記憶アニメOVAランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメOVAの記憶成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年04月08日の時点で一番の記憶アニメOVAは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

66.6 1 記憶アニメランキング1位
KEY THE METAL IDOL(OVA)

1994年12月16日
★★★★☆ 3.7 (69)
331人が棚に入れました
 科学者の娘をモデルに作られたキィが人間になるためにアイドルを目指す長編OVA。「うる星やつら」をてがけたスタジオぴえろが制作に携わっている。ロボットであるキィは3万人のファンを得ると人間になれると聞く。東京で再会した親友の厨川さくらと共に同居していたが、彼女の不思議な力に宗教団体やプロデューサーなど多数の人が惹きつけられていく…。
ネタバレ

芝生まじりの丘 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

感想垂れ流し

【よそ向けの紹介】
説明や紹介は少し難しいアニメ。アイドル物であるがアイドル物と聞いて想像する作品とは少し趣が違う。
あらすじをいうなら、機械仕掛けで感情がない所謂電波系の少女キイが田舎から上京し、大勢の人の思いを一心に集めるアイドルを目指す話。舞台は現代だが、影で軍事用ロボットを研究する機関との抗争が絡みSFチックである。
アイドル物とは言っても明るい青春成長物語ではないし、主人公が歌やダンスの練習をするシーンなど一切出てこない。伝奇、サスペンス、といった要素が強く、話を一貫するトーンはやや重く、暗い。エヴァに近い時代の作品ということもあり、歌や"アイドル"という媒介を通してのセカイ系的な部分もある。
パーフェクトブルーやlainなどと比べるとどこか薄っぺらな部分がありB級エンターテイメントな感は否めないが、何か作り手の野心、エネルギーのようなものは感じる。

少し重めの90年代伝奇エンターテイメントを見たいのであればオススメする。
個人的には結構気に入った。

【総評】
最初の1,2話くらいでは30000人の友達を作るだとか、アイドルを目指すというような目標設定が目につき、面白くなるだろうとはあまり思えませんでした。というのも私には30000人の友達を作るなどというのは一般的な価値観から行ってあからさまに無意味でバカバカしいことに思えました。それに私は少しひねくれているので、アイドルをひた向きに目指す過程で機械仕掛けの感情のない少女が心を取り戻していく、というような純粋な話にはおそらくついていけないと感じました。
しかし3話以降これは"アイドルを目指す"とは言ったものの人間的成長なんてものはあまり考えておらず、伝奇やサスペンスなどの要素がより強い作品なのだと理解し、そういった要素と、"アイドル"の不思議な取り合わせから、作品が好きになっていきました。
物語の進行については論理的に脆弱な部分が多くあり、話に出てくる要素は、チンピラ、新興宗教や超能力、影で悪質な軍事研究をする大企業といったありきたりなもので、終盤明かされる設定も奇抜なものではなくB級作品に留まるとは思いますが、全体を漂う雰囲気や個々のキャラクタは割と好きでした。
特にツルギは私が好きなタイプのキチガイキャラで見ていて気持ちよかったですし、終盤のミホとのやりとりの場面はこの作品の白眉だと思います。ただし私にとってこの作品の最高潮はそこの場面で終わり、逆に14話後半以降の終盤は大して面白みを感じられませんでした。
{netabare} トモヨとタタキの長舌設定語りは、「人形を操る祭事の歓楽ための巫女」という設定だけは面白かったものの基本的には面白みがなく、その後のサクラ奪還をして失敗をする流れはとってつけたクライマックスのようで何の面白みも感じられませんでした。{/netabare}それでも最終話の最後{netabare}のライブ{/netabare}の場面は、{netabare}少し荒っぽいものの、パプリカのような現実と虚構の混濁、舞台演出と現実ドラマの混濁が心地よく、{/netabare}そこそこ良い余韻でした。{netabare}最後ミホの病室を訪れるシーンはパーフェクトブルーでミマが精神病院を訪ねるシーンが思い出されました。考えてみればこのアニメの完結が1997年6月、パーフェクトブルーの初公開が同年7月であり、両者は全く同時代の作品です。{/netabare}
この辺の時代のアニメは好きですが正直あまりたくさんの作品を知っている訳ではないのでもう少し色々見てみようかなと思いました。(今のアニメを追うのには少し疲れてしまいました。)



以下自省的内容
{netabare}
【時代の好みについて】
私は汚さ、醜さの中にあるある種の美しさというものが結構好きです。スプラッタのような鮮烈なグロテスクではなくてもっとぎこちなくて人肌の温度のグロテスクが好きです。ぎこちなくてしどろもどろで言葉数の少ない感情表現が好きです。押井守ほど恣意的でない限りは物語が停滞していくのも好きです。陰気なオタク界隈においてもなおさら陰気なものが好きです。特に陰気だけれど何か素直で素朴なものが好きです。
そういう点において19990年代から2000年代のアニメが僕は好きなんだと思います。アニメは時代に憑かれる生き物であの時代のアニメはあの時代にしかなく、今のアニメもまた今の時代にしかありません、それは少し寂しいです。自分はその時代をリアルタイムで追っていた人間ではないので少し羨ましくもあります。

