結婚式で熱いなアニメ映画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の結婚式で熱いな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年01月09日の時点で一番の結婚式で熱いなアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

89.7 1 結婚式で熱いなアニメランキング1位
ルパン三世 カリオストロの城(アニメ映画)

1979年12月15日
★★★★★ 4.2 (1253)
8151人が棚に入れました
人口三千五百、世界一ちっぽけなカリオストロ公国の田舎道をボロ車でドライブしていたルパンと次元はクラリスという美女を助けた。彼女はカリオストロ公国・大公家に残された最後の娘で、カリオストロ伯爵は彼女を強制的に妻に迎え、公国の権力をひとり占めにしようと狙っていた。クラリスはルパンに助けられたが、再度捕えられてしまう。

声優・キャラクター
山田康雄、増山江威子、小林清志、井上真樹夫、納谷悟朗、石田太郎、島本須美
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

その瞳とカラクリに心を奪われる

近年、リマスターだ4Dだと上映企画が催される本作。
今回は作中のクラリスの結婚式が9月13日だからと企画された期間限定上映。
ネタには全力で乗って応えるのが礼儀だと私は13日夜に行って来ました。
因みに本作は金ローでしか観たことなかったので劇場鑑賞は初めて。


【物語 4.5点】
宮崎 駿氏、初の長編アニメーション映画監督作品。

プロットは闇の世界で生きる怪盗ルパンが、
欧州の小国・カリオストロ公国に蠢く巨悪から、
野望に汚されつつあるヒロイン・クラリスを光の当たる世界へ連れ出そうとする構成。

次元のマグナムが通じない公国の暗殺部隊など、
序盤からカリオストロ城が難攻不落であることを印象付ける。
それ以上に偽札を通じて歴史の中で暗躍してきた公国の巨悪の影響力は世界的なもので、
一介のこそ泥如きがどうこうできる物ではない。

そこを城に潜入中の藤子、平生の敵である銭形警部も含めた、
“役者を揃える”ことによりルパンのターンに引き込んで、ひっくり返していく展開が痛快。


ルパンが完全無欠の大怪盗ではなく、結構ヘマをやらかしつつ城を攻略していく綱渡り感もスリリング。


【作画 4.5点】
昭和時代の宮崎 駿監督作品あるある。
冒頭の小柄なフィアットの車内に大量の札束を押し込むカットからして、物理法則無視したエンタメ重視。
にも関わらず、機械の造形は、盗みの小道具から車、飛行機に至るまで、
パーツひとつひとつから精巧に再現、構築し、シーンに説得力を与えます。

で、丹念に組み立てた乗り物は大体バラバラに壊すw
何でも分解したい少年にとっては堪らない描写。
作画するアニメーターも堪ったもんじゃないでしょうがw

このカラクリ感が湖上のカリオストロ城に至るまで徹底しているのが素晴らしいです。
水を汲み上げるために敷き詰められた歯車、張り巡らされた罠、可動式の渡り廊下……。
ラストの{netabare}「ドロボーは湖の水を飲み干すことだってできるのに」{/netabare}を有言実行する大仕掛は圧巻です。

壁走りも交えて車体が分解されるカーチェイスなど、
主人公がもう一回やれと言われても絶対にできないギリギリアクションw
このリアルを越えた心躍るエンタメ性の追求。
昨今メディアにジブリの後継?と押されている方々の作品に不足している要素です。


【キャラ 4.5点】
主人公ルパンは宮崎駿監督も関わったTVアニメ版1stシリーズ準拠の緑ジャケット。
(私は第2シリーズ再放送の赤ジャケット・ルパンで育ったので緑ルパンは今でも馴染めませんw)
歴代ルパンの中でも、私はこのルパンの瞳が一番カッコいいと思っています。
普段はひょうきんで掴みどころのない目をしているのに、
ここぞという時にはグッと精悍な眼差しになる所が痺れます。
あんな目で見つめられたらクラリスの心も奪われますよ。
ラストの{netabare}自分は闇の世界で生きているから、クラリスを連れていけないと悟った哀しい{/netabare}眼もそそられます。

