謎解きで小説原作なおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの謎解きで小説原作な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年04月21日の時点で一番の謎解きで小説原作なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

69.6 1 謎解きで小説原作なアニメランキング1位
小市民シリーズ(TVアニメ動画)

2024年夏アニメ
★★★★☆ 3.5 (232)
623人が棚に入れました
“たがいに助け合い、完全な小市民を目指そう。” かつて“知恵働き”と称する推理活動により苦い経験をした小鳩くんは、清く慎ましい小市民を目指そうと決意していた。 同じ志を立てた同級生の小佐内さんとたがいに助け合う“互恵(ごけい)関係”を密かに結び、小市民としての高校デビューを飾り平穏な日々を送るつもりでいたのだ。ところがふたりの学園生活に、なぜか不可解な事件や災難が次々と舞い込んでくる。 はたして小鳩くんと小佐内さんは、小市民としての穏やかな日々を手に入れることができるのだろうか。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

追記 日常の推理では無いと思います。春から変装していた意味は?

追記 この作品はジャンルとして「日常の推理」ではないです。いや日常の推理なんですけど、本当の構造が隠れているといった方がいいです。これが逆転すると日常の推理としては…と言う評価になります。
 そっちではなく、小佐内さんは高校に入る前から「夏」の結末をある程度計画していたはずです。その証拠が変装です。それがこの作品の推理としての「構造」です。

{netabare} あるいは変装をしても危険な食べ歩きの安全保障のための小鳩だったのかもしれません。スイーツは本当は小佐内は一人で楽しむものだったんでしょう。スイーツを食べるとき小鳩にまったく興味を示していません。

 したがって「小市民」は小鳩をうまく巻き込むためのガワだったと思います。小鳩に男としての興味はないです。だから、中学校時代からの宿題が終わった瞬間、解散を申し出たと取れます。
 ですので、私はこの作品は小鳩に語らせた叙述トリック{/netabare}と定義しました。そこを「騙された」と視聴者として喜べるか。それが推理作品の味わいでしょう。


小佐内のキャラ造形が見事な作品。私は奴が大嫌いですけど。

 なんと10話で終わってしまいましたね。ラストの車が燃えるシーンをはじめいろいろについて言っておくとあれは「秋限定栗きんとん事件」です。なんだその中途半端な感じは…と思ったら2期やるみたいですね。25年4月から?なるほど…

 演出についてです。川を使った心象風景の使い方が正しかったのか?ですね。川に象徴するものがあったとしても宗教とか集団的無意識の共通基盤になっていなければ意味がありません。そこは効果的だったのかな?とは思いました。
動きがないアニメにしづらい作品なので動きを入れたのか、ご当地ものとしてそうしなけば風景の使いようが無かったのか。そこはやりすぎ感はありました。ただ、1話ほどの違和感は10話では感じなかったので見直せばそうでもないのかもしれません。

 作画は動きは少ないですけど良かったです。特に小佐内と小鳩の表情の作り方は小説の意図を上手く見せたと思います。キャラデザに関しては小佐内の目が赤いのも悪魔的で良かったです。全体がリアリティがある色彩のキャラデザの中で面白い工夫でした。

 作品の総評です。この「春・夏」までで一番出来が良くなかったのは「春」つまり教習所の事件の小鳩の動きです。小佐内の悪魔性も小鳩が推理する理由も弱すぎました。小佐内がピンチなはずなのに延々と行われた会話劇に違和感が残りました。
 ココア事件で見せた堂島の行為も姉の暴走による結果論ですが、小佐内と表裏になりました。小鳩の自己顕示欲を確認することができましたが、そこも「春」だけですと単発の出来がイマイチなエピソードとなり活きてきませんでした。

「夏」のシャルロット事件で小鳩と小佐内の関係性が明らかになったおかげで、誘拐事件における小佐内のキャラ性とか小鳩のラストの感情とかが非常に鮮やかになったし、推理としての完成度が上がりました。夏祭りのときの伏線の張り方も見事でした。変装の意味も春からの伏線だったことがわかり、なるほど計算はあったんだなとわかります。ですので「夏」があって初めて「春」の意味があるという構造でした。それは推理小説としてはどうよ?という感じはしました。

 アニメ版では当然この前半までの印象は同じですし、さらに冒頭の自転車盗難の時系列や状況を変えたことで不自然になりました。ですので前半の評価はやはり低く感じました。

「夏」は原作の出来が良いのはもちろんなんですけど、これだけの悪魔的なキャラを日常系の推理で出すこと自体が壮大な仕掛けになっています。

 日常系推理の始祖ともいえる北村薫氏はもちろんですが、似鳥鶏氏、坂木司氏、初野晴(ハルチカの原作者)氏などで小佐内に似たキャラはいたでしょうか?この点においてこの作品は評価せざるを得ません。三上延(ビブリア古書堂の事件手帖)のヒロインはちょっと同じ雰囲気はありますけど内面は全然違います。そしてアニメ勢だと米澤穂信氏の「氷菓」の千反田を先に知っているだけに、その衝撃は結構なものだと思います。原作でも「夏限定」は「クドリャフカの順番」の後だったと思います。

 推理の構造は{netabare}騙された小鳩が視聴者の代弁者となる「他人が語る叙述トリック」と私は捉えています。叙述トリックとは1人称の推理物語の語り部が実は犯人でしたというジャンルです。要するに「メタWHOダニット」なんですけどね。 {/netabare}これが見事だと思います。

 ただ、私はキャラ萌え派なんですよね。ポワロとかエラリークイーンとか外国勢はそうではないですけど、御手洗潔とか<私さん>とか、火村とか、有栖川とか、伊神とか、古くは栗本薫とか…そう見たときにこの2人…いや小佐内ですよね。推理の構造故に内面が見せられないという最大の欠点を抱えてしまいました。これはキャラ萌え勢からするといただけません。

 そして何と言っても私は本作をラノベ的に原作を読んでおり、主要キャラは善人であるという前提を欲していたんだと思います。少年のマインドで読んでいたといってもいいでしょう。いや死ぬかと思いましたよ。小佐内=幼いで、これも原作者の仕掛けた名前遊びなんでしょうか?そこに潜在意識的に仕掛けられた気もします。

 それが本作が嫌いな理由でした。あまりに読む気が起きなくて、「秋」を読んだのは買ってから10年以上たってから「巴里」が発売されると聞いてやっと読みました。結構なトラウマだった記憶があります。

 長くなりましたのでこれくらいにしますが、「夏」の出来は出色です。アニメ版も良かったです。ただ、やっぱり小佐内は嫌いです。なお「秋」にはもっと本領を発揮してくれます。







1話 【悲報】小佐内さん≠千反田える 「夏」で切るのは最悪では?

{netabare} まさかこのシリーズがアニメ化されると思っていなかったので、アニメ化発表のときに驚きました。このシリーズ、春・夏の読後感がちょっとなあ…という感じだからです。

 氷菓の千反田えるのようなキャラを望んでいる人には【悲報】ですが、小佐内さんに萌えられる人はそうはいないと思います。私は、推理小説は大好きですがキャラ萌えとして楽しむところがあるので、本作は「夏」まで読んで「秋」は買うだけ買って積ん読で手が出ませんでした。確か「巴里」が出るタイミングでやっと「秋」を読んだので10年以上放っておいた感じです。

 それくらい心が離れていました。結果的に「秋」を読むと展開に仕掛けがあるのか…と思いましたが、しかし「秋」はこのペースだと多分アニメ化できないでしょう。「夏」までで大丈夫か?と心配です。そこもネタバレになるので言いませんけどね。

 アニメ本編ですが、キャラや雰囲気の再現性は…うーん、ちょっと綺麗に描きすぎというか、無駄に心象表現をしすぎというか、冗長というか…そんな感じです。
 なお、主人公の家は和菓子屋設定なのでしょうか?これは原作ではなかったと思います。小佐内さんって和菓子苦手だっけ?と思いました。もう1回読み返さないと思い出しません。あとは時代的にスマホがあるとラブレターのニュアンスとか20年前と違うよね?など、細かいところは気になりました。

 追記 ああ何か事件の日の2人の動きに違和感があると思ったら、原作読み返したら、当日の目的はクレープ屋さんで、イチゴタルトは違う日なんですね。そこはちょっとアニメ版は行動として無理があったかなあ?{/netabare}


2話 日常系推理のエンタメとしての難しさと不自然さがモロに出ました。

{netabare} いくらなんでも…という回でした。わずか35ページの原作を1話にしましたか…さすがに眠くなるようなテンポの悪さです。

 そもそも、シンクにスプーンの謎かけはいくらなんでも無理があるのは、小説からでした。無理があるというのは、堂島というキャラからいって、その謎を仕掛けるのが不自然だからです。
 ヒントを要素に分解して、謎に気が付くように、解けるように、ただし簡単になりすぎないように難易度の調整をしながら仕掛けるには、常悟朗と同程度以上の頭の使い方が必要です。それは堂島のキャラ造形や言動から言って不自然です。

 そして、日常の中の謎というのはこの無理の連続です。そして、これは本格派推理のジレンマで、パズルを作ろうと思うと、話は不自然になります。ですが、それは本格派小説のマナーみたいなもので、小説ならこういう不自然な話も「そういうものだ」として楽しめます。

 まあ、これは「たまたま堂島のずぼらが作った意図しない謎」という話ととるんでしょう。今度は姉がそこに謎を見出したという不自然さは残ります。堂島のキャラをよく知っているはずですし、一般人にそんな気づきは普通ないでしょう。けど不自然さはマイルドにはなります。

 そして、堂島の意図でないとすると次に別の不自然さが発生します。わざわざ2人を呼び出してココアをふるまった意味がなくなるし、ココアの作り方をレクチャーする意味がメタ的に考えて意味を喪失します。
 推理小説に「無駄はない」の法則から言って、ココアの作り方をわざわざ説明した流れからは謎かけととるべきだと思います。ですので通常なら読み取るならやはり「意図した謎」ととるのが自然でしょう。

 ただ「あんのずぼらが!」のセリフがありますので「意図しない」方にはアニメの解釈は寄せています。そしてそうなるとこの1話が丸々不自然な1話になります。堂島は本当に常悟朗と小佐内を呼んで話がしたかっただけ?


