開墾でイングランドなおすすめアニメランキング 1

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74.0 1 開墾でイングランドなアニメランキング1位
ヴィンランド・サガ SEASON2(TVアニメ動画)

2023年冬アニメ
★★★★☆ 3.9 (226)
526人が棚に入れました
新たな千年紀を迎えたデンマーク・ユトランド半島南部。仇敵・アシェラッド亡き後、生きる目的を失ったトルフィンは、「奴隷」として地主・ケティルに買われ、彼が所有する農場で開墾作業に従事していた。そこで、同じく奴隷の身分へと堕ちた青年・エイナルとの出会いをきっかけに自らが犯した罪と向き合い、生きる意味を見出していく。一方、イングランド王に即位したクヌートは「楽土」の建設に向けて、さらなる版図の拡大を目論んでいた。これは“本当の戦士の物語”プロローグのその先にある“償いと救済の物語”。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

心に刻まれる壮大なサーガ

引き続き原作未読で視聴。

【物語 5.0点】
超スローペースの2クール全24話。
概要など、トルフィンは平和な日常のかけがえの無さを知る。
トルフィンは自らの進む道を決意する。
以上で説明できてしまう程。
だが私の心に爪痕を残すのはこういう作品。

戦場で狂気に囚われた戦士の末路。
帰還兵が抱えた心身の傷と再生。
各々テーマとして語り尽くされ傑出した物語も多数あります。

ですが1シーズン目で前者を、2シーズン目で後者を。
双方の題材を紡ぎ合わせた大作となると希少かつ貴重。

戦いに明け暮れ復讐の虚しさを思い知ったトルフィン。
戦いから逃げ腰だったが戦場を経験する中で、楽土建設を標榜する大王として覚醒していくクヌート。
異なる道へ進んだ両者。交わるはずがないと思われた二人の道がやがて交錯。
様々な価値観を抱えた人生がぶつかり合うことにより、テーマを重層化させる人間ドラマが圧巻。

前シーズンでは、トルフィンの父トールズの言動に、正直、平和主義や反差別主義といったヒューマニズムに過剰なのでは?との違和感も抱えていました。
ですが終わってみれば正気の沙汰じゃないと思っていた{netabare} 羊8頭と瀕死の奴隷の交換{/netabare} などのトールズの酔狂にすら懐古して感じ入ってしまう不思議。

争いの無い土地を目指して“ヴィンランド”に行きたいとか後ろ向きの夢想が物語になり得るのか?
という疑問も、今ではすっかり前向きな進路だと好感できている。

同時に、ここまで語り尽くされないと戦争や奴隷の恐ろしさ理不尽さが理解できない、
私の心の鈍感さに愕然とします。

1シーズン目観ていないと分からない以上に、
1シーズン目を“経験”として血肉とした上で、心を研ぎ澄ませて噛み砕いて行かないと、
2シーズン目では感性が反応できず、描写が淡々とし過ぎて退屈だとなりかねない。
ギャグも{netabare} “熊殺しのドロット”の100発の拳より強烈だった姉御のワンパンw{/netabare} など少な目ですし。
お前ちゃんと定期的に里帰りしとけよと諭されますw

人も条件も選ぶ続編ではありますが、私は満点を付けざるを得ません。


【作画 4.5点】
アニメーション制作はWIT STUDIOからMAPPAにスタジオ変更。
監督、シリーズ構成等スタッフ陣の中核は継承。

ヴァイキング世界の雄大な自然を描き切る背景美術のクオリティも堅持。
天候変化による心情描写の拡張、鳥による自由意志の暗喩など、演出面もハイレベル。

例えば、一見、美人な奴隷のアルネイズさん。掌は手荒れでボロボロ。
肉体に刻み込まれた傷痕で、苦労を重ねた人生の年輪を語る人物作画にもグッと来ます。

トルフィンを責め立てる死者の群れなど悪夢のトラウマ描写も迫力あり。
クヌート王に至っては、{netabare} リアルで見える死んだ父王スヴェンの生首に、お前も孤独な君主の道を進むのだと嗤われる{/netabare} 白昼夢が続く。
これで狂わないなんて、本当にあのひ弱だったクヌート殿下なのか?と戦慄します。
というより、あの顔面、気持ち悪くて夢に出てきそうですw


余談ですが、スタジオがMAPPAに変わっても、放送局がNHKじゃなくなっても、
冒頭バイクツーリング映像でスタジオロゴを打ち出すスタイルは変わらないのですねw
世界観に合わせてヴァイキング船になったりはしないのでしょうかw