目つきが良いのはライバル・銭形警部も同様。
本作では宿敵ルパンとの共闘も通じて、
巨悪を隠蔽しようとする上層部に対して、
人として譲れない矜持などルパン一味とも共有している価値観を示す。
最後の有名な「とんでもないものを盗んでいきました」の件も、
{netabare}クラリスとキッパリと袂を分かちたい{/netabare}ルパンの真意を汲んだアシストプレイとも解釈できて、
粋なことするよな……と感慨を覚えます。


敵役のカリオストロ伯爵。
クラリスへの仕打ちなど悪逆非道な良好な憎まれ役。
申し訳ないですがクライマックスの{netabare}時計台の針に挟まれて圧死する最期{/netabare}には、
不謹慎ながらいつも笑ってしまいますw


【声優 4.0点】
ルパン担当の故・山田 康雄さん。
高めのボイスで、ギャグや女たらしの中に、たまにハードボイルドを織り交ぜる独特のバランス。
クラリスを笑わせた{netabare}手品{/netabare}の件もこの初代ルパンだからこそできる芸当かと。

ヒロイン・クラリス役の島本 須美さん。
ルパンをおじさま、ドロボーさんと清純な声で呼ぶ演技で、
このお姫様は裏世界の闇に染めちゃいけないとの使命感を視聴者とも共有させます。


伯爵腹心の部下で、公国の汚れ仕事担当「カゲ」のリーダー・ジョドー役の永井 一郎さん。
低めにコントロールされたボイスでルパンを狙撃し重傷を負わせるなど手強い仕事人を表現。
最後に{netabare}観念して五ェ門に介錯を求める{/netabare}辺りには潔い“武士道”も垣間見せます。


【音楽 4.0点】
担当はお馴染みの大野 雄二氏。
基本はフルート、木琴も多用したシリーズ音源のピックアップ。
が、OP主題歌及びEDには「ルパン三世のテーマ」ではなくボビー歌唱の「炎のたからもの」を作曲し提供。
長閑な異国情緒と、どこか寂しさを感じるこのバラードソングは、
作中でもバリエーションとしてBGMに織り込まれる。
この楽曲構成が、ルパンとクラリスの住む世界の違いと、それ故の哀愁を際立たせます。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 31

やまだ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

やっぱりベタが好き

時代を超えて愛される名作。

大泥棒、サムライ、ガンマンとコテコテベタベタなまんがキャラであえてハードボイルドなダークヒーローものをやるってのが原作のオリジナリティ。ルパンの殺しも辞さないクールさと仲良し仲間でなくお互いのメリットで組む傭兵のようなフラットな関係の手下たちと魅せるダーティーなヒロイズムはまさにオトナ向け作品。しかしTV放映当時はアニメは子供が観るものという時代。TVシリーズ序盤は「大人向けアニメをつくる」という異例のチャレンジで原作者も認めた作風ではあったが当然視聴率的には大コケ。子供達からすれば当時主流の派手なメカも出ないし武器がハンドガンのみなんて地味も地味。リアル風等身が目新しかったくらいでドカーンボカーンと派手なファンタジーアニメを観慣れた子供達にフックする要素がまるでない。これではいかんとスポンサーが慌ててキッズ向けに路線変更を画策し宮崎駿に白羽の矢が立つことになる。これまでのキャリアで培った演出技法を持ち込みガラッと作風を変えるも間に合わず初シーズンは打ち切り。本放送では一部の評価しか得られなかったが再放送で人気爆発したのはガンダムも同じだが事情は全く違っていた。

宮崎駿自身の企画ならまずチョイスされないであろうダークヒーローもの。完成された世界観の下地があったからこその奇跡のケミストリーが生まれ日本アニメを代表するビッグタイトルに成長した。キャラの設定や配置はかなり変えられているが、自身の企画ではまずできない現在の新人がこれをやろうものなら失笑どころか業界追放レベルのベタにも程があるわかりやすいキャラデザインを更に活かす作風へ。おちゃらけた昼行燈キャラが本気を出せば俺ツエーという時代劇でも飽きるほどに溢れている日本人の遺伝子に脈々と刻まれた伝統的な紋切り型のキャラクター造形。だれがどう見ても悪役にしか見えない容姿のラスボスがしっかりイキってヘイトを集める勧善懲悪。キッズ作品ではバトル作品以外の主役の殺しはご法度なため実は意外と人情家設定という原作を根本から否定したともとれない大胆な変更も施し、園児でも初見で楽しめる完全なる全方向全年齢万能アニメに仕立て上げた。これ以降ルパンはキッズアニメ映画の代名詞へと上り詰め、むしろ原作がアニメに寄せていくまでになる。

