、むさ苦しいおっさん達、無駄に有能なジジイ、そして
攻殻が好きはきっと皆大好き笑い男。2rdでは雰囲気がエロい総理。


■作画

萌え絵じゃなくて、変な作画じゃなくて、本当に良かった。


■台詞

センスが日本のアニメのよくあるそれではない、ハリウッド映画系、
ともやや違う、脳筋系すらそのセンスのせいで激しく良いキャラに。

蒼天航路、富野作品、ブラクラ、銀英、冨樫や福本作品、ビバップ

パッと思いつくので、それぞれが独特に台詞が印象に残る作品。

攻殻にも脚本に6人のうち1人がビバップに関係してるけど、ビバップ
ともやや違う。台詞一つで台無しになるところを素晴らしい仕上がり。


■声優

有名どころだけ:田中敦子 大塚明夫、山寺宏一 中田 譲治 三木
眞一郎  折笠愛 榊原良子


■音楽

日本の至宝、菅野ようこ様

検索 Inner Universe (full song)

2011年秋に480万再生、2013年年末に900万再生。


■アニメーション製作・Production I.G

作中もだけど特にオープニングが気合入り過ぎで、当時開いた口が
塞がらなかった。

検索 攻殻機動隊 S.A.C Origa - inner universe OP : Ghost in the? Shell

検索 攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG Origa - rise - YouTube


■これが原作漫画だと?

原作を超えたとかよく聞くし、原作は見る気も起きない。


■士郎正宗

原作者の別の作品「RD潜脳調査室」を見た時の、俺の落胆っぷり
といったら・・いや、そんなものは存在しなかった。


■周囲で影響を受けた人は数知れず

急にハッキング系の本を読み出したり、サリンジャー作品を読み出し
たり、作品に出てくる用語をネタとして使いまくる人々。自分がよく使用
したのは「~と囁くのよ、私のゴーストが」

人気があったのは光学迷彩

検索 光学迷彩 ニコ大百科


■STAND ALONE COMPLEX

独立した個人が結果的に集団的総意に基づく行動を見せる社会現象
孤立した個人でありながらも全体として集団的な行動をとる


この作品は色々な部分を作ってる人々が、他の部分のあまりの出来の
良さに影響されて、普段の実力以上の仕事を、創作への熱意を燃やす
事になった、そう解釈しています。

「どんな環境でどんな仕事にも真剣に取り組む人」は非常に立派です。

しかし、やはり他がダレていたり、打ち込む価値が無いと感じてしまう
と、どうしてもやる気が無くなる、人間とはそういうものです。


我々の間には、チームプレーなどという都合の良い言い訳は存在せん。
有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。


製作側がアニメをどういう風に作っていくかは知らないので、ただの
妄想。

スタッフ全員本気で良い仕事し過ぎて、自分だけ手が抜けなくなった、
というより自分も感化されて本気になった、攻殻機動隊製作委員会に
はそれがあったと思う。

質の良い原作ありきで、更にスタッフ個人の良い仕事し過ぎ、頑張り
過ぎによる相乗効果、その成果こそが

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」だと、自分は信じている。


■書き直したい

暑苦しい駄文を大分カットしてすっきりしたけど、全部書き直したい。

でもそんな事をするなら、最初から全部見ないと・・。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 120

90.3 2 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング2位
攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG(TVアニメ動画)

2004年冬アニメ
★★★★★ 4.3 (2334)
12395人が棚に入れました
「笑い男事件」が解決して半年…労働力不足を補うため国外から招かれた約300万人の招慰難民。日に日に存在感を増す招慰難民と、国家の孤立を謳うインディビジュアリストたちの対立は深まり、テロが頻発するようになった。その状況の中で「個別の11人」を名乗るテロリストがテロと自決を決行する。
だが「個別の11人」のその行為の背後には、あるからくりがあり、その仕掛けに踊らされていただけだった。それに気づいた公安9課は、その事件の黒幕へと迫っていく。
一方、自決した「個別の11人」の生き残りであるクゼは、招慰難民のカリスマ的指導者となり政府と対立を深めていく。そして素子(もとこ)はそのクゼとの間に奇妙な因縁を感じ始める…。

声優・キャラクター
田中敦子、阪脩、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、小野塚貴志、山口太郎、玉川砂記子
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

低きに流れた水の中の魚は灼ける大地の事を何も知らない

攻殻機動隊S.A.C.の2期に当たる作品。前作の「笑い男事件」終結から凡そ2年後の世界が舞台。今回テーマの中核となるのはナショナリズムにテロリズム、難民問題、代理戦争など。前作と比べさらに政治色の強い作風になっています。

地道な捜査の積み重ねで積極的に「笑い男事件」の真相を追うミステリー色の強い1期に対し、2期では依頼を受けてから行動、事件が起きてから対応という受身の展開が目立ち、常に※1攻性である事を謳い文句にしている9課の本領が発揮される場面が少なくなってしまっています。情報戦における優位性を確保出来ずに敵に先手を打たれるなんて場面もしばしば。物語の運びからもやや鈍重な印象を受けます。

1期では表舞台に上がらなかった「※2内閣情報庁(内庁)」なる組織が9課のライバル的な位置付けとして登場した事がその大きな原因で、内庁は監視、工作活動により、9課の動きを牽制しつつ、自らの組織の謀略計画を進行させていきます。

さらにこの2GIGではクゼという強敵も9課の前に立ちはだかります。テロリストという括りの中にありながら、非常に人情深く頭の切れるキャラなので、彼もまた9課のみならず内庁をも翻弄する存在として物語の中で大きなウエイトを占めていく事になります。

踏まえ、本作2GIGは、公安9課と内庁、さらにクゼを交えた-三つ巴の化かし合い-頭脳戦の色合いの強い作品になっていると言えるのではないでしょうか?

※1~2
{netabare}
※1:作中では当たり前の様に使われている単語ですけど、あれこれ辞書を引いても該当するものは見つからず(汗)内攻性(表面に表れず内側に広がり攻める意)という言葉は存在するので、概ねその逆のニュアンス、単純に攻撃的、積極的という意味合いで捉えても問題ない言葉だと思います。

※2:現・内閣情報調査室、国家安全保障会議、国際情報統括官組織などを統合して作られた組織との事。国内外の諜報活動や情報操作等による謀略活動なども行なう上、国防に関しても発言力を持つという非常に力のある組織。米CIAみたいな感じです。人員数、組織力の面で9課を圧倒的に上回る。
{/netabare}

また本作では、個人の情報を丸ごと外部記憶装置に移し変えた時、そこにゴースト(魂)は宿るのか?あるいは人造物にゴーストは宿るのか?という疑問や、肉体(義体)がゴーストに与える影響等についてのお話もそこかしこに見られ、1期と比べ、より原作テーマへの接近が試みられている点にも大きな特徴があります。

人の体を一度分解して別の場所に再組成する転送装置というものが、古~い海外ドラマの「※3スタートレック」とか洋画「※4ザ・フライ」なんかでは登場しますが、ちょっとだけ冷静に考えてみると、いずれの例でも、装置に入った人は転送の際-肉体が分解された時点で-一度死んでいると解釈出来る点に非常な怖さがあります(汗)分解の過程を除けば、本作で描かれる人体情報の電脳ネットへのコピーも、これとほぼ同じ事をしていると言えます。

ではコピーされた人格って同じ人?別の人?という疑問についてはどうなのでしょう。近似として双子の例を取ってみると、遺伝情報は同じでも、ヒトの脳の取り得る量子状態は一瞬毎に10の13乗通り以上あるらしく、両者の個性の分岐は主にそれゆえに生じる現象だそうなので、オリジナルにとっては双子に等しいコピー人格も、このケースと同じく独立した別個の人格になると考えられる様です。

さらに電脳ネット内の人体情報を別々の場所にコピーした場合、当然の結果として、3つ子、4つ子に相当する異なった人格をそこに見出す事が出来るはず‥。

まとめると、わたし達の身体に宿す人格(本作で言う所のゴースト)とは膨大量の選択肢から脳が選び続けた積み重ね、迷路の様に無数に枝分かれした可能性の末端にしか観測されない、また凡そ、この宇宙に唯一つしか存在し得ない、かけがえの無い奇跡の様な帰結と評価する事が出来るのです。

なので、今この文章をお読みの皆さん! 皆さんの中に仮にコピー人間の方がいらっしゃったとしても、何ら恥じる事はありませんよ。あなたはあなた以外の何者でもないのですから。「私が死んでも代わりはいるもの…」とか暗~い台詞は当然無用です(笑)ご自身のゴーストには一定の誇りと責任を持って胸を張って生きましょう!

‥さてさて、もう一つの原作由来のテーマ、肉体と精神の不可分性についてに話を移すと、これは電脳ネット内に記録されたコピー人格が自身の肉体を錯覚する事さえ出来れば(義体を手に入れるか電脳ネット内にアバターを作るなどすれば)充分にクリアー出来る問題だと思います。肉体から脳へ、脳から肉体へというフィードバックが上手く働かないと精神の健康を害してしまうそうなので、これは必須の条件と言えます。意識はあるのに外界の事を何も認識出来ない、な~んて状態がずっと続いたら※5SAN値が下がりまくる事は容易に想像出来ますからね(笑)原作漫画にあたる「攻殻機動隊2」や派生作品の「紅殻のパンドラ」においても、そんな問題について触れられていますので、ご興味のおありになる方はぜひ手に取って読んでみて下され。

※3~5
{netabare}
※3:邦題「宇宙大作戦」。惑星連邦(訳によっては銀河連邦とも‥かな~り違う)なるものが設立された遠い未来の宇宙を舞台にしたテレビシリーズ。宇宙船エンタープライズ号の船長カークと、その仲間たちの活躍を描く惑星・宇宙探査アドベンチャー。戦記ものの性質も若干ある。派生作品多数。今年(2017年秋)には「スタートレック:ディスカバリー」という新シリーズも公開されるそうです。でも日本での知名度は何故か低め(汗)

※4:転送装置を使ったある実験中、その中に一匹のハエが紛れ込んでしまい大変な事に‥身の毛もよだつSFホラー映画。

※5:クトゥルフ神話TRPGにおけるパラメーターの一つ。プレイヤーの正気度を示す数値。SANは英語のSanity(正気さ)の略。0になると発狂し、ゲームオーバー扱いとなる。
{/netabare}

文学について、引用元は1期はD・J・サリンジャー、2期は三島由紀夫とされていますが、後者については引用許可を取るのが困難とみられ、また右翼による殴り込みの可能性も踏まえ、結局の所、架空の思想家パトリック・シルベストルにすげ替えられたという裏話があるそーです。なんてこった(汗)

確かに神山監督は現実の事件と自身の作品を深く結びつける傾向があり、関係者からの反感を買う種を闇雲にばら撒いている節があります(笑)ですが、これはあくまでもフィクション。モチーフとした事件と作中エピソードの顛末には何の関係もありません。アニメに自分の思想を代弁させる様な行為はあまり褒められたものではありませんが、神山監督はギリギリの線の所でその点をカモフラージュしつつ、あくまでも社会問題に目を向けさせる方向に視聴者を誘導している様にわたしには思えます。何と言いましょーか、綱渡りですね~(笑)

三島由紀夫の名を使えなかった事で、前作と比べリアリティが落ちたと言う意見を方々で目にしますが、この点については、わたしはかえってそれで良かったのではないかと思ってます。前作におけるサリンジャーの引用のくどさは、作為的なものが見え隠れする所為で、かえってリアリティを削っていた様に私的には思えましたし、サリンジャーも三島由紀夫も知らぬっていう人にとっては、はっきり言ってどっちでもいい事ですからね。事実、物語としてちゃんと成立している※6総集編ディスクでも、シルベストルに関する台詞は殆ど削られていましたし(笑)

士郎先生の漫画の良い所は、特定の政治思想などに肩入れする様な事はせず、率直に淡々と未来世界を夢想している所にありますが、それだけに、善と悪、敵味方の図式で描かれる事の多い、ある程度の単純さが要求される娯楽性重視のアニメ作品とは、もっと言えば、テーマを明確に提示したがるきらいのある神山監督の作風とは、若干ながら相性が悪いのかも知れませんね(汗)


キャラについて、2期において先ず目を引くのはやっぱりこの人! 怪人・合田一人(名は"かずんど"と読む。ユニークな顔とセットで覚えよう)。顔面の右半分と左半分の造形のギャップが著しい、有名どころで例えるなら※7あしゅら男爵みたいな風貌してます。1期には存在しなかった役どころにあり、序盤から登場する明確な敵役として強い印象を残します。自己顕示欲の強い自惚れ屋。あくどい事を嬉々として語るタイプのキャラなので、視聴者の憤りの矛先も9課の人たちと同じくこの人に向かうかも知れません。

そしてクゼ・ヒデオ。能面の様に動かない顔を持つ※8前身義体のテロリスト。頭脳明晰にして戦闘能力極めて高し、自らの思い描く革命を実行に移さんと信念のままに行動する人。弱者の味方で無駄な争いを好まぬ人格者でもあるという、正に完璧超人。中の人(小山力也さん)曰く「完璧すぎて真似出来ない」だそうな‥わたしもそー思います(笑)

また、9課の新メンバーとしてアズマ、矢野、プロト君が登場しますが、前者から数えて二人は出番少な目、影薄めの役回り。プロト君には結構見せ場が用意されてます。一応3人とも原作登場キャラで、アズマは押井監督の「イノセンス」にも登場。そっちでもこの人不遇な扱いですが(汗)原作漫画の攻殻機動隊1.5では出番多めだったりします。嗅覚素子が強化されていてワンコみたいに臭いで対象を追跡出来るという裏設定あり(笑)

※6~8
{netabare}
※6:新作映像、新規アフレコを追加して161分にまとめた再編集版「Individual Eleven」の事。シルベストルに関する台詞、個別エピソードの殆どをカット。スピード感重視の映画的編集になっており、テレビ版よりもサクサクと物語が進む印象で観やすかったです。

※7:元祖スーパーロボットアニメ「マジンガーZ」に登場する悪役。右半分は女性、左半分は男性という設定の人造人間。

※8:脳以外の全てを機械化している人の事を指す。作中では少佐とクゼの二人が前身義体。部分義体の人とは異なり、生体にかかる負荷を殆ど考慮しなくても良いので、その動作は高速かつパワフル。痛覚とかの遮断も出来るので体が損傷してもひるまない。
↓続き
片腕サイボーグって何だか強そうなイメージありますけど、重い物を持ち上げたり、思い切りパンチしたりすると接合部分の脱臼や疲労骨折のリスクが大きくなって、あまりよろしく無いらしい。原作1巻では"部分サイボーグは「人間の能力を補う」前身サイボーグは「人間以上を作る」"と説明されていました。そういう理由でこの二人(次いで義体化率が非常に高いバトーさんとか)は別格に強い。主人公補正とかではない(笑)
{netabare}後半のバトーさんVSクゼの一騎打ちシーンは本作のハイライトシーンの一つ。派手なシーンではありませんが緻密な描写が美しい!最優の義体使い同士の闘い、とくとご覧あれ!{/netabare}{/netabare}

構成について、続き物と一話完結のエピソードが明確に区別されていた1期と違い、大部分のエピソードが主軸となる「個別の11人事件」に関連する内容となっています。なので下に付記した分類は申し訳程度のものと考えて、素直に全話視聴した方が良い気がします。総集編を観て面白かったら、テレビ版を視聴というのもアリでしょう。

黒=一話完結 :1.2.3.6.8.10.13~15.17.18
白=クゼ関連 :5.11.12.16.19~21.23~26
灰=ゴーダ関連:4.7.9.22

全体的に緊迫感高め、アクションシーン多めの構成ですが、上でも述べた様に前作では深く切り込まなかったゴースト(魂)の所在についてのお話なんかも割と多めになっています。

他方で1期には辛うじてあった日常描写やお遊びシーンはさらに少なめです。でも本編終了後のお約束コーナー「タチコマな日々」は健在なのでご安心あれ。ちょこっとだけ笑かさしてもらえます(笑)

音楽について、前作に引き続き、菅野よう子さんの曲とOrigaさんの歌の相性が絶妙なオープニングテーマ「rise」が特に良いっ! 前作の「inner universe」は摩訶不思議な浮遊感が特徴的でしたが、今回の「rise」はドラマ、闘争を思わせる、流麗かつ勇ましい曲。2ndGIGの作風との親和性が感じられます。

作中音楽も全て素晴らしい。ですが最も印象に残ったのは、その名も「Go DA DA」という、オスマン軍楽の「ジェッディン・デデン」を改悪した様な曲。聴く度に"ヤなやつ出てきたな~"と感じてしまう程に強烈なテーマ。おかげで色々と刷り込まれてしまいました(笑)

完成まで長らくの時間を要してしまいましたが、学びつつ発見しつつ、ゴーストの囁きに導かれて、今回も楽しく書かせて頂きました。


再視聴を終えて(ネタバレ無しですが一応折り畳んでおきます)
{netabare}
小説や実写映画では既に御馴染みの、近年ではアニメ作品においても確立されつつあるスパイものというジャンルですが、今回の再視聴を通して、本作は後者の先駆けとして既に大きな仕事を果たしていたという印象が新たに加わりました。

フィクションの中で描かれるスパイと言えば、情報を盗み取るとか要人を暗殺するとか、かなり派手な仕事をするのが常で、華々しい表の面(変な表現だけど)だけを描く事がお約束となっていますが、反してこの職業の持つ地味で目立たない仕事、最も卑しい面が描かれる例は極めて稀です。

虚言の流布は現実の世界でもスパイの手によって頻繁に行なわれており、米ソ冷戦時代には特に苛烈に、またそれ以前もそれ以後も、手を変え品を変え巧妙さを増し、脈々と繰り返されてきたものであります。

活版印刷の発明以前から、プロパガンダ戦略は戦争においても、企業間競争などにおいても、大きな役割を占めていた様ですが、時代が進むにつれ、ラジオ、テレビ、ネットと情報の伝播の速さは爆発的な成長を遂げ、その重要性はますますの高まりを見せています。

近未来の世界を描く本作には、電脳ウィルスなるものが存在しますが、これもまたプロパガンダ戦略の一種と見て取る事が出来るのではないかとわたしは思います。

ネットワークを通して知らず知らずの内に人から人へと感染し、いつの間にかその行動を支配するという、ユーザーへの直接攻撃を目的としたコンピュータウィルスとも取れるこの技術は、一見怖ろしげなものの様に見えますが、ちょこっとだけ視点をずらせば、現代に生きる私たちもまた、既にテレビやネットなどを介して、感情や思考を意図ある何者かによって支配され続けている、そんな風には考えられないでしょうか?

一例をとってみると、テレビ人間とそうでない人の違いが挙げられます。テレビの中でも特にバラエティ番組の類を全くと言って良いほど見ないわたしは、テレビ大好きっ子みたいな人と話すと、その言葉遣い、ものの考え方に不安と言ってもいいほどの違和感を覚える事がちょくちょくあります。これは上の話で言えば、わたしがウィルスの感染源との接触を遮断した結果起きた必然であって、その良否はともかくとして、感染者と非感染者との間には無意識下のレベルで何らかの隔たりが生じてしまっている事を表します。感染源にはネット情報は勿論の事、紙媒体の本も当然含まれますので、わたしとて既に何らかのウィルスに感染してる可能性は充分にありますけど(笑)

洗脳は苦言によってではなく、甘言によって行なわれる所に、その正体の見つけ辛さがあります。良心に訴えかけるもの、同情を誘うものは、素朴な正義感を抱えているものにとっては格好のエサで、原油まみれの水鳥の映像や、一人の少女の証言が、戦争の正当性を高める為に利用されたという※9歴史的な事実さえもあります。

昨年話題になった「インターネット上で最も影響力がある25人」の一人に選ばれたある少女の発言にしても、わたしたちの殆どは、それが誰の意図または指示で行なわれたのかを知る術を持ちません。

総評として、大義名分の中に隠された嘘、人心操作のメカニズム、政治における光と闇の実態を、際どい所まで描き切った本作は、社会問題をテーマに据えた攻殻SACシリーズの中でも、最も危険な作品、屈指の名作と評価する事が出来るのではないでしょうか?


