総集編でヒステリックなアニメ映画ランキング 1

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78.2 1 総集編でヒステリックなアニメランキング1位
劇場版 響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~(アニメ映画)

2017年9月30日
★★★★★ 4.2 (265)
1412人が棚に入れました
私は、先輩のことが――。吹奏楽コンクール全国大会出場を控えた、私たち北宇治高校吹奏楽部。うだるような夏の暑さが去り、秋の涼しげな気配が近づいたころ。先輩が退部するかもしれない……。私たちを襲った衝撃は大きく、不安をそう簡単に拭うことができなかった。美人でカリスマ性があって、ユーフォが上手くて、みんなから頼りにされている「特別」な先輩。でも、ふとした瞬間に見せる氷のように冷たい表情、他人を突き放すような瞳、誰にも本当の自分を見せない先輩。「全国に出たい」誰よりもそう思っているのに、ただの高校生のくせに無理に大人ぶろうとする先輩。そんな先輩が私は苦手で……、もしかしたら嫌いだったかもしれない。だけど私は――。あなたと一緒に響かせたい。あのあたたかいメロディーを。だって、私は先輩のことが大好きだから――。

声優・キャラクター
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、寿美菜子、早見沙織、茅原実里、石谷春貴、沼倉愛美、櫻井孝宏
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

あすか先輩補完計画

原作小説、本編は最近になって今更買いそろえて一巻から読み始めたところ。
他には外伝小説や、先日発売された続編小説『~波乱の第二楽章』を購読中。


率直に言って私にとっては大満足な劇場版。
TVアニメ2期より感動できました。


前作1期劇場版はTVアニメ2期に向けた助走として、
初見の方でも、劇場版で予習すれば2期に間に合うという、
入門編にもなり得る総集編でした。

一方の本作は、1期よりさらに内容が濃い2期劇場版で、
まともに総集編にするのは物理的に不可能。
スタッフも当初から久美子とあすか先輩との関係に絞り込むと宣言。
あすか先輩以外の諸要素はエピソード丸ごと豪快に削除。

初見殺し……と言うより、続編故に吹部にまつわる諸説明も皆無な、
TVアニメ2期まで完走が絶対条件のご新規さんミナゴロシ映画。

でも、丁度あすか先輩とのエピソードに的を絞って2期に再挑戦したい。
そう思っていた私にとっては本作はまさに渡りに船な好企画でした。


実はTVアニメ2期、私は感動しつつも、今ひとつ突き抜けない感覚も残っていました。
それは、やはり私が久美子&あすかの物語について、
拾い切れてない要素があったのではないか?というモヤモヤを抱えていたからだと、
本作を観て再認識しました。

本シリーズは吹奏楽部に蠢く様々な人間関係について濃密に描いたアニメ。
ただ、一つ一つの関係描写はしっかりと受け止めることができても、
毎週観ている内に複雑に絡み合った伏線が、
私の中で混線することもあったのも事実でしてw

それが一番顕著だったのが、私の場合は、肝心要の久美子&あすかの関係だったのです。
何しろ、自分の気持ちや意志と向き合いぶつけることに躊躇しがちなユーフォっぽい後輩と、
本心を分厚過ぎる仮面の奥に幾重にも隠蔽した手強い先輩との絡み。

TVアニメ視聴時は、これは久美子とあすかに関する重要な伏線なのだろうか?
と想定することはできても確信はできず……。
さらに困ったことにこのユーフォっぽい後輩は、
道中、別キャラの諸問題にも首を突っ込んでしまうものでw
ここで、一旦、話が飛んだけど、
私はちゃんと、あすか関連の伏線をつないで来れているのだろうか?
との不安が久美子&あすかの物語没入にブレーキをかけている感じでした。


この辺りが、本劇場版により、これはやはり、あすか先輩に関する伏線だった。
このシーンも実はあすか先輩を考える上で重要だった。
などと仕分けされることで、私の中でこんがらがっていた伏線の整理が完了。
また適宜、構成順序をあすか焦点に組み直したり、新作カットで伏線を補強。
結果、久美子&あすかの心情がよりスムーズに入って来ることにより、
2期でもっと感動できるはずだったあのシーンや、もっとグッと来るはずだったあの修羅場でも、
ようやく、完全に心に響いた私の目頭から、こみ上げて来る熱いものを感じることができました。