 追記と修正 ここはさっき改めて原作を読んでから件のシーンを見返しました。今回は「ココアの解き方のようなつまらない話を延々と聞かせて反応を見た」という読み方が正解な気がします。ここは私の読み間違いがあった気がします。
 ただ、その行動自体が人間として不自然だし、堂島というキャラの性質上「ココアの入れ方」という話題をチョイスし、反応をうかがうようなことをするのがキャラに合っていない気もしますけど。むしろ単刀直入に聞くでしょう。

 で、これは別の視点なのですが、小学校のころの友人と高校で再会して、キャラが変わった。大きな何かがあったのか?と思う感覚です。普通中学時代の変化は大きいでしょう。変わらない方がおかしな年ごろです。
 むしろ再読してこっちの方が不自然には感じましたが、それだけ常悟朗がインパクトがある少年だったという意味だとは思いますので、この辺は計算があるのでしょう。
 日曜日に家に呼び出して問いただすというのは普通ではありません。つまり「ココアの作り方」の謎を作るためのちょっと無理があるシチュエーションな気はしますが。

 それと小佐内さんを一緒に呼び出す理由は弱い気はします。こういう話をする際、同行者は邪魔なんじゃないかと思います。その点では原作と構成を変えて、小佐内さんが堂島の持ちかけた謎を問いたという話を飛ばした故の不自然さでした。

 いずれにせよ、人間の一般的な言動からは無理があることに間違いはないでしょう。それが日常系推理の不自然さで、今回は見ていて推理のための舞台装置感が非常に強かったです。故にいくら作画が良くても、何を見せられているんだろう?という感覚が強く出ました。

 これは本作に限ったことではありません。ただでさえ日常の謎の推理ものには不自然さがあります。
 ですが、それは小説故に読めるのであって、アニメにしたときのなんと無意味で冗長なこと…その点でやっぱり「氷菓」の出来は良かったんだなあとあらためて思います。

 まあ、小佐内さんの本質が見たいので、そこのポイントはチェックすると思いますが、どうしようかなあ…視聴断念のボーダーライン以下ですが、そこが気になるので、飛ばし飛ばしの視聴継続でしょうか。{/netabare}


3話 制作の解釈と演出は?小佐内さんの本性をちゃんと描けているのか。

{netabare} なるほど、小佐内さんのダークサイドをそう描きましたか…テストの件と連続させたのは、スイーツにかこつけて常悟朗を呼び出す。小佐内さんに推理力はなく常悟朗に推理させる。スイーツをたらふく食べることで自分を押さえる…ということでしょう…か?ここが原作からの疑問でした。

 スマホ(原作だとケータイ)を忘れてきた…というくだりですが、小佐内さんがもし常悟朗に推理をさせようと意図したのだとしたら、ここはちょっと不自然です。常悟朗が学校に戻り現場検証するのが偶然になってしまいます。少し違和感があることろです。

 メールの内容が「話がある」から始まっているなら、小佐内さんの計算ととれるんですけど「ケーキ食べたい」から始まるこのメールの流れだと本当に小佐内さんはやけ食いを意図していたことになります。偶然の流れととるべきか、意図ととるべきかで随分解釈は違います。ただ、2人の約束に縛られて「ケーキ食べたい」がつまり話があるという意味なんでしょうけど。つまり、スマホを忘れて学校に戻る部分はどうやっても不自然にならざるを得ません。

 結局、小佐内さんは常悟朗に対して未必の故意で、推理することをかなりの蓋然性で見込んでいたのでしょう。そうじゃないと、場合によってはテストの件でも復讐するという緊迫感がなくなってしまいますので、そこはいずれにせよ小佐内さんは推理をさせたし、常悟朗は推理をした、ととるのが正解なんだと思います。

 前半でのちょっとした出来事は、小佐内さんは我慢が出来ないことに対しては復讐する、ということですね。

 で、本作のターニングポイント…小佐内さんの笑顔です。いままで無表情だったことの意味を我々はここで知ることになります。もっと素直な笑顔でもよかった気がしますが、そこは解釈ですから少し狂気をはらんだ笑顔というのも理解はできます。

 ただ、ここが大事ですが小佐内さんの本性はむしろ復讐にある、ということが表現できていたかどうかです。あのシーンで一番大事なのはスイーツのときよりも嬉しそうに笑うことではないか、と思ったんですけどどうでしょう?そうなると前半のケーキバイキングのシーンで笑顔が全くないのは演出としていただけません。小佐内さんの狂気が表現できているか?初めての笑顔と、笑顔の違い…演出はどちらが正解なのでしょう?


 そして、原作だと「私有財産の保全」のセリフのところで笑顔を消しているんですよね。復讐のネタを見つけたことに喜び笑顔になって、それを止めようとする常悟朗に対して真顔になることで自分の中にある怒りを再度認識して真顔になる、ということだと解釈しました。ですから本作の「私有財産の保全」のときの小佐内さんの心の動きはちょっと解釈が違うんじゃないかな、と思わなくはないです。


 瓶が落ちる話のトリックですけど、確かに原作では氷やドライアイスの可能性に言及していましたが、特にトリックの明示はありませんでした。本作のあのトリックは証拠を残しています。そこで「濡れ衣」という原作にはないキーワードをアニオリでつけました。原作は純粋にカンニングのため、本作は教室内に悪意があることを示唆しました。この違いに意味があるのでしょうか?

 あと細かいところですが、前半の2人がケーキバイキングの店で並んで座っているのを外から見たシーンで、4分15秒くらいのところは2人のつながりが画面的におかしい気がしました。まるで省略があって何メートルも離れているみたいに見えました。それが本作の演出だと心象なのかともとれるのがややこしいですけど。

 今回は省略もあり随分テンポ良く進みましたが、全体的に小佐内さんの心の動きと本性をちゃんと描けていたか?が、非常に気になります。画面は非常に綺麗なのですが、推理小説ではありますが…特に心理…いや小佐内さんの本質が大事なこのシリーズの前半の根幹ですから、そこは監督・シリーズ構成・演出の人たちはどう考えたのでしょう?OPで狼と狐の絵を見せるだけ?

 それと橋…川の演出はどうなんでしょうね?心象で意味を込めるにしても、ちょっと読み取りづらいかなあ。{/netabare}


4話 この作品の最大のトリックは何か?

{netabare} 本格推理的な雰囲気でありながら、すべて状況証拠の積み上げなので推理としてどうなのか?という点については氷菓も一緒です。ただ、その状況の提示の仕方が、すべて小佐内さんの自転車だよりになってしまったので、非常に不自然になりました。タルトの件、空き巣事件で都合よくナンバーを目撃された件(しかも印鑑が盗まれた…といろいろ調べられたりする)、そして教習所が特定できた件です。

 ただ、重ねて言いますが日常系の人が死なない推理小説は、えてしてそんなものです。捜査ができない以上はそうなざるを得ません。ですので、そこは保留でいいでしょう。小佐内さんのヘイトをためるにも必要だったでしょうから。

 ただ「春限定」の最大のトリックは何か?それは小佐内さんの見た目と内面のギャップです。スイーツの題名でふんわり甘いものを想像して小説を手に取ると、常悟朗の推理ものとして見ていると、最後は実はキャラの性格造形でだまされるというのが本作が読者に仕掛けたトリックです。

 そう考えたとき「春」の不自然なのは推理ではありません。常悟朗が「小佐内さんが危機に陥っているかも」と焦るというところが不自然なのです。小佐内さんが狼と言い切れるほど、狐の常悟朗は「本性」を知っているのに、復讐において小佐内さんがドジするという心配をするというのが作品のカタルシスを減らしたなあと思います。

 ここは小佐内さんの怒りや高校という年齢から言って、どれだけ悲惨な復讐が成し遂げられるか、を心配するくらいでちょうどよかったと思います。本来2人は頼られたら何とかする同盟であって、心のつながりが希薄という前提まで崩してしまいます。
 これは堂島を相手に推理を語らせないと推理として成立させられないからだとは思いますけど。

 それと小佐内さんの復讐に「わからせ」がないです。題名に冠したいちごタルトと自転車泥棒の報いだ、というのが坂上は知ることができません。これを復讐の完遂と呼んでいいかどうかです。

 自転車にまつわる事件を連続させた工夫は感じます。が、最終的には「小佐内さんの内面の恐ろしさに驚愕するミステリ」が本作「春」段階ではそこの描写が弱いので出来損ないの「氷菓」に見えるのでしょう。「氷菓」は各事件の解決の下に潜む人間性・隠れた動機が実は最大のトリックで、さらに作品を通じて主人公が覚醒する話です。その氷菓における隠れた動機に対応する「小佐内さんの本性」の描き方が「春」だけですと非常に弱く、故に面白さが中途半端です。

 それをアニメにしたから、まあ、こうグダグダになったのでしょう。特に3話の小佐内さんの描き方が弱すぎるなあと思いました。ただでさえ短い「春」の話を削った影響もあるかもしれません。

「夏」の方がその意味では本番です。1クールで4話しか「春」に使わないのは当然、主軸は「夏」ということです。推理小説ものなので最後まで見ますけど、やっぱりアニメ化に向かない上に、制作が見せ方をちょっと間違えたのかなあ…という気がしなくはないです。{/netabare}


5話 シリーズの中で出来が良い作品。冬服に戸惑わない方がいいです。

{netabare} この「伯林あげぱん」の話は日常系推理としての出来が良く、与えられた素材から推理される内容もその推理が必要で小鳩が巻き込まれる過程も、自然に描けていたかなと思います。「氷菓」の面白さに匹敵するコミカルな感じも良かったと思います。

 そして、小佐内ゆきというキャラの性格というか行動原理が適格に表現されていて、そこの使い方が見事です。話の導入として読者の疑問を掻き立てるのが非常に上手かったです。加えて堂島が新聞部ということも活用できています。

 ただ、少し画面から違和感を感じないでしょうか?5月の設定なのにどう見ても冬の印象を持つ作画、美術、色彩になってませんか?
 直接推理にも話の面白さにも引っ掛からないのでネタバレすると、本話は「巴里マカロンの謎」に収録されていて、時間軸でいえば1年生の冬になります。(追記 さっきまで2年の冬だと思ってましたが、原作確認したら間違っていました)

 この話は本来原作では1年生の年末に近い時期の話で、「春季限定」と「夏季限定」の間の話になります。それがアニメだと小鳩はいきなり2年A組になっています。春と夏の間という時間軸は変わらないのですが、部室のホワイトボードは「5月」と表示されています。つまり、無理やり2年生の5月の話だと改変しています。
(追記 そうそう、なぜ仲良くなさそうな新聞部でこんなことをしたかと言えば、原作では年末の取材の一環でした。ベルリーナー・プファンクーヘンはドイツでは大晦日または2月の謝肉祭に食べられることが多いそうです。それは調べないとわからないのでまあいいでしょう)
 
 話そのものに影響はないのです。ですが、5月なのに画面が寒々しく全員がきっちり制服を着ています。部室の窓もしまっています。午後4時45分なのに夕日になっています。つまり、冬のつもりで作っている人、5月のつもりで作っている人が混在しているような不思議な画面になっています。これは何か事情があるのでしょうか?

