独裁者で飛行船なおすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの独裁者で飛行船な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月22日の時点で一番の独裁者で飛行船なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

69.8 1 独裁者で飛行船なアニメランキング1位
荒野のコトブキ飛行隊(TVアニメ動画)

2019年冬アニメ
★★★★☆ 3.3 (321)
1050人が棚に入れました
一面に広がる荒れ果てた大地で、人々は物流・交易を行い、助け合いながら生きていた。雇われ用心棒の“コトブキ飛行隊"は、厳しいが美しい女社長、頼りない現場の指揮官、職人気質の整備班長など個性的な仲間とともに、空賊相手に大立ち回り!今日も“コトブキ飛行隊"は隼のエンジン音を響かせて、大空へと翔けてゆく――。

声優・キャラクター
鈴代紗弓、幸村恵理、仲谷明香、瀬戸麻沙美、山村響、富田美憂、矢島晶子、藤原啓治、吉岡美咲、岡咲美保、島袋美由利、古賀葵、川井田夏海
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

キャラ分布にみられるドーナツ化現象

ゲームちょっと興味出てきた


「競馬の騎手とレイバー乗りは、ちっこい奴に限るってね」
そんな後藤隊長の至言から早30年余。戦闘機乗りにも女性進出でびっくらこいた私。他のは知らん。

視聴理由はレシプロ機(プロペラ機)の響きに惹かれて。
プロペラ機は零戦が有名ですが作中の隼、紫電改も心躍る機体名です。第二次大戦時の主力で、ソ連がジェット機を開発するまで戦闘機の主役でした。
つくづく硫黄島陥落前に橘花が実戦投入されていれば・・・と脱線が止まりませんのでこれくらいで。。。はい。


女性ばかりのコトブキ飛行隊6名がいわゆる主役級。全員が“隼一型 一式戦闘機”に搭乗してます。EDクレジットには“隼”の継承会社であろう立飛ホールディングス㈱の文字。本格的ですね。
砂漠を背景に口笛から始まるOP。これでウェスタンハットでも被って馬に跨れば立派な西部劇の出来上がりですがそうならないのは上記の通り。
海もないし、隼は陸軍機でもあるし、発艦するのは空母からではなく飛行船からという斬新さ。既視感はあまりございません。
もう一つ、水島努監督が手掛ける空戦ものということですが、ガルパン未視聴の私にとってはそのへんの事情は不案内なので語らず。いつか観よう!ガルパン!


全12話。フルCGで毎話空戦が繰り広げられます。
物語らしきものもありますが本格化するのは少し先で、基本的には各話のイベントをこなしていくスタイル。
この空戦、ドッグファイトってやつですね。音なり回旋具合なりカメラワークなり雰囲気が良いのです。本作でなにか挙げろと言われれば外すことは出来ない見どころでしょう。

毎度繰り広げられる空戦もそればかりでは賞味期限を早々に迎えてしまいます。
別の魅力。物語なりキャラなりで引っ張ってほしかったところですが、このコトブキ飛行隊の構成メンバー6人の魅力ってほぼ皆無?顔と名前が一致しない。
一番印象に残ったのがキリエ役のCV鈴代紗弓さんが「おー喋ってるー!」という ww
 ※声優さんが声出してるのに驚くとはこれ如何に?(『ハイスコアガール』参照)

ますます空戦を面白く感じないと厳しい作品であるとの思いを強くします。
むしろお姉さま方、コトブキの元締めマダム・ルゥルゥとその幼馴染みの議員ユーリアのほうがインパクトありました。
逃げられジョニーや雇われ副船長サネアツはもとよりイサオ市長も強烈な個性を発揮。キャラ分布図で言えば中心部、主役たちよりも周辺のキャラがとてつもなく魅力的というドーナツ化現象が起きてます。
これ作品としてどうなんでしょうね?好意的に捉えると “主役を食う勢いの脇役が勢ぞろい” ってとこでしょうか。


