短いでツッコミなおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの短いでツッコミな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月08日の時点で一番の短いでツッコミなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

70.5 1 短いでツッコミなアニメランキング1位
時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん(TVアニメ動画)

2024年夏アニメ
★★★★☆ 3.5 (242)
643人が棚に入れました
久世政近の隣の席に座るアーリャさんは、いつも彼に対して冷ややかな目線を向けている。けれど、時々ボソッとロシア語で彼にデレていて......。 その言葉を政近も聞き逃しはしない。 なんと、政近はロシア語のリスニングがネイティブレベルだったのだ!! 気付いていないと思い込み、時々デレるアーリャさん。 そして、その意味を理解しながらも、気付いていないような振りをする政近。 ニヤニヤが止まらない、二人の恋模様の行方は——!?
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

むしろ生徒会選挙に惹かれて後追いした視点のレビュー

無気力な主人公高校生男子にツンツンしながらも、バレないようにロシア語でデレている同じクラスで隣の席のメインヒロイン。
が、実は幼少の頃、ロシア人少女と交流があった主人公はロシア語のデレを理解できていて……。
同名小説(Web短編版、ライトノベル版共に未読)の連続アニメ化作品の1期目(全12話)


【物語 3.5点】
夏アニメ放送開始当初から、『ロシデレ』初回から盛り上がっているな~と横目でチラ見しつつ、
“〇〇さん”系に関しては私はお腹いっぱい。

本作もバレてない外国語のデレがバレていて……という風味は特徴的ですが、
刺激的なのは最初だけで、あとはユルくてじれったい日常の掛け合いが続いていく。
頬杖をついて微笑みかけてくる、如何にもなメインヒロイン・アーリャのビジュアルからして、
量産型〇〇さん系なのだろうなどと、
世間に背を向ける、持病の天邪鬼を発症し、様子見を決め込んでいた私。

興味が出てきたのは、放送中盤以降。
アーリャが主人公男子のサポートで立候補を目指す生徒会会長選挙がストーリーの軸となって、
当初のようなツンデレなどラブコメの安定供給を期待していた一部視聴者からコレジャナイと脱落者が出ているらしい。
(あとは{netabare} 催眠術{/netabare} などエロがハイレベル過ぎて付いていけないとかw)
など色々と雑音が聴こえてきたから。

私はむしろ、ただデレデレするだけの凡庸なラブコメかと思っていたが、
本作には生徒会選挙を通じて作者が伝えたいテーマがあるのでは。
消費され使い捨てられるだけでは終わらない、残る芯がちゃんとある自分好みのラノベアニメなのでは。
と、またぞろ逆方向に天邪鬼が発症し、夏も終わる中、後追い視聴し始めた次第。


その生徒会選挙。
学内民主主義が盛んな私立征嶺学園の校風もあってか、
内容は会長候補と副会長候補がコンビで戦うことを重視する。
相当先の本選に向けて、事前の評判を左右する学生議会での討論バトル、実質立候補者演説となる終業式の生徒会挨拶など、予備選ポジションのイベントが長いスパンで続いていく。
米国大統領選なんかも彷彿とさせる本格的な選挙戦マラソンレースが1期では完結せず、
制作決定した2期も続いていく。

選挙に向けた“政治劇”も、私心を満たすためのハリボテ政策提言。
噂の流布や、時に{netabare} さくら{/netabare} も使う聴衆への印象操作。
本音と建前を使い分けるダーティーな部分も結構、描写されており。

これはなるほど、アーリャのツンデレで息抜きしたいと思っていた視聴者の中には胃もたれする人も出てくるわと納得w


が、生徒会選挙には、やる気を無くしていた主人公少年が、
何事にも本気なアーリャに惹かれて、全力を出すことを思い出していく。
ラブコメの根幹にも関わる要素が示唆されており、私は好感触。

何より私自身が選挙権取得後、国政選挙投票は皆勤する(今週末も当然行く)
薄汚い政治茶番劇も含めて、選挙戦見ると血が沸き立つ選挙大好き人間ですから。

2期も選挙戦目当で、是非視聴したいです。


【作画 4.0点】
アニメーション制作・動画工房

手描き感重視の柔らかいタッチには工夫を感じますが、
作画カロリー自体は安定はしているが及第点くらいかなとの印象。
が、ラブコメで肝要なヒロインが可愛いという部分は譲らないという信念は好感できます。

私との相性で言えば、キャラクターデザインの室田 雄平氏。
アニメ版『ラブライブ!』無印のキャラデザで、私の推しであるロシア系のエリーチカ含めて、
散々私を萌え殺してくれた御方がデザイン調整したヒロインズには、
私の本能が逆らえません。
(余談ですが、アーリャといい、エリーチカ妹といいロシア女子はお汁粉を飲み物扱いするものだという風評被害の拡大が止まりませんw)
氏のデザインで躍動するヒロインズの瞳のキラキラは本当に綺麗ですね。
(据わったジト目も含めてw)

作画4.0点まで上げるダメ押しとなったのは全12話毎回違うEDアニメーション。
OPも含めて、様々な衣装で目の保養になったアーリャら萌えキャラファッションショーには、
どうもごちそうさまですといった心境です。