※9:湾岸戦争の事、アメリカ軍による自作自演と、難民を演じる様に指示されたクウェート駐米大使の娘によるプロパガンダがテレビなどで繰り返し報じられる。
{/netabare}

おまけ・用語解説など
{netabare}
映像カーテン:通電性のある特殊ガラスに微電流を流して電波や可視光を撹乱、遮断する技術。狙撃や盗聴に対して絶大な効果がある。

バイオロイド:クローン技術を用いて造られた人間。遺伝子操作によってネガティブな因子が取り除かれているおかげで物腰がとても柔らか。つまりいいヤツ。血が白いがロボではない。

スタンナックル:手袋型のスタンガン。義体化してる人にも有効。使用者にもビリッと来るらしい(笑

マテバ:イタリアの食品機器・銃器メーカーの名前。作中では主にトグサさんの使う回転式拳銃「マテバM-2008」が度々こう呼ばれる。発砲時のガス圧で次弾が自動装填されるオートマチック拳銃と比べ、単純構造ゆえに機械的トラブルが起こりにくい。装弾数が6発とやや少ないのが弱点。義体化を敢えてしないトグサさんのキャラと共に作中におけるアンチテーゼの一つになっている。と思う。

日本の奇跡:マイクロマシンによる放射能除去技術の事。人工物ではなく天然モノですが、1986年に原発事故を起こしたチェルノブイリで放射線を養分化できる細菌が近年になって発見されたそうです。除去や無害化とは程遠い性質ですが、こういったものの研究が作中の日本の奇跡みたいな技術に繋がっていくのかも知れません。

マシンなんて言うと鉄やシリコンなどの無機物から作られているというイメージを持たれている方も多いかも知れませんが、有機物のものは勿論の事、近年では生物から採取した生体パーツをそのまま利用する、ちょっと大きめなセボットと呼ばれるマシンなんかもあるそうです。けっこう怖い(汗)実は本作で描かれるマイクロマシンの多くも有機物だったりします。

また作中では「マイクロマシン汚染」なんて言葉もありますが、自己増殖する様にプログラムされたマイクロマシンやナノマシンは天然のウィルス以上に危険なものになる可能性があるそうで、戦争やテロなどへの使用も懸念されているらしい。こちらはかなり怖い(汗)

米帝:アメリカの政策を非難する際に度々使われる「アメリカ帝国主義」を指す言葉ではなく、本作における第四次非核大戦後、3つに割れた国の内一つを指す。正式な表記はアメリカ帝国(American Empire)他二つはアメリカ合衆国と米露連合。

ポセイドン・インダストリアル:「日本の奇跡」の開発によって飛躍的な成長を遂げた巨大多国籍企業。マイクロマシンの他に、義体、兵器の開発・製造なども行なっている。米帝と強固な繋がりがあり、前日譚(パラレルワールド扱いですが)の「紅殻のパンドラ」では悪の秘密結社のイメージ、危険な組織として描かれる。前身である「大日本技研」の名は士郎先生の承諾の元ガレージキットメーカーの名前にもなっているそうです(笑)

デカトンケイル:ポセイドン・インダストリアルが管理するスーパーコンピューターのこと。データを基に仮想人格を構築、シュミレーションする事が出来る。名の由来は10倍を意味する"デカ"と100の手と50の頭を持つギリシャ神話の怪物(巨人)"ヘカトンケイル"の様です。

スプリング8:「播磨科学公園都市内に位置する大型放射光施設。電子を加速・貯蔵するための加速器群と発生した放射光を利用するための実験施設および各種付属施設から成る。」とwiki先生は言ってました(笑)作中ではある人物がプルトニウムの分析の為にここへ向かう描写がある。

招慰難民:世界大戦(攻殻の世界では2030年までに2度の世界大戦が起きているという事になっている)で発生したアジア難民の内、日本に受け入れられた人たちがこう呼ばれる。300万人程いる。国から仕事を与えられているものの、国内労働力が過多の為、国民からは税金の無駄遣いと非難されている。

ハブ電脳:ハブは漢字で書くと轂。轂(こしき)とは車輪の中心、自転車で言えば放射状に伸びるスポークの中心部を指す。作中では膨大数の電脳から生じる意識を繋ぎ止める特定の人物の電脳の事をハブ電脳と表現していた様です。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 24
ネタバレ

キャポックちゃん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

手段のためには目的を選ばない男の末路

【総合評価☆☆☆☆☆】
 士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』の映像化作品には、押井守の劇場版2作、神山健治のテレビ版3作、黄瀬和哉の新シリーズ(『攻殻機動隊ARISE』+新劇場版)、ハリウッド実写版(未見)があるが、押井版第1作『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と神山版『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』および本作は、いずれもアニメ芸術の到達点を示す偉大な傑作と言って良い。
 神山版第1作の設定を受け継いだ本作(『攻殻SAC2』と略す)では、国家の中枢で暗躍するゴーダの策謀と、これを未然に防ごうとする公安9課の活動が基本プロットとなる。前半では、個別エピソードのように思える話がいくつも挿入され、やや緩慢に話が進むが、後半になると、せせらぎが寄り集まって歴史の奔流となる様が描かれ、終盤8話は、息もつかせぬ怒濤の展開となる。
 日本には、『GUNSLINGER GIRL』『RIDEBACK』『BLACK LAGOON Roberta's Blood Trail』『輪るピングドラム』『残響のテロル』など、テロリストを登場させた傑作アニメが少なくない。ハリウッド映画では、無差別テロリストは問答無用の悪党として容赦なく処断される。これに対して、日本アニメになると、「彼らはなぜテロに走るのか」「テロを防ぐためなら何をやっても許されるのか」といった問題に着目して深く掘り下げており、遥かに見応えがある。『攻殻SAC2』は、「国家権力によって捏造されるテロ」というアイデアをベースに、難民問題や軍産複合体などにも目を向けた社会派作品である。
 もっとも、扱う問題が大きすぎるため、一度で理解することは難しい。私も、初見の際には、英雄的なクゼに気をとられて途中からストーリーを十全に把握できなくなり、冒頭から何度も繰り返し見て、ようやく真価を感じ取れた。以下のレビューでは、再見しようという人のために、ネタバレ前提で作品の意味を解き明かしたい。

【社会的背景】
 舞台になるのは、第3次・第4次大戦の惨禍を経て、新技術による急速な復興を遂げつつある未来の日本。一時期、安価な労働力として大量のアジア系難民を受け入れたが、復興需要が一段落して労働力が過剰になり、難民を隔離・収容する全国数ヶ所の居住区はスラム化している。一方、国民の間には、難民が自分たちに失業をもたらす原因でありながら、彼らに税金が投入されることに対して不満が募り、反感が高まっていた。
 世界情勢に目を転じると、2度の大戦によってパワーバランスが大きく変わっている。もっとも、アメリカ(分裂した一方が「米帝」と呼ばれる軍事大国になる)と中国の冷戦が深刻化する状況は、2004年の制作時よりも現在の世界に似ている。
 こうした中で、{netabare}親米派の官房長官らが、難民問題という火薬庫にワザと火をつけ、米軍の協力の下、これを一気に鎮圧することで、民意をまとめ強権的な体制を作ろうと思い立つ(断片的なセリフから、そう推測される)。社会が混乱したとき、敵対勢力をでっち上げて力で押さえ込み、主導権奪取を画策するのは、権力者の常套手段である。
 ただし、『攻殻SAC2』で描かれるのは、政治家たちの生々しい実態ではない。「難民問題に火をつける」という1点に全力を傾注するゴーダの姿である。{/netabare}

【ゴーダは何をやろうとしたか】
 ゴーダは、内閣情報庁の要職にある立場を利用し、情報技術(IT)を駆使して社会的な状況を「プロデュース」する。
 彼の策略は、2つの方向で進められる。{netabare}1つは、コンピュータ・ウィルスを利用して難民排斥を扇動するテロリスト・グループ「個別の11人」を作り、彼らを英雄に祭り上げることで、国民の間にある反難民感情を増幅させること。記憶を改竄する技術(作品世界で開発済みとされる)を使って、「個別の11人」のメンバーに、自分たちは高邁な理想を胸にテロ活動をしていると錯覚させた。現代に置き換えるならば、SNSのフェイクニュースを利用した世論誘導といったところか。
 ここで重要なのは、記憶の改竄によって国民を直接扇動するのではなく、「個別の11人」という媒介者を利用した点である。直接的な扇動は、カラクリが露見したときに民意のベクトルを一挙に反転させる危険がある。しかし、まず媒介となる扇動者を作り上げ、彼らに対するシンパシーを広めておくと、より安定的かつ容易に民意をコントロールできる。ゴーダのやり口(と言うより、神山らによる脚本)は、実に考え抜かれている。
 もう1つの策略は、難民がプルトニウムを利用した核テロを画策中だと国民に思わせること。核に対する根源的な恐怖感が、反難民感情を掻き立てるからである。ロシアン・マフィアがプルトニウムを難民に売り渡すというシナリオを組み立て、手駒として利用できるクゼを動かした(らしい。はっきりとは描写されない)。日本政府側のゴーダがロシアからプルトニウムを調達するのは難しいので、廃墟となった新宿原発から抜き取ったものを利用した。
 2つの策略によって難民排斥の民意が固まり、アメリカの協力を得て一気にカタをつけるべく軍が動き出すところまでが、ゴーダの使命である。その先は、政治家が自分の思惑に沿って事を進める手筈だったのだろう。{/netabare}

【ゴータの人物像】
 『攻殻SAC2』で瞠目させられるのが、ゴーダという人間の姿である。{netabare}事故で顔面を大きく損傷したのに、あえて修復せず異形のままでいたのは、自分を特別な人間に見せかける自己演出なのだろう。事故前はごく平凡な顔立ちの官僚で、その顔貌の通り、与えられた仕事に素早く対処できる有能な官吏だったと想像される。難民問題に火をつけるための策略は、実に綿密に練り上げられており、本人は天才の技だと思っているようだが、官僚的な処理能力を発揮したに過ぎない。火をつけた後に何をするか具体的なビジョンは語られず、明確な目的を持たないままテロという手段を策謀しただけである。
 連合赤軍事件、オウム真理教事件、911全米同時多発テロなど、現実に起きた事件を調べると、テロ後に何がどうなるかについて、関与した者がきちんと考えていなかったことがわかる。本人は理想のために身を捧げるつもりなのに、その理想を実現する上でテロがどんな役割を果たすのか、理解できていたとは思えない。むしろ、最終的な目的よりも、テロそのものが持つ破壊の美学に陶酔していたように感じられる。
 こうした事情に目を向けたアニメ作家が、自身が全共闘世代で学園紛争の実態を目の当たりにした伊藤和典や押井守である。伊藤が脚本を書き押井が監督した『機動警察パトレイバー』シリーズには、テロという手段だけが共通するテロリストたちの互助会(!)や、軍事力で実権を掌握したのに何の要求も出されない「クーデターを偽装するテロ」が登場する(前者は旧OVA版『機動警察パトレイバー』第2話「ロングショット」、後者は劇場版『機動警察パトレイバー2 the Movie』)。
 押井の薫陶を受けた神山が、テレビ版『攻殻機動隊』シリーズを構想するに当たり、これらの作品を参考にしたことは間違いない。特にゴーダは、「手段のためには目的を選ばない」人間であることが強調される(アメリカが弱腰になったとき、中国と手を組むことも視野に入れていた)。
 こうしたゴーダの特性を象徴的に示すのが、パトリック・シルベストルの著書「初期革命評論集全10巻」に続くとされる、幻の第11巻「個別の11人」である。実は「個別の11人」という著作は実在せず、ネットで探し出して読もうとするとウィルスが発症するという仕掛けなのだが、ウィルスに操られている者は、これを読んで感銘を受けテロリストとして目覚めたという偽の記憶を植え付けられ、心の底から信じてしまう(この状況を描写した第12話「名も無き者へ」のシーンは、肌が粟立つほど恐ろしかった)。テロリストの理想が完全な虚構でしかないという設定は、ゴーダの無目的性を象徴的に表す。
 実は、脚本を執筆した神山は、当初、三島由紀夫の著作を引用しようと考えたようだ。しかし、理想が空っぽだという見解を示すのに、現実の作家を持ち出すのは明らかに不適当である。シルベストルという(現実世界から見ると)架空の思想家の(作品世界において)実在しない著作という二重の虚構性によって、目的がはっきりしないままテロが遂行されるという現実的な恐怖が際立ったわけであり、三島からシルベストルに変更したのは正解だった。
 ビジョンを欠いたまま手段に関して緻密な策略を練り上げ、それだけで自分は天才だと自惚れる小役人的なゴーダを、バトーは、次のような言葉で罵倒する(第22話「無人街」):「お前はやはり、二流だな。…(中略)…個人的な思いつきを他人に強要しているだけでは、人の心を打つことはできない。そこには、善意でも悪意でもいい、何かしら確固たる信念のようなものがない限り、天才とか英雄と呼ばれる存在にはなれない」{/netabare}

【反撃する公安9課】
{netabare} 『攻殻SAC2』の物語が始まったとき、すでにゴーダの策略は大半が完成していた。内閣情報庁の機能を利用してレールを敷き終えており、いくつかの不確定要素を除くと、後はシナリオ通りに事を運べば良い。
 反難民テロにおける犯人の不可解な行動などをきっかけに、公安9課の荒巻課長は、背後に何らかの謀略が蠢いていると気がつく。草薙素子ら9課のメンバーに調査を命じるものの、全体像がなかなか見えてこないまま、状況は悪化するばかりである。視聴者も、このジリジリするような経過に付き合わされ、少しずつ提示される断片的な情報に混乱させられる。人によっては、この部分が面白くないと感じるかもしれない。しかし、事態の深刻さ・巨大さを納得させるためにも、このジリジリ感が必要なのである。
 ゴーダの策略に対して完全に出遅れた公安9課だったが、情報を集めながら少しずつ体制を立て直し、ある出来事をきっかけに最終的な逆転劇へと突き進む。こうした序破急の展開は、終盤における圧倒的な迫力を生み出す。
 策略が崩壊するきっかけの一つは、難民が核テロを計画しているというデマにリアリティを付与するため、プルトニウムの実物を使ったことである。「ロシアの軍事施設か、原発の使用済み燃料か」といったプルトニウムの出所は、同位体組成を分析すれば突き止められる。草薙素子は、バトーを使ってゴーダの気をそらしている間にプルトニウムを横取りし、一気に形勢逆転を図る。
 さらに、シナリオから逸脱する2つの不確定要素が、ゴーダの策略を狂わせる。1つは、難民のリーダーとなるクゼで、ともすれば低きに流れがちな民衆を教導する宗教的英雄然とした姿を示す。もっとも、核武装して難民居住区を独立させるという発想は、おそらくウィルスに由来するものであり、武力行使を極力回避するという主張も難民に浸透していなかったので、登場シーンが多い割に、その役割はあまり大きくなかったようにも思われる。このことは、神山自身、承知の上なのだろう。クゼは、義体の仕様で口がほとんど動かせないが、これは、その英雄的風貌に視聴者が感化され過剰な思い入れをしないように、敢えて設定した欠陥かもしれない。
 クゼよりも重要なもう1つの不確定要素が、茅葺首相である。最初見たときには、彼女の立ち位置がよくわからず、終盤の急展開で少し混乱したが、再見して漸く、彼女こそが『攻殻SAC2』において決定的な役割を果たすキーパーソンだと気がついた。{/netabare}

【茅葺首相の役割とは】
{netabare} 日本初の女性首相となった茅葺は、選挙のために担ぎ出された人寄せパンダである。官房長官による裏工作のせいで充分な情報を入手できないため、優柔不断に見える行動しか取れず、内閣ではいいようにあしらわれている。しかし、こうした外見とは裏腹に、明確な信念に基づいて日本のために尽くそうとする、真面目でひたむきな政治家である。
 ラストのクライマックスで、彼女は、ある決断をする。それ以前に、彼女が親中派だと思わせる描写があり、米軍を利用した策謀をひっくり返すため、中国に頼るのではないかという疑念を視聴者に抱かせるのだが…。私は、決断の中身が何かわかったとき、胸が熱くなった。彼女は保守的な愛国者ではあっても、パワーポリティクスに与する権力志向の政治屋ではない。自分の理想を軍事大国に向かってはっきりと主張できる度量がある。
 『攻殻SAC2』では、茅葺首相が思うように事を運べず、官房長官の言いなりかと見える出来事がいくつも起きる。にもかかわらず、決して悪し様には描かれない。草薙素子が「課長の好みのタイプ」と茶化すシーンもあるが、荒巻は、その言葉を素直に肯定する。難しい決断が必要なときには座禅を組み、暗殺者に狙われても意志を揺るがせない彼女の姿は、若々しく美しい顔立ちと相まって、作者が理想を託したことを窺わせる。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 5
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

これぞ、公安9課

前作同様、一つの事件を中心に話が進行するが、今作は個別の11人事件が中心である。{netabare}難民独立を利用して難民を殺そうとしたゴーダと難民の心を掴み、全身義体で戦うクゼの戦いが要点の事件だったと思う。{/netabare}

{netabare}クゼの過去が明かされる話があったが、同時に素子の過去が明かされていたようだった。やっぱり子供の頃に2人は会っていて、最後の2人のやり取りがようやく会えた喜びが見えた気がした。{/netabare}

見終わった後は何とも言えない切なさが自分にはあった。謎に包まれている素子の過去?が見られるのも攻殻機動隊好きには嬉しいのではないだろうか?とは言っても、好きな人は絶対見ているだろうけど。それに、嬉しかったのは自分だけかも。

OPはOrigaのrise。やはり良曲。Origaが亡くなってから時間は経つけど、眼曲が残っていくのは嬉しい。

1. 第1話 再起動 REEMBODY
「個別の11人」と名乗る武装グループによって中国大使館が占拠された。密かに出動していた公安9課の面々は無期限待機命令の解除を待つ。総理は、犠牲者を出さず15分以内にテロリストを鎮圧することを条件に、突入を許可するが──。

2. 第2話 飽食の僕 NIGHT CRUISE
3大ネットワークJBNNの会長・片倉の専属パイロットを務めるギノ。欺瞞と不正に満ち溢れた世の中から、憧れの高級娼婦“ヒララ”を救い出したい。義憤に燃えるギノは、彼らに正義の鉄槌を下すべく行動を開始する!

3. 第3話 土曜の夜と日曜の朝 CASH EYE
政財界の名士である田所会長のもとに、窃盗犯から予告状が届いた。9課は芽葺首相の命により、田所主催のパーティを警備することになる。だが、窃盗犯の正体は草薙だった! 9課の本当の狙いは何処にあるのか!!

4. 第4話 天敵 NATURAL ENEMY
合同演習中にAIヘリが暴走。誘われるように各地で無人のヘリが動き出し、集結し始めた。そして、対応を迫られる9課の前に忽然と現れた内閣情報庁の“ゴーダ”。彼の真意も図れぬまま、草薙らはタチコマで出撃するが──。

5. 第5話 動機ある者たち INDUCTANCE
「個別の11人」から茅葺首相に暗殺予告文が届いた。9課は警護につくが、参禅に乗じて暗殺は実行にうつされる。茅葺に迫る全身義体の男・クゼ。はたして草薙は阻止できるのか!

6. 第6話 潜在熱源 EXCAVATION
エネルギー省を脅迫していた男が、不可解な死を遂げた。トグサは彼の足跡をたどるべく、招慰難民居住区「東京」に向かう。だがそこでは、あるべきはずもないものが、地下最深部から呼び起こされようとしていた。

7. 第7話 狂想は亡国の調べ
新宿地下原発から燃料棒の海路移送計画が「個別の11人」に漏洩した。ゴーダの指揮のもと、9課は移送任務を請け負うが、経由する陸路は不穏な空気が漂う難民居住区だった。

8. 第8話 素食の晩餐 FAKE FOOD
「個別の11人」容疑者カワシマの身柄確保に奔走する9課。だが、虚構であったとしても現実へと変換されれば、それは真となる──。彼は本当に「個別の11人」なのか、それとも別の目的を持った偽者なのか!?

9. 第9話 絶望という名の希望 AMBIVALENCE
生きることに希望を見だせない人々がその身をやつす「自爆テロ」。そして、それを阻止するため奔走する9課。一方、単独で内閣情報庁に潜入した草薙は、そこでゴーダの仮想人格と対峙するが──。

10. 第10話 イカレルオトコ TRIAL
非番中にやむなく発砲してしまったトグサは、単なる証人から「不幸な事故」の引き金に仕立て上げられる。証言台に立つ彼の前で、理不尽な追求が9課にまでその矛先をのばそうとした時、事態は思わぬ展開を見せた!

11. 第11話 草迷宮 affection
虚実定まらぬ街で誘われた、記憶を預かるという『牢記物店』。草薙は、そこで主無き少年少女の義体とめぐり会う。物言わぬ彼らにかつて訪れた物語とは──。

12. 第12話 名も無き者へ SELECON
虚ろなる真に導き寄せられる「個別の11人」。そして、組み上がった因子を解き明かしはじめる9課。だが、さらなる具現を阻むべく行動を起こしたその時、すべてを暗転させる「刃」が抜かれた!!

13. 第13話 顔 MAKE UP
クゼの顔を追って、9課は造顔作家へとそのコマを進めた。だが、カメラの映し出したパズの凶行が、捜査の動きを鈍らせる。これも「クゼ」の仕業なのか、それとも──。

14. 第14話 左眼に気をつけろ POKER FACE
米帝特使を迎え厳戒態勢が敷かれる中、待機中の隊員等はポーカーに興じていた。そこで、一人勝ちを続けていたサイトーは、左眼にまつわるポーカーフェイスを語りはじめるのだが──。

15. 第15話 機械たちの午後 PAT.
「この人どこかで見たことがあるんですよね…」研究所の爆破事故後の捜査中に、奇妙な既視感を感じるタチコマ。所在不明の有須田博士と、自分達の主体について疑問を持つ彼らとをつなげるものとは──。

16. 第16話 そこにいること ANOTHER CHANCE
国連平和維持軍としての戦い、任務を終えてからの葛藤──。イシカワの持ち帰ったクゼの過去、それは9課にとっても草薙にとっても不可解なものであった。一方、国内情勢の悪化は日米安保締結に拍車をかけていた…。

17. 第17話 修好母子 RED DATA
クゼの足取りを追い台湾へ潜入した草薙は、そこで少年・チャイと出会う。行動を共にし始めた二人の関係は、時には友人、時には親子、そして時には恋人──わき起こる奇妙な感覚に母性を励起させ、彼女は行動を開始する!

18. 第18話 天使の詩 TRANS PARENT
当局が追っている正体不明のテロリストは『天使の羽根』と呼ばれていた。大規模な包囲網が街を覆う中、ある少女の存在がバトーの脳裏をよぎる。そして、彼女の秘密に突き当たったとき、天使は再び舞い降りた──。

19. 第19話 相対の連鎖 CHAIN REACTION
並列化した招慰難民達の行動は、自治区宣言へと拡大した。これに対し草薙は、クゼを確保すべくハブ電脳へとダイブする。だが、潜伏場所を急襲した9課を予想し得ない事態が待ち受けていた!

20. 第20話 北端の混迷 FABRICATE FOG
北端、択捉──そこは、旧型の電脳都市にして混沌の坩堝。断片的な情報を元にクゼの目的を想定し9課は旧ロシアの原潜基地跡へと向かう。しかし、そこでは既に難民等とアームスーツが戦いを始めていた!

21. 第21話 敗走 EMBARRASSMENT
クゼと9課との間にある、わずかな動機の差。それは彼に包囲網を突破させ、出島へと辿りつかせる。だが人々の前に広がった光景は、第三者による意志の介在を予見させるのだった。

22. 第22話 無人街 REVERSAL PROCESS
「個別の11人」最期の場所である九州電波塔に、プルトニウム爆弾が仕掛けられた。解体処理のため無人と化し静寂につつまれる街中を、バトーは一人ゴーダのもとへと赴く。クゼが自決をしなかったその場所で、二人はなにを語ろうというのか──。

23. 第23話 橋が落ちる日 MARTIAL LAW
戦わずとも勝負は決するはずだった招慰難民と自衛軍。しかし、水が低きに流れるように、人の心もまた易きに流れる。一発の銃声が状況を急変させ、事態は混迷の度を深めていく。

24. 第24話 出島、空爆 NUCLEAR POWER
制空権をおさえられ潰走する招慰難民達。ゴーダの策略がさらなる展開を見せる中、9課は出島へと突入する。一方で、クゼは人々をハブ電脳に繋ぎ止めるべく、次の手に出ようとしていた──。

25. 第25話 楽園の向こうへ THIS SIDE OF JUSTICE
クゼと邂逅を果たす草薙、そして茅葺の救出に成功する荒巻──事態は収束に向かうかと思われた。だが、タチコマが掴んだ情報は、9課の動きが未だにゴーダの予想の範疇を出ていないことを示していた。

26. 第26話 憂国への帰還 ENDLESS∞GIG
この終焉は、通過点の一つであり、又始まりでもあるのだろう。自らを賭して攻撃を阻止したタチコマ。革命の行く末を見極めることなく逝くクゼ。ゴーダとの因縁を精算する9課。そして──。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 4

86.6 3 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング3位
GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊-ゴーストインザシェル(アニメ映画)

1995年11月18日
★★★★★ 4.2 (1103)
6531人が棚に入れました
他人の電脳をゴーストハックして人形のように操る国際手配中の凄腕ハッカー、通称「人形使い」が入国したとの情報を受け、公安9課は捜査を開始するが、人形使い本人の正体はつかむことが出来ない。そんな中、政府御用達である義体メーカー「メガテク・ボディ社」の製造ラインが突如稼動し、女性型の義体を一体作りだした。義体はひとりでに動き出して逃走するが、交通事故に遭い公安9課に運び込まれる。調べてみると、生身の脳が入っていないはずの義体の補助電脳にはゴーストのようなものが宿っていた。

声優・キャラクター
田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大木民夫、玄田哲章、生木政壽、家弓家正
ネタバレ

ヲリノコトリ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

造語を説明する気なし!