音楽面では、本作は総花的な総集編ではないので、
TVアニメ版の名演奏を再び劇場豪華版で!
という需要に応え切れる編集ではなかったと思います。
音楽目当てで観に来た人に対して、
TV未公開演奏シーンで補完する救済措置はあったとは思いますが……。

因みに2期第五話の……

{netabare}『三日月の舞』関西大会フルverは丸々削除w
一方でTVアニメ版では全削除された『プロヴァンスの風』関西大会フルverは、
OP曲としてフル演奏。

関西大会では消された『三日月の舞』は終盤に全国大会verがフル演奏。
やはり関西大会verに比べ倍音が響いていませんでした。

伝説の演奏シーンに圧倒される感じだった関西大会verより、
この全国大会verは、先輩との最後の演奏、あの人に届けたいメロディという、
物語の集大成としてのフル演奏シーンという感じで、しみじみした気持ちになりました。

TVアニメ版では、全国大会結果は痛切だったけど、
そんなに甘くない吹奏楽コンクールのリアルを描いているとして、
私は苦々しさも噛み締めつつ、受け止めていました。

本劇場版では、結果を知った上で……ということもあるのでしょうが、
これはこれで良かったんじゃないかな?と妙に納得してしまいました。

それは本劇場版が、先輩とみんなで最後の演奏をするという
スタートラインに立つことに、久美子やあすか、この吹部のみんなが
いっぱい苦労したことに対して、より共感しやすい構成だったからだとも思います。

あの全国大会演奏シーンでは確かに、
コンクールの結果云々とは別の感情が響いていたように感じました。{/netabare}


新参お断りな作品ではありますが、
ファンの方には鑑賞を強くオススメしたい心に響く逸品。
これは恐らく冗談ですが、
『ユーフォ』ファンなら観ないと、末代まで呪われますw
限りある人生……悔いの無い選択をしましょう♪


余談
本作は本編上映前に“フォトセッション”がある作品。
最初にワンカット限定でスマホ・ケータイカメラ撮影OKな絵を表示する企画があります。

要はみんなで思い出作りましょうと囁きつつ、
SNSでの画像拡散を促し、お布施に来た信者を宣伝部隊の一兵卒として、
無償で奉仕させようという、京アニの狡猾なプロモ計略だと思われますw

で、その時、私はお行儀良くスマホの電源を落していたのですが、
撮影タイムまでに、所持していた中華のナマクラタブホはOSが立ち上がらずw
みすみすシャッターチャンスを逃す羽目に(泣)

これから劇場鑑賞される方がおられたら、
例えばパンパカパンツなどに映画館マナーについて何をお説教されようが、
そんなものは一切無視してw
スマホ・ケータイは電源ONのまま待機して、
一度きりのチャンスを掴んで欲しいと願います。

くどいようですが、限りある人生……悔いの無い選択をしましょう♪

投稿 : 2024/07/06
♥ : 56
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

一人一人の届けたいメロディ

2018.12.04記


1期2期視聴済


公式にもありますし、キービジュアルからも想像できるように久美子とあすかの物語。
2期第5話以降から最終話までを切り出し、ごっそり削って再構築した印象。TV版の要所は押さえつつ、総集編という単語ではくくれない全くの新作と言ってもよいでしょう。それこそうまいことリフォームしたな、という構成になってます。


『全く別の作品のように見えてTV版の本筋との差異はない ※1』
  ※1 一部TV版と時系列が違う描写があります。


総集編かと高をくくっていた私の全編観終わっての率直な感想です。


以下両者ともイケそうです。
①TV版観てない人
②TV版2期まで観た人

私は②。おそらくこのレビューをご覧の多くの方がそうでしょう。TV版では前後関係を基に想像で補ったりしてた箇所の大部分が補完されており、従来ファンも納得の内容です。いや納得どころか非常に満足する一品でした。
さらに①のご新規さんにとっても許容範囲ではないでしょうか。それは、TV版のみならず、最初の劇場版~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~を観てない人も含みます。もちろん②が望ましいところですが、お時間ない方や興味薄い方には一考の価値があると思います。
全くさらの状態、、、冒頭からあすかと久美子、とりわけあすかについてだいぶ尺を取って取り上げており、この二人の物語であることがわかりやすく提示されます。そこに、あすかとあすか父の関係、久美子と麻美子の姉妹関係が絡むTV版の屋台骨はそのまま。あたる焦点が限定的なため焦点がぼやけず、初見さんにも優しいとするのはこういったところが理由になります。