【キャラ 4.0点】
個人的に一番惹かれたのが主人公少年の久世 政近。
典型的な、普段やる気ないけど、本気出したら無双する系の主人公。
ただ、こういうキャラって恋愛にも無関心、鈍感なことが多いのですが、
彼の場合は、上述の通り、幼少期の初恋体験と挫折経験が、かなり至近距離にある模様なのが特徴的。
今後、恋と選挙がどう絡んで彼の真意が明かされていくのか、2期以降も目が離せない主人公です。

メインヒロインのアーリャ。
ロシア語デレこそ個性的だが、二次元世界では何処にでもいるフツーのツンデレといった感じで、
私にとっては第一印象は意外と薄かった彼女。

正直、途中までは、会長選でも最大のライバルとなる周防 有希(ゆき)の方が、
キャラクターとしては面白かったくらい。
中等部で政近と組んで生徒会長も務めた清廉さと、裏のゲスい表情。
そして{netabare} 政近の実妹としてオタクトークも絡めながら、兄にグイグイ迫る{/netabare} さらなる裏の裏の本性と、
ウラオモテが激しすぎて衝(笑)撃的でした。

が、有希を始め、裏表を器用に使い分けるキャラが続々と投入され、周囲を掻き回す度に、
終盤になるに連れ、裏表の少ない真っ直ぐなアーリャの
(単にロシア語でデレるのを隠せない程、不器用だとも言えるが)
無色透明なピュアヒロインとしての価値が浮き彫りになって来た感じ。


政近とアーリャの“ロシデレ”が掛け合いの中心ですが、
政近は他の女子との絡みも面白かったです。
特に、ほんわかした外面を被ったアーリャ姉・マーシャにペット犬扱いされる政近が微笑ましかった?ですw

興味深かったという面では政近と宮前 乃々亜。
共に副会長候補として、アーリャと谷山 沙也加という不器用者の会長候補を支えるためには、
駆け引きや印象操作で手を汚すことも厭わない者同士の会話からは、渋い味わいが滲み出ていました。


【声優 4.0点】
ヒロイン・アーリャ役の上坂 すみれさんは上智大学外国語学部でロシア語を専攻しており、
“ロシデレ”にはうってつけのキャスト。

よく日本語は世界で一番難しいと言われますが、
それは文字の種類の多さや、SVO(主語、動詞、目的語)からSOVにひっくり返す文法などの話であって、
発音パターンに関しては日本語はかなり少なくてシンプルな方。

欧米圏における無声音と有声音の聞き分け、使い分けなどは日本人の私には勝手が分からず苦労しますし、
中国語の四声(せい)とかリズム音痴な私には厳しいですし、外国語発音って誠に難しいですが。
ロシア語に至っては巻き舌が多用されるため、私には本当にムリ。
ロシア語とか、聞いているだけで舌がもつれそうになりますw

ロシア語監修が萌えキャラに寄せて、優しい印象の発声を意識してくれたとのことで、
本作のロシア語はまだ巻き舌控え目なのかな?と思っていましたが、
クライマックスの終業式挨拶での上坂さんは巻いてましたね~。
最近の声優さんの多芸ぶりを改めて思い知らされました。


『ぼざろ』結束バンドのメンバーは、他作でしばしばコンビで出演したりしますが、
本作では谷山 沙也加役の長谷川 育美さんと、宮前 乃々亜役の青山 吉能さんが、
会長&副会長候補ペアとして主人公ペアの前に立ちはだかりました。
視聴者にもシリアス要素でプレッシャーを与える演技で、また違った色を出してくれました。

裏表が多いキャラ同様、色んな声を使い分ける声優さんもまた奥が深いです。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は堤 博明氏。
〇〇さん系の日常・ラブコメ対応に関しては『高木さん』で勝手知ったる同氏。
本作は舞台がセレブも通う高校とあってか、優雅な旋律も目立った印象。
もっとも{netabare} 「誰でも出来る催眠術入門」{/netabare} ではキッチリと縦笛の音程を外してコメディ対応して来ますがw


主題歌はヒロイン・アーリャのリサイタル。

OP主題歌「1番輝く星」
常に上を目指して研鑽する中で芽生えるこの感情は恋心なのか?
ヒロインの性格や葛藤を的確に捉えたアップテンポナンバー。

ED主題歌は往年のカバー曲が中心。
こうしたカバー企画は、第5話・MONGOL800「小さな恋の歌」や、第9話・いきものがかり「気まぐれロマンティック」など、ゼロ年代のJ-POPが中心になることが多い印象。
ですがアーリャさんは初手からフィンガー5「学園天国」(1974)を仕掛けて来るなど、
昭和歌謡曲に、ボカロ曲やアニソンとレパートリーが多彩でした。

時にいきなり出サビで、キャッチーさを重視する昨今の音楽トレンドの中で、
第7話・小田和正さんの「ラブストーリーは突然に」の長~いイントロをTVサイズに押し込んだ編集にもこだわりを感じました。

でも結局、私が映像含めて一番良いEDだなと感じたのは、
最終12話のオリジナル曲・「ハナモヨイ」
お花見シーズンに聞き返してみるのも一興かと。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 17
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