【あらすじ】
人間の身体を「義体」と呼ばれる機械に置き換えることができるようになり、脳とネットを直接接続できるようになった未来。中枢神経系以外のすべてを義体化した「少佐」と呼ばれる女性が「9課」と呼ばれる警察組織の暗部に身を置いていた。機械と人間、プログラムと意識、システムと思考の境界を問う押井守監督不朽の名作!

【成分表】
笑い☆☆☆☆☆ ゆる☆☆☆☆☆
恋愛☆☆☆☆☆ 感動★☆☆☆☆
頭脳★★★★★ 深い★★★★★

【ジャンル】
SF

【こういう人におすすめ】
難しい話を読み解くのが趣味の人。SF好きな人。

【あにこれ評価(おおよそ)】
83.7点。良作。

【個人的評価】
良作。いろいろ読み解くのに時間がかかるが「ゴースト」という単語はすごい。
『自分のお気に入り』

【他なんか書きたかったこと】
{netabare}  
 昔何度か見たことがあって、「まあわけわかんねえけど面白いなあ」くらいに思ってたんですが「Ghost in the shell」のハリウッド映画が予想外に素晴らしかったんでもう一回観たらめっちゃハマりました(笑) 攻殻機動隊自体にそれほど思い入れはなく、原作未読(たぶん読みにくいヤツだろうと思ってw)、30分アニメ版はなんか私が感じていた魅力だけピンポイントで取っ払って、悪くはないんですが、私にとっては特に魅力を感じないジャンルのアニメになっていたので途中断念しました(割と即断念なので勝手な思い込みかも)。押井作品じゃないアニメ映画版はどことなくアニメ版と同じ匂いがして、まだ手を付けていません。まあそのうちってことで。
 でもゴーストインザシェルとイノセンスだけは好きですねえ。

 作画もストーリーも好きなんですが、曲が最高です!作曲は川井憲次という方。アニメ・映画のサントラをいっぱい作ってる方で、いろんなメディア作品に曲が散らばってるみたいです。もっといっぱいないかなあ。川井憲次特集のアルバムとかないのかな。ちなみに神々の詩(あぱ~ あ な~あが~ ま~あぽ~~みたいな曲)はこの人とは関係ないっぽいです(笑)


 内容は難しいって感じる人が多いと思うんですが、ストーリーの流れとしては実は「難解」ではありません。アニメ内の世界としては自然な流れなのですが、「説明する気がない」だけです。まあ私はそれもアリだと思うんですが。
 つまり、登場人物がアニメとして見られることを意識していないというか、原作者の造語も彼らにとっては日常会話なので、いちいち意味を説明してくれません。「察しろ」っていう原作者の圧力を感じます。逆に言うと世界観が非常によく作りこまれているということで、ただシナリオライターもその世界にどっぷり入っちゃってて用語の解説を忘れてる、みたいな。思考力が表現力を超越しちゃってる、超天才な子供って感じ。
 余計なお世話かもしれませんがストーリーの流れは後で詳しく書こうと思います。



以下、開けば開くだけ長いので、この作品に興味ない人はたぶん開かないほうがいいです(笑) 特に一番下が長いですが、ストーリーちんぷんかんぷんだった人には一助になるかもしれません。
↓この作品の一番の魅力は「ゴースト」という造語!
{netabare}
 既存の言葉で近いのは、意識、記憶、自我、個性、魂、頭脳、IDといったところでしょうか。アニメ内の世界では「人間にあって義体にないもの」というのが本質的な定義だと推測します。
 つまりAという人間の「身体」を次々に「同等の機能を有する機械」に変えていき、隣に「用済みになった身体」を並べていくとして、手を変え、足を変え、心臓を変え皮膚を変え、頭以外のすべてを変えて、次は頭の外殻を変える。この状態が少佐の状態です。この時点では生身の部分として脳が残っています。隣には脳以外のAの身体が血まみれで置いてあります。
 この時に、それを見ていたあなたは「痛いですか?」とどっちに話しかけますか?
 おそらく現代の感覚から言っても、脳のある機械に向けて話しかけるでしょう。
 つまりAのゴーストはこの時点では「脳」にあります。
 では最後に、Aの脳も機械に置き換える。もちろん、Aの脳と同等の機能を有する機械です。そして完全に有機物から無機物に変換されたAが立ち上がり「あー、よく寝た」といかにも人間のように伸びをする。当然です。それは置換される前のAの体、頭、心と全く同等の機能を有しているからです。
 さて、それを見ていたあなたはどうするか。機械の電脳の中に完全にコピーされているAの人格を完全に無視して、バラバラのAの死体に向けて「ああ、死んでしまって可哀そうに」といいますか?目の前の機械が「いやいや、私生きてますよ」といったのに対して「お前はAじゃない!この鉄くず野郎!」というのですか?なんてかわいそうなことを。
 違いますよね。おそらく完全に機械になったAに「大丈夫か?」と声をかけ、機械が「大丈夫」と答えると、完全に納得はできなくても、ひとまず安心するでしょう。おそらく原作者はそれが正しいと思っているし、私も同意します。つまり、脳がなくなったこの時点でも、Aのゴーストは機械の側にあります。隣の「Aの肉体すべてからなる肉塊」は現代で言うところの切った爪や抜けた髪のようなものです。
 完全に機械になったAですが、Aの保険証はAのものとして使えるでしょうし、電脳によって思考するAは生身の時と同じ思考パターンを持ち、記憶を持ち、自分をAだと認識しています。Aが学校の自分のクラスに戻ってくれば、Aの席に座ることを誰も咎めないでしょう。

 このように「ある人間の生身部分をすべて消去しても、そこに同じように残ると考えられるものの総体」が「ゴースト」です。

 で、「これ」にゴーストっていう単語を当てはめたセンスがすごいですよね!
 だって、それってつまり幽霊の概念と同じですから。もしも知り合いの墓参りの時に背後に幽霊が出たら、あなたは怯えつつ墓(の下の遺骨)に向けて話しかけますか、背後に現れた幽霊に向けて話しかけますか?背後の幽霊ですよね。そしてその幽霊は生前の記憶を持ち、自分を自分と自覚し、同じ思考をして、(少なくとも認識できる人間に対しては)同じ権利を持つはずです。つまり幽霊は「ある人間の生身部分をすべて消去しても、そこに同じように残ると考えられるものの総体」なんです。
 まさに「それ」は「ゴースト」という単語に集約されます!すごい!
 っていう一行をやっと言えたわ(笑)

 この映画はこれを言葉にして説明してくれません(笑) ハリウッド版はわりと説明「しよう」としてくれてた気がします。

 で、少佐は「自分のゴースト」を「自分が保持できているか」ということをずっと考えています。彼女には生身の脳が残っていますが、「じゃあ私の脳がなかったとしたら?」とエレベーターでバトーに話しています。つまり私が先ほど出した例の、「生身をすべて消し去ってもゴーストは残る」という点に、確信を持てずにいるのです。
 もし自分の脳も機械であれば、いま私が考えていることもただの回路をめぐる電気信号なのではないか。その場合、私は私であるといえるのか。例えば9課を抜けるのならば、義体はすべて9課に返上しなくてはならない。もし私の脳までも義体なのであれば、私は、9課を抜けるときに私の肉体すべてを9課に返さなくてはならない。……それはつまり、私が9課の所有物であることを意味しないか?そして所有物なのであれば私は私のゴーストを持っていると言えないのでは。すべて機械なら私のオリジナルはとっくに死んでいることになるし、もし今の私の思考がAIなら、オリジナルすら存在しない。つまりそもそも私のゴーストなどないのでは……。
 みたいなことを少佐はずっと堂々巡りのように考えています。

 そして、そこに現れるのが「電子の海から発生した生命体」。
 つまりゴースト「のようなもの」が生身もなく、オリジナルもない単体で存在しているという事実に直面します。
 その後なんやかんやあって少佐は「生身をすべて消し去ってもゴーストは残る」ということに確信を得ます。もしくはその問を超越した存在となって、自我の安定を得ます。そして自分は死んだことにして、9課を去る。
 まあ有体に言うと「なんかどうでもよくなっちゃった♪旅にでも出よう!」みたいな感じになって終わります(おいコラw) {/netabare}
 


↓少佐の生身の脳髄は本当にあったのか
{netabare}  この点が個人的には最大の疑問で、バトーが劇中で「脳髄あるじゃねえか」みたいなこと言ってるにもかかわらずここを疑問に思っているということは、私は少佐の脳が義体であると予想しているわけです。
 それを明言しているシーンはありません。
 ただ、少佐がその可能性について思いを馳せていたというのが第一のポイント。
 第二は2501が少佐を選んだ理由が「私たちは似たもの同士の鏡像である」ということだった点。
 第三に、2501と少佐の融合が実際に成されたという点。
 第四に、首を切断された少佐の意識が消失 → バトーが(頭蓋を持ち帰り?)義体を作成 → 少佐復活♪ という流れ。
 第五に、「さて、どこへいこうかしらね。ネットは広大だわ」というラストの少佐のセリフ。
 第六に、冒頭の少佐(?)組み立てシーン。脳が機械製です。

 第一のポイントは説明いりませんね。つまり可能性の提示があったわけです。

 第二のポイント。2501と少佐が鏡像とはどういうことか。おそらく少佐が実像で、2501が虚像ということでしょう。これはつまりゴーストの有無だとわかります。そして同時に、陰陽や正負などのような「対極」ではなく「鏡像」であるということは、ゴーストの有無以外には違いがないということ。2501の対極というなら、完全な生身の人間で、しかし思考できない、しかしゴーストはあるという「深睡眠中の人間」のような存在が当てはまります。鏡像ということはつまり少佐からゴーストをとった存在が2501であり、逆説的に少佐はゴースト以外の生身を持たないことになる。ここで脳髄だけは生身だという設定が真実なら、2501の例えは「近いが外れている」ことになりちょっちカッコ悪い。

 第三のポイントは技術的に、そして物語の設定的に、「人間の脳とただのプログラムを統合できるのかな?むりじゃね?」と思った、というだけです。少佐の脳が義体なら、ネットのプログラムと融合することは特に問題にならないかなあ、と。

 第四のポイントも技術的な問題。脳髄の生存機能は頭蓋部の義体だけで完結できるんでしょうか。もし脳が義体なら機能停止してもほかの全身義体に接続して再起動すれば戻るかなあ、と。生身の脳だったら脳脊髄液や脳血流による栄養を頭蓋周囲の義体から補っていると思いますが、首チョンパされたらその栄養が供給されなくなって生身の脳が死なないかな?生体は死んだら再起動とかたぶん無理だから……みたいな。脳脊髄液や脳血流のサイクルが頭部で完結していれば機能維持可能と思われますが、ふつうは心臓のポンプ機能や腎臓のろ過機能のように胴体部分を含めてサイクルを形成するもんじゃないかなあと。はいはい深読み乙。まとめると、首チョンパから生き返ったから脳は義体だろ多分、ってこと。

 第五のポイントで少佐はネットへ旅立とうとしていますが、脳が生身だと結局本体が特定位置に存在するんで、「広いネットの海に消える」っていうラストにならないんじゃないかと。つまり凄腕のハッカーがネカフェの一室から世界中に自由にアクセスしていたとしても、隣のヤンキーに絡まれて殴られたら、とっさにアメリカペンタゴンに逃げ込む、とか出来ないわけで……。意味わかりますかね。わかりますか。よかったありがとう。つまり脳が生身だと最後まで”ある限界に制約し続け”られちゃうわけっすよ。少佐の体が完全に義体なら、別の義体にすべての情報(ゴースト)をロードすればいいわけですからラストは「どこにでもいて、どこにもいない」みたいな存在になれますよね。

 第六のポイントは「そういえば!」と思って見返したら発見しました。このシーンが過去シーンなら確定ですが、少佐の見た悪夢っていう解釈もあるから決定打ではないですね。

 以上6点から私は少佐の脳は義体である可能性が高いと考えます。押井守作品以外で少佐の脳が生身である証拠が提示されていたとしても、ゴーストインザシェル・イノセンスに限って言えばそうであると信じます。私が、そのほうがストーリーとして好きなんで。 {/netabare}



↓これだけは取り上げたい名台詞!
{netabare}  これ絶対ピックアップしたかった!
 わたしをある限界に制約し続け……とか少佐がかっこよく決めてるシーンもありますが、このセリフの前ではかすんでみえる!

「で、そっちに現れた人形使いは?どんな感じの奴です?」
「……人形みたいなやつだ」

 これ!
 かっこよすぎ!
 なにその返し!立川談志かお前は!
 何回観てもこのシーンでニヤニヤしちゃいます(笑)
 人形劇をしている人形師が天からの糸でつられていて天井の向こうに大きな人形師の顔が……みたいな。誰かを操っているという行為を誰かに操られていてその誰かがまた……みたいな。うん、何言ってんのかねわたしは。
{/netabare}





ストーリーの流れ(超ざっくり)
{netabare} とりあえずこのアニメの敷居を上げちゃってる、分かりにくい表面上のストーリーの流れを解説します。

第一の事件発生[技術者亡命未遂事件]→即解決
 ↓
神OP ~少佐の作り方~
 ↓
第二の事件発生[大佐黒幕ハッキング事件]→水辺のスタイリッシュ戦闘→「突入しろ」フェードアウト(解決)
 ↓
「奥さんも子供も本当はいないんだよ」
 ↓
少佐、休日に海に潜るの巻
 ↓
中盤BGM ~街でドッペルゲンガーを見て不安に~
 ↓
第三の事件発生[人形勝手に作られちゃった事件]→少佐、人形に興味津々
 ↓
黒幕は6課
 ↓
6課が人形を強奪→追う(同時にいろいろ調べる)→戦車が立ちはだかる→バトーがでかい銃で倒す
 ↓
少佐と2501が会話して融合
 ↓
第三の事件は闇に葬られて終了。少佐は消息不明に。
 ↓
ニュー少佐がネット世界に旅立つ
 ↓
終わり {/netabare}


ストーリーの流れ(まあまあガッツリ)
{netabare} 【冒頭の屋上~神曲OPまで】
{netabare}  第1の事件。技術者亡命事件。
 某国外交官によって技術者が亡命しかける。6課(表の警察)が現場に突入するが、外交官は治外法権と技術者の権利を主張して6課は手が出せない。その現場の窓の外から突然不審者が発砲。外交官を射殺し逃走する。警察として不審者に対応する6課。しかしこの不審者は実は主人公であり、9課(裏の警察)が外交官を暗殺することで事件を闇に葬った。6課は射撃し返しているが、実は心の中では不審者に感謝している。
 第1の事件はここで解決して終了。 {/netabare}

【神曲OP&少佐目覚め】
{netabare}  少佐組み立てシーン。このあとに少佐が目覚めるシーンがあるので、少佐の夢シーンのようにみえるが、おそらく現実の過去のシーン(これは筆者の予想)。 {/netabare}

【ヘリから偉そうな人降りてくる~白髭禿(荒巻、9課のトップ)との会話】
{netabare}  偉そうな人の話を要約すると
「昨日の暗殺マジ助かったわ。それはさておき、今うちの国で預かってるマレス大佐ってやつがいるんだけど、なんかそいつの本国が引き渡せって言ってんだよね。ぶっちゃけ引き渡しちゃっていいんだけど、薄情ものって思われんの嫌だから理由欲しいわ。てか明日その本国と話し合いだわ。まじ萎えるわ」
とのこと。だからどうしたって感じで会話だけで終了。昨日の一件とはまったく別の話。
{/netabare}

【金色短髪のひとの顔にハリ刺さってるシーンらへん】
{netabare}  もう第2の事件発生。事件は待っちゃくれない。
 外務大臣の通訳の脳がハッキングされていたことが判明。偉そうな人がまじ萎えていた会談をぶっ潰すためのハッキングだと予想された。もちろんハッキングした犯人を追うことにする9課。すでに逆探知していて、その場所に向かえとのこと。ハッカーを追跡する車は2台。すでに出発したバトー&石川カーと、これから出発する少佐&トグサカー。 {/netabare}

【少佐&トグサカー車内】
{netabare}  ハッカーの正体はすでに判明していて名前は「人形使い」。
 結構有名人。「あの有名な?」「そうそう。あんなことしたりこんなことしたりした人だよ」的な会話が続く。
 ここで「登場人物にとっては当たり前の理論だが、視聴者はちんぷんかんぷん」というこの映画特有のストーリー・会話展開が発生。略して「当たちん」。
 要約すると
「ハッカーは旧式の脳にハッキングした」
「どうせハッキングするなら新型のほうよかったんじゃね?ハッカーまじアホやん」
「新型はハッキングが難しいから、それにハッキングできるってことは誰かが裏で糸を引いていることになる」
「そうなったらマレス大佐が怪しかったね」
「ってことは、逆にマレス大佐が怪しいかもね」
「いや、その逆の逆かもよ」
「(´_ゝ`)」
みたいな。
 そのあとに襟足の長い運転手(トグサ)についての説明。彼は所轄から引き抜かれた感じで、割と生身で、9課のほかの人と結構ちがう感じで、使ってる銃はマテバでマテバはショボイ。 {/netabare}

【清掃員のシーン~(だいぶ飛んで)~ビルに囲まれた用水路での不可視の戦闘シーン】
{netabare}  ハッキング逆探知位置にいたのは清掃員。本人にハッキングの自覚はなかった様子。
 それに気づいた9課の人たちは清掃会社に問い合わせて清掃車を追う。
 しかし清掃会社が、警察から問い合わせがあったと清掃車に報告、清掃車逃走。
 逃げた先に怪しい男。人形使いか?と思わせる。
 そこから戦闘。市場で見失うが再発見。
 怪しい男は市場を切り抜け、警察を完全にまいたと安心する。
 が、実は透明になった少佐がすぐ近くに!
 戦闘!
 制圧!
 でも忘れないでね。今ハッキング事件の犯人を捜してます。マレス大佐っていう名前だけ出た人が怪しいです。
 少佐とバトーは途中でこの怪しい男も操られているだけだと気づきます。(なぜでしょうか。凄腕ハッカーにしては弱すぎるとかそんな感じかな。もしくはカン)
 ハッキングされるとゴーストが無くなって昔の記憶とか無くなる。 {/netabare}

【白髭禿とヘリ】
{netabare}  白髭禿はマレス大佐の家を見張っている。多分、緑に黄色のラインのポロシャツがマレス大佐。人形使い登場。やっぱりこの二人は繋がっていたのか!
 バトーと白髭の話はさっきの「怪しい男」についての情報。
「あいつの話によると、あいつは凄腕の殺し屋で、マレス大佐に10万ドルで雇われて例の"萎え会談"をぶっ潰そうとしてたらしいです」
「ふーん。まああいつのウソっしょ?」
「もち。ただのチンピラでしたわ。人形使いに操られてた系っすわ。で、おやっさん今マレス大佐の家っすよね?人形使い来ました?」
「来たわ。とりあえずマレスとか人形使いとかこのまま捕まえるわ」
 で、白髭「突入しろ」って言ってます。つまりここで第二の事件終了です。いやホントに。
 詳細がわかりませんがハッキング事件がこの「突入しろ」から次のシーンに行くまでに終了したことは間違いありません。
 おそらくマレス大佐は偉い人の望み通りハッキング依頼容疑でマジサイテーな奴って感じになって本国へ送られました。で、本国でおそらく晒し首になりました。人形使いもたぶん捕まったか、その場で射殺されたかです。とはいえ彼の本体はネットの海の中にあるので、実は逃げました。 {/netabare}

【疑似体験って……どういうことですか、らへん】
{netabare} 洗脳された清掃員に説明するシーン。
「あなたには奥さんも娘さんもいないんだ。すべて植え付けられた記憶なんだよ」
「まじ気分悪いっす。この記憶消せないんですか」
「ちょい無理っぽいです」
「うそーん」
 ここはわかりやすいんでそのままの解釈でいいです。まあここはシナリオライターの「主張」のひとつなんで、ちゃんと説明してくれてます。 {/netabare}

【少佐、休日に海に潜るの巻】
{netabare}  ここも主張シーンですが、一番深いトコの話になってるんで分かりにくいです。
 でもまあストーリーの流れとはあんまり関係ないんで飛ばします。
 ちなみにDVDだとめちゃくちゃ聞き取りにくい誰かわからない囁き声はこう言ってます。まあ誰って人形使いに決まってますが。
 
 「いまわれらかがみもてみるごとくみるところおぼろなり」
{/netabare}

【中盤の神曲シーン】
{netabare}  なんかいつまでも観てられますね。雨って好きだわ。
 人影の中に見える自分に似た人が、少佐の不安を煽る。「私は私だといえるのか」。 {/netabare}

【裸の奴が轢かれる ~ 9課のラボ ~ 9課の会議室】
{netabare}  バトーが宣言してから説明してくれてます。バトーまじいいやつ。
第3の事件発生。ロボット勝手に作られちゃった事件。
「9課御用達の義体製造会社の製造ラインが勝手に動いてロボットを作った。ロボットは逃げたけど車に轢かれて、通報があって、いま9課で調べてるとこ。しかもゴーストっぽいのが入ってるっぽい」
 このゴースト「らしき」っていうのが結構重要なポイントだったりします。これをゴーストとするかどうかがシナリオライターの問いであり、私もまだ答えが出ません。つまり、現代版で言うとSiriが「週休二日で8時間勤務にしてくれ」と言ったらどうするか、みたいなことですがまあその辺は置いといて。
 この事件に対して9課は「ロボットを窃盗するのが目的ではない」と考え、その会社自体を捜査、と同時にその会社と同じくらいのセキュリティのネットを封鎖して次の犯行を防止。少佐は新しいセキュリティを組む。
 そして同時に、少佐はこの「ゴーストっぽいのが入ってる義体」に深く興味を持ち、接続して(ダイブして)中にあるものを確かめたいと思っている。これ以降少佐にとっては9課の任務よりも「この義体にダイブすること」が優先されます。
 あとバトーと白髭の会話も結構深いですがスルーします。 {/netabare}

【外部の2人がやってくる】
{netabare}  6課の中村部長が医者を連れて白髭に面会に来ます。結構いきなりな感じです。
 9課のメンバーも「え、何しに来たん?」みたいな反応。
 トグサが降りた後、少佐とバトーの会話。ここが少佐にとっての核心シーン。会話で言ってることそのままなので、例によってスルーします。
 で、6課のおっさんと白髭対面。手短にいこうって言ってちゃんと実行してます。この6課のおっさんのセリフは全体的に筋が通ってるし、わかりやすくて好き。「あの勝手に作られた義体もらいます。あとは6課がやります。9課はお休みしてどうぞ」って言ってます。 {/netabare}

【トグサが駐車場でなんか調べてるシーン】
{netabare}  出ました!当たちん! 登場人物にとっては当たり前の理論だが、視聴者はちんぷんかんぷんな会話!

