秘密で記憶喪失なおすすめアニメランキング 4

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ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年02月07日の時点で一番の秘密で記憶喪失なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

77.2 1 秘密で記憶喪失なアニメランキング1位
ジョーカー・ゲーム(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (993)
5040人が棚に入れました
世界大戦の火種がくすぶる昭和初期を舞台に、帝国陸軍の“スパイマスター”結城中佐によって設立されたスパイ養成部門「D機関」の活躍が描かれている。

声優・キャラクター
堀内賢雄、下野紘、木村良平、細谷佳正、森川智之、梶裕貴、福山潤、中井和哉、櫻井孝宏、津田健次郎、関智一

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

「自由」なニヒリスト

【2016/06/23 視聴完了して改稿】


太平洋戦争開戦前夜、大日本帝国陸軍内に設立された異能のスパイ組織「D機関」によるスパイ戦を描いた物語。

原作小説が複数の賞を受賞しているだけあって、基本設定が、幾重にも考え抜かれた、さまざまな要素が有機的に組み合わさった巧妙なものだ。
これほど巧みな設定を創ってしまえば、そこから生じるストーリーの出来も半分は保証されたようなものだが、映像化にあたって過度な省略をすることなく手際よく取り込んで、うまくアニメ用に落とし込んでいる。

本作内の「スパイ戦」は、任務の遂行というサスペンスを追う形式ではなく、任務の遂行途上に現れる「謎」が「推理」によって「解決」される、本格ミステリとして描かれる。
任務自体と二重化される本格ミステリの謎は、手掛かりもフェアに開示され、「本格」のフェアプレイルールにのっとったものだ。

任務遂行そのものと言える謎解きは、アニメ化に際しては、視聴者も共に推理するようなプロットで組み立てられてはいないものの、推理を語るセリフにかぶせて提示されていた伏線を映像でオーバーラップさせ、すっきりと見せている。
言葉による説明を重ねて論理性を補強できないハンディはあるが、その分、ビジュアルによって事前に張られた伏線の存在を明示して、「推理」によって解決されたのだと示すアニメ的な「本格」表現として成立している。
「解決」が任務にもたらす効果も、「スパイ戦」への意外な繋がりを見せる有機的な構成になっていて、「意外な結末」を実現したものだ。
ドラマ的な意味でも、周到なビジュアルは「世界」の時代性を説得的に見せる面白さがある。
(この時代に、シングルでピークドラペルの背広が流行していたのだと、初めて知った)

題名でもあり第一エピソードのサブタイトルにも使われた、作中の〈ジョーカー・ゲーム〉に喩えられる、ある種の「頭脳戦」だが、「謎」の解決が「推理」によって行われるところに「頭脳」性が象徴されている。
いわば〈ジョーカー『ゲーム』〉としてのゲーム性が、謎解きの「ゲーム」性に重ねられているわけだ。


だが、〈ジョーカー・ゲーム〉のルール=実体的なルールは無いという「ルール」は、よく考えれば奇妙なものだ。
〈ジョーカー・ゲーム〉のルールならざるルールは、「D機関」で叩き込まれる各種の理念、集約すれば、自由に「なにものにも捕らわれず、ありのままをみろ」というテーゼに導かれるものだが、これは外国に対抗するため、妄想的なイデオロギーに支配された「遅れた」日本の軍事独裁体制に、「進んだ」外国の合理性を取り入れるといったプラグマティズムではない。
「外国」「日本」の区分すら相対的な価値の一つに過ぎないと一蹴する「ニヒリズム」だ。

何物にもとらわれない=何物も信じないとは端的にニヒリズムそのもので、徹底すれば「ルール」にすら価値を認めないニヒリズムの前では、通常はいかなるゲームも成立は不可能に見える。
特に、厳格な枠組みを必要とする「本格ミステリ」の謎解きゲームは。

結城中佐が様々な形で学生に教える「スパイの心得」は、ニヒリズムへと結実する、身もふたもない事実性から導かれる冷徹な「法則」だが、しかし一つだけ、D機関の第一格率ともいえる「死ぬな、殺すな」だけが、その中で異質だ。
この第一格率は、「人の死は注目を集める=見えない存在であるべきスパイにとって注目は致命的」という合理性から生じるものだが、合理性はあるものの、それは「経験的な蓋然性」に根拠づけられているというだけで、事実性の裏付けが「ない」

ここにだけ、事実ではない、結城中佐の「恣意」が紛れ込んでいる。

ミステリーで「木の枝を森に隠す」ように、様々な不信のニヒリズムに紛れ込ませたこの第一格率が、謎解きゲームとしての、本格ミステリの「ゲーム空間」と「ルール」を発生させる基盤となっている。
ミステリ作品として「本格」の謎解きを描き出すために、〈ジョーカー・ゲーム〉に象徴される特異なスパイ組織「D機関」は設定されたのだと言えるだろう。



幾重にも巧妙な設定は、キャラクターにも及んでいる。

「なにものにも捕らわれない」D機関の学生たちは、徹底したニヒリストだ。

「自由」な視点を獲得するための「なにものにも捕らわれない」は、何物も信じない=信じられないというニヒリズムの裏返しで、自分自身すら信じない=何者でもない自分という虚無を必然化する。

自分自身まで信じないほど徹底したニヒリズムに侵された彼ら学生にとって、行動を支えているのは自分への「信頼」というナルシシズムではなく、自分にならできなければならないという「自負心」だと描かれている。

同時代のドイツ青年ならハイデガー哲学へと吸引されたかもしれない虚無を内面化しながら、なお「何者でもない」自分の「自負心」の全能感だけは手放さない「人でなし」の「化け物」たち。

D機関の「化け物」の矛盾した肖像は、どのような価値観に直面しても「そんな考え方もあるね」としか捉えられない現代のわれわれ視聴者の気分と、それゆえに自分が特別であると主張することができないにもかかわらず、消費の現場では漠然とした「全能感」を覚えてしまう「消費者としての私」の自意識との不思議な結合に、絶妙に共鳴している。

人はあらゆる手段で金を得ようとする、という確信が市場原理主義の根底にある。
そのことが、生産者は消費者の望むようにモノやサービスを提供する「はず」、という「理論」を生むのだが、いつの間にか「消費者が望むならば、どのようなことでも生産者は実現する」という「信仰」へと変わった。
実体としては、モノやサービスは生産者の事情に合わせて、生産者の都合に規定されて提供されるしかないのに、この「信仰」が、「消費者が望むだけで、(価格は別として)なんでも実現する」という倒錯した現実認識に帰結する。

「(潜在的な消費者としての)私が考えるだけで、(買える値段かは別として、どこかの誰かによって)実現しないものはない」という消費者の架空の全能感が、「この自分に、できないことはない」という学生たちの虚無の中の由来のしれない「自負心」と照応している。
人間業とは思えない異能の「化け物」が何人も登場する物語に、無理なく視聴者を引き付ける巧妙な仕掛けだが、「消費者の全能感」が太平洋戦争の敗北によって持ち込まれたアメリカニズムの洪水から浮上したことを考え合わせると、これもまた多重化された設定の構築性の高さの表れの一つと言えるだろう。

一応のところイケメンではありながら、どこかのっぺりした印象の薄さを感じさせるキャラデザインは、このような設定にビジュアル面でも説得力を持たせている。


ところで、「ゲーム」であれば、開始と終了が当然に設定されるだろう。

ゲーム性を支える「死ぬな、殺すな」は、「死」が特殊な現象である「平時」の社会に規定されている。
近代前期まで、外交の一部として「兵士」によって戦われる戦争は、戦場外の市民社会と隔絶されたものだった。
が、「総力戦体制」下で戦われる絶滅戦争では、「戦場」は即ち全社会領域と同意となる。戦場での「死」もまた、市民と隔絶した兵士だけのものではない。
「死」が日常にあふれこむ戦争状況であれば、「第一格率」は無意味化せざるを得ないだろう。
言い換えれば、日本が戦争当事国になれば、つまり戦争を開始すれば、相手国内での「D機関」の異形のスパイ技術システムは破綻するのだ。

そのとき〈ジョーカー・ゲーム〉もまた、失効するだろう。
或いは別の「ゲーム」が生まれるのかもしれないが、どちらにせよ〈ジョーカー・ゲーム〉は終了する。

物語の現在が太平洋戦争前夜であることを知る視聴者は、ゲームの終了が迫っていることをも知っている。
いや、すでに日中戦争は進行していることによって、「終了」の予感はうっすらとした不穏な影となって作品全体を覆うことになる。
作中に漂う漠とした不安感は、戦争の予感と共に、「ゲーム」の終了の予感、さらには「敗戦」という終了の予感と多重化されたものだ。
『ジョーカー・ゲーム』という物語は、このように終了までのタイムリミットを構造化したものとして、緊迫感を増して迫ってくる。



このように幾重にも緻密な設定は、逆に言えば、設定から逸脱した物語を許容できないだろう。

OP主題歌の歌詞が、設定から乖離した、いかにも薄っぺらで表面的な言葉の羅列だったのが気になったのだが、これは「ミステリ」らしいミスリードだったのかもしれない。
「使命」のための功利主義的な手段としての「非情」だとか、隠されたヒューマニズムを描き出すための戦争の「無常」といった、設定に矛盾する見当違いの物語を盛り込んで破綻させるのではないかと危惧していたのだが、杞憂だったようだ。

あらゆる価値を受け入れることのできないニヒリストには、行動の核となる「かけがえのない」価値を持つ「理由」のある「何か」を持つことができない。
自身の中に疑いなく生じる確信を持った「何か」によってではなく、理由なく無根拠に「あえて」没入を決断することでしか、ニヒリストは行動できない。

誰よりも徹底して空虚であることによって誰よりも高い「異能」を持つD機関員たちが「あえて」没入するものが、「価値」や「理由」からもっとも遠い「遊び」=〈ゲーム〉であるのは、ある種の必然でもある。

ルールすらない究極的に空虚なゲーム=『ジョーカー・ゲーム』は、徹底して「自由」な「ニヒリスト」が「あえて」没入するものとして、無根拠で無内容な「遊び」として設定されなければならない。

「化け物」たちの内面に立ち入ることなく一見して淡々と進行するストーリーは、設定から逸脱することなく、無根拠な〈ゲーム〉=「遊び」性を的確に表現しきったようだ。
同時に、「かけがえのない」何かを抱えた「内面」が生じ、「ニヒリズム」が不徹底化した瞬間に、「遊び」に裏切られ「ゲーム」に敗北する必然も。

名前も経歴も捨て、ひとり異国に潜入して現地に溶け込むD機関員の「人でなし」の「化け物」たち。

日本での個人生活を切り捨て、世界中どこへ送り込まれても労働できる人間が「グローバル人材」と称して賞揚されている現状をみれば、本作の設定が、大戦中のスパイ戦のリアルを描くためなどに要請されたのでは無いことは明瞭だろう。

さて、「化け物」の劣化コピーであるわれわれ視聴者は、何の〈ゲーム〉の渦中にいるのだろうか。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 9
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

映像もストーリーもよく練られたスパイもの<原作読了、追記あり>

本作は繊細な描写が魅力で小説や洋画(特に古い名作)のような印象の、スパイを主人公としたミステリー作品。
何回も視聴して想像や考察をしながらじっくり楽しむのが吉です。

