シス子 さんの感想・評価
3.0
何でもは知らない・・・知らないことも知らない・・・
原作は既読で視聴しました
たまたまアニメ作品を観てしまったということもあり
感想を書くことにしました
核戦争をテーマにした作品です
今の時代にはあまり現実味がない内容ですが
原作が出た当時は話題になっていたようです
原作は絵本のような感じで
登場人物がほのぼのとした滑稽なタッチで描かれていますが
アニメでは実写映像や3Dみたいな映像効果も入っていて
演出はそこそこ凝っています
主題歌はデビッド・ボウイ氏が歌っていて
ロック調の曲にちょっと違和感を感じるかも知れません
内容は
イギリスの片田舎で平和に暮らしている老夫婦が
核戦争の脅威に晒されるというお話
核戦争が勃発する可能性が高まる中
政府の出した核戦争の対策用パンフレットに従い
老夫婦は保存食を用意し核シェルターを作ります
シェルターといっても
家の扉を取り外し壁に立てかけただけのもので
誰が見ても核の爆風にはとても耐えられそうにありません
そして
とうとう核戦争が起きてしまい
熱線と爆風が老夫婦の住む家を襲いますが
運よくシェルターに逃げ込んだ夫婦は助かります
電話やラジオ放送は途絶え
何も情報が入ってこない状況の中
老夫婦はシェルターに避難したまま救援を待ち続けます
日を追うごとに
放射線に蝕まれ
体に異変が現れてきますが
それでも
老夫婦は救援がくるのを信じ続けます・・・
作品の内容は
核戦争をテーマにしたお話というのは前述したとおりですが
見方によっては私達の身近にも起き得るようなテーマが見えてきます
最近では
身近な問題になっている
放射性物質の危険性はもちろんですが
誤った情報を与えられる危険や
政府の危機管理の甘さなど
でも
なによりも怖いのは
そのことについて
なにも知らないという危険
老夫婦はなにも知らなかった
核の恐ろしさも
放射性物質の危険性も
そして
政府の指示が本当に正しいのかということも
情報の正確性を
それを知る術も知らないし
それを知る必要があることも知らなかったのです
危機的状況で
自分が何も知らないという状況を知らないことが
いかに恐ろしいことなのか
お話の終盤では
{netabare}食料が腐りだし
飲み水が底をついてしまうのですが
お茶を飲むために
溜めておいた雨水を
なんの迷いもなく
沸かして飲んでしまいます
水が放射性物質で汚れていても
沸かせば大丈夫という誤った知識しかないのです
とてもショッキングなシーンのはずなのに
老夫婦の
放射能に対するあまりの認識の低さと
まるでアフタヌーンティーを楽しむような疑いのない行動に
悲しいとかかわいそうという感情より
残酷なシーンを見せられているみたいで{/netabare}
訳も分からず涙が溢れてきてしまいました
冷戦という言葉が過去の物になった今の時代には
あまりそぐわない内容と感じる人もいるかもしれませんが
逆に
今だからこそ
見ておくべき作品かもしれませんね
余談で
この感想文では
放射能の類を
あえて放射能・放射線・放射性物質という言葉に
分けて記述しています
厳密には
・放射能とは単位時間に崩壊する放射性物質の数のことであり(wikiより)
・放射線とは放射性物質から出てくる電磁波(X線やガンマ線など)
・放射性物質とはその放射線を出す物質(プルトニウムやウランなど)を指し
全て別の意味のものです
東日本大震災での原発事故以来
日本人の放射能に対する認識はかなり高くなっているはずなのですが
これらの言葉の意味が混同されているようで
そのため
・放射能が空気を汚染していてその空気自体が放射線を発しているとか
・放射線が事故の地点から直接飛んできていて危険区域全てが汚染されているとか
・人体などが放射線に晒されただけで放射性物質に汚染されてしまう
など
誤った認識をもたれている方もいまだに多いみたいです
私も原発事故が起こるまではそんなに意識して考えたことはなかったし
なにより
このような誤った認識のために
風評被害に遭われた方々が大勢いることをあらためて知り
深く反省しています
やはり
知らないことは積極的に知ろうという意識を持つことが大切なんですね