副題の~届けたいメロディ~。
あすかから久美子へ、久美子からあすかへ、あすかからあすか父へ、久美子から麻美子へ、北宇治の音を全国でという部の動向と並行するかたちで、各々の届けたいメロディが奏でられてることがわかると思います。見方によっては、あすか父からあすかへ、麻美子から久美子へ、も含まれますね。これはお見事な編集だったと言えるんじゃないでしょうか。

{netabare}「プロヴァンスの風フルVer」「三日月の舞全国大会Ver」「長尺の駅ビルコンサート」「あすかのちびっこ時代」{/netabare}
この劇場版で追加されたカットは数多くあります。劇場版に合わせてなのか演奏シーンの追加はうれしいところ。曲の盛り上がりどころで一段ボリューム上がるなど作画のみならず音響面の演出にも工夫がみられました。


ご新規さんも既存ファンもウェルカム!
少なくとも既存ファンは必見の劇場版でしょう。控えめにいってオススメです。



■劇場版ユーフォって
「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」「届けたいメロディ」「リズと青い鳥」(2018年12月現在)、どれも既存客にも新規客にも遡及できる作りになってるように思えます。
3作とも群像劇の色を極力減らし、ごく限られた少人数に絞って一対一関係を浮き立たせる仕様でした。前二作は編集の妙に唸りました。TV版製作にあたりキャラ設定を練りこんだからこそできたことだと今は思ってます。リズに至っては、TV版主人公黄前久美子はその他扱いでしたが、裏を返せば脇を固めるキャラが魅力的であることの証左と言えるでしょう。
群像劇といった特長を捨てても物語を構築できるTV版ユーフォの懐の深さを再認識するとともに、焦点絞ったことで生じる“わかりやすさ”は、あくまで他の総集編的な劇場版と比較して、という前提はあるものの、一見さんを置いてけぼりにしないことに繋がっているのでは?と思いもします。

切り取り方もテーマがあって好感です。

「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」
構成:1期全般
特色:やや総集編の色合い強め。総花的な内容のため新規取り込みにやや軸足を置いてる印象。スポコン色強めのTV版を反映した内容。

「届けたいメロディ」
構成:2期後半部分
特色:やや再構築の色合い強め。前作より抽出する話数が少ないことで新規カットを盛り既存客向けにやや軸足を置いてる印象。人間ドラマ色強めのTV版を反映した内容。

「リズと青い鳥」
構成:2期前半部分を起点としたスピンオフ
特色:完全新作。TV版で丁寧に描かれた人気キャラ二人に絞った山田監督の意欲作。ユーフォの冠がないので、新規も既存もいらっしゃいな内容。



これは私自身の願望もありますが、これまで3作ともに単独での鑑賞に堪えうる作品になっているとの前提に立てば、これはもう「いくらでも続編作れますよ」と。キャラ設定の緻密さや安易な総集編を作らないスタッフであれば可能なことと思います。
“ポニテ先輩と優子先輩”“あすか・中世古・小笠原の三年組”“後藤夫妻”“立華高校の面々”主要キャラならどこ切り取ってもそれなりのを作れる気がします。事実、小説では番外編が出てますからね。
主要どころでなくても“パーカス一同”“希美たちが1年生だった頃の話”“滝先生の学生時代”。夢は膨らみます。



再構築された物語を堪能しつつ、いつまでもユーフォを堪能し続けたいなぁと思わされる秀作でした。


-----
2019.02.14追記
《配点を修正》

投稿 : 2024/07/06
♥ : 63
ネタバレ

P_CUP さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

総集編詐欺

これはもう総集編じゃない。
1期総集編映画についても似たようなことを言った気がするが、こっちはそれ以上に総集編感がない。
発表時点で「いろいろあった2期を振り返る内容」と告知されていたことを思い出すと、これはタイトル通り、総集編詐欺である。
TV版カットを使用しつつ、そこに新規カットを相当数投入することで、原作3巻を元にした映画を1から作った、と言った方が近い。
なので、もし、2期のダイジェスト版を期待してる人がいたら(そんな人がいるのかどうかは置いておいて)この映画はおすすめしない。
だが逆に「なんだ総集編か。じゃあ見なくていいや」と思ってる人は是非見に行って欲しい。
{netabare}
まず、2期前半のメインテーマであった、みぞれと希美の件は全カット。
そして麗奈の恋心とか滝先生の過去についても全カット。
さらに出来事の時系列までも入れ替えてる。
そこまでして完全に「あすかの物語」に寄せ切った作りにしてきた。
それだけに、あすかの想いがきっちり伝わってくる。
もはや彼女は分厚い仮面に素顔を隠した謎の先輩じゃない。
いじらしい想いを抱えた、1人の高校生としての田中あすか像が描かれている。
故に、久美子の「先輩だってただの高校生なのに!」という叫びはTV版以上の説得力を持って響きわたる。

