歯医者で戦争なTVアニメ動画ランキング 1

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70.2 1 歯医者で戦争なアニメランキング1位
龍の歯医者(TVアニメ動画)

2017年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (294)
1239人が棚に入れました
彼の国には龍が棲んでいる──
神話によれば、古の人々との契約により、龍は人を助け、人は龍を助けるという…
舞台は “龍の国”。
主人公は、国の守護神 “龍”を虫歯菌から守る新米・歯医者の野ノ子。
隣国との戦争が激化する中、ある日彼女は、龍の歯の上で気絶した敵国の少年兵を見つける。
少年の名はベル。
大きな災いの前に龍が起こすと言われる不思議な現象で、巨大な歯の中から生き返ったものだった。
自らが置かれた状況に戸惑うベル。そして彼を励まし、彼を龍の歯医者として受け入れる野ノ子。
激しい戦いに巻き込まれながら、二人はやがて自らの運命を受け入れて行くことに…
かつてない壮大なスケールで描かれる
冒険ファンタジー!

声優・キャラクター
清水富美加、岡本信彦、山寺宏一、林原めぐみ、松尾スズキ、名塚佳織、徳本恭敏、高木渉、櫻井孝宏、津田健次郎
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

残酷な龍へのアンチテーゼ

[文量→特盛り・内容→考察系]

【総括】
日本アニメーター見本市からの派生作品。独特の世界観で、類似作品を見つけるのは難しいですね。

色々と考えてみましたが、正直、良くわからん作品ではありますね。他の方も多く指摘されていますが、明らかに詰め込み過ぎです。

でも、世界観は独特で引き込まれるものがあり、ストーリーも難解ではあるけどなんとなく理解できるし。何より、ヒロインの野ノ子は超可愛いですしw、映像美の面でも素晴らしいと思います。

ということで、(こんな長いレビュー書いといてなんですが)あまり小難しいことを考えず、庵野ワールドの訳わかんなさに翻弄されてみるのも、一興だと思いますよ♪ わりと好きなアニメでした♪

《以外ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
この作品を難解にしているのは、「正義」と「悪」を、一見逆に描いているからではないでしょうか。

一見すると、「野ノ子」ら龍の歯医者が「正義」で、(闇落ちした)「柴名」や龍を殺そうとする「死なずのブランコ」の方が「悪」として描かれています(正義や悪が相対的なもので、どちらの立場からみるかによって違うとかは別として)。

ここで大切なことは、「龍の歯医者」=「生きる死人」という公式が成り立っていることです。

一部例外(不幸をもたらすと言われる「甦り」のベルを除き)龍の歯医者になれるのは、龍の試験を通し、「自らの死を受け入れられる」という、達観した死生感をもつ人だけです(そもそも、龍の試験を受ける時点で、生きるのが辛いような不幸な人生を歩んでいますし)。

それは、聖人的とも言えるし、狂人的とも言えます。少なくとも、人類の価値観としては少数派でしょう。むしろ、試験の中、自らの運命にあらがい歯の中に消えていった人々の方が、人間としては「まとも」かもしれません。

穿った見方をすると、龍は自分にとって都合の良い存在だけを、歯医者にしているとも言えます(甦りが不幸をもたらす存在だというのも、あくまで龍にとっての不幸、という意味かもしれません)。

そもそも、なぜ「死した人の魂の顕現である虫歯菌」は龍を殺そうとするのでしょうか。

「龍」とは、「死(運命)を受け入れれることを是」とする存在です。

「虫歯菌」とは、人の意志や感情の残滓です。

「虫歯菌」は「龍」を殺そうとします。

つまり、「虫歯菌」とは、「人間の、死(運命)にあがらう意思の塊」(の比喩)とも言えます。

種族としての人間は、龍のロジックに戦いを挑んでいるわけです。そして、その象徴的な存在が、「柴名」です。

そもそも「柴名」も、龍の試験を突破しているわけですから、「死(運命)を受け入れる」側の人間だったはずです。しかし、自ら虫歯菌(死(運命)にあらがう人間の総意)になり、龍を殺そうとします。そのきっかけになったのは、想い人である「竹本」の死。つまり、「柴名」は、「自分の死」は受け入れられても「大切な人の死」は受け入れられない人間だったのでしょう。それって、人として間違っているのでしょうか?