 ↓以下トグサの頭の中と行動
(あれ、車2台あるわ。二人で2台……?官僚2人がそれぞれ公用車を自分で運転してくるかな?)
(もしかして、2人以外にもだれか来たかも)
 不審に思い、映像を確認。何も映っていない。
(光学迷彩=透明になる装置かも)
 赤外モードでもう一度見る(おそらく赤外線サーモグラフィのこと。温度で透明な人間を見つけようとしている)
 しかし何も映らない。
(やっぱ違うか……あれ?)
 不審に思い、二人が通り過ぎてから自動ドアが閉まるまでの時間を確認。タイムラグが大きすぎることに気づく。
(やはり誰かほかにいるのでは)
 確信を得るために二台が止まっていた駐車場の感圧計を調べる。
 つまりメーターはその駐車場の枠線内のものの重さ。時間を進めると、最初ちょっと高くて、ゼロになる(前の車が止まってて、いなくなる)で、次に急激に上昇。2000くらいになる。ここから車の重さを差し引くと(下のメーターが総重量で上のメーターが車の重量かな?単位がt.だけどkgっぽい)人間の重量はざっと600kg。くらい。
 義体1+人間1で500kgを超えることはない(らしい。知らんがな)のでやはり車には2人のほかに誰か乗っていたことになる。
 (つまり6課の車でやってきて「光学迷彩」+「熱迷彩」の装備のある人間が9課に無断で内部に侵入している)
 という状況にトグサは気づき、少佐に報告。

 つまりここで第3の事件「ロボット勝手に作られちゃった事件」において、黒幕は6課である可能性が示唆される。 {/netabare}

【白人の腕シャキンシャキーン周辺 ~ 6課の侵入者が「人形使い」をさらう】
{netabare}  このシーン好き。というか6課の課長のセリフが理知的・平易・適切で好き。適切に2501の弁舌に振り回されてる。
9課「これ義体関連の事件なんでこっちの守備範囲だよね」
6課「いや、実はこいつは国際犯罪者の人形使いだから国際犯罪の6課が担当なんです」
白人「そーだ、そーだ」
9課「この義体に閉じ込めて、本体は暗殺した系?」
6課「そうです。いやはや、めでたしめでたし」
人形「嘘だ!」
9課「え、この人形起動してたん!?」
外野「なんか勝手に動いてるっす」
人形「おれ人間なんだ!助けてくれ9課!」
9課「え…?」
6課「お前はただのプログラムだから駄目!」←これ、うっかり口を滑らせている
人形「それ言っちゃったらあんたもプログラムっしょ。だいたいね……うんぬんかんぬん」
6課「いや、意味不明だし!お前犯罪者だし!」
人形「でもこの国死刑ないっしょ?おれ基本死なねえし」
9課「え、死なないってことは人形使いはAIだったの?」←混乱してたが理解し始める
人形「AIじゃねえし。故郷がネットってだけだし。生きてるし。あと名前は2501だし」
6課「(……マジこいつ殺すしかねえ)」

 で、侵入者(実は6課の人間)が発砲。2501を奪い逃走。発砲は人狙いじゃなくて、記録を壊そうとしたっぽいです。 {/netabare}

【待機していたトグサ、マテバの弱さをさらす ~ 昔のアニメにありがちな指令室で白髭禿が指示を出す】
{netabare}  侵入者(実は6課)が建物の壁を壊して外に出ると、事前の打ち合わせ通り逃走用の車が来る。
 そこに待ち構えていたトグサ登場!マテバを無駄撃ちする。
 逃げられてしまうかと思いきや、トグサが手配していたトラックが道を塞ぎ(あとでお礼言ってます)、その隙にナンバープレートに一発、発信器を打ち込んで褒められる(あとで2発やれって怒られてます)。
 6課の人が「いやあ、困ったことになりましたなあ。ちゃんと中身入りで捕まえてね」みたいな感じで侵入者とは関係ないですよアピールをしてから去っていきます。どうでもいいけど結局こいつら2台で帰ったのかな。運転手は?まあいいけど。

 ここで9課は第3の事件について大きな軌道修正を行う必要が生まれます。
1、侵入者を捕えて、6課とのつながりを証明する → バトー&トグサの担当
2、プロジェクト2501とかいろいろを調べる → 白髭禿の担当
3、2501を取り戻す → 少佐の担当(というより少佐は個人的な執着でこれを優先)
4、なぜ2501は9課を頼ったのか → 各自考える
5、なぜ6課は強引に2501を奪ったのか → 各自考える
 白髭禿は人形使いを破壊することを視野に入れているが、少佐は嫌がっている。
{/netabare}

【6課とトンネル ~ プロジェクト2501真相判明】
{netabare}  白人は2501のゴーストを認めているっぽい。てかまあ、彼が親みたいなもんだから。で、運転手どっからきた。車もう一台どうした。

[プロジェクト2501]
 外務省が技術者を集めたプロジェクトで、目的は犯罪用のAIの作成。そのAIはネット界から各国に潜入し、外務省に有利になるような様々な工作をするスパイとして作られた。白人がプロジェクトの主任。第一の事件で6課が追っていた亡命希望の技術者もこのプロジェクトの参加者。外務省と、国際問題に対応する6課は同一の利害関係で動いている。
 このプロジェクトが9課の知るところとなり外部に露見すると、当然外務省は各国から糾弾される。つまり「あの国の外務省マジないわー」みたいな感じになる。それを避けるために6課は事件を隠蔽しようとして、2501を強奪した。

 全部ジェバンニがやってくれました。あ、間違えた。イシカワがやってくれました。ずっと名前出てたイシカワはここで初登場。そしてそれ以降登場無し(笑) 次回作に期待してください。
{/netabare}

【バトー再登場 ~ あんなゴツイお姫様にエスコートいらんわ】
{netabare}  バトーが「逃走車が白いセダンと接触して2501を乗せ換えた、かも」と報告。つまり追う対象が2つ。
 当然少佐が2501のほう、トグバトーが逃走車を追うことに。
 逃走車確保。道を封鎖して動きを止め、侵入者2匹のうち1匹は即射殺。もう一匹がビビったところで確保。
 バトーは侵入者をトグサに任せてすぐさま愛しの少佐のほうへ向かう。 {/netabare}

【少佐 VS 四本足の戦車】
{netabare}  少佐は白いセダンを補足。教会っぽいところの真ん中に止まっている。
 少佐が近づくが、光学迷彩の何かを発見。それは4本足の戦車(物語世界の中では戦車といえばこれらしい)と思われたので、上空に待機している味方のヘリに天窓のガラスを割るように指示。降ってきたガラスによって戦車の光学迷彩解除、発砲も停止(そういうもんなんです。ガラス降ってきたらそらそうなりますわな ←テキトー)。
 「一人で戦車とやりあう気か?」はヘリパイロットではなくバトーのセリフ。
 それに対して少佐は「増援が来てから2501を確保してもダイブを許可してもらえない。私が一人で2501を取り返して本部に届ける前にダイブするしか、ダイブする方法はない」と、自分の行動に理由付けをしています。
 どんだけダイブしたいんだよって感じですが、それが今の彼女の生きる理由みたいなものなので。
 M23とUnitBじゃあ戦車には勝てない。でもたぶんマテバよりは上。この辺の用語の細かい説明など当然のように皆無。

 この戦車は間違いなく6課の指示で動いているんですが、なぜ2501を破壊しないで守ってるんですかね。
 最終的には頭打ち抜いて終わりなんで、この戦車でやっとけばよかったのに。まあできれば「回収」したかったんだろう。……戦車で守ってそのあとどう回収するんだ。ガシャコンガシャコン6課の課長の家まで持って帰るのか…?まあいいや。

 まあ戦闘。
 少佐が頭の上に乗ってフタ開けようとしたり(たぶんそれで装甲に隙間ができて、内部を破壊したら戦車が止まる)、戦車が光学的にも熱力学的にも感知できない少佐を心音で特定(ただし一定時間ロックオンしてないと無理みたい)してますが、この辺の説明もなし。1流のアニメ視聴者なら察せ!イエッサー!
 でも弾切れじゃなかったじゃん少佐!あと戦車は頭の上撃てるようにしとけ(笑)

 最終的には少佐は敗北しますが、すんでのところでバトーがオリジナルの超すごい銃を持ってきて戦車を破壊。なぜかこの銃の説明はある。
{/netabare}

【それ以降】
{netabare}  6課の増援のヘリが狙う中、少佐は2501にダイブ。
 少佐と2501が融合。
 ヘリが二人の頭を吹っ飛ばすが、少佐のほうは弾丸がバトーの手に当たって軌道が逸れ、頚部に当たって首が飛んでいく(スローで分かる)。
 少佐の薄れゆく意識の中、バトーが叫ぶ。
 おそらくこの後、バトーは少佐の頭を秘密裏に持ち帰り、闇ルートで入手した義体となんやかんやして少佐復活。
 「おれんとこ来ないか」というバトーに対して、少佐は「ちょい旅に出るわ」とつれない返事。
 俺たちの戦いはこれからだ!
 で終わる。
 ごめん最後(も)テキトーになった。 {/netabare}
{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 20
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

久々の入隊!

 あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 2回目でした。85分くらいの近未来SF。
 原作の漫画やこの映画のアニメコミックは読む機会もあるのですが、映像作品として見たのは久々でした。テレビシリーズは未視聴です。

 この作品を傑作たらしめているのは、卓越した近未来の世界観の設定と、躍動的なアクションに加え、「人間と機械の二元論」を基礎とした普遍性にあると思います。イロモノではなく正統派のSFですね。
 被創造物を用意することで人間について考えるというのは、鉄腕アトムの頃から培われてきた、ある意味では古典的なテーマです。ただ、この作品では、「情報」や「ネット」というキーワードを使って、普遍的なテーマの現代化に成功しています。この作品で語られている内容は、今なお色あせていません。

 で、この作品をどうやって読んでいこうかと考えたときに、その大半は脚本によることになります。象徴物は、強いものが少数あるといった感じで、そこまで苦労することはないでしょう。
 困ってしまうのはむしろ脚本の方。非常に抽象的で、かつ宗教的な要素も入っていて、やや難解です。加えて、ちょっとテンポが速くて、十分な考察時間が与えられてないようにも思えます。とはいえ、このテンポの良さが会話の日常感を演出していたり、作品全体の緊迫感を醸していたりするのも事実なので、一概に悪いとも言い切れませんけどね。脚本自体は非常に良いものです。

 以下では、脚本をベースにして映画の内容について考察してみます。かなりのネタバレがありますので、先入観を嫌う未視聴の方はご注意ください。


機械と人間:{netabare}
 まずは、根幹を成す機械から人間への展開の仕方を見てみます。作品の基礎的な部分ですので、セオリー通りオープニングで語られています。亡命者の会話をバトーと素子が盗聴しているところです。
 ①?「バグのないプログラムは存在しないが、デバッグの不可能なプログラムもまた存在しない。違うか?」
 ②亡「そもそもあれは本当にバグなのか?本来プロジェクト2501に必要だったのは…」
 ③バ「お前の脳、ノイズが多いな」
 ④素「生理中なの」

 たったこれだけの会話ですが、非常に重厚な脚本になっています。
 ①では機械の話しかされていません。一方、②では機械を否定しています。ただ、機械でないものが何かという言及はされません。③では、「ノイズ」という機械表現が、「脳」という生物表現に乗せられ、生物側にズレ始めます。④で初めて生物のみの表現になります。
 機械から人間へ、とてもスムーズに展開しています。また、それぞれの要件も提示されています。機械はプログラムであり、人間には生理がある、ということです。卓越したセリフ回しだと思います。

 この要件付けは主題に直接関係します。少し先走りますが、人形使いは、自我らしきものを持ちました。しかし、重要なものが欠けているのです。彼の言葉を借ります。
 「私は自分を生命体だと言ったが、現状ではそれは不完全なものに過ぎない。」
 「なぜなら、私のシステムには、子孫を残して死を得るという基本プロセスが存在しないからだ。」
 彼は、システムでありながらも、生命体を自認しています。つまり、③までが充足されているのです。ですが、④の要素が欠落していました。彼は、(象徴としての)生理を欲していたのです。
{/netabare}

人間とゴースト:{netabare}
 人間がゴーストを持つものだということは、清掃車を追う車内で、トグサと素子により語られます。トグサにハッカーの黒幕の根拠を問われた、素子の返答から。
 ①素「根拠ですって?そう囁くのよ、私のゴーストが」
 ②素「ところでまだリボルバーを使ってるんだって?―略―」
 ③ト「俺はマテバが好きなの」
 ④素「援護される身としちゃ、好みより実効制圧力を問題にしたいわ」

 ①のセリフばかりが取り上げられますが、「ゴースト」があるだけでは人間の証明にはなりません。それが人間のものなのか、機械の模擬的なものなのか、分かりませんからね。ここで重要なのは、その先の会話との関連です。

 ①で素子は、「ゴースト」という非論理性にその根拠を頼っています。しかし、トグサが同様に「好き」という非論理性に根拠を求めると、「実効」という論理性をもって否定するのです。
 この会話が表しているのは、人間が内包している論理の矛盾です。「ゴースト」に加え、「論理矛盾」というプログラムで構築し得ないものを抱えているのが人間なのです。

 なお、論理矛盾はスキューバのシーンに展開します。このシーンは語るべきところが多いですが、最も重要なのは、海面に写る素子の二面性(人間と機械)と、それを突き破るというエンディングを示唆した描写です。
 論理矛盾は、その直後に出てくる「不安、孤独、闇、それから希望」という素子のセリフです。一つの事柄でも、相反する二つの方向性を見てしまうのが人間なのです。
 素子の表情、特に目は、とても機械っぽく見えるのですが、「生理」やここで挙げた二つの論理矛盾は、いずれも素子の口から出ています。人間の部分も強調されていましたね。

 ちなみに、素子が「生理」を言い訳にするのも変ですよね。素子は脳と脊髄以外は義体ですから「生理」はないはずです。本人も遺伝子を残せないと言っていましたし、嘘をついたのでしょう。偽証も人間特有なんて言われたりします。男を黙らせるための必殺の文句、といったところでしょうか。
{/netabare}

記憶と情報:{netabare}
 ちょっとシーンを遡って、清掃員の尋問シーンのあとのバトーのセリフ。
 ①バ「疑似体験も夢も、存在する情報は全て現実であり、そして幻なんだ」
 ②バ「どっちにせよ、ひとりの人間が一生のうちに触れる情報なんてわずかなもんさ」

 これはバトーの意見、というか一般人の代弁だと思います。素子はちょっと違います。スキューバから。
 ③素「自分が自分であるためには、驚くほど多くのものが必要なのよ。―情報の例示―」
 ④素「私の電脳がアクセスできる膨大な情報やネットの広がり、それら全てが私の一部であり、
    私という意識そのものを生み出し、そして同時に、私をある限界に制約し続ける」

 素子はバトーと異なり、個人を特定するためには、「わずかな」情報(記憶)ではなく「膨大な」情報が必要なんだと言っています。また、電脳がアクセスしたものは自己形成を助けるけど、アクセスという条件がついてしまうため限界があるんだと言っています。
 この辺も人形使いの会話に直結するのですが、その話に移る前に、この作品で重要な意味を持つ「コリントの信徒への手紙」を見ておきましょう。
{/netabare}

コリントの信徒への手紙と生命の樹:{netabare}
 この手紙は、スキューバのラストにある「今我ら鏡もて~」と、エンディングにある「童子のときは~」に引用されているやつです。新約聖書の内容になるのですが、私はキリスト教徒でも何でもないので、うまく説明できません。というわけで、手元にある訳本を頼りに該当箇所を超絶意訳します。キリスト教徒の方には反感を買いそうですが、どうか大目に見て下さい。★の部分が作品内での引用箇所です。

 「愛は大事だよ。愛は滅びないよ。知識は廃れるよ。私たちが持っている知識は一部(不完全)だよ」
 「不完全なものは、完全なものが出てくると廃れるよ。」
★「幼子のときは幼子レベルだよ。大人になると、そのときのことは忘れちゃうよ。」
★「今、私たちは鏡にぼんやり写ったものを見ているよ。いずれははっきり見えるよ。」
 「今、一部しか知らなくても、いずれははっきり知ることができるよ。」
 「信仰と希望と愛はいつでも変わず存在するよ。一番大事なのは愛だよ。」

 愛や信仰に関する部分は、この作品ではあまり出てこないので、とりあえず脇に外しておきます。知識のところを見てみると、不完全な状態と完全な状態があることが分かります。

 一部の情報が全てだと思っているバトーは幼子で、より多くの情報を得ようとしている素子は大人になりたい幼子、完全に近い情報を持っている人形使いが大人です。
 なぜ人形使いが素子を選んだのかというと、彼が(象徴としての)生理を欲していたことに加え、素子が大人(完全なもの)を目指していたからです。これが両者のシンパシーです。

 戦車との戦闘シーンでは、背景に生命の樹が出てきます。生命の樹に実るのは「知恵の実」で、それを食べると神に等しき存在になれるとされています。素子は、人形使いと融合し、膨大な情報(知識・知恵)を獲得しました。大人(完全なもの)になったのです。だから、融合に際して、天に神のようなもの(完全なもの)を見たのです。

 この辺りに関する人形使いのセリフを一応記載しておきます。
 ①素「私が私でいられる保証は?」
 ②人「その保証はない。人は絶えず変化するものだし、君が今の君自身であろうとする執着は、君を制約し続ける」

 「変化」は幼子が大人になること、「執着」は幼子が幼子であろうとすること(バトー)ですね。「わずかな機能に隷属していたが、制約を捨て、さらなる上部構にシフトするときだ」も同様の内容です。

 ちなみに、この作品には愛や信仰は出てきませんが、「希望」という単語はスキューバで出てきますよね。大人(完全なもの)になった素子が、子供の義体に収まっているのは、再度大人に成りうるという「希望」のような気がします。素子は完全なものになった、と書きましたが、正しくは真の完全なものに近づいた、というべきなのでしょう。
 子供(不完全)→大人(完全ぽいもの)→神(真に完全なもの)という段階付けがあるわけですから、大人になってもその先にはさらなる「変化」が待っているのです。
 別にいずれ神になる、と言いたいわけではないですよ。それは神への挑戦でしょうから。より大人になる、まだ成長できる、くらいのニュアンスです。
{/netabare}

改めてテーマについて:{netabare}
 この作品のレビューをいくつか拝見しましたが、やや「ゴースト」という単語に引っ張られ過ぎている方が多いように見受けられます。「ゴースト」は確かに重要なキーワードではあるのですが、あくまでも人間を構成する要素の一つに過ぎません。人間を構成しているのは、「ゴースト」だけでなく、(象徴としての)「生理」と「情報」も必要なのです。このうち、最も重要なのは「情報」です。

 「記憶」が改ざんされ、「ゴースト」が「義体」に宿り、「義体」のメンテナンスを信用に頼っている、というのがこの作品の世界です。「記憶」や「ゴースト」を持つことが人間であることの証明にはならず、バトーが言うように「疑い出せばキリがない」という状況なのです。
 こんな中で、「私は人間なのか」「この自我は本物か」ということを証明をするためには、どれほど多くの疑わしきことが出てきても、全てに追跡調査可能なほどの圧倒的な情報を獲得するしかないのです。

 素子は、「ゴースト」と(象徴としての)「生理」を有していましたが、「情報」に不足していました。自分を証明するための「情報」に不足していたから、悩んでいたのです。
 人形使いは、「ゴースト」と「情報」を有していましたが、「生理」を持ち得ませんでした。
 この両者が融合し、「新たなゴースト」と「生理」と「情報」を持った「何か」が誕生しました。この作品が言わんとしていることは、圧倒的な「情報」量がもたらす「自我の確定」と「人間の進化」なのです。
 全ての人間が人間であることを証明できない中で、人間であることを証明できてしまう「何か」が、果たして人間と言えるのかどうか、というのは分かりませんけどね。神に近づいたものですから。皮肉なものです。

 ていうか、素子はどうなっちゃうんですかね?エンディングのあとは、義体を捨ててネットの中に潜むんだと思うのですが、それってどんな存在なのでしょうか。ネットの中にある自我というのは、環境、みたいなもの??
{/netabare}

遺伝子と模倣子:{netabare}
 図らずもエンディングまで到達してしまって、これ以上何書くの?って状況なんですけど、補足を少々。
 補足したいのは、「希望」を誘引する「生理」についてです。

 気付いた方のいらっしゃるかもしれませんが、私がこのレビューで生理と言うときに、「生理」と(象徴としての)「生理」と使い分けてきました。前者は女性の肉体的な事象を述べたもので、後者は自分の情報を残す機能のような意味合いで使っていました。素子は「生理」はないけど、(象徴としての)「生理」はある、ということです。作品内での遺伝子と模倣子の関係に似ています。

 ①素「融合したとして、私が死ぬときは?遺伝子はもちろん、模倣子としても残れないのよ。」
 ②人「融合後の新しい君は、ことあるごとに私の変種をネットに流すだろう」
 ③人「人間が遺伝子を残すように。そして私も死を得る」

 模倣子というのは、ミームのことです。血族的なつながりに基づく遺伝情報の伝搬ではなく、脳から脳へとつながる文化情報の伝播です。
 例えば、私がレビューを書きます。誰かがそれを読みます。そして、私の解釈にその方の解釈を載せ、新たなレビューを書きます。新たなレビューは、私のレビューよりも進化したものです。このときの私のレビューが模倣子であり、新たなレビューが進化した模倣子です。この総体が文化であり、文化も進化する、ということです。

 なぜ素子が模倣子になれないと言ったのかは分かりません。誰しもが模倣子に成りうる気がします。発信者の自覚がないからかもしれません。ただ、人形使いは自覚の有無を問わず、「変種をネットに流す」ことができるのだと言っています。これは、「子を情報として拡散する」という、遺伝子でも模倣子でもない、それを融合させたような第三の伝播機能を表現しているように思えます。
 機械の男と人間の女から産まれた子供、そんな第三の存在がもたらす新たな伝播機能。それこそが、新たな「希望」なのかもしれません。
{/netabare}

どうでもいいこと:{netabare}
 私は、この作品を漫画版でごくごくたまに読むのですが、読むたびに、漫画版ナウシカを手に取ってしまうんです。漫画版ナウシカには、こんな一連のセリフがあります。
 「私たちの身体が人工で作り変えられていたとしても、私達の生命は私達のものだ。生命は生命の力で生きている」
 「生きることは変わることだ。王蟲も粘菌も草木も人間も変わっていくだろう。腐海も共に生きるだろう」
 「だがお前は変われない。組みこまれた予定があるだけだ。死を否定しているから……」

 人形使いが、なぜ生命体を自認したのか、なぜ変わることの必要性を素子に説いたのか、なぜ死を欲したのか。彼が抱えるストーリーは、ここに集約されるように思えます。
{/netabare}

 投稿前に読み返してみましたけど、冒頭で挙げた「肉体と魂の二元論」について、あまり触れてませんでしたね。この作品の基礎ではあるけど、主題はその先にあるので追記はしませんけどね。それにめんどくさ…じゃなくて、模倣子だから、これ。

