Witch さんの感想・評価
3.0
【レビューNo.59】(初回登録:2023/5/17)
オリジナルアニメで2019年作品。30分程度
何かで引っかかったのだが、30分らしいので観てみるかと。
漫画家コタニジュンヤ氏による自主制作アニメで、キャッチコピーは
「行くとこないんだろ。」「―私たち家族は どうやらこの星の人間ではないようだ」
(ストーリー)
中学生の星野葵は家族4人で、ごく平凡な生活を送っていた。ある日思いを寄せていた
クラスメートの大宮圭吾の家に招待され、そこで告白される。
その時、葵の体に異変が起こり・・・
(右腕が怪物のような異形の腕に変化。圭吾は席を外していたので気づかれず)
実は葵たちは、普段は「コフ」という薬の力で人間に擬態している宇宙人だったのだ。
(評 価)
・30分でまとまってはいるが・・・
・冒頭の家族のやりとりから始まり、上述圭吾の告白まで「普通の人間」として学校
生活を楽しんでいる葵の様子が描かれています。そんな穏やかな日常がまさか一瞬
で崩壊するとは・・・
{netabare}・うろたえる葵に対し、母は冷静に「コフ」を注射し対処。両親はこの秘密を葵と弟に
知らせておらず、人間の子供として育てていた模様。しかし「コフ」の効き目はだん
だん悪くなり、葵は外出を禁止され、父は「新しいコフ」を求めて奔走する日々。
・ある日「新しいコフ」を見つけたといって、父が帰ってきたのですが・・・
物語はクライマックスを迎え、葵たちの結末を描いて終わります。
このように30分の尺の中で、綺麗に「起承転結」を展開しており、終盤に見どころも
用意されており、それなりにまとまっていると思います。
ただ終盤の展開が雑かなっと。以下特大ネタバレ
{netabare}
・葵に「新しいコフ」を打とうとする父を不審に思った母は、自分が先に注射。
→死亡。「新しいコフ」は実は毒だった。 →その様子を見た父は葵に「新しいコフ」
とお金を渡すと焼身自殺を図る。→ 葵は最後に圭吾にお別れをいう。
という流れなのですが、この父の行動がよくわからない。
・そもそも父の決断は葵を殺すことだったのでは?(他の家族の扱いは不明)
→ 失敗したら葵にお金と毒を渡して、ここから離れろってどういうこと?
なんか最後の圭吾とのお別れのシーンを作り出すための、無理やり感が凄くて・・・
(まあ圭吾とのお別れのシーンが、たしかに一番の見せ場なのですが){/netabare}{/netabare}
・吉浦康裕「ペイル・コクーン」と比べると・・・
・30分のSF自主制作作品ということで、私の中ではどうしてもこの作品と比較してしま
いますね。
「ペイル・コクーン」は、吉浦康裕の「いかにもSFヲタらしい世界観」から始まり、
30分という尺をしっかり計算し、終盤にいくほど物語も加速、面白さも上昇していき、
あっと驚くラストでテーマ性もしっかり伝わる、個人的には超優良作と評価しているの
ですが、それに比べると本作は物足りなさを感じましたね。
・そしてこの作品は上映してお金を頂く「商業アニメ」なんですよね。30分ということも
考えると、余計になにか爪痕が残るような工夫がほしい感じなんですが、そういうとこ
ろも物足りないかなっと。
「いい話を思いついたから、それを映像化しました」ってレベルで留まっているような。
そういう目で見ると
「自主制作作品としては評価できるが、商業アニメとしてはちょっと弱いかな」
という印象ですね。
作画、キャラデザは「中華アニメ」っぽさがあり、声優も一般のアニメに比べると少々ぎこ
ちなさを感じ、たしかに自主制作っぽい仕上がりかなと感じました。
音楽はピアノが主でシンプルだが、結構頑張っていた印象。
中学生の葵を主人公にして、
「平穏な日常や淡い恋が一瞬に崩れ去る「絶望感」を彼女に背負わせる」
というプロットはよかったと思うので、あと一工夫が欲しかったなと。
ねごしエイタ さんの感想・評価
3.1
リアルな背景の反面、私にはキャラデザに好感が持てなかったです。だが、なぜこの結末でなければならないのか?、自分には納得できないものがあったです。
普通の家庭、学校で日常生活を少女がいるです。そんなある日、突然異変が起きて、自分や家族が何者なのか?を知るです。
学校にも行けなくなり、絶望的心理状況に追い込まれ、破滅へと突き進む物語だったです。
この主人公、葵が自分を自分であるという認識が、一転してしまう。{netabare}日常から、友人の家での知るよしもない突然の体の異変を、隠すことしかできない現状は、この葵にとっていたたまれない物だったです。
母親によって、その現状は抑えられたように見えても、姿を維持できなくなっている{/netabare}現実から逃れることができず、表に出歩けなくなってしまうです。家族にとっても葵にとっても、恐怖としか言いようないのです。
学校に行ったとしても現実でも起こりうる、葵の不安、苦しみは、そうなるしかないのか?普通の人間として生きたい!というのを描いていたです。
その先に葵を待っていたのは、正に絶望そのものだったことは、やるせない所あったです。
人間が人間でないものを同じようにして、実際この家族を受け入れられたなら、起こらなかった悲劇だったと思うです。この物語において、そんなことは、あり得ないのです。{netabare}鬼太郎にでてきた妖怪病院でもあって、半魚人のように元に戻れない人間にすることもできないのです。{/netabare}
最後まで、{netabare}この家族は救われなかった事、残った{/netabare}葵がした行動、自身に取った結末は、とても好きになれなかったです。{netabare}最後近くで、別れを告げに友人宅を訪れるです。葵を気にかけていた友人が、正体を知ったとき、葵を止めることもできない、しない所です。どの道、葵は生きられないようだったです。{/netabare}
EDの歌を聞いて、さらに、絶望的な気持ちになってしまったです。
カミタマン さんの感想・評価
4.0
2021/09/27 投稿
率直に言ってすごいと思いました。
29分間,テレビシリーズ1話分の長さです!
しかし,視聴後の満足感は高いです!
ストーリーは{netabare}タイトルや作品のキャッチコピーなどから容易に想像できます。完全にイメージ通りのストーリーと言えます。{/netabare}ツッコミどころもいっぱいありまが,あまり気になりません。
背景はきれいだと思いました。描き込まれた美しさでは無く,シンプルに描き色できれいに見せるといった感じでした。
キャラクターは絵が上手いとは感じませんでしたし,良く動いているわけでもありませんでしたが作品世界としてはこれでいいと思います。作品の成り立ちを考えれば,これが最適なのでしょう。
音楽はピアノの旋律が切なさを増幅します。
主題歌は,音程が安定せずにお世辞にも上手いと言えない歌唱力なのですが,逆にそれがよりいっそう切なさを感じさせます。
おそらく,この音楽の力が作品上大きく貢献していると思います。
結局何がすごいのか,そう感じさせるのか考えてみると,とにかく見せ方が上手いのだと思います。
余分な物を削ぎ落とした,引き算の美学とでも言うのでしょうか?歴史的に見ても日本人の琴線に触れるそんな作りの作品でした。
クレジットを見ると原作・脚本・絵コンテ・演出・作画・美術・着彩・撮影・編集・音響・監督・プロデューサー・他全般 コタニジュンヤとなっています。ほぼ一人で作り上げたという点は考慮せずに評価しています。
一方29分で完結している点は自分の中では,評価上大きなポイントになっています。
たった29分なので,見て損は無いと思います。