4話 無理に政近を持ち上げる話が決定的に面白くないです。中断かな。

1話 足の指の作画がすごい。それとOPEDは一見の価値あり。

{netabare} お隣の美少女系のラスボスなんでしょうか。結構題名は聞いた気がします。だからでしょうか、作画はいいですね。動きはそうでもないですが造形は綺麗だと思います。

「なんでこんなやつがモテるんだ」系ご都合主義ハーレムラブコメではあるんですけど、ロシア語で独り言を言うという設定はなかなか面白いですよね。思考が読める一種のテレパシーものに近い感覚です。

 作画・キャラデザは顔はテンプレなのはいまいちです。髪もつやつやしていいんですけど、髪がなびかないのは良くないですね。あと、アホ毛はそろそろやめましょう。
 太ももは今時らしく結構太ましいかな?絶対領域の質感はそれほどでもないです。
 ですが、足指の作画が綺麗で驚きました。CGモデル…ですよね?最近は区別がつかないので何とも言えません。違うのかなあ…とにかくヒロインの足指の形状は素晴らしかったです。

 それとOPEDのアニメの凝り方もすごいですし、EDアニメの作画スタッフは「#01エンディングアニメーション」となっていたし、キャラソンだったので、毎話変えてくるんでしょうか?だとすると相当気合いが入ってます。絶対領域の質感も本編よりいいです。このEDだけでも見る価値はあるかも。

 ということで、本作は見る気がなかったのですが、他のアニメの続きでいつの間にか始まったので見始めたら、結構見るべきところがあってちょっと驚きました。 {/netabare}


2話 アーリャのMプレイが主体?そして毎週1パンツ。

{netabare} 本作の見方はアーリャがいじめられるMプレイを堪能するということでよろしいでしょうか?
 心の内面を公開され、苦手の辛いものを食べさせられ、着替えでも恥ずかしい恰好を見られる。そういうマインドを計算しているのかどうかわかりませんが、無自覚やられ萌えキャラとして愛でる感じです。それと毎週1パンツかな?
 恋愛は今のところおまけかな。生徒会がらみと家族関係でストーリーは作るのでしょう。

 そうそう、妹=幼馴染設定はかなり強引ですが、これもアーリャの勘違いでヤキモチプレイの一環なんでしょうか?

 今週のEDは曲を知りませんでした。もうちょっとメジャーな曲でお願いします。まあ、一応調べましたけどね。

 あと、試着室の着替え…20分43秒のアーリャの四つん這いのポーズですが、脚のデッサンおかしくないですか?かなり違和感がありました。

 視聴継続は…まあ、ありかな。話が展開するまで見てみたい感じですね。{/netabare}


3話 あれ?パンツとロシア語のデレは?

{netabare} 出会いとデレを入れないと説得力がないのはわかります。わかりますけど、どうしてこう理に走るんでしょうね?アーリャの性格はわかりますし、文化祭のところの裁縫のところまでの心情は結構共感できます。

 一方で政近の解決方法はちょっと…いやかなり不自然です…裏での暗躍とクラスのメンバーの動きが想像できません。つまり、2人の関係性を作るための虚構感をものすごく強く感じます。「ごめん」のところはわざとらしすぎて身もだえしました。なぜ、童貞妄想系のラノベはこういう理屈を作るかなあ…と本当に余計なことを…という感じでした。
 
 そしてその後のアーリャのデレの心の動きが理解できませんでした。これを入れるくらいなら出会いは「遅刻食パン」の方がましかもしれません。2人って幼馴染だったんですよね?もうちょっとそっちの話を利用すれば自然な展開になるのに…そうだ、そもそもロシア語設定があるんだから、アーリャの気持ちを先取りできて惚れられるでいいじゃないですか。これだとロシア語が出オチになってしまいます。

 今回の展開で特に主人公の作り物感がものすごくでました。もっと薄いキャラにして視聴者が自分がそこにいたら…という妄想にふさわしい薄いキャラにすればいいのに、と思いました。

 真面目に言えば、シリアスをやるならそれなりの覚悟が必要です。アーリャにその性格造形を持たせた以上、それをテーマにした話を展開できるのでしょうか?できないなら入れるべきではないエピソードでした。

 ということで、評価はがた落ちです。がた落ちですが、来週ちゃんとルーティンのパンツとデレがあれば許しましょう。そう…大事なのは型です。

 でEDは「みゆき」のOP?ED?忘れましたが「想い出がいっぱい」ですね。私の印象だと別れの曲のイメージなんですけど、この作品の結末がそうなる暗示なんでしょうか?
 毎週歌は聞くと思いますが、中途半端な展開だと継続はどうしようかな、と思い始めてきました。 {/netabare}


4話 無理に政近を持ち上げる話が決定的に面白くないです。中断かな。

 うーん、話が面白くないです。1,2話は結構面白かったんですけど。エロシーン云々というより、4話のサッカー部と野球部のあれはなんですか?何か感心するところとかありました?
 