アニメよりも実写向きと感じるような作りですし、エピソードごと時系列を入れ替えていたり、メインキャラクターを意図して見分けがつきにくくデザインしているなど、アニメとしては尖ったところもあります。

エンターテイメント的なアニメを好む人や、キャラクターの掘り下げを望む人には向かないかもしれませんが、シリアスなアニメや他の媒体の作品も好む人には逆に入りやすいのではないでしょうか。

【ビジュアル面】
キャラクター原案は三輪士郎さんで、キャラクターデザインの矢萩利幸さんがアニメの方向性に合わせてより地味なイメージに落とし込んでいます。
ことD機関のスパイ8名は全員目立たないモブ顔を設定するという方法を取りました。アニメキャラクターは一目で見分けがつくべき、という考え方からすれば思い切っていますが、機関員8名はスパイとして目立たず活動する作品なのでこれで正解だったと思います。

作画は安定感と美しさでリアリティを追求している点が最大の特長。動きもデフォルメが少なめ、色彩も暗めなので若干泥臭いイメージにもなっていて、そういう部分が好きですね。
安定した作画でキャラクターの仕草や表情が細かく、緊張感やリアルな雰囲気が途切れなかったことが一番素晴らしい点だと思います。

背景もやはりリアルで美しく、地に足の着いた映像作りがされていて、世界観をよく表現していました。


【キャラクターと声優】 {netabare}
大御所がいっぱいでしたw演技に関しては本当に素晴らしかったの一言です。

結城中佐はほんの僅かに人間味を見せることが実は少なくなく、長いスパイ活動を経てもその人間性を捨て去っていない点がかえって恐ろしいと同時に素晴らしいキャラクター。
堀内賢雄さんは感情を見せない語り口、時折見せるかすかな人間性、変装時の演じ分けなど最初から最後まで、本当に素晴らしかったです。個人的に賢雄さんはシリアスキャラがすごく好きなので嬉しかったです。

ゲストキャラクターではヴォルフ大佐と、その声を当てた銀河万丈さんがとても印象深いです。若い頃との演じ分けも好きですし、判断力に優れた面、冷徹な印象や威圧感、結城中佐に対する一種の執着などその人間性がとても感じられました。
{/netabare}


【ストーリー面】 {netabare}
オムニバス形式 で各話独立した物語として展開、八人の機関員にそれぞれスポットが当たる構成です。
あえて時系列を入れ替え最初(1,2話)と最後(12話)にキャラクターの人間性を描くタイプのエピソードを配置。3話がいきなり荒唐無稽なストーリーなのは気になるものの、話数が進むほど視聴者を引き込む作りになっており、おかげで右肩上がりに面白くなったと感じました。

そして最終話がいつも通りに始まりいつも通りに終わる、というのが実に本作らしい。そういう終わり方になるだろうとは思っていましたし、私自身それを期待していました。
スパイたちの人生にも活動にも終わりはなく、視聴者はそのいくつかの出来事を覗き見しただけと思っていましたし、時系列の入れ替えのおかげでそれが自然だと感じられました。

ラストの結城中佐の台詞は第1話最初の台詞と同じで、これが格好良かった!全体のまとまりも感じられて良かったです。
佐久間さんに対しては「これまでの考え方を捨てろ」、小田切さんに対しては「ここでの経験を忘れるな」という意味もありそうですね。
原作からは改変されているそうですが、スタッフが最後までアニメとしてより良い作品を作ろうとしたと思えて、なんとも粋で、正直燃えました。そういうアニメじゃないけどこれw
{/netabare}

【本作の2つの柱】 {netabare}
本作を1クールで展開する上での柱だと私が感じたのは「スパイの生き様」「虚構」の2つです。しかもその2つの要素は密接にリンクして、綺麗に全12話で起承転結にまとめられていました。

まず1、2話で佐久間が初めて機関員(スパイ)の「虚構」を認識します。佐久間は視聴者目線に立つ存在でもあります。
そして機関員は優秀なスパイで、その存在は「虚構」であり、影となって状況をコントロールするという、その仕事ぶりでスパイを語るという構造なのですね。
3話~7話で機関員たちが主役でないのは当然のことです。スパイの生き様は色々ですが、諜報戦から降りざるを得なくなった者だけが「虚構」を捨て去り(あるいは剥がされ)、初めて物語の主役になるわけです。
そういう意味では、軍人であることを捨て去れない風機関の人間はそもそも諜報戦に参加することすらできませんでした。

結城中佐は上に立つ人間ですし身体的ハンデが特徴になるので影にはなれませんが、逆に掴まれている情報を餌に「虚構」を構築することで状況をコントロールし、アーロンを引退に追い込んでいます。結城中佐の過去話かとおもいきや、10話の主役はアーロンさんなんですよね。
11話は三好が真木という「虚構」を被ったまま人生に幕を下ろす物語でもあり、同時に結城中佐の「虚構」が危うく崩れかける物語でもありました。ニアミスしたのがヴォルフ大佐だったら、一切偽装していない結城中佐は実体をつかまれていたでしょう。
そして、最終話では自己を捨てきれない小田切を描くことで、相対的に視聴者に機関員の「虚構」を再認識させているのです。(キャストの役名が「飛崎弘行(小田切)」になってることに今になって気がつきました。細かい!)

もともと虚構であるアニメーションでは、いかにリアリティを持たせるかが大切です。
本作は映像からはリアリティを追求しているように感じますが、実際は「虚構」を描く作品でした。本作中でキャラクターの語る偽情報すら映像が付いていたのは、視聴者を引っ掛けるフェイクだったのでしょう。原作ファンを引っ掛ける改変もあったようで、そう言われると原作がさらに気になりますw

実写ドラマでも面白いかも知れないと最初は思いましたが、人の手でゼロから創り上げられる虚構(アニメ)だからこそ、本作は魅力的なのかも。
{/netabare}


【雑感】 {netabare}
感情移入が出来ないとのめり込めない私が全話面白く見られたのは、一見淡白に見えても、ストーリー(ミステリー)の中に人情噺のような側面を必ず入れていたからだと思います。
ストーリーを引っ張るのは機関員ですが、他のキャラクターはきちんと人物描写されていて、仕草や表情も見逃せなくて毎回画面に釘付けになってました。

それから自分としては意外だったのが、三好の死がめっちゃショックだったこと。
原作ファンの方の書き込みを目にする機会があって、視聴前から知っていたのにズシンと来ました…普通なら嫌いなタイプのキャラクターなのに…
なんというか三好が、というより「人間の死」というもののあっけなさ、迷いも後悔も心の中に一切無いスパイの死に様が重かったですね。ドラマチックな演出が一切ないからこそ辛かったです…

考える頭脳があるのに日本軍人として生きると決意している佐久間、スパイとして秘密を保って死んだ三好、暗い時代に孤独と苦難の道を歩む機関員たち、それとはまた違う厳しい道を選択した小田切、誰にも見せない苦悩を抱えているであろう結城中佐。
キャラに感情移入するアニメじゃないのに私が嵌ったのは、彼らに想像の余地を残してくれているからです。
本作で何を見て何を考えるかは視聴者に委ねられています。そこがとても好きですね。
{/netabare}

本当にスタッフに恵まれた作品でした。
本作を見ているとわからないことも沢山ありましたが、本作の公式サイトには時系列表やコラム等があり、理解の助けになりました。かなり内容が充実していて頭が下がります。

振り返ると無駄な話はひとつもなかったと思いますし、繰り返し視聴するのが楽しい作品です。
こういう新作が定期的に出てくれると個人的にはとても嬉しいですね。(2016,6,27)


本日原作を読了しました。
キャリアのある作家さんだけあって読みやすく情報量も多く、描く要素も一貫していてとても面白かったです。時系列は原作もばらばらで、アニメだけではなかったんですねw
アニメ版が気に入った方には是非読んでみて欲しいです。

原作のひとつの特徴として、小説というビジュアルのない媒体だからこそ出来る登場人物の「無名性」があります。{netabare}登場するスパイ達は偽名しか付けられていませんし、スパイが主役となる物語は最後にその人物の"スパイとしての死"が示唆されることが殆どです。{/netabare}
アニメ版に私が感じた「虚構」は原作から引き継がれた重要な要素だったのですね。

アニメーションではビジュアルが絶対に必要ですから、やり方を間違えると本作の魅力を大きく損なう難しい要素だったんだなと読んでみて思いました。機関員のキャラクターデザインはとても良いバランスだったと思います。

物語としても、キャラクター数や情報量を減らしながらも物語の筋はきちんと通り、そのために原作を分解・再構築することを恐れないよく練られた作品でした。

動画配信サイトが再放送など行ってくれていることもあり、良い評価を受けているようで一ファンとしてとても嬉しく思います。
(2016.7.8追記)

投稿 : 2025/02/01
♥ : 51
ネタバレ

Witch さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

「スパイ作品=アクション」だけじゃない!!しっかりとしたミステリーで魅せる良作

【レビューNo.97】(初回登録:2023/12/03)
小説原作で2016年作品。全12話。
交流あるレビュアーさんの棚で本作を見つけ、そういえばいい作品だったなと。
昭和初期の日本に実在したスパイ養成機関、陸軍中野学校をヒントに、柳広司
作の戦時下のスパイを題材にしたミステリー小説で、第30回吉川英治文学新人
賞他を受賞など原作の評価は高いようですね。

(ストーリー)
昭和12年秋、陸軍中枢部の多数の反対意見を押しのけて、結城中佐の提案でス
パイ養成学校「D機関」が設立された。訓練生たちは互いの素性を知らないまま、
精神と肉体の極限を要求される訓練を受け、優秀なスパイへと成長していく。
そして結城中佐の指揮の元、世界各国で暗躍し始める。

(評 価)
・日本陸軍でも異質な存在が際立つ第1話
 ・第1話の主役は、陸軍から監視役としてD機関に出向してきた佐久間中尉。
  バリバリの軍隊教育(思想)を受けてきた、当時の代表的な日本軍人です。
  そんな佐久間に、開口一番結城中佐が先制パンチを見舞います。
  {netabare}「馬鹿か?貴様。背広姿で敬礼する奴があるか」(軍人だと即バレw){/netabare}
 ・そして佐久間が妄信する
  ・戦いは正々堂々と。
  ・名誉や愛国心のために時には死することも厭わない。
  ・そのような覚悟のないスパイは「卑怯」な存在。
  これをD機関の学生たちは「トートロジー…見事な鰯の頭です。良く仕込ん
  だものですが、新興宗教と同じですよ。」と一笑に付します。
 ・最後に結城中佐はスパイの矜持を説くのです。
  {netabare}・彼らは各国で途方もないない長い期間、たった一人で自らを見えない存
   在とし、諜報活動に勤しまなければならない。
   → 彼らに待っているのは真っ黒な孤独だ。
   → 唯一の支えは、常に変化し続ける多様な状況の中で、咄嗟に判断を
     下せる能力だけだ。
 ・佐久間は(洗脳された)自分たちの行動原理との違いに衝撃を受け
  ・彼らの支えは「自分たちならこの程度のことはできなければならない」
   という恐ろしいまでの自負心だけ。 
   → そんな生き方ができるのは人でなしだけだ。
  彼らを「怪物」だと評するのです。{/netabare}

