Witch さんの感想・評価
4.3
【第1作】青年誌連載らしく「大人の男の物語」がかっこよく描かれている
【レビューNo.119】(初回登録:2024/4/14)
コミック原作で2006年作品。全11話。
今期第2作が始まり、第1作を復習したのでレビューしておこうかと。
(ストーリー)
主人公・佐々倉溜はバー「イーデンホール」のバーテンダー。
彼はバーテンダーのサービスとして
・楽しい記憶
・安らぎの時間
・魂の癒し
を提供している。
今宵も彼の「神のグラス」を求め、また一人「イーデンホール」の重い扉を開け
るのだった。
(評 価)
・青年誌連載らしく「大人の男の物語」がかっこよく描かれている
原作は「スーパージャンプ」等で連載されていたらしいのですが、個人的には
青年誌を読んでいた頃の
「かっこいい大人の男に憧れていた」
あの感覚を思い出しましたね(笑)。
作中で描かれているのは、確かに「大人の男の物語」なんですよね。
例えば客として描かれているのは、仕事で悩みを抱えて、心がささくれ立って
いている中間管理職だったり、落ち込んでいるサラリーマンだったりと。
そんな彼らがバー「イーデンホール」で佐々倉と邂逅することで、魂が癒され
明日への希望を見出していくという、非常に男性が共感しやすい創りになって
いるという印象ですね。
女性客も登場しますが、そこで展開されるのは
・その祖父と父の物語
・恋人・結婚・離婚等の男女の物語
であったりと、やはり男性が物語の主軸になっているという感じですね。
なので、「課長島耕作」等の青年誌愛読層には刺さりやすいのかなっと。
・「酒に付されていたエピソード」を絡めた秀逸なストーリー展開
作中セリフからですが
・バーテンダーに一番必要な才能とは?
{netabare}→ 人間に対する想像力
→ グラスの中で人間の物語を創る力{/netabare}
ということで、佐々倉が鋭い観察眼で「客が求めている一杯」を読み解き、そ
れを提供した意図を「酒に付されていたエピソード」と絡めて説いていくこと
で客が救われるという構成になっています。
そういう意味では各エピソードの主人公はあくまでも客であり、佐々倉はそん
な彼らに寄り添う存在
「バー(止まり木)・テンダー(優しい)→ 『優しい止まり木』」
に過ぎません。
そういう佐々倉の立ち位置がなんとも心地よい。
またナレーションがあの「森本レオ」というのも、作品の魅力のひとつになっ
ています。
ただ「バーや酒のウンチク」や「佐々倉の『その一杯』の意図」といった説明
ゼリフがかなり多いので、その辺は好みが分かれそう。
(最終話は特にね・・・)
キャラデザや上司のどぎついパワハラ描写など、今観るとさすがに古いな感じる
部分はあります。
しかしそのキャラデザを始め、少し暗めの落ち着いたトーンだったり素材のよさ
を引き出す控えめなアニメ演出だったりと、本作は青年誌連載らしく「大人の男
の物語」がかっこよく描かれている作品なのかなっていう印象ですね。
客一人一人の人間ドラマも面白く描かれていると思いますし。
皆様もバー「イーデンホール」で「魂の癒し」をいかがでしょうか(笑)。
OP「バーテンダー/ナチュラル ハイ feat.椎名純平」
・昭和歌謡の男女の駆け引き的な歌詞をR&Bな曲に乗せてという少し不思議な感じ
ED「始まりのヒト/ナチュラル ハイ」
・しっとりと聴かせるバラードナンバー
(ED映像では、作中に登場したカクテルを作る実写映像が使われています)
共に良曲なり。
あと劇中音楽はバーのBGMっぽくってこれも良かったかな。
(追 記)
とはいえ、本作はよくも悪くも「昭和世代が思い描く『かっこいい大人の男像』」
を描いているって感じがしますね。
第2作は(まだこれからですが)
・客の人間ドラマよりも佐々倉寄りに焦点を当てた構成にしているのかなあとい
う印象
・それに加え、価値観等も令和にアップデートされたことも影響し、第1作のそう
いう男臭さやかっこよさがかなり薄まった印象
尖った感じがなくなり、凡庸な作品になりそうだなっと。