【キャラ 4.5点】
トルフィンがケティル農場で同じ奴隷の相棒となる男・エイナル。
情の厚さから復讐心に駆られそうになるエイナルの血気をなだめるトルフィン。
その他、1シーズン目で辿った自身の道を繰り返しそうになる周囲。
農場で出会う人々を通じてトルフィンが何を思うのか?
合わせ鏡を覗くような構図も交えて、トルフィンの経験と成長を噛み締める濃厚な人物相関。

農場主のドラ息子・オルマル。
心身共に貧弱なクセに、俺は農場は継がずに戦士になるんだ!と息巻く分かりやすいグレっぷり。
彼もまた、あの頃トルフィンもそうだったかなと懐古する上でも有用な人物。
終盤には、{netabare} 挑発に乗り、農場接収の口実を与えてしまう失態を演じますが、
最後は、戦うばかりが能じゃないというトルフィンが15年かかった境地に僅かな期間でたどり着く。{/netabare}
男が一皮むけるためには、早目に荒れて、やらかすことも必要なのかもしれません。
にしてもオルマルはやらかし過ぎですがw

オルマル&ケティル親子を始め、弱さ故に女を侍らせ、富と暴力に執着する。
地獄の中世ヨーロッパの底流に男の性ありとの示唆が繰り返されテーマを補強。

ケティルは欲張って土地を広げ過ぎ。やがて争いの火種となる。
先代当主・スヴェルケルのご指摘はごもっとも。
が、ケティルの旺盛な農場経営があったからこそ、
トルフィンらは自由民復帰に挑戦する機会を得たとも言える。

トルフィンとは別の覇道を進むクヌート王らと合わせて、
キャラによる反証が、ヴィンランドへの道を鍛え上げる。


【声優 4.5点】
主人公トルフィン役の上村 祐翔さん。クヌート王役の小野 賢章さん。
壮絶な半生を経た人格の変化、徐々に氷解していく心。
この辺りを演じさせたら、お二人は本当に上手いです。

脇では洋画、海外ドラマ吹替経験も重ねたベテラン勢が起用され、
ヴァイキング世界の洋風ムードを演出。
その中でも特にアルネイズ役の佐古 真弓さんや、大旦那スヴェルケル役の麦人さん辺りは、
人生の年輪が滲み出た、簡単に養成できないような妙演で魅せてくれました。


【音楽 4.0点】
劇伴は、やまだ 豊氏が続投。
感情が極まった人物に心を打たれるのは、一体となった背景美術だけではなく、
繊細なピアノと雄大なストリングスで盛り上げていくBGMとの合わせ技による所が大きいです。


主題歌
前期OP・Anonymous「River」/前期ED・LMYK「Without Love」
後期OP・Survive Said The Prophet「Paradox」/後期ED・haju:harmonics「Ember」

歴史物にサバプロのようなロックを起用すると好みが分かれて、“酷い”の検索候補が必ずついて回りますがw
グチャグチャした葛藤を叫びたいロック魂のような感情は古今東西不変という観点から私は嫌いではありません。

主題歌群で相変わらずなのは英語歌詞の多さ。
TVsizeだと、後期EDのサビでようやく美しい日本語バラードを耳にして里帰りできた感w

続編があれば、思い切って本場“ヴィンランド”のラウドロックやR&Bシンガーを一曲挟んでみても面白いかもしれません。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 27
ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

比類なき濃厚ドラマ(追記しました)

[2023.6.29追記]
2期見終わった後、クヌートの歴史が知りたくなって調べてみました。
クヌートが{netabare}波を鎮めようとする{/netabare}シーンが23話でありましたが、
あれ、「逸話」としてWikiに書かれててちょっとびっくり。
こういう逸話などもちゃんと調べて盛り込んでるところもすごいなぁと改めて感じました。

[初回感想]
ヴァイキングの子トルフィンが自分の生きる道を見つけていく物語の2期になります。
未見の方は1期からの視聴をおすすめします。ここからでも見れますが1期見てると物語の深さの理解度が違うと思います。
全24話。原作未読ですが先が気になるので読もうかちょっと迷ってます。

見てて感じたのが物語の世界観がとてもしっかりしてるのと、とても細かいところまで描きこまれてる綺麗な絵、そして劇中曲もピアノの曲など見てるこちらの心情に寄り添うような素敵なものが多くてよかったです。

それからすごいって感じたのはキャラの描き方がとても深いこと。
これは1期のアシェラッドを見てても感じたことですが、人の一面だけじゃなくて多面的に描かれているというか。
農場主のケティルや大旦那のスヴェルケル、用心棒リーダーの蛇、アルネイズなど、人物造形がみな深いです。
特に印象的だったキャラはケティルの次男のオルマル。
{netabare} 登場時はやんちゃで世間知らずでわがままな坊ちゃんって感じだったのが、自分の愚かさが原因で大変なことになり、とても後悔し悩んだ末に本当の勇気について学んで、トルフィンの行動に感銘と尊敬の念を抱いて・・
最後、汗をかきながら農作業してる彼の顔は本当に素敵だと思いました。{/netabare}