【電波系少女】
電波系、という言葉はもう廃れてしまいましたね。それだけ電波もネットもありふれたものになりました。神秘的な女性、というモチーフ自体は大昔から物語では定番であったように思います。得体の知れない美女への憧憬、というのは例えば高野聖だとか、竹取物語なんかがそうですし、海外の小説でも気の触れた妖精に対する恋、というのは定番の一つでありました。
異性に対する未知がそういうフェチズムを産むのでしょうか。
奇妙な言動を白痴の愛嬌や愚鈍さの象徴としてではなくて、底の知れなさや得体の知れなさを表すものとして使うのは私は好きです。


【オカルトする科学】
オカルトや都市伝説、正体の見えない噂話、といったものも20世紀末を表すキーワードだと思います。
都会のネオンと科学の発展が多くを光の元に晒していく中で、残る闇の存在感はむしろ際立ちました。また、急速に進む科学の発展自体が怪物のように見えたのかも知れません。
そのような恐れも今はほとんど駆逐されました。
科学の中に潜む病魔は原子力の問題や環境問題といったふうに明確に形を持ちました。
人は科学や機械に慣れ、溶け込みいちいちそれをそれと認識することをしなくなりました。都会のギラギラしたネオンはもっと優しげで無垢な顔をした明かりに取り替えられました。

現在ではテクノロジーはよりスマートな形へと変容を続けていますが、この時代には科学の進歩はもっと巨大で大きな力を持ち未知でグロテスクなものと表現されていました。

肥大した機械・テクノロジーが血肉をまといグロテスクに行進する、というのはこの時代の一つの信仰だと思います。
有機的な人型ロボット兵器というものはあまりに使い古されてしまい食傷気味ですが。
ぎこちなく人形じみた滑稽な振る舞いをより強調するとより面白かったようにも思います。

【アイドルファンクラブ会長】
このアニメで不思議と感じた点の一つがアイドルファンクラブ会長のタタキのキャラクター造形です。彼は私のアイドルファンクラブの会長という肩書きから生じるイメージとはまるで違う健康的な好青年として描かれます。実際のアイドル界隈のことなどまるで知らないのでわからないけど、そういうキャラクタをここに持ってきたのは少し面白かったです。そもそも女性アイドルというもののイメージが世代的に自分だと橋本環奈とかAKBとかくらいしかないので、ここで描かれるクールビューティで貪欲に成長した逞しい大人のアーティスト、というアイドル像は私にとっては到底持ち得ないものであり不思議に思えました。


【メモがわりの箇条書き批評】
{netabare}
・好きな点
-戦闘用ロボットがフィーチャーされながら戦闘の要素を抑えている。
-ツルギとかいうキチガイ枠を用意しており、見ていて気持ちがいい。
-サクラとタタキの所謂1世代前のサッパリした青春像
-虚構と現実が入り混じるような描写を素朴にやっている
-キイが自身の体の機械仕掛けを反芻する時の演出などいくつかの演出
-明確な語り手を置かない群像劇よりのスタイル

・好きでない点
-最終話一歩手前での30分以上に及ぶ長丁場の解説には少し辟易した。3代にわたる家族の歴史が一挙に口頭で紐解かれるのだ。情報量が多すぎる。伝奇モノらしいといえばそうなのだが。別に全てを克明に知りたいとも思わなかったのでもっと断片的に明かして煙に巻くくらいで良かった。 {netabare}そもそも田舎の伝統文化とかで解決するのも食傷気味なので改めて長く語られるとうんざりする。{/netabare}
それはそれで伝奇モノらしい、といえばらしいのだろうか。
ただし本来は26話で終わるはずが15話(映像時間的には21話分くらい)で打ち切りされたらしいのでそういうところも大きいのかも知れない。
-{netabare}サクラとツルギがびっくりするくらい割とおざなりな感じで死ぬ。{/netabare}
{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2025/04/05
♥ : 1

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

中途半端なのが良かったかも。トリップするような感覚です。

 今更本作が配信されたのに少々驚いています。知る人ぞ知る作品の位置づけだったし、2000年代に本作の話題をアニメ関連の記事で見た記憶はほとんどありません。

 ですが、今回再視聴してその雰囲気やアニメの出来が優れていて驚きました。本当に丁寧な作りで、画面だけで作品に引き込まれます。この点が本作の最大の魅力でしょう。セルアニメの持つ色彩の豊かさで表現した暗い画面が非常に美しい作品です。サブキャラのキャラデザはテンプレ感があって魅力的かと言われると微妙ですが、ヒロインのキイはなかなか独自性がある気がします。

 1994年から順次発売されたOVAですね。私は多分2000年前後に見たと思います。中途半端なストーリーになっている感じがするのは本来2クール作品だったようです。人気のせいか制作体制のせいかわかりませんが、15話とかなり短いところで終わっています。そのせいで、テーマ性の残滓は見えるのですがテーマは喪失しています。そして、恐らくはアイドルになるプロセスがもっとあったんだろうなと思うのですが、本作ではアイドルとしてのキイの活躍はほぼ描けていません。ただし、ラスト2話が駆け足ではありますが、中途半端なりにちゃんと完結していますし、カタルシスがあります。

 友情とか過去の因縁とかは描いているようで描き切れていません。駆け足だし、そもそもキイとサクラの友情…というか、まあ、ネタバレなのでやめておきますが、2人の関係性もまったく描写は不十分です。