そこで、ポイントになるのが、本作の主人公でもある「ベル」です。彼は、「甦り」であり、龍の試験を受けていません。だから、心情的には「柴名」に近いものがあります。でも、彼にとっての「大切な人」は、「龍の歯医者」である「野ノ子」であり、龍の歯医者という仕事にやりがいも感じているので、立場的には「ヨ世夫」らと同じです。正に、中間の立場にいる人物。彼がどちらを選ぶかで、作品の重心が変わります。

そんなベルが最後に選んだのは、「虫歯菌(人の死にあがらう総意)」を倒し、龍(の親不知)を守ることでした。

でも、それは結果的にそう見えるだけの話。

ベルは、龍を守りたかったのではなく、あくまで「野ノ子」を守りたかっただけなのです。その証拠に、ベルは最後に「龍の歯医者にはなれない」と、はっきり言っています。またベルは死後に「なぜ僕が龍に選ばれたかは分からないけど、僕がもう一度生かされた理由ならわかる。君に出会えて本当に良かった。ありがとう、野ノ子」と述べています。

多分、龍は、「自分の親不知を守らせるため道具」としてベルを生かしたのだろうけど、ベル自身は、あくまで野ノ子のために、自らの命をかけました。結果として(龍を助けるというの)は同じで、龍の思う壺だったかもしれないけれど、確かにベルが運命にあらがったということを表していると思います。

このように、私たち通常の感覚の人間から見たとき、むしろ「悪」である「龍の歯医者」を、あたかも正義のように描いている部分が、作品を分かりにくく、共感させにくくしていて、庵野さんなりの、なにか皮肉めいたものを感じます。

近代の作家、坂口安吾は「堕落論」の中で、それまでの倫理観や価値観を破壊し、新たな価値観を示しました。それは、当時戦争思想に染まっていた日本人が、次第に西洋化、近代化していく中で必死に生きていく様を指し、それをもし堕落というのならば、あぁ大いに堕落すればいいさ、それが生きるということだろう。という趣旨のものですが、なんか、庵野さんも似たようなメッセージを発信しているような、いないような。(人間らしく醜く利己的であっても必死に生きる「柴名」を悪として書き、なぜか最後に「勇敢だ」と賛美する辺り)。

この辺がレビュータイトルの、「残酷な龍へのアンチテーゼ」ですw

さて、最後に、気になった点をいくつか(これは自分の中でも結論出ていない部分です)。

まず、ベルの銃です。ベルの銃は、はじめはベルがブランコに向け、そのせいでブランコに殺され、次にブランコの手に渡り、ブランコがベルを撃ったせいで、ブランコは虫歯菌に殺されます。そのあと、これ見よがしにスローモーションで階段を駆け落ち、ベルの元に戻ってきます。それが、龍の歯を通り、再び龍の歯の間に表れ、カンネによってぽいっと捨てられます。しかも、その銃の写真がちらっと、数十年後の飛行機(後編冒頭)のシーンに映り込んでいるあたり、明らかなメッセージ性を感じます。それはなにか、「因果応報」や「輪廻転生」といった仏教的な思想の比喩にも思えるし、それをぽいっと捨てたカンネから、「そんなの下らない」といメッセージにも考えられます。

次に、最後に虫歯菌が、なぜ「殺意」ある人だけを殺したか? という部分です。私の論的には、「虫歯菌=死(運命)にあがらう人の意思」なんだけれども、だったら多分、「生きるのを諦めた人」を狙うはずなんですよね。龍や人に向ける殺意って、ある意味では生き抜く意思の表れだから。ここが、自分の論の弱さだし、矛盾点です。考えられるパターンとしては、①虫歯菌が同志の命を集め、龍を打倒しようとした。②私が単に考え過ぎているだけで、「人を殺そうとしたから死ぬんだよ(因果応報)」というメッセージを伝えたかった、かのどちらかかな?

そして、ベルの最後の台詞「ありがとう、野ノ子。僕の龍の歯医者」は、どこで区切るのが正解なのでしょうか? 「僕の、龍の歯医者」なら、野ノ子を自分のもののように思ってる(マイハニー的な)ベルの心情を表すのでしょうし、「僕の龍の、歯医者」なら、自分の中に存在する龍(心が帰る場所)を磨いて(清めて)くれる存在として、野ノ子に身を委ねているともとれるし。どっちなんでしょうね。また、野ノ子は最後にベルを探していましたが、ベルがもういないことを知った後はどうするのかな。それが運命だと達観するのか、「柴名」のような道を辿るのか。

そこはかなり気になるポイントなんですが、まあ、庵野さんなんでね、仮に続編描くとしても一筋縄でないかないでしょうね、確実に(笑)
{/netabare}

【視聴終了(要約バージョン小盛りレビュー)】
{netabare}
この作品を難解にしているのは、「正義」と「悪」を、一見逆に描いているから。(正義→龍の歯医者。悪→龍を殺そうとする人)

龍の歯医者になれるのは、死を受け入れた人間だけ。しかし、なんとしてでも生きようとするのは、人として、悪だろうか? 龍とは、龍の歯医者とは、正しい存在なのだろうか?