 後述の「ジョーカーゲーム」のシーンを含め、ここまでが1話Aパートになり
 なります。まだ本筋のスパイ活動ではないですが、D機関がかなり異質な存在
 であることを強く印象づける見応えある会話劇とその世界観に、冒頭から引
 き込まれる感じですね。

・「ジョーカーゲーム」とは
 タイトルにもなっている「ジョーカーゲーム」について解説。
 ・D機関の学生たちが楽しんでいた、表向きはポーカーですが、
  {netabare}・プレイヤーは食堂にいるものを味方につけ、盗み見たカードをサインで
   知らせてもらう。
  ・だが誰がどちらについているかはわからない。
  ・サインは偽物かもしれないし、敵のサインを読み手が変えることもある。
  ・場合によっては敵のスパイを裏切らせ、味方につけることもできる。
  いかにも、スパイ養成学校らしい遊びです。
  (ただのポーカーだと丸腰で参戦した佐久間は、当然惨敗w)
 ・そしてこれが「国際政治」の縮図で、見せかけのルールにとらわれ、実際
  に行われていたゲームの本質にすら気づいていないのが「今の日本の姿」
  であると。
 ・これは何も国際政治に限った話ではありません。(軍内部の権力闘争等)
  佐久間はD機関と合同任務を実施するために派遣されたのですが、
  ・この任務に隠された上層部の真の狙い
  ・その狙いを事前に察知し、逆に利用するよう動いていたD機関
  最後にこの真相に辿りついた佐久間はこうつぶやくのです。
  {netabare}「俺は最後まで入ることすら出来なかった・・・『ジョーカーゲーム』に」{/netabare}{/netabare}

 なるほど、タイトルとするにふさわしい作品の本質を表していると感じます。

・スパイモノながら頭脳戦や推理モノの要素が強い
 ・物語としてはスパイモノらしく
  ・他国での諜報活動
   → ターゲットへの接触や潜入・協力者との情報交換
  ・国内でのスパイ活動の監視
   → 敵国スパイの監視や(裏切りによる情報漏洩など)陸軍への内偵
  ・陸軍本部との権力闘争
   → D機関の存在が面白くない上層部からの仕掛け
  といった内容を、各国に散ったD機関のメンバーに焦点を当て、1-2話の
  オムニバス形式で見せていく形になります。
 ・なので
  ・結城中佐以外のメンバーの出番が少ない。
  ・(他の方も書かれてますが)そもそも「スパイとして印象に残りにくい」
   をコンセプトとしたキャラデザらしい。 
   (各話毎に主役が変わっていくが、正直誰やねん?!という感じw)
  ということで、登場人物には感情移入しにくく、純粋にストーリーの面白
  さや創り込みを楽しむ作品という感じですね。
 ・ストーリーとしては、スパイモノなのでアクションもありますが、主たる
  流れは、任務の途中でアクシデントが起こり(マークしてたターゲットが
  何者かに消される等)、任務を遂行しながらその真相に迫っていくという、
  推理モノの要素が強い感じです。
 ・それに加え、陸軍本部の企みを巡る頭脳戦的な要素ですね。世界から「魔
  王」と恐れられた結城中佐が格の違いを見せつける様は、昔よく放送され
  ていた時代劇の「勧善懲悪」っぽい爽快感があります。
 ・あと主要キャラ男性ばかりなので、各話のゲストキャラで女性が登場する
  のですが、{netabare}もれなく「疫病神」だというw
  「女で身を滅ぼすな!」という原作者からの忠告なのでしょうか。
  (またD機関の採用が男だけの理由も最後に語られます。){/netabare}

原作既読ですが、アニメの方は原作の面白さを忠実に再現してくれているとい
う印象ですね。その分地味な作品という感は否めないですがw
(視聴後は「上質のミステリー小説を堪能した」って感じなんだよな)
同じスパイモノでも、某アニメにのような美少女たちのドタバタ劇をみせてく
れる訳でもなく、結城中佐も「極上だ」とは褒めてくれません(笑)
なので、明快な面白さやエンタメ性は薄い作品ですね。

それでも昭和初期の風景から始まり、ここから大戦へと突き進んでいく当時の
空気感だったり、作画もよくや音楽も作品にマッチしていて、制作陣はかなり
頑張っているなというのを感じますし、原作がしっかりしているので、ミステ
リーとして地に足のついた作品に仕上がっていると思います。
あと個人的には唯一思い入れのできるキャラ結城中佐は、世界で暗躍していた
経験があるだけにその言葉には重みがあり、堀内賢雄さんの好演も光り、見ど
ころのひとつかなっと。

「007」「ミッション:インポッシブル」など「スパイ作品=アクション」だけ
でなく、こういう作品もあることを知ってもらえればと思います。

(追 記)
>登場人物には感情移入しにくく、純粋にストーリーの面白さや創り込みを楽
>しむ作品という感じですね。
「神様のメモ帳」でも書きましたが、ミステリー主軸の作品ってこちらにかな
り尺をとられるので、1クールアニメだと元々人物描写でキャラの魅力を引き
出すとかがかなり難しいんですよね。
(原作の創りもありますが)そういう意味では人物を必要以上に描かないとい
う本作のスタンスは、割と理に適っているのかなという印象ですね。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 15

67.5 2 秘密で記憶喪失なアニメランキング2位
NOIR -ノワール(TVアニメ動画)

2001年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (232)
1766人が棚に入れました
パリで裏の仕事を営むミレイユ・ブーケは、ある日、夕叢霧香と名乗る日本の女子高生から不思議なメールを受け取る。そのメールから流れてくるオルゴールの曲を耳にして、ミレイユは驚愕した。その音楽こそ、かつて家族が惨殺された日、現場で流れていた曲だったからである。
ミレイユは霧香にオルゴールの曲について尋ねるために日本へと飛ぶが、霧香は過去の記憶を失っていた。そして、とある事件がきっかけで二人はコンビを組み、裏社会の仕事人として仕事を始めることになる。ユニットの名は「NOIR(ノワ-ル)」。
様々な依頼をこなすうちに2人は真のパートナーとしての絆に目覚めていくが、そんな彼女達の前に秘密組織ソルダの影が忍び寄る。
ソルダとは一体何なのか?その正体は?そして「ノワ-ル」の名が持つ真の意味とは…?

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

「あなたと私の過去への巡礼…」

この作品は2001年春から放送された「銃と少女」をコンセプトとした2クールのオリジナルアニメ作品です。
作品に関する事前情報といえば、音楽を梶浦由紀さんが担当されている事くらい…

梶浦さんといえば、魔法少女まどか☆マギカやソードアート・オンラインといった超人気作の音楽を担当されていますが、コゼットの肖像やPandoraHeartsなど、少しマイナーでも梶浦サウンドを思い切り堪能できる作品が存在します。
そういった事から考えても梶原さん目当てで作品を視聴しても大きく外れる事は無いと思っていましたが、今回も予想通り外れクジではありませんでした。

この物語の主人公は、高校生の夕叢霧香(ゆうむらきりか)…パッと見は普通の女子高生…ですが、彼女には自分の過去に関する一切の記憶がありませんでした。
目覚めた時に彼女の持っていたモノの全ては「ノアール」という単語の記憶と飾りの入った懐中時計だけ…

そんな彼女の前に現れたのは銃を持った刺客の数々…
もちろん目覚めたばかりの彼女は銃を持った屈強な男たちに追われる理由なんか分かりません。
ただ一つ分かっている事といえば「自分が殺らなきゃ殺られてしまう」事だけ…
でも不思議と彼女には対処すべき技が身体に染み付いていて、次々と襲い来る刺客を次々と返り討ちにしていくんです。

「自分の過去を取り戻したい…」
こう考えるのはごく自然の摂理だと言えるでしょう…
彼女はパリで暗殺代行業を営むミレイユ・ブーケに一通のメールを発信するのです。

メールを受け取ったミレイユは、頭を金槌で殴られた様な衝撃を受けました。
メールから流れてくるオルゴールの音色はかつて両親の持っていた懐中時計のメロディーと同じだったから…
ミレイユの両親は、ミレイユがまだ幼い頃に何物かによって暗殺されていたのでした。
だからミレイユの頭の片隅には「両親の敵討ち」が離れる事はありませんでした。

日本に渡り霧香と接触したミレイユでしたが、霧香の持っていた懐中時計以外、彼女の敵討ちを進展させる情報を得る事はできませんでした。
「自分の過去を取り戻したい」霧香と、「両親の敵討ちしたい」ミレイユはお互いの利害関係が一致することから、パリで共同戦線…暗殺ユニット「ノアール」を立ち上げ物語が動いていきます。

銃自体の扱いに長けたミレイユと、全身とありとあらゆるモノを殺傷道具にしてしまう霧香とのコンビは最初はチグハグでした。
この作品の見どころの一つは、この暗殺ユニットの成長していく様だと思います。

ミレイユはこれまでずっと一人でした。
相手の事を考えながら生死を掛けた殺し合いなんてできる筈がない…
だってもしもの時の足枷になる…

確かにミレイユの考え方もある意味では正しいと思います。
有事の際のリスクを最小限にするという事においては…
でも「ノアール」での活動を通してミレイユはリスク以上のモノを手に入れたと思います。

活動の幅とバリエーションが広がり、戦闘時におけるリスクを分け合うことができるから…
誰とでも…という訳にはいかないと思います。きっと霧香とミレイユだからこそ、色んなモノを分かち合えたんだと思います。
お互いがお互いの背中を預けるに足るスキルを身につけている…これってやっぱりどんな場面でも大切な事なんですね…

二人が自分たちを「ノアール」と名付けたのは、かつての偉大な暗殺者の伝説にあやかったからでした。
でもこの世には「真のノアール」が存在する…という事実が明らかになった以降、物語の転がり方がこれまでと比べてだいぶ異質に変化したと思います。

これまでは二人の仲を育んできました。
でも、二人の間に様々な横やりが入る様になったんです。
それは物語の核心に近づいているから…

霧香とミレイユへの下に執拗に繰り返し送り込まれた刺客の数々…
全ての免罪符の様な「真のノアール」の存在…
それぞれに意味があり、それらは1本の糸で繋がっていました。
全ての手札が揃い、そして大鉈が振り下ろされる…
物事の真実と二人がどう向き合うのか…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、ALI PROJECTさんの「コッペリアの柩」
エンディングテーマは、新居昭乃さんの「きれいな感情」
オープニングの旋律はかなり独特で一度聴いたらフレーズが頭から離れない系の曲でした。

2クール全26話の物語でした。
しっかりと物語が完結している事が素直に嬉しく思えます。
アニメの持つ販促性の高さも理解できますが、やっぱり腰を据えて制作頂いた作品は確実に見応えが増すと思います。
過去作の視聴も細々ですが、これからも継続していきたいと思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 14

雀犬 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

黒百合物語

【概要】
 2001年春-夏に放送された全26話のオリジナルアニメ。dアニメストアで視聴しました。ノワールとは「黒」を意味するフランス語。

 パリに住み裏社会で名を馳せる殺し屋ミレイユ・ブーケ、記憶を失い本名すら忘れてしまったが超人的な殺人術を身に付けている夕叢霧香(ゆうむら きりか)。2人が出会い、暗殺ユニット「ノワール」を結成し「過去への巡礼」を始める美少女ピカレスク・ロマン。

