2019年度の神社アニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の2019年度の神社成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月10日の時点で一番の2019年度の神社アニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

84.2 1 2019年度の神社アニメランキング1位
天気の子(アニメ映画)

2019年7月19日
★★★★☆ 3.9 (714)
3097人が棚に入れました
「あの光の中に、行ってみたかった」高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。彼女には、不思議な能力があった。「ねぇ、今から晴れるよ」少しずつ雨が止み、美しく光り出す街並み。それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――

声優・キャラクター
醍醐虎汰朗、森七菜、本田翼、吉柳咲良、平泉成、梶裕貴、倍賞千恵子、小栗旬
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

空の青み

新海誠監督作品。

雨の降りしきる東京のとある病室から、
憂鬱に外を眺める少女。
不意に射し込んだ光に誘われ、
少女は不思議な力を手に入れる。
同じ頃、家族と離れ東京に降り立つ少年がいた。

日常への機敏な眼差しは健在で、
映像は満点でしょう。劇伴も素晴らしい。
置き時計、蛇口、錆びた三輪車、雨粒、
きっと配置にまで意味があるに違いない。
…と、思わせる描写の力に感嘆です。
鳥居は現世と幽界を繋ぐ門なのでしょう。

母なる海の物語を壮大に描く「海獣の子供」、
広大で青く美しい透明な空を描く「天気の子」、
重力が躍るその上下運動の美しさに圧倒される。

セカイ系2.0と呼ぼう。
新時代の映像作家として自らを更新していく。
私なりに主題を簡潔に伝えればこうだ。
{netabare}希望的観測に従えば「個の回復」であり、
そして「個々人が繋がる強さ」でしょう。
例え不調和な世界でもいい、君と寄り添う。
歪んだ世界を歪んだまま共に歩こうと。{/netabare}

物語は結末に向け悲劇性は増していく。
ここに於いて、監督たる所以である、
{netabare}強烈なナルシシズムと世界が衝突を始める。
端的にこの衝突には参った。{/netabare}
物語の力は率直に後退だと感じるが、
しかしこれこそ監督らしい感性なのだろう。

なんて不思議な作品なのでしょう、
フィクションが歪んだまま愛を知るなんて。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 72
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

人の命は何事にも代えられない尊いものであると言い切った映画

この映画を一言で言い表すのは、とても難しいです。
しいていうならば、人の命は何事にも代えられない尊いものであると言いきった映画だと感じました。
ここまで言い切る新海監督は凄いです。尊敬しました。

物語は、
あるきっかけで、雨天を晴れに変える能力を身につけた少女、陽菜(ひな)。
離島から飛び出し、都会へとやって来た少年、帆高(ほだか)。
この二人が、都会で雨の日に出会います。
そして、帆高と陽菜は、雨天を晴天に変えるための仕事を始めます。

世の中には晴天を望む人が沢山いることを、二人は知ります。
そして、晴天を望む理由も、人それぞれで違うことを知ります。
その理由は、それぞれの依頼人にとって、とても大切なことなのです。
だから、空が晴れ渡ると、依頼人の顔が皆、笑顔になる。
二人は、依頼人の笑顔を見るのが好きでした。

仕事は一見、順調に進みますが、無理をして天気を変えると、それなりの『みかえり』があります。
そのみかえりとは・・・


作画はこの上なく美しい。
但し雨のシーンが多いので、美しさを感じる場面が少ないですが、だからこそ、晴れたときの青空は格別に綺麗に見えます。
音楽も大変すばらしい。
そして、帆高が陽菜をとても大切にしているのがわかるので、思わず応援したくなります。

ぜひ、映画館で鑑賞してください。良い思い出となります。

{netabare}
ところで、
陽菜(ひな)は、子供なのに、弟と二人で暮らしています。
都会で、子供だけで生きるのは、とてもつらいことです。
帆高も、都会で暮らし始めて、子供が一人で生きることの厳しさを知りました。

皆さんは、毎日三食を食べていると思います。
でも、子供が都会で一人で生活をすると、仕事にありつけず、食事もまともに食べられません。

おそらく、皆さんの中には、将来都会で暮らすことを計画されている人がいると思います。
都会は、お金を持っている人であれば、快適な生活が送れます。
但し、都会でお金を稼ぐためには、とても厳しい現実があることも、覚えておいてください。
そして、安易にお金を稼げる悪の道に入ることが無いように、切に願います。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/09
♥ : 69
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