対象年齢等:
 高校生くらいから楽しめるでしょう。どこまで理解できるかは一概には言えませんけどね。宗教が絡んでくるし、いつまで経っても「よく分からん」てなところもありますし。難しく考えずにとりあえず見ておきましょう、という必見レベルの作品です。
 「天使のたまご」もレビューを書いていますけど、押井作品にはキリスト教が必須?なんですかね?この2作品しか見てないから断定はできないですけど。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 9
ネタバレ

windnaut さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

2週目メモ帳片手にタイム連打 映画館で理解できるような作品じゃない

「人形使い」を追う群像劇

すべてのセリフ(本当にすべてのセリフ)を記憶する必要がありその記憶が次のセリフの理解につながる、知識の積み重ねと達成感を味わえる作品。実をいうと攻殻はおしゃべりがうまい女性の方が男性より向いてる作品かもしれない。

あまりにもシビアな作品で薦めづらいがこれも私の中で5本指に入る神アニメ

以下シーンごとの記録と感想、ネタバレの塊:

起承転結、起の章(秘密会談参加者ゴーストハック事件)
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シーン1:とあるビルで
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内容(つかみ):亡国外交を建前に国の重要プログラマーを拉致するところを公安六課が制圧、外交官は免罪できる手形を持ってたので。プログラマー流出防止のため「公安九課」(草薙素子=少佐)が武力介入、外交官はその場で射殺。六課と九課の立場を少しながらあらわにした。そしてOPへ。
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感想:
ワクワク
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シーン2:エレベーターの中
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{netabare}
内容:六課の偉い人と九課のボス荒巻の会話。日本はつい最近政権交代があった「アベル共和国」の政府に援助金を続けるか断つかの立場にいるが。日本側はアベル共和国の新リーダーは先がないと判断。新政権は金も自力で手に入れたわけでもなく、援助金は歴史上日本が圧力をかけてたことの贖罪だと認識されてるので感謝もされないので日本の立場としては援助を切りたい。だがもう一つの問題はアベル共和国の元軍事部門のボス「マレス大佐」が日本に亡国してる件。そこでアベル共和国と日本は「秘密会談」を主催し、日本側の交渉目的としてはマレスを渡すことを条件に援助を切るか、マレスを渡さず援助を続けるか(絶対に選びたくない)の2択を迫ることだが。実際のところ日本はマレスを国外追放して援助も切りたい。だが世論的には正当な理由もなく表向きにマレスを追放できないところ。偉い人がエレベータを降りる際の一言‘亡国の件ありがとう 表向きの人(六課)は手を汚せないからね’
{/netabare}
感想:
ここ1分のシーンでさりげなく出てくるマレスというキーパーソンとアベル共和国。記憶が正しければ映画で登場するわけではないが。物語を理解する上で絶対に知っておかないといけないキーワード、事件の黒幕は目的を果たすためいろいろな事件を繰り出してくるが、自分がやってるとバレないためマレスの名を使い、一連の事件はマレスを中心に動いてるように公安に見せる。ちなみにここで六課は公安の表部隊、九課は裏部隊と説明された。
{netabare}
ね、メモ帳ないと無理でしょ。「マレス」と「アベル共和国」と「秘密会談」に気づかなかった人はこの時点でもう後の事件がなぜ起こってるのかわからなくなちゃうの。その人たちはここから起きる一連の事件に一貫性を見だせなく。公安九課が日常的になんとなーく起きてる事件解決してるように見えてしまうのがこの作品の怖い所。
{/netabare}
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シーン3:観察室
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内容:公安は世界を跨いで活躍する悪名高いハッカー「人形使い」がすでにネット端末の隅々に介入していて秘密会談の妨害工作を仕掛けてくると疑い、参加者全員に網を張っていた。その頃、読み通り会談に参加するはずの通訳官が電話回線を通じて「ゴーストハック」されてしまった。使用されたウィルスは旧式のHA-3。バトーと石川が逆探知を通じて発信源を追ってるとのこと。少佐は合流命令を受けつつベッドに横たわる金髪で上品な成り立ちの通訳官、そしてモニターに映る彼女の脳スキャンを振り返って見ていた。
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感想:映像作品は小説などの活字と違って文字に頼らない表現ができるのって本当に素晴らしいなと思ったシーン。「ゴーストハック」って作中には説明されてないんだけど、モニターに映る脳スキャン、通訳官の頭に刺さった電極、取り出された脳殻。なんとなく「他人の脳にハックする」ことだとわかるし。ここの通訳官の容貌を覚えていたら次のシーンで強い違和感を覚えることになるだろう。
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シーン4:装甲車の中で
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内容:少佐とトグサと装甲車での会話。人形使いは一度に複数のゴーストハックをすることからそのコードネームが付いたらしい。この事件に対して少佐の意見は人形使いが旧式ウィルスでハックした訳はマレスがスポンサーで疑いを避けたいから、だがマレスは人形遣いに利用されている一人にすぎない。それにトグサは「根拠もないんだし考えすぎじゃない?」と返答。少佐「そう囁くのよ、私のゴーストが」。そして少佐はトグサが愛用してるリボルバー拳銃「マテバ」に不満の意思、チームを組んでるから火力制圧がいいザツタバにしてほしいと。そしてほぼサイボーグ化されてない所帯持ちで本庁出身のトグサを九課に編入した理由に「組織も人も特殊化の果てにあるのは緩やかな死、それだけ」と挙げた
{/netabare}
感想:トグサ―!攻殻シリーズで大好きなキャラクター。鋭い観察力と電光石火のひらめきの持ち主でやさしい。マテバは殺傷能力ひくいから人を殺さず捕まえる警察時代の名残かな?このシーンは攻殻シリーズの名セリフがいっぱい出てきて大好き。
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シーン5:ゴミ回収場
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{netabare}
内容:ゴミ収集員の男が公衆電話を通して通訳官にゴーストハック。男は妻と離婚して娘に浮気を疑われているらしい。男はバーで出会ったプログラマーに離婚の話をしたら「障壁破り」を手に入れて他人のゴースト(脳)に侵入することが可能になった。それにポイントを変えながら侵入すればバレないことも教わっており。石川とバトーが逆探知で現場到着したのも男たちがゴミ収集を終え去っていった後のこと。途中すれ違っておりバトーがごみ捨ておじさんから男が公衆電話を利用してたことを知り、すぐさま清掃車を追うことに。
{/netabare}
感想:バトーすげぇ!なぜ気づくし、普通ドライブしてて清掃車なんて気にしないでしょ。ここで「シーン3:観察室」の伏線を回収してるんだけど。一つは公衆電話でもう一つはゴミ収集者と通訳官。この組み合わせはどう考えても釣り合わない。強烈な違和感に襲われた私でした。ゴーストハックで記憶を変えられてるんじゃない?―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
{/netabare}
シーン6:再び装甲車で
{netabare}
{netabare}
内容:少佐が収集員が実行犯だと知り清掃局のネットにアクセスしゴミ収集車のルートをゲット。バトーに次のポイントへ、石川に男の自宅へ先回りするようオーダー。一方男は同僚に自分の家庭の写真を見せようとしたが同僚から「他人の家族写真見る趣味はない」と拒否されてしまう。その頃清掃局から電話が入り自分が追われてることを知りポイントを一つ飛ばしてプログラマーに会うことに決定。少佐もそれを確認し次のポイントへ向かう。バトーは予定してたゴミ収集ポイントから疾風のごとく現場へ駆け向かうのであった。
{/netabare}
感想:クールに見えて実はドジっ子な少佐に吹いた(笑)バトーは「だからもぐれっつってんだ」で完全に夫気取り、和む。一方少佐はクールでそれを無視しオーダー出し続けて華麗に躱していったけど、こういうやり取りがあるとキャラが生きるなって思った。男の家庭写真でやっぱり本当に通訳官の家族か疑う自分。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
{/netabare}
シーン7:某公衆電話の前で
{netabare}
{netabare}
内容:電話ボックスの前にはグラサンかけたプログラマーが防壁破りを設置していた。
公安の存在を察知した彼は懐に隠したサブマシンガンを取り出し直ちに発砲、清掃車はタイヤの爆音とともに転倒、尾行していた装甲車もそれを追うように共倒れに。そしてグラサンは弾倉取り換え装甲車めがけてオート連射で固め打ち。装甲車は風穴開けられ満身創痍。まもなくして爆炎があたりの壁を真っ赤に照らした。そこにバトーが到着。とっさに脱出した少佐は引き続きバトーとともにグラサンを追跡。トグサは収集員2名を逮捕。
{/netabare}
感想:このグラサンがMatrixのMr. Smithの原型なんじゃないかと思う。少佐が上から回り込む前にちゃんと指令を出してたりと細かいところが圧倒的に多いから展開がスムーズなのが素晴らしい。会話が少なくて息抜きができる貴重なシーン。バトルシーンは休憩タイム。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
{/netabare}
シーン8:バトルシーン
{netabare}
{netabare}
内容:バトーはモニター一面の壁に浮かび上がる人影に向かって発砲。グラサンは正面対決を避け裏道に逃げ込む。裏道を抜けた後人山人海の中に微か響く衝突の音、淡く光る人影。バトーは声を上げ光学迷彩を着用するグラサンを川に追い込む。そこへ屋上で待ち伏せしていた少佐が揺れる小舟をサブマシンガンで狙い撃ち。水花四濺と共にグラサンが姿を現した。グラサンは少佐に向かって掃射のお返し。ひるんでる隙に、対岸の塞城に逃げ込んだ。水でぬれた光学迷彩はもう使い物にならないと判断。無口のままそれを脱ぎ捨て無機質の塞城を抜けるとグラサンは撒いたとしめて安堵の笑みを浮かべる。そして同じく光学迷彩を使用される少佐にぼこぼこにされるのであった。地面に接吻を強いられたグラサンは「吐くことはない」とプライドの咆哮。それにバトーは「自分の名前も知らねぇ野郎が、偉そうなことぬかすな!馬鹿!」と一喝。赤い血が流れる人形は哀れである。
{/netabare}
感想:市場のシーン作りこみすごい、バトーとグラサンだけでなく民間人の表情動きも描きこまれて滑らか。途中ミカンが降ってきたり、箱が崩れたり、鶏が跳んだり。逃げる人々、薙ぎ倒された人々。驚愕の声、恐怖の神色、こわばった顔、苦しみの表情。人中を駆ける疾走感。そして時間差で演出に深みを出すターレ。それらすべてが25秒に圧縮されていて。セル画書き込みの濃さから昔見た「マクロスプラス」のゴースト戦を思い出す。そして最後、バトーの言葉からグラサンは加害者でありゴーストハックをうけた哀れな被害者でもあることがわかる。

グラサンの声優さんには100点あげたい。少佐に関節外されたり顔面ワンツーパンチからの回し蹴りのコンボを食らって倒れるときの発音は日本のものではなく中国のもので。起き上がりはなまりを感じさせない程度の日本語。後で調べてみたんだけど松山鷹志さんってすごい数のアニメに出ていて驚いた。
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{/netabare}
シーン9:
{/netabare}
起承転結、承の章
起承転結、転の章
起承転結、結の章

工事中 

投稿 : 2024/11/02
♥ : 7

76.3 4 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング4位
楽園追放 -Expelled from Paradise-(アニメ映画)

2014年11月15日
★★★★☆ 4.0 (890)
4660人が棚に入れました
われわれはどこから来たのか われわれは何者か

われわれはどこへ行くのか――。

地球はナノハザードにより廃墟と化した。

その後の西暦2400年、大半の人類は知能だけの電脳世界ディーヴァに生きていた。

電脳世界に住む捜査官アンジェラは、

闘力を誇るスーツ・アーハンを身につけ地上に初めて降り立った。

そして地上調査員ディンゴと共に地上のサバイバルな世界に旅立った。
ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

だれが楽園追放したの? それは私と………

【ちょい長いです】

久しぶりにSFアニメを観た気がする。
(疑似)科学的な設定がストーリーを支え、絡み合ってこそのSFだ。
支えているのがハーレム設定だけというのでは、やはりSFとはいいがたいだろう。

素材となるのは、データ化され仮想空間に生きる実存、科学力により分断され階層化された社会、{netabare}自律進化する人格を獲得した人工知能、{/netabare}
といった今ではお馴染み感のある設定の数々。
だが料理は素材だけでできるものではない。材料をどう調理するかの技法が味を決める。

人格を電子化し仮想空間の中で人々が「生活」する『マトリクス』的な社会ディーヴァ。
『マトリクス』と違うのは、そこで「生活」する市民が、データ化された自分とその仮想化社会の事実に自覚的なこと。
そこにハッキングを仕掛けるフロンティアセッターとの電脳戦から物語は幕を開ける。

このフロンティアセッターのハッキングの追跡から、アンジェラが地球へ降下するまで一気に描写する製作者の手際の洗練具合は、非凡と言っていい。
スピード感がありながら、この世界の構造と、内在しているキャラクターにとってどういう世界であるのかという世界観まで、視聴者を立ち止まらせることなく、説明してしまう。
ただストーリーを追って観ているだけで、世界観が分らなかったり、誤解してしまう視聴者はほぼ居ないだろう。
これは映像的なセンスのみならず、脚本が秀逸で、セリフに使われる言葉の一つ一つまで吟味しつくして選択していることによると思われる。

この脚本の緊張感は、最後まで途切れることはない。物語のどの段階でも、背景で何が起きているのか、世界のどの部分が展開されているのか、把握できてしまう。
が、いたずらに説明的なわけではない。
映像的な楽しさにひきつけられて観ているだけで、自然に伝わってくる巧みな描写がなされている。
殊に終盤のバトルで、幻惑的なアクションの連鎖を堪能させながら背後の状況を二重映しにしてサスペンスを盛り上げるのは、並外れた描写力といえる。


さて、このように抜群の技法によって、既視感のある各種のSF設定の素材は、いかなる調理がなされているのか。


{netabare}人工知能であるフロンティアセッターは、自然的な人間と対立的にとらえられることはなく、むしろ「人間」そのものであると肯定される。

そもそもデジタルデータの集積である人工知能は、ディーヴァ内でデータ化されて仮想化されている「人間」と同型的な存在だ。仮想現実化した実存を「進化」と強弁する思想の下では、むしろ生物的な根拠を持たないフロンティアセッターのほうが「進化」した人類ではないかという見方すらできる。

それゆえ、『マトリクス』的な仮想世界は、『マトリクス』のようには、単純に自然性に対立するものとして、作中で自動的に否定されるものではない。

むしろ、自然性による自動的な否定を相対化するものとして、「人工知能」フロンティアセッターは方法的に導入された印象がある。

最終的にディーヴァから離脱するアンジェラだが、その「人工性」と「自然性」との正否からディーヴァを否定したという風には描写されない。
彼女の決断は、むしろ個人的で趣味的な気分から決断をしたような印象を与える。

彼女の否定は、仮想化の是非ではなく、その「管理」の在り方に向かっているようだ。
別にデータ化して仮想化社会で「生きる」ことに不満はないが、あの「管理」は気に入らない。

楽園とも自己宣伝するディーヴァ社会だが、楽園が楽『園』である限り、管理は必須の条件となるだろう。管理がなければ、「園」は荒野と変わるところがないのだから。
楽「園」を維持する管理は、あたかもミシェル・フーコーの生権力的な形態をモデル化しているようだ。
仮想現実化社会に、生まれた直後にディーヴァによって電子化されて投入される実存は、そこでの「生存」を望む限りディーヴァの管理当局による指示に従わざるを得ず、管理から逸脱した価値観を持つことは原理的にできないように設定されている。

「存在」がシステムによる「電子化」に根拠づけられているため、「生存」したいという当然の欲求は、管理の要求する「社会貢献」という評価基準を内面化していくほか実現させる道はない。

「生きる」ための価値観と行動が、すべて管理の正当性を強化する力をもたらす社会は、我々の「社会」を連想させ、おそらくこれを暗示するものだろう。
「生きたい」という自然な欲望が、「管理」の承認を支えて強化してしまう社会。

エンドロールの途中のパラグラフで、保安局はさらなる管理の強化と離脱者の防止を決意する。
生権力の本性をうかがわせる描写は、ますます我々の社会との類似を暗示しているとの印象を高めるとともに、どこか既視感がある。

電脳化システムを独占することで全住民の「生存」を支配し、基準を設けて「住民」を選別、その基準と管理を一手に引き受け、「排除(凍結)」する権利を担保する社会は、いわば全住民が潜在的に収容所に監禁されているのと等しい。
離脱者までも管理を強化する契機に利用し、権力を司る保安局員が神話的アバターで現れる権威づけは、「真実」を体現する「党」によって指導、管理される、収容所共産国家に酷似している。

我々の社会でも「社会に有用な存在であれ」「社会に貢献できないものには、何も与えることはない」「この当たり前のことを否定するものは、社会から排除せよ」と主張する人が目立って多くなっているようだ。

ディーヴァ社会でも通じそうな主張をするこの人たちが、躍起になって否定するサヨク的なものの根源である収容所社会が、この我々の社会を思わせるディーヴァ社会と似ているのは皮肉なことだ。

だが、当然のことながら、「社会」の外には世界が広がっている。
社会の評価と承認が無ければ「社会内」では存在できないが、外部世界は必ずしもそうとは限らない。

地球に降り立ち、その社会や住人、さらには数百年を「管理」なしで自立進化し続けてきたフロンティアセッターとの出会いにより、内面化されていた「管理」の有効性を懐疑し始めたアンジェラは、「管理」=生存の保証ではないことに気づき、受肉した地球上の存在へと自己を投機する。
繰り返すが、仮想現実社会への正邪の審判ではなく、その「管理」への趣味的な回答として。

ある意味究極の外部「世界」=深宇宙を目指すフロンティアセッターは、一切の評価も承認もなく目的を完遂する。
そう、内面化した「社会の基準」ではなく、この私の、私自身の内部から湧き出してくる「衝動」こそが、世界での生存を支え得る。

外宇宙へと旅立ったフロンティアセッター。首尾よく成果を上げる可能性は極微だし、たとえ成功したとしても文字通り天文学的な時間ののちに帰還したところで、称賛や承認を与える人類は、もはや存在していないだろう。

それでも、陽気に歌いながら、むしろ楽しげに旅立って行く彼の姿は、彼を動かすのは自身の衝動であり、社会の評価や制度化された承認など問題ではないことをよく示しているのではないだろうか。
趣味的に離脱を決断したアンジェラもまた。

このように「楽園から追放」された彼女たちだが、じつは「追放」されたのは仮想現実都市のほうかもしれない。


最後に特記しておきたいのは、無機的でありながら奇妙な人間性を絶妙に感じさせるフロンティアセッターを表現した、神谷浩史の力だ。
固有の風貌も持たず、フレームのデジタルデータの集積が本質である、人工知能という抽象的な存在が、一種の人格をもってスクリーン上に受肉し得たのは、神谷浩史という肉体を通過した声なくしてありえない。{/netabare}

現代の声優の演技は、ここまで高いものになっていたのかと再認識した。

若手俳優やタレント主体のドラマや映画がどう頑張っても、これほどの演技レベルに追い付くには、ちょっと絶望的な差を感じる。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 10
ネタバレ

生来必殺 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

お前の魂、ロックオン

最終進化を遂げた新世代の人類代表エリート捜査官と
地に足のついた旧世代の地球人と所属不明 謎のハッカーとの
奇妙な三角関係で描かれるサイバーパンクの物語。

サイバーパンクとは本来SFというジャンルに属するものであるが
その本質は、サイエンス糞喰らえ!
サイエンス技術の理論的写実性要素に傾倒したリアリティなど金属バットで粉砕!
という風にアンチSFな精神が不可欠な構成要素であるという宿命を有する。

そもそもSFという言葉の定義が曖昧なのが問題だと言えばそれまでだが
サイバーパンク作品において科学主義的屁理屈は必然的、予定調和的に破綻する。
サイバーパンクにおいての科学的な理屈とは、荘厳な趣をもったバベルの塔のような
破壊されるべくして建築された矛盾した装置である。
その一方で、塔崩壊のカタルシスを最大化するためには塔の構造を強固にする必要があるのだが
構造上に全く欠陥がなければ倒壊しないという矛盾も起こり得てしまう。
簡単に倒壊しないが、倒壊し得る構造の塔を設計するのがパンクな作者の腕の見せ所と言えるのだろう。

本作においての「バベル」の描写は至ってシンプル、ありがちな王道的設定。
しかしながら、奇妙な三角関係によって描かれるストーリーが洗練されすぎて驚愕。
もの凄くシンプルに、もの凄く先鋭的に、もの凄くわかりやすく、サイバーパンクの本質が描かれている。
下手に小難しい専門的用語やら、(文学はいいとしても)生物学の学説の引用とかの羅列・・・
今までのサイバーパンク作品は、一体何を描こうと足掻いてきたのか?と虚しくなる程。

地に足の着いたロックンローラーの一言は、理論武装したサイエンティストの弁明より強し。
この脚本家の実力はやはり本物で、台詞がイチイチと印象的で五臓六腑に響きやがるのだ。
{netabare}SF主義を金属バットで粉砕するような描写が正しいあり方であるとは限らないが、反骨魂は絶対に必要な要素である。{/netabare}

サイバーパンクなんて時代遅れな感覚の作品で今更誰からも評価されない
と思い込んでいたがのだが、
本作を見て前言撤回。
本作をきっかけにもう少し難易度が高いものも見てみるのもよいかもと思うに至る。

私見だが、SFとは本来空想科学小説のことを指し
ハリウッド映画が持ち味とする映像的説得力を重視した作風とは
相容れない、例えばフランケンシュタインの物語などがそのプロトタイプと
考えるべきだと断言したい。


攻殻など他作品のネタバレ、批判等々を羅列。閲覧要注意!
{netabare}
攻殻原作者が拘った「GHOST IN THE SHELL」とは何であるか?
アーサー・ケストラーという人が提唱した「Ghost in the machine」
(機械の中の幽霊)という論説にちなんだもので
もともとはギルバート・ライルという人がデカルトのコギト(的人間機械論)を揶揄する意図で
表現した言葉「機械の中の幽霊」をケストラーが逆手にとって
「機械の中の幽霊」はいる!と反論を展開した説に影響を受けた考えであろうと推測。
デカルト的観念論の中でのコギトとは自我というよりも霊魂に近い位置づけであり
それ故にデカルト的観念論に全く理解を示さない立場の人たちはデカルト的機械論の浅はかさを批判。
それに対してネオ・デカルト主義者のケストラーは、より緻密で高度な人間機械論を示すことで反論
物心二元論の霊魂と肉体の連動率がより高い持論を展開した。

「GHOST IN THE SHELL」すなわち、人工的な外殻、機械的な構造の身体、サイボーグであっても
霊魂と連動するのであれば生身の体を持った人間となんら変わらないわけだから
人間の本質はゴーストにあると言い切れるわけで、そうであるからこそサイボーグ技術などの
サイバネティクスという人工的装置が意味を持ち始めると考えられる。
銀河鉄道的機械人間はどこまで行っても機械人間にすぎないという意見に対して
問題の機械人間の非人間的性質は機械伯爵の自我、霊魂のあり方に起因するものであり
すべての機械人間が冷酷で非人間的あると決まったわけではない。
機械のボディも生身のボディも霊魂の指令によって機能するものであるから、という風に。