物語はわりと早め{netabare}(第6話のキリエ回想回){/netabare}に、ん?と感じるところから徐々に動き出し、{netabare}私たちの現実世界との相関も匂わせながら、{/netabare}綺麗に収めてくれました。
空戦に気を取られながら軸の物語も陰で進行し集約させる着地のさせ方が好感の佳作です。空戦もラストバウトは{netabare}これまでの味気ない砂漠ではなく舞台を市街に移して{/netabare}見ための迫力もスケールアップしてました。ぜひここは観ていただきたいところです。



■エンマ様かっけーっす
{netabare}イサオのラスボス感が堪らない本作において、エンマ(CV幸村恵理)のイサオらに向けた一言がシビれました。

{netabare}「世界のためにみんなのために自由のために って言葉わたくし信用しませんの!」{/netabare}
よくぞ言った!もう充分です(*´▽`*){/netabare}


■声優矢島晶子のお仕事
昨年(2018年)惜しまれつつも27年間演じられてきた“のはらしんのすけ”の役を降板されたのは一般ニュースになるくらい大きな出来事でした。
降板にあたってのメッセージの一部 ↓

 「しんのすけ」というキャラクターとは離れますが、声の仕事には関わっていきます。
  また別の機会に他のキャラクターでの私の演技を受け取って頂けましたら幸いです。」

本作で久々の再会です。
マダム・ルゥルゥ(CV矢島晶子)とやり手の女社長役での出演でした。ダメダメな羽衣丸の雇われ副船長サネアツ(CV藤原啓治)との掛け合いも笑わせてもらいました。

 ん? 藤原さん?

そうです。奇しくもかつての野原家面々の軽妙なやりとりを見てニヤッとできるのもポイントです(^^)



リアタイとしては同クールの『ガーリーエアフォース』と同カテゴリーの比較対象がありましたね。
ハイレベルのライバル対決とは言い切れず、どんぐりの背比べという印象ではあるものの、アプローチの仕方が両作品とも違っていてわりと楽しめましたよ。


{netabare}サブジーって坂井三郎爺さん? 技術者って触れ込みだけど・・・{/netabare}



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2019.09.10追記
《配点を修正》 -0.1


視聴時期:2018年1月~3月 リアタイ視聴



2019.04.04 初稿
2019.09.10 追記/配点修正

投稿 : 2024/11/16
♥ : 57

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

西部劇+戦闘機+少女+[?]=!?(第11話: うお~、震電!)

== [下記は第1話視聴時レビュー: 以下、追記あり。] ==
第1話を観たら、面白かった(少数意見)……ではなくて(笑)。

オリジナルTVアニメ作品ですね。放送前から西部劇・戦闘機・少女の要素についてはPVや各種メディアなどでも明らかでしたが、第1話終了時点でもまだ明確でない[?]な要素がありそうです。

作中世界は現代の我々の知る歴史とは過去的にも未来的にも何かしらの断絶がありそうです。

そういう意味での「世界観」は謎なのですが、とりあえずアメリカ西部開拓時代みたいな空気感で、でも飛行船やレシプロ機はあって、空賊=無法者・味方の飛行隊=用心棒といった役割でいわゆる「西部劇」的な筋立てのストーリーが進んでいくようです。

飛行機に関しては第二次世界大戦当時の実在機体がベースであるらしく、味方の飛行隊に関しては日本の陸軍機体である隼、紫電などに搭乗していました。

本作のウリの一つであろうドッグファイト(空戦)の描写に関しては、空中カメラ視点の他パイロット視点の映像がなかなかダイナミックな感じで良かったです。

[?]要素はさておき他の3つは水島監督他、制作スタッフの趣味が色濃く反映されているような気がします。特に問題になりそうなのが西部劇要素で、これは現在の主な深夜アニメ視聴者層には馴染みがないしウケないんじゃないでしょうか?