 その画面上の不自然さはおいて置いて、これを説明というか何もなくいきなりここに差し込むのは、アニメとして効果的かどうかは疑問です。まあ、これから「夏季限定」が始まるので2年生にいきなりなっていると戸惑うので、無理やりここにいれたのでしょう。ただ、アニメとして説明が不十分すぎます。

 と、アニメの画面の印象と、シリーズとしての説明の工夫にちょっと疑問は感じますが、そうは言ってもこの1話は大変面白い話でした。キャラたちの性格が悪すぎるのは相変わらずですけどね。{/netabare}


6話 この話は面白いですが、単なる小休止のエピソードでしょうか?

{netabare} 冒頭のお祭りのシーンは原作でもわかりづらいというかはっきりとは確定できないのですが、「会いたくない人」に意味深長なものを感じたのですが、その辺は伏線だと思います。あえて自転車で来たと嘘をついたのは{netabare}「自分は見られたくないけど、相手の顔が見たい」 {/netabare}という小佐内さんの事情が原作では小鳩によって推理されますが、アニメではありませんでした。綿あめも本当に食べたいのもあるでしょうが、 {netabare} 顔を隠す {/netabare}という意図もありました。
 ですが、本作アニメではそこをサラリと流しました。推理としてフェアかどうかはアニメ制作者は考えた方がいいと思います。

 それとこの祭りのシーンで「春」では表現しきれなかった、小佐内さんの本質ですね。小悪魔的ではなく悪魔的に、完全に小鳩の内面を翻弄しコントロールしている感じを描くシーンだと思うのですが、そこがちょっと弱かったかなと。

 そして原作で明確でないのがこの時点で小鳩は小佐内さんをどう思っているか?なんですよね。「春」の教習所の件から、互恵関係と言っている割に小鳩は小佐内さんに甘い感じです。そこに恋愛を見出すことはできますが、それはミスリードでしょう。

 このシャルロットで言いたいのは、小鳩の側でも本当は推理を披露する機会が欲しくて、小佐内さんを利用しているということでしょう。小佐内さんがほぼ唯一のその性癖の理解者です。ですが、小佐内さんはそれが分かって小鳩を利用し支配しているというのが、この祭りとシャルロットで描かれたのかな、と。

 それとまあ、これはネタバレですから隠しますが、 {netabare} この構造が「夏」の大きな仕掛けになります。この6話は「5話と同じく出来がいいちょっとしたショートストーリー」…では無く「夏」事件のキャラ造形としての伏線になります。{/netabare}
 こういうところが「春」に比べて「夏」の方が話としては進化したかな、という部分です。

 演出について。シャルロットのパートなんですけど「何やってるの、小鳩くん」は、心象風景ですね。こういう演出が分かりやすいかどうかはちょっと考えた方がいいかもしれません。
 あと、ネタバレになるので詳しく書きませんが、箱の中のレイアウトはちょっと原作と違うニュアンスになっています。{/netabare}


7話 小鳩と小佐内の表情をどう読み取ったかを覚えておきましょう。

{netabare} ハンバーガーショップの地図の件は、原作だと謎になっていたんですけど、画面でみると成立してなかったですね。どう描くかをちょっと楽しみにしていたんですけど、演出が付いて行ってなかった気がします。
 一方今回の小佐内さんの変装は笑ってしまいました。ついでに、なぜいつも変装しているのかも明言はされてないですが、そこを考えても面白い気がします。

 1話で小佐内の好みを「和菓子ではなくバターとブランデーが効いた濃厚な甘さ」的なものと言ってしまったが故に、鋭い人は小佐内のスイーツに綿菓子とかリンゴ飴が含まれることに、何かの仕掛けか?というアニメ独自の読み方ができてしまいますね。制作スタッフが意図的に入れたのか、何となく入れたのかが良くわからないセリフでした。

 あと、7話の小鳩の表情はそれでいいのか?という気がしなくはないです。ちょっと私の解釈とは違います。一方で小佐内の表情は私と同じ解釈かな、という気もします。小鳩の表情を本作アニメ版のように捉えると、結末がもっと楽しくなると思うのでそこはなるほどな、と思いました。

 この表情についてはアニメでは意図的にかなり丁寧に作画していたと思います。6話の構造と合わせてしっかりとチェックしておきましょう。そして7話の印象を最後まで忘れないようにしましょう。{/netabare}


8話 さて、前提が終わりました。ここからが最大の山場です。

{netabare} かなりあっさりと誘拐事件を描きましたね。原作からして薄めの本ですので、描き方のテンポとしては悪くない気もします。もうちょっとヒリヒリさせるよう、ここは引き延ばしても面白かったかもしれません。

 で、誘拐事件の本編はこれからです。楽しみに待ちましょう。私はこの作品が大嫌いですが「夏期限定トロピカルパフェ」という作品の出来の良さは認めています。夏祭りとシャルロットの味わいが活きてきて、見事な推理小説的な展開と構成でした。

 トリックの種類は ※ネタバレ注意※ {netabare} 他人(小鳩)が語る(小佐内)さんの叙述トリックという感じです。小鳩が8話で行ったことは、そういうガワで見えているという表面上のものだけで、これに視聴者はだまされます。

 注意。具体的内容。{netabare}事件そのものは犯人が引き起こしたものですが、それを事前に察知しその事件を監禁・暴力事件から営利目的の誘拐事件という非常に重い罪に見せかける復讐を小佐内さんが仕掛けます。
 その仕掛けの片棒を担ぐことを小鳩が誘導されて意図せずに行ってしまいます。最大の犯人が小佐内さんだということです。その意味で「春」事件のときの小佐内の描き方が弱いので夏のカタルシスが弱くなるなあ、と思っていました。

 変装の意味、なぜ夏祭りのとき顔を見られたくない相手の顔を見たかったのか、シャルロットのときの小鳩の事件を解決したい心理を小佐内さんが確認したこと、小佐内さんとの関係性に顔を緩める小鳩の表情、逆にそれを知った小佐内さんの悪魔的な表情、なぜ事前に地図の場所を把握できていたのか、小鳩に地図を事前に見せたのか、なにより最大のトリック「小市民」という単語の我々のこざかしいイメージの回収。

 つまり、本作は小鳩VS小佐内であり、小鳩が小佐内の手のひらの上で踊る話です。さらに言えば小市民という人を馬鹿にしたような自分たちの小賢しい考えに気づき、関係が破綻する話です。ですので、6話で小鳩がまるで小佐内のことが好きなような表情を見せたことが効いてきます。苗字に小が付くのも原作者の悪意を感じます。この辺、本当に素晴らしい仕掛けでした。{/netabare}

{/netabare}

 こういう感じですので、肝心なのは次回です。事件の説明の中に潜むいろんなものを理解してこの作品の「味わい」を拾いましょう。何度も言いますが、私はこの小説が大嫌いです。

 これが、この作品の1話でレビューした小佐内≠千反田えるの意味です。今のペースだと9話か少しじっくりやって10話くらいで終わる感じですが…それともいろいろアニメだと私が本作原作を嫌いになる理由に何かアニオリが付いて意味を変えてくる可能性がある尺ですね。

 以上のような話です。せっかくここまで見た人は、最後まで見ることをお勧めします。 {/netabare}



9話 出来はいいですが、小説の面白さとキャラの魅力のバランス問題。

 というわけで、この展開は素晴らしいと思います。一方で推理小説に関してはキャラ萌え派の私にとっては最大の裏切りでした。だから、この作品の出来の良さは認めても、嫌いな小説ということです。

 今回アニメ化にあったって、小佐内さんの内面が見えないことが最大の面白さになるわけですが、そこは小鳩を語り部にすることで結構うまく機能したかなとは思います。しかし、それゆえに本作の魅力、キャラの魅力という点で物足りない部分になっていました。
 特に「春」においては「それだけ?」という感覚が強いので引きが非常に弱かったです。ただ、この9話までの部分を仕掛けた「夏」は推理というより小説の展開として高く評価したいと思います。

 小鳩常悟朗って結構不自然な名前ですよね…多分結構悪意があると思います。「小さな鳩で、常に悟る」です。「朗」の意味はいろいろですけど、ほがらか、明るい、声が高らか。つまり「さかしい小さな鳩がさえずっている」とも取れますから。

 そして、小説の小佐内は大っ嫌いですけど、今回小鳩の描き方が賢しさとか、にやけた表情とかが上手かったので、小佐内のキャラが結構魅力的に思えました。その点ではアニメ化の意味はあったかなと思います。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 21

Witch さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

『氷菓』や原作を知っているとつい口を挟みたくなるのは申し訳ない

【レビューNo.158】(初回登録:2024/12/15)
小説原作で2024年作品。全10話。
原作についてはアニメ『氷菓』で米澤穂信先生を知って読み漁るようになり、
その際に読了済み。
その当時は漠然と「これもアニメ化されたらいいのになあ」と思っていたら、
このタイミングでまさかのアニメ化ですよ(笑)


(ストーリー)
主人公・小鳩常悟朗は中学時代に問題事を推理したがる性格で苦い経験を持つ。
そして同級生の小佐内ゆきも常吾朗と似た境遇を送っていた。
そんな2人は意気投合、「小市民」を目指すために互恵関係を結ぶことになる。
高校生に進学した2人は平穏を求めながらも、日常の中で発生する事件に巻き
込まれ、結局封印したはずの謎解きに挑むことになる。


(評 価)
上述のように待望のアニメ化だったのですが、率直なところ
「アレ!?思ったほど面白くないなあ」
原作を読んだのも大分前で結構忘れてる部分も多く、思い出補正なんかもあっ
たのかなあと思っていたのですが、最近最終巻(冬期)が図書館から回ってき
たので読んでみると
「おい!やっぱり面白いやんけ!!」
なので、もう一度原作を読み返してみると・・・

・1,2話でやらかしている
 1話を視聴して感じたのが
 「アレ!?こんな不自然なストーリーだっけ?」
 という強い違和感だったんですよね。
 原作を確認すると、やはり「ポシェット事件」と「いちごタルト事件」は
 本来別エピソードでアニメ化で改変されたようですね。
 まあ1話で視聴者を引き付けるために上述構成にした意図は理解できます。
 でもここに問題が発生したんですよね。

