田中タイキック さんの感想・評価
3.5
クレしん映画のせいで長い間、雪だるまは怖いってイメージが抜けなかった子供時代
1982年公開 翌1983年にアカデミー賞 短編アニメ賞にノミネート
イギリスの児童文学作家レイモンド・ブリッグズ原作の絵本
それを元にした26分間の短編アニメーション作品。
一面の雪景色になった冬のある日、少年は雪だるまを作る。
その夜、突然その雪だるまは命を得たように動きだし、少年と共に夢の様な冒険に出かける。
キャラクターに台詞が一切無く、SE(効果音)も無い。
動画にBGMの味付けだけされたサイレント映画ってやつです。
サイレント映画ってチャップリン作品だったり
初期のディズニー作品のオズワルドとか蒸気船ウィリーのようなコメディ系のイメージが強くて
『事情はよく分からんけど何かワチャワチャしてて楽しい』
みたいな作品を主にやるジャンルなのかなーと勝手に思ってたんですけど。
スノーマンでは冒頭から灰色な切ない雰囲気で始まり、色鉛筆で描かれたようなムラのある着色は
明るい場面であってもどこか悲しさが漂ってます。
んで、激しいアクションシーンとかは無くて少年とスノーマンの無邪気なやり取りが中心なってくるんですが
細かに配慮された動作にキャラの心情に合わせて絶妙に変化してくるBGMが
声の無いはずの少年とスノーマンとの間にちゃんと会話がされているんだなってのがわかって
どんな会話をしているんだろうと想像を巡らせるのが楽しかったりします。
シナリオは単純だし刺激の多い映像作品が手軽にたくさん見られる現在では
やっぱ退屈でつまんねーってなるかもしれないけど
上質な雰囲気を感じながらボケーっと見るもよし、少年に感情移入して夢の追体験をするもよし、
少年とスノーマンの出会いと別れに自分自身の成長と消失を重ねて涙するもよし
シンプルな作品でありながら結構いろんな楽しみ方あるよってことでオススメです。
2012年に続編である「スノーマンとスノードッグ」っていう
同じく20数分の短編が製作されてます。
デジタル処理によって独特の味わい深い映像は失われてしまったけど
作り方や雰囲気は前作そのままに、現代風にアレンジされていて
両作に微妙に繋がりが見えるので合わせて見ると面白いですよ。