 普通高校のグラウンドの予約なんて曜日ごととかで決まってだろうとか、あれだけでかい高校でサッカーと野球のグラウンドが競合しているんかい!という突っ込みはさておいても、解決方法になんのヒネリもないです。アーリャがウニャウニャ言っていたのを政近がはっきり伝えただけでは?手伝いというのはありましたけど…

 生徒会室の問答もこいつら何言ってんの?としか思いません…なんでしょう、ドラマがないというか、エピソードで見せてよとしか言いようがないです。あのシーンで面白い・感動・感心・ほっこりなどの感情の動きはまったく感じませんでした。

 3話の中学生が文化祭でお泊りで準備するとかいう話もそうでしたが、無理やり作った政近スゲーの話がまったく刺さりません。3,4話って話の流れとして非常に不自然で、単にアーリャを下げて政近を上げるためだけの話でした。

 これは正直想像以上に面白くないです。EDのチョイスも良くわからないし。失礼ながら声優さん、決して歌が上手いわけでもないし。

 これは…一旦切ろうかな…アーリャは可愛いですが、話が決定的に面白くないです。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 9

鬼戦車 t89 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

結局、生徒会選挙がメインのラブコメ!Theラノベ展開が惜しい作品

 最終話(12話)まで観ました。2024.09.21

 ヒロインのアーリャさん、主人公の政近に対して1話から好感度マックス!ロシア語でデレます。カワイイ!

 しかし、これだとあっという間にカップル成立で物語が終わってしまうので、恋の障壁プラス学園イベントとして生徒会選挙がグイグイ前に出てきます。

 この生徒会選挙がTheラノベな感じです。原作者は、アーリャをプライドの高い、気高い女性に設定した様ですが、そうなると、金持ち進学校のエリート女子属性を付与せざるを得ません。低能で貧乏なのにプライドが高い様な女は単なるメンヘラです。

 また、生徒会も大豪院邪鬼が支配している様な底辺校では、必死で生徒会長の座を目指す必然性も無いので、やはりエリート高校の生徒会である必要があります。

 そして、実に学園ラノベっぽい世界が展開します。部活だと体育会系、文化系問わずキャラも沢山必要だし、試合シーンや発表会とかも描写しないといけませんが、生徒会を出しておけば、生徒会室という狭い範囲で話が完結する上に、キャラの数も制限出来、選挙をめぐる権謀術策も描かけるため舞台装置として非常に優秀です。

 本来だったら、アーリャさんを掘り下げてヒロインの魅力を前面に出したラブコメにしたいところですが、ロシア語でデレる出落ちのハーフ美少女以上のキャラ付けに成功していません。アーリャさん、可愛さ以外の特徴は勉強が出来るだけです。

 これは、単純にアーリャさんがロシア人とのハーフだから生じる問題です。ロシア人のエリートお嬢様キャラ設定は、実はとても難しいのです。

 なぜかと言うと、ロマノフ王朝が革命で倒れて以降、度重なる社会的混乱や粛清の嵐で、エリート層が入れ代わっているからです。

 イギリス人だったら貴族やブルジョワ、アメリカ人なら実業家や法曹関係、日本人なら旧華族、財閥系とか、戦争等で社会が混乱した際に没落したと言っても、支配階級がそれ程動揺していないので、良家(エリート層)のお嬢様を設定しやすいです。

 しかし、ロシアは違います。ロシア革命で王朝を支えていた貴族や富農は皆殺し、革命で活躍して勢力を伸長した赤軍の軍人や知識人も、スターリンの粛清で皆殺し、独ソ戦の戦功で確立した共産党貴族のノーメンクラツーラも一党独裁が終了した際に没落、混乱の中、マフィアがブイブイ言わせてましたがプーチン政権下で弾圧されて現在はオリガルヒの天下…。

 結局、時の政権に気に入られた連中が常に支配階級なので、日本人が納得出来ると形でロシアお嬢様をキャラとして設定するのは無理があります。

 さすがに、アーリャさんの曾祖母が独ソ戦の英雄、ファシスト500人殺しのリュドミラ・パブリシェンコだとか、パパが元カーゲーベー上がりのマフィアとかでは、ちょっとラブコメのキャラでは無いですね。そもそも何でアーリャパパは日本人と結婚してんだって話にもなります。

 亡命してきた反革命派白系ロシア人の子孫とかも、背景がヘビー過ぎますね。

 ロシア語デレハーフ美少女という設定を守るため、今まで散々他のアニメで繰り返されてきた生徒会選挙戦を前面に出さないといけないのは、本作品が宿痾的に抱える構造的な問題として納得するしか無い様です。

 さらに、政近アゲのために、アーリャさんが無能に見えると言う…。何か雑音が多いなぁ…。

 キャラは可愛いし、アニメとしての品質も悪くないので、観ていてとても面白かったですが、前述の様に制約も多く、何か乗り切れない感じなのが、とても残念です。なかなか覇権アニメの道は厳しいです。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 3

69.9 2 短いでツッコミなアニメランキング2位
ゆびさきと恋々(TVアニメ動画)