当時の原作ファンは激怒しただろう。自分たちの愛する数少ない希少なオトナ向けアニメがこともあろうによくあるガキ向けアニメにされてしまったのだから。「ベタなまんがキャラでダーティーヒーローをやるのがいいのにベタなキャラでベタな話をやるとかマジでセンスなさすぎ。所詮ポッと出の知らん監督。こいつはなんにもわかってない。」ただ要請に従って仕事しただけでそもそも自分たちの企画ではない。その当時からしてベタベタコテコテの古臭い古典的なキッズアニメに迷いなく振り切って制作された本作は「今時こんなベタな話されても…」「「重厚なテーマも無く浅い」「まあ…面白いっちゃ面白いけどそれだけ」「既視感ガー」「捻りガ―」「成長ガ―」「感情移入ガー」といった現在でもよく見るオトナが上から目線で観たキッズアニメにありがちな評価で当然ながら脚光を浴びることなく凡作の烙印を押されることになる。

ただやはり大人も子供もやっぱりベタが好きなもの。その後の展開は周知のとおり。爆死寸前のマイナー作品を国民的作品に仕立て上げた手腕は時代が証明してしまった。当時叩いてた原作ファンもほとんどが鳴りを潜めるか、掌を返すほかなかっただろう。

子供の頃に散々観ている者でさえ観返す度に新しい発見に出会える熟練の演出技法の数々に「これいつの作品だよ…」と驚愕させられる不動の名作。

「魅せるアニメーション」とはこのこと。
画面で語る駿イズムが堪能できるキッズアニメの傑作。

新人がベタな作品を目指すと猛烈な勢いでブッ叩かれる現代。
大御所は総監督とか総指揮とかの名誉職での名前貸に収まって
今後を見据え後継を育てる地盤を作っていって欲しい。


余談
作品のファンは何時までも愛を注ぐがアンチは飽きて次のターゲットに移行するもの。エヴァもまどマギも現在名作との評価を疑う者はいないが当時は各地で紛争が勃発。だがアンチにまで波及してこそ名作の資格を得るもの。鬼滅はどうなるか…時代の証明を待つのみ。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 29
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

最高に好きなルパン

<2020/11/20 追記>
また金曜ロードショー
そしてまた観てしまう 笑

<2020/7/16 初投稿>
1979年公開のアニメ映画です。
・・・超々有名作の超名作。

宮崎アニメで好きな作品を挙げると
「天空の城ラピュタ」
「風の谷のナウシカ」
そして本作「ルパン三世 カリオストロの城」
この三作はアニメ映画としては別格だと思っています。

さらに言えば数あるルパンアニメの中でもぶっちぎりで圧倒的に本作が一番好き。

初めて見たのはたぶん1980年代のテレビ。
見る前までの印象は
「カリオストロ?あれ?本家アルセーヌ・ルパンの『カリオストロ伯爵夫人』に寄せてきたのか?」
「緑ジャケルパン!絵ヅラ的にはこちらの方が好きかな」
ぐらいのものでしたが。

いざ見てみると
・・・目が釘付けになりました。
最初から最後まで。
最高に楽しく、最高にハラハラドキドキ、そして最高に感動できる作品。

ルパンの肩の力がよい感じに抜けた渋いカッコよさも。
次元の最高な相棒っぷりも
五右衛門のここぞという時の秘密兵器っぷりも
峰不二子の曲者なのに嫌みのない、いい女っぷりも
銭形警部の不器用で実直な男っぷりも
クラリスの嫋やかなにのに芯は強い宮崎ヒロインっぷりも
カリオストロ伯爵のいっそ爽やかなまでの{netabare}悪役っぷり{/netabare}も

