西部劇で家族なアニメ映画ランキング 1

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計測不能 1 西部劇で家族なアニメランキング1位
カラミティ(アニメ映画)

2021年9月23日
★★★★★ 4.4 (6)
24人が棚に入れました
『カラミティ』は、西部開拓史上、伝説の女性ガンマンと知られるマーサ・ジェーン・キャナリーの子供時代(11歳)の物語です。マーサは家族とともに大規模なコンボイ(旅団)で西に向けて旅を続けていますが、旅の途中、父親が暴れ馬で負傷し、マーサが家長として幼い兄弟を含め、家族を守らなければならない立場になってしまいます。普通の少女であったマーサは、乗馬も、馬車の運転も経験がありません。そんなマーサは、少女であることの制約に苛立ち、家族の世話をする義務をよりよく果たすために少年として服を着ることを決心します。女性は女性らしくという時代にあって、マーサの生き方は、古い慣習を大事にする旅団の面々と軋轢を生みます。更にマーサを野獣からの危険から救ってくれた中尉をコンボイに引き入れたことで、盗みの共犯の疑いまでかけられてしまいます。そして……。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

「ロング・ウェイ・ウエスト」アメリカでもマカロニでもなく【フレンチ・ウエスタン】が導き出した現代への回答

アメリカ西部開拓時代に実在した史上初の女性ガンマン、カラミティ・ジェーンことマーサ・ジェーン・キャナリーの少女時代を描く82分のフランス&デンマーク合作映画
長篇アニメ映画初の全篇Flash作品であった『ロング・ウェイ・ノース』のレミ・シャイエ監督の下にスタッフが再集結
今作でもアウトラインを廃したアーティスティックな画作りが特徴です


荒野を新天地へと向けて進む幌馬車隊の中に幼い妹や弟の面倒を見る少女、マーサ・ジェーンの姿があった
一家は貧しく、母は旅の途中で亡くなり、父も幌馬車隊の中ではうだつの上がらない立場にあった
一家を支えなければ、と強気な性格のマーサは旅団長の息子でやや傲慢な性格のイーサンを相手にしても怯まなかった
だが女性は控えめに構え、幸せな結婚を望む・・・という事を強要されていた時代
保守的な旅団長や幌馬車隊の仲間達、さらに実の父親からもマーサの破天荒な性格は煙たがられていた
そんなある日、マーサの父は大怪我で動けなくなってしまう
イーサンに貸しを作りたくないマーサは投げ縄を練習し、馬の扱いを覚え、スカートではなくジーンズを履いた
マーサの行いは当時の人々にとってまさに奇行そのものだった
しかしそんなマーサの行動力は運悪くも裏目に出てしまい、とうとう仲間達から家族共々「カラミティ(疫病神)」と呼ばれてしまう・・・


『ロング・ウェイ・ノース』では煌びやかなロマノフ朝時代のサンクトペテルブルクと北極の雪原を見事に対比させたレミ・シャイエ監督でしたが、今作では前作と真逆の色使いをするアメリカ西部開拓時代の荒野や森林が舞台
これをアウトラインを廃したデジタル作画で表現するとなると、単純に色数が増えて工数も増えるので大変です
しかし完成した映像は雄大なアメリカの自然を美しく表現しており、ある意味写実性とはかけ離れた画作りをしているにも関わらず非常に説得力を持っているのが素晴らしい
まさに“絵が動く”事への感動を思い出させてくれる、とてもアニメーションらしい作品だと思います


個人的には最近『ノマドランド』という中国人監督が撮ったアメリカのロードムービーを観たんです
日雇い生活をしながら各地を転々と放浪する高齢者達を描いた作品だったのですが、そこでアメリカンドリームの原点とは商売をして大金持ちになる事じゃなく、西部開拓時代の様に広大な大地を自らの意思で駆け回る事にあるのやも・・・?と描かれていたんですね
だから今作もアメリカ人のアメリカ映画ではなく、フランス人のフランス映画だからこそアメリカの自然の美しさに気付けたんじゃないかな、と感じました