2024年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (141)
378人が棚に入れました
この手で「好き」って伝えたい…。 累計発行部数360万部突破(電子含む)、各種賞にランクインし、SNS などでも多くの反響を集める森下 suuが描く『ゆびさきと恋々』。 女子大生の雪は、ある日困っているところを同じ大学の先輩・逸臣に助けてもらう。 聴覚障がいがあって耳が聴こえない雪にも動じることなく、自然に接してくれる逸臣。 自分に新しい世界を感じさせてくれる逸臣のことを雪は次第に意識し始めて…⁉ 聴覚障がいのある女の子・雪と世界を旅する大学の先輩・逸臣のピュアラブストーリーがはじまる。
ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

Be about it

"頭ポンポン" 。
それはいきなり天上から舞い降りた、未知の世界の扉を開けるメッセージ・・。
雪にはそんなふうに感じられたんじゃないかな。

主人公の雪は、女子大生。
先天性の聴覚の障がいがあります。
補聴器を付けているので、全く聞こえないわけではなさそうですが・・?
手話、ゆび文字、読唇、筆記などを駆使するマルチリンガル?です。

相手の逸臣は、若くして海外を旅する長身バックパッカー。
コミュニケーションに困っている雪をさり気にサポートするのはノブレスオブリージュ?
おまけに英語とドイツ語がこなせるトリリンガルで、中国語もイタリア語も勉強中ってどんな内面性なのかな?



3話。
{netabare}
What is your life about?

中学英語で直訳すれば「あなたの人生に関しては何がある?」。
(間違えていればご教示くださいませ。恥・・ )
でも社会人や大学生なら「あなたが生きる目的は何?」、「君の人生の本分は何?」が "スマート" です。

be about it

自分の意を尽くそう。
自分の行動で世界を広げていこう。
そんなパッショネートを作品のコアに据えている雰囲気です。

lingual

元々の意味は "舌" 。
雪は喋れないから、ゆびさきがその代わり。
キモチを指先で伝える感覚、それが恋ならなおさら手話は難しいかも知れません。



逸臣が雪に "頭ポンポン" したことで「いくらなんでも初対面でそれは失礼すぎるでしょう」と話題になったみたいです。
私としては、二人のプロフィールを深読みすれば、十分うなづけるシチュエーションじゃないかなと思うのですが・・。

雪の補聴器を見て、すぐにコミュニケーションに難しさがあると推測できた逸臣です。
それにジェスチャーやボディトークでコミュニケーションが十分成り立つことは海外生活で体得していたものと受け止めました。

くだんの "頭ポンポン" 。
「マナー違反にも感じられる強い違和感」ですが、実は本作にアプローチするための重要なヒントになっているのでは?と思います。
例えば、健常者意識に由来する常識的尺度は、障がい者への合理的配慮とは大きなズレがあるのではないだろうか、という観点です。

そもそも雪はそういう世界で生きてきたのですから。
そして逸臣もそういう世界を開こうとしているのですから。



左手の小指を立てて、その爪先を右手のおなかで軽く撫で回す。
女性への「かわいいね」を伝える手話です。

爪先は「女性の頭」を指し、撫でるのは「愛」を表現しています。
逸臣の「頭ポンポン」は「君はかわいいね」をストレートに伝えているわけで、雪にしてみればそれは直感的に理解できますし、勘違いするのも当然なのかもしれません。

ちょっとカッコイケメンな男の子が、危機に陥った女の子をスマートに助けたんです。
だから、そんな "勘違い"、いいえ "思い込み" が出逢いのきっかけにあってもいいんじゃないかなと思います。

にしても、別れ際のアピールが「君はかわいいね」だなんて、雪の世界にだけ通じるスキンシップ・・・。
う~ん、やっぱり「憧れない理由はない。」でいいんじゃないでしょうか。

(頭ポンポンの意味は、3話で説明されています)。



「人は見た目が9割」なんて俗説があります。
コミュニケーションにおいて "非言語的要素" がいかに大きな影響を及ぼすか、相手に対する好感度や信頼感は "言葉以外のファクター(見た目や態度、声のトーンなど)で決まりがち" というものです。

「メラビアンの法則」というのが出自らしいです。
1960年代の心理学者ですが、彼が提唱したのが「三つのV」、「7-38-55ルール」。

それぞれの数字は、言語(Verbal)の7%、聴覚(Vocal)の38%、視覚(Visual)の55%という、感情を伝達する際の寄与性の割合を表しています。

心理学では「初頭効果」というそうですが、初めて会った人に抱く印象は "たった3秒" で決すると言われるそう。
このような瞬時に形成される印象づけの効力を「初頭効果」と呼ぶみたいですね。

雪は言語と聴覚に障がいがあるので、視覚的効果(55%)がぐんと増幅しちゃったんですね。
100%かな? それとも200%かな?

(メラビアンの法則については、誤解のないように、詳細は、Wikiを参照してくださいね。ネタバレにはなりませんから)。



ハンドルネームに一文字重なるので軽い気持ちで視聴し始めましたが、案外と楽しめそうな予感です。

雰囲気の良い恋バナと青春群像劇に魅せられたいなって期待しています。
{/netabare}


6話。「恋々」ってどんな意味?

1話めから、恋々ってどんな意味合い?って思っていましたが、6話めにして展開したのは、雪と逸臣の "相思相愛する姿" でした。
え?一目ぼれ同士だったってことなの?

