takumi@ さんの感想・評価
3.3
世にも奇妙な物語
アニメーション作家・岡本忠成氏が5年の月日をかけて制作し、
その途中で急逝されたため、美術作家の川本喜八郎氏が
意思を継いで完成させたという作品。
全体通して、コーヒーブラウン系の落ち着いた色合いの
色鉛筆画のような繊細なタッチの作画のせいか、
読んでいた絵本の中の挿絵が動き出したような感覚がある。
物語は、原作である宮澤賢治の童話『注文の多い料理店』そのもの。
山の中の林へ迷い込んだ猟師2人が、
霧の中から現れた山猫亭という西洋料理店に入り、
誰にも会わないまま次々指示される通りに店内を進んで行くと、
衝撃的な事実を目の当たりにする、というホラーめいたお話なのだが、
セリフがないまま、ほぼ効果音と映像だけで進行していくので、
静まり返った誰もいない店の不気味さがすごく伝わってくる。
山林を吹き抜ける強い風の音、
薄くたなびく霧や静寂を打ち破る突然の鳥の鳴き声、
音程の狂ったアンティークの大きなオルゴール、
ほの暗い廊下や窓がひとつもない店内の閉塞感。
これから何かが起きるぞ的な期待感はバッチリ。
でも結果的には単純な話なので、期待しすぎは禁物。
この物語自体、結末までの演出を楽しむ作品だと思うので。
20分という短さはちょうど良かったのではないかと感じた。