作品<商品の視点はそれなりに重要

オリジナルアニメ劇場版 114分


興収250億円。日本歴代4位の記録を打ち立てた『君の名は。』から3年。新海誠監督2019年の新作。
良くも悪くも『君の名は。』以前と以後で語られてしまうのはしかたないでしょう。
立ち位置もこの大作を起点にして、

 1.変わらず好き
 2.以前よりもっと好き
 3.昔のほうが良かった
 4.これを機に新海誠を知った
 5.一貫してネガティブ評価

ニワカな私は4.です。『君の名は。』で知って、『秒速…』や『言の葉…』に流れていった人。
余計なお世話は承知の上で放言しますけど、3.のスタンスの方、ヲタ村から一歩出た実社会では注意が必要です。メガヒット作品だと普段アニメを観ない一般国民の関心が低くありません。しかも好意的に作品を捉えたケースが当然ながら多い。それを事情を聞かずぶった切ってる方の多いこと多いこと。私はドトールで実際に遭遇しました。本人の狙いはともかく地下アイドル好きのキモオタ扱いされ撃沈するのが関の山です。5.も似たようなもんですが「一貫してるのね」と傷は少ない。
『けもフレ』の前と後がどうだ!とか、○○(制作会社)の新作があーだこーだとかは一般人にはどうでもいいことなんで彼らも他人事として聞いてられるのですがこのテの作品はその一般人のテリトリーに入ってることを十分意識しておきましょう。

声優を例にすると分かりやすいかもしれません。先日、民放ゴールデンタイムでの『聾の形』放送に際し、知り合いの非ヲタ一般人に出演声優を説明するにあたってはこうでした。

 主役→『千と千尋』のアシタカ役
 永束→ハリーポッターの中の人
 妹→『君の名は。』のさやちん役

彼らがイメージ湧くのはここまで。ヒロイン役の早見さんは残念ながら「誰?知らん」です。興行収入の多さと一般認知度は比例します。ハリポタは違いますが基本的にはディズニーかジブリ強し!という勢力図の中に割って入ってきた新海さんは凄いと思いますよ。

一般人と共有できるアニメ作品は貴重であると思うので、いつも以上に盛大に脱線しました。
作品単品での評価も気になりますが、マーケティング視点も少しばかり導入しつつ興収含めた一般社会での受け入れられ方も気になるそんな作品という前提で以下。

メガヒットの次に何をもってくるか?

『CROSS ROAD』でミリオン達成。シーンに認知されたMr.Childrenは次に年間チャート1位となる『innocent world』、その次にバンド史上最も売れた『Tomorrow never knows』をリリースしました。答えは簡単。名曲を出し続ければ良いという結論です。もちろんおいそれと真似は出来ません。
次にやらかしがちなパターン、特にここ最近顕著なのがヒットしたものをそのままなぞらえた模倣品を作ること。短期間に消費されること前提であり飽きられるのも早いのでクリエイターには不評。こればかりは会社だったりプロデュース側の方針に依ります。
というわけで最後。目先を変えてくパターン。すなわち王道な売り方。成功事例だとX JAPANが分かりやすい。『紅』でシーンに躍り出てからの次回作が『Endless rain』。前曲の激しい曲から一転してピアノのイントロが美しいバラードです。振り幅で勝負!人気を定着させました。
なお現在の音楽シーンはメディアミックスが複雑すぎて音楽単体評価が難しく該当事例ナシです。


そしてやっとこ作品そのものについての言及になるわけですが、
本作はだいぶ模倣品リリースに傾いてたと思われます。パッと見た感じは「模倣品」。中身は「異物」なんですけどおおむねパッと見た感じで判断しますもんね。別に「俺たちの新海戻っておいで」でもいいのですがせっかくドがつくほどのメジャーに踊り出たんでしばらくは居座っていて欲しいです。、
私は『秒速…』以降しか知りませんが、少なくとも全てボーイミーツガールです。お家芸となってる過去作品のキャラ登壇は本作に限らず伝統芸能といって差し支えないでしょう。実写より美しいともされる作画やモノローグを多用する心情描写は作家の色なので模倣品とまで言うのは酷ですが既視感あることは致し方なし。RADWIMPSの再起用はやり過ぎな感もあり。といったところでしょうか。