まあ、戦争映画要素が上手く活きたガルパンの例もあるので断言はできませんが、明らかに不安要素ですよね…(笑)。

余談: 撃墜数ですが、気になって『大空のサムライ』の著作で知られる坂井三郎氏について調べてみたところ敵方のアメリカ側での公式認定が28機だそうです。本作とは直接比較は難しいですし本作では自己申告や僚機の認定なので数は大目になっているでしょうが、それでも40機台は相当な数だろうと思われます。
== [第1話視聴時レビュー、ここまで。] ==

2019.2.18追記:
第6話を視聴終了。ほぼ、クロエ回想回。第1話に出てた墓碑っぽい石の主が判明。…何、「ユーハング」だと!?

きっと我々の良く知る場所のことですよね。我々の現実世界との繋がりを仄めかし、ようやく作品世界の核心が少しずつ見えてきました…。

2019.2.25追記:
第7話まで視聴終了。陰謀の臭いとスパイの影が見えてきましたね。キリエとケイトのコンビでの活躍は見ものでした!

2019.3.25追記:
第10話の富嶽に続いて、第11話で震電キター(笑)!
さすがにジェットエンジン搭載モデルではなかったけど…。

そしてサブじいが何者かが、ついに語られましたね。

2019.4.1追記:
第12話(最終回)まで視聴終了。全体を通して、とても面白かったです。この最終回だと続編は作れなくもないですが、とりあえずは4月からアプリおよびYouTubeでの公開がアナウンスされたスピンオフ作品が気になっています。

第12話個別の話では、F-86Dセイバードッグ(F-86セイバーの改良機体)が出てきてビックリしました。機銃はなく、ロケット弾しか武装がないトンデモ機体(笑)。レシプロ機同士での機銃でのドッグファイトしか想定していない中で、ジェット機で近接信管付きロケット弾を撃ってくるのはかなりのチートですよね。

出撃前にコトブキ飛行隊の面々がいろいろなものを食べていましたが、キリエが食べていたミニパンケーキの缶詰みたいなのはキリエのパンケーキ好きのブレなさを感じさせて良かったです。

ところで「死の間際に記憶が走馬灯のようによぎる」というのが良く出てきますが、あれは生存の危機にあるときに、過去の経験の中から生き残りへのヒントをさがしているのだという説があるそうです。今回キリエが見聞きしたのはそういう物だったのかもしれませんね。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 47
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

パリ、テキサス

水島努監督×構成横手美智子。

荒野を舞台にレシプロ戦闘機を駆る、
用心棒集団「コトブキ飛行隊」女子の活躍。

20世紀初頭の時代設定でしょう。
街は空路による交易で賑わっている。
そこに現れる空賊との戦闘の数々、
空戦の近景は臨場感があり合格点でしょうが、
空戦の遠景はどこかぎこちない印象です。
音楽と音響効果はさすがの素晴らしさです。

少し気になる点としては、
{netabare}ここまで物語が同じ構造になっていること。
納品依頼→空襲・戦闘→撃退(敗北)です。{/netabare}
ここから先、どれぐらい物語を、
この構造から上手く逸脱できるのか期待しています。

7話視聴追記。
世界設定は砂漠の交易都市のようで、
パルミラやシバーム城塞都市のような雰囲気。
{netabare}物語のグランドデザインが語られ、
少しづつ目的が、見え始め楽しくなる。{/netabare}

最終話視聴追記。
{netabare}うーん…あまり強く印象に残らない物語でした。
この制作チームを考慮すれば、
大きな企画前の助走なのかと勘ぐったり。{/netabare}
世界観は秀逸だと思います。

お時間ある方はぜひ挑戦して下さい。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 63

63.9 2 独裁者で飛行船なアニメランキング2位
DTエイトロン(TVアニメ動画)

1998年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (23)
141人が棚に入れました
2187年、強い紫外線が降り注ぎ荒廃した地上。ドーム都市データニアでは、子供達が感情を制御され巨大建造物「パイル」での作業に従事させられていた。そのうちの一人、主人公の少年シュウは海への憧れから脱走し、アンドロイド「エイトロン」をあやつる少年たちと出会う。彼らは、データニアの子供たちを解放しようとするレジスタンス、「リターナー」だった。シュウは彼らととも、にユートピアといわれるもうひとつのドーム都市「アモーロート」を探して旅発つ。一方、シュウ達が高い環境適応能力を持つ「DT(データトランスフォーム)保有者」である事を知ったデータニアは、捕獲のための部隊を送り出す。