主題歌「炎のたからもの」も、
主題歌をアレンジしたせつないBGMも
両切りのシケモクに爪楊枝刺して最後まで吸う「次元タバコ」も
スーパーチャージャー積んだフィアットのありえないまでの爆走も
銭形警部with埼玉県警のカップヌードルも
五右衛門の三度笠も
不二子のバイクやハングライダーも
カリオストロ伯爵の半熟ゆで卵の食べ方も
ジョドー率いる「影」の「カサカサカサカサ・・・」も
ミートボール入り超大盛りパスタも
城の塔の上の「あの」アクションも
あの時計塔のシーンも。

次元の「どっちにつく?(ニヤリ)」も
不二子の{netabare}「まさか。捨・て・た・の」{/netabare}も
五右衛門の{netabare}「・・・可憐だ・・・(敵陣に飛び込み)今宵の斬鉄剣は一味違うぞ!」{/netabare}も
クラリスの{netabare}「泥棒はまだ出来ないけど、きっとおぼえます」{/netabare}も
カリオストロ伯爵の{netabare}「どこまで行くのかな?クーラーリースー」{/netabare}も
銭形警部の定番「いや。奴はとんでもないもの(以下略)」も
ルパンの{netabare}「今はこれが精いっぱい」{/netabare}も{netabare}「俺みたいに薄汚れちゃいけないんだよ」{/netabare}も
園丁のおじいさんの「なんと気持ちの良い連中だろう」も

好きなところ上げたらキリがございません。

本作はテレビシリーズ「ルパン三世 1stシリーズ」「2ndシリーズ」そして映画「ルパンVS複製人間」の次に世に送り出されたルパン三世のアニメ作品。
宮崎駿氏の初監督作品。
しかも宮崎監督、半年で作り上げたとかなんとか。
・・・マジか(/・ω・)/

物語は「ルパン三世と囚われのお姫様」
そういう意味では「未来少年コナン」や「天空の城ラピュタ」と近い構図ですね。

本作を見たことがない方は是非一度ご覧ください。
アニメファンなら無論のこと、普段はアニメ見ないという方にもおすすめです!!!



ところで本作が200個目のレビューとなりました。
先日「月刊少女野崎くん」のレビュー書く際に、自分が書いたラブコメレビューを探してたら、野崎くんが199作目なのに気が付いてびっくり。
200作目はせっかくなのでまだ書いてない名作のレビューをと思い立ち、アニメ史に残る本作をとなった次第です。

あにこれ始めて約3年で全部文章付きで200作品レビューってことは、週1以上の結構なペースってことで自分でも驚いてます。
堪え性のない自分がよくここまで書いたな、と。
これもレビューを読んでくださる方がいるから。
こんな拙いレビューを読んでいただき、さらにはサンキューまでいただいたり、本当にありがとうございます。

この場を借りて深くお礼申し上げます。。

そして、これからものんびり続けていきたいと思いますのであらためてよろしくお願いします。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 58

72.2 2 結婚式で熱いなアニメランキング2位
茄子 アンダルシアの夏(アニメ映画)

2003年7月26日
★★★★☆ 3.9 (191)
948人が棚に入れました
『茄子 アンダルシアの夏』(なす アンダルシアのなつ)とは黒田硫黄の漫画『茄子』の短編『アンダルシアの夏』を原作として2003年に公開された上映時間47分のアニメーション映画。
【ストーリー】スペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャを舞台に主人公ペペ・ベネンヘリが解雇の危機に直面しながらなおかつ、かつての恋人と兄の結婚という複雑な思いの中にあってもプロ自転車選手として「仕事」に取り組むさまを描く。

声優・キャラクター
大泉洋、小池栄子、平野稔、岡田吉弘、平田広明、坂口芳貞、羽鳥慎一、市川雅敏、筧利夫
ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