 ただ、私はこの中途半端感が不思議な効果を出していると思います。ちょうどこの翌年のエヴァンゲリオンがそうだったようにです。訳のわからない世界観という意味での世界系としてはエヴァを先取りしています。ロボットと人間の精神的融合とか心の世界を描いている点もエヴァ的です。またオカルトなのかSFなのか境界線のような感じに「シリアルエクスペリメントレイン」との類似性も感じます。
 
 アニメでアイドルを扱うのはマクロスやクリーミーマミなどがありますが、本作においてアニメ内のアイドルをアイドルキャラとして楽しむような内容ではありません。SFとしてバーチャルアイドルにアイドルの裏の顔としての人間の欲望や業のようなものを描いています。

 この辺のバーチャルアイドルをネガティブに扱う感じは「マクロスプラス」との類似性を感じます。数か月差で「マクロスプラス」の発売が早いですが時期的には近接しており模倣というより、時代の流れでバーチャルアイドルがSF的発想としてリアリティがあったのでしょう。

 全体としてテーマを読みとるよりも、不思議な暗い雰囲気に埋没するのがいい作品です。違う世界にトリップする感覚ですね。サイバーパンクではないのですが何かそういう独特の世界観が構築できていて、その意味でアニメのレベルは相当高いので一見の価値はあると思います。

 評価は…そうですね。作画は4.5かなあ。色彩や線、撮影は本当にいいんですけど、ちょっと動きが乏しい部分があるので。ストーリーは中途半端ですが展開が良いので3.5。キャラはキイはいいんですけど、サブキャラのバックボーンが甘いかなあ…4にします。音楽・声優は調整で4にしておきます。これで全体で4ですが、それよりも満足度は高い作品です。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 4

ソーカー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

友達3万人出来るかな?ひたすら不気味なロボットアイドルミステリー

主人公の巳真兎季子は、自身を祖父の武羅尾に作られたロボット「キィ」だと信じていた。
「本当にキィを思ってくれる友人を3万人集めれば、キィは人間に生まれ変われる」
という祖父の遺言を実行するべく、キィはアイドルを目指すのだが様々な奇怪な事件に遭遇する
展開が進むごとに深まる謎、事態は混沌していく・・・

OVA全15話、うち14話と15話は95分の超大作
ここまで力の入ったOVA作品ってなかなか無いですね

ジャンルとしてはSFミステリー?でしょうかね?
SFというには、ちょっと設定に甘さがあるので(かなり興味深くはあるが)
謎に満ちたミステリーとして見るのがいいでしょう。
ちょっとグロいシーンもあるし、終始不気味。
人を選ぶ作風なので、一話でダメだと思ったら素直に切りましょう。

この作品は序盤から設定や状況を十分に説明せず、ポンポン話が進んでいく
それでいて不気味で暗い雰囲気、謎だらけのまま13話まで続きます。
13話までに色々なヒントが隠されていて、13話までが出題編とも言えるでしょう
14話が解答編で15話で一気にラストへ突っ走る。
謎を謎のまま終わらせず、ちゃんと解答を用意しているところはいいですね。
こんな面倒なストーリー構成さえしなければ、もっと支持されたはずなのですが
敢えてそういう作りをしている作品みたいですw

ストーリー自体はかなり練り込まれていて、難解というわけでもないのですが
視聴者が積極的にのめり込んでいかなければ、なかなかついて行きづらい作品です
キャラも演出もストーリーも何もかもが異質。それゆえに、決して万人受けはしません。
謎の展開、不気味な雰囲気を噛みしめながら、
物語に入り込んでいける人でなければ楽しめません

この作品の出来が良いか悪いか・・・判断は難しい
種明かしもちょっと強引ですし、娯楽性に欠けると言わざるを得ない。
しかし、練り込まれたストーリー・独特の世界観・オリジナリティという面でみれば
突き抜けた魅力があって、よくぞここまで作りあげたなと・・・・賞賛したい。
深いテーマ性も潜んでいる作品で、色々と考えされられることもある。
他の作品には絶対にあり得ない魅力が詰め込まれています。

「KEY THE METAL IDOL」という作品は「KEY THE METAL IDOL」という作品を本当に愛している人に捧げる
そういった制作者の意図が明らかに感じられる作品で、はなから大衆受けを狙っていません
そういう意気込みで、これだけの大作を作り上げたというのは本当に凄いと思う

コアなアニオタのなかでも一際コアな人におすすめする作品です

投稿 : 2025/04/05
♥ : 12

73.0 2 記憶アニメランキング2位
planetarian ~ちいさなほしのゆめ~(Webアニメ)