『ナウシカ』『ラビュタ』と連発。『未来少年コナン』以降の監督の得意分野である冒険活劇あるいはファンタジーを2本続けてから第3弾では2本立てにトライ。『火垂るの墓』で原作有り&別監督と目先を変えてきたジブリを無条件に賛美する意図はありませんが、早くチームか会社設立しちゃったほうが良い気がします。需要に対しての供給力が足りてないというか今のままでは監督への負担が大きいのではないかと思われます。
ボーイミーツガールの完成系を目指して試行錯誤しているクリエイター!? 技術的には積み重ねを感じる。例えば『言の葉の庭』で培った雨の表現をトレースしてたり違うものを見せたりと。そんな持ち味を楽しみにしているファンも大勢いるためガラッと変えるのは実際難しいところなんでしょうね。


して映画の肝心の中身は?

良いです。ボーイミーツガールは好物だしこの監督の演出する男女の営みも自分には合います。
特にツボにハマったのが新宿の繁華街の裏通りの雰囲気。終電逃してさあこれからって空気や、朝を迎えた時点での気だるさを感じさせるあの雰囲気がよく出ています。

これが家出少年の目にはどう映ったか?

宿無しの不安とおそらく束縛からの解放がないまぜになった心理状態。そんな者すら受け入れる街。“ここではないどこかへ”来た感がこれでもかと出ております。
ウチの中学生の倅が劇場で鑑賞し「面白かった」と感想を言ってましたが、メインストーリーとは別にこのちょっとした淫靡な空気に吸い寄せられたのかもしれないなぁ、と実際の作品を観て思いました。朝オープンしたてのカフェに昨晩オールした若もんがぐったりしてるでしょう?そういうところです。

そして不穏な街には不穏な物語が良く似合う。
当人たちの問題がそのまま世界の危機に直結する“セカイ系”に分類されそうな物語でした。


 “ボーイミーツガール”

 “怪しい街新宿”

 “セカイの危機”


難点はキャラの行動原理がわかりづらいところ。その点はけっこう狙っていたらしく、例えば主人公穂高の家出理由はわざとぼかしているとのこと。自分はあまり好きではないです。
総じて“良い”と感じてますが、行動原理に納得感がないからか主人公らがやや低年齢だったからかは定かではありませんが、結局キュンキュンしなかったので評価爆上がりには至らずでした。

マーケ視点としては合格。メガヒットの次という超絶難易度をクリアしてます。「あー結局アノ作品だけの監督だったんじゃん?」という声がない。充分でしょう。
これで次回作も一般人巻き込んでみんなで楽しめますね。ぜひデートの誘いに新海映画を!
ボーイミーツガールは不滅です。



※閑話休題

■人身御供

ちょいちょい日本文化のわりとコアな部分を突っついてくる作風は今回も。
本質的には巫女さんの役割のお話なんだと思います。

{netabare}現代版の卑弥呼{/netabare}

僕らの血肉に息づいてる感覚をモチーフにしているので賛否はともかくイメージはしやすい。
{netabare}※自然の怒りを収めるための人身御供という概念のことです。
相方が人身御供となることを良しとするか否とするか?本作での結論は観ての通りでしたがあの結論はアリだと思います。{/netabare}

↓ネタバレ
{netabare}今のこの時代に社会正義を捨ててヒロインを取ったる!とやったのは痛快でした。
公の精神は大切です。ただしポリコレ棒をぶん回しての昨今コロナ禍での自粛警察みたいなのとは似て非なるもの。{/netabare}



■東京

{netabare}「街の風景を自分の手で・・・」
「東京だっていつ消えてしまうかわからないと思うんです」{/netabare}

建設会社希望の某就活生の志望動機をふと思い出しました。
もしやこの伏線回収か!?と思いきやところがどっこい消えずにたくましく東京の人達は生きている。
むしろ「埋め立てる前はもともと海だったしね」のセリフにお台場はもちろん江東区あたりもイメージしてそりゃそうだと膝を打ちました。