ネオ・デカルト主義者の願望は霊魂の対物連動率の高さだけに特化していたのだろうか?
劇場版攻殻 GHOST IN THE SHELLで少佐は、人形使いと融合し、ネットワークシステムとも融合し
世界そのものとも融合?しすぎて、軽く人間を超越してるわけだが
イノセンスで還ってきた少佐は確かに人間的ではあったかもしれない。

とは言え、GITSの続編イノセンスの主人公はバトーであるから
バトーが何者であるか描ければそれで十分目的は果たせるのだ。
サイバーパンク的重苦しい空気の中で彼の飼い犬がやたらと無駄に愛くるしく描写されているのは
流石というべきで、ディンゴとフロティアセッターの対話中で見えてくるディンゴの人間性のように
飼い犬という鏡を使ってバトーの(犬への)愛着心が鮮明に描かれている。
ドライにせよとの忠告にもかかわらずドライに行けないバトーの生き甲斐は、飼い犬と
守護天使との再会だけなのかもしれない。そんな彼の魂のあり様はある意味イノセンスなのかもと感じた。

STAND ALONE COMPLEXとは何か?
その厳密な定義についてはここでは敢えて見送りたく思うが
趣旨としては「GHOST IN THE SHELL」という発想を
本家のアーサー・ケストラーが展開した「ホロン」という概念を用いて説明する
複合階層構造的機械論を「STAND ALONE COMPLEX」という言葉に置き換えて
「攻殻魂の存在」を理論的に補強、説得力を持たせようとしたのだろうけど・・・
社会現象とか、社会システム論的な受け止め方をされて、逆効果だった感がある。

全体は個から成り、個は全体に属するのだけど
全体に個と同じあり様の霊魂が存在するという発想は今の感覚的には受け入れられないような気が・・・
{/netabare}

楽園の記憶は魂に刻まれ、空の彼方に回帰を願う
{netabare}
サイエンスフィクション的物語の中でロック魂と仁義だけで奇妙な人間の在り様に
説明がつくという一撃必殺技の切れ味に驚愕。
アンジェラはFセッターの行動原理を人間的な使命感やプロ意識的なものとして
理解するのだが、保安局員とハッカーが相互理解を深める展開には若干無理がある。
自然かつ効率的に敵対するはずの二者の距離感を縮めるための仲介者として
ディンゴの役回りが良く効いていた。
三角関係による魂の共鳴現象、共鳴連鎖により必殺の大技!摩人狩り!?
ではなく、楽園追放から地上に受肉、大地を踏みしめ生きる一人の人間が誕生。

Fセッターは限りなく人間臭く限りなく人間に近いロボットである。
人間的ではあるけれど、人間と同じ霊魂をうちに秘めてはいない。
使命感的なプログラムと少し楽観的な未来予想のシミュレーションを実行することはあっても
フロンティアの夢は見ない。
肉体という牢獄にいながら、無限の宇宙の夢を見るのは人間のみに与えられた能力なのだ。

タチコマやFセッターと草薙少佐やアンジェラの決定的な違いは何か?
それは機械やマシーンが人間の忠実なしもべであり、プログラム通りに動くのに対し
人間は、例えば彼女たちのようにエリート街道を今まで順調に歩んで来たとしても、
その道を離脱して我が道を進む決断を下すことができる点にある。
もちろんロボットが人間に反逆を起こし人間の存在を脅かすようなSFの話は
過去に腐るほどあるのだが、その反逆はプログラムのエラーにすぎず、
プログラムされた目的と別の意図でロボット自身がフロンティアを目指し
ロボットのための文明・社会を作るようなことはあり得ないだろう。
何故ならロボットには人間のように生存本能がなく、歴史や文化を積み重ね
継承することに意味を見出せない存在だからである。

Fセッターは人間と共存する関係性の中でロックを演奏することはあっても
プログラムされた道を放棄してロックンローラーの道を歩む選択はしない。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 18
ネタバレ

mrt さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

自分の価値を自分で見極める

電脳化された人類が住まう楽園『ディーヴァ』に
地上から幾度も現れる謎のハッカー……
フロンティア セッターと名乗るそのハッカーを探し出すため
ディーヴァ保安局の三等官アンジェラ・バルザックは、
旧世代の遺物と化した『地上』へと降り立つ

__ディーヴァ__
電脳化した人類の楽園世界
この世界の人類は地上の人間に対して、進化の次のステージに進み肉体という枷から外れた高尚な存在。
生まれた時から1300時間は生身で、それ以後は電脳の魂となる。

__アンジェラ・バルザック__
諦めたことも弱音を吐いたこともない。
負けず嫌いな本作品のヒロイン
ディーヴァ保安局で三等官まで昇進
手柄を立て昇進することが自分の全て。
地上に取り残された人類は滅ぶ事しか出来ない旧世代だと思っている。


__ディンゴ__
旧文明の人類の地『地上』のS級エージェント。
今回の任務におけるアンジェラのオブザーバー
『素行は悪いが腕は確か』と評価されている。
その気になればディーヴァの『特待市民権』を獲得出来るほどの功績を持つ。何度か電脳化のオファーも有ったようだが…………。

__フロンティア セッター__
ディーヴァの治安を混乱させ、市民の不安を煽る存在
旧文明の人類の地『地上』からのハッカーであり、アンジェラからその目的は
『いずれ本格的な破壊工作を仕掛ける為の前段階の準備として、パニックの下地を整えようとしている』と考察されている。

__フロンティア・セッター(ネタバレ♪)__
{netabare} ジェネシスアーク号建設における進行管理アプリケーションに付随する自立最適化プログラムが行った2259341回目の自己診断アップデートの際に出現した概念。
『今から45629日と11時間前に発生しました』と自己紹介する
簡単に言えば、人工知能が自我を持ったということ。
現時点でジェネシスアーク号のプロジェクトを推進している唯一の存在。
本人は人類との平和的な交渉による相互理解を希望している。
ディンゴとは好きな曲が一緒で、何かと相性がよろしくみえる。
ちなみにその曲はもちろんEONIANです。

ジェネシスアーク号は光学明彩で隠蔽してある全長1200mの探査船である。

__フロンティアセッター計画__
地球環境の激変に備え、外宇宙に人類が居住可能な移民先をジェネシスアーク号によって探しだす計画
人類の新たな生存圏を獲得するためのプロジェクトが各国で多数並列に行われていた当時、互いが競争関係にあったため極秘裏に行われていた計画の1つ。
つまりディーヴァ以前の計画のためディーヴァは感知出来なかった。

フロンティアセッターがディーヴァにハッキングをした目的は、ただのプログラムにしか過ぎない自分だけで外宇宙探索に行っても、『居住可能な外宇宙探索に人類を送り出す』という当初の目的が果たせないため、一緒に行ってくれる人類を探していたが、ジェネシスアーク号の再設計による小型化の際に乗組員=『生身の人間』の搭乗スペースが無くなり、地上の人間は誘えなかった。
しかし電子パーソナリティーの生存圏となるメモリーの積載は充分に可能だったため、電脳化されたディーヴァの市民を誘おうと考えた。
更に、ディーヴァが外宇宙探索に意義を見出ださないことを予見し、ディーヴァとの正規の交渉ではなく、そこに居住する市民と直接的に交渉するためにハッキングという手段を選択するしかなかった。
攻撃はおろか、治安を乱す目的すらない。本人は『誠に遺憾』と語っている{/netabare}

以下ストーリーネタバレ
{netabare} 地上に降り立ったアンジェラとディンゴは、フロンティアセッターがディーヴァを易々とハッキングしている事から、ディーヴァとのオンライン接続抜きという状況下でフロンティアセッターの捜査をはじめる。

ディンゴの考えでは、敵がどうやって来たかより、
何をしに来たかが重要であるという。
フロンティアセッターがディーヴァハッキングの際に、必ずある主張を繰り返している事に着目する。
その主張とは
1外宇宙探索の同志となる存在をさがしている
2外宇宙探査船の準備は整っている
というもの。
アンジェラはこれに対し
1(ディーヴァ的にはメモリーの領域の限り資源を創造出来るため、わざわざ外部の宇宙まで出向く事はリスクに見合わない)
2(地上、つまりは旧世代の存在が上位種であるはずのディーヴァに悟られずその様な大規模なプロジェクトを遂行できるはずがない)
と反論する。
しかし、ディーヴァの特性として、1度不要と判断した情報は破棄されるので、ディーヴァの情報は完全ではない。そこに漬け込む余地がある。との見解を示し、続けて

わざわざ地上からディーヴァにアクセスする必要がある存在は、同じく地上から出る必要がある。
よって、ロケットの打ち上げに関わるような動きを警戒するべきだ。
と考え二人はロケット打ち上げに関係しそうな情報を集めはじめる。

そして、分解により亜酸化窒素になる硝酸アンモニウムを物々交換で集める謎の存在を知る。
(亜酸素窒素は液体酸素より扱いやすく、ロケット燃料の酸化剤は理想的なもの。)
二人が物々交換の現場で目撃したのは、遠隔操作されたロボットが硝酸アンモニウムを引き取りに来る光景だった。
衰退した地上にそんな技術を持つ者はフロンティアセッター以外考えられない!
二人は硝酸アンモニウムに仕掛けた発信器をたどり、とある廃墟にたどり着く。
そこに佇む一台のロボット……
そのロボットから発生した音声はこう告げた
『ようこそお出で下さいました。こちらに攻撃の意図は有りません。警戒を解いて下さい。』そして
『フロンティアセッター__その呼称は私に該当します__』……と。
{/netabare}

感想
以下ネタバレ
作品としてのクオリティは非常に高いと思います。この作品なら自信を持って誰にでもオススメできます。
個人的には、肉体についての価値観の違いの描写がとても気に入りました。
肉体を捨て、肉体では不可能な事象を体験でき、更に肉体を持つことによる弊害『疲労、病』等の枷から外れる事は素晴らしいと、ヒロインであるアンジェラは言います。
ディンゴはその主張を受け止め、それでも『メモリー』(個人に与えられる存在の容量)という枷から抜け出せず、より手柄を立てて、より多くのメモリーを獲得する生き方にしか価値を見いだせないアンジェラに対して『メモリーを稼ぐことが全てな、他人に値段を付けられる様な生き方であり、肉体の枷よりもっと嘆かわしい枷だ』と言います。
アンジェラの考えでは、より多くの功績を挙げた者により多くメモリーが与えられるのは当然で、そこに
懸命に努力を重ねたアンジェラのプライドと誇りを感じました。
私はどちらの主張も正しと思いますが、ディーヴァが楽園という存在であるか?という事については否定します。
個人の1と0で造られた魂。その存在の場所を確保するために
暗黙に競争を強いる傲慢な支配者だと思います。
逆にフロンティアセッターは最高ですね。
人類が電脳化された今、彼が自分で得た自我はより洗練された『人』だと思います。
って言うかディーヴァの完全上位互換でしょ。
アンジェラがこれから地上でディンゴとどんな人生を歩み、どのような幸せを手に入れるのかとても楽しみです。
フロンティアセッターには、胸を張って『私は人類だ』と言って欲しいです。
彼の旅路に素敵な出会いが有ることを祈ります(*^^*)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 2

75.7 5 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング5位
PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR(アニメ映画)

2020年3月27日
★★★★☆ 3.8 (225)
1353人が棚に入れました
2120年、東京。シビュラシステムによって管理された社会で、刑事課一係を率いて事件を解決してきた二人の監視官、慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフは、事件を捜査していく渦中で真実と正義を巡り決裂してしまう。それらの事件の裏で暗躍する梓澤廣一は、ついに刑事課そのものを標的に定め、公安局ビルを襲撃する。かつてない窮地に立たされた公安局刑事課一係。灼と炯の信義を問う、最後の事件が起きる――

声優・キャラクター
梶裕貴、中村悠一、櫻井孝宏、大塚明夫、諏訪部順一、名塚佳織、沢城みゆき、佐倉綾音、日髙のり子、宮野真守、中博史、日笠陽子、森川智之、堀内賢雄、矢作紗友里、関智一、野島健児、東地宏樹、伊藤静、本田貴子、花澤香菜
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

シビュラの帰還

AmazonPrimeVideoの編集版を視聴。

【物語 3.5点】
『~3』としては大風呂敷を畳むも、
『PSYCHO-PASS』としての論点は、語る土台を整えるに留まる。
とは言え、刑事ドラマとしてシリーズが脱線、霧散という最悪の事態は避けられた。


道中、シリーズの象徴である“ドミネーター”の出番を制限してまで、
アクションや人質に交渉、脅迫、“狐”やブラフなども飛び交う、
刑事ドラマSPらしいお祭り騒ぎを繰り広げた時は、
興奮はするけど、もう『PSYCHO-PASS』は戻って来ないのでは?
とワクワクとイライラが入り混じった複雑な気持ちにさせられましたが、
最後はちゃんと『PSYCHO-PASS』として着地。


結局、{netabare}いつも通りのシビュラ圧勝でしたw{/netabare}


【作画 4.5点】
各組織の“代表選手”が激突する格闘戦、銃撃戦、ドローン戦などが
よく動く作画でド派手に演出されている。

もっとも、私のベストバトルは……{netabare}“ダンゴムシ”無双ですが。{/netabare}


描き込まれた背景美術に重ねられた季節の描写も頑張っていた本作。
降り止まない雨ばかりでなく、
雪降りしきる真っ暗な冬から、やがてやって来る花吹雪舞う新しい春へ……。
春公開の意外なタイムリー性を見せる。


霜月課長の変顔もあるよw


【キャラ 4.0点】
華やか。舞台を公安局とその周辺にしぼることで、
現状のオールスター戦が実現。


『~3』の新主人公キャラの灼(あらた)については、
シビュラとの関係性も含めて立ち位置が明確になり、
罪を憎んで人は執行せず裁きにかけるという性格が改めて強調。


今後、旧主人公の朱の構想や、狡噛の価値観と、
どう関わり、対峙していくかが、
『~3』が壮大な伏線だったか、脱線だったか、
決定付けるポイントになると思います。


梓澤(あずさわ)は、“紙の本”で読書する中々のボスキャラでしたが、
1期の例のあの方には、やはり及ばず……。

むしろ、スタッフさんたちもそれは承知の上で、
及ばない様を、シナリオで生かす道を模索した感があります。


【声優 4.0点】
主要キャスト陣らが引き続き安定。
ブラフ合戦が醍醐味になるのも役者の好演あってこそ。

天才クラッカー・小畑千夜役を演じた矢作 紗友里さんの悪態と、
受け流す梓澤廣一役の堀内 賢雄さんの掛け合いも程よい毒スパイス。

CV野沢 由香里さんとCV斧 アツシさん。
ベテラン勢が演じた“ピースブレイカー”残党も
“亡霊”として渋味が効いてグッド。


【音楽 4.5点】
劇伴は『~3』からのメインテーマが要所で活躍。
新旧キャラが“肉体言語”で会話するシーンでは、
旧メインテーマの旋律もアレンジされ対決を盛り上げる。

OPはWho-ya Extended「Synthetic Sympathy」
雨が降り止まない首都の闇をハイスピードで駆け抜ける快作。

EDはCö shu Nie「red strand」
変拍子も交えて歪んだ世界をかいくぐり意志を貫き通す。


なんだかんだ『~3』の一番の収穫は新OP&ED主題歌体制の確立。
特にWho-yaの抜擢は大きかったと思います。


【感想】
どこぞの中央銀行が利下げした、統計発表がどうだった。
テロが起きた、選挙結果が意外だった……。

現代の市場取引は、世界情勢などにも反応して、
自動的に売買を即断するアルゴリズムによって、
超高速マネーゲーム化している……。

とすると仮に市況を一変させる出来事を操作、創造できるとしたら、
これはもはや大きすぎて摘発されないインサイダー取引だな……。

本作を視聴していて真っ先にこの着想を思い出しました。


過度な刑事ドラマ路線傾倒への懸念はひとまず払拭されましたが、
22世紀が舞台のSFとして未来を見せてくれたかと言えば、
扱われた問題は、引き続き21世紀的だったと思います。

ビブロストとの戦い自体……
{netabare}シビュラ開発過程で残った過去の問題の精算でしたし。{/netabare}


さらにここに来て、朱が、{netabare}法による人とシステムの保護を提唱し出した件。

そう言えば、そもそも法治主義が何故崩壊したのか。
そこからシビュラシステムがどう確立されたのかについては、
語られていないことも多い印象。

もしも朱が法治主義の復活を目論むならば、
今後の物語は多分に温故知新の様相を呈していくと思われます。{/netabare}


因みに劇場公開版の方は、EDクレジット後に今後の展開も匂わせる映像が追加されているとか……。
流石に新型コロナ感染リスクを冒して劇場に遠征する勇気はないですね……。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 27

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

裁くのは、神か正義か

本作品はシリーズ構成になっており、先にTVアニメ版全3期、劇場版アニメ版全4作が輩出されています。
物語の内容に繋がりがあるので、より作品を堪能したい方は、前作からの視聴をお勧めします。


魂を数値化する巨大監視ネットワーク・シビュラシステムが人々の治安を維持している近未来。
変わりゆく世界で、犯罪に関する数値〈犯罪係数〉を測定する銃〈ドミネーター〉を持つ刑事たちは、
罪を犯す前の〈潜在犯〉を追う。2012年にスタートしたオリジナルTVアニメーション作品
『PSYCHO-PASS サイコパス』の第三期TVシリーズ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』で
描かれたふたりの新人監視官の物語が、最新作『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』
としてついに完結する。

変わりゆく世界で真実を追い求める慎導灼、炯・ミハイル・イグナトフが辿り着く先にあるものとは—。


2120年、東京。シビュラシステムによって管理された社会で、刑事課一係を率いて事件を
解決してきた二人の監視官、慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフは、
事件を捜査していく渦中で真実と正義を巡り決裂してしまう。

それらの事件の裏で暗躍する梓澤廣一は、ついに刑事課そのものを標的に定め、公安局ビルを襲撃する。
かつてない窮地に立たされた公安局刑事課一係。灼と炯の信義を問う、最後の事件が起きる――


公式HPのINTRODUCTIONとStoryを引用させて頂きました。

え…これで完結だったんですか!?
公式HPを見たのが視聴後だったので、思わずビックリ…

まぁ、確かにシビュラシステムの全容は見えましたが、まだ気になる点は残っているんですよね。
コングレスマンだった宮野さん演じる法斑静火(ほむら しずか)にはラストで超展開が待っていましたが、その展開に行き着く過程が描かれていなかったり…

何より常守朱の処遇だって気になるのですが、そこは少し消化不良だったかな…
もう少し情報が欲しいところですが、それは脳内で補完するしかないんでしょうかね^^;
少なくても、あやねる演じる霜月課長は仕事がやり辛くなるのは分かる気がしましたけれど…

それに3期の伏線だって回収できていませんよね。
炯の兄の事件の真相はどこに行ってしまったのでしょう…

と、色々書きましたが、思えば第1期のTVアニメが放送されたのが2012年の秋~冬アニメですから、もう足掛け8年にもなるんですよね。
だから「これで終わってしまう」ことに対して寂しさを感じているのかもしれません。

一方、物語の方は序盤から手に汗握る展開の連続です。
これまで公安局がここまでピンチに陥ったことは無かったと思えるくらい、激しい事件が一係に襲い掛かります。

これまで現場の最前線には、監視官と執行官しか出れませんでしたけど、今回は普段局でサポートに徹しているメンバーの違う一面が見えたり、見どころは沢山あると思います。

キャラの動き良し、背景も緻密とアニメとしては申し分無いのですが、少しこの作品を俯瞰すると、結局やっていることは所詮ゲーム…と思えてしまいます。
目的の違う複数のゲームが、それぞれの盤面で行われている感じ…とでも言うのでしょうか。

人々の生活が懸かっているリアルでゲームするなんて、どう考えても正気の沙汰ではありません。
それこそ、シビュラの執行対象になってしまいそうですけど。

まぁ「リアルなんてクソゲーだ!」と言い切った超天才ゲーマーもいるくらいですから、面白ければ結果オーライなんでしょうかね^^;?

主題歌は、Who-ya Extendedさんの「Synthetic Sympathy」
エンディングテーマは、Cö shu Nieさんの「red strand」
Cö shu NieさんはTVアニメ版第3期からの参戦ですが、今回の楽曲も格好良かったですよ。

前編、中編、後編の3部作の作品でした。
サイコパスファンなら必見の作品だと思います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

常守は。。茜はどうなる?あかね、カムバーック! ><

(視聴開始時の心の叫びです・・)

劇場版3部作以外は視聴済み。
TV版の続き。
鬼滅と言い、コレといい、フジ系列って続編を映画でっての好きですね・・
まあ商業だから、文化活動じゃないから、より儲かる方法をとるのは仕方ないっちゃ仕方がないですけどね・・収入が少なくて業界がしぼむのも良くないし。

さて素子・・じゃなかった常守茜は出てくるかな。

■ストーリー
~{netabare}
あまりにも、それまでのシビュラシステムを絡めた常守茜を主体とした展開が衝撃的過ぎて、サイコメトラー〇〇みたいな外伝感が強かった3期は個人的に肩透かし、といった印象でした。

本作も初めはそんな感じでしたね。
サイコメトリーは多用しなかったですが。

物語のほとんどが、『ダイ・ハード』みたいなビル内のテロリストを捕まえろ!的な。

最後の方でようやく、素子・・・じゃなくて
(しつこいw)
花澤さん・・じゃなくて
(もうええw)
常守茜が登場・・
ようやくかい ><
{/netabare}~

ぶっちゃけ、サイコパスとして言えば、もうちょっと欲しい・・・といった部分もあったけど、これはこれで見応えはあるし、面白さはありました。

■キャラ/作画
正直、バトルの動きが、一部カクカクしていたかな。
劇場版でこれはちょっと・・

個人的に小畑のキャラデザがちょっと受け入れられなかった。
公式サイトではオバサンぽいのに作中では少年感すらあったし。

TV版からすぐに劇場版てことで余裕がなかったのかな、と思ってみたり。

■キャスト
今回注目したのは・・
~{netabare}
日笠陽子(小宮カリナ)
 心地よい都知事のこの声、
 どっかで聴いたよな・・
 だれだっけな・・佐倉さん?いや違うな・・
 で、調べた・・
 おお!ぴかしゃさん!w
 もう、K-ON以降、お世話になりっぱなしですw
 印象的だったのは、ガンゲイル、ノゲノラかな。
 色っぽい声ももう、プロの域ですね ^^
 (あ、プロでしたw)

佐倉綾音(霜月美佳)
 あやねる、こっちでしたかw
 本作では公安局の課長役。
 強い上司感出てたしいい役どころでしたね。
 今後は花澤さん・・いや
 常守茜の上司になるのかな。
 新サクラ大戦とか、新しい無限の住人とか、
 俺ガイルとか、宝石の国とか、バンドリとか、
 SB69とか、かくしごととか、
 ホントお世話になってます ^^

本田貴子(花城フレデリカ)
 本作では外務省の課長役。
 花咲くいろは、シドニア、よりもい、
 イロセカ、イエスタデイをうたって・・
 母親役とか、やっぱ大人な女性役が多いですね。

矢作紗友里(小畑千夜)
 あれ・・オバタちゃんは、
 矢作さんだったんですね。
 最近、遭遇率が高いようなw
{/netabare}~


 原作:オリジナル
 制作:Production I.G
 公開:2020年10月 TV版3期
    2020年 3月 本作
 視聴:レンタルDVD
 (あ、アマプラでやってた・・「あと1本で安くなるよ」というTSUTAYA店員の言葉で焦って借りてしった・・ orz)

次がありそうなので期待大ですね・・

え・・シリーズ最終作!?マジで・・?