2016年7月7日
★★★★☆ 3.8 (522)
2418人が棚に入れました
世界大戦後の降りやまない雨の世界。細菌兵器の影響で、人々に見捨てられた最も危険な街【封印都市】。その、デパートのプラネタリウムに、ロボットの少女がいた。彼女の名前は“ほしのゆめみ"。彼女はプラネタリウムの解説員で、1年間にたった7日間しか稼働することができない壊れかけのロボットだった。そこで彼女は、30年間いつか誰かが訪れることを信じて、1人誰もいないこの世界で待ち続けた。そして、30年目の目覚めたその日に、彼女の前に1人の男が現れた。「おめでとうございますっ! あなたはちょうど、250万人目のお客様です!」突如現れたロボットに警戒する男・“屑屋"。貴重物資を回収することを生業とする彼は、【封印都市】に潜入中、都市を徘徊する戦闘機械(メンシェン・イェーガー)の襲撃にあい、このプラネタリウムに迷い込んだのだった。「プラネタリウムはいかがでしょう。 どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき……。 満天の星々がみなさまをお待ちしています」星すら見えなくなった滅びゆくこの世界で、彼はそこで何を見るのか。1年で7日間しか稼働できないロボットの少女が、目覚めたまさにその日に訪れた偶然。そこで起こった奇跡とは――。

声優・キャラクター
すずきけいこ、小野大輔、櫛田泰道、滝知史、佐藤利奈、篠塚勝、福沙奈恵、日笠陽子、津田美波、石上静香、桑原由気、竹口安芸子、大木民夫

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

壊れているのは誰であったか? 壊れてしまったのは何であったか?

planetarian
プラネタリウム内で星空について解説を行う人を表す言葉
プラネタリウム解説員、星空解説者等とも称される。

ゲームが発売されてプレイした当時、私は初めてこの言葉とその意味を知りました。
一介のplanetarianであるほしのゆめみが願った事
その願いの行き着く先に何があるのか…
それが気になってしまった時点で、私はこのゲームの虜になっていたのでしょう。
物語を進める手が止まらず、最後に一息付いてしまう程、夢中で読んでいたあの時の事は未だに覚えています。

それから、満を持して配信された今作『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』
ゆめみちゃんが動いてる!!
屑屋に絵が付いてる!!
と、最初はファン的思考で存分に盛り上がったのですが、観ていく内にプレイした当時の感性が見事に甦って参りました。
1番危険なのはロボットに出会った時と肝に銘じていても、心動かされずにはいられない、屑屋の人間的心理
人間の忠実な僕として全うする事に生涯を捧げた、ほしのゆめみのロボット的心理
対極的な存在の1人と1機が出会って、心移りしていく人間といつもと変わらないロボットの対比が最初はとても悲しかった…
しかし、その感覚にコペルニクス的転回が生じるのは、話も中盤に差し掛かってからの事
ゆめみちゃんは決して変わらない。
こちらがどんなにその日その時の気分で相手にしても、彼女はいつも穏やかで心優しく、人間の為に尽くそうとしている。
変わらない存在と言うのは、確かに私達人間からするなら、「気味が悪い」「悲しい」等の気持ちに陥る事もあるかもしれません。
しかし、死んでしまいたいと思ってしまう程、嫌な事があっても、もう続けていられないと感じる程、苦しい事があっても…
花菱デパート屋上プラネタリウム館に行けば、必ずそこに彼女がいる…
決して変わる事のない、同様の明るい笑顔で私達を出迎えてくれる…
変わらない存在と言うのは、人間にとってはネガティブ要素も含んでいる物です。
しかし、同時にそれは、どこかホッと心安らぐ存在でもあるのではないでしょうか?
最終話のあのシーンで私はどこか、そんな感傷に陥ってしまいました。
彼女の「思い出」がたくさん詰まった振り返り描写
彼女が1人の人間のように感じられたあの描写
ゆめみちゃんの全てでは無いにせよ、送ってきた日々に触れ、そこで分かる、彼女のずっと変わっていない優しさの結果
それは人間に愛され、感謝される彼女の姿
あそこで嘘ではない、穢れていない「真の感情」が私に届いたのかもしれません。
大変、感無量と言える作品でした…

そして劇場版の『planetarian~星の人~』
この映画は総集編+αと言った感じで、総集編部分は配信アニメと異なった演出、作画こそ成されていながらも、ストーリー展開は実質同じ
既存映像7割、新規映像3割で構成された映画です。
新しい映像がそれだけと言う事に、行く気のしない人も、もしかしたらいるかもしれません。
しかし、断言します。
その3割の映像を観る為だけに、映画館へ赴く価値は十分にあると!!
近くにいてくれる誰かは現在、存在しない。
独りで世界中を旅し、世界の美しさを語ってきた星の人にとって、誰かと共に生きた思い出は大変貴重な物
孤独と向き合った彼の心の支えとなった唯一の物が、彼女との過去であり、約束だった。
ゆめみちゃんの様に「思い出」を記録する事なんて、人間には出来ない。
しかし、大切な記憶だけを取捨選択して留めておく事は出来る。
それが星の人にとっては彼女との「思い出」であり、「約束」だったのです。
誰かが傍にいるのが当たり前でない社会だからこそ、世界凶変で狂った世界だからこそ、それは前に進む原動力となる。
そして、その小さな力が1つの系譜を紡いでいく…
自分自身の為に、3人の子供達の為に、そして彼女の為にやった事が報われていった展開には終始、涙が止まりませんでした…
屑屋改め星屋の彼が贈る物語、とても心に沁み渡る物だったと感じます。