また今作は女性の解放を謳った昨今流行りの路線の作品ではあるものの、アメリカの、特にアメリカのアニメでは忌諱されがちな過激な表現が随所に観受けられます
悪役が女性キャラの首を絞めるカットをポスターにしただけで抗議文が寄せられ、しかもそれが取り沙汰される様な国ですからね、今のアメリカは
ところが今作で疫病神扱いされるマーサは結構露骨に虐げられます
顔を打たれるシークエンスすらあります
フランス映画を観慣れてると思うのですが、フランス映画って未だ暴力、セクシャル、人種に対して過激な表現が比較的許容されてると感じます
もし同じ題材を現在のアメリカで映画にしたら、もっとずっとぬるい作品になった事でしょう
そんな意味でも今作はレミ・シャイエ監督らしい作品になったと思います


その一方で映画が終わる頃にはちゃんとマーサが愛おしく感じる様に上手く出来ているんです
マーサは劇中で実に3回、細かい変化を加えるとそれ以上に衣装が変わります
服や髪型が変われば可愛くもカッコ良くもなれる
マーサは自由な生き方を象徴する存在であるといえます


そして『ロング・ウェイ・ノース』もそうでしたが今作も実は史実に沿ったお話ではありません
そもそもカラミティ・ジェーンの伝説は都市伝説的に様々な逸話が残されています
それこそ既に数本の西部劇の題材にされ、最近だと『Fate/Grand Order』に登場する等、作品毎に描かれ方は様々です
今作はそれを逆手に取り、そもそもマーサ自身が人々に話を語る時に【話を盛りがちだった】という部分に着目しているのです
つまりこの映画とはカラミティ・ジェーンの伝説の一つにしか過ぎず、それが実話が否かは全く問題ではないというところに着地してるのですね
故・高畑勲監督に「映画的な嘘が上手い」と言わしめたレミ・シャイエ監督のこれぞ真骨頂といったところでしょう


さて、原語のフランス語版だけでも世紀の傑作だと思ったのですが、せっかく日本語吹替版も制作されたのでそちらもチェックしました
これが本当に良く出来ているんです
まずマーサ役に起用された新人声優、福山あさきさんのお芝居が心の底から上手い!
マーサの役柄やオリジナルキャストのサロメ・ヴルヴァンの声質とも完璧にマッチしていました
エンドロールでカントリーミュージックを意識したシャンソンの主題歌が流れるのですが、吹替版だとこれを日本語訳にしたバージョンが流れるんですね
そしてこの歌の歌唱もバッチリ嵌っていました
フランス語、日本語、どちらもオススメ出来る完璧な作品に仕上がったのは貴重です
クライマックスとなる金鉱のシークエンスはどちらのバージョンでもお芝居がとても丁寧で聴き応えがあります
ですので是非片方だけとは言わず両方楽しんで欲しいと願います

投稿 : 2024/11/09
♥ : 5

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

一方通行まっしぐら、自分を貫いた少女の話

 吹替版を見たです。西部開拓時代、住む街をめざす馬車による集団移動の旅において、家族を守るために男として振舞う少女、マーサの冒険を描いていたです。

 もともと男勝りだったマーサは、うまく集団に溶け込めないようで家族以外からは、ギスギスした雰囲気があったです。女性は結婚することに強い執着を持つ環境下において、慣習にとらわれない真直ぐなマーサの存在、主張、生き方を受け入れない状況だったです。

 ある日、野獣から助けてくれたサムソン中尉をみんなに合わせることで、後でマーサが思わぬ濡れ衣を着せられるです。
 濡れ衣を晴らすため、マーサは家族を置いて集団を離れ、旅に出るのです。そのさなか、出会いそれを通して、目的を果たす方向に進むのです。
それまでの過程が、語るには長い展開だったです。
 嘘と演技を繰り返したり、少年勝りな行動そのすべてがマーサをとてつもなく成長させていったです。

 目的を話し、家族やみんなのもとに変えてきたマーサの姿は、薬業紙でなくなっていたです。マーサの行動は、みんなを納得させ分かり合う姿が、罷業に良かったです。題名の「カラミティ」とは何なのか?、分かる時が来るのです。自分らしく生きるということを、見せてくれたお話だったです。

 日本にはない絵画のような、絵の具で描いたような美しい風景、独特のキャラクターが、いい味出していたです。なかなか面白いかったです。声優さんもなかなか良かったです。字幕はしらないけど、EDのマーサが、歌っていると思われる歌が分かりやすくこのアニメの世界感にあってて良かったです。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 2
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