{netabare}「東京だっていつ新しいものが生まれてくるかわからないと思うんです」にバージョンアップ{/netabare}

自然災害を無視できない風土。だからこそ生まれた“もののあはれ”なる概念。そんな諦観だけに留まらず対となる進取の気性との両輪でここまで続いてきた国なのにどうやら後者の気概が最近弱まっている模様。もう一度取り戻して前を向いて歩いてく。
なんだかんだそんな前向きさを感じるのはエンタメの良い部分が出てるのかもしれません。



視聴時期:2020年7月

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2020.08.22 初稿
2020.10.25 タイトル修正
2021.05.30 修正

投稿 : 2024/11/09
♥ : 64

75.3 2 2019年度の神社アニメランキング2位
空の青さを知る人よ(アニメ映画)

2019年10月11日
★★★★☆ 3.8 (237)
1092人が棚に入れました
山に囲まれた町に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。将来の進路を決める大事な時期なのに、受験勉強もせず、暇さえあれば大好きなベースを弾いて音楽漬けの毎日。そんなあおいが心配でしょうがない姉・あかね。2人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、2人きりで暮らしてきたのだ。あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。姉の人生から自由を奪ってしまったと…。そんなある日。町で開催される音楽祭のゲストに、大物歌手・新渡戸団吉が決定。そのバックミュージシャンとして金室慎之介の名があがる。あかねのかつての恋人であり、高校卒業後、東京に出て行ったきり音信不通になっていた慎之介が町に帰ってくる…。時を同じくして、あおいの前に、突然“彼"が現れた。“彼"は、しんの。まだあかねと別れる前の、高校時代の姿のままで、13年前の過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。思わぬ再会をきっかけに、次第に、しんのに恋心を抱いていくあおい。一方、13年ぶりに再会を果たすあかねと慎之介。せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。

声優・キャラクター
吉沢亮、吉岡里帆、若山詩音、松平健、落合福嗣、大地葉、種﨑敦美
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る

世の中は思ったようにならないことのほうが多く、そんなときの悔しさや自分への腹立たしさが身に染みて伝わってくる物語です。

おそらく、順風満帆の人生を送られている方は、この映画の良さが理解しずらいと思います。
でも、失敗や挫折を経験したことのある方が見ると、直ぐにこの映画の登場人物に感情移入でき、感動するでしょう。
最後はハッピーエンドとなる素晴らしい映画でした。

特に若い人たちは、以下のまえおきを読んでいただいたうえで映画を見ると、より一層感動できると思います。

<まえおき>
ガンダーラとはパキスタン北西部にかつてあった古代都市です。
孫悟空で有名な唐の時代に実在した三蔵法師も、ガンダーラに行ったことがあるそうです。
そこに行けばどんな夢もかなう。そんな噂があったかどうかわかりませんが、
約40年前にゴダイゴが歌った『ガンダーラ』は、まさに理想郷でした。

この映画は、まさに理想郷ガンダーラを東京に置き換えて夢を見た若者たちの物語です。


<映画の序章のあらすじ>
※私の思いが含まれています

事故で両親を亡くした二人の姉妹がいた。
姉のあかねは、妹を誰よりも愛していた。
妹のあおいも、姉を誰よりも慕っていた。

だがある日、あおいは、自分のせいで姉が結婚を諦めたことに気づく。
それからは自己嫌悪の日々。
自分さえいなければ姉は幸せになれる…。そんなねじれた考えが日増しに大きくなってゆく。
そしてあおいは、姉を愛するがゆえに{netabare}家を出ることを決意する。{/netabare}

あおいの第一印象は、影と棘とを持ち合わせた少女として映ります。
もし自分が同じ立場だったら、やはりあおいと同じように考え、行動すると思う。
この悔しさを誰にぶつければいいのかと悩むだろう。


姉の元恋人である慎之介は、東京で一旗揚げようと夢を見ていた。
一旗揚げれば、姉妹そろって呼ぶことができる。
そうすればみんなが幸せになれる。彼はそう信じていた。
だが、東京は、そんな夢を見る人がたくさん集う場所。
夢を掴むのは、ほんの一握りの人だった。
さらに、都会で生きていくためには厳しい現実があった。

私も東京に住んでいるので、慎之介の気持ちが良くわかります。
都会で生きていくのは、本当に大変なことです。


そして、ここからこの映画の本編が始まるのです。
ぜひ見てください。


井の中の蛙は大海を知りません。
でも、大海を知らないからこそ、できることもあります。
大海を知ったたがために尻込みして、挑戦せずに諦めるよりも、
大海を知らずに挑戦するほうが断然良い。