 小佐内さんは本来「スイーツ」については異常ともいえるこだわりや執着
 を持っている、個性的なキャラだったんですよね。
 それが本作だと
 ・「春期限定いちごタルト」に強い執着を持ち、絶対ゲットしたい
  しかも今日までという期限付き
 ・そして(2個ゲットするため)小鳩君に同行の約束を取り付けるも
 ・ここで事件に巻き込まれ小鳩君が友人から呼び出される
  → 小佐内さんおとなしく待機
 って、こんなの私の知ってる小佐内さんじゃない!
 売り切れるかどうかの瀬戸際で、呑気に待機してる場合じゃねーだろ!!
 個人的には彼女の強烈な個性は吹っ飛び「普通のスイーツ好き女子」に成
 り下がったなと。
 (この辺はその後のエピソード含め(説明セリフ頼りとか)演出が弱かっ
  たかなっと)
 これだけなら些細なことかもしれませんが、本作は一事が万事こういう感
 じなんですよね。

 例えば続けて2話ですが、今回は「おいしいココアの入れ方」です。
 これはミステリーのオチが斜め上過ぎて酷評の嵐でしたが、原作を読むと
 本編のポイントはここではなく、小鳩君と友人堂島健吾の間で交わされる
 「お前中学で何かあったのか?雰囲気が違い過ぎる。」
 という会話劇なんですよね。
 
 これも
 ・原作だと知恵働きをやめ「小市民」を目指すようになったきっかけが語
  られるのは一番最初のプロローグ(夢の中という設定)
  → それを受けての上述会話劇になるので重さを増す
 ・本作だとこの辺りが語られるのはラスト付近
  → 上述会話劇が唐突な昔話になり伏線めいた扱いに
 制作側としては最後の見せ場にとっておいたようなフシがあるのですが、
 そのせいで
 ・会話劇の重みが薄らぎ「ココアの入れ方」の不出来が悪目立ち
 ・「小市民」という言葉もどこかひとり歩きしているような状態に
  (また後述の2人のキャラの描き方にも影響したような)
 と、やはり違和感を覚えたのは正しかったようです。

 1,2話で「??」となった視聴者も多かったんじゃないですかね。
 (制作側のやろうしていることは分かりますが、序盤からこれだけ違和感
  を覚えるとなあ・・・という感じですね。)


・3話以降は原作の出来に助けられたが・・・
 3話以降は原作者の調子も上がってきた感じで、ミステリー的なストーリー
 は楽しめたように思います。
 しかし「魅せ方」については比較するのは適切でないかもしれませんが
 ・『氷菓』は
  ・「何故この作品をアニメでみせるのか」を考え抜いた上で
  ・それに従い全体像も練り上げて、そこからエピソードに落とし込む
  という意図が感じられ、アニメは原作越えの面白さがあった
 ・しかし本作は
  ・このシーンはどう見映えするか的な”点”で終わってしまってる印象
 という感じで連続性のある積み重ねという部分が弱い感じがしましたね。

 その辺はキャラにしわ寄せがきてる感じで、例えば小山内さんなんかは
 ・普段はスイーツ好きで小動物的にかわいく描いておいて
 ・ここぞの場面で作画のインパクト等で「実はどす黒い女子です」アピール
  しときゃいいやろ的な
 他のレビューで書きましたが、キャラ造形って
 >・作り手が「彼はどういう人間か?」というのを考え抜いた上で、それを
 > 作中の言動に地道に落とし込んていく
 >・その積み重ねを経て、視聴者側がどう受け取るか
 ということだと思うのですが、そういう点では物足りなさを感じたかなっと。
 (全体的にキャラの捉え方が平面的というか、他のレビュアーさんのご指摘
  通り行間を読み取れていないというか・・・)

 それに伴って、小鳩君との「小市民」を目指すための互恵関係という設定も
 作品の面白さに繋がっていない感じですし。


・作画もレベルは高いが・・・
 作画は綺麗でかなりレベルが高いです。
 しかしここでも引っ掛かるところが・・・
 ミステリーだと会話劇が冗長的になりやすいので、飽きさせないようイメージ
 映像を挟んだりするのですが
 ・『氷菓』だとメインの会話がよりわかりやすくなるように等会話劇を面白く
  引き立てる名サポート役的に描かれている
 ・本作は目先の変化だけが目的というか、川辺のシーンなんかむしろ本筋より
  作画がきれいだったりとこっちを強く主張してどうすんねん!
  (会話劇を面白くする方向に機能していない)
 こういう感性が合わなかったところも1話から違和感を覚えたひとつですかね。
 (作画も全体的にアニメとして面白くみせることより、作画自体の凄さを見せ
  つける方向に神経がいっていないかと?)


『氷菓』や原作を知らなければまた評価も違っていたかもですが、なまじ知識
があるとつい口を挟みたくなる点はちょっと申し訳ないですね。
期待値が高かった分辛口気味なレビューになりましたが、標準レベルはクリア
されているとは思います。
(正直なところ1,2話で負のバイアスがかかったのが影響してる感じ)
決して『氷菓』を目指して欲しいわけではありませんが、『氷菓』の真骨頂は
ある意味
「原作へのリスペクトと圧倒的な理解度の高さ」
にあると思っているので、そういう点は見習って2期では
「この原作のどの部分が琴線に触れアニメ化に至ったのか」
が見えるような作品を期待したいですね。
2期分の原作エピソードもより面白いものになっているので。


(追 記1)
>このタイミングでまさかのアニメ化ですよ(笑)
これは2024/4に最終巻が発刊され、完結まで描ける目途がたったのが大きかっ
たのでしょうね。
個人的には、2022/2の米澤先生の「✕」での発表
「KADOKAWAさんから出る新刊は、〈古典部〉シリーズの長篇にしようとご相談
 しています。」
以降『氷菓』の続編どうなっとんねん?が気がかりなんですが。
『小市民シリーズ』も無事完走したことですし、こちらの方もよろしくお願い
します m(_ _)m
(『氷菓』のレビューでも書きましたが、これが完成すればギリ1クール分の
 ストックは確保できるかなっと。
 アニメ化してくれるかは知らんけどw)

(追 記2)
あと堂島健吾のことを彼女が「ケンケン」と呼んでいたが、やっぱアニオリだ
ったんだな。
そこはちょっと面白かった。小鳩君の間とか後でちゃんといじってたしw
(改変が”点”で終わらず、きちんと”線”になっていた。)

ただこの回では堂島が「名前は言えないんだが」といいつつ、次の会話であっ
さり名前を言ってしまう”大雑把さ”に小鳩君が心の中でツッコミを入れると
いう(原作の)流れなんですが、本作ではそこはスルーかよっと。
また最終話の小鳩君が最後のパフェを食べた際の心理描写不足とか・・・
こういうキャラの魅せ方とか細かい感性のズレが原作のよさを活かしきれず、
イマイチ合わないなあっと感じてしまった。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 22
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

小市民の星

ラパントラック制作。

清く慎ましい小市民を目指す小鳩と小佐内、
平穏な高校生活を望むも、推理の得意な、
小鳩の元には様々な事件や災難が舞い込んでくる。

涼やかで綺麗な映像描写とちょっとした推理劇、
実写ドラマを意識しているそんな印象も受けますが、
静かなメインキャラは疲れないので良いです。

少年と少女、不思議な関係ですね。
{netabare}穏やかな時間を享受し、互いに助け合い、
完全な小市民を目指そうって!?
ここらあたりは、善意に解釈しましょう。{/netabare}

季節感溢れる青春×学園ミステリー、
素敵な作品になればと期待しています。

5話視聴追記。
新聞部部室での伯林あげぱんの謎解き、
{netabare}冒頭の小佐内の描写に見事に落ちもついて、
良くまとまった楽しめる回となっています。{/netabare}
 
最終話視聴追記。
娯楽性は乏しいのかも知れませんが、
文学的な会話劇、最後はお見事でした。

{netabare}水面下で遂行される過去の因縁への報復、
誘拐されることにより相手を罰し社会的に葬る、
用意周到なおそるべし少女の思惑が完遂する。

これで2人の関係は解消されたのでしょうか、
小鳩が選んだポップコーンの味は甘くない塩味。{/netabare}

続編を楽しみに待ちたいと思います。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 36

57.6 2 謎解きで小説原作なアニメランキング2位
探偵チームKZ事件ノート(TVアニメ動画)

2015年秋アニメ
★★★★☆ 3.3 (64)
354人が棚に入れました
友だちや家族、また成績に、なやみやコンプレックスを感じている
小学6年生の立花彩。

あるとき、塾で出会った超・個性的な男子4人と「探偵チームKZ(カッズ)」を組むことに!!

個性豊かな「探偵チームKZ」が、事件にまきこまれ、時にぶつかり合いながらも、それぞれの特技、専門知識を使い、協力して、事件を解決にみちびきます!


声優・キャラクター
巽悠衣子、斉藤壮馬、寺島拓篤、西山宏太朗、市来光弘

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

「探偵チームKZ事件ノート」←毎回この台詞から始まる構成が何気に好きでした^^

この作品の原作は未読ですがNHKEテレで放送されること、キャラデザが好みだった事から視聴を決めた作品です。

ポンポン視聴する作品を増やしていくとどうなるかは理解しているつもりです・・・でも、一度気になっちゃうと視聴せずにはいられないんです^^;
そして第1話・・・私好みのキャラデザの登場人物が可愛らしく登場した時、「あぁ、視聴を決めて良かったな^^;」と心底思いました。

この物語の主人公は小学6年生の立花彩・・・引っ込み思案で周りの視線が気になって仕方ない彼女は、友達と呼べる人もなく、独りで過ごす時間の多い女の子です。
勉強や運動も決して他人よりできる訳ではありませんが、唯一国語が得意なのが彼女の取り柄になっていたようです。

「一芸に秀で、その芸で身をたてる」
はちょっと言い過ぎかもですが、国語の得意な彼女は塾で特殊クラスに入れることになったんです。
そして、そのクラスには「サッカーチームKZ」の4人のメンバーが在籍していたんです。
KZのメンバーといえば女の子の黄色い声が飛び交う超人気者です。
かかわり合ったら人の目が・・・
現状の自分の立ち位置を理解している彼女でしたが、KZのみんなはそんなの全くお構い無し・・・

そんなある日、KZのメンバーの一人である若竹の自転車が盗まれるというトラブルが発生するんです。
「絶対犯人を見つけてやる!」
それぞれ得意分野を持つKZに国語の得意な彩が加わり、「探偵チームKZ」の物語が動いていきます。

探偵とはいえ彼らは小学生・・・扱う事件も身の回りにおける些細な出来事なんですが、これが結構面白いんです。
時折小学生には無理なんじゃ・・・という設定も無いわけではありません。
でもそこはフィクションという枠の中でKZのメンバーが輝ければ問題無いと思います。