思えば、初めてこの作品に触れた時から約10年の月日が経ちました。
当時、アニメ化決定の朗報を聞いた時は嬉しく思うと同時に、ある1つの疑問が湧いてきた物です。
「何故、今更このマイナーな作品をアニメにするんだろう…?」
私の様なゲーム時代を知る物からしたらビッグニュースでしたが、あまりに驚きすぎてそういった不思議感覚で埋め尽くされるのも致し方ない事
確か、その時はアニメをやる球が無くなってきたからだろう…と言う、如何にもネガティブな理由で思考を中断したのです。
しかし、劇場版まで見終えてようやく「現在」「この時代だからこそ」アニメにした理由が分かりました。
作中で繰り広げられている世界は、私達が生きている世界の「現在」であり、「未来」なのですね……
現代世界に生きる私達も主人公である彼と同じ
今の私達は屑屋であり、星の人であり、planetarian(惑い人)なのかもしれません。

今作を振り返って観て、改めて私は思います。
本当に壊れているのは、誰なのか…
本当に壊れてしまったのは、何なのか…
自分でそう豪語するゆめみちゃんでしょうか?
汚い事をしていかないと生きていけないと語る屑屋でしょうか?
人類全体、ロボット全体、それとも作中の世界でしょうか?
もしかすると、誰も、何も壊れていないのかもしれません。
この『planetarian』と言う作品を見終わった方はそれぞれ、特有の想いがあるかと思います。
その想った事、考えた事をどうか、決して無駄にしないで欲しい。
過去の「思い出」として置いておくのではなく、星の人の様に現在まで続く「記憶」として生き続けて欲しい…
偉そうな事は言えない私が、観た方に贈るたった1つの「願い」です。
このアニメと映画、共に私の胸に永久に留まり続ける作品となるでしょう。

最高のアニメをありがとうございました…

PS.
映画館へ行ったならパンフレットは必須!!
また、ドラマCDを聴くか、小説版を読むかで詳しい描写、ゆめみちゃんのお仕事記録、教会にあったロボットの意味、そして星の人以降の話が楽しめます!!
興味のある方は是非…

投稿 : 2025/04/05
♥ : 13
ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ゆめみのこころ

プロローグ(公式サイトより)
{netabare}
舞台は近未来。
全地球規模の人口超過と宇宙開拓の破綻が原因で、30年前に世界大戦が勃発。人口は激減し、厚い雲で覆われた地表では、止むことの無い雨が降り続いていた。

そんな世界にある自律型戦闘マシンが跋扈する危険な都市を、一人の男が訪れた。そして、身を隠すために侵入したビルの中で、ある施設を発見する。
プラネタリウム──昔、満天の星々を眺め人々が心を癒やした空間。そこで彼を一人の少女が迎えてくれた。
少女の名は「ゆめみ」。30年もの間、訪れる人が誰もなかったプラネタリウムで、客を待ち続けていた解説員ロボットだった。

彼は「ゆめみ」に乞われるまま、動かなくなってしまった投影機を直すために、時を忘れて修理を続ける。降り続く雨のなか、静かに流れていく「ゆめみ」と彼の日々…。

遠い郷愁のような毎日が彼の心を揺り動かす。人工の星空に、彼は何を想うのか?
そして「ゆめみ」の運命は──?
{/netabare}

感想 (ネタバレを多量に含みます)
{netabare}
【導入~屑屋の主人公はゆめみと出会い、プラネタリウムを修理する】
屑屋と聞いて、「井戸の茶碗」が頭によぎりました。まあ全く関係ないんですが。

さて、ほしのゆめみについて。

まず、ロボットと人間、そのズレ。主人公との会話中にもそのマニュアル的な対応が目に付き、感情表現はありますが、人を疑うということを知らない。そうすることはプログラムには無い。人のために作られて、決して人に危害を与えない過去の遺物は主人公にどう映ったのでしょう。

「はい、少しだけ壊れています」この言葉はガラクタの花束を主人公に渡した時の言葉です。確かにガラクタを渡したり、同じことを繰り返したり、壊れているように見えます。ですが、彼女が自分を壊れているとしたのは、それが理由ではなかった。

次に屑屋の主人公

性格は現実的で、余裕が無い感じ。
導入部分ではゆめみに対して、ロボットだからしょうがないか、どうせ理解できないだろうという感じです。
そんな主人公が、なぜかプラネタリウムを修理し始めます。

【プラネタリウムは直り、ゆめみは星空の世界への案内を始める】

主人公はゆめみとのやりとりで少しずつゆめみの事が分かり始めます。

少しずつ主人公はゆめみに対しての考え方が変わっていく。

館長たちは旅行に行って帰ってこないのだと信じるゆめみに、イラつきを覚える。
どうしてでしょうか。廃墟と化した都市に人が戻ってくることは無いと主人公は知っています。ゆめみがどんなに人間の帰りを待っていた所で、無意味になってしまうし、館長たちは捨てていったのに、こんなにも帰りを待っていることに、それはおかしいと怒りのようなものが沸いたのでしょうか。

ロボットは与えられた業務をこなすだけだと分かっているはずなのに。

一度は直ったプラネタリウムでしたが途中で電力の消失により、力尽き、ゆめみの案内を頼りに主人公は星を思い浮かべます。明瞭で、とても楽しい時間が流れます。

「神様、天国を二つに分けないでください」
ゆめみの願い事は死後の世界があるなら、ロボットと人が一緒になって、また私は、人のために働きたい、そう願っています。ゆめみは本当に人が好きなんだなと思えます