本格的なロードレースを軸に語られる、男の生き様とは。

2003年、劇場公開。
上映時間47分。


【前置き】

本作は、レンタルショップでは決まってスタジオジブリ作品の棚に収められていますが、制作は「マッドハウス」であり、ジブリは一切関係ありません。
私は、最近まで勘違いしておりました。
制作委員会に、ジブリに関与する企業が多いことが関係しているそうです。

加えて、監督の高坂希太郎さんは『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』等のジブリ作品で作画監督を務めた方で、本映画の原作漫画「茄子」も宮﨑駿監督本人から推されて見たという逸話があります。
もう、同じ棚に置いちゃえってのも、分からなくもないですね。


自転車を題材にしたアニメ「弱虫ペダル」を見始めて半年以上。
思い返すと、そのずっと昔から見てみたいけど機会がなく後回しにしていたのが、同じく自転車を題材にした本作「茄子 アンダルシアの夏」でした。

本格的なロードレースを描いていると聞いていたので結構な期待をしながらの視聴でしたが、その気持ちには応えてくれたかな、と思います。



【あらすじ】

舞台は、スペインの「ブエルタ・ア・エスパーニャ」と呼ばれる、ヨーロッパの3大自転車ロードレース。
本作は、それに出場する主人公、スペイン・アンダルシア州出身の『ペペ』の葛藤と生き様を描いた作品となっています。

この主人公ペペは、プロのロードレーサーとしてスポンサーを抱えて「仕事」に取り組む傍らで、同日に開かれる昔の恋人と実兄の結婚に、複雑な気持ちを抱えていました。


【論じてみる】
{netabare}
47分という短い時間の中で描かれたのは、ロードレースを通しての人間でした。
「人間がロードレースをしているところを描く」
というより、
「ロードレースをしている人間を描く」
と言えばいいのでしょうか。
勿論、ロードレースの内容自体も、かなり本格的だったのですけど。


ペペの葛藤とは裏腹に、結婚式に参加する皆はペペの試合模様が気になっていました。
新郎新婦も、それは例外ではありません。

ペダルをこぐペペも今や、その兄達と後腐れがあるわけじゃない。
仲が悪いわけでもない。
ただ、今の自分は、自分なりに精一杯走り続けるのみ。

現場をよそに結果のみでしか判断しないスポンサーをなだめながらも、監督はペペに

「スポンサー様に、プロのレースを教えて差し上げろ。」

と激励を送ってくれます。
それに対し、ペペはその心に秘めた意志を吐露するのでした。


『監督、アンタに教えてやりてぇ。

 プロってのは、仕事以上のことをやっちまうヤツだって。

 そうでなきゃ……そうでなくちゃ…

 産まれた土地から、出ていけないだろう。

 俺は遠くへ行きたいんだ!!』


…………う~ん。。。
やっぱりちょっと、引きずってもいたのでしょうね…。

声優を務めたのは俳優の大泉洋なさんですが、この方の声はどの作品でも安定して上手いですね。
(あくまで俳優としては…で、本業の方とは比べられませんけど。)
{/netabare}


【ロードレース】
{netabare}
本作のロードレースは、2ペアのチーム戦。
作中で繰り広げられた戦略や駆け引き、抑揚する車体の作画は、見応え抜群でしたね。

元々、ペペはエースを引っ張るアシスト選手である為、集団から先を走ることで追う選手を引き連れて、小さな集団を形成する戦略を立てます。
これは、最終的にエースを勝利させるため、先のその小さな集団のペースを更に上げて、集団内のライバルをふるい落とすことが目的だったりするんですね。