物語は大きく4つについて描かれています。
①消えた自転車は知っている
②卵ハンバーグは知っている
③裏庭は知っている
④バレンタインは知っている

どれも題材は身近ですが、タイトルから内容が想像できないところに面白さがあるのかもしれません。
そしてこの作品は謎解きと同時にチーム内のキャラを掘り下げています。
この掘り下げがあるから、チーム内での言動やつかず離れず・・・だけど自分の得意分野でしっかり事件を解決へと結び付けるお互いの役割で繋がっているのが分かります。

引っ込み思案だった彩ちゃん・・・探偵KZでの活動を通してどの様に変わっていくのかが見どころです^^

でも私の中で唯一分からない事があります。
何故16話という半端なタイミングで終わってしまったのでしょうか^^;?
1クール12〜13話なので、14話目の放送を知った時・・・嬉しかったんだけどな^^;
まさかそこからあっという間に終わってしまうなんて・・・

作品が放送されていたのは平日の夕方・・・小学生もたくさん視聴していると思います。
でも内容的に実際の小学生が真似できるモノではないから実害も無いと思いますし・・・
少しwikiを見てみたら原作のストックもまだありそうですし・・・

主題歌はダイアナガーネットさんの「難解!ミステリー」
楽曲を購入するまで歌い手がアメリカ人だったとは想いもよりませんでした。
日本語がとても上手でビックリでした。
これからの活躍に期待しています^^

全16話の作品でした。
この作品の様にお互いの長所を発揮しながら仲間と一緒に事件を解決していくスタイルは、正に一昔前の日本の仕事の仕方と重なります。
高度経済成長期に私達の先人達が編み出した業務スタイルですが、私達はだいぶかけ離れてしまいました。
現在、当時の日本の成長の秘密や法則を学んだ外国人が様々な著書を出版しており、今の私達が現状を打開するためにその著書で勉強しようとしている・・・なんて皮肉なモノです^^;
こんな堂々巡りをするなら、もっと先人の教えをもっと貫いていれば回り道すること無かったのに・・・と思ったりしています。
今の私達に足りないモノを教えてくれる・・・そんな作品だと思いました。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 17

buon さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5

出しゃばっちゃダメ絶対

割とね、好きだった。
けど、来期忙しそうだから切ります。ガン○ムが2クールだし。

さて、この作品はある意味○ナンくんより悪影響を及ぼしそうな気がします。
もっと大人を頼りましょう。

内容は小中学校でちょこっとした出来事から芋釣り式で大きくなって、
「あ、あかん」って大変な感じなのにちびっ子(?)が解決してきます。

あやちんはまあまあかわええ、それはOK。
けどね、男、男共、
おまえら何やってんだよ!
もっと輝けよ!!
もっとキュンキュンさせてくれよ!!!
「えっ、そ、そんな、こんな気持ち、は・じ・め・て♪」って慄かせてよ!!!!
キャラデザも作画ももっと気合い入れろよ、もっと熱くなれよっ!!!!!

これ、原作の方が面白そう。
なんか小説かなんだかそれっぽいのらしいけど。

逆ハーレムのときは、男がもっとがんばりましょう、以上。

【2015/11/18】おーる3っていうか多分、未評価

投稿 : 2025/04/19
♥ : 5

ねるる さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.7

典型的な同性に嫌われるタイプな主人公

友達が出来ず浮いてる主人公が、人気者の男子達で結成されている探偵チームKZ(カッズ)に入り、身近に起こる事件を解決していくお話。雰囲気は〇研ゼミとかに入ってくる漫画みたいな感じ。今もあるのかな?

正直つまらないアニメだった。

とりあえず主人公が自分のことしか考えていないキャラなので不快でした。そしてそれを何故かチヤホヤする男友達という構図なので、絶対女子に嫌われるやつだと思いながら見ていました。特別いい所ないのに強気だし、全く魅力がない主人公でしたね。

事件も、中学生なのにどこでその情報手に入れてきてるの?みたいな事ばかりだし、結果倒産とか逮捕とかされる割に本人たちはケロッとしてて、なんだかなーと思ってました。

声優だけは豪華だけど、豪華でも全然見る価値ないアニメでした。久しぶりにこんなにつまらないアニメを見た。何もいいとこないです。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 1

77.2 3 謎解きで小説原作なアニメランキング3位
ジョーカー・ゲーム(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (994)
5043人が棚に入れました
世界大戦の火種がくすぶる昭和初期を舞台に、帝国陸軍の“スパイマスター”結城中佐によって設立されたスパイ養成部門「D機関」の活躍が描かれている。

声優・キャラクター
堀内賢雄、下野紘、木村良平、細谷佳正、森川智之、梶裕貴、福山潤、中井和哉、櫻井孝宏、津田健次郎、関智一
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

映像もストーリーもよく練られたスパイもの<原作読了、追記あり>

本作は繊細な描写が魅力で小説や洋画(特に古い名作)のような印象の、スパイを主人公としたミステリー作品。
何回も視聴して想像や考察をしながらじっくり楽しむのが吉です。

アニメよりも実写向きと感じるような作りですし、エピソードごと時系列を入れ替えていたり、メインキャラクターを意図して見分けがつきにくくデザインしているなど、アニメとしては尖ったところもあります。

エンターテイメント的なアニメを好む人や、キャラクターの掘り下げを望む人には向かないかもしれませんが、シリアスなアニメや他の媒体の作品も好む人には逆に入りやすいのではないでしょうか。

【ビジュアル面】
キャラクター原案は三輪士郎さんで、キャラクターデザインの矢萩利幸さんがアニメの方向性に合わせてより地味なイメージに落とし込んでいます。
ことD機関のスパイ8名は全員目立たないモブ顔を設定するという方法を取りました。アニメキャラクターは一目で見分けがつくべき、という考え方からすれば思い切っていますが、機関員8名はスパイとして目立たず活動する作品なのでこれで正解だったと思います。

作画は安定感と美しさでリアリティを追求している点が最大の特長。動きもデフォルメが少なめ、色彩も暗めなので若干泥臭いイメージにもなっていて、そういう部分が好きですね。
安定した作画でキャラクターの仕草や表情が細かく、緊張感やリアルな雰囲気が途切れなかったことが一番素晴らしい点だと思います。

背景もやはりリアルで美しく、地に足の着いた映像作りがされていて、世界観をよく表現していました。


【キャラクターと声優】 {netabare}
大御所がいっぱいでしたw演技に関しては本当に素晴らしかったの一言です。

結城中佐はほんの僅かに人間味を見せることが実は少なくなく、長いスパイ活動を経てもその人間性を捨て去っていない点がかえって恐ろしいと同時に素晴らしいキャラクター。
堀内賢雄さんは感情を見せない語り口、時折見せるかすかな人間性、変装時の演じ分けなど最初から最後まで、本当に素晴らしかったです。個人的に賢雄さんはシリアスキャラがすごく好きなので嬉しかったです。

ゲストキャラクターではヴォルフ大佐と、その声を当てた銀河万丈さんがとても印象深いです。若い頃との演じ分けも好きですし、判断力に優れた面、冷徹な印象や威圧感、結城中佐に対する一種の執着などその人間性がとても感じられました。
{/netabare}


【ストーリー面】 {netabare}
オムニバス形式 で各話独立した物語として展開、八人の機関員にそれぞれスポットが当たる構成です。
あえて時系列を入れ替え最初(1,2話)と最後(12話)にキャラクターの人間性を描くタイプのエピソードを配置。3話がいきなり荒唐無稽なストーリーなのは気になるものの、話数が進むほど視聴者を引き込む作りになっており、おかげで右肩上がりに面白くなったと感じました。

そして最終話がいつも通りに始まりいつも通りに終わる、というのが実に本作らしい。そういう終わり方になるだろうとは思っていましたし、私自身それを期待していました。
スパイたちの人生にも活動にも終わりはなく、視聴者はそのいくつかの出来事を覗き見しただけと思っていましたし、時系列の入れ替えのおかげでそれが自然だと感じられました。

ラストの結城中佐の台詞は第1話最初の台詞と同じで、これが格好良かった!全体のまとまりも感じられて良かったです。
佐久間さんに対しては「これまでの考え方を捨てろ」、小田切さんに対しては「ここでの経験を忘れるな」という意味もありそうですね。
原作からは改変されているそうですが、スタッフが最後までアニメとしてより良い作品を作ろうとしたと思えて、なんとも粋で、正直燃えました。そういうアニメじゃないけどこれw
{/netabare}

【本作の2つの柱】 {netabare}
本作を1クールで展開する上での柱だと私が感じたのは「スパイの生き様」「虚構」の2つです。しかもその2つの要素は密接にリンクして、綺麗に全12話で起承転結にまとめられていました。

まず1、2話で佐久間が初めて機関員(スパイ)の「虚構」を認識します。佐久間は視聴者目線に立つ存在でもあります。
そして機関員は優秀なスパイで、その存在は「虚構」であり、影となって状況をコントロールするという、その仕事ぶりでスパイを語るという構造なのですね。
3話~7話で機関員たちが主役でないのは当然のことです。スパイの生き様は色々ですが、諜報戦から降りざるを得なくなった者だけが「虚構」を捨て去り(あるいは剥がされ)、初めて物語の主役になるわけです。
そういう意味では、軍人であることを捨て去れない風機関の人間はそもそも諜報戦に参加することすらできませんでした。

結城中佐は上に立つ人間ですし身体的ハンデが特徴になるので影にはなれませんが、逆に掴まれている情報を餌に「虚構」を構築することで状況をコントロールし、アーロンを引退に追い込んでいます。結城中佐の過去話かとおもいきや、10話の主役はアーロンさんなんですよね。
11話は三好が真木という「虚構」を被ったまま人生に幕を下ろす物語でもあり、同時に結城中佐の「虚構」が危うく崩れかける物語でもありました。ニアミスしたのがヴォルフ大佐だったら、一切偽装していない結城中佐は実体をつかまれていたでしょう。
そして、最終話では自己を捨てきれない小田切を描くことで、相対的に視聴者に機関員の「虚構」を再認識させているのです。(キャストの役名が「飛崎弘行(小田切)」になってることに今になって気がつきました。細かい!)