たとえ挑戦してその夢がかなわなかったとしても、後悔することはないはず。
挑戦せずに諦めると、一生後悔します。

一度っきりの人生です。
空の青さは誰にでも見ることができ、そして太陽は、誰にでも平等に光を降り注ぐ。
井の中の蛙は、誰にはばかることなく挑戦して良いのです。
挑戦し続けている間は、たとえ何度打ちのめされようとも負けではない。挑戦をあきらめた時が負けなのです。

2019/12/28 一部修正しました。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 55
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

集大成と言えそうな理由

2019年公開のオリジナル劇場版 107分

ここに集う皆さんには“超平和バスターズ秩父三部作の三本目”ですけどなにか?…で紹介は充分かと。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(2011年)』『心が叫びたがってるんだ。(2015年)』の流れを汲む4年に一度の超平和の祭典。密かに2023年でまた何かやらかしてくれないか期待してる私です。
制作はCloverWorks。A-1 Pictures高円寺スタジオが改称しただけのようですので、三部作どれも同じ会社&主要クリエイターでの共同作業ということになるんでしょうか。きちんと集大成であることが伝わってくる力作でした。

ただアニメファンだからこその鬼門もありまして、やや一般層を意識した要素が散見されること。ほらほら「万人受け」って言葉は苦手でしょ?
プロデューサーに川村元気氏。オタ全開な新海監督の作品を垢抜けた装いにしメガヒットを飛ばしたお方ですよね。また、売れ筋アーティストの起用&主人公には人気俳優さんを配置ってのでピクッと反応しちゃうところがあります。

岡田麿里脚本ということは、めんどくさい女子だったり青春こじらせ系な物語なんだろうな。今回はマスマーケティングの香りがするぞ。といった事前評価でしょう。その点については良くも悪くも期待に沿ってたと思います。
悪い点は予想の範疇だったこと。常連客が喜ぶいつもの仕様に本作ならではの要素でプラスに転ぶかマイナスに転ぶかどうか。
良い点は俳優さんの演技が想像以上。相生あかね(CV吉岡里帆)と金室慎之介(CV吉沢亮)両名良かったっす。吉岡さんの声質はやみんぽかったり、吉沢さんほぼ2役のようなものでしたが演じ分け出来てました。あと良い点もう一つ。秩父の風景画が過去2作を凌駕する勢い。遠景もありスポットもありました。秩父の宣材資料として申し分なくいくつか組み合わせるだけでPR動画ができそうなくらいです。


周辺はそれぐらいにして内容です。
あらすじは混み入ってるため省略。主人公相生あおい(CV若山詩音)の幼少期にのどに刺さった小骨。その時高校生だった姉のあかねと彼氏の慎之介(しんの)もそれはそれで一悶着あり、が物語の起点。そして時は流れてあおいは高校3年生。人生の分岐点で小骨にどうけじめをつけるのか。
集大成らしくいつもの“こじらせティーン”はもちろんのこと新たに“こじらせアラサー”も加わってやけにめんどくさいことになってます。ファンタジー設定も健在。トラウマ発生地点の13年前で時がストップしてたのか高校生の慎之介くん(生霊!?)が未来の世界に登場し物語を動かします。「おい○○年後の俺、元気でやってるか?」枠。小学校の頃埋めたタイムカプセルを掘り返しそのピュアっピュアな内容に触れて、やさぐれた自分に羞恥の波が襲い掛かってくる感覚に似てます。

青春ものの良さの一つに過ぎ去りし日々への憧憬があります。あの頃は良かった!ってやつですね。
ただそれは視聴者である我々が感じたいことであるわけですが、本作では登場人物にその気があるのです。おそらくアラサーどストライク。社会に出て清濁合わせ飲んでなんとか折り合いをつけてる今日この頃。理と情であれば前者なければ物事が進まないことを熟知してる大人に「大切なのは気持ちだろ!」を突きつけるお話でございました。普段鬱屈してる分心地よさを感じます(笑)

人間関係はやや混み入ってるんですよね。
思えば『あのはな』は ※のネタバレ
{netabare}仲間の事故死という幼少期のトラウマを高校生になって仲間たちと克服する。{/netabare}