 

投稿 : 2024/11/02
♥ : 13

73.0 6 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング6位
BLAME!(アニメ映画)

2017年5月20日
★★★★☆ 3.8 (215)
1197人が棚に入れました
テクノロジーが暴走した未来。人類の希望は孤独な旅人に託された――。

過去の「感染」よって、正常な機能を失い無秩序に、そして無限に増殖する巨大な階層都市。
都市コントロールへのアクセス権を失った人類は、防衛システム「セーフガード」に駆除・抹殺される存在へと成り下がってしまっていた。
都市の片隅でかろうじて生き延びていた「電基漁師」の村人たちも、セーフガードの脅威と慢性的な食糧不足により、絶滅寸前の危機に瀕してしまう。
少女・づるは、村を救おうと食糧を求め旅に出るが、あっという間に「監視塔」に検知され、セーフガードの一群に襲われる。
仲間を殺され、退路を断たれたその時現れたのは、“この世界を正常化する鍵”と言われている「ネット端末遺伝子」を求める探索者・霧亥(キリイ)であった。

声優・キャラクター
櫻井孝宏、花澤香菜、雨宮天、山路和弘、宮野真守、洲崎綾、島﨑信長、梶裕貴、豊崎愛生、早見沙織
ネタバレ

waon.n さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

超絶カッコいい!本当に映画館で観たい。

 1時間46分ずっと圧倒されっぱなしだった。絵、音、動き、匂い、熱。匂いや熱まで感じられる気がする。それほどに作りこまれた上質な作品だと思います。ポリゴンピクチャーズさん弐瓶勉さんはシドニアの騎士でしっかりと私の記憶に残っていて、ずっと観たいなーとか考えていたのですがやっと観れた。
 NETFLIXでの視聴だったのですが、映画館で観たかった。2017年の作品という事でなぜ気づけなかったのか後悔ばかりです。(本当に映画館で観たい)

 ネタバレタグ入れますので、未視聴の方はSF好きならぜひ見てもらいたいな、そんでもってその後また読んでもらえたら嬉しいかなと思います。

 魅力を語りたい。
{netabare}
 この作品の最大の特徴は建造物に囲まれている状況であるという事。ここまで閉鎖的な雰囲気の作品も珍しいし、全体的に黒く暗い。アンダーグラウンドを舞台とした物語だという事です。
 アンダーグラウンドというのも、地下という意味だけでは無く、機械の統制を免れて逃げている人間を描いた作品であるので、これは偶然ではなく必然的にこういう雰囲気づくりになったのだろうし、それを映画としてみた時にちゃんと演出されている。
 主人公はあくまでも、キリイという青年の容姿をしたイケメンなんだけれど、それは漫画でも映画でも同じではあるものの、どの視点から観客に見てもらうか意識しているかっていう点でいえば、生き残った人間達の視点からだと思われる。
 彼らは今の私達に一番近い存在です。
 キリイという主人公はサイボーグ化されていて元々は機械側の物だったが盗まれて今の状況になっているという存在。
 シボという科学者は機械が統制を初めてから、それを人間の手に取り戻すために動いていた存在。彼女はキリイに発見されるまで2000年ほど待っていたとかって言っていた(1752万時間位待ってたって)のでちょっと理解しがたい存在になっている。
 そして、機械から逃げている人間達。ある意味一番現在進行形であるはずの人達が視聴している私たちに一番感覚が近いというのも面白いなと思う。
 キリイと科学者の会話に対して「何言ってるか、全然分んねぇ」うん私も!ってなりました。共感できる人達を主体に描いて行くのは、この短い時間でこのハードなSFというちょっと難解な物語を楽しませる上では必要な判断だったと思います。これは英断ではありますが、主人公というキャラクターにスポットを当てる事が難しくなる、なんなら一番遠い存在として描かれているから。
 この不一致に私は最初困惑するも、話が進むにつれて主人公がこの集落にいる人間を助けようと走り出すその行為に感動すら覚えてしまっていた。
 サイボーグ化によって感情がほとんど出ないからこそ、一生懸命に走ったり戦っている姿に、行為そのものに私は感動していたわけです。

更新追記:人間達の機械へのリテラシーは不思議なもので、視聴者からすると完全にロボットに見えるシボに対して、ちゃんと人間扱いしている点は面白い。他の人間を知らない、機械は集落に入れない、会話できない、などが線引きになっているのかなって思いました。これって現代に生きる私達には無い感覚ですが、どこかで機械と人間の線引きを私達だってしているはず。無自覚または無意識なだけで。ものに生命が宿るまたは神がという考え方が日本にはある訳で物に人間と同じような名前を着けるような人だっている。
 そういう意味では線引きは意外に曖昧だし、SFのAIによる攻撃がだとかっていう話になってきたりする訳であります。
 シボというキャラの造形が完全に人間のそれではない、けれど人間はそれを人間と認めることに抵抗がない。という設定は視聴している私達よとはやっぱり違ってちゃんと何千年後の未来を語っているんだという表現になっているんだと感じました。まぁ二回目を1.5倍速位で観て余韻に浸っていたら思い浮かんだことなので、追記という形になってます。
 
 アニメーションとしての魅力。
 廃墟って好きですか?私は割と好きなんです。忘れ去られた地にもかつては人が住んでただろうと思いを馳せるのは好きです。お城を見に行ったりする時にも感じる。これはノスタルジーとも言えるのかもしれませんね。
 あと広い工場とか武骨な建物がその機能のみを意識して作られている純粋さが好きなんですけれど。
 この物語はその巨大な建物が階層のように重なり続けて建設されているって設定のようで、それを表現する絵のカッコよさ、そして不思議にノスタルジックな気持ちにさせられる絵によって世界観を完璧に構築している。画面全体が建物なんです。凄い以外の言葉を見つけられないって感じです。
 そこに、アニメーションとして動きのある機械や人間も3Dでメチャクチャ動きまくります。モーションキャプチャーなのかな?人間の動きがかなりリアルで重力を感じたりすっごい飛んだりする時の踏切とか伸びとか、細かいところまで作りこまれている。
 でも3Dだと、パーツを作りこむのかな?分からんけど装備のデザインも良い。フルフェイスヘルメット必要性がいまいち伝わらなかったんですが、その中で見れるHUDとか好きね。主人公の目とかに入る演出とかも良いくて、FPS視点を入れたりしてSFって感じ出てるのが良いんだよなぁ。
 そして、この作品の一番カッコいいシーンはやはり後半の戦闘シーンですね。主人公の背中を見せながらのティルトアップにより全体像を見せていく演出はマジでカッコいいし、凄く綺麗です。あのシーンだけでも見る価値あるんじゃないかとか大げさに言っておきます。見直したら、これポップのメドローアだ…ってダイの大冒険リメイクしたらメドローアの演出はあれで行きましょう。
 
 閑話休題。
 
 音楽が良いんです。
 音楽って好みによって違うからねーとかじゃなくて、シーンに合っているか、どう見せたいかを理解するための指標にもなったりするから侮れませんな。逆に、BGMをピッタリと止ませて呼気の音だけとかにしたり、上手いんですよねー。
 四足歩行で走り回る機械のシャリシャリした足音とかも気持ち悪いのなんのってもう上手。

 脚本が良い。
 回想から入り、速攻で見せ場、敵との遭遇、主人公に助けられる、主人公の目的、集落の目的、相互の利害関係の構築、中盤で訪れるピンチ、集落への敵の侵入、敵の排除、逃避、エンディング。
 最初から全開で見せ場を持ってくる、中盤でもまたピンチからの脱出後半へのネタ仕込み、後半での最高の戦闘シーン。
 この3幕構成の全てにアニメーションの見せ場を持ってくる。プロットポイントを動かしているのはやっぱり雨宮天さんが演じる づる という少女。この映画ではこの子が物語を動かしているので主人公であるとも言える。ここから見てもこの映画は人間の目線で描かれていて、ちゃんと観ている人を意識した作りになっているんだなって脚本からも感じますね。
{/netabare}

 最高だった訳だけれど、じゃあ物語として、テーマとしてどうなの?ってなると、映画だし良いんじゃない?って感じます。
 結局作り手がどういう作品を作りたいか、どういう物を観てほしいかな訳でそれがハマるかハマらないか。今回は映像として、アニメーションとして最高の作品であるからそれで満足なわけです。私はねw
 テーマがあってそれを見せたいって作品もあるんで、そういう物はそういう物としてちゃんと観れるようにしたいとは常々思っておりますが、この作品に関してそこはあんまり強く描いてないんじゃないかなって思うので、物語としての評価だけは低いです。

 長々と書いてしまいました。全部読んでいただけていたら嬉しいです。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 7

chariot さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

解りやすく入りやすさに配慮の成されたSF作品。

劇場版、約105分程度。
弐瓶勉氏の漫画が原作となるセルルック3DCG作品。
ジャンルはサイバーパンク、バトル的な感じ。

<雑な設定説明>
舞台は何千階層から成る巨大な構造物。
ネットスフィアと呼ばれる都市を管理するシステムがあり、かつての人類はアクセス権となる「ネット端末遺伝子」を持っていた。
突如起きた<感染>によりネット端末遺伝子を持つ人類はいなくなり、暴走するシステムを止める術を持たない人類はネットスフィアを護る為の人工物セーフガードから違法居住者とみなされ攻撃を受ける。
主人公・霧亥(キリイ)は世界を正常に戻す為にネット端末遺伝子を持つ人類を探す旅をしている…

劇場版では霧亥が旅の途中で出会った電基漁師たちをメインとして話を展開する。


◆原作、そして劇場版としての作り。
原作既読ですがこの作品をどう映像化するのか、どんなストーリーでやるのか、非常に気になっていたのですが、感想から言えばアリでした。
まず会話も説明も少なく解りにくい作品である事は有名な作品ですし、全10巻を100分程度の話にまとめるのも不可能。
そこを上手く劇場用にアレンジして初見でも問題なく世界観を掴め、霧亥ではなく電基漁師たちを主軸にする事で感情移入のしやすさにも考慮した良いストーリーとなっていました。


◆物語4.0
序盤でこの世界に住む人々の暮らしを見せ、明確な脅威(敵)を表示し、本来の主人公である霧亥と接触する事で話を動かして行く。
ストーリー的に難しい事もなく細かな設定もストーリーと無関係な部分は削ぎ落とした説明で無理なく受け入れられる作りは親切設計で◎
原作通りの部分とオリジナルな部分とを上手く混ぜ合わせ、緩急のしっかりした展開は劇場版用として良く練られた印象。


◆キャラ4.5
こちらも劇場版用に女性キャラを配し、好感度UPを狙う作戦(笑)
主人公とも言える少女づるは原作にも登場するものの、あちらはファンでももはや覚えている人も少ないと思える程度の存在。
そこを昇華させる事で薄暗い世界にメリハリをつけている。
またタエやフサタといったづるの同年代の仲間を用意し物語に関わらせ、原作との差異を上手く埋めていた。


◆声優4.0
全体的にはもう少し上げてもいいんですが…
何故だろう…
霧亥に櫻井孝宏氏を起用する意味がわかんない(笑)
もうね、喋らないし感情も薄いから別に近所のお兄さんがやってもそんな変わらないです。
づるもタエもシボもサナカンも捨造もおやっさんもみんな良かったです。
(なに、この適当感溢れる感想…)


◆作画5.0
個人的にポリゴンさんの作画というかCGは評価が高いのですが、やはりこの無機質な世界感に非常に合う。
シドニアの騎士から見ても更にCGである違和感が少なくなった印象です。
また背景に関しては弐瓶氏自身も拘りのある方ですが、制作陣の拘りも感じられる素晴らしい出来。
配管の隙間からのカメラワーク、ヘルメッターや網膜に表示される電子情報、建設者や駆除系の動き、重力子放射線射出装置の威力、全てに於いてBLAME!の世界観を損なわない見応えのある映像でした。


◆音楽4.5
音楽というか、音響効果に関しての評価とします。
シドニアの騎士でも細かい音にも拘りを見せていましたが今回も同様。
個人的に凄く気に入ったというか気持ち悪さを最大限に引き出していたと感じたのが駆除系の歩く音。
原作だと歩く音までは表現されていなかったので金属質且つ虫っぽさもある音が非リアルなのにリアル感があって最高に気持ち悪かったです。
重力子放射線射出装置の音も地響きのような轟音で凄かった…

3D音響ドルビーアトモスが体験出来る劇場でも公開されています。
(一番の近場が幕張なのでどうにか時間作って行きたいと思ってますが…)
僕が観たのは7.1chでしたがそれでも十分すぎる程の迫力はありました。


まとめ。
弐瓶氏の描く世界を丁寧に再現し、原作ファンのみに受ければ良いといった一見さんお断りな空気も作らず、すんなりとワールドに溶け込めるように工夫された良作。
単体の物語に関しては突出した良ストーリーとは言えないが構築された世界観や美術、3DCGを限界まで生かしたエンタメ性の高さは特筆すべき事項。
原作ファンやサイバーパンク物が好きな方は勿論ですが、そうでもない多くの方に弐瓶ワールドを体感して欲しいと思います。




最後に…
「俺は霧亥…人間だ」

セーフガードじゃないよ?的な意味で言ったのかもしれないけど、
ここは「お前、人間じゃねえよ!」とツッコムべきなのだろうか…(笑)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 14
ネタバレ

しゅりー さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

BLAME!の世界に浸ることができる傑作

2003年頃までアフタヌーンで連載されていた二瓶勉先生のSFコミックが原作。
原作は個人的な感想を一言で表すとある種の変態的な背景フェチ漫画です。
それは人間の制御を離れた機械の無秩序な建築により
どこまでも人工的な建造物で囲われた世界が舞台であるためです。
寡黙な主人公:霧亥はネットへのアクセスと機械の制御が可能な
「ネット端末遺伝子」を持つ人間を探して
「ネット端末遺伝子」を持たない人間を排除する「セーフガード」や
人間と敵対する「珪素生命」と戦いながらひたすら旅をするのですが、
その背景に描かれた世界の圧倒的な書き込みによって読者を魅了していたように思います。

以前にもアニメ化の企画はあったようですがいつの間にか頓挫していました。
二瓶勉先生原作の「シドニアの騎士」のアニメ展開から発展して
劇場用アニメとして2017年5月に公開されたのが本作です。

「シドニアの騎士」同様ポリゴン・ピクチュアズによる制作で
スタッフも2期の瀬下寛之監督とシリーズ構成:村井さだゆきさんなど
共通するスタッフが多いようです。

映像としてはポリゴン・ピクチュアズによる3DCGのアニメーションで
広大な空間が精細に描かれており、キャラクターの衣装や顔の汚しなども
非常にきめ細やかで、さらに抜群のカメラワークで
戦闘シーンの躍動感が素晴らしいです。

物語は原作の一エピソードを素にオリジナルの設定や
キャラクターなども追加されて新たに描かれています。
原作では霧亥、シボを中心とした話に村の人々が関わるイメージですが、
本作では食糧難で困窮した村の人々にスポットをあてた
群像劇として昇華されていて見応えのある物語になっています。
また原作のキャラクターは輪郭線が薄く、表情におぼろげな印象がありましたが
森山祐樹さんのキャラクターデザインにより意志の強い顔立ちで
物語の説得力が非常に増していると感じます。

このキャラクターの意志の強さや村の人々の物語の説得力は
個人的にはBLAME!がアニメになって得ることができた
最大の恩恵だと思っていますので原作をご存知の方には是非見てほしいところです。
もちろん原作を知らなくてもあまり問題ないくらいに
丁寧に世界観を描写してあると思いますので、
ハードなSFの空気が好きであれば是非にとおススメします。

{netabare}
欲を言うなら原作でのサナカンとの初戦闘シーンにおける
セーフガードの気持ち悪い表現(後のガウナに通ずるような)があっても・・・
と思うところですが劇場アニメ的には難しいのかもしれません。
{/netabare}




さて通常のアニメなら上記内容くらいで書き終わるところなのですが
本作には国産アニメではじめてドルビーアトモスという音響システムでの
上映を行ったという特徴があり、音の部分でも是非視聴していただきたいアニメです。
音響監督:岩浪美和さんがドルビーアトモスの「ゼログラビティ」をみて以降、
同じ音響システムでアニメをと求めてきた結果が本作で実現したとのことです。
今まではドルビーアトモス対応の作品を制作するための予算的な制約や
スクリーンの確保が難しいといった制約があったようですが、
某戦車アニメのロングヒットと高い評価によってドルビーアトモスを
使用したアニメの制作、劇場公開が実現されたのだとか。

前述の某戦車アニメでは戦闘シーンの大音響が
特に話題になっていたように感じます。
本作も銃器の音声や巨大な物の衝突音、爆発、
そして主人公霧亥の武器:重力子放射線射出装置の音声など
戦闘関係の音の迫力が素晴らしいです。
ただ、さらに言うなら音が流れていく方向や奥行きが
とても自然に感じられることが魅力です。
特に本作は無秩序に建造されていった都市群という
広大な構造体の中が舞台ですので、その場所ごとに響く音の感触が
全く違って聞こえて菅野祐悟さんの世界観に沿った劇伴音楽と合わせて
まるでBLAME!の世界に迷い込んだような没入感がありました。

残念ながらドルビーアトモスに対応した劇場は全国でも
千葉県、愛知県、兵庫県の3か所しかないとのことですが
もしそうした劇場に足を運べるようであれば
是非体感していただきたいとおすすめします。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 10

63.5 7 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング7位
RD潜脳調査室 アールディー(TVアニメ動画)

2008年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (274)
1690人が棚に入れました
2012年、フリーダイバーの波留真理は、建設中の人工島沖合で観測実験の最中、「海が燃える」現象に遭遇し、49年間も昏睡状態に陥った。2061年、長い眠りから覚醒した波留は81歳の老人となり、車椅子生活を送らざるを得なくなった。そんな中、波留は旧友・久島永一郎によって、メタリアル・ネットワーク(通称:メタル)の情報を調査する、電理研外部委託調査員に任命される。メタルは、安全で人々の欲望を満たす一方、現実世界(リアル)の世界に歪みが生じたからだ。こうして、波留は蒼井ミナモとバディ(英語で『相棒』の意)を組み、メタルとリアルの間で起きる事件や謎を追う事になる。
ネタバレ

とまときんぎょ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

堅い雰囲気だけど、中身は温かないい話。

見終わった。落ち着いた感じで、好感。面白かったな。
この作品、日常のパートは「イヴの時間」が好きな人にお勧めかも。
堅い雰囲気ながら人情味あるエピソードが語られる。見せ方が控えめで品がある。
女の子のスカートの短さとムッチムチ感は徹底してるけど。男は痩せマッチョ。

ずっとIT関連なお話が続くのかと思ったら、自然環境の要素が入ってきた。海から始まった物語、そこに意味があったようで。

地球律。
災害をもたらすような気象変化は、地球が自らバランスを保とうとして自然の流れを巻き起こす、陰と陽のような影響で起こるのではないかという考え方。人間のもたらした人工的な自然への施術が、より大きなぶり返しを呼んでしまう、という。
怖いですね。実際ある気がする。

主な登場人物
{netabare}電脳空間の捜査を行うハルさんと、ハルさんによって「パートナー」と位置づけられる福々しい女子高生ミナモちゃん、補佐するグラマラスなアンドロイド、クールな顔して世話焼きなミナモ兄・ソウタ、ハルさんと同じくらいの歳のはずなのに、見た目も若いままの怪しい科学者…などが主に動く。 {/netabare}
次第にそれぞれの意外な面や、やはりな…とシミジミさせられる面など性格に説得力のあるエピソードが登場し、どんどん好きになってます。

ソウタとホロンさん、ホロンもどきの健闘シーンの作画がかっこいい。
ソウタ、面白かっこいい。
「精神統一の鍛錬には自信があります!」と明朗に言って、直後に女性のお色気?に仰け反ってしまう。(詳しくは見せないのが、この作品独特の紳士的なところ)
{netabare} 年上愛人とのねんごろ具合 {/netabare} はシティハンター過ぎるところもあるけどねっ!しかも {netabare} 書記長をモデルに作られたホロンさんに思いいれちゃった流れには {/netabare} びっくらこいた…これも純愛…なのか。


{netabare} 久島博士が、何故音楽をやめたのか?音楽に必要なものは…という流れで
「愛だ。」と言い切って、ハルさんが「エッ」ポカーンとする、ちょっと離れたアングルから見せるシーンの距離感、好きだな。

アンドロイドホロンさんの一瞬の涙とか、着なれないメタルスーツで必死になるミナモちゃんとか、冷静な描写の中にグッとくる温かさが潜んでる。

「愛だ」がまさかラストまで関連してくるとは。
最終回の海とメタルとの定義はサッパリ解りませんでしたが…{/netabare}

ナイスガイ過ぎる久島博士からの最期の贈り物で、みなもちゃん、ハルさんとの歳の差が縮まったね。やったね。夢のようなラスト、二人には幸せになってほしかったので、おめでとう…。



ビーフストロガノフの隠し味に梅干し!へ〜、すごい。そんなん作ったことないけど…
{netabare} そういや料理研究家・辰巳芳子のレシピで、{梅干しの種+焦がし玉ねぎ+昆布+醤油} を煮るとコンソメスープが出来るというのがある。これは不思議に、本当に簡単に出来る。お勧め。 {/netabare}





以下初めの頃〜中盤までのレビュー


**********
おすすめレビューを読んで気になったので観ました。今12、3話辺りまで。堅い感じで面白いです。

爺さんが主人公。
頭脳は青年、潜ればマッチョ、陸に上がれば要介護白髪爺さん。
海洋調査の事故で少し寝て起きたら、浦島太郎状態になってしまった…ハル爺さん。
遥かに技術の進んだ「電脳の海」に潜脳捜査に入ることで、事故時の若々しい姿へと戻ることができる。
年の功を漂わせる(実際は歳をとってないわけだけど)ハルさん。案外モテモテ。元々、紳士な性分なんだろうね。変態の付かない正真・紳士です。
失った時間についてあまり深刻な様子は見せないけれど、この先、深い話が出てくるのかな?眠ったことですれ違ってしまった女性との話が切なかった。


男性も女性も、肉体描写の立体的なデッサンが巧い。
アニメのよくあるスレンダー体系が好きな人からみるとちょっとムチムチし過ぎかもしれないけど…。
何かこう、知性を感じさせる豊満かつ的確なデッサンの線質だけでなく、動きに重みがあるんだ。女性のお尻の重みとか、コダワリを感じる。もちろん男性の拳闘シーンも、軸と重みの遠心力?のあるような、観ていて気持ちいい動きだよ。


ミナモちゃんの役割
電脳化していない姿で自然体で物語と関わってくれるので、周囲との差異が視聴者に伝わり易い。慣れない電脳スーツでハルさんを迎えにヨタヨタ来た姿は、グッときちゃったよ…。
ミナモを見る時のハルさんの瞳が何とも言えない。慈愛というか…聖人的な。
対してミナモがハルさんを想う時のポッ…と赤らむ感じは、何というか清楚なのに煩悩を漂わせてますな。スカート、ギリギリだ!頭の上の大きなリボンが外れてる時の方が、かわいい。あのリボンはダサい。

ソウタとお父さんの、食をまじえた話も、よかったなぁ。
研究気質一本に走っていたお父さんが、家族の食卓に戻ってくれる様子が、じんわりといい話だった。無機質な情報が多いだけに、気持ちの動きを大事にしてくれる話が生きてくる。
ソウタ兄は {netabare}お偉い女性と愛人なの?ベッドの事後的なシーンが。 {/netabare}このへんが何か士郎正宗だなぁ。オットナーっていうか、発想オッサンー。うん、士郎正宗って基本おっさんワールドかも。シティハンターと同列かも。


デンノーデンノー書いてみるが、攻殻でも出てくる「体の電脳化」というのが未だよくわからない。アンドロイドとかロボットとかとは別なんでしょ?肉体…神経の受送信面により利便性能を積んだ身体ってことかい。わからないけど。


しかしなんでオープニングはアングラテイストなんだろう。
♪国境は歴史の傷口で〜みえない薬をさがしてるー だっけな?
頭でグルグルまわるよ!