全く無知の頃は、体力だけがモノを言うスポーツかと思いきや…、いやはや…なんという騙し合い。
奥が深くて面白いですね。


しかし、先を走っていたその集団からペペが脅威でないことがバレ、2回目の先走りには付いてくる選手は誰もおらず。
ペペは、独断での走行を余儀なくされるのです。

後続に戻れば、もうそこから先に出る体力はない。
しかしそれは、灼熱の中で風除けもおらず一人体力を減らす、レースでは自殺行為とも言える無茶な走行となりました。

そんな中、エースが不慮の落車でリタイアとなり、ペペはアシストする相手すら奪われるのです。

監督は、この状況を打開する唯一の手段として、ペペに苦渋の決断を言い渡すのでした。

「そのまま逃げ切り、勝ちに行け!」

と………。


途中に入る実況は、まるで自分が実際のロードレースをテレビ越しに見ているかのような生々しさで、レースの臨場感を飛躍的に高めていたように思います。

ただ、その冷静な分析は

「コイツ!、少しはペペの気持ちも組んでやれよ!」

なんて気持ちにもさせられましたけど。

こう思った瞬間、

「あぁ、ボクは今…この作品を楽しんで見ているんだなぁ。」

と実感しました。
{/netabare}


【総評】

スペインの情緒あふれる情景を存分に描きながらも、自転車競技に向き合う一人の人間がしっかりと描かれた良作となっておりました。
ただ、前提として47分で魅せる作品なので、大作と比べたり過度な期待も禁物ですが。

自転車の動きについても、風を受け流すようにと集団がウェーブのようになる並行運転や、僅差を詰める為にギリギリのコースラインを抉るように走る様など、絵としてもしっかり魅せてくれました。
そして最後の最後、「諦めたら終わり」の根性のスプリント勝負は、やっぱり一番熱くさせてくれました。

続編のOVA「茄子 スーツケースの渡り鳥」も、またの機会に見てみようと思います。

ではでは、読んでいてありがとうございました。


◆一番好きなキャラクター◆
『ペペ・ベネンヘリ』声 - 大泉洋さん


◇一番可愛いキャラクター◇
『メグロ(黒猫)』声 - 猫さん


以下、「おなら」について。(どーでもいい話なので、〆ます。)
{netabare}
作中、ドーピング検査の為、検査員の前で尿検査を行うシーンがあるのですが、

主人公ペペは、そっちより先に後ろから放屁し、検査員を巻き込んで変な空気を作り上げておりました。


この時の屁の音は、実にリアリティがありましたね。

尿の時のヤツは毎度、甲高く小奇麗な音色を奏でるものです。


たまにお尻が、力みor緩み過ぎて、本命が顔を出す場合も……。。。


あの時ほど、自分が人間のクズだと思った時はありません。
{/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 32
ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

少しおっさんの味

ふといつも映画をレンタルする場所で、この水彩画チックなこのタイトルが目に付き視聴。

物語は、自転車ロードレースのプロレーサーとなって世界を飛び回っているペペが、地元で開かれる「ブエルタ・エスパーニャ」という大会に出場する折、ペペの兄アンヘルの結婚式が地元で催されており、結婚式の打ち上げ会でペペを応援します。

まず、所感ですが・・・
多分、わかる年齢なら噛み締めるように頷けるようなものなのだろうけど、
私には少し早かった。
私もわかるようになりたいなあ、とちょっと憧れてしまう、そういう大人の、もといおっさん向けの作品です。
{netabare}
では、なぜそんな感想になるのでしょう。
まず、導入で、ペペの友人であるフランキーが登場します。
エルナンデスとの会話で、フランキーは独り言のように答えます。
「俺の夢はアイツに託したんだ」
物語中盤からわかるのですが、ペペは村を出たいと思っていました。
「プロ仕事以上の事をしちまうのがプロだって。でなくちゃ そうでなくちゃ 生まれた土地から出て行くことは出来ないんだ 俺は遠くに行きたいんだ」
フランキーは、夢はあったけれども、外の世界に出られなくて、地元から離れられなかった。夢を諦めた。
だからこそ、フランキーは外に出られたペペに夢を託す。
フランキーとペペの関係は、夢を諦めた人、縛られた世界から外に出ようと必死にもがいた人ほど二人の関係性が味わい深く感じられるような、情熱と諦めを秘めた関係なのです。
これは、渋い・・・


