雀犬 さんの感想・評価
4.4
私たちはどこから来て どこへ行くのか
劇場アニメ「海獣の子供」公式サイトに一人の生物学者がコメントを寄せている。
「これはまったく新しい「生命創造神話」である。
生命の輪廻転生を描くとともに、生命は宇宙から来たことも暗示する、
地球と宇宙と生命の「大いなるつながり」の物語なのだ。」
(長沼毅「海獣の子供」公式サイトより)
「海獣の子供」という漫画の最大の魅力は五十嵐大介の圧倒的な画力にあるし、劇場版「海獣の子供」の魅力もまた、STDIO 4℃が作り上げた圧倒的な映像を「浴びるように」味わうことだと思う。幽玄なる海の世界の描写は素晴らしく、僕は劇場で鑑賞しその迫力に圧倒された。激戦だった2019年の劇場アニメの中でもNo.1の映像だったのではないだろうか。
一方でストーリーについては観念的かつ難解で「よく分からなかった」という声をよく聞く。果たしてあの夏、劇場で琉花と目撃した「誕生祭」とは一体何だったのだろうか。その謎を解く鍵は実は科学だと僕は思っている。主人公の少女の名前の由来は、あらゆる生物の共通祖先とされる単細胞生物「LUCA」に違いない。生物学、特にアストロバイオロジーと言われる、宇宙を舞台として生物の起源や進化を議論する学問がこの作品のベースになっているように感じた。このレビューも科学の話を中心に進める。
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