「届けたいメロディ」というサブタイトルも秀逸である。
メインヒロイン(とあえて言ってしまう)のあすかも、我らが主人公たる久美子も、「届けたい」相手が確かに存在している。
あすかにとっては言うまでもなく父親であり、久美子にとっては姉である。
音楽を始める切っ掛けとなった、いわば原体験を作り出した存在に、そのメロディを「届ける」ことによって、彼女らの、音楽にかけた青春は報われるのだ。

翻って、響け!ユーフォニアムというシリーズについての魅力も再確認させられる。
全体を見れば、これは北宇治高校吹奏楽部という集団を描いた物語である。
だが、集団というのは、突き詰めれば個人の集合体に過ぎない。
その個人とは、それぞれにそれぞれの「物語」を持っているのである。
65名(葵と希美を含めた、アニメ版準拠の人数)の誰にフォーカスを当てても、映画の1本くらい作れるのではないだろうか?
主要キャラは当然のこととして、エンドロールで「吹奏楽部員」とまとめて扱われている部員たち、
例えば1期では滝先生に泣かされていたが、最後にはお礼を述べて卒業して行った三原さん(フルート隊)はどうか?
チームもなか内にあって、滝先生への信頼度・心酔度が低そうな雰囲気を漂わせていた釜屋さん(パーカス隊)でも面白そうだ。
そう思えるくらい、この物語世界は豊穣である。

唯一不満があるとすればエンディング曲がサウンドスケープ(吹奏楽版)だった点。
あの曲は、北宇治吹奏楽部が、関西大会、そして全国大会へと突き進む、TV版2期全体を通してのテーマ曲としては相応しいものだったが、この映画のテーマ曲としてはどうか?
あすかが、その青春を終わらせて卒業し、物語が美しく閉じられた後で流れる曲として相応しかったのかは疑問が残る。
せっかく、河川敷での「響け!ユーフォニアム」独奏シーンを最後に持って来たのだから、そのシーンに続くように、吹奏楽版「響け!ユーフォニアム」へと繋いでエンドロール、という作りだったら完璧だった。


ちょっと言い忘れたことを追記

実は今回の映画を見るまで、あすかというキャラはちょっと苦手だった。
だが映画を見終えた今は大好きになった。
そしてこの変化自体、久美子のあすかに対する感情の変化をトレースしている
(トレースさせられている)ことに気付いて、鳥肌が立った。お見事。


さらにちょっと追記(原作話ですが)

この劇場版が久美子とあすかに絞って掘り下げて来たと思ったら、
原作者が前触れもなく、香織とあすかについての短編を投下したもよう。
原作サイトの「北宇治吹部だより」の第11回で読めます。
なぜ、あすかの鉄仮面を久美子は剥がせて香織は剥がせなかったのか?
その辺りが深まります。てかこれ、もし映像化したらえらいことになりそうなw


さらにさらに追記(劇伴曲について)

舞台挨拶で小川監督の話を聞くまでうっかり見落としていた点だ。
これは迂闊だった。そう、この劇場版、劇伴曲もTVからリニューアルされてる。
そして、鶴岡音監と、さらに山田尚子が関わってる映画の劇伴曲が
単に雰囲気を盛り上げるためだけのBGMであるはずがなかった。
今回の劇伴曲は大別してピアノ曲とストリングス曲の2種類に分けられており、
ピアノ曲が久美子の、ストリングス曲があすかの心象描写となっている。
この2つがラスト、2人の別れの場面で重ねられる。
ここで2度「響け!ユーフォニアム」の第1主題が奏でられるのだが、
それが一体、どの瞬間なのか、鑑賞される際は、注意して聴いてみて欲しい。
{/netabare}

投稿 : 2024/07/06
♥ : 30
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