もともと虚構であるアニメーションでは、いかにリアリティを持たせるかが大切です。
本作は映像からはリアリティを追求しているように感じますが、実際は「虚構」を描く作品でした。本作中でキャラクターの語る偽情報すら映像が付いていたのは、視聴者を引っ掛けるフェイクだったのでしょう。原作ファンを引っ掛ける改変もあったようで、そう言われると原作がさらに気になりますw

実写ドラマでも面白いかも知れないと最初は思いましたが、人の手でゼロから創り上げられる虚構(アニメ)だからこそ、本作は魅力的なのかも。
{/netabare}


【雑感】 {netabare}
感情移入が出来ないとのめり込めない私が全話面白く見られたのは、一見淡白に見えても、ストーリー(ミステリー)の中に人情噺のような側面を必ず入れていたからだと思います。
ストーリーを引っ張るのは機関員ですが、他のキャラクターはきちんと人物描写されていて、仕草や表情も見逃せなくて毎回画面に釘付けになってました。

それから自分としては意外だったのが、三好の死がめっちゃショックだったこと。
原作ファンの方の書き込みを目にする機会があって、視聴前から知っていたのにズシンと来ました…普通なら嫌いなタイプのキャラクターなのに…
なんというか三好が、というより「人間の死」というもののあっけなさ、迷いも後悔も心の中に一切無いスパイの死に様が重かったですね。ドラマチックな演出が一切ないからこそ辛かったです…

考える頭脳があるのに日本軍人として生きると決意している佐久間、スパイとして秘密を保って死んだ三好、暗い時代に孤独と苦難の道を歩む機関員たち、それとはまた違う厳しい道を選択した小田切、誰にも見せない苦悩を抱えているであろう結城中佐。
キャラに感情移入するアニメじゃないのに私が嵌ったのは、彼らに想像の余地を残してくれているからです。
本作で何を見て何を考えるかは視聴者に委ねられています。そこがとても好きですね。
{/netabare}

本当にスタッフに恵まれた作品でした。
本作を見ているとわからないことも沢山ありましたが、本作の公式サイトには時系列表やコラム等があり、理解の助けになりました。かなり内容が充実していて頭が下がります。

振り返ると無駄な話はひとつもなかったと思いますし、繰り返し視聴するのが楽しい作品です。
こういう新作が定期的に出てくれると個人的にはとても嬉しいですね。(2016,6,27)


本日原作を読了しました。
キャリアのある作家さんだけあって読みやすく情報量も多く、描く要素も一貫していてとても面白かったです。時系列は原作もばらばらで、アニメだけではなかったんですねw
アニメ版が気に入った方には是非読んでみて欲しいです。

原作のひとつの特徴として、小説というビジュアルのない媒体だからこそ出来る登場人物の「無名性」があります。{netabare}登場するスパイ達は偽名しか付けられていませんし、スパイが主役となる物語は最後にその人物の"スパイとしての死"が示唆されることが殆どです。{/netabare}
アニメ版に私が感じた「虚構」は原作から引き継がれた重要な要素だったのですね。

アニメーションではビジュアルが絶対に必要ですから、やり方を間違えると本作の魅力を大きく損なう難しい要素だったんだなと読んでみて思いました。機関員のキャラクターデザインはとても良いバランスだったと思います。

物語としても、キャラクター数や情報量を減らしながらも物語の筋はきちんと通り、そのために原作を分解・再構築することを恐れないよく練られた作品でした。

動画配信サイトが再放送など行ってくれていることもあり、良い評価を受けているようで一ファンとしてとても嬉しく思います。
(2016.7.8追記)

投稿 : 2025/04/19
♥ : 51

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ラストのセリフに痺れる

昭和初期の東京、横浜、
そして上海、倫敦で繰り広げられる、
歴史の闇に埋もれたスパイミステリー。

帝国陸軍内に創設されたD機関の暗躍。
歴史の舵取りはどこが握るのか!?
心の拠り所さえ、裏切り捨て去る、
それがスパイなのである。

スタイリッシュな映像美で魅せる、
美術や背景を見てるだけでも痺れる。
淫靡で雑多な上海や当時の伊勢丹、
ダットサン(初期の車)が最高ですね。
物語は結城中佐を軸に語られるオムニバス形式。
お勧めは「魔都」「ダブルジョーカー」です。

世界大戦の火種がくすぶる、
あの時代に興味のある方にぜひお勧め。
テーマや設定が重過ぎるように感じますが、
キャラも良く、音楽もセリフも粋な物語です。
各国の諜報機関も雰囲気持っていますね。
原作の評判も良いのでは試してみては。

最終話「XX」、
最後の結城中佐のセリフに痺れる。
見事な幕引である。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 63

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

趣の異なった『主人公最強系』?

原作未読。

ジャンルはスパイ&ミステリー系かな?
日本が世界大戦に参戦する直前頃、結城中佐の発案で作られたD機関と呼ばれるスパイ養成学校の8人の訓練生たちが活躍する話。

今まであまり見なかったジャンルなので、楽しさ半分、好奇心半分くらいで視聴開始。

まず、作画の綺麗さにビックリ。

OP、ED曲とも作品のイメージにぴったり。

登場人物の姿形に特徴が少ないため、誰が誰だか見分けにくいけど、表情が豊かな部分は高評価。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 59

67.7 4 謎解きで小説原作なアニメランキング4位
ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~(TVアニメ動画)

2016年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (712)
3247人が棚に入れました
青春にはいつも、解き明かせないたくさんの謎が溢れてる!

「原作シリーズ累計55万部突破」初野晴の大人気・吹奏楽青春ミステリ<ハルチカ>シリーズ、待望のTVアニメ化!
原作はシリーズ累計55万部を突破した大人気・吹奏楽青春ミステリ<ハルチカ>シリーズ。廃部寸前の弱小吹奏楽部で、吹奏楽の甲子園と呼ばれる"普門館"を目指す、幼なじみ同士のチカとハルタ。
部員集めに翻弄する日々と、仲間たちと交わす友情、そして次々に現れる謎(ミステリ)。チカとハルタの奏でる音楽がいま、遠く高らかに鳴り響く!

声優・キャラクター
ブリドカットセーラ恵美、斉藤壮馬、花江夏樹、山下誠一郎、千菅春香、島﨑信長、瀬戸麻沙美、岡本信彦、山田悠希
ネタバレ

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

スカートの下の白いひらひらって何?知っている人がいたら教えて!

気になって気になってアニメどころではありません。
ってことはないですけど。テヘ!

P.A.さん制作だから、作画がクリアーです。
しかし、瞳の描き方がくどい。
七色の瞳なんてちょっと気持ち悪いですね。

「ハルチカ」って言うくらいだから、ハルタとチカが主人公。
アニメ内容は後述することとして、チカの性格がピカイチ。
一言でいうと、人を惹きつける性格。
初対面でもフレンドリー、情にもろくて一本気。
穢れない心で飛び込んで来るので、あっという間に友達です。
この子の性格、好きだなあ。
是非知り合いになりたいです。

ちなみにハルタは推理探偵ポジションでややBLがかっています。
それも手伝って、男女が絡む学園ものでは珍しく恋愛は皆無です。

作品は、学園推理ものin吹奏楽部の様相。
もしかして、京アニの2作品を混ぜている?
ここは、混ぜるな危険!とだけ言っておきます。

以下は私的なことなので閉じます。

{netabare}舞台は静岡県市清水区。
清水にはあまり思い入れはないけど、静岡文化会館にはドッキリ。
ここで入学式や卒業式があったり、コンサートのバイトをしたり。
あっそうそうロビーこんなんだったっけとか、会館前の雰囲気が懐かしいじゃんとか。
入学式の時、会館3階から眺める桜があでやかなことあでやかなこと。
それもこれも約30年前のお話、青春時代を思い出し嬉しくなりました。
この他、静岡の街は私にとって思い出がいっぱい。
もっと、私の大好きな静岡舞台のアニメが観たいですね。{/netabare}

投稿 : 2025/04/19
♥ : 41
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ユーフォ以下の吹奏楽部を舞台に氷菓以下の謎解きをする。しかし、だからといって、つまらないアニメではないと思ふ。(レビュー最後に算数アリw)

【櫻子さんの足元には死体が埋まっている】【GOSICK】などが好きな方は合うかもしれません♪

どんなアニメかと問われれば、レビュータイトル通りです(笑)

《以下ネタバレ》
{netabare}
第1話
「響けユーフォニアム」系かと思ったら、「氷菓」系? てか、黒板の音符、「さよならドビュッシー(中山七里さんのミステリー小説)」まんまやん^_^; いきなり、普門館を目指す、って言っても、吹奏楽の知識が0の方にも通じるのかな? 個人的には、小見川さんの出る作品にほとんど外れなしなので、楽しみです♪

全話、視聴終了。

個人的に、P.A.WORKSさんは、京アニさんと双璧を成す、否、むしろ一番好きな制作会社さんですが、これは京アニさんに軍配ですね。(無彩限と比べると、辛勝かもw)

まず最初に思ったのは、「これ、吹奏楽部でやる必要あるか?」です。まあ、終盤に思い出したように吹奏楽をやってましたが(でも、県大会の描写くらい欲しかった)。

私の母校は吹部が強く(全国レベルで)、その吹部の友達から聞いた話ですが、

吹部あるある~♪
{netabare}
・練習の半分は(言い過ぎだけど)ミーティング(笑)
・楽器に名前をつける人がいる(主に外人名)。
・下手な運動部よりも体育会系な挨拶、礼儀。
・午前午後ぶっとうされる練習。
・編成によっては、希望しない楽器をやらなくてはいけない、葛藤。そしてそれを「違う楽器をやることで幅が広がる」と諭されること。
・オーディションのガチ感と、その後の人間関係の難しさ。
・はたから見るとユリすら感じる、同パートの先輩への敬愛(か、憎悪か恐怖)。
・顧問の影響力が異常にでかい。
・男子に発言権がない(カッコいい男子はすくないし、居たら居たで抜けがけできない)。
・楽器運搬がきつく、意外に腕力がある(この時だけ、男子がチヤホヤされる)。
{/netabare}
などです。「響けユーフォ」では、この辺を結構うまく押さえてた印象ですが、「ハルチカ」では、ほとんどなかったですね。

ミステリーと割りきっても、吹奏楽である必要はほぼなかったし。どうせなら(パクりですが)第1話の音符みたいに、音楽関連のミステリーが観たかったです。それに、謎解きも、あまりにもヒントが少なく、視聴者が考える間もなくハルタが謎をバンバン解いていくので、ミステリーの醍醐味である「謎解き→答え合わせの快感(や、一本とられた感)」がなかったです。草壁先生の謎解きスキルにいたっては、もう教師なんか辞めてFBIにでも就職したら? と思いました(笑)

んじゃ、キャラや、ラブコメか? と思っても、(悪くはないけど)秀でたものはなし。唯一、チカはウザイイ味w出してましたけど。もちろん、背景や楽器など、絵はきれいですね。
{/netabare}
さて、なんだかんだ酷評してますが、これはあくまで、「響けユーフォニアム」「氷菓」という名作が頭にあるから、ですかね。もし、上記の2作品を視聴していなかったとしたら……普通に、平均以上に楽しめる作品だと思うんです。私自身、少なくとも途中で切ろうとは思いませんでした。

