renton000 さんの感想・評価
4.8
賛否両論は仕方ない。。。(補足追記)
あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。
二度目の視聴後のレビューになります。
この作品は、良質な文学作品のように非常に緻密に構成されています。表面的なストーリーを追うよりは、各シーンから二郎と菜穂子の人物像を読み解いていく作業に集中すると、より楽しめると思います。
なお、過去のジブリ作品における経験をこの作品に持ち込むと、大抵の場合は期待外れになるような気がします。期待外れがプラスに働くかマイナスに働くかは見る人次第ですが、物語を感情的に捉える人にはマイナスに、構造的に捉える人にはプラスに働くのではないでしょうか。
もちろんこれは視聴方法の好みであって、優劣の問題ではありませんけどね。今作のように構造に寄った作品は今までの宮崎駿作品にはなかったように思います。私は、宮崎駿作品に限らず、他の全ての作品と一線を画す傑作に仕上がっていると思っています。(追記しました)
テーマ・ジャンル:
テーマやジャンルを特定するのは難しいですが、いわゆる私小説的な作品ですね。二郎の幼少期から菜穂子との別離までを描いたものです。幻想の世界というファンタジー要素も含んでいますが、震災や戦争はテーマではありません。時代が人に影響を与えることは避けられませんので、時代背景としては不可欠なものですが、殊更構えて見るべきではないと思います。
人物像:
二郎と菜穂子の人物像を語ることで物語の考察の大半が終了します。端的に述べますと、二郎は「夢見るくそったれ」で、菜穂子は「したたかでかわいい女性」となるでしょう。上手い表現が見つからずに心苦しいのですが、遠からずといった表現にはなっていると思います。過去の宮崎作品の主人公像を、絶対に持ち込んではいけません。
以下ではその裏付けとなるエピソードについて記述していきます。
1.二郎
①初恋ネタバレレビューを読む
②女性ネタバレレビューを読む
★追記内容は、ここの(※)の補足です★
③菜穂子ネタバレレビューを読む
④加代ネタバレレビューを読む
⑤ピラミッドネタバレレビューを読む
⑥二郎の人物像ネタバレレビューを読む
2.菜穂子
①再会時ネタバレレビューを読む
②森の小道ネタバレレビューを読む
③雨ネタバレレビューを読む
④二郎との生活
二郎の項目の③菜穂子を参照してください。
⑤菜穂子の人物像ネタバレレビューを読む
3.エンディングネタバレレビューを読む
総評:
「好きか嫌いか」と「良い作品か悪い作品か」というのは別のベクトルです。この作品の良さを認めつつも、嫌いと評価することを否定はしません。私は二郎というキャラクターは嫌いです。しかし、この作品は好きです。風の表現など、ここでは述べなかった見どころはまだまだあります。ですが、人の生き様を描いた作品ですので、人物から目をそらしては欲しくないというのが本音です。
物作り・スポーツ・勉強・仕事、何かに打ち込んでいる人は、二郎を理解してしまうところはあるでしょう。ですが、過剰に共感してはいけないようにも思えます。私は少し反省しました。。
対象年齢:
大人を推奨します。細かな描写まで拾える力が必要となりますので、高校生くらいだと厳しいかもしれません。
一度見ておいて、面白くなかったら「将来の宿題にしておこう」程度に気軽に捉えてみてはどうでしょうか。子供には見せないほうが良いかもしれません。この作品の良さを知る前に嫌いになる可能性があります。
★★追記ここから★★
(※)初出勤時のシーンについての補足ネタバレレビューを読む
★★追記ここまで★★