イムラ さんの感想・評価
4.7
浦沢作品では一番好き
<2019/5/26 初投稿>
原作既読。
主人公の平賀・キートン・太一さんは名前からわかる通りハーフで母が英国人、父が日本人。
さらに多様な経歴、極めて高い経験値とスペックの持ち主です。
ところが容姿はどーみてもコテコテの和風で、お人好しでうだつの上がらないおにいさん。
今は冴えない考古学の大学講師という謎キャラです 笑。
キートンの経歴をもう少し書くと・・・
ネタバレというほどでもないけど一応閉じておきます。
{netabare}
オックスフォード大を考古学専攻で卒業(中退だったかな?)
在学中に大学で出会った英国人女性と結婚、一女をもうけるも離婚。
で離婚のショックでなぜか英国陸軍・特殊空挺部隊(SAS)に入隊、そこで伝説級の活躍。
実績と特にサバイバル技術が高く評価されSASの教官まで務めます。
(SASは米国のデルタフォースみたいなもんらしいです。)
でもなんか違うと思ってSASを辞職(除隊)。{/netabare}
そして今は日本に住み普段は大学講師をやりながら、たまに娘に世話を焼かれたりしながら、考古学の発掘調査に勤しむ毎日。
しかし大学講師だけでは食えないキートンはイギリスの保険会社ロイズ(※)のオプ(調査員)もやってます。
なので日本と欧州を行ったり来たり。
飛行機代だけで足が出そう 笑
そんなキートンが保険事故の調査や発掘調査などでさまざまな事件や出来事に遭遇、
時に事件を解決し、
時に出会った人々と暖かく柔らかい交流があったり、
せつないやるせない思いをしたり、
とかそんな話。
(※)正確にはロイズは保険会社や保険引受人の組合組織で、特定の保険会社ではありません。ちなみにロイズは世界最古の保険を取り扱った組織とも言われ、保険会社だけではなく個人、つまりお金持ちが保険の引受人として取引できるようになってます。日本の保険の常識とはかなり異なった組織・制度です。
キートンは個人の保険引受人からの依頼で調査を行うこともあり、物語に厚みを加えています。
原作は浦沢直樹さんの漫画なのですが、浦沢作品の中では一番好きです。
他にはMOSTERやPLUTO、パイナップルARMYも好きですが、本作はパイナップルARMYにやや近い印象。
浦沢作品の特徴は登場人物の表情。
無言のシーンでもどんな感情なのかが一目でわかる画力は流石です。
キャラクターの書き分けも完璧。
日本人と欧米人がパッとみで区別つくキャラクターデザインって案外少ないと思うんですよね。
前述の通り欧州が舞台となることも多いのですが、その背景や会話、出てくる料理なども本当に自分がその国にいるような気分になれてしまいます。
基本1話完結のお話も、変な外連味はなく地味ですが、1話1話心に染み入る深みと温かみがあります。
いずれも高品質な短編の良作・佳作を何十本も積み重ねたような。
そんな原作をアニメでは丁寧に忠実に再現しています。
この「マスターキートン」
私は超有名作だと思ってたのですが、時間というのは情け容赦ないですね。
隠れた、というより時代に埋もれた名作だと思います。
今時のアニメとはかなり趣が異なりますが、「最近のアニメに少し食傷気味」「ストーリーのしっかりした物語を楽しみたい」という方にオススメしたい作品です。。