あにこれでレビューを書く方は、かなりアニメ観てる方が多いから、(自分を含め)どうしても他作品と比べ、相対的に評価を下げるのはしょうがないけどね(^.^)

と、いうことで、作品単体としては、普通にそこそこ楽しいアニメですから、時間があるなら視聴をオススメしますよ♪

一番の好評価としては、OPが、大好きな「河合荘」を思わせる素敵なものだったことかな! {netabare}あと、花巻に来てくれたことかな、駅前だけだけど(笑){/netabare}

【蛇足】
第4話の500円玉の金額が気になったので、計算してみよう! 少なく見積もっての、概算だか。(私は文学部だったので、計算ミスがあったら指摘してほしい♪)
{netabare}
草壁先生の身長を180㎝とすると、画面上、縦に約4人分(720㎝)、横に約6人分(1080㎝)入るから、500円玉の全体の面積は777,600平方㎝。500円玉の面積は、5.5平方㎝(wiki調べ)。単純に割ると(円と四角形だから単純に割れないけど)、141,382枚の500円玉があることになるから、一面当たりの金額は70,691,000円。それが、登場人物(靴あり)の足首以上まで積まれている描写があるので、地上からの高さを10㎝とすると、500円玉の高さが1.8㎜(0.18㎝)だから、55枚重なっていることになる。ただ、隙間もあるだろうから、50枚にしよう。

結果、3,534,550,000円(約35億3455万円)。になりました。

計算、合ってるかな?(小学生レベルの公式しか使っていないから、馬鹿がバレたw)

ぱっと見、数億円かな? と思ったけど、意外と多かった(笑) ただまあ、完全に(相続税の)脱税ですから、税務署に追徴課税とられた後、(遺言に500円玉の表記がないので)親族で新たに取り分を決めるのかな? すると、甥っ子はさほど貰えないんじゃ? それとも、「家の一部」という解釈になるのかな? わかんないや。

誰か、法律か骨肉の争いに詳しい方、計算してみて下さい(笑){/netabare}

ちょっと、「空想科学読本」感を出してみました(笑)

投稿 : 2025/04/19
♥ : 38
ネタバレ

伝説のししとう さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

視聴者皆チカちゃん状態

今季の大本命。
某アニメと比較しないレビューにしたいと思います。

視聴前は、謎解き:吹奏楽=1:1だと思っていたので、こんなにミステリー要素の強い作品だとは思いませんでした。
ただそのストーリーが面白いかと言われると、残念ながらそうでもなかったです。
一番の問題は、ハルタが超人すぎることでしょう。とても高校生とは思えない知識量で、難事件をズバズバと解決していきます。視聴者に推理する余地を与えず、そのハルタの推理も??と思うところも多く、強引なところがありました。
謎についても、吹奏楽とはなんの関係もない謎が多すぎます。{netabare}ベトナム戦争だとか、学生運動だとか…学校内に絞ってほしかったです。{/netabare}まあでもそれがハルチカの特徴だと思うから、合わなかったってだけかな。

{netabare}最終話では銅賞で悔しがっているシーンがあり、チカちゃんに関しては涙を流していましたが、吹奏楽の描写がほとんどない以上、あまり感情移入できるものではありませんでした。マレンが部長だというオチは良かったと思います。{/netabare}
やはり謎解きか、吹奏楽か、一つに絞るべきでしょう。

まあP.A.だから期待しすぎたというのもあります。良くも悪くも、TARI×2の橋本監督らしいアニメでしたかね。評価はもう少し厳しくつけてもよかったのですが、チカちゃんが可愛かったのでこの評価とします(まあえるたそには遠く及ばないけれども)。
{netabare}ハルタのホモ設定については、ハルタとチカちゃんの間に恋愛が発生しないようにするためらしいので、不問とします。{/netabare}

作画はP.A.にしては悪い方だったでしょう。
良かったのはOPですね。今季ナンバーワンです。fhanaさんの高音が気持ちいい。

実写化するんですね…これといい氷菓といい…なんでそんなに実写化をしたがるのか、理解できませんね。
橋本環奈がチカちゃんって……笑うしかない。

二期来たら視聴しますが、P.A.が二期を作ったことは一度もないので、おそらく来ないでしょうね。
P.A.の次作はロボット物なんだよな〜正直期待できない。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 52

75.7 5 謎解きで小説原作なアニメランキング5位
ペンギン・ハイウェイ(アニメ映画)

2018年8月17日
★★★★☆ 3.8 (269)
1234人が棚に入れました
小学四年生の少年アオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、大人になったときにどれほど偉くなっているか、見当もつかない。そんなアオヤマ君は、通っている歯科医院の“お姉さん”と仲がよく、“お姉さん”はオトナびた賢いアオヤマ君を、ちょっと生意気なところも含めかわいがっていた。ある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。海のない住宅地に突如現れ、そして消えたペンギンたちは、いったいどこから来てどこへ行ったのか…。アオヤマ君はペンギンの謎を解くべく研究をはじめるのだった。そしてアオヤマ君は、“お姉さん”が投げたコーラの缶が、ペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」“お姉さん”とペンギンの関係とは? そしてこの謎は解けるのか?少し不思議で、一生忘れない、あの夏の物語。

声優・キャラクター
北香那、蒼井優、釘宮理恵、潘めぐみ、福井美樹、能登麻美子、久野美咲、西島秀俊、竹中直人

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

史上最高のおねショタSF映画!もりみー原作が苦手な人にこそ観てもらいたい!

『四畳半神話体系』『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』のもりみー(森見登美彦)の新境地を『陽なたのアオシグレ』『台風のノルダ』の石田祐康と新井陽二郎のタッグが描いたジュブナイルSF


とある郊外の町が舞台
10歳にして勉強や研究に熱心な好奇心旺盛で達観した思考を持つ少年、アオヤマ
ある日、海も無い町中に唐突に大量のペンギンが出現したのを目撃する
アオヤマ少年と友人はすぐさまにペンギンの出自を探す探検に出るが謎は深まるばかり
その後アオヤマ少年はその達観視した口調が災いし、クラスメートのガキ大将と衝突してしまう
そのピンチを彼が淡い恋心を抱く近所の歯科衛生士の“お姉さん”に救ってもらう
アオヤマ少年がペンギンの謎を追っていることを知ると“お姉さん”はジュースの缶を宙に放り投げた
すると彼女が投げたジュース缶が突然ペンギンにメタモルフォーゼした
「この謎を解いてごらん、君には出来るか?」
かくしてアオヤマ少年は“お姉さん”とペンギンの関連を探り出そうとするのが…


まず一連のもりみー原作の多聞に漏れず、達観視した上から目線な主人公による一人称が主軸となっているのですが、早合点するなかれ
もりみー原作でありながらも畳み掛けるような喋り口調でまくし立てる作品ではないのです
主人公が落ち着いた少年であるという点や、アオヤマ少年を演じた北香那の感情を殺した芝居、そして全体的に間を大切にしたテンポ感を含めて、どちらかというととてもゆったりとした時間が流れる作品になっています
かつ暑苦しい青春モノでなく、もっと爽やかなジュブナイル作品というのも手伝っていますから「もりみー原作はちょっと…」という方にこそチェックしていただきたいところです


この辺りの演出、石田祐康率いるスタジオコロリドの若いスタッフが中心となったことも大きいと思います
少年の、自覚なき恋心を大切に描いていますし、その一方で少年が“お姉さん”に興味を抱くキッカケが“お姉さん”の豊満な「おっぱい」というのがエッチでコミカルでとっつき易いです
また、過去作の様にスタジオコロリド内製が強いのかと思いきや、流石に初の長篇ということもあって亀井幹太監督が演出処理を買って出る、佐藤順一監督がクリエイティブアドバイザーとして参加する、等これまでのコロリド作品とは規模の違いを感じます
一言で言うなれば、これまでのもりみー原作アニメが若者向けな文学作品だったのに対し、今作は老若男女広く、もっと言えばファミリー路線にも喰い込める、本当の意味でのエンターティメントに振った作品に仕上がっていると言えましょう
今日までコロリドを見捨てなかったフジテレビにはよくやった!と言いたい


ところでもりみー原作といえば【いまいち何を考えているのかわからないヒロイン】の存在でありますが、今作の“お姉さん”もまたもりみーヒロインであることに変わりありません
彼女のイヤラシさの無い奥ゆかしさを、蒼井優が見事に演じきっていてコレにも拍手です
キャスティングは完璧で、いわゆる大人の事情なども感じさせません
それは主題歌に起用された宇多田ヒカルの「Good Night」も同じで、まさにこの映画の為にある一曲と言える楽曲です
エンドロールで程よい余韻に浸れることを保証いたします


また、途中で『台風』が来たり、『坂のある町を駆ける』のは思わずコロリド作品ファンには笑みがこぼれてしまうところでしょうw
コロリドにとっては今作が初の長篇にして、1つの記念碑となった、のではないしょうか?
まあ細かいことは置いとくとしても、とかく【おねショタ】っていうジャンルは本当に尊いと思ったのがオイラの本音ですよw

投稿 : 2025/04/19
♥ : 18
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

私たちはどこから来て、どこへ行くのか

スタジオコロリド制作。

石田祐康監督、待望の初長編作品。
ひと夏の不思議な体験を鮮やかに描く、
心弾む思春期ファンタジーの良品であろう。

主人公アオヤマ君は研究熱心で、
世界の不思議に興味津々、
日々学んでは、知の探究に励む。
少年特有の好奇心と冒険心も旺盛で、
気になるお姉さんのおっぱいにも、
多大な関心を持つどこにでもいる少年だ。
{netabare}突然、広場の空き地に現れたペンギンたち。
忘れる事の出来ない、ひと夏が始まる。{/netabare}

少年の視点で描かれる数多くの演出、
世界や異性に対する戸惑いと妄想こそ、
どこにでもある思春期の原風景なのだ。
ペンギンハイウェイとは何であろうか!?
{netabare}それは人が歩む、進化への道であり、
思春期から大人になるための道標だ。{/netabare}

ここでは2つの世界が衝突している。
{netabare}折りたたまれ亀裂が生じた世界の果てと、
成長の儀礼として、少年が歩む内的世界だ。{/netabare}
どこか村上春樹「海辺のカフカ」を想像する。

移ろいゆく記憶を、夏という季節に見出す。
それは美しい等式、解けない夏の方程式、
どれだけの冒険をして大人になるのだろう。

私たちは幾つになっても、道の途中なのだ。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 63
ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