なんか、この辺りに、庵野さんなりの、なにか皮肉めいた主張を感じます。
{/netabare}


【余談1(清水豊美加さん)】
{netabare}
声優初挑戦とは思えないほど、ハマっていましたね。これで最後なんてもったいない。それにしても、龍の歯医者をはじめ、何やら宗教色が強い本作。そのヒロインを演じた方が宗教にハマって芸能界引退、とは、なんの皮肉でしょうね。(いや、某宗教団体がどんなところかは具体的に知らんし、宗教そのものを悪く言うつもりもないけど、ごく一般的に日本人の感覚的に、やっぱりちょって引いちゃうな、と。あまりにも宗教色が強いと)
{/netabare}

【余談2(かなりクダラナイ)】
{netabare}
作品のクライマックスである、どでかい虫歯菌が白い灰になっていくシーン。感動的ではあるのだけど、どうしても「ヘビ花火」を思い出してしまい、笑ってしまった(笑) あんなシーンでこんなこと思うなんて、ホントにダメだと軽い自己嫌悪に陥りましたw
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 38

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

深い作品っぽいけど浅いです。アニメ技術とエロ表現だけの作品かなあ。

 映像はすごい作品だと思います。スタジオカラーですが、ちょっとジブリの感じもみられます。
 
 テーマ性としては、龍の歯医者の試験のところでヒロインが自分の死の場面を知ります。また、龍の歯医者は延々と同じ作業を続け、時に死の危険はあるなど、職業とは?生命の業、生きる意味への問いかけのようなものはあります。
 不条理と選択という感じもあるるので一見実存主義も感じられなくはないですが、上滑りです。

 職業選択のあとの代わり映えのない日々=生きること、そしてその使命の中で死ぬことをどう消化してゆくかという部分は感じ取れるかもしれません。
 カラー(旧ガイナックス)は自分たちアニメーターをアニメ作品に仮託することが多いようですので、龍の歯医者=アニメーターなのかもしれませんが、それはテーマにはならないしすべきではないでしょう。

 黄泉がえりと虫歯菌になってしまう女の話との対で、死の不可逆性、死にあらがう女の執念のような意味も感じ取れます。もちろん虫歯の正体から言って反戦主張はありますが浅いです。制作者の深い思想性がまったく感じられません。

 治療行為が生者の心の治療という意味もあまり感じません。むしろ死者の鎮魂のようなことがセリフとして出てきますが、それは上手く含意にできているとは思えません。

 全体として、アニメ動画としてのクオリティが高い上に、ストーリーが説明不足な割に思想・哲学的なギミックが散りばめられている構造です。そこに個々人の内面にある何かを反映することで一見深さの様に感じるかもしれませんが、私は本作はそこまでの奥行は感じませんでした。

 また、カラーらしいといえば、作品のストーリーに溶け込ませてはいますが、裸やキスシーンなどエロのニュアンスが強い部分があります。

 ヒロインの前身である「旅籠の飯炊き女」も同様でいわゆる「飯盛女」つまり遊女という設定でしょう。このエロニュアンスが何か意味性があるかといえば、アウトロー以外の意味があるかといえば、制作者の趣味嗜好にしか見えません。遊女だからじゃあどういうキャラ造形なのか、という作り込みはほとんど感じられません。唯一遊女=白拍子=巫女のような感じはあるかもしれませんが。
 「もののけ姫」っぽい女性キャラからいって、その辺の設定も借り物なんでしょう。エボシは多分公式で遊女だったと言っていたと思いますが、エボシがなぜ女や病人を守るのか、科学技術で自然と戦うのかのバックストーリーが感じられます。
「旅籠の飯炊き女」である必要がヒロインには感じられず、その意味だけ調べさせて制作者が喜んでいるだけに感じてちょっと視聴者を馬鹿にしているのでは?とも思えます。