【感想】
 序盤は1話完結形式で、2人の過去にまつわる話はじわりじわりと進行する。話が動くのは後半からですね。今のアニメに比べると台詞が少なめでスピード感に乏しく、同じシーンの繰り返しも多いので一気見はしんどいかもしれない。

 見所はやはりガンアクションでしょうか。色々凝った演出で楽しませてくれます。ただ後半はやや単調になります。ガンアクションの宿命か、当たると致命傷になってしまうので、当然のことながら主人公の2人はなかなか弾が当たらないんですよね。黒服に何人囲まれようが、弾を平然と交わしていきます(笑) 引き金を引くのを躊躇って取り逃がす場面が敵も味方も多すぎるんですが、これもピンチの場面ではそうせざるをえないガンアクションのお約束というものか。あと、放送当時は表現規制が厳しかったのか撃たれても流血することがなく、やや違和感あり。

 メインストーリー(真相)は引っ張ったわりにやや平凡な印象を受けた。マスターキートンにようにヨーロッパの文化・風習・歴史あるいはミリタリ蘊蓄を盛り込んで話に厚みを持たせた方がよかったかもしれない。

【作画】
 背景は良く書き込まれており、ヨーロッパの街並み・景観・自然はデジタル作画にはない絵画的な味わいがあって素晴らしい。

 キャラデザインはちょっと古い感じがします。あと目の大きいキャラと小さいキャラの差がありすぎるようにも思う。終盤に霧香が覚醒して目つきが鋭くなるのだけど、ややギャグっぽくなってしまった感があります。あと、アイキャッチが超ださい。

【音楽】
・オープニングテーマはALI PROJECT「コッペリアの柩(ひつぎ)」
・エンディングテーマは新居昭乃「きれいな感情」

 とにかくOP曲が耳に残ります。気が付くと「♪コッペリアの柩~♪」が脳内で無限再生されるので注意が必要。「ロッテリアのひつじ」に空耳するという声もある。ED曲はあまり印象に残らず。

 そして梶浦由記さんの音楽が最高に良いですね。ムードたっぷりで曲数も豊富。中でも戦闘時にかかる「salva nos」は必聴。

【百合】
 「ノワール」は深夜アニメにおける百合の古典としても知られています。暗殺者コンビ、ミレイユと霧香が紡ぎ上げる奇妙な絆に注目して見るべき作品です。

 すでにヨーロッパの暗黒街を舞台に「裏の仕事」を引き受け名も上げていたミレイユが霧香をパリまで連れていき一緒に生活し世話をするという保護者的な関係で始まる。
 
 2人で仕事をこなし死線をくぐるうちに強い信頼関係が生まれ、霧香はミレイユに対して親愛の情を深めていくのですが、実は戦闘能力にかけては霧香の方が数段上で、実際にミレイユはピンチを霧香に助けられる場面も多く次第に霧香に対してコンプレックスを抱くようになるのです。

 そこに「真のノワール」を名乗る第三の女、キリエが加わりますます混沌としてくる。やがて真実を知った後、非情な試練が2人待ち受ける…

 仕事のパートナー以上の存在でありながら、親友でもなく、姉妹でもなく、恋人でもなく、「ノワール」という固有の名称でしか表現できない関係性。殺し屋として罪を重ね続け、他の道を選べぬ呪われた少女にとっての唯一つのよすが。うーん、これこそが至高の百合なのかもしれないな。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 16
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

絡まった2つの謎と2人の殺し屋の乙女。脚本と音楽が素晴らしい良作です。

 2001年時点で暗殺者がヒロインになるアニメは極めて珍しかったと思います。マンガでは「あずみ」がありました。アニメは女性のバディものガンアクションで「ガンスミスキャッツ」があるくらいでしょうか。この後「ガンスリンガーガール」などが登場します。

 本作は、毎話「ノワール、其は古よりの定めの名、死を司る二人の乙女、黒き御手は嬰児の、安らかなるを守り給う」という詩の朗読があります。これがなかなか良くてOPから含めて作品に入り込んでゆきます。

 1話。時計そして音楽をモチーフに記憶を無くしたJKとフランスの美人殺し屋ということが一気に説明され、あっという間に引き入れられます。

 2話以降、この記憶をなくしたJKと美人フランス人殺し屋のバディものとして、2クールで話が展開します。時に本筋と関係ない話も入りますが、1話の脚本として内面描写や郷愁を感じさせる出来で、引き延ばし感や中だるみ感は感じませんでした。

 アクションシーン、特にピンチの場面の描写に若干時間的間延びがあり、ツッコミを入れたくなりますが、これは古いアニメの演出なので極めて短い時間を詳細に描写しているものとして受け入れましょう。

 2クールものですし、内容がシリアス寄りですので一気見には向きません。「刺激」や「緊張感」は麻痺が来るので、段々退屈すると思います。1日1、2話。多くても3話くらいで余裕があるときに見た方がいいと思います。

 で、後継の「マドラックス」と極めて雰囲気は似ています。作画、演出、アクション、音楽性、展開、キャラ配置など。ですが、本作にマドラックスのような難解さ、オカルトはあまり感じません。
 その割には、ガンアクションものとしてもそうですけど神秘感や、死と隣り合わせのアンニュイな雰囲気が出ていました。

 脚本が秀逸で展開、謎解きについて物語、構成がよく練られていました。初めの詩や時計・音楽、そしてパリの雰囲気が上手く活きていたと思います。

 謎部分は見てのお楽しみですが、要するに宗教原理主義、歴史の裏、暗殺者として生い立ち、少女と女性は最後どうなるのかを見極める話です。
 クールそうに見えて、実は2人とも友情や家族愛に隙があるのがキャラに感情移入できる要因になっている気がします。

 で、最後の謎部分です。
{netabare} 最後の最後で、傷ついた霧香に肩を貸すミレイユは「パリに帰って熱いお茶が飲みたいわ」といいます。この時、ミレイユは光ったような霞がかかったような雰囲気になります。
 そして銃声が2発轟きますが、違う音です。最後は壊れた時計とは2人の時間が止まると言う意味と、ソルダではなくなるという意味でしょう。その前の灯りを自分でともすというミレイユの言葉や、霧香の怪我、組織があえて見逃したことから言っても、2人が自決あるいは撃ち合った=運命に翻弄された人生を初めて自分で選択する、ということだと受け止めました。 {/netabare}
 作品の根底に流れる無常観、アルテナ・ソルダの両方に対する自分たちの解答、殺人行為の清算と言う意味でもそういう結論がしっくりくると思います。

 アクション要素の他、絡まった2人の謎解きとどうやって2人の殺し屋の乙女が生きてきたかという運命について考えてしまう作品でした。テーマ性は重視せず、運命についてのモヤモヤを咀嚼するのがいいと思いました。そこがラストの解釈になってくると思います。
 エンタメ性を保ちつつ、殺伐とした世界観と詩情を融合させて、最後には感動と言うよりも、切ないながらも納得の行く作品になったと思います。素晴らしい脚本でした。

 音楽はOP、EDもいいですけど、BGMも聞かせました。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7

71.4 3 秘密で記憶喪失なアニメランキング3位
プラネット・ウィズ(TVアニメ動画)

2018年夏アニメ
★★★★☆ 3.6 (275)
972人が棚に入れました
「おれは、おれが味方したい人達の味方だ。そんだけだ!」
過去の記憶を失いながらも、平穏に暮らしていた高校生・黒井宗矢。だがある日、
世界は謎の巨大兵器「ネビュラウェポン」に突如襲われる。
猫のような姿をした「先生」とゴスロリ姿の銀子と共に、宗矢は戦いに巻き込まれる
ことになったが_________なんと相手は人類を護る7人のヒーローの方だった!
宗矢の記憶に隠された戦う理由とは?

気鋭の漫画家・水上悟志が贈るオリジナルアニメーション、ここに開幕!

声優・キャラクター
阿部敦、原田彩楓、井澤詩織、小山力也、乃村健次、後藤沙緒里、梅原裕一郎、大和田仁美、渕上舞、菅原慎介、石上静香、興津和幸、清川元夢、若本規夫
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

目覚めよ、サイオニクス戦士たち

1話感想{netabare}
ロボットいづなよしつねっぽいなぁって思ってたらいづなよしつねだった。
ちっしゃーねーなぁ、最後まで見るか(ツンデレ)。
ダリフラもいずなよしつねだったら違和感あそこまでは…いや言うまい。
内容は一話段階では可もなく不可もなく…戦闘は昼間にやって欲しいくらいか。
あ、それと銀子がヘボットで居た猫メイドっぽいなぁって思ってたら声がヘボット(井澤詩織)だった、いやそんだけ。{/netabare}

2話感想{netabare}
おおっ、これは…。
ちと自分語りしないで説明できそうもないので自分語りを挟んでの感想になるのでご注意を。
と前もって断ったうえで──
作品を見て「〇〇な部分が足りないなー」って思うことって誰でもあると思うし、それに合致するのはこれだけ作品数に溢れてる現代なら探せばいくらでも見付かるとは思うのだけど…。
そうはいっても探すの面倒だし、結局放送されるアニメを順に見てくだけの受け身な状態に甘んじてる自分も悪いんだろうけど。
とはいえやっぱ作る側…特に作家と呼ばれる人ならそこら辺の空気をくみ取って…っていうより本人が「いや、そこはこうだろ」ってのを入れたがる人種だろうなーとも思ってて。
一時期流行ったラノベテンプレ系アニメなんかそこら辺の拘りっていうか、「前の似た作品のダメだった部分を改正して出してくる(その代わり別の部分でダメな部分が発生するが)」感がしてそこを見るのが結構面白くて。
一例挙げると“劣等生”で主人公が学校で評価されないことに納得のいく理由を感じず「んなワケねーだろ」と思ってたところ、“落第”で似たような展開やって「それは黒幕が意図的に評価基準を歪めてたのだ」って理由を提示してみたり。
とはいっても「ダメな部分≒尖ってる部分≒ウケてる部分」って側面もあって、全部が全部突っ込み所を無くすと今度は箸にも棒にもかからない平坦でつまらないものにしかならない、ってのも分かってて。
「いやぁ面白い作品って難しいっすねぇ」としみじみ思ったり。

と、なんか自分でもうまく言葉にまとめられなくて取り留めのないことを書いてしまったけど、このプラネットウィズ、2話見たら個人的にはアレを思い出してしまいまして。
ストライクウィッチーズ(以下ストパン)。
1期で人型ネウロイってのが出て、どうにもそれがネウロイ内の穏健派っぽくて、一方で人類はネウロイを総じて敵対視してて。
また軍上層部が密かに開発してたウォーロック(コアコントロールユニット)がオーバーテクノロジー過ぎて、ひょっとしてネウロイの生け捕りに成功したか裏切り者が居る?って考える方がよっぽど自然で。
と、1期終わった段階では色々と考察のし甲斐のある展開だったのだけど…だったのだけど、2期でそれらを全部“おじゃん”にしてくれまして、その時の落胆ぶりは今でもよく覚えてる。
なんかその時の悔しい気持ちを晴らすかの如き内容に見えまして、プラネットウィズが。
構造だけで見たら似てなーい?
ネビュラ=ネウロイ、穏健派=ネウ娘、グランドパラディン=軍上層部、パラディン側ロボ=ウォーロック、謎の砂=(コアコントロール下の)コア
似た構図の作品は探せばあるとは思うんだけど、どうにも自分には“ストパン1期見終わった後に妄想した設定”に思えてしまって…同じように考えて同じようにガッカリしたクリエイター居てもおかしくない…かも?
期待して良いのかな、ストパン2期の無念を晴らすっての、やってくれんかのう?{/netabare}