【廃墟の都市からゆめみを連れ出そうとするが、道中でゆめみは壊れてしまう】

一度はゆめみをおいて、廃墟の都市を抜け出そうとします。ですが、この廃墟の町で彼女を置いてきぼりにしていいのか?ゆめみがここにいても、客はもう二度と来ないだろう。彼女にまたプラネタリウムを案内させたい。

それくらい、主人公はゆめみに情が沸いてしまいました。

主人公はゆめみを連れ出します。どんなにゆめみが歩みが遅かろうと、その歩調に合わせて共に歩きます。

そして道中に、戦闘ロボットが現れます。主人公はゆめみを隠し、ロボットに戦いを挑みます。その最中、この都市を抜けた後、ゆめみとどう生きていくかを考えます。それは、とても楽しそうなゆめみとの将来です。

主人公は一旦は首尾よくロボットを破壊しましたが反撃により足をやられてしまいます。そして、戦闘ロボットに近づくゆめみ。戦闘ロボットがゆめみに気を取られた一瞬に、主人公は戦闘ロボットを破壊します。
どうして隠れていなかったかと問われるとゆめみは
「私達ロボットは人の幸せに作られていて、彼(戦闘ロボット)もほんとうはあんなことしたくなかったはずです」

ここでちょっと泣きたくなりました。ロボットは人の幸せのためにつくられている、そのルールから、そうプログラムされているだけだったとしても、ゆめみはロボットの心を思いやった。それは、ロボットとして必要なことなのか?
このとき、ゆめみのなかに「こころ」があるような気持ちになりました。

ゆめみは無くなっていく時間の中、走馬灯のように、来店したお客様を思い浮かべます。それは、プラネタリウムを見た人たちとの思い出。人が幸せそうにゆめみに話しかけている、楽しそうな思い出。

ゆめみは自分のプログラムが壊れているから、もう人は戻って来ないという結論を出しているんだと、思っていました。プログラムを否定する、人を好きというプログラム。それは、本当にプログラムなのだろうか?心なんじゃないだろうか。

ゆめみは嬉しいはずなのに、泣く機能があったら泣いているでしょうと言います。
心があるのだとするなら、別れに対して、心が泣いているんだと、そう思いました。

{/netabare}

長文を読んでいただきありがとうございました。とてもいいアニメでした。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 24
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

壊れてしまった世界の中で心を探す二人の物語

もしかしたら、そう遠くない未来の世界のお話。廃墟の中で出会った青年とロボットが心を取り戻し、見つけていく物語。主人公は名も無い※1屑屋の青年。人々から見捨てられた場所「封印都市」でロボット"ほしのゆめみ"と出会います。

ゆめみさんはプラネタリウムのアナウンスロボットという事もあって、他作品で描かれるロボット-人間と比べなんら遜色の無い、あるいはそれよりも様々な面で勝っている万能ロボット-と比べて性能があまり高くない様です。歩く事に関しても、基本的にプラネタリウムから外に出ず、平らな床のみを歩く事を想定して作られているらしく、段差などがあるとすぐに転んでしまいます。(でも階段は下りられる。瓦礫とかが苦手。)他の運動能力も人間の水準よりは劣る様に見え、私達のいる現代のロボットの延長上にあるかも知れない、未来のロボットという印象を残します。

また、ゆめみさんは、それほど高度なものではないものの、AIを搭載しているらしく、経験によってちょっとずつ学習でき、意思や感情の芽生えとも取れる成長の兆しも見受けられます。そんななので私は赤ちゃんを見守っている様な目で、ゆめみさんを応援したくなる気持ちになってしまいました。

屑屋の青年との邂逅を経て、時間をかけてゆっくりと変化するゆめみさんの一挙手一投足は繊細で愛おしい。登場時では、本当に、本当に、本当に語彙の乏しかったゆめみさんも、経験を積むにつれ、選ぶ言葉にも変化が表れ、他者に対する思いやりもプログラムされた一方通行なものではなく、柔軟な形に変化していっている様子が見受けられました。生身の人間にしたってすぐには変われないもの‥。あるきっかけを境に劇的な成長を遂げるドラマチックな描写も作品によっては楽しいものですが、人が、ロボットが、一歩一歩着実に成長する姿や、3歩進んで2歩下がる成長の軌跡を見守るのも私は好きです。多分わたしは酔っているのだと思います。

ゆめみさんの持つ穏やかで優しげな物腰は予めプログラムされたものを規範としている様ですが、スリープ前にゆめみさんに優しくしてくれた館長さんたちからの影響も少なからず受けている様に思えました。

屑屋の青年については、初対面のゆめみさんに銃を向けたり、ゆめみさんの"イエナさんです"という言葉を聞いただけで、恐れ身構えたりするなど、※2数々の死線を潜り抜け、神経過敏になっているぴりぴりとした心情が見て取れました。荒廃した「封印都市」で生き残る為に身に付けた必然の反応だったのかも知れませんが、よく言えば警戒心が強く抜け目が無く、悪く言えば人を信用出来ず、怖がりである人の特徴であるとも言えます。ゆめみさんだけでなく彼の成長も同じく、温かな目で見守って行きたい気持ちになれました。いつかその険しい顔つきが、笑顔に変わる日が来る事を願いたい。