次に、ペペの故郷(ふるさと)への帰郷。
プロのレーサー、一人前になったペペは、仕事で地元に「来た」だけです。
そんなペペを、地元の村の皆は応援してくれる。
偏屈なエルナンデスの店で、アンヘルの結婚式の打ち上げで。
地元の名産の茄子漬けと、それによく会うビールを飲んで。
エルナンデスは村を愛するがゆえに、外に出て行ったペペを毛嫌いしていル風に装ってますが、いざレースが始まれば、誰よりもペペを応援する声が大きい。
エルナンデスが地元を愛する心と、ペペを応援する心は反発しあうものでしょうか。
夕日の中、レース後のストレッチで走るペペを見ながら、エルナンデスはアンダルシアの歌を歌います。
「君を待つよ、何もない故郷 アンダルシア」
この曲はふるさとを離れた、外に出て行った人の事を思うふるさとを愛する人の曲です。
故郷に残った人と、故郷を離れた人。
たとえ故郷がやせ細った土地であったとしても、私は故郷を愛しているし、
例えば、良く子供の頃から付き合っていた君が故郷から離れても、
君が帰ってくることをいつでも待っているよ。
とそんな風に受け止めました。故郷を愛する心と、故郷を捨てた人を待つ心、それが同居している曲なのです。
む、胸が締め付けられる・・・

あの曲をエルナンデスがあの場面で歌うということは、いつでもペペの帰りを待っているということなのかもしれませんね。


そして、ペペと兄弟の話。
兄のアンヘルは結婚式の参列者に「俺の弟はプロレーサーなんだ」と言い、テレビに向かってみんなでペペを応援し始めます。
レースが進んでいくごとにペペとアンヘルの兄弟の昔話が進みます。
兄弟で競い合うように自転車を取り合い、青年になればロードレースで競い合い、そして恋人で競い合う。
そこには、この兄弟の変わらないありようを感じました。
自転車では弟がロードレーサーへの夢を掴み、兄はその夢を諦める。
恋人では兄が勝ち、弟は爆発させたいような、ふるさとを出て行きたい気持ちを募らせる。
兄は弟に自転車の夢ではの羨望を抱いていつつも、恋人ではやり返す。これで引き分けだなと、若かった時の事をおじさんに語るアンヘル。
それでいて、アンヘルはペペを敵視しているわけではなく、弟との自然なコミュニケーションとして、ペペと競い合うことを理解しています。

ペペの中には外に出たいと言う気持ちゆえに、故郷に反発する心がありました。
ですが、最後に故郷の味の茄子漬がホテルの夕食で出てきます。
チームのメンバーがナイフとフォークで食うのを見て
「しらねえのか?これは、こうやって食うのさ!あむ」
と地元の食い方を教えてやるペペ。
ペペは自分の中にあった故郷を肯定するようになった。
兵役中に兄に想い人をとられたあの夜の自分の「ここを出て行ってやる」という故郷にも向けられた悔しさ交じった心に、何かが雪解けたようなラストでした。
心地良すぎるラストでした・・・

EDに流れる忌野清志郎の曲も調子が良すぎて後腐れがなくて最高でした。



夢を諦めたこと、外に出て行きたいということ、そういった挫折や衝動を味わった夏を、大人になってから回想し、今を生きている人達を描いています。
そういった経験を整理できるほどの歳を重ねるほど、この作品の渋さがわかるんだろうなあと、憧れを持って締めさせて頂きます。
ラテンの楽曲に乗った情熱的でストイックなレース描写も含め、濃密な46分なので、とても良い作品です。 {/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 31
ネタバレ

ヲリノコトリ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ジブリが自転車レースのルパン映画を作った感じ

【あらすじ】
自転車ロードレース、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」に出場したチーム「パオパオ」のアシスト選手が過ごした1日。

【成分表】
笑い★☆☆☆☆ ゆる☆☆☆☆☆
恋愛★☆☆☆☆ 感動★★★★★
頭脳★★☆☆☆ 深い★★☆☆☆

【ジャンル】
自転車レース、スポーツ、感動、苦悩

【こういう人におすすめ】
自転車ロードレースの知識ある人、ジブリ作品をすべて見ているといいながらまだこれを見ていない人、弱虫ペダルで自転車を知り、「その次」を探している人。

【あにこれ評価(おおよそ)】
71.1点。「自転車乗り必見の隠れた名作」といった様子。

【個人的評価】
これでロードレースの存在を知り、弱ペダで知識を鍛えなおして再挑戦した結果、すごい作品だと知った。そしてしばらくyoutubeで本場の動画を漁ったりした。続編もあるよ。
『自分のお気に入り』