表はペンギン、裏はエヴァンゲリオン

世界観:9
ストーリー:8
リアリティ:6
キャラクター:7
情感:6
合計:36

小学四年生のアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録している男の子。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、「きっと将来は偉い人間になるだろう」と自分でも思っている。そんなアオヤマ君にとって、何より興味深いのは、通っている歯科医院の“お姉さん”。気さくで胸が大きくて、自由奔放でどこかミステリアス。アオヤマ君は、日々、お姉さんをめぐる研究も真面目に続けていた。
夏休みを翌月に控えたある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。街の人たちが騒然とする中、海のない住宅地に突如現れ、そして消えたペンギンたちはいったいどこから来てどこへ行ったのか……。ペンギンへの謎を解くべく【ペンギン・ハイウェイ】の研究をはじめたアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。
「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」

(公式ページより抜粋)

視聴経緯については、先日見た「若おかみは小学生」同様、2018年に公開されたアニメ映画で、さよ朝やリズ青と共に名前があげられることが多かったから。

若おかみ~があまり響かなかったので、4作品中トップにあげられることの少ない本作は正直あまり期待していなかったのですが、意外にも高得点でした。

冒頭のあらすじを読むとこじんまりとした作品のようですが、スケールが大きく、SF、セカイ系と言ってよいでしょう。それでいて、個人の思春期の問題がテーマにされており、私はエヴァンゲリオンを連想しながら見てしまいました。

{netabare}本作はいくつかのもの(お姉さん、海と呼ぶ球体、ペンギン等)が象徴的に描かれていて、それを何と捉えるかで様々な受け取り方になると思いますが、全体のテーマは私にとっては「異性への憧憬」や「アニマの昇華・離別」(それによって少年は成長するのだ!)であると捉えました。(ペンギン・ハイウェイが象徴する道も、少年が通る成長の道ではないか)

個人的に、自作長編小説におけるテーマのひとつであり、お姉さん的なキャラを登場させたことがあるので、最早そういうテーマでしか見られなかったのですが(苦笑)
注.私の言う「アニマ」とは、ユングのものとはズレていると思いますが、精神的な異性に対する憧憬の原点(簡単に言えば理想の女性)みたいなもので、例えば、初恋の相手が2次元(アニメキャラ)みたいな形で接触する人も多いのではないかと思われます。

ですので、万人受けはしないと思いますし、特に女性は共感できるのか不明。女性にも異性への憧憬はあるでしょうが、本作のモチーフがそれに符合するのか全くわかりません。

そのようなごく個人的な体験により、お姉さんが偶像でないかという疑問は、最初の喫茶店のシーンから出てきて、コーラがペンギンに変わったところで確信に変わりましたね。

普遍的なテーマに寄って考えると、幼少期は想像(内的)世界と現実(外的)世界が共存しているけれど、どこかで想像世界に踏ん切りをつけて現実世界のみを見るようになるということでしょうか。

小説を書くことでお姉さん的存在と問答し、離別した私としては、アオヤマ君がお姉さんに再会できるのは内的世界に向き合うかもしれない老後、究極的には死んだ時だと思ってしまいますが、そうやって大人になった自分にとって、彼には昔の自分を重ねてしまい、背中を押してあげたくなりました。{/netabare}

青春の原風景を見に行けた感じでしょうか。主人公の性格や豊かなお姉さんの憧れが真っ直ぐで、爽やかな満足感を得られました。

客観的にも、テーマが深くて濃いものである割に、テーマに対応するぎりぎりの低学年を主人公にし、愛くるしいペンギンを登場させることで巧みにカモフラージュされているので不快感はあまりなく、終盤はジェットコースターのようなアニメーションも堪能でき、楽しめる作品と思います。

(2020.6視聴)
(参考評価推移:4.3)

投稿 : 2025/04/19
♥ : 27

60.5 6 謎解きで小説原作なアニメランキング6位
デルトラクエスト(TVアニメ動画)

2007年冬アニメ
★★★★☆ 3.5 (58)
581人が棚に入れました
オーストラリアの人気ファンタジー小説『デルトラ・クエスト』がTVアニメ化!王家に伝わる七つの宝石がはめ込まれたベルトによって守られていたデルトラ王国。そのベルトが影の大王によってバラバラにされ、宝石を奪われてしまう。この危機を救うため、鍛冶屋の少年リーフは、仲間たちと共に宝石が隠されている七つの魔境を目指して旅に出る…。

声優・キャラクター
坂巻亮祐、高垣彩陽、屋良有作、伊東みやこ、池田千草、森田順平、斎賀みつき、銀河万丈、江原正士、中村秀利、堀内賢雄、郷里大輔、谷口節、近藤孝行、野島裕史、中島沙樹、稲田徹、間宮くるみ

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

豪日奇跡のコラボレーション!子供向け、通年モノとしては最高のクオリティを誇るハイファンタジーの隠れた名作!

原作はオーストラリアの児童文学


豪日交流基金やオーストラリア大使館からの援助を受けつつ制作され、土曜朝枠の子供向けのテレビアニメシリーズとは到底思えない異常に高いクオリティをキープしつづけた隠れた名作です!


4クール目に若干ダレましたがwそれ以外はお話も映像面も本当に高い水準を保っていました
4クール目(~52話)でお話は一区切りされ、5クール目(53~65話)に後日談的なエピソードが語られシリーズは幕を閉じます


物語の始まりの舞台となるのは七つの宝石がはめ込まれた『王家のベルト』の力で平和を守っていたデルトラ王国
しかし、ベルトの力を恐れた『影の大王』によって七つの宝石はバラバラにされ、世界各地に散らばってしまった


ベルトの宝石を集め、影の大王に対抗する力で再び王国の平和を取り戻すべく、デルトラ王の友人の息子である鍛冶屋の少年『リーフ』とデルの城の兵士である大男の『バルダ』にベルトの宝石集めの任務が言い渡される


旅の途中、様々な世界で出会う人々や自分達とは全く異なる部族の助けを借りながら宝石を集めるリーフとバルダ
森で出会った野生育ちの謎少女、『ジャスミン』も仲間となり、時には宝石の加護の力にピンチを救われながらも、迫り来る影の大王の手先や醜悪なモンスターの脅威を潜り抜け、時には謎解きに頭を悩ませたりもしながら、冒険の中で成長していく彼らの旅は続くのであった・・・


通年モノってことでちょっと長い作品ですが幾重にも張り巡らせられた伏線の回収が見所
旅の中で異なる七つの部族が影の大王打破とデルトラ王国の平和のために少しずつ協力的になっていく様は胸高鳴りますw
CGで描かれる巨大モンスターなども大迫力


監督にはクレヨンしんちゃんの最初期の監督を務めたことで有名な本郷みつる
キャラデザには本郷監督とは20年来のタッグを組むベテランアニメタの西村博之
実制作のスタジオにはポケモンなど通年モノやCGモノのノウハウがタップリ蓄積された超大手、OLM(オリエンタル,ライト&マジック)


声優陣も超脇役にくぎゅうや下屋則子さんを使うぐらいかなり豪華w
ですが一番驚いたのはやっぱり、当時“ド新人”だった高垣彩陽が初のレギュラーにしてヒロインのジャスミンを演じてたことでしょう
普通に上手いんでオイラはてっきりベテランさんなのかと思い込んで見てましたwww


主題歌もデフスターズレコーズ時代のAKB48が3~4クール目のOPにいたりとかレアな側面もありつつ、Sunbrainやホイフェスタなど5つあるED曲が“本当に全部名曲!”
極めつけは5クール目のOPにオーストラリアの歌姫、デルタ・グッドレムが起用されたことでしょう
当時は悪性リンパ腫との闘病生活から復帰したばかりの彼女の楽曲が、まさか子供向けアニメにタイアップにされるとはちょっと驚き!
これがまたええ曲なんです^q^


兎にも角にも【剣と魔法のファンタジー】がお好きな方はゆっくりでいいんでちゃんと最初からチェキっていただきたい!
オススメっすb


ちなみに数多くいるキャラクターの中でも『魔女テーガンと13人の子どもたち』がお気に入りw
37話のラストシーンは朝の出勤前からちょっと泣きそうになってますたよ^q^

投稿 : 2025/04/19
♥ : 17

ラスコーリニコフ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

65話まである

結構前に全部見た。確か内容は小学校~中学校位向け位
小さい頃アベルのやつやダイのを見てた時の懐かしさがある。

雰囲気で分かりそうだけど、萌えとかそーゆーのは一切無い、
もう単純にずっと冒険するだけ。昔のラノベのような、次々変わる
世界を楽しむ話。戦闘云々とかよりは冒険に力が入ってる
途中で主人公の立場が全然変わるけど、やっぱりまた冒険

無料動画で半BGMとして垂れ流してただけだが、凄い懐かしい感じ
あー・・冒険とかしてーなー・・もーそんな歳じゃねーな作品。


途中から出てくる魔女が濃いキャラなんだけど、それがダイの声の人
ダイとは全然かぶらないけど、ガラスの仮面の月影センセーとは完全に
かぶる。黒肌のヒロインは:高垣彩陽


あとね、ネリダ : 釘宮理恵

出てくるの最後の方で、何話かに一回くらいの割合で出てきた気がする
DQのゼシカっぽい素敵ビッチ。
今調べたら、髪下ろしてるけど出番多いのは63話っぽい。


作品全体として割と面白かった記憶があるんだよなー・・
ニコの古いRPG実況の長編物を楽しむよーな感じ

投稿 : 2025/04/19
♥ : 3

チキンたつた さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

小説とは違う作品

放送当時は小学生だったが、原作小説を読んだときのロードオブザリングのようなイメージに比べ、アニメが子どもっぽく、安っぽく感じた。原作の表紙の絵が好きだったから、モンスターのデザインが違うことにもがっかりしたおぼえがある。
だが今になって見かえすと、原作の雰囲気をうまく子ども向けにしていて、児童文学のアニメ作品でこれほど素晴らしいものはなかなかない。人気があったから1クール延長されたというのも納得だ。
作画はかなり安定しているし、話のテンポも中盤に少し崩れるが全体的にいいテンポですすんでいく。切り傷なのに血が出なかったりするなど残酷な描写を抑えるためか、少し不自然に見える場面もあるが、子ども向けアニメであるなら当然の表現だろう。
原作読んでいるものには物足りなく感じるかもしれない。そういう人はアニメは別の作品と考えた方が楽しめると思う。ドラゴンが全く出てこないことと、最後1クール分のストーリーは完全に蛇足なので私としては笛編、歌姫編も見てみたかったが、アニメは別作品と考えて納得しよう。
原作とのイメージのギャップという問題を除けば、単純なアニメ作品としては良作だ。原作の内容を少し忘れたくらいに見るのがちょうどいい。

投稿 : 2025/04/19
♥ : 1
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