7話までの感想{netabare}
↑でストパンっぽい…っていうより「本来ストパンでやりたかった展開があったけど、下手にウケてしまい長期コンテンツへと方針転換することになって無かったことにされた展開(A)」っていうのがあって、それに近い気がするって書いたけど、やっぱそれっぽい。
それどころか…(A)については高村監督も“ビビッドレッドオペレーション”(以下ビビオペ)で晴らそうとしてたキライもあって、結局そっちも失敗に終わったワケだけど、その「やりたがってたこと」をプラネットウィズは実現していってるような気がする。
自分のビビオペの感想でも書いたけど、構造が“グランセイザー”っぽいような?
グランセイザーに限らず似た設定の作品っていくらでもあるだろうけど…竜の残滓=ボスキート疑惑で、これで兄貴の幻影(楽園の民)=ネビュラ評議会より上位のアストラルボディだとしたらウオフマナフ(ビビオペでは絶対の存在)に該当するけど、果たして…。
いやぁ、この作品に高村監督はどう感想抱くのか非常に気になる。
とはいえアプローチはビビオペとは全く違ってて、あっちだったらサイキックに目覚めるのは女の子限定になってたことだろうw

銀子が実はシリウスから侵略を受けてた他惑星のお姫様だったってのも特撮っぽい(偏見)。
二日酔いでのたうち回るシーン見たかったなぁ、オレもなぁ。
先生はソウヤをシリウス人にも愛の進化種族に成り得たことを証明するために育てると言ったが、同様に異星人?と思われる竜造寺隆は地球で育った末にあんなんなっちゃったワケで。
竜造寺隆が一体何者だったのかが問題になるけど、ひょっとしてネビュラが地球人を試した様に、楽園の民がネビュラを試してる?
ソウヤとしてはシリウス軍が悪いだけでトンだとばっちりなんだろうけど…裁定下すのはまだしも断罪するのは行き過ぎってのがテーマなんかね?{/netabare}

10話までの感想{netabare}
月の裏側に龍が潜んでる→龍自体は破壊・侵略を旨とする悪的存在ではなく、あくまで地球人がシリウス人と同じような過ちを犯す可能性がある場合姿を現す?→封印派勝利で地球人を封印できたら龍はどこかに姿をくらましてしまう?
ってことで、龍退治するためにはまずは封印派を挫かないとならないってことだったのかな?
当然主人公が地球人へ感情移入しかけてるってこともあるだろうけど、それも含めての楽園の民の思惑かなぁ、と。

しっかしまぁ先生が近年稀に見るイケメンで、こりゃあ英雄呼びされても仕方ない。
封印派にしても、リエル人「(侵略されて)シリウス人許せねぇ」→シリウス人「(制裁されて)龍許せねぇ」→龍「処刑されました」
って感じで、起きちゃったことに対しては被害者?の溜飲を下げることを旨とし、根本原因となりうるものを徹底排除って感じか。
気を張ってひたすら断罪断罪で、それはそれで精神を摩耗することで、「ちったぁ許してやるって余裕持てよ」ってのが先生の言い分だったのかな。
んで、銀子から「誰も恨んでない」って言われたら閣下ももう引き下がるしかない。
ってか肉も食わん温厚な種族のリエル人からしたら、いくら侵略してきたシリウス人とて星ごと滅亡って聞いたらドン引きなんじゃねーかなぁ。
しかも銀子はテレパスで滅亡する瞬間の悲鳴まで聞いてるワケで。
ところで復活したネズヤ先輩の喋りって若本規夫を意識してないか?ご本人目の前に居るぞw
白石クンの衣装がエイトロン思い出して仕方ない。

でもって竜造寺隆だけど、やっぱり龍の化身(一部)だったのか?
時系列が合わないのが問題だったけど、龍が時空跳躍までしてたってことでそれが解消してしまいました。
何話だったかジジイが「空から落ちて来た赤ん坊を拾った」と明かし、その後「なんちゃって全部ウソ、テイクミーファラーウェイ」とはぐらかしたけど、嘘ではなかった?
(因みに同じ回の中で、ソーヤは自分が宇宙人だとメガネに明かし、その後「なんちゃって全部ウソ」と言うも「うん、そういうことにしておく」と見抜かれてまして。
秘密を打ち明けてその後に「ウソです」と言われて、打ち明けられた側がどこまで見抜けるかの対比を狙っただけで、打ち明けた内容自体は両者とも本当だったんじゃないかなぁ、と)
死んだあと粉になってたしね。
そもそもネビュラの処刑を逃れたり月に隠れて見付からずに居たり、龍に関してはただ倒したり改心させて終わりって事ではなくもうひと悶着ありそう(願望)。
楽園の民がな~んか手引きしてんじゃないかなぁ?{/netabare}

最終回まで見て{netabare}
今期トップ3に入る勢いで面白かった。
なにより↑で指摘したように、某作品が「やりたくても大人の事情でできなかったこと(妄想)」をやってくれた感じで、先帝の無念を晴らすというか江戸の敵を長崎で討ってくれた気分。
いやぁ爽快だ、これを見たかったと言っても過言ではない。
かなり考えたんじゃないかな、毎週見せ場と引きもしっかりできていて「なんだちゃんと作れる人居るんじゃん」とホっとする部分もあったり。
元パラディンメンバーもパラディン所属の頃はそれ専業(消防士辞めたと言ってるし)で立派なビルに本部構えてたのに、ネビュラの一員になってからは副業(世を忍ぶ仮の姿?)しつつ地上はプレハブ小屋って対比も愉快で。
バックは日本政府や企業なんかよりよっぽどデカいけど秘密組織としてはこうなっちゃうよねーというか、ネビュラとしては現地でマトモな生活できん奴は所詮マトモじゃないってことなんじゃないかなーと思ったり。
そういったことも含め、設定的にはこれ、1年放送でも耐えられる内容だったんじゃないかな?時代が時代だったら一年枠で夕方6時にやってても差し支えない。
もしそうだったら銀子の二日酔いや白石クンの無理のある高校生プレイとか見れたんだろうなぁ、ってかそういう想像を掻き立てる作品ってのはやっぱり良作かと。
先生の「見た目はああだけど行動は超イケメン」ってのもポイント高い。

けどなー、そうはいうけどなー…やや古臭い感じは否めない。
ここら辺は感想書いてる自分にとってもジレンマで、「ちゃんと完結してる」のを評価ポイントにしたいところだけど、大抵そういうのは「こじんまりしてる」。
メッセージ性?テーマ?も普遍的なモノになればなるほどありきたりになってしまう。
こればっかりはなぁ…どうなんだろう、他の方の感想がとても気になる。

余談・園芸ネタ
最後シリウス星に咲いてた花はイチリンソウかな?
もし違ってたとしてもキンポウゲ科(の何かがモデル)なのは間違いない。
ああいう場所でああいう感じで咲いてる花ってキンポウゲ科が鉄板よね。
“アスタリスク”だっけか(落第~と勘違いしてるかも)、あれもそうだったなぁとふと思い出した。{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 10
ネタバレ

HmFDB75691 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

第10話~最終話&総評 設定が生かされなかった

オリジナルらしいので見ると思うけど、第一印象はなんか物足りない。
朝や夕方に放送してそうな、健全なロボアニメかな。


第1話 予想はタイムリープ
{netabare}
高天原のぞみの長いスカートを見た瞬間、タイムリープだと思った。ヒロインがあんな長いスカート穿かないだろ。現代から30~50年前の設定と思ったけど、スマホがあったので却下。
でも、映画(ドラマもある)の"12モンキーズ"のような気がした。

この映画に当てはめると、冒頭の二人はどちらも主人公の黒井宗矢。大人のほうは過去に行った宗矢が成長した姿。子供のほうはこれから過去に行く。本来、宗矢は(10年くらい)未来にいたんだけど、世界を救うために過去に戻ることになった。

12モンキーズに該当するのが、7人のヒーローで、本人たちは世界を救うために戦っているのだが、結果的に滅ぼす原因にもなっている。それがわかっているのが宗矢で、まだ起きていないことに対して怒っている。

戦っているうちにヒーローたちの事情(たぶん泣ける話)を聞かされて、倒すことに躊躇する。そして、本当に倒すべきラスボスがわかって、(大人の)宗矢が突っ込んでいく冒頭のシーンに戻る。

とりあえず、現時点ではこんな感じかな。物足りないところは妄想で補えるのがオリジナルのいいところ。
{/netabare}

第2話 名前について考察してみた
{netabare}
素直に解釈すると、地球にやってきた異星人の監視かな。封印派や穏健派はミスリードっぽいが、思わぬ方向へ物語が進む起点ともとれる。
気になった点について考察してみる。


・宗矢の言う「世界」について

1.世界=未来
これは前回考察した。宗矢は未来からやってきた。のぞみの息子でも面白いかも。恋愛にはならないけど。

2.世界=星
缶コーヒーのCMで「この惑星の住民は……」と言っているように、宗矢が別の星からきたなら、星や惑星と言うはず。異星人にスカウトされた地球人の可能性が高い。

3.世界=異世界
多次元世界、仮想空間……etc。ウィズが魔法なら魔法の世界か。現時点では推測しにくい。


・キャラの名前について

キャラの名前を七つの大罪(該当する動物がある)と関連付けてみると、

竜造寺隆→ドラゴン→憤怒、虎居英雄→トラ→暴食、因幡美羽→ウサギ?→色欲、熊代晴海→クマ→怠惰、鷹取紅華→グリフォン?→傲慢、羊谷葉介→ヒツジ→色欲、先生→ネコ→強欲、閣下→イヌ→嫉妬(以上、Wikipedia参照)となる。

虎居が袋いっぱいに肉まんを持っていたところから暴食と言える?
それなりにキャラに当てはまるけど、因幡美羽の色欲は微妙。
7人はもっと罪深いことをしていて、根津屋正義は中二病ではなく、彼らをジャッジする存在?

黒井銀子と白石こがねは、正反対……でもないか。
高天原のぞみは、天上界からきた? 高天原に対するのが根の国。この二つの間にあるのが日本。のぞみと根津屋、因幡美羽を考慮すると、古事記に関係している気もしてきた。


・肉について

あんまんオチはすぐにわかった。"肉"は、ほとんどの視聴者からなにかあると思われている。だから、伏線というより前フリだろう。肉を食べると元の世界に戻るとか。
フィギュアのほうが伏線っぽい。ぬいぐるみ(?)の巨大物体と関連があるような……。
{/netabare}

【予想・考察】日本神話と関係があるのか
{netabare}
高天原や因幡が出てきたら、日本神話を疑いたくなる。

高天原のぞみ→高天原→アマテラス
因幡美羽→白兎→ツクヨミ
根津屋正義→根の国→スサノオ

強引に当てはめてみた。根津で調べてみると、大国主の神使とあったりする。天津神と国津神のような二つの勢力があるのか。宗矢が肉を食べられないことや仮面をつけるところは、神事や祭事を思わせる?

