アーティスティックでバンドなアニメ映画ランキング 1

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75.2 1 アーティスティックでバンドなアニメランキング1位
きみの色(アニメ映画)

2024年8月30日
★★★★★ 4.1 (31)
104人が棚に入れました
高校生のトツ子は、人が「色」で見える。
嬉しい色、楽しい色、穏やかな色。
そして、自分の好きな色。

そんなトツ子は、同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみと、
街の片隅にある古書店で出会った
音楽好きの少年・ルイとバンドを組むことに。

学校に行かなくなってしまったことを、家族に打ち明けられていないきみ。
母親に医者になることを期待され、隠れて音楽活動をしているルイ。
トツ子をはじめ、それぞれが誰にも言えない悩みを抱えていた。

バンドの練習場所は離島の古教会。
音楽で心を通わせていく三人のあいだに、友情とほのかな恋のような感情が生まれ始める。 周りに合わせ過ぎたり、ひとりで傷ついたり、自分を偽ったり― やがて訪れる学園祭、そして初めてのライブ。 会場に集まった観客の前で見せた三人の「色」とは。

かんぱり さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

何かに出会うこと

日暮トツ子はミッションスクールに通う女子校生。他人を色で見ることができる彼女は、素敵な色たちと出会う。
脚本 吉田玲子、音楽 牛尾憲輔、監督 山田尚子
聲の形やリズと青い鳥がお気に入りな私はこれも見に行きたくて、公開初日に時間がとれたので見に行ってきました。


生きていれば、いろんな何かに出会います。
そしてそれは、私の中に大小さまざまな波紋を起こしてくれます。

ましてや思春期の頃に出会うものなんて、ココロに台風並みの波風を起こしてくれることだってあります。

「バンド、やってみませんか?」

それぞれが悩みを抱えていて、そこから飛び出して何かをしたいって気持ちは漠然とあって。

楽器なんてロクに弾いたこともない。
でもこの人たちと何かやってみたい。

もし私が高校生であの古書店にいてそんな風に声をかけられたらやりたい!って言ってたと思います。。
そんなアオハルな気持ちに懐かしさと羨ましさを感じながら、彼女たちのコンサートを見ていました。

トツコもあきもルイも、素敵な人や音楽と出会って、とても大切で忘れられないものを得られたのでしょう。

それから終盤にあきがルイに向かって叫んだ言葉は自分へ向けたものでもあったように感じました。


色使いはカラフルで、リズと青い鳥の、童話パートの絵を思い出しました。
音は結構大きくて、臨場感はすごくあったんですけど、私的にはちょっと大きすぎでした。

余談ですけど、赤、緑、青って光の三原色で、これらの色を組み合わせるとどんな色も出せるんですよね。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 20

takato さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

高畑、押井、湯浅、山田、この面々の共通点とは?。公開規模はちゃんと考えよう。

 答えは、みんな原作付きの方が宜しい!(チャンチャン)。


んで、終わっちゃあんまりなので書かせて頂きます。これらの作家性のある面々は、共通してオリジナルやフリーハンドを任されると抑えが効かなくなってバランスを欠きがちであると個人的には思います。高畑さんも押井さんも湯浅さんも、実は原作あるTVアニメやってる時の腕の冴えの方が凄い!。


 山田さんも「聲の形」、「平家物語」としっかりした骨子のあるドラマを下敷きにした時こそバランスがとれて真価をかえって発揮できていると思えます。この辺の神棚に上げちゃうような、一種の天才信仰みたいなのは黒澤明あたりからきてるのかもしれませんが、最近の庵野さんもこの貫穿にはまり込んでしまっているように思えます。映画にしろアニメにしろ共同作業なので、「みんなの力をオラに分けてくれぇ〜!」が上手くできる時の方が面白い。


 そこで山田さんの作家性ですが、やはり出自である京アニ、それも「けいおん」以降の日常路線が根底の方だと思います。物語の大きなメリハリより、圧倒的に細部のフェティッシュなまでのアニメ表現力の追求に偏りがち。



 それはそれで魅力があるのですが、やはり2時間とかの枠で完結して満足感を与えないといけない映画では弱い…。それに近年の日常系の傑作は、その枠内にいながらも最終的にクライマックスやカタルシスを上手く盛り上げるようにできている(「ゆるキャン」、「明日ちゃん〜」などなど)。