恋々(れんれん=恋い慕って思いきれないさま)。

"思いきれない" というなら、ナイーブでセンシティブで、感傷的なお話になっていくのかな。
近づいたり、離れたり、途切れたりする心にうまれる "思いきれなさ"。

都会的でも、大学生でも、知性や教養があっても、恋は全くの別ものなんだから。

ハッピーエンドかな?
それともビターエンドかな?

be about it.





観終わりました。

思っていた以上に二人の距離感はステディでした。
いわゆる運命的な出会いから始まる恋愛王道一路です。

雪には、ものすごく真摯な気持ちで向き合おうとする姿が見られます。
それはそれで人として好印象なのですが、一つポイントを上げるなら雪が極めて狭い世界で生きているからで、身の回りの雑音がほとんど入らないからだと思います。

彼女にとって、人と接するに音声言語を媒体としません。
それは、脳から遠いゆびさきに意思を預けること、思考をゆびさきに行き届かせることです。
音がないからこそ、より思考を深め、反駁し、昇華させるのだと思います。

例えはおかしいかもしれませんが、私は、落語や漫才の舞台で手話通訳を見たことがありません。
言語表現が高度に発達した日本の国で、ニュース番組はともかく、伝統的文化や時事の漫談、流行りのくだけた俗語がスポイルされた日常は、健常者の方には思いもしない世界なはずです。

そのなかで出会った逸臣の人柄は、雪にはどう映ったでしょう。

逸臣の雪に対するスタンスは、彼自身が海外での言語的ディスコミュニケーションの難しさを痛感しているからであり、その体験があっての出会いだったのだと私は得心しています。

二人を引き寄せ合う、惹かれさせあう十分な背景が、雪と逸臣の生い立ちにはあった。
それぞれに自らが求めていたコミュニケーションがそのゆびさきの振る舞いに感じられた。

二人が持ち合わせている異世界、異次元、異体験が、本当にひょんな出来事から扉を開けあった1話め。
それぞれの生き方が一つにまとまる道、同じ世界の伴侶としての未来を手繰り寄せる最終話だったと思います。

それにしても・・・主人公が大学生設定という強みもあったのかなと思います。
甘いばかりじゃない、激しいばかりでもない、いくらか塩対応もあるし、略して語らずもある。

頭の賢い人の恋愛脳って、こんなシーン、こんなヒストリーを積み上げていくのかなって思いました。

あと、OP、EDは、"耳に心地よくて" 好きでした。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 14
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

飛耳長目な恋

耳が聞こえないがピュアな感性を持つ女子大生・雪と、
バックパックで奔放に世界を飛び回る先輩の逸臣(いつおみ)の恋路などを描く、
同名少女漫画(未読)の連続アニメ化作品(全12話)

【物語 4.0点】
補聴器でもカバーしきれない聴覚ハンデを抱えたヒロインを主役に据える本作。
放送後日に字幕版も配信されるアニメでもあります。
が、本作は、障害者への思いやりを意識しましょうなどと啓発する類の社会派作品ではなく、
主眼はあくまで、一人の男性との出会いを通じて世界が広がる喜びとドキドキの恋愛劇。

ヒロイン・雪は耳が不自由ながらも、手話、筆談、スマホ文字入力アプリ、読唇と、
あらゆるチャンネルを駆使して、自分に新しい世界を見せてくれる逸臣先輩と懸命にコミュニケーションを取ろうとする。
聴覚障害が鬱要素ではなく、想い人とつながろうとする心情を浮き彫りにする個性として光って見えるのが瑞々しいです。

繋がりたい気持ちの強さは逸臣先輩も同様。
3ヶ国語を操り、バックパック旅行で海外で色々探し回っていても遭遇できなかった輝きを、
奥ゆかしい雪の心中に見出した逸臣。
雪にもらった手話ノートを叩き込んで、雪の秘めた想いの奥深くへと分け入ろうとアプローチしていく。

雪に関して個人的に衝撃的だったのが、最終12話の逸臣との公園デート。
花のスマホ撮影の趣味を明かす中で、
{netabare} 「花たちが季節を順番待ちしてるみたいで かわいくて」{/netabare} と述べるシーンには私もハートを撃ち抜かれました。

私も人並に差別の心を持った卑しい人間なので、
障害を持った人とは面倒そうなので、あまり関わりたくないなと思ってしまいますが、
雪みたいな娘と出会ってしまったら、貪るように手話覚えて接触を図ると思います。

というより、このアニメを見終わったこの春、
私はツツジ、藤の花、あじさいと、道端や公園に咲く季節の花々をスマホ撮影して、
レンズ機能でグーグル先生に花言葉やらを検索してもらう趣味に目覚めてしまいました。
雪とこの作品は、私にとっても新しい世界を教えてくれた貴重なアニメです。


【作画 4.0点】
アニメーション制作・亜細亜堂

繊細。

指先は手話を、唇は読唇を表現する重要部位なので、
作画カロリー削減のため安易に簡略化できない。

昨今の、唇をぶ厚めに描くキャラデザのトレンドには、
正直、私も面喰らうことが多々ありますが。
本作の、例えば逸臣のプルプルな唇の動きは、
雪を思いやる気持ちが現れていて好感できました。
その唇の動きに一喜一憂する雪の表情描写もいじらしかったです。