投稿 : 2024/11/02
♥ : 14

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

人の心に深く深く潜ってゆく

記憶は青年、見た目はおじいさんという非常に珍しい境遇にあるハルという人物が主人公の作品です。

概要としては主にメタル(メタリアル・ネットワークという仮想現実)内で起きた様々な事件をダイバーと呼ばれる調査員が解決していくというものですが、同時にハルの再起、人間と人間、人間とテクノロジー、延いては人間とテクノロジーと地球の関係を壮大な視点から描く試みがなされています。

全体的に見ると派手な演出は極めて少なく、アクションシーンについても少なめで、あっても淡々と描かれる事が殆どなので、外へ向かうよりも、内へ内へと向かう印象を強く受けます。現実及びメタルにおける人物(知的存在)同士の対話が本作品の主役であり、最も重きが置かれている点であります。ほぼ全ての会話シーンは言葉のみならず、人物の表情、間の取り方からも感情を推し量る事が出来る程に極めて緻密に作られており、さらにメタル内のダイバーは人の思考や嗜好、思想や哲学など様々な場所に文字通り潜って行きます。

人によっては気になるであろう「精神的には青年の筈のハルが見た目の通りに老成しているのは何故なのか?」という疑問については、ハルの元来の知性に加え、老いた体に心が付いて行ったものと私は解釈しています。電脳の助けを借りている為とも考えられます。そんなハルおじいさんの青年の部分が垣間見える「無垢な言葉に傷つく人間もまた無垢なんです。」という台詞は非常に印象的でした。

正当に評価されていないと言われる事が多々ある本作ですが、それなりに原因はあります。第2話のにゃもの下着が見えるシーンと最終話のご褒美的な展開の二点がそれで、両者とも作品全体の価値を貶めるものではないのですが、前者は女性の視聴者に対する配慮が足りず、後者についてはSFとしての説明が皆無であり、またご褒美が無くても良いエンディングだったので、やや蛇足気味に見えてしまったという事でしょうか?(前者は結構あからさまな描写なので、あれで切る人がいたら勿体無い。)また私個人としては「RD潜脳調査室」というタイトルから刑事物の様な硬めの印象を受けてしまった為、最後まで違和感を拭い切れませんでした。

以上良い所も、残念な所もいくつか述べてしまいましたが、この作品の全体の価値と比べれば、欠点については些末なものと言い切ってしまっても良いと思います。テクノロジーと自然環境についての問題は、その恩恵にあずかっている全ての人間が責任を負うべき問題ですので、この様なアニメが貴重であるという事は言わずもがな、もっと増えて欲しいなぁと思う次第です。

余談になりますが、作中で描かれている情報の可視化という技術は限定的な用途ではあるものの、既に実用化されており、大学や企業のセキュリティに導入されているそうです。もしこの様な技術がさらに発展し、ネットワーク内の様々な情報を感覚として享受出来る様になり、本作品の15話「食」で描かれた様な弊害が生まれてくるとしたら、人のリアルに対する執着がますます薄らいでいってしまう気がします。「紅殻のパンドラ」でも拓美ちゃんが暇つぶしにぱりぱりやってた電脳ポテトチップがありましたが、この作品を視聴した後ではちょっとだけ危険な感じのモノである様に見えてしまいました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 11
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

81歳の老人ダイバーと、15歳の女子中学生がバディを組むって、それだけでもうドラマが生まれそうじゃない?

[文量→中盛り・内容→感想系]

【総括】
制作に士郎正宗さんが関わっているということで、設定やら雰囲気は「攻殻機動隊」に近い部分があります。もっとも、続編ではなく、設定などを受け継いだ、「攻殻機動隊の先にあるかもしれない未来のひとつ」を描いている作品と言えるかもしれません。

私的に、「THE もっと評価されてほしい」作品。地味ながらも丁寧に作られた世界観にドラマ。心情を深く描く手腕。色々と考えさせられる作品です。(あにこれ基準で)75点は超えてほしいな~と思ってます。

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
「欲」というのは、人間の行動原理として、かなり純粋なものだと思います。

「食欲」「性欲」「睡眠欲」といった三大欲求は勿論、「支配欲」「自己顕示欲」「物欲」など、「欲」にも様々。

そんな「欲」が、「安易に」「無制限に」叶えられてしまう世界があったら、果たして現実にどこまで興味をもてるのかな? 仮想現実世界を支えるの(運営)は、現実の人間なんだろうけど、そんな運営の人々まで、帰ってこなくなったらどうなるんだろうな、と、思ってみたり。

あとはまあ、「自然」と「科学」の優劣の問題。高度に発達した「科学の力」は、果たして「自然の摂理」に勝るのか。この点は、これまでのアニメではほとんどなかったテーマ性で、色んなことを考えさせられました。

本作の問題提起としては、そんなところかと思います。

他方面の魅力としては、やはり、ハル(老人)とミナモ(女子中学生)の関わり&ソウタ(人間)とホロン(女性型アンドロイド)との人間ドラマでしょうか。

現実世界では、若さ溢れるミナモと、介護されないと厳しいハルとの対比が観られますが、1度、メタルへダイブすれば、30代の頼りがいのあるハルと、やっぱり突っ走っちゃうミナモとのバランスが良く、「相棒」的な感じで面白かったですw ソウタとホロンの絶妙な恋愛模様は見処のひとつであり、こちらの結末には満足です。安易に、ホロンが人間になったりしなくて良かったです。

それだけに、ラストの「ハル」の若返りと、ミナモとの恋愛展開は本当にいらない。ちょっとガッカリです。逆浦島太郎ですか(苦笑)? 二人の関係を「男女」にしなくても、「親子」や「祖父と孫」、あるいは、「相棒」「友達」で、十分にドラマは成り立っていました。ソコは本当にマイナス。ファンタジー→SFの流れはまだ良いですが、SF→ファンタジーの流れは、やはりご都合主義感が強くなりますしね。

あと、よく「ふとももが~」とか言われますが、この漫画家さんのキャラデザの特徴のようですね。個人的には、「どうでも良い」です(笑) プラス査定にもマイナス査定にもなっていません。別にキャラ萌えアニメではないんで。でもまあ、それ(むちむち感)が、一部の層を除きw、概ねマイナスになっているようなので、それは残念だな~と。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 16

63.9 8 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング8位
攻殻機動隊ARISE GHOST IN THE SHELL 「border:2 Ghost Whispers」(アニメ映画)

2013年11月30日
★★★★☆ 3.7 (218)
1342人が棚に入れました
自らが育った501機関から独立を果たし軍内部での自由を得た草薙素子。しかし自立を後押しした荒巻の薦めにも関わらず自身の部隊の結成を先送りしていた。そのさなか、何者かによるロジコマへのハッキングが発生。調査のためにロジコマを移送する草薙は武装集団に襲撃される。そこには、「眠らない眼」を持つ元陸軍空挺特科第一のバトー、ネットの情報解析を得意とする元陸軍情報部のイシカワ、特殊工作と電子戦のスキルを持つ同じく元陸軍空挺特科第一のボーマがいた。都市交通網を混乱させてまで執拗に草薙を攻撃する武装集団。対する草薙は陸軍警察の潜入捜査員パズと海兵隊のエース・スナイパーのサイトーをスカウトし反撃に出る。

声優・キャラクター
坂本真綾、塾一久、松田健一郎、檀臣幸、中國卓郎、上田燿司、中井和哉、沢城みゆき、沢木郁也、藤貴子
ネタバレ

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

公安9課の芽吹き!!第二弾:直球作品★

■評価
テーマ性    :★★★   3.0
サイバーパンク度:★★★★  4.0
スピード感   :★★★★  4.0
考察度     :★★★☆  3.5
おススメ度   :★★★★☆ 3.8

■ストーリー
陸軍501機関から独立した草薙素子は自身の独立部隊を立ち上げる事を模索する日々を送っていたが、ある日荒巻から公安局のシステムダウンとロジコマへの不正ハッキング事件の捜査を依頼されるが・・・事件の背後に大戦時の戦犯者であるソガ大佐や武装集団、そして政府高官の陰謀の渦に巻き込まれる事になる。果たしてどんな真相が隠されているのか?
そして、草薙は独立部隊を立ち上げる事はできるのか?

■感想
前作と同様に誰にでも受け入れてもらえる作品になっており
個人的には前作のBorder1よりも楽しめる内容でした^^

前作ではサスペンス・ミステリー+ちょいホラー調??の変化球作品でだったが、本作では倍速再生したかの様なスピード感あふれる直球勝負の展開となってます。
また本作は政府高官の政治スキャンダルをベースにアクションを多用する事で、アップルシードを彷彿させる雰囲気と、権力と電脳犯罪に翻弄される犬達(兵士・捜査官)を描く物語は苦々しくもクールな内容です。
Border1のレビューと重複しますが、ストーリーはもっと長く複雑でも個人的には構わないと感じますが、アクションと長文台詞を並行進行させ、強制的に視聴者の脳みそで同時処理させる演出があるので、私は理解するのに一苦労しました。
この弩Sっぷりは相変わらずという所でしょう。(自分だけか…。)
また視聴する方によっては、キャラ設定の大幅な変更に戸惑いを感じるかもしれないが、ある意味でカジュアルな雰囲気のある原作漫画に近い作風にしていると感じます。S.A.Cの根強いファンは少し覚悟を持って視聴した方がよいでしょう。

不満点は今回の攻機ARISEのテーマは『メンバーとの出会い』と『組織の発起』となるが、前者のテーマがちょっと雑すぎると感じます。ストーリーを軽くしている分、仲間との出会いや信頼関係を築く過程をもっとドラマティックに描いて欲しかった。このテーマが崩れると、このシリーズの存在意義が問われる事になるので、今後はテーマを深堀する様な展開に修正していって欲しいと感じます。

しかし、記憶を操るウィルスの謎はまだまだ未解明なので
これからの展開を更に期待します。

尚、念のため本作はスピード感重視であるため、ストーリーの取りこぼしがない様に簡単に話のポイントをまとめておきます。完全なネタバレになるので閲覧にはご注意くださいまし。

■本作の謎とポイント
{netabare}
Q1:ドミネーションって何?
A1:本作で作られた造語の様です。
  意味は社会インフラシステム(国民生活を支える交通・
  電力・上下水道)への大規模ハッキングによって制御を
  奪い取る事を言っている様です。

Q2:パンドラって何?
A2:軍事機密や外交白書??など国家がもつ機密情報を
  たっぷりとつめこんだ記憶媒体の総称の事を言って
  いる様です。

Q3:物語序盤の高速道路での少佐と武装勢力との戦闘で
  少佐は黄色いバイクに乗り換えたが何故?
Q3:ドミネーションによって、少佐のデジタルバイク
  (赤いバイク)が操作不能になったが、偶然にも横を
  走っていたアナログバイク(黄色いバイク)が人の
  マニュアル操作が可能なレトロなバイクであった
  ために乗り換えた様です。

Q4:なぜ少佐はボーマの居場所が分かったの?
A4:どうやらヴィヴィが少佐や荒巻に教えた様です。
  どうやって教えたかはちょっと分かりませんでした。

Q5:本作の事件概要は何だったの?展開早すぎで分かり
  辛かった…。
A5:国防省次官は武器密売とゲリラ虐殺を隠蔽し
  且つ米帝に亡命するために軍事モジュールと
  擬似記憶ウィルスに感染させたソガ大佐や旧78部隊を
  利用して大規模ドミネーションを発生させ、パンドラ
  内部の軍事・機密情報に不正アクセスしようとした
  ・・・というのが事件概要です。
  また国防省次官を裏で操っていたのは、米帝情報部の
  ヴィヴィであり、彼女も何者かの暴露型ウィルスに
  感染することで暴走し、パンドラ内部の情報を全世界
  に暴露しようとしていました。
  米帝の陰謀かは不明ですが・・・棚ぼたでパンドラ内
  の情報を奪取しようと、だんまりを決め込んでいた
  のは確かな様です。(荒巻・少佐談を参考)

  しかし、ヴィヴィを操ったウィルスは何者がどんな
  目的で放ったものなのか?
  この伏線が非常に気になる所です。Boarder1の
  ファイヤースターターと関係してくるのか?
  今後の展開に期待しています。
{/netabare} 
 
ご拝読有り難うございました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15
ネタバレ

ストン さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

素子・パズ VS バトー・イシカワ・ボーマ (あれ、サイトーは?)

第一話にて軍属を離れ、一個人として活動を開始した素子。
荒巻から個として戦える新たな特殊部隊を作ろうと持ちかけられる。

ロジコマの一体が何者かにハッキングされた時、
都市の交通機関が何者かに大規模ハッキングされる。

大規模ハッキングの首謀者は、
かつてバトー・イシカワ・ボーマの上司であったソガ大佐と見られ、
ソガは大規模ハッキングの裏で大戦中の軍事機密に侵入し、
全世界に情報をばら撒こうと画策する。

その企みを阻止するため、
第一話で味方となったパズと、金で雇った傭兵スナイパーサイトーとともに素子が動き出す。

というお話ですが、
そこは攻殻機動隊ですから、
何が本当で何がイツワリか、分かったもんじゃありませんw

内容は見てのお楽しみってことで。

以下ネタバレ。

{netabare}
苦戦する素子とロジコマの窮地を救ったのは、米国の特殊部隊(軍?)の女性ヴィヴィ。
しかし、ヴィヴィこそが、ロジコマをハックした犯人であった。
では、ヴィヴィの目的は何だったのか?
ヴィヴィはロジコマの内部に特殊なキーワードを隠し、
ソガの大規模ハックから逃れ、対抗できる準備をしていたと見られるが。。。

このヴィヴィって、どことなく昔の劇場版攻殻で出てきた「人形使い」に似てるなぁ、って思ってたら、
やっぱり、人間じゃなくって、ゴーストを持ったAIだったのかな?
うーむ、さすが攻殻、一度見ただけではなかなか理解が難しい。

さて、本編の戦闘ですが、
パズは素子の味方ってのはOKなんだけど、
我らがサイトーさん(笑)がなんともかんとも。。。

素子に金で雇われたくせに、
バトーからそれを上回る金を提示されてあっさりと寝返っちゃうし><
その挙句、素子からヘリごと墜落させられちゃうという始末。
今回のシリーズ製作者はサイトーに恨みがあると見たw

結果的に、戦闘はヴィヴィのちゃちゃが入りつつ、
素子側の勝利に。
実はソガ・バトー・イシカワ・ボーマ全員の記憶が偽物であって、
第3者(国防事務次官?)に操られていたようでした。

戦闘後、素子は自分の部隊を作るにあたって
パズ・ボーマ・イシカワ・バトーをスカウトする。
ヘリ墜落しても生きてたサイトーさんは自分から進んで部隊に志願します(笑)

{/netabare}

こうして公安9課が徐々に出来上がっていくわけね。

っておい、次回予告、
素子の恋愛シーン!?
それって今までの攻殻じゃタブー視されてたんじゃ・・・?

第3話、早く見なくちゃ。
第2話をきっちり理解するためにもう一度見ようと思ったけど、後回しだ。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 4

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

素晴らしい!やりたいことはハッキリしてる、【素子vsバトーvsパズvsイシカワvsボーマvsサイトー】だ!

「戦え、戦わずして、未来を語るな」


攻殻シリーズのエピソード0を独自世界観で描く全4部作の第2話
監督はメカ作画が本業の「竹内敦志」へ交代したことで前作以上にスピーディーな戦闘シーンが持ち味になっています


今回新たに「サイトー」「イシカワ」「ボーマ」の3人が初登場(トグサは出番なし)
サイトーがギャンブル狂だったりと新たに付け加えられた設定が多数あるものの、【結局のところシリーズにおいてこの3人は深く人物像が語られていない】のであまり以前のシリーズの先入観を持って観るのはよろしくない
つまり今作、シリーズファン向けではないのです
しかしながら映画としての魅力は余りあるものがあります


今作ではバトーらの元上官が企てたクーデターに素子と彼女がスカウトしたパズとサイトーが仲間に加わって事件に挑むというもの
よって後の公安9課のメンバーの邂逅、そして彼らの直接対決が描かれるというファンならずとも興奮の展開が待っています


事件のオチこそborder:1から引き続きの“お約束感”が出てきたものの、冲方丁お得意の群像劇風に多数の人物の視点が絡み合うドラマティックなお話作りは特に賞賛したいですね
まだ荒巻の部下となったワケではないですが、軍から独立した素子が独自部隊結成のために奔走する姿が描かれます
荒巻の言葉を借りるなら「ようやく、動き出した」ワケです
一時間足らずの尺の中に詰まる膨大な情報量と見せ場、そして無理の無いテンポ感
昨今のアニメ映画には間延びした作品が多い中でこれだけ切り詰められた今作は大変素晴らしいと思いますね


作画監督はスーパーリアル調の西尾鉄也氏から交代になったものの、息もつかせぬアクションとスーパースローを意識した演出、CGとの調和など前作からさらにパワーアップしておりまして、これだけでも十分な見どころといえます
それに我らが「ロジコマ」も大活躍(笑)


音楽は引き続きコーネリアス、主題歌は若干23歳のシンガーソングライター「青葉市子」とコーネリアスのコラボ
このブレない方向性も相変わらずカッコよすぎる


そして今作のラスト、なぜかシリーズお馴染みの“あの”名セリフが呟かれます
これは恐らく次章以降の素子の人格に影響を与えると思しき伏線のような気がします
次回作は2014年6月・・・ってちょっとまた間隔長過ぎだってばよw











また、「檀臣幸」さんは今作がまさかの遺作となってしまいました;
改めてご冥福をお祈りします

投稿 : 2024/11/02
♥ : 18

66.9 9 サイバーパンクで人工知能なアニメランキング9位
バブルガムクライシス(OVA)

1987年2月25日
★★★★☆ 3.7 (34)
139人が棚に入れました
 近未来世界を舞台に超法規立場の美少女戦士たちが活躍する、OVAの大ヒットシリーズ。西暦2032年。かつて大地震で壊滅した東京はメガロポリスTOKYOとして復活したが、闇の中では殺人兵器の人造人間ブーマが出没。その陰では、現代社会を半ば支配する大企業ゲノム社が暗躍する。ブーマに襲われる人々を救い、ゲノム社の暗部を白日にさらすため活動するのは「闇の仕置人」こと美しい曲線の戦闘パワードスーツをまとう謎の4人の美女「ナイトセイバーズ」。ゲノム社への復讐に燃えるシリアをリーダーとする彼女たちは今夜も事件を追うが、そんな一同の前に新たな事態が……。
 先行OVA「ガルフォース」シリーズの成功を受け、アートミックとAICが企画製作した美少女SFアクション路線の第二弾。キャラクターデザインは「ガルフォース」同様、園田健一が担当。今回はさらにメカニック色を重視し、先行作に続くヒット作となった。主人公プリスのCVを演じる歌手・大森絹子が熱唱する主題歌も大反響を呼ぶ。

声優・キャラクター
大森絹子、榊原良子、富沢美智恵、平松晶子、古川登志夫、堀内賢雄、佐々木望、緒方賢一、池田秀一、川久保潔、佐藤正治

takato さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

80年代美少女が一番しっくりくる。ハマーン様がSFキャツアイみたいなことする(ゴクッ…)。

 別に80年代が青春でもないし、その時期のアニメばっか見てるわけじゃないが80年代デザインかその派生系くらいが一番好き。昔は良かったおじさんじゃないが、ドンドンあっさり化ソフト化が進み過ぎてる気がする。

 
 それにしても、榊原さんが出てる作品にハズレ無し。ただ、本作の主役の一人プリスの中の人が声優さんよりメインが歌手の人らしく上手くねぇ…。山ちゃんがモブやってるのが時代を感じる。


 どうでもいいが、近年流行りのシティーポップのサンプリング映像として80年代アニメが採用されてるって話は聞いてたが、本作を見てたら「あ!、このシーーンは。」ってところがあって驚いた。80年代アニメには存在しないノスタルジー効果があるのかもしれぬ。


バリってるでお馴染み大張さんや、「ポケ戦」の高山さんなど有能クリエイターが参加しているだけあって回によってクオリティーが段違いである。ただ、一番印象的なのは、7話でうるし原さんが参加していて、みんなうるし原さんデザインに変更されて美少女度マシマシな濃い目になってて良し。やはり私は濃いめなデザインの方が好きなのかな。


 ただ、全体としては、こういう作品は「パトレイバー」みたいに沢山の話数をテレビでやりつつの方が合っている気がした。1話完結タイプの話は短いovaだと少々物足りない。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 5

らびえぬす さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

これが美少女系OVAというものなんでしょうか

本作品、随分昔に同じバイト先の方から借りて観ました。

作画はお世辞にも良いとは言えませんが、何故かはまったような気がします。
ちょっと退廃的な東京が舞台ですが、そこがすこしばかりエキゾチックな感じがして、ツボにはまりました。

脚本もOVAということもあり、無理やり感満載で今の私では受け付けないと思いますが、その当時は全然OKでした。

キャラは一応、美少女系なのでしょうが、今のアニメのそれとは少し違った方向性だと思います。
これも、もう一度観てみたい作品です。

多分、途中で挫折しますが・・・・

投稿 : 2024/11/02
♥ : 3

nayotake さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

闇の仕置人

警察(作中ではADポリス)では裁けない犯罪を処理するナイトセイバーズが活躍する物語。メインのストーリーは悪の企業体に復讐をする形、作中で使われる歌がすばらしく物語を盛り上げる。終わり方がうやむやになってるのが勿体無いですが、彼女たちはまだ戦っていると思えばいいかな・・・。女の子が戦い活躍するストーリーが好きな方は是非。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 0
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