思えば『ここさけ』は ※のネタバレ
{netabare}両親離婚の原因は自分という幼少期のトラウマを高校生になって仲間たちと克服する。{/netabare}

そして『空青』は ※のネタバレ
{netabare}幼少期発生した姉向けの自責の念(あおい)と時が止まって動けないアラサーとのコンボを{/netabare}
{netabare}同世代の仲間というより大人たちや小学生だったり今までにない縦の世代軸を使って克服する。{/netabare}
{netabare}しかも恋愛要素は過去2作品の比ではないくらいマシマシ{/netabare}

“トラウマ”と“解決メンバー”でみるとより複雑になってることが分かります。三部作の最後を飾るにふさわしいとの見立ても可能でしょう。
そんなこんなで“集大成”を楽しみながら、いつもながらのめんどくさい青春といつもに増して多層化した物語に触れたい気分に合いそうな大人向けの佳作です。
なお自分には混み入った恋愛ベクトルへの理解が不足しているのと、あおいちゃんがめんどくさい通り過ぎて駄々っ子に見えたこともあって嵐を呼ぶ感動とまではいきませんでした。



※ネタバレ所感

■されど空の青さを知る

{netabare}「井の中の蛙大海を知らず されど空の青さを知る」

~を知らず に続きがあることを知ってなんかよくわからんけどスゲーと思ったのはいつだったか…
本作品のメッセージでしたよね。井=秩父、大海=東京みたいな空間的な意味もありましょうが、解釈の拡がりはありそうです。自分はされどの部分を「置かれた場所で咲きなさい」と受け取りました。{/netabare}

{netabare}首を横に振ってみたら周囲を認知できるけれども井戸で遮られたらそこまで。
首を縦に振ってみたら地面と空の青さは確かにわかる。遮るものがない空は井戸の中でできることとしては最上級となりましょう。{/netabare}

{netabare}この縦と横を人間関係に置き換えてみます。
横は言わずもがな仲間たち。同級生ら横の繋がりです。縦は親・姉兄・弟妹・年上・年下の異なる時間軸同志の関係。年齢が違う者らの縦の繋がりです。

繰り返しにはなりますが『あのはな』『ここさけ』はあくまで横の繋がりで完結しているTHE青春ストーリー。縦はあってもスパイス程度でメインには躍り出てはきませんでした。これらは大海を知らないからこその刹那の耀きを感じ取る作品群です。
翻って本作『空青』について
 

 横にしか振ってなかった首を縦に振ってみて初めて見える世界


先述した通りに理解が不足してる俺氏ということで100%楽しめなかった感はあります。
それでも前作以上の深みとコクや雰囲気の良さはこういうところから感じ取れたかなと思います。{/netabare}



視聴時期:2020年10月 

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2020.10.24 初稿
2021.08.14 修正

投稿 : 2024/11/09
♥ : 55
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

さよなら少年の夢

制作、超平和バスターズ。

過去と現在をつなぐ切なくて愛しくて、
ちょっと不思議な、二度目の恋の物語。

あいみょんの「葵」が心に響きます。
あの頃の僕たちが、想像した未来は、
きっと希望に満ち溢れた物語だったのだろう。

人生は強大な現実に折り合いを付けて、
どこかもやついたまま、前へと進む。
どこかでケリを付けたいと思いつつも、
時間のベクトルは、巻き戻りはしない。

{netabare}憧れていた音楽生活に打ち込む少女は、
それはよこしまな動機だという。
憧れていた音楽生活を叶えた大人は、
それは望んだ形ではないという。{/netabare}

誰もが過去に置き忘れてきたものがあり、
そこには自分を縛り付ける法則がある。
どんな夢も叶う場所を探すのは青春の代名詞だ。
ありきたりな物語かも知れない。
しかし共感が持てる優しい物語である。

拒絶が僕たちを待ち受けている。
後悔が僕たちの歩みを鈍くさせる。
それでも次へ、次へ。

空の青さを知る人とはそういう人だろう。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 53

63.8 3 2019年度の神社アニメランキング3位
絶望の怪物(アニメ映画)

2019年6月10日
★★★★☆ 3.2 (28)
88人が棚に入れました
アニメ制作スタッフとして働いた経験のある漫画家のコタニジュンヤが、完全個人制作で手がけた30分の短編アニメーション。ある日、中学生の星野アオイは、自分と家族が醜い宇宙人の怪物であることを知る。両親が隠していたため、彼女と弟のユウタは、その事実を知らずに育ってきた。彼らは薬を使って人間の姿に化けていたが、なぜかアオイにだけ、その薬が徐々に効かなくなり……。2019年6月10日から名古屋・大須シネマにて上映され、7月6日からは東京・下北沢トリウッドで公開。
ネタバレ

カミタマン さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

たったの29分!!