声優・キャラクター
保志総一朗、夏樹リオ、矢島晶子、諏訪部順一、川澄綾子、山口勝平、神奈延年、辻谷耕史、遊佐浩二
ネタバレ

lZQnV50529 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

雰囲気を味わうアニメ

これを、SFの面白さを追求という観点から見たらつまらないでしょうね。これは完璧に雰囲気を味わうアニメ。たとえば、第15話のラブソング。 {netabare} 輸送手段を失って歩いて移動していた一行が、風力発電を見つけ、人が住んでいる村を見つけますが、この村は、世界の人々が歌を歌う習慣がなくなったので、歌を皆で歌って世界に歌を流している村だったというお話です。人々が練習のために歌う歌をBGMにして、お話が進んでいくところはさすがだと思いました。 {/netabare}
深夜放送時間帯で、ちょっと仕事に疲れてぱっとテレビをつけたらとてもよかったという感じのお話が多かったと思います。OPの歌はとても好きな歌詞で、お話の展開とも符合しています。幸せな時代に生まれたことを感謝して生きていきたい。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 3

65.1 3 独裁者で飛行船なアニメランキング3位
風を見た少年(アニメ映画)

2000年7月22日
★★★★☆ 3.6 (10)
62人が棚に入れました
作家C.W.ニコルの同名原作をアニメーション映画化した、ファンタジー・アドベンチャー。不思議な力を持つ少年が繰り広げる、愛と闘いのドラマを描く。空や海、緑の大地など雄大な自然を描いた映像美、そして主人公・アモンが身を任せて空を舞うシーンは感動的。声の出演に安達裕美、前田亜季、戸田恵子、夏木マリ、内藤剛志。不思議な力を持つ“風の民"の末裔、アモン。闘う事を知らない無垢な少年は、独裁者プラニックの野望を打ち砕くため、封印された“力"を解き放つ。
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

知ってほしい名作。

この映画を観たときに、なんて面白い映画なんだろう!って思った。
けれど2,3日してから「あにこれ」を覗いてみても、レビューは一件もなくてすこし残念だった。
この映画がそれほど有名な作品ではないのか、はたまたつまらないのか。
どちらにしろあまり話題にならないことが僕にはうまく信じられない。心の底から面白いと思うのですが。

"かつてここには「風の民」がいたんだ。彼らは空を飛んだんだよ。
アモンはハンベルの町に住む男の子。動物と話せることができた彼はそれだけでも十分特別だった。
彼の不思議な力に両親が最初に気がついたのは、街の路地裏で弱った動物を見事に回復させたときだった。
アモンのお父さんはこれを「光遊び」と呼び、研究者でもあった彼はその力の解明に没頭した。
それに目をつけたのは、総統のブラニックだった。この力は兵器に転用できると、そう睨んだ。
危機を感じた父フリッツは、息子と妻を連れて車で逃げ出す。しかし、すぐさまブラニックの武装親衛隊である金蛇隊が追ってくる。
必死に逃げる間、フリッツはアモンに言う。「他の人の前で光遊びはしてはならないよ。これは父さんとの約束だ。」
次の瞬間、山から下りてきた鹿の親子を前にフリッツはハンドルを切る。彼らを乗せた車は崖を深く落ちていった。
アモンだけが助かった。そして彼は捕えられた。

飛行船に乗せられている途中で語りかけてくるものがいた。
外に出ると一羽の黄金の鷲が飛んでいた。彼は言う。「自由になるんだ。」「お前には風の音が聴こえるはずだ。」
アモンは目を閉じて耳を澄ませる。「うん、風が唄ってるみたいだ。」
古の民が見た黄金色の風をアモンも目にする。その風は彼を包み込み、彼の体はやがてゆっくりと宙に浮いた。
だんだんと高度を上げ、飛行船から離れていくが、落ちてはいない。彼はほんとうに飛んでいた。
親を亡くし、故郷に居場所がなくなったこどもの冒険が幕を開けた。"