 後半の冒頭のジェット機でビックリしますが、そこで記者らしき女性が書いている記事が「科学万能の現代においても…」ですからね。昭和40年代か?というレベルの記事で、こういうところの作り込みが甘いです。

 ということで、アニメの画面そのものは素晴らしい作品なんですけど、意味内容、テーマ性が浅い気がします。結果としてその浅さを補うためにそうするしかないよね、という感じの終わり方でした。それですら、彼の意味性が弱くて感動までには昇華できませんでした。

 映画ではなくTV作品としての評価です。映画なら酷評レベルでしょう。画面と声優さんはなかなか良かったですが、他は力が入っていそうな割に残念な作品でした。もし、何かに気が付いて含意に気が付けば評価を上げるかもしれません。

「もののけ姫」「ナウシカ」「ハウル」「千と千尋」などジブリの雰囲気、設定、映像表現をおいしく頂戴しました、という感じがしなくは無いです。感覚的ですからはっきりはいいませんけど。
 
 エンタメとしては75点、テーマ性込みの作品としては45点、客観評価は3以上はつけたくないけど、作画と声優で越えちゃうかなという作品です。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 8
ネタバレ

過たる さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

歯医者としての生き方

NHKのBSプレミアムで視聴。
ジャンル:ファンタジー(ジブリ、エヴァっぽい)、戦争(20世紀前半)、アクション
R-15くらい?{netabare}(ベロチュー、大量殺戮){/netabare}

日本アニメ(ーター)見本市で2014年11月に公開された短編は視聴済み。
改めて見返すと、ヒロインのキャラデザが違うみたい。
今作では髪型が前髪パッツンで、眉毛の太さ等変更されているようだ。

前後編、各45分で併せて1本の映画分の長さ。
物語は不十分で消化しきれていない設定が有るから低評価になったとしても妥当かな、と思う。

でもタイトルの『龍の歯医者』が意味する、ノノコやベルの歯医者としての生き方に一貫性が有るように思い、それについて評価しようと思う(前置き長い)。


・この世界の『歯医者』について
戦時下、{netabare}龍は日本軍にとって大きな戦力となっている。龍の一撃の破壊力と飛行性能と弱点の少なさが有る。龍を一部要塞化し、歯医者や警察は龍の上で生活する。弱点は歯のみで、清掃管理しているのが歯医者。
龍から特別な武器を授かっており、それを使って虫歯菌(荒ぶる魂、人間に通常無害)を退治する。龍の弱点に近いことも有り、警察より立場は上。{/netabare}

歯医者になるには、試験に参加して生還する事が必須。
内容は、{netabare}精神世界(?)で龍と対峙して、己の死ぬ瞬間(来たる際)に立ち会う。
運命を肯定し、龍に殺意を向けなければ合格。(敗者=歯医者?)
運命に歯向かい、龍に殺意を向ければ失格。(勝者){/netabare}

・ノノコとベルについて
キャッチコピー『少女は選んでここに来た。 少年は選ばれてここにいる。』

ノノコは{netabare}戦時下では贅沢品である白米を沢山食べることに憧れ、歯医者の道を選んだ。
来たる際は敵国の少年に地上で銃殺される運命である。
死ぬ事を受け入れており、だからこそ無関係な状況では勇敢に行動できる強さになっている気がする。
印象的なセリフ「生きるって、長生きすることが目的なの?」{/netabare}

ベルは{netabare}敵国の副隊長で、部下に裏切られて殺された。
理由は不明だけど龍の真下だったことが影響して黄泉返りで龍の歯から出てきた。
黄泉返りはイレギュラーな現象らしく、歯医者のような試験を通さず歯医者になれるようだ。
ノノコに拾われて、おにぎりを施されても「今飯を食うかどうかも決められない」くらい決断力の乏しい兵士だった。
道理で、裏切られるわけである。
歯医者が死を受け入れていることに否定的で、「死ぬことが分かってて、それを避けようとしないのは自殺と同じじゃないか!」と、運命を回避する手段を探すべきだと主張する。
ノノコと地上に落ちたとき、彼女と行動を共にする中で、己が果たすべき役割を見出し行動したようだ。

作中で、一番成長した人物だ。

(考察:ベルは黄泉返り時点で、実は試験を受けていて結果を保留にしてたんじゃないかな。来たる際について知ってて、はじめはブランコに撃ち殺されるのを回避する運命を探していたけど、ノノコの影響を受け、大事な仲間をどう守ることができるかに考え方をシフトさせたのかな、と推測){/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 4
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