未来で恋愛なアニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の未来で恋愛な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月28日の時点で一番の未来で恋愛なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

75.6 1 未来で恋愛なアニメランキング1位
劇場版 マクロスF[フロンティア] 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜(アニメ映画)

2011年2月26日
★★★★★ 4.1 (765)
4457人が棚に入れました
人気SFアニメ「マクロス」シリーズで、2009年に公開されて大ヒットした『劇場版マクロスF~イツワリノウタヒメ~』から続く完結編。軸となるテレビ版ストーリーを大幅に改変し、二人の少女の歌声に秘められた謎をめぐる死闘を描く。監督は、テレビシリーズ第1作目からスタッフに名を連ねる河森正治。「マクロス」史上かつて類を見ないハイクオリティー映像で繰り出される激しいメカアクションと、テレビ版とは異なる新たな結末は必見。

だんちょー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

\(^o^)/オープンランカ

2011年10月20日BD&DVD発売。見直しました。

劇場版2部作の2作目。

1作目はTV版の流れも含みつつ進んでいきましたが、こちらはほぼ新規ストーリー。

2作目はランカメインですね。可愛い歌がたくさん^^やはり管野よう子さんの曲はいい曲ばかりです^^

\(^o^)/オープンランカ!www

さすが劇場作品。ライブシーン・戦闘シーンなど物凄いですね♪

ストーリー展開は個人的には劇場版が好きですね。

過去作(初代・7・プラス・ゼロ)を観てる方には楽しめるネタも入ってたりして面白かったです。

TV版では曖昧に終わった三角関係もこちらではしっかり決着がつきます。

是非本作をご覧いただいて衝撃の結末を楽しんでいただきたいですw

もちろん見たことない方は上記過去4作(100話くらい?)を見てから・・・ を見なくても大丈夫な内容なのでこの劇場版2部作は見て欲しい作品です♪

投稿 : 2024/12/28
♥ : 20
ネタバレ

Takaさん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

あいつ・・・傾いてやがる!

劇場版 マクロスF 後編

Tアニメ版とは違った結末だったけど、
三角関係に決着がついたのは良かったけど、
こっちはこっちで消化不良な感じだった。

{netabare}
アルト=バジュラと共にロストで行方不明の生存不明
シェリル=手術終了。でも、眠ったまま起きず…

ランカにとっては、痛手が少ないような感じ
{/netabare}

三島のゲスっぷりも楽しめたので、前編の総集編ぽいのより楽しめた。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 2

ろむ_旭菜。 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

あぁぁぁ・・・・・・(最後のほうが重要ですw)

マクロス最高!!!
としか言いようがありません・・・・
もう涙腺崩壊&人格崩壊のダブルパンチ。
もだえ苦しんでおります。

マクロスが好きすぎて生きるのがつらい。
正直マクロスの最後は意外な展開で終わってもらいたかった・・・とか思っているのですがそうもいかないですねぇ・・・

意外にアルト君が『ごめん、二人とも・・・俺、ナナセが好きだったんだ・・・・』とか言ってさらにトライアングラー発生!!
とかおもしろそうだと思いませんか?www
それでナナセは『私はランカさんが…』とか言ってみんな恋愛成就はなりませんでした。とか・・・ww
そしたら明るい終わり方になれるのになぁ・・・・なんてw

ほかにもアルト君が成長して嬉しいやら悲しいやら・・・・
全く・・・子供が結婚するときの親のような心情なんですが。

他にも歌があってほんとうにたくさんのほんとうにたくさんの(大事なことなので2回w)勇気をもらいました!有難う

そして、まだマクロスを見ていないそこのあなた。
見てくださいね☆
(大げさですが)人生変わります。

そして最後に・・・
マクロスは不滅です!!
いつまでも私たちの心の中で生き続けるでしょう。
・・・・少なくとも私の心の中では。
みなさん、共感してくれる方がおられましたら是非友達に・・・(ry

一人一人のキャラを愛して生きていきます。
『君がいないなら意味なんてなくなる(ノーザンクロスより)』
の精神でみんなを愛する!!

・・・・あばばばばば・・・コメント長すぎる・・・・
最後まで見てくださった方がおられたら全身全霊を込めて感謝します!!!!
有難う!有難う!!

あ、ながいのもお愛嬌ってことで←
長い分だけ愛も多い!!!みたいな感じで・・・(ぇ・・・

投稿 : 2024/12/28
♥ : 16

72.5 2 未来で恋愛なアニメランキング2位
HELLO WORLD(アニメ映画)

2019年9月20日
★★★★☆ 3.7 (225)
1029人が棚に入れました
京都に暮らす内気な男子高校生・直実(北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(松坂桃李)が突然現れる。ナオミによれば、同級生の瑠璃(浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。

声優・キャラクター
北村匠海、松坂桃李、浜辺美波、福原遥、寿美菜子、釘宮理恵、子安武人

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

今年もう『天気の子』を上回る厨二病映画なんて出ねーだろっと思った矢先にコレだよ!これをアニヲタだけのモノにしておくのはモッタイナイ!!やってやられた!!!