 本作は本当に日常芝居の妙のみ特化!といっていいくらいで他がほとんどない…。一つ一つのエピソードが流れていくが、それが捻りを産んだり山を作ったりが殆ない…。そういう作りはなし!とは言いませんが、それで傑作を作るのはオーソドックスな道より遥かに高度と言わざるえない。


 掣肘しまくりでろくに制作できないのも駄目だし、かといって一人の才能に任せ過ぎちゃうのも駄目。才能と才能ががっぷり四つに組み、お互いの良いところを引き出し合う化学変化が各所で起こる。それこそ共同作業の理想であり、あるべき姿ではないだろうか?。ただ、山田監督の次回作にご期待ください!な気持ちはこれからも変わらないので、次は良い原作と組んでお願いします。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 11
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

大人が意外と分かってくれる温かいバンド作品

ミッション系スクールなどを舞台に、
バンド活動を始めた女子2人、男子1人の葛藤と青春などを描いた、
山田尚子監督のオリジナル劇場アニメ(100分)

【物語 4.0点】
近年の山田監督作品としては優しい世界。

教会系ならではの厳格な校則などで圧迫された若者の鬱屈が、
音楽として噴出して、鑑賞者のハートを突き刺してくる作品なのだろうか?
山田監督ならではの、痛切で叫びたくなるような心情、青春表現等を警戒して、
私はガチガチにガードを固めて挑みましたが、
今回はストレスを除いていくという監督方針で紡がれた本作は、
案外、穏やかで、鑑賞直後は、正直、拍子抜け感すらありましたw


盟友、脚本・吉田 玲子氏とのタッグ作でもありますが、
主人公の一人・日暮トツ子のゆるふわなキャラクターの躍動などを見ていると、
『リズと青い鳥』『平家物語』よりはむしろアニメ『けいおん!』くらいのムードで、
肩に力を抜いて楽しむスタンスで行ったほうが上手く折り合えるのかもしれません。

が、穏やかな中にも、祖母に{netabare} 退学{/netabare} を秘密にしている作永きみだったり、
家業の医者を継ぐという期待に反するように陰で音楽をやってる影平ルイだったり、
大切な人に嘘を付いているという後ろめたさなど、青春アニメとしてちゃんと痛みは取り扱われています。

ただ、多くのささくれだったバンドアニメとは異なるのが、
登場する大人たちの多くが、少年少女が悩んで音楽に走ってしまう気持ちを理解している所。
大人として社会のルールなど筋を通さねばならない建前は取り繕いつつも、
子供の葛藤を罰で押し潰さないよう配慮する。
青少年が呼吸できる余白がこの青春映画にはまだあるので救われます。
特にシスター日吉子の規則破りに対する采配は、迷える子羊たる少女たちの気持ちを汲んでいて絶妙でした。

クライマックスは主役3人のライブシーン。
ここも分かってくれない大人にトゲを刺して思い知らせてやろうという痛快さよりも、
大人だけど、君たちの気持ちは若い頃心当たりがあるから分かりますよという温かい積み重ねの上に歓待される、多幸感が胸を打つ感じ。

ライブ後、{netabare} トツ子が花畑で踊るシーンが印象的ですが、
私はそれ以上に、生徒にバレないように淡々と退場した後に、
踊り始めるシスター日吉子にホッコリさせられます。
(※核心的ネタバレ){netabare} 元ロックバンドGod Almightyメンバーとして、ライブ中ノリノリになるのずっと我慢してたんだなとw{/netabare} {/netabare}


【作画 4.5点】
アニメーション制作・サイエンスSARU

周囲の人間を“色”として認識できるトツ子。
憧れの作永キミの色は青など。でも自分の“色”はまだ分からない。
他人には中々理解してもらえないトツ子から見る世界を、
色を知覚する人体の原理から解きほぐして、
鑑賞者の“ピント調節”をしてくる冒頭映像から、表現に意欲的な作画・背景。

色彩設計の小針 裕子氏。
過去作では、個人的に特に『GREAT PRETENDER』のカラフルな背景、建物の色使いが好み。
本作でもキミのブルーに合わせて、背景を海の青などで合わせてくるなど、
色彩にも統一感がありました。

トツ子の色は何色か?が一つの焦点ですが、
映像見ていれば、あぁやっぱりその色だよねと納得できます。


ライブシーンは手描き重視。
私はどちらかというとライブはCG派ですが、
クールなテクノサウンドで敢えて、奏者の汗が滴る繊細な手描き表現などを見せられると、
まだまだ手描きで表現できるライブの醍醐味はあるぞと唸らされます。