因幡と根津屋を除いて、猫(宗矢?)と犬を追加すると、重複せず七つの大罪は一応揃う。
日本神話と七つの大罪を混ぜたところでどんなストーリーになるかはわからないけど。

アマテラスと言えば"岩戸隠れ"。その原因になったのが、スサノオ。
のぞみが神様か微妙だが、人間の姿が岩戸隠れとすると、巨大物体がそこから出る(本来の姿に戻る)ための手段とか。根津屋側のヒーローたちがそれをじゃまするという構図にもなるが……。
"平和"はわからないが、"smile"は、笑い声でアマテラスを誘い出したことと近い?

難解なのが、小瓶の星砂。神話と関係あるなら、なにかが降臨しているかも。
{/netabare}

第3話 銀子のセリフについての考察
{netabare}
「シリウス人と地球人は……」のあとを普通に考えれば、もともとは同じ種族とか、そんな感じだろう。プラネットウィズがPlanet Withなら、地球とシリウスは同じ星とか、連動しているとか、パラレルワールドも考えられる……?

消防士や柔道から、七人のヒーローは地球人。宗矢の怒りを買ったトラブルは地球で起きたはず。
つまり、シリウスで起きたことと七人は、現時点では無関係。
星の砂の小瓶を七つ集めると竜の力が得られるとか……さすがにないと思う。


疑いもせずに観た場合、宗矢の行動はこうなる。

竜の力でシリウスが滅びるのを目撃→シリウスを去り、(宇宙船に乗って?)地球へ→七人と接触、宗矢の怒りを買う(侵略者と勘違いされ攻撃された?)→記憶をなくして銀子に救われ、黒井宗矢と名乗る(銀子が命名?)→小瓶を奪ったあと七人の顔を思い出す(竜造寺隆は含まれていない)

疑って観た場合も考えてみる予定。
{/netabare}

【予想・考察】きっと裏があると疑った場合の考察
{netabare}
1.宗矢に関する疑問

・本当にシリウス人で、地球にやってきのたか?
・記憶を改ざんされたのでは?
・竜の力でシリウスを滅ぼしたのは宗矢で、肉を食べると思い出すとか?
・地球人と似た体格で、地球と似たものを着ているのはおかしくないか?
・封印派と穏健派を教えてもらいながら、夢の中では詳しく知っている

宗矢=シリウス人はかなりあやしいと見ている。いまのところ、異星人っぽいのは、竜造寺隆だけだと思う。
シリウスに関する説明のほとんどは宗矢の夢にすぎない。疑っているが、銀子が話す内容と矛盾点がない。


2.銀子に関する疑問

・地球を監視していたなら、宗矢がシリウス人と、なぜ知ったのか?
・星の砂が力の源だと、どうやって知ったのか?
・宗矢が七人に怒っている理由を知らないのではないか?


3.謎の部分についての予想

・封印派はサイキックの封印で、穏健派は小瓶(星の砂)集め
・七人の力の源は心の傷で、封印派はその傷をいやすために巨大物体を送り出している
・こがねは封印派で、七人のヒーローを騙して戦わせている
・穏健派が推進する方法によって、竜の力を持った者が生まれることがある
{/netabare}

第4話 ぬるいなあ……
{netabare}
制作側が竜の力をどのように考えているかわかるような回だった。
町を破壊したヒーローたちが責められたら、竜の力の脅威を印象付けられた。だけど、ぬるい結末だった。

シリウスを破滅させたと言いながらこのようなぬるい感じにすると、アニメ全体のバランスが崩れると思う。だから、宗矢の夢物語にすぎないのだろう。もしくは都合よくシリウスの住民が全員移民船に乗って地球にやってきて、いまの地球人になった、とか。

竜の力は大したものではない気がする。もっと裏になにかあるのか、それともただのコメディ作品なのか。
{/netabare}

第5話~第9話 見続けてはいるけれど……
{netabare}
たまにはレビューしようと思って書いてみた。
猫の宇宙船が出てきたころから、あまり熱心に見ていない。
だっておかしいだろ。
猫は地球の生物なのに、ほかの星からやってきたって。
地球とシリウスは同じ星というオチはありそうだけど……。

ほかにも疑問がある。
第1話で、宗矢はヒーローたちを知っていたけど、出会いのシーンがまったくない。

こういう疑問点を解消するには、宗矢の夢オチしかないと思う。
{/netabare}

第10話~最終話&総評 設定が生かされなかった
{netabare}
最初に思ったような健全なアニメだった。
ストーリーにひねりがないのはいいとしても、練りこまれていない印象がする。
とくに第1話の設定がほとんど生かされていない。

1.宗矢の記憶喪失
すぐに記憶を戻して、その記憶に含みもない。
第1話で思い出すなら、記憶を失っている必要があったのだろうか。

2.星の砂
星の砂を見て激怒した理由がわからない。
出処は竜だと思うんだけど、宗矢がそれを過去に見たというシーンがない。
そもそも激怒するのもおかしい。宗矢の兄もサイキックなら、星の砂を持っている可能性もある。

3.宗矢と七人のヒーローの対立
宗矢が激怒したとき、七人のヒーローの顔を思い出している。だけど、対立したというエピソードがまったくない。

これらの設定を生かすなら、宗矢=竜にしたほうがよかった。
星の砂を持っているのも、七人のヒーローとの対立も生かせる。
記憶がないのも、竜だったときの記憶を封印しているとか。
あとは、人間の宗矢は、サイキックの力を持った者だけが見えるとすればいい。なんとかの民みたいな感じで。

もう少し面白い話ができた、というのが全体的な感想。
{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

つまりは、「刀狩り」の是非

[文量→大盛り・内容→考察系]

【総括】
前期に完結した「ダーリン・イン・ザ・フランキス」に続き、本格的なロボットモノ、セカイ系のアニオリ作品が続くというのも珍しいね。

哲学的な内容を含みながらも、ユルさやエンタメもあり、総じてレベルの高い作品でした。1期の尺で、よくぞここまでまとめた(やはりプロット段階でちゃんと完結してるんでしょう)!

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
銃が悪いのか、銃を使う人間が悪いのか。

ある人は言う。「悪人なら、ハサミでも人は殺せる。銃そのものが悪いのではない。人を殺そうという心が悪いのだ」

また、ある人は言う。「根っからの悪人でなくとも、銃を持つことで心に悪魔が宿ることもある。少なくとも、ハサミでは数十人を一気に殺すことは出来ない」

どちらにも真実はあるような気がする。だから、こういう議論に結論が出ていないのだろう。

「銃」とは「武力」でもある。

本作には、「穏健派」「封印派」「グランドパラディン(龍)」という勢力が登場する。この中で、「穏健派」が前者のような哲学をもち、「封印派」と「グランドパラディン」が後者のような哲学をもっていると思う。

前者(銃が悪ではない)の意見は、なにも銃(武力)の存在を容認したり、ましてや拡散を推奨する為の詭弁とは限らない。ポジティブに考えるのなら、「人の心を信じる」というスタンスでもある。これは、「穏健派」の理念であり、「ヒトは武力をも正しく使いこなし、あるいは勇気をもって廃棄し、愛の種族に進化すること」を信じ、待つという姿勢。清濁併せ飲む覚悟。ただ、その過程でたくさんの命が失われたり、結果としてただただ武力が拡散し、悪の種族へと進化?してしまうリスクは孕んでいる。

一方、後者は、戦う力や意思を奪うという考え方でもある。「グランドパラディン(竜造寺隆)」は人類から「戦う力」を奪い、自らが「世界の警察」として人類を管理しようというもの(龍は更に直接的に、自身が悪と思うものを滅ぼそうとした)。「封印派」は人類から「戦う意思」を奪い、自らが「管理者」として人類を見守ろうというもの。「命」というものが「絶対的なもの」であると考えた時、とりあえず「命」は(両者共に)守れるものの、「人権」や「自由」を奪われてしまうものでもある。

「銀河英雄伝説」の「ヤン・ウェンリー」はこんなことを言った。

「人類の社会には思想の潮流の2つあるんだ。人の命以上の価値がある説と、命に勝るものはないという説とだ。人は戦いを始める時、前者を口実にし、止める時、後者を理由にする。それを何百年何千年と続けてきた」

この言葉は、面白いほど本作の構造に当てはまると思う。

結局、本作の軸足は穏健派にあり、人類を信じるという方向に進む。結局、命よりも大切なもの(人権や生きる自由意志)のために、人々は争う危険性を許容するわけだが(とりあえずの小康状態。人類の未来は我々、視聴者自身に任されているというメッセージかな)。

また、本作で面白いのが、「刀狩りの是非」を問うにも関わらず、ネビュラ自身が「刀」となり、その振るい方を他者(黒井や白石)に委ねているという点だ。ここに、「ネビュラ」という種族の在り方というか、理念が示されていると思う。

封印派にしろ穏健派にしろ、他者に対する興味が強く、自分事のように思うんだろうね、ベクトルは違うけど。それが、「愛の種族」ってことかな。

1~10話までは、このような哲学的な内容が多いが、11、12話は、単純なエンタメ作品としてしっかり成立していたと思う。普通、エンタメからシリアスに流れると思うんだけど、本作のように、シリアスからエンタメに流していく構成は面白い。なんてったって、視聴後に気分が良い♪

好きなキャラは、ジイサンこと竜造寺岳蔵。ラスト、竜の回想はウルッときたし、素敵な親だった。ジジイが格好良い作品は名作!
{/netabare}


【余談~ なぜアメリカが銃社会になり、日本はならなかったか ~】
{netabare}
以前、テレビで見て、なるほどな~と思いました。

アメリカは開拓の歴史をもつ国。開拓とは、原住民にとってはイコール侵略。アメリカは広大な国であり、開拓民は原住民からの反抗を自力で防がなければならなかった(警察などに頼るには、距離があり過ぎるため)。その為、一般家庭に銃があることが普通になる。一般人が銃を手にするということは、その中から銃を持つ犯罪者が出てくるわけで。銃から身を守る為には、銃をもつ必要があり、、、そんな感じで銃が普及し、自分の身は自分で守るという社会構造が出来上がってきた。

一方、日本がそうならなかったのは、刀狩りの影響が大きいらしい。あそこで一度、一般人は武器を奪われ、武器(刀)は特権階級(武士)の持ち物となる。江戸時代は平和の時代であり、農民や商人が武器を持つ必要性は少なく、廃刀令などもあり、武器自体の数が減っていった。また、基本的に、日本は国土が狭く、密集して暮らす生活様式もあり、無力な庶民を特権階級(現在なら警察)が守るという社会構造が出来上がってきた。

「ナッシュ均衡」というものがある。簡単にいうと、「最初はどちらに転がっても良かったが、一度、そうなってしまうとなかなか変わらない」という、社会構造の出来方を説明したものだ。

例えば、車が右車線を走行するか左車線を走行するかということは、ぶっちゃけ、社会全体で統一されていればどちらでも良いこと。右側を走る人が増えれば、自分も右側を走った方が安全だし、左側が多ければ、左側が安全。最初はどちらに転がっても良い話なのに、それが一度定着されてしまえば、覆すのは難しくなる。社会全体が右側を走っているのに、「俺は左側の方が良いと思う!」と言って、左側を走っていれば、交通事故をおこしてしまう。

アメリカ人だって、その多くは銃がない社会を望んでいる。しかし、もし法規制で銃を規正すると、善良な人ほど法に従って銃を廃棄し、悪人ほど法を無視して銃を所持し続ける。結果、悪人ばかりが得をするという、意味の分からない結果になる可能性が高い。これは、「ナッシュ均衡」による悲劇。

本作のテーマの1つは、「武力をもつことの是非」。

日本がこれだけ平和な社会を築けたのも、偶然の積み重ねなんだなと思えるし、歴史を学ぶことって大切だなと思う。

竜造寺隆がやろうとしたことも、封印派のやろうとしていることも、いわば刀狩り。違いは、竜造寺隆は物理的に刀狩りを行い、封印派は精神的に刀狩りを行おうとしていること。

さあ、皆さんはどう考えますか?
{/netabare}

【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目
あえての古臭さね。なんか面白い。セカイ系だけど、疲れすぎないように上手く外している感じ。

2話目
引っ張って引っ張って、アンマン(笑)

3話目
根津屋センパイ、ナイスキャラ(笑)

4話目
やっぱ、こうでなくちゃな。二日酔いになると、二度と酒は呑まないって思うけど、翌日には呑むんだよなw

5話目
ほら、呑んだ(笑) なかなか熱くなってきたね。

6話目○
このやりとりはいいね。幼子から銃をとりあげる。何が傲慢か。武力と暴力。なかなか哲学的な会話だな。理不尽に耐え、なお優しい。子供に耐えろという親は嫌いだ。うん。ん?

