てけ さんの感想・評価
4.3
正直者の本能。言葉が巧み。あとエロい
原作、ドラマは未視聴です。
安楽岡 花火(やすらおか はなび)と、粟屋 麦(あわや むぎ)にはそれぞれ好きな人がいる。
だけど、寂しさを紛らわせるがごとく、カップルのように振る舞うのだった。
開始2分でわかるドロドロ感。
人間関係の矢印は複雑です。
一般的な恋愛作品では、登場人物が「いい人」なことが多いです。
いい人だからこそ、片思いは辛いし、破局は苦しい。
でも、この作品ではちょっと違ったアプローチをしています。
それが、「クズ」というワード。
ここで「クズ」という言葉の意味を考えてみます。
似たような言葉に「ゲス」がありますが、
クズ:社会的に良くない人のこと
ゲス:人格的に良くない人のこと
という意味を持っています。
つまり、「一般的にはふさわしくない行動・思考」というニュアンスです。
これが作品内でどう表現されているかというと、「心の声」です。
とことんまで心の声を言語化。
キャラクターがナレーションで心情をぶちまけまくります。
どんな人でもよろしくない考えをしてしまうものですが、それを隠さないんです。
もし私が、
「誰にでも好かれたいか」
「キープできる都合のいい人が欲しいか」
「お付き合いしている人がいても、ほかの人とカラダの関係を持ちたいか」
と言われれば「YES」と答えます。
だってそうだもん。
実際には理性やプライドで抑えるわけですが、本音は違う。
その本音をぶっちゃけて、
「無意識ではこう思ってるんだよね」
「社会的には良くない考えだけど、誰でも多少は思うよね」
果ては、
「理性やプライドで抑えてるんだよね」
と、根っこの部分を言葉巧みに語ります。
だからこそ、クズであり、説得力があり、同時に共感できる部分もある。
また、各キャラクターに「変化」が描かれており、話全体のテーマとなっています。
要するに、
* 社会的に良くない行動をする
* なぜそういうことをするのかを論理的に説明する
* それが本能的ながら、説得力がある
* 本音同士をぶつけあって、各キャラクターの行動が変わる
という仕掛け方をしたお話です。
欠点は、
* コメディは少なめで、基本は重い
* キャラクターを好きになりにくい
* 言葉が多く、集中する必要がある
* 次回に対する引きが弱い
* ストーリーそのものに衝撃はない
しかし、共感できれば満足感は強いでしょう。
一話一話、多くの言葉で心情を語るため長く感じますが、見た甲斐がありました。
お腹いっぱい。
絵はとてもきれいです。
キャラデザインも好み。
色は2~3色しか使われておらず、動きも少ないです。
ただ、ぼかし効果や白を混ぜた色調のため、清潔に見えます。
そして、瞳がしっかりと描き込まれているため、美しく見えるのだと思います。
OP・EDも曲・絵ともに素晴らしいです。
耳に残るしリズムも取っちゃう。
セックスを表現したEDは、非常に強いインパクト。
あと全体的にエロいです。
背徳的で官能的で本能的。
百合があるので苦手な方は注意です。
好きな方はおいしいかもです。