2021/09/27 投稿

率直に言ってすごいと思いました。

29分間,テレビシリーズ1話分の長さです!

しかし,視聴後の満足感は高いです!

ストーリーは{netabare}タイトルや作品のキャッチコピーなどから容易に想像できます。完全にイメージ通りのストーリーと言えます。{/netabare}ツッコミどころもいっぱいありまが,あまり気になりません。

背景はきれいだと思いました。描き込まれた美しさでは無く,シンプルに描き色できれいに見せるといった感じでした。

キャラクターは絵が上手いとは感じませんでしたし,良く動いているわけでもありませんでしたが作品世界としてはこれでいいと思います。作品の成り立ちを考えれば,これが最適なのでしょう。

音楽はピアノの旋律が切なさを増幅します。
主題歌は,音程が安定せずにお世辞にも上手いと言えない歌唱力なのですが,逆にそれがよりいっそう切なさを感じさせます。
おそらく,この音楽の力が作品上大きく貢献していると思います。

結局何がすごいのか,そう感じさせるのか考えてみると,とにかく見せ方が上手いのだと思います。
余分な物を削ぎ落とした,引き算の美学とでも言うのでしょうか?歴史的に見ても日本人の琴線に触れるそんな作りの作品でした。

クレジットを見ると原作・脚本・絵コンテ・演出・作画・美術・着彩・撮影・編集・音響・監督・プロデューサー・他全般 コタニジュンヤとなっています。ほぼ一人で作り上げたという点は考慮せずに評価しています。

一方29分で完結している点は自分の中では,評価上大きなポイントになっています。

たった29分なので,見て損は無いと思います。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 11

三毛猫メリー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

なにをもって怪物と呼ぶのか

2021.6.17 視聴完了。

いつものように普通の中学生として暮らしていた星野葵。
ある時、自分は宇宙人だと知ってしまう。

ストーリーの先は読めてしまう。
なにしろ「絶望」なのだから。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 5
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

鬼太郎でも出てくれば、何とかできただろうか?

 リアルな背景の反面、私にはキャラデザに好感が持てなかったです。だが、なぜこの結末でなければならないのか?、自分には納得できないものがあったです。

 普通の家庭、学校で日常生活を少女がいるです。そんなある日、突然異変が起きて、自分や家族が何者なのか?を知るです。
 学校にも行けなくなり、絶望的心理状況に追い込まれ、破滅へと突き進む物語だったです。

 この主人公、葵が自分を自分であるという認識が、一転してしまう。{netabare}日常から、友人の家での知るよしもない突然の体の異変を、隠すことしかできない現状は、この葵にとっていたたまれない物だったです。

 母親によって、その現状は抑えられたように見えても、姿を維持できなくなっている{/netabare}現実から逃れることができず、表に出歩けなくなってしまうです。家族にとっても葵にとっても、恐怖としか言いようないのです。

 学校に行ったとしても現実でも起こりうる、葵の不安、苦しみは、そうなるしかないのか?普通の人間として生きたい!というのを描いていたです。

 その先に葵を待っていたのは、正に絶望そのものだったことは、やるせない所あったです。
 人間が人間でないものを同じようにして、実際この家族を受け入れられたなら、起こらなかった悲劇だったと思うです。この物語において、そんなことは、あり得ないのです。{netabare}鬼太郎にでてきた妖怪病院でもあって、半魚人のように元に戻れない人間にすることもできないのです。{/netabare}

 最後まで、{netabare}この家族は救われなかった事、残った{/netabare}葵がした行動、自身に取った結末は、とても好きになれなかったです。{netabare}最後近くで、別れを告げに友人宅を訪れるです。葵を気にかけていた友人が、正体を知ったとき、葵を止めることもできない、しない所です。どの道、葵は生きられないようだったです。{/netabare}

 EDの歌を聞いて、さらに、絶望的な気持ちになってしまったです。

投稿 : 2024/11/09
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