天候描写にも雪たちの心情が滲み出るため、おざなりにはできない。
特に序盤しんしんと降り積もる雪模様に、雪の逸臣への募る想いを反映した作画には、
“どこまでも限りなく 降りつもる雪とあなたへの想い”
といった感じで背景共々、惹き込まれました。


総じて、地味で手を抜きがちな部分で手を抜かずに、
登場人物の心情解像度を高めて視聴者を惹き込む、良好な作画、背景だったと思います。


【キャラ 4.5点】
高校生時々、中学生が主流の恋愛青春アニメの中で、
たまに無性に摂取したくなる、二十歳になればお酒も飲める大学生恋愛成分、片想い交通渋滞アレンジ配合を供給してくれる本作。

恋は盲目という言葉がありますが、
多くの中高生恋愛アニメでは、想い人のことしか見えなくなって、バカになって、
破滅的な言動を取ってしまう痛切を描いて、これも若気の至り、青春さとなりがち。
この点で本作は恋愛でむしろ見識が広がる、真逆の視点を持ったキャンパス青春劇と言えるでしょう。

この観点から印象に残るのが、雪の幼馴染・芦沖 桜志(あしおき おうし)
手話も使える彼氏候補として逸臣に何かと突っかかってくる、面倒くさくて可愛い奴。
小学校時代の雪に出会って以来、彼女のことが気になるくせに、照れ隠しなども相まって、
覚えた手話でつい意地悪してしまう。

桜志くんも高校生までなら、ツンデレでしたでワンチャン逆転ゴールもあるのでしょうが、
互いの世界を広める出会いを悟ってしまった雪と逸臣、
この大学生カップルの間に割って入るのは至難。

この桜志に加え、逸臣に想いを寄せる高校時代の同級生・エマなどと、
本作の“マケイン”ポジションは恋する余り、独占欲で周りが見えなくなってしまうことで、
視野を広げていく雪&逸臣とは対局の恋愛観を体現し、テーマを浮き彫りにする有用なサブキャラクター。
挙げ句、桜志は{netabare} 飲みニケーション能力でも逸臣に器の大きさの違いを見せつけられて。{/netabare}
それが伝わるだけに、負けっぷりが余計に切なかったです。

ここは、りんさんと京弥の関係に逃避して癒やされましょう。


【声優 4.0点】
ヒロイン・雪役の諸星 すみれさん。
聴覚ハンデを背負った登場人物は、しばしば声の出し方が分からない口調でセリフにならない言葉を発し、障害の現実を思い知らせる演出がなされがち。
ですが、雪の場合は、心の声に終始。
現実には発されることがない、きれいなモノローグ等で純愛のドキドキを好表現。
この点からも本作の目的が啓発ではなく恋愛と人間関係にあることが認識できます。

逸臣役の宮崎 遊さん。
とろけるような甘味過多なボイスで、雪を赤面させ溶かす上々の少女漫画イケメンぶり。
演者自身も逸臣同様、学生時代のバックパッカー経験が豊富で、
国際サークルでの英会話シーンもお手の物。


脇にもエマ役に東山 奈央さん、エマに片想いする伊柳 心役に畠中 祐さん、
などなど一線級の手練れが揃い、心情表現に抜かりはありません。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は橋本 由香利氏。
ピアノとストリングスで静かに盛り上げる心情曲が中心。
一方でコミカルなシーンもカバーしたり、
世界各国の物品が揃う逸臣の部屋の中などでは、無国籍なBGMを鳴らしたりと、劇伴表現の振れ幅は割と大きく柔軟。

しばしば雪の聴覚障害の主観視点を交えることで、
ヒロイン心情をすくい上げる演出が成される本作。
音響も耳鳴り音しか聞こえない聴覚ハンデのリアルから、
救いの手を差し伸べる逸臣先輩の尊さを表現したり。

SEとBGMを挿入するタイミングも繊細な音響でした。


OP主題歌はNovelbright「雪の音」
“君のいる世界に僕を見つけてよ”と作品を正面から盛り上げる良作ラブバラード

ED主題歌はチョーキューメイ「snowspring」
“もうこれ以上 好きになるなんて どうしよう!”
って尋ねられても困りますw

投稿 : 2024/11/02
♥ : 18

青龍 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ろう者との一種の「異文化」交流

『日々蝶々』などの森下suuによる原作漫画は、『デザート』(講談社)にて連載中(既刊10巻、原作未読)。
アニメは、全12話(2024年)。監督は、『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』、『かくしごと』などの村野佑太。制作は、『北斗の拳 イチゴ味』、『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません(1期と3期)』などの亜細亜堂。
(2024.4.19投稿、5.22加筆修正)

【あらすじ】
生まれながら耳が不自由(ろう者)な大学生・糸瀬 雪(CV.諸星すみれ)は、見知らぬ外国人から外国語で話しかけられていると思って困っていたところを同じ大学の先輩・波岐 逸臣(なぎ いつおみ:CV.宮崎遊)に助けられる。イケメンで「初対面でも私と会って戸惑わない」逸臣に興味をもった雪は、次第に逸臣との距離を縮めていくという恋愛もの。美男美女カップルなので、それぞれの恋のライバルとの絡みもあります。