表題が暗示する美しいプラネタリウムの描写、朽ち果てた都市の残骸の描写、作中音楽として流れた、いつくしみふかき{netabare}と最終話の星めぐりの歌{/netabare}など、世界観の表現も儚くも美しく感じられ素晴らしかったです。

屑屋さんとゆめみさんと一緒に歩んだ短い旅の記憶は、一生忘れえぬ思い出となり、私の心に残り続けるでしょう。夜空の星を見上げる時、星の世界に想いをはせる時、泣いてしまいそうになる理由がまた一つふえてしまいました。

ゆめみさん、屑屋さん、ひと時の夢を見せてくれてありがとう。


※1:いわゆるジャンク屋の様なもの。荒廃した都市から使えるものを回収し売却する事を生業とするらしい。

※2:屑屋の青年、かなりの手練です。後半に登場するロボ、シオマネキの(恐らく)行動予測による先読み掃射を反転移動で何度も回避してました。臨機応変な思考の出来る人間相手や高速思考の出来るロボには通用しない回避方法ですが、この世界のロボの性能、行動パターンを熟知した上での戦い方に見えました。この場面から見出される様に、シオマネキの思考の柔軟性、反応速度が生身の人間のそれと比べて劣る部分もあるという所からも、本作に登場するロボたちが現代の延長上のロボである事、ゆめみさんとの共通点を感じさせます。

※:暗視ゴーグルを始めとする屑屋の青年の装備、風貌、メカのデザイン、荒廃した都市と雨、空っぽの二人の出会いなど、往年の名作ロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」を思わせました。でも本作「planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜」は活劇描写を極力廃し、屑屋とゆめみさん、二人の成長や歩み寄りを静かに描く作品の様です。Wiiゲーム「FRAGILE ~さよなら月の廃墟 ~」も思い出しました。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 39

68.8 3 記憶アニメランキング3位
進撃の巨人 「Wall Sina,goodbye」(OVA)

2017年12月8日
★★★★☆ 3.7 (76)
317人が棚に入れました
 その日、アニ・レオンハートは兵舎で目を覚ました。非番の朝の完璧な目覚め。しかし、ささやかな解放感はすぐにため息に打ち消された。明日に迫った任務を思い出したために・・・・・・。
 「調査兵団の第五十七回壁外調査中に、エレン・イェイガーを捕獲する。」
 ”任務”を目前に控えた少女が体験する、誰も知らなかった物語。

 原作本24・25巻同梱のOVA。
 テレビシリーズの16・5話に該当。全2話 48分

たわし(爆豪) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

外伝ながら「フィルムノワール」をしている

諫山さんの「進撃の巨人」は徹底して人間を「悪」であると捉えている。

それはキャラクターからにじみ出てくる一切の同情の余地を見せないエゴイズムの塊を見せられているからであり、

「デビルマン」はもちろんのこと「寄生獣」「エヴァ」「デスノート」とこういう漫画の分野にも思える。

原作における、「アルミンを助けるのか。エルビンを助けるのか。」問題も、「妹を犠牲にして、兄が生き残る。」問題も、リーマンショック後の不経済による2000代後半から浮上してた「囚人のジレンマ」そのものである。

キャラクターの行動も思慮深く、まるで1800年代のイギリスや、1930年代のアメリカのような暗く陰鬱で先の見えない感覚が支配している。

本作も外伝でありながら、原作の序盤の仕掛け人である雌型の巨人アニ・レオンハートの内面を表現しながらも、作品に漂う人間不信そのものは全くと言っていいほど変わっていない。

非常に複雑な構成のように思えるが、実は発想の奇抜さやダイナミックさよりも、理知的に冷静に社会を見据えているだけ気が楽というものである。

「進撃の巨人」も最初は奇抜な設定でウケていた気がするが、実は蓋を開けると理論的に構成されたテーマや設定が土台を覆っている堅実な作品だと思う。

その理知的な様子が本作でも生かされているので、深みがあるように思えます。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 9
ネタバレ

やまげん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

本編とあんまり関係なし

なぜかNHKで放送していたので視聴。

{netabare}見る前から、本編の出来事の裏側でアニがどうしていたか、を描く物語かなと思っていた。それはそれで間違いではないが、本編とはあまり関係ない火曜サスペンス劇場的なストーリーだった。

本編と関係があったのは、アニたちがマルコから立体機動装置を奪い取ったシーンが描かれていたことくらい。それで、アニがマルコの遺体に対してごめんなさいって謝ってたのかーと合点がいった。

アニの父親との関係の描写は、微妙な小出し加減ですっきりしなかった。{/netabare}

ED曲に聞き覚えがあるけど、この曲女性ボーカルだったっけ?と思って調べたら、曲はエレンが大岩を持ち上げて壁をふさぐときにかかっていた曲で、このときは男性ボーカルだった。アニが主役だったことに合わせて女性ボーカルバージョンを作ったということだろうか。歌詞の内容はアニの境遇や心情とは全然関係なさそうだが。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 3

62.1 4 記憶アニメランキング4位
3×3 EYES-サザンアイズ(OVA)

