おふとん さんの感想・評価
4.2
「死ななくてもよかった男たちがなぜ死んだのか」・・・敗者たちの物語。
原作は松本零士氏の戦場漫画シリーズ「ザ・コクピット」。93年制作のOVA。
1話完結のオムニバス形式による戦場漫画は松本氏のライフワークで、
他に「ハードメタル」「ケースハード」「コクピット・レジェンド」等の諸作品があります。
主に第2次大戦時の日本・ドイツの一兵士(架空の人物。実録戦記ではなくフィクションです)を主人公に、兵器にもスポットを当てつつ、彼らが何を想い戦い、如何に敗れていったかが描かれています。
戦場における敗北は死に直結しますので、当然主人公が死んでしまうお話も多いわけですが、
単純に戦場のダンディズムや滅びの美学を讃美するようなものではありません。
OVA化された3作品を観て頂くだけでも、松本氏がシリーズに込めた想いが伝わってくると思います。
無謀な戦争に若者を駆り立て死に追いやる国家や、国家公認の殺し合いの場である戦場の「狂気」への批判を、キャラたちのセリフの端々から感じ取って頂けるのではないかと。
(ただし、3作品全編通して反戦一色の激鬱アニメというわけでもないですよ)
私の印象に残っているセリフを一言づつ。それと各作品の史実における背景を少々。
・「成層圏気流」・・・1944年8月ヨーロッパ戦線。ドイツ上空における夜間航空戦。
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・「音速雷撃隊」・・・1945年8月太平洋戦線。九州・沖縄方面における航空特攻作戦。
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・「鉄の竜騎兵」・・・1944年太平洋戦線。フィリピン・レイテ島における地上戦。
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好き嫌いが極端に別れるジャンルであり、古い作品でもありますので、これから観ようという方はあまり居ないかと思いますが、「音速雷撃隊」と「鉄の竜騎兵」はぜひ機会があれば観て頂きたい作品ですね。
追記:ED曲「悲しいときはいつも」(松田博幸)は一般に殆ど認知されていない隠れた名曲です。
【投稿履歴】
2013/05/02 初稿
2013/09/20 改稿