2000年の夏に公開された『風を見た少年』。
そのストーリーは、冒頭は上のような悲しいながらも、これからの物語の展開をわくわくさせてくれる形で始まる。
でも一般的な感動ものや少年の冒険活劇には終わらないのが、この映画が他の作品と一味違うところだ。
もちろん、少年アモンはこの物語の中で大きな成長を見せる。
初めは、気弱で、めんどくさがりで、腑抜けのようなこどもであったけれど、だんだんとタフな少年へと変わっていく。
それは彼の言動や行動にはっきりと表れてくる。信念を見つけ、だれかを助けてあげられるまでに、彼はたくましくなる。
たくさんの経験をし、成長していく彼の変化にはだんだんと好意を抱かずにはいられなくなってくるくらい、掛け値なしにアモンは良い子なのだ。

けれど彼の運命は過酷だ。
両親は殺された。飛行船から抜け出した後に彼が行き着く穏やかな村「イルカ岬」もブラニックの手により粉みじんにされる。
どこぞの者と知れぬガキを温かく迎えてくれた同年代の女の子マリーとその母親がいた村はもうない。マリーの母親も殺された。
この他にもまだまだたくさんある。それでもアモンはマリーの手を握って一生懸命に前を向く。
やっと手に入れることのできた自分の居場所を守るためにも。後に金蛇隊にさらわれたマリーを迎えに行くために。


僕らは、世の中の不条理なことはある程度受け入れていかなければならない。
しかし、理不尽な暴力(または体制やその権力)によって虐げられ、不等な立場に置かれることを黙って見過ごすわけにはいかない。
アモンは運命に身を焼かれながらも生き、必死に戦う。ブラニックを絶対に許すまいと、マリーを助けると心に決めて。
アモンとブラニックの間接的な接触で描かれてきたストーリーも、最終的にはこの2人に収束する。
アモンは英雄的行為を成す。しかし、それが決してハッピーエンドに終わらないところこそ、この物語が僕らに示す"なにか"なのだろう。
そう、少年の冒険活劇とは明らかに異なってくるのだ。この痛切な物語を僕はどう受けとめたらよいのか、非常に考えさせられる。

1人の少年の成長とその太陽のような心は、じんわりと胸に沁みる。
物語の中で、アモンの人間性なるものの推移は、この話の中でとても上手く語られている。
話の中に登場させる、実にいろいろなものや細かい出来事、脇役たちもこれ以上ないくらいに完璧だ。
この映画をどこかで分割することはできない。部分部分では描かれず、ひとつの作品としてくっきりと描かれている。
90分という長いスパンでたったひとつのことを語っている。アモンのことだ。
だからこそ、この物語は素晴らしいものとなったのだと思う。
僕らはその物語を、ひとつの世界の中で流れていくようすを、水を見るようにしてその総体を見、
また裏に渦巻くさまざまなことに、風の歌を聴くようにして耳を澄ませる。そうすることが正しいように思える。

この作品が、たくさんの教訓(ひとつでも構わないのだが)やテーマに伝えるだけの価値があったことも、物語の完成度が高いことももちろん評価できる。
でもやっぱり、そんなことを考えずともこの映画は感覚的にも、面白いことはもちろんです!絶対に面白い!
「少年の冒険」的視点で観てもらって一向に構いません。でも観終わった後に残る感触は違ってくる。それを感じてほしい。

このレビューを読んだ人で、実際に観てくれる人がいたらすごく嬉しい。もし同じように楽しめたなら、さらに嬉しい。
布教しているわけではないけれど、本当に面白いから興味と時間さえあれば観てみることをお勧めしたい。
一見の価値は十分にありますよ。