1991年1月1日
★★★★☆ 3.3 (39)
260人が棚に入れました
普通の高校生・藤井八雲。ある時彼は三只眼吽迦羅という妖怪の少女・パイと出会い、彼女と同様に不老不死となってしまう。だが、不老不死の体は永遠の寿命のためにやがて無気力無関心無感動となってしまうため、2人は人間となるために冒険の旅に出る。

Dkn さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

「三只眼吽迦羅」を読める人は私と同じ「无」ですね。

よく原作ファンからはキャラクターデザイン等の面で
良い評価を受けないOVA「3×3 EYES-サザンアイズ」ですが
アニメファンや業界内で高い評価を受ける名作でした。

しっかりとした実力に裏付けされるデザインのため、
同時期のアニメのデザインと比べ、今でも衰えない。

日本のアニメ業界において外すことの出来ない
アニメーター『新井浩一』の作監によるOVAで、
原作のストーリー序盤(当時未完)を全4章で制作された。

※新井浩一
東映動画出身のフリーアニメーター。

ゴリゴリ動くリミテッドアニメーションを得意とし、
「AKIRA」「老人Z」「マクロスプラス」
「攻殻機動隊」「イノセンス」「新世紀エヴァンゲリオン」
その他、主に劇場作品などに参加する
日本の主力アニメーターの一人。
作監、キャラクターデザインなども手がける。


作者の高田裕三は永井豪作品の大ファンであり
特に「デビルマン」の影響を多大に受ける。
好きが高じ、デビルマンのサウンドトラックCDの
ジャケットを描き下ろしたこともある。

その為、この「3×3 EYES-サザンアイズ」にも
イズムは受け継がれ、人間と化物の狭間で揺れ動く葛藤や
生物としてのあり方がテーマとされている。

暗い過去を持つ人物やテーマ性の反面、
明るさが最大の魅力で、終始コミカルさに溢れる。

物語は、
放蕩親父のせいで、
歌舞伎町のオカマバーで働く主人公“八雲”と
不老不死の秘術の謎を知る娘“パイ”が

夜の街で出会いを果たす所から始まる。

街に現れる巨大生物など、
原作漫画には映像的な表現がこれでもかと
つめ込まれていて、アニメにおいても
よくぞここまでと思うほど落とし込まれていた。

惜しむらくは場面によって原作に負けてる点。
だがそれと同じくらい原作に優るシーンも有る。
映像の丁寧さは折り紙つきで、文句のないアニメ化。

数あるOVA作品の中でも特筆すべきものだと思われる。


なんだかんだ一番嬉しかったのは、
キャストの声がイメージにピッタリなことですねw

不死身の主人公と、
可愛い2面性ヒロインをお楽しみ下さい。

投稿 : 2025/04/05
♥ : 14

おんじい さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

三つ目の美少女は魔性の女ですね。

このOVA第1シリーズは、原作の1巻から2巻までの内容となっています。
分類的には冒険伝奇物か、ダークファンタジー系になるのでしょうか。

原作の漫画を学生の頃よく読んでいました。
三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)とか无(ウー)など難しい言葉を
読み仮名なしで読めるようになれたのもこの漫画のおかげでした。
土爪(トウチャオ)ぐらいなら使えるんじゃないかと錯覚した、
黒歴史を築いてくれた漫画でもあります^^;

今思うと、パイはツンデレに八重歯、2重人格と
今のアニメのヒロイン要素をすべて含んだ、初代萌えキャラといえるのではないでしょうか。


アニメになっていたんだーと懐かしさも相まって思わず鑑賞しましたが、
これは思い出だけに留めておくべきでしたねー。
作画が古臭いのはしょうがないとしても、
今見るとあまりにもお粗末な戦闘シーンでした。
それにシナリオ。
原作に忠実に再現されてはいるのですが、
もう少しアニメ用に脚色しても良かったのではないでしょうか。

ただ、原作のエキゾチックなアジアンテイストと
怪しげなエロティックさがよく表現されていたのは良かったです。
それと、林原めぐみさんの三只眼とパイの一人二役の使い分けの上手さも。


こういう『アジアンテイストな伝奇物』という分野のアニメ、
ありそうでなかなかないですねぇ。
需要がないんでしょうか。
自分は好きなんですが^^;

投稿 : 2025/04/05
♥ : 5

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

2重人格ヒロインの魅力を認識させた大作の序章

とは言っても、元ネタ「三つ目がとおる」の2重人格ヒーローがありましたけどね

三只眼という不死に近い存在の少女(三〇〇歳くらい)の「パールバティー」は、人間になること(死ぬこと)を望み、そのためのアイテム「ニンゲンの像」を求めて日本にやってくる
主人公「藤井八雲」は、パイと名乗る東南アジア系の少女と出会うが、直後に事故で死にかける
パイは人間になるためのパールバティーの新しい人格であり、八雲を助けるために自分の下僕であるウーという存在にする術をかける
ウーもまた不死であるが術は自力で覚えなければならない

ということで、ストーリーが進むんですが、この設定のキモは、人間の少女の自覚を持ったパイが、命を捨てて自分を守ってくれる八雲に恋をしていくという、現代のラノベテンプレの走りと言うことです

アニメの出来はあんまりよくないし、4話で物足りないですが、ラストはちょっといいです

投稿 : 2025/04/05
♥ : 10
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