『楽園追放』を手掛けたグラフィニカによるトゥーンシェード調フル3DCGの完全オリジナル長篇映画
監督は伊藤智彦、脚本は野崎まど、キャラデザは堀口悠紀子、音楽はOKAMOTO'Sのプロデュースで集まった複数の次世代アーティストによるチーム、2027sound


舞台は2027年の京都
量子コンピュータとドローンのカメラによって京都の街並み、及び街で起こった全ての事象を観測し保存する「アルタラ」プロジェクトが試行されていた
主体性が無くて凡庸な男子高校生だった堅書直実
ある日、彼は3本足のカラスに導かれるように2037年から来た大人になった自分だと言う人物、「先生」ことカタガキナオミと出会う
先生によれば自分が現実だと思っているこの世界や直実自身は、アルタラの中に保存され、仮想世界の中に再現された過去の京都だと言う
ではわざわざ仮想世界に降り立った未来人の先生の目的は?
それはこれから直実と恋仲になるという無表情な少女、一行瑠璃が死亡事故に巻き込まれるのを阻止するためだと言う…


極力ネタバレを廃してオススメしたい作品ではありますが、とにかく終盤及びラストの展開が素晴らしいのでその魅力を語るのが難しい;
ついでに他の方々のレビューも秀逸で僕自身で今作の魅力を新たに掘り起こせそうには到底ありません;


とりあえず注目したいのは今作に散りばめられた“厨二病要素”です
今年最大の厨二病映画といえば『天気の子』のラストが真っ先に思い浮かびます
好きになった女の子1人を助ける為になら警察から逃走したり東京の街をまるごと滅ぼしても構わない、とはあっけに取られましたよね
恐るべし新海、と


これでもうしばらくは『天気の子』を上回る厨二病映画は出ないだろうと思っていました
ところが僅か2ヶ月でその安寧は破られましたw
今作がソレ
先生は直実に一行さんを守り抜く為の力として「神の手(グッドデザイン)」と呼ばれる手袋を貸し出す
右手で触れるだけで物質を変質させたり物理法則を変化させられるトンデモないチートアイテムですw
終盤の直実はコレを使いこなせるようになり、指パッチンをするだけで世界を歪めたり物質を召喚出来たりする様になります


察しの良い方はお判りいただけると思いますが、思いっきり『アベンジャーズ』ですw
特に『ドクターストレンジ』はまんまと言っていいでしょう
あまりのクサい内容をさもスタリッシュなアクションシーンにしてしまったのは笑ってしまいます


また、中盤で描かれる仮想世界の崩壊はこれまたハリウッド映画の『インセプション』を参考にしたと明言されています
もはやマーベル映画をクリストファー・ノーランが監督した、みたいな画になっていますw


さらに後半、一行さん1人を救う為に(イチギョウさんを救いたいナオミを救う為に)街を滅ぼす事よりももっとスケールのデカイことをシデカスわけです
劇中では開闢とか言われてましたね
素晴らしいw
ナイス厨二病!
良い意味で最高にイカれてます


コレを盛り上げるのが先述した2027soundで、エピックな劇伴やエレクトニカなアップテンポ、そしてボーカルソングといった具合で「また『君の名は。』の二番煎じか」等とは言わせない完成度です


今作、どちらかといえば普通のアニメヲタクよりもガチでSFや映画がお好きな方の方がドップリ浸かれると思います
所謂タレントキャストにも最初は違和感を感じると思いますがすぐ慣れることでしょう
そして最後にあなたは、一行さんの可愛さに惚れる事になるのです(笑)


まさに“やってやられる”と思いますw

投稿 : 2024/12/28
♥ : 20

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

仮想世界に魂の洗練を託す……挑戦的な3DCG映画

【物語 4.0点】
青春ボーイミーツガール、時間差を盛り込んだSF設定、ヤマ場でMV風演出……。

同時期、乱立したアニメ映画企画群の中でも、
本作はSFとして情報量多し。

現実に匹敵する仮想世界を観察するこの世界もまた仮想世界で……。
という入れ子構造を生かしたシナリオはSFとして刺激的。

俳優や音楽目当ての一般層よりも、
歯ごたえのあるSF設定も楽しみたいマニア向け。


『SAO-オーディナルスケール-』までの監督・伊藤 智彦氏が
引き続きVRMMO物をやりたいと始めた企画なので
『SAO』をテーマを咀嚼して体験したような方なら付いていける。