余談

この作品に登場するブラニックと金蛇隊にはモデルがいる。
ブラニックは総統であり、しかしそうでありながら軍人のような恰好しているとこを見ると、ヒトラーをモデルにしているだろうと思う。
また、彼の支配する金蛇隊、またブラニック自身の被る帽子にデザインされた雷マークは、ナチス親衛隊のマークによく似ている。
「ハンベル」の町も、おそらくドイツの都市である「ハンブルク」からとったのだろう。

原作者のC.W.二コル氏は、1940年7月17日生まれ、彼がまだ幼かった頃に起きた戦争によって父を亡くした。
当時は母親とイングランド東南部に住んでおり、ナチス空軍の襲撃に怯えていたという。
作中に登場するこれらがヒトラー率いるナチスによく似ていることは、二コル氏の体験に深く結びついていることは明らかだろう。
また、二コル氏はナチュラリストとしても著名で、積極的に環境問題に取り組んでいる。
彼の自然に対する愛は、アモンの手にした力や動物と話せるところに反映されていると見ていい。
僕らの世界にはいない動物や、「イルカ岬」の独自の文化の描写にもそれはある。
非常に辛い経験と豊かな経験がこの作品の土壌となっている。
まだイノセンスが剥き出しなままの1人の少年を通して描かれるのにも関わらず、
残酷で力強い物語であったのは、彼の人生そのものが厳しく、またアクティブなものであったからなのだ。
そう考えると納得できるし、良い物語であることは変わりない。ほんとうに良い物語だ。


{netabare}

夭折した少年は最後、飛行艇の爆発とともにもうひとつの太陽になる。
黄金の鷲は言う。「風の民はみんなの中に生きている」と。
「風の民」またはアモンとは一体何者だったのだろう。
動物と言葉を交わし、金色の風をみることができ空を飛ぶことができる。
そしてアモンは最後ブラニックの中に入り、愚かな行為に歯止めをかける。そしてブラニック(あるいはヒトラー)を殺す。
「風の民」またはアモンは、自然と一体となった存在だろうとも思うが意味合いとしては少し異なる。
物語の中での彼の意味まで考えると、正義の心そのものだということに思い当たる。
風の民はみんなの心の中にいるということ、その言葉が示すものを追及するところにその答えはありそうだ。
アモンは、街のみんなを助け、元気づけ、自由を勝ち取ることに力を貸したし、自ら危険なところに飛び込み、英雄となった。
正義とは、人の正しさとは、誇るべき行動というのは、こういうことだと体現したのはアモンだ。
怯えていてはいけない、人の好きなようにさせてはいけない、不等な立場に置かれることになれてはいけない、見てみぬふりをしてはいけないと、彼はこどもの貧弱な体一つで見せた。
マリーは最後、天国のアモンに向かってこう言う。「アモン。―私忘れないよ。」
アモンのことを忘れないということは、彼のしたこと成したことをいつまでも忘れないということ。
それは単純にアモンという1人の人間を忘れないという意味でも捉えられるが、ここにはもっと深い意味があるような気がした。
つまりだ、正義や善というのは非常に曖昧で、時代と環境によってその価値や意味が変化してしまうが、
それは少なくともこういうことだとアモンが示してくれた答えを忘れないということ、それが「風の民」がみんなの心の中にいて、マリーがアモンのことを忘れないと言った最大の意味なのではないかと僕は思う。
アモンのことを忘れないということは、その正義の振る舞いも忘れないことと等価なのだ。
「風の民」とは古来からそういった人種だったのではないか。何よりも守るべきものをちゃんと守ることのできる人達。
アモンもまたその一員だったのだ。そう思うと滅びた理由もなんとなく分かるし、すごく悲惨であったことを想うと辛くなる。
しかし、アモンは役目を果たし、大切な人を救うことも、ブラニックに救済してあげることもできた。
彼がこの街にしてくれたことを誰も忘れない。ぼくらはアモンが見せてくれた勇気ある行動を後世に伝える。
そうして脈々と受け継がれていく意志は絶対に死ぬことはない。またそれは象徴となって太陽の隣で彼それよりも輝いている。




{/netabare}

投稿 : 2024/11/16
♥ : 12
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