トツ子に作詞のインスピレーションを与えた授業での太陽系の自転・公転運動の資料映像。
座標が固定された太陽の周りを惑星が公転するイメージ映像ではなく、
銀河系の周りを約2億5000万年かけて公転する太陽に追随するように絡んでいく惑星というリアリティ重視の方の映像を私は久しぶりに見ました。
{netabare} 猛進する太陽が、青のキミからトツ子の顔面に投じられたドッジボールとリンクしたトツ子の妄想には吹き出してしまいましたがw{/netabare}


【キャラ 4.0点】
日暮トツ子。ミッションスクールの寄宿生。楽器ド素人なのに憧れの作永きみと親密になりたい欲求から3人でバンドにやろうと言い出す。他人が色として見える共感覚だけじゃない不思議ちゃん。乗り物酔いに弱い。バレエ経験者。

作永きみ。聖歌隊メンバーとして他の生徒からも慕われるも、期待される自分を捨てるようにギターに惹かれていく。{netabare} その末に退学。{/netabare}

影平ルイ。離島の医師の息子。シンセなどの中古楽器をかき集めて、密かに音楽に没頭している。

以上の3人がメインキャラのバンドメンバー。
トツ子からきみへの想いは、ある種の百合含み。
きみとルイの間には恋愛の波動もあり、トライアングルの波乱も予感させますが、
この3人の関係性は恋愛と一言で片付けられない物があり、
私は今も的確な答えを導き出せていません。


【声優 4.0点】
トツ子役の鈴川 紗由さん。きみ役の髙石 あかりさん。ルイ役の木戸 大聖さん。
メインキャストは約1600人の中から若手俳優陣をオーディション選出。
鈴川さんにはアニメ声優願望があり、髙石さんには舞台経験しかも2.5次元舞台でキャラ声での歌唱経験もある。

トツ子はゆるふわ属性のキャラ声での対応が求められ、
きみには歌唱に加えラスト{netabare} 「頑張ってっ~!」{/netabare} の絶叫シーンもありましたが、
3人とも声でキャラを作り、声を張ることができていたと思います。

指名よりはオーディション。舞台など声に力を込められるだけの素地があること。
良好な俳優キャストの条件は揃っている布陣だとは感じました。


が、私はそれでもアニメ声優の経験豊富な方がメインやったらどう良化しただろう?との欲は捨てきれませんでした。
トツ子のルームメイト“森の三姉妹”というモブキャラポジに、
『平家物語』主演の悠木 碧さん、『けいおん!』紬(つむぎ)役の寿 美菜子さん。
山田監督作の出演経験者も配されていただけに、
例えば、この実力者2人がメインだったらとか邪念が入ってしまいます。


【音楽 4.0点】
劇伴担当はこちらも山田監督とは腐れ縁の牛尾 憲輔氏。
シンプルなピアノとストリングスのミニマル・ミュージックでキャラの青春の掛け合いを下支えするお馴染みの仕事ぶり。

一方で、テクノ志向なバンド・しろねこ堂の楽曲群では、
牛尾サウンドのもう一つの特色であるシンセ和音が際立ちます。
さらには、最古の電子楽器テルミンまで登場し、楽曲にアレンジ。
(アンテナに手をかざしてプオォ~ンなどとSFチックなサウンドを発生させるやつ。マニアック過ぎますw)

教会で鳴らすには突飛な曲風でしたが、
シスター日吉子に言わせれば、感情や気持ちが表れていれば、
しろねこ堂のサウンドもまた聖歌なのです。

「水金地火木土天アーメン」
山田監督自らが発したワードから構想されたというこのライブ曲。
私も思わず踊り出したくなる謎の中毒性がありますw


ED主題歌はMr.Childrenが「in the pocket」で、
2009年の劇場版『ONE PIECE~』以来のアニソン提供。
歌詞世界も、牛尾氏参加のアレンジも、まずまず作品に寄せて来てはいましたし、ミスチルは好きなバンドではありますし、
従来の山田作品ファンとは違う層への訴求力もあるのでしょうが……。

私はエンドロール後に{netabare} 「水金地火木土天アーメン」のダンス映像入れる{/netabare} くらいだったら、
最初からEDも、しろねこ堂で良かったのではないか?
とこれまた邪念が入ってしまいました。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 17
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