【他なんか書きたかったこと】
{netabare}  これ意外と知られていないんですかね?
 まだ観ていない方、ジブリ映画一本見逃してるくらいの感じですよ!
 45分映画なのでさらっと見れます。

 視覚的な雰囲気はジブリ映画、ルパン映画のそれであり、この作品の作画が肌に合わないという日本人はいないんじゃないかというくらい見慣れた雰囲気のアニメです。
 対して内容は、ジブリ映画やルパン映画とは毛色が全然違います。舞台はスペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャで、レースの雰囲気や土地の風景、風習はかなり細部まで再現されています。相当の自転車バカたち(褒め言葉)にしか作れないアニメです。
 しかし、関係者が自転車バカすぎて、専門知識の説明がほとんどないため、自転車レースやスペインに関する知識がないとストーリーは所々ちんぷんかんぷんです。これを最初に観た時の、高校生の私はそうでした。
 私はその後、「弱虫ペダル」(アニメ・漫画)をみて自転車レースに関する知識を得ました。それからこの映画を見るとストーリーの細部が分かってさらに面白いです。
 さらにレースの内容より複雑なのが主人公の心境です。もはや複雑すぎて言語化できない心境でしょう。これに関しては直接観て感じ取ってください。

 私の知る範囲で、わかりにくい専門知識についていくつか補足します。にわかの知識なのでちょっと間違ってるかも。

・地面に書かれた文字
{netabare}  自転車レースでは、地面に白線で応援メッセージを書いて選手を鼓舞することがあります。venga(ベンガ)はスペイン語で”さあ!”などの相手を促す意味で使われ、「venga pepe」だと「それいけ!ぺぺ!」的な感じになります。
{/netabare}

・集団の方が速度が速いの?
{netabare}  基本的に自転車レースでは空気抵抗さえなければほとんど脚力をつかわないで進めるので、集団で走って、前の人の起こす風に乗って走る方が有利です。なので基本は、集団に先行して独走するより、できるだけ巨大な集団にいて足を休めていた方が終盤に有利になります。「足を休めることができる」=「無茶しても後で休憩できる」ということで、集団の方が体力温存できる上に速いです。 {/netabare}

・「お前ら少しは前を引け!追いつかれるぞ!」
{netabare}  自転車レースではチームが協力し、状況によっては別チームのメンバーも協力し合い、順番に風の抵抗を受ける先頭を走って速度を維持します。疲れたら後ろに下がり、別の人に先頭を任せるわけです。自分が楽しようとしてほかの人ばかりに先頭を任せると、その人たちが疲れてしまい、自分のいる集団のペースが落ちて自分の不利益になります。 {/netabare}

・「今日はなんとしてもギルモアに勝ってもらう」
{netabare}  以上を考慮して、チームの中で最終局面に強いエースを決め、その人には出来るだけ前を引かせないようにして体力を温存させる戦略が一般的です。そして逆に、チームの中で、優勝することを考えずエースを勝たせるために終盤までエースの前を走って引っ張ってあげる、アシストと呼ばれる選手が必要となるわけです。主人公ペペの役割がこれです。 {/netabare}

・「ゴールまであいつのお供は自殺行為っす」
{netabare}  集団をぶち抜いて超加速することをスプリントと言い、この能力には個人差があります。このアニメでは、先頭集団では赤ジャージのチョッチが最もスプリント力があるようです。しかし後方集団にいる黒ピンクのジャージのベザルという選手はそれよりさらにスプリント力のある選手のようです。こういうスプリント力のある選手と一緒にゴール前に来たのでは最後の超加速で勝てないわけですから、それまでに疲れさせるか、集団から置き去りにする必要があります。 {/netabare}

・続編に出てくる「アウター!?」
{netabare}  「アウター」は自転車の変速に関する用語で、インナーからアウターに変えるとペダルは重くなり、タイヤの回転数は上がります。急な坂道を登るなら普通はペダルを軽くするためにインナーを使います。 {/netabare} {/netabare}

投稿 : 2025/01/04
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