1期のほうが好きって方が多いみたいですが、私はトルフィンが大きく成長した2期がとても気に入りました。
{netabare}確かにガルザルの下りはちょっとくどいかなって思いましたけど、{/netabare}全体的に丁寧に描かれてるところは好感持ちましたし、物語のクライマックスの21話~23話は感動して何回かリピート視聴しちゃいました。。

トルフィンの理想は現代ではなかなか難しいものがあるかもですが、実はそれを実現した社会が大昔の日本にあったみたいなんです。(作品と関係ないので畳みます)
{netabare}その時代って縄文時代。
私もネットで見た知識なので間違ってるかもですけど、縄文時代って1万年も続いてて、実は定住もしてて栗の木とか採取のために近くに植えたり、日本の他の集落とも交易で繋がってて海外からも物が入ってきたりしてたみたいで。
そんな私たちの想像よりも豊かな暮らしをしてた縄文人だけど、一番驚いたのが狩猟具みたいものは出土するんだけど、人を殺す武具は一切見つかっていないみたいなんです。
先日もドイツで3000年前の剣が見つかったって記事見たけど、同時代の世界の他の地域からは武器が出土してるのに、縄文人の遺跡からは出てこない。これって本当ならすごいことだと思う。
だってトルフィンたちが憧れて目指してる社会がそれよりも何千年も昔にあったんだから。{/netabare}

2期は{netabare}やっと故郷に帰れたところで終わりました。(トルフィンのお姉さんのパンチには笑いました。。){/netabare}
最終話見てから1話を見返したんですが、色々と発見があって1話の「刻め」と23話の「刻め」がつながるところなど凝ってたり。
ここまできたらぜひヴィンランドに行くところまでやってほしいですよね。(原作未読だけど・・)

投稿 : 2024/12/14
♥ : 23

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

トルフィンの内面変化が大きな SEASON 2

1期目に引き続き、この SEASON 2 も2クールです。

数奇な運命でアシェラッドに付き従い、ノルドの戦士としての修羅の道を行く1期目のトルフィンから打って変わっての SEASON 2 です。

2期目は原作8巻の途中くらいから始まり、19話時点では原作13巻の後半に差し掛かったあたりです。

レビューを書こうとして、原作漫画の今回のアニメ化部分以降をついつい読み直してしまいました。ついつい最新巻まで読み直してしまいました。

原作、面白いですね。

1期目での葛藤や挫折があっての2期目なので、1期目を観ていない方はとりあえずここでさようなら…。




== [下記は19話まで視聴終了時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
舞台は10世紀末~11世紀初頭で、デンマークによるイングランド征服前後の話になります。主人公はトルフィンで間違いないと思いますが、デンマークのクヌート王もまた裏主人公的なポジションだとは思います。

アニメ化にあたってはいくつか台詞が変わったり無くなったりとか、トルフィンが死者にうなされる夢を見る場面が前倒しになったりとかはしていますが、ストーリー的に目立つ改変は無いと思います。

単にストーリーを追っているとそんなに意識はしないかもしれないのですが、本作ではノルド人の北欧神話的(ゲルマン的)な価値観と、キリスト教的な博愛精神とが対立的に描かれています。

世界史的にはゲルマン人全体に起こった変化なのだとは思いますが、それに先駆ける形で個人であるトルフィンないしはクヌートに思想的変化が訪れるわけです。

お話としては中世以前なわけですが、そこに近現代的な価値観をうまく落とし込んだ人物を上手く登場させていると思います。

たぶんこの2期目が終わる辺りで何故に「ヴィンランド・サガ」というタイトルが回収されると思うので楽しみです。
== [19話まで視聴時のレビュー: ここまで] ==

2023.06.21追記:
最終話まで2クール観終わりました。想定通り作品タイトル「ヴィンランド・サガ」については、SEASON 2 の最終話までで一応回収。

1期目が終わるときには「ここまでがプロローグ」みたいなことを書いていた気もするのですが、結局 SEASON 2 を終わってもヴィンランドには辿り着かないわけで、結局「この後からが本番」みたいな言葉を繰り返す羽目になるのかなあという気もします。

最新刊が26巻に対して今回のアニメ化は15巻の頭くらいまでなので、この先も長いですよね。原作も完結はしていないわけで、最後までアニメ化されるものなんでしょうか…?

アニメ化を待てずに原作漫画を読んでしまう人もそれなりにはいそうですね。まあ私としてもそれがお勧めなんですが…。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 21
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