7話目
ヤキモチ委員長、可愛いなw 地球人じゃないってのも、ミソだね。

8話目
いちゃついてる(笑) 全米ライフル協会に怒られるぞ(笑) どうした? おっぱいについて解説して(笑)

9話目
死ぬ順番は間違えちゃダメだよな、と、最近思う。封印完了。この惑星の皆は間違えないでほしい。人間の、前に進む意思ね。ここで紅花の復活は、上手いね。

10話目
人間の力、人間の意志。ジイサン、格好良いな。ジジイが格好良い作品は、名作♪ 正解するはずのカド、かな(笑) 8割。良いとこだな。わずかながら、ほんの少し。ここから、エンタメかな?

11話目
根津谷先輩、「家事手伝わない」(笑) 百万年前って、意外と最近だな。建前と本音の大切さ。なるほど、戦争に馴れた人類やシリウスだから出来ること。あら、ジイサン、死んでしまったか。。。ヒマラヤ山脈と戦うのは、キツいな(笑) 素敵な家族愛。

12話目
内定(笑) まあ、亜空間に閉じ込められるとか、定番だわな。許しと感謝。配慮もあって素敵。好きな角度で見れば良い、視聴者への言葉だな。めっちゃ尻尾振ってる(笑)
{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 30

66.3 4 秘密で記憶喪失なアニメランキング4位
神之塔 -Tower of God-(TVアニメ動画)

2020年春アニメ
★★★★☆ 3.3 (221)
637人が棚に入れました
塔を登れば、全てが手に入る。塔の頂上にはこの世のすべてがあり、この世界を手に入れる……神になれる。これは、ただ星空を見たくて塔を登る少女・ラヘルと、そんな彼女がいれば何もいらない少年・夜の、始まりと終わりの物語。

声優・キャラクター
市川太一、早見沙織、岡本信彦、三宅健太、本多真梨子、興津和幸、関根明良、江口拓也、深町寿成、末柄里恵、津田健次郎、吉野裕行、小野大輔、伊藤静、大塚芳忠
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

観終わった

2話までの感想{netabare}
ん?中華かな?と思ったら韓国だった模様。
なるほど…やっぱどっちも似た様な感じになるのかな?
内容としてはハンターハンター…ってよりも“霊剣山”の1作目を思い出した。
塔の頂に登る=仙人を目指す、と解釈するとすげーシックリ来る、韓国にも羽化登仙って思想はあるのかね?
作中の文言通り「神を目指して塔に登る」と解釈するとどうしても「神になるためにその試練って必要?」と引っかかりを覚えてしまうが、これが「仙人」だったらあら不思議、どんなに不合理でも納得(諦めがつく)できちゃう、私は。
2話の選別なんていい例かな、神の水で作られた壁を抜けれるかどうかの件だけど、「参加者間でどうこうするのではなく試験官の手による選別なら最初の400人を選ぶ前に実施すればいいじゃん(※)」と突っ込まずにはいられない。
要は無駄に死者を出してただけで、これで主催者が人口調整で殺し合いさせてるとかウラがあるならまだしも、無いのなら「仙人選抜なら仕方ない」と思って納得する(諦める)しかない。

まぁなんて言うんだ、キャラの目的が不明瞭で「なんでそれやってんの?それ必要ある?」と思っても「仙人を目指すためだよ」と言われたら納得できちゃう強力なカードとでも言いましょうか…。
ただ、カードの強さにかまけて細部がおざなりなのは…ま、まぁそこは外国の感性ってことでしょう。
で、主人公はそんなことより行方不明になった恩人?の消息を追うのが目的ってことらしくて…あ、顔が良ければ優遇してもらえるってのは韓国らしいのかなw

それとタイトルが「神之塔」「-Tower of God-」となってるのは「神之塔」の部分がハングルまたは各国の言語に置き換わっても「-Tower of God-」はそのままで、知らん言語バージョンを目にしても何の作品かすぐ分かるようにしてるんだと思う。



一応、3人でチームを組んで一人でも壁を通れなかったら失格だったので、誰と組めるかの運を試したのかも知れない。
とはいえ、だったらもうちょっと見せ方あったんじゃない?とは思う、通れないチームメイトを叱責するヤツとかさ。{/netabare}

3話感想{netabare}
5分の間に扉を開くのがどうとか。
まだその“法則”が明確になってない状態、つまりは早い段階で試験に挑んだチームほど不利という馬鹿馬鹿しい内容。
でありながら、次の試験でその件は全く関係無く我先にと飛び込んでいって…せめてそれぞれ関連付けくらいさせようよ。
でもって試験官はやっぱり人を殺したくて仕方が無いっぽい。
宇宙船が舞台で人口調整でもしてんのかね?


絵に関しては実際の現場は知らないし3話までの限りではちゃんとした人が描いてると思うのだけど──
主線が汚いのはdpiの低いクッソヘボい機材──スキャナーだか編集ソフトだか──がクッソ汚い紙を取り込んで汚れ飛ばしでコントラストを上げ過ぎるとああなる気がする。
ああなるっていうか、そういう状況を想定して予めそれに合わせたというか。
色数が少ないのはナルトにしろブラッククローバーにしろアクションの激しい回はあんな感じで、激しいアクションじゃないのにこれってどうなん?って気がしないでもないけど、やっぱクッソヘボい現場を想定してワザとレベルを落としてる感じがする。

作り手の技術レベルが低いんじゃなくて現場の機材レベルが低いって感じ、あくまで3話まで見た限りね。{/netabare}

総評{netabare}
最初の頃抱いた予想「どうせそのうち作画が崩れるんでしょ?」、これが見事に外れて最後まで作画がシッカリしてました。
「作画が崩れても目立たない作画」を意識してのデザインだったと思うのだけど、アクションも最後までしっかりしててどういうこっちゃ?
“はてなイリュージョン”と何が違ったんだろう。
1話見て作画が気にならないのなら最後まで見ても問題ないと思います、一貫して安定したレベル。

とはいえ作画ではなく内容の方といえば…。
まず「塔に登る」ってのは「仙人になる」ことと似たようなモンか?と思えるかどうかで見続けられるかどうかが別れそう。
これは韓国作品らしいけど、中華アニメだと多いんだ、「とにかく仙人になるんだ」が目標で「それになって何するの?」は特に無いやつ。
仏門だったら悟りを開いたら無余涅槃にでもなって六道救済するとかあるけど、仙道って肉体に固執したり利己的だったりと目的がバラバラで、従って漠然。
利己的であっても構わないのでそれに至るための手段が「いやそれ人道に背くだろ」ということをやっても構わない、果たしてその手段が目的のために適してるのかどうか私には判断できない(作者の気分次第)。
物語の目的を設定するには便利ではあるけど、ついていけるかどうかは人を選ぶんじゃないかな。

ってことで私は「塔に登る」ことについてはそこまで違和感は覚えなかったのだけど、問題はその後。
それぞれのキャラが何ができて何ができないのか分からず、更にこの作品でしか通用しないよく分からないルールの競技をして、よく分からない駆け引きをする。
そうねぇ、野球で例えると──ストレート160キロが速いのかどうか分からない、打率4割が凄いかどうか分からない、アウト幾つ取ればいいか分からなければイニング数が幾つあるかも分からない。
そんな状態だと多分野球見てもつまらないんじゃないかな?せいぜい派手なホームランがなんとなく凄いって分かる程度で。
なによりなにが反則になるのかすら分からないので、ルールの隙を突いて裏をかくようなことをしても「あ、それやっていいんだ、ふーん」としか思わない。
「カバンの中に3人仕込んでおいたのさ」と言われてもふーんとしか思わない。
まず一体どんなルールなんだ?と興味を引くほどでもないってのが致命的かな、釣り師槍使い燈台守捜索者波使いと言われても「え、それ覚えなきゃいけないの?ヤダよ」って気持ちが先に出た。
ポイントで合格が確定って、知らんがな。
アナクの際どいシーンだけが目当て(スパッツ履いてるけど)で「もう試合結果だけ分かればいいよ」という感情しか沸かない。

それぞれの思惑というのも正直どうでもいい。
これまた中華で多い「○○家」「○○門」、こっちでも十家門なるものが飛び出してうわあぁって感じ、10個全部出す気か?
(中華アニメ“悪偶”では裁縫師協会の12の流派全てから許可を得るんだ、を掲げて最終回終わらせたっけなぁ)
お家関係はザハードの姫絡みだけもお腹一杯なのに…。
韓国でもお家柄は絶対だったりするんかね?私は詳しくないんで中華作品の延長として捉えてるんだけど。

それと強キャラの表現。
“ブラッククローバー”のライアなんかがそうだったけど、作中ひたすらあくびをするアレ。
あるいは「あらあらうふふ」を口癖とするニコ目のお姉さんキャラ、本気で怒らせたらヤベーぞと匂わすアレ。
日本の作品でもよくあるっちゃあるけど個人的にはあんま好きじゃない、余裕と余裕ぶるは違うんじゃねーの?と。
で、そんなのを極限まで煮詰めたようなラウレというキャラ、なんなんだかなぁ。
先のブラクロではライアはスタッフには都合が良かった、あくびさせてりゃ尺稼ぎできるから、けど視聴者からはウザいだけで…スゲー実力を隠して無気力を演じるってそんなにカッコ良いかね?