【ろう者との一種の「異文化」交流】
予めタイトルの「異文化」に誤解が生じないよう断っておきますが、日本のろう者が日本人と異なる文化をもっているという趣旨ではありません。

私は、ろう者を受け入れる体制が整った中学校にたまたま通っていたので、ろう者のクラスメイトや後輩がいました。その実体験もふまえて、完全な異文化交流ではないけれど、異文化交流と似た側面があるという趣旨で使っています。


まず、彼らは、聴覚障がいの程度にもよりますが、補聴器から聴こえてくる不鮮明な音と相手の唇の動きを読む読唇術の組み合わせによって、相手の言ってることを「概ね」理解します。

したがって、ろう者と「十分な」コミュニケーションをとりたい場合は、指文字や手話を使った方が望ましい(ただ、周囲のちょっとした工夫、例えば、口をちょっと大げさに動かしたり、筆記を用いたりすれば、日常会話で困ることはほぼありませんでした。)。

指文字や手話は、日本語ベースなので完全な外国語ではないのですが、相手とより十分なコミュニケーションをとりたいと思った場合に必要になってくるので、外国語の習得と似たようなところがある。

本作でも、外国語を習得するにはその言葉を話す人を恋人にすればいいとよくいいますが、逸臣は雪に対する興味に比例するかのように指文字や手話に次第に興味を持ち始めていきます。


次に、ろう者は、当たり前ですが聴覚からの情報がないか少ない。これは、もちろん不自由な点ですが、彼らはそれを補うための独特の感性をもっている。

現在の補聴器の性能は私が学生だった数十年前と比べて相当上がっているようですが、補聴器の補助と読唇術による会話は完全ではありません(本作では、さらに文脈や過去の経験をあわせて考えて、ちょっと素敵な聞き間違い(「ギ」と「キ」)をしていますが、こういった勘違いはよく生じます。)。

また、当然、相手の口が見えないと何を言っているのかわからないので、横を向いて他の人と話したり、(一人の口しか見れないので)大人数で話したりしていると結構不安みたいです(本作にも同様のシーンがあります。)。

そういった場合は、本作の主人公である雪もモノローグがすごく多いのですが、断片的な情報からものすごく色々なことを考えているようです。

なので、勘違いを正したり状況の説明をしたりせずにいると想像がどんどん膨らんでいく場合があるため、できるだけ確認していく必要がある(本作では、逸臣が自然にそれをやってましたね。)。

確かに、煩わしいと思うかもしれませんが、本作のりん(CV.本渡楓)もそうでしたが慣れてしまえばそうでもないし、音のない(もしくは少ない)世界にいる彼らの感性は、音のある人と少し違う面がある。

特に彼らは音以外から得ている情報量が多い。相手のちょっとした手の動きや顔色などから、そんなことまで感じているのかとよく驚かされた(的外れすぎて驚いたこともありましたが(笑))。
当時はそんなつもりはありませんでしたが、今思えば、それがちょっとした一種の「異文化」交流みたいな感じだったなあと。

本作でも、逸臣は海外旅行好きで異文化交流も大好きなのですが、海外旅行と同様に違った感性を持った人と出会った驚きや喜びが表現されていると感じました。


最後に、日本の聴覚障がい者は、40万人(300人に1人)らしいので、極めて珍しい存在ではないはずです。しかし、日本では、「特別支援学校」に通うことが多いため、ある意味、一般社会から隔離されている面がある。

それが、上のあらすじでも書いた「初対面で私と会って戸惑う」といった「心理的な壁」を生んでいる原因でもあるのですが、そういったところで大切にされて育ってきた彼らは、本作で逸臣も言っていましたが、すごい純粋だと私も感じました。

そういった雪のもつ純粋さに逸臣が惹かれていくところも本作の魅力の一つだと思います。


【「周囲と違った魅力を持つ人はモテる」(2024.5.22加筆修正)】
私が本作を「異文化」交流と評した一番の理由は、例えば、日本に来たフツメン留学生が可愛い日本人の妻と結婚して帰国したり、その逆もまたよく見ていたりしたので、「周囲と違った魅力を持つ人はモテる」という実感があって、本作がそれと同じだと思ったから。

本作の雪と逸臣が惹かれあった理由って、お互いの外見というより(外見ならエマ(CV.東山奈央)でもいいわけで)、私は基本的にそこ(周囲と違った魅力)にあると感じたので、異文化交流と同じだなあと思ったわけです。
したがって、障がい者が出てくると度々問題となりますが、本作は、主に身体障がい者を同情・感動を誘うコンテンツとして消費する「感動ポルノ」にあたらないと私は思います。

私の恋愛ものの評価基準は、容姿以外の恋に落ちた理由が納得できるかどうか。
本作は、私のような経験のある人の方が共感できる部分が多いのかもしれませんが、異文化交流と同じように異なる境遇の人に対する想像力があれば、雪と逸臣がお互いに惹かれあう理由が十分に納得できる作品だと思いました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 8
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