でもってその対極(熱血系強キャラ)といえるランカーのクォント、ウザいワニですら極端だと思ったらそれ以上に極端なのが出てうわぁ。
しかも謎なのが9話、ホーがラヘルを人質に取り夜に脅迫するシーン、クォントは神の水の使い方を見せてその場を去るのだけど、夜がそれをやったら驚いて戻ってくる。
…?
なにがしたかったん?予想外のことが起きたので引き返してきたんであって、じゃあ当初はどんな予想をしてその場を去ったん?
結局ラヘルは刺されホーは自殺するんだけど、これってその場を離れたクォントの責任じゃねーの?と思うのだけどその後そういった咎を背負う素振りも無い。
結局ルールがワカランので「そうですか」と納得するしかないのだけど、釈然とはしない。

と苦言を言えばキリが無いのだけど最終回は結構好きだったり。
人によっては真逆の評価らしく、それも分かるw
私は主人公の夜を好意的には見ておらず、そのせいで最後裏切られて「ザマァw」と思ってしまいまして…。
ラヘルに散々ついてくるなと言われたのにそれでもついてきたのだから、あんな目に遭うのも覚悟の上でしょ?と。
また、最近見たアニメであったような…くそう思い出せん、「光が強ければ影も濃くなる」ってヤツ、そんな感じだったんだろうと解釈。
夜が輝かしい(夜って名前だけど)からこそラヘルは闇墜ちしたんだろう、と…これに関しては他の作品の影響(補完)に過ぎないと言われたらその通りだけど。


総合すると、作者の考えたその作品だけにしか通用しないワケ分からんルールの競技なんかサッサと終わらせて塔の謎に迫ってくれれば良かったのに、って感じ。
塔だの神だの管理人だの試験官だの選別者だの救世主だのサハードの姫だの神の水だの十三月シリーズだの十下門のクンだの釣り師だの槍使いだの燈台守だの捜索者だの波使いだの…どれか絞れよと。
ここら辺のよくわからんワード連発はいかにも中華(中華じゃないけど)らしいっちゃあらしいんだけど、謎に謎を重ねる・謎を別の謎で解説するようなのはキツい。
というか本当に中華だったら春秋時代からの歴史や陰陽、仙道なんかの実在する資料に基づく(どこまで正確かは知らないが)設定の羅列が多いけど、これはどうなんだろう?
頭悪いヤツが複雑な話を考えられず、造語連発して誤魔化してるような…。
もし続きをやるならもうちょっと整理してくれないと参る。
ってかワニうざい、ラウレはデゾリアンと一緒に始末しよう、ってかそれだったら“一人之下”のホウホウの正体の方が気になるのでそっちやってくれ。
まぁ塔の謎も仙人(管理人)の戯れで片付けられそうだけど。
作画は崩れないのでアナクのスパチラを追うだけでいいんじゃねーの?{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 10
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「旅立ちの物語」から「反逆の物語」へ

2020年春アニメ。全13話。
原作は、10年以上連載を続けている韓国のWEB漫画。日本の制作会社がアニメ化しています。先日無料公開されていたので第2部ラスト(180話ほど)まで読了。
設定・世界観は不明な点が多いものの、人間ドラマの一貫性や全体的なクオリティが良かったです。

{netabare}
作画が非常に好みでした。
シンプルなキャラクターデザインと彩色はとても見やすく、動画の印象も私の肌に合っていました。
キャラクターの演技とバトルの両方に拘っていたと思います。
背景見ていると、壁の模様とかテクスチャ張り込んだりはあまりしていませんでしたね。なるほど、シンプルで見やすくなっています。

キャラクターも変に媚びていないのが良かった。
特に女性キャラクターの品の良さ、言葉遣いはキツイけど芯があってそれも味になっています。チーム内の人数が多くて名前が覚えられない(笑)のですが、キャラクター自体は立っていたので混同したりはしなかったです。
声優さん達も、皆さん演技がとても良かったですし、新人・中堅・ベテランとバランス良く配役されており、ちょっとしたアドリブも聞けたりして好きでした。
音楽もとても良かった。OP、EDも好きですが特にBGMが素晴らしく、音楽の掛け方も雰囲気を壊さなくてとても良かったです。{/netabare}

【総評】
{netabare}作品テーマとキャラクター描写の一貫性が良いですね。
主人公・夜のラヘルへの思慕故の旅立ちというイントロダクションに始まり、塔への反逆の物語のイントロダクションに終わる構成がお見事。
淡々と並べられた言葉と描写が最終話までに繋がっていくのが楽しかったです。
物語がシンプルに進行するので人間ドラマがスムーズに展開しており、じわじわ良い所が見えてくる作品。

アニメは原作の第1部ラストまで。
原作を第2部まで読んだのですが、アニメは人間関係の構築を補足して上手に描いています。
夜とラヘルの内面もだいぶ印象が違うし(特にラヘルは是非原作を読んで違いを知ってほしい)、どちらも好きだけどアニメの解釈やシーンのカット・追加には一貫性がありました。

クンが第1話で発言した「お前も塔のルールに縛られる側なんだな」というのが全てに通底するのですね。

最初の試験で顕著ですが、殺し合いしていた相手とすぐにチームを組むことは心理的に難しい。それでもそれが出来るのは精神・能力が強靭な実力者や、塔のルールを絶対視していない者。

実力も無くルールに縛られる者は、塔にとって扱いやすい取るに足らない存在。塔に上る中でルールに縛られ、人間らしさを失っていく者がほとんどなのでしょう。

塔に登るために人間性が失われていくラヘル。
ラヘルは塔にとって取るに足らない者であって、あくまでも夜を釣るための餌に過ぎない。
夜を裏切って、本気で笑うことも泣くことも出来なくなります。

一方で、塔に登ることが新しい世界を知ることであり、人間らしさを獲得していく夜。
塔にとって無視できない存在であり、塔に上り始めてから笑うことが多くなり、裏切られて初めて激情の断片を露わにします。

ルールに従順なラヘルへの激情は、すなわち塔そのものへの反逆です。
ラヘルの内面を第13話で描いたことで、二人の対称性が浮かび上がる構成は秀逸でした。

第1話、蝶ウナギの試練のシーンでは、横からのカメラワークが何度かあり、奥行きのない不思議なシーンでなんだろうな?と思ったんですけど。それが実はラヘルの視点であることに、再視聴で気が付きました。
ラヘルに早見沙織さんを起用したこと、13話でとても納得しました。
{/netabare}
独特な雰囲気があり面白いので、興味があれば見てみても良いと思います。


【設定に関する個人的な予想というか妄言というか】
支離滅裂なので暇つぶし程度にどうぞ。
{netabare}
「塔」と言うけれど、公式サイトで見ると建造物というより広大な一つの世界の呼称(空間概念)であるとされています。「塔を上る」とは自身を鍛え上げていくこととも解釈できそうかな?
塔を上るとどんな願いも叶うと言われているのは、もしかしたら後から付加されたものなのかも。
「ザハード王」は塔に文明がない時代に現時点でわかっている最上階まで踏破し、現在の塔の社会を築き、試験方式等を決定した者とあります。
そして塔の試験は塔に仇なす者をあぶりだすためにある、とユハンは言っている。
だから、本来ルールに抵触する行為をしてもバレない限り気づいていても指摘しないし、塔に致命的な行為だと思えばさっさと処理してしまうのかも。
塔の世界は明らかにデストピアですよね。
個人的には2期が見たいなあ…{/netabare}
(2022.1.30)

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

いのちを懸けて登れ。

久々にハオライナーズ枠の作品到来かと思いきや、韓国発の作品だったみたいですね。
国は違えど、作風は似ていると思いますけれど…。


「神之塔」とは、2019年から韓国のNAVER WEBTOONにて連載を開始し、
2018年からLINEマンガを通じて日本でも連載している冒険ファンタジー作品。
現在までに28ヶ国語に翻訳され、全世界累計閲覧数が45億回を突破。

少年「夜」は大切な女の子「ラヘル」を探すために伝説の塔に入り込み、
新たな仲間とライバルと出会い、階層ごとにある過酷な「試験」をクリアしながら、
塔の頂点を目指して行く。
少年の成長ストーリーと、その裏に隠された塔と少年の秘密は読者を魅了し続けています。

2020年春、NAVER WEBTOON初のTVアニメシリーズ「神之塔 -Tower of GOD-」として、
ついにアニメ化決定!
日本、韓国、アメリカで同時展開予定。


塔を登れば、全てが手に入る。

塔の頂上にはこの世のすべてがあり、

この世界を手に入れる……神になれる。

これは、ただ星空を見たくて塔を登る少女・ラヘルと、
そんな彼女がいれば何もいらない少年・夜の、

始まりと終わりの物語。


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

そういえば、中国の作品と似ている点といえば全世界累計閲覧数を前面に押し出している点でしょうか。
28ヶ国語に翻訳されて配信されているので、数が伸びるのはある意味当たり前だと思うんです。
勿論、アニメ化される決め打ちの一つとなったでしょうから意味が無いとは思いませんが、だからといってアニメが面白いとは限らないのがこの世界の常套なんですよね。

日本の作品でも原作の魅力や良さを表現しきれなかったアニメはゼロじゃないので…
だから最初は視聴するか悩みましたが、第1話目ではやみんが出演しているのを知り、視聴継続を決めました。
後から関根明良さんも出演されていると知ったのはうれしい誤算でしたけれど。

普段私の使っているアニメサイトに、この作品自体が掲載されていなかったので完全にノーマークな作品でした。
なのでググってみたらアニメーション制作はテレコム・アニメーションフィルムという日本のアニメ制作会社だったみたいです。
興味を持ったのは音楽担当に、ケビン・ペンキンさんというオーストラリアの作曲家が起用されていた点です。
こういう組み合わせも中々珍しいのではないでしょうか。

完走しました。
アニメーションとしてみたら及第点だったと思います。戦闘シーンもそれなりに動いていましたし…
難があるとするなら、展開とキャラでしょうか。
まず展開については、塔の中という極めて限定された場所で起きている試験であるにも関わらずスケール感が合わないので、まずそこが気になりました。

途中、砂漠の様な場所が出てきましたが、地平線が見えそうなほど広い空間が広がっていましたけれど、それって、本当に塔と言えるのでしょうか^^;?
何より一番気になったのは塔を登っている感覚が得られなかったといことです。
例えばSAOのアインクラッドだったら階層ごとに景色や発生するイベントなどが異なっていて、重層構造感は感じられましたけれど、本作品ではあまりそういう感覚は無かったかな。

あとはキャラ…でしょうか。
気になったのはデザインより、寧ろ魅力の方かもしれません。
ザ・ハードの姫の人間臭さと、徹底的な対抗心は嫌いじゃありませんでした。
終盤の掛け合いも悪くありませんでしたし…
ですが、どうにも魅力の感じられないキャラが居たのも事実です。

一番魅力が感じられなかったのは、個人的に主人公だったかな…
塔を登りたいという気持ちは分かりますが、行動が伴っているとは思えなかったんですよね。
すごくフワッとしていて地に足が付いていない感じが気持ちをより助長させたのかもしれません。

原作既読組はもっとたくさんの情報を持っているので印象は違うと思います。
ラヘルの終盤の行動だってアニメ組からすると完全に意味不明でしたから…
この印象の差がきっとアニメ化の難しさなんでしょうね。

オープニングテーマは、「TOP」
エンディングテーマは、「SLUMP」
どちらもStray kidsという韓国のボーイズグループが歌っています。
日本、韓国、アメリカでは、それぞれの放送地域に対応した言語版の楽曲が使われるそうです。

1クール全13話の物語でした。
「俺たちの旅はこれからだー」的な感じで終わりましたが、ここで終わっても仕方無いのかもしれません。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 15
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