他にもSF関連や、
プログラム入門者が最初に紹介される例題から借りたというタイトル名、
PCゲーム『平安京エイリアン』みたいな惨状(笑)とか、ネタ多し。


これを既視感と断じるのは簡単だが、
私の場合、既視のSF設定等を当てにしないと理解仕切れなかったのも事実(苦笑)

なのでここはオマージュとして好評します。


脚本は野崎 まど氏。“脚本テロ”による奈落突き落とし等を警戒される方もいると思いますがw
むしろ昨年、私が劇場鑑賞したアニメ映画の中でも、本作の余韻の良さは屈指でした。


一方で解釈しきれない謎も残される。

本作にはBD特別盤同梱or一部配信サイト限定で、
大人・ナオミ視点で綴られた短編アナザーストーリー『ANOTHER WORLD』もありますが、
それで補完し切れない点もあり、鑑賞者の想像に委ねられる。


【作画 4.5点】
果敢なセル画寄りの3DCG作画。

群衆やアクションに長があるCGの力をしっかり濫用する一方、
意外に日常ラブコメシーンも多い本作。

CGが不得手な萌えやコミカルも提供しようと、
制作に「フェイシャル・スーパーバイザー」なる顔面チェック担当のポジションを設置。
さらに勝負所ではキャラクターデザインの堀口 悠紀子氏自らが原画を担当するなど、
人物の表情に不自然さが生じないよう尽力。
成果は赤面するヒロイン等に確実に現われている。

ただ、それでも私はラブコメは手描きの方が好きですがw
けれど本作の挑戦は評価したいです。


日本有数の計画都市である京都。
碁盤状の古都に近未来の仮想世界が重なり、現実をひっくり返す描写はダイナミック。

私のツボ:見下し視点で描かれた、
区画ごとマス目を動かしてピンチ脱出を図る想像力爆発シーン。


【キャラ 4.0点】
ヒロインの一行さん。感情希薄な図書委員。ツンデレ成分配合。
彼女に萌えるかどうかが特に前半日常パートを楽しめるか退屈するかの分かれ目。

萌えキャラとしては標準的な属性の一行さんだが、
文化系でも意外と強気で頑固な性格がツンとして消費されるだけに終わらず、
濃厚なSFシナリオの中でしっかりと回収されるのが評価ポイント。

私の中で、一行さんは萌えキャラでもあり、ある種の燃えキャラでもあるのです。
さあ、「やってやりましょう」


多分に生き方を問われるシナリオ構成の中で、
主人公少年・直実と外部世界から来た大人・ナオミが、
世界との関わり方を通じたキャラ立ちにより、
テーマを深化させているのも〇。


【声優 3.5点】
直実 CV.北村 匠海さん。ナオミ CV.松坂 桃李さん。ヒロイン CV.浜辺 美波さん。

実力も人気もあり、かつアニメへの理解もある若手俳優陣でメインを固める。


ただ、この役者さんたちの演技力を引き出したかと言うと、
私はもっとやってやれた感じもします。

映像にしても状況理解に想像力が求められる本作にて、
アフレコ(映像に合わせて収録)ではなくプレスコ(声を収録してから映像)で、
台本だけで、SF設定が絡む場面を思い浮かべながら声を提供する
というのは俳優陣にとってはかなりハードルが高かったのかもしれません。


大人・ナオミ役も声は合っていましたが、
一方で、上記の『ANOTHER WORLD』では声優・松岡 禎丞さんが大学時代を演じていて、
正直、本編も松岡さんで良かったじゃんと言う気持ちが抑えられませんw


脇を固めた声優陣はプレスコでも盤石。



【音楽 4.0点】
気鋭。

OKAMOTO`Sらが若手アーティストらを束ねたチーム「2027Sound」が、
多彩な劇伴&楽曲を提供。
Official髭男dism「イエスタデイ」、OKAMOTO`S「新世界」といった主題歌は、
キャッチーなメロディがBGMとしても再三アレンジされ、堅いSFの大衆化を試みる。

……の割には興収……伸びなかったな……(遠い目)


【感想】
仮想現実がリアルに追い付き追い越した時、何が起こるのか?

『SAO』や他のSF関連でも再三問われて来たテーマに改めて挑んだ本作。
これらの作品群に通底するのは、
魂の虚実が問題なのではない。リアルでもバーチャルでも邪悪な意志はある。
バーチャルを見下し悪用しようとする人間もいる。
そんな中でも、善き魂が残り、新しい世界の道しるべになって欲しい。
こうした近未来に向けた願いなのだと思います。

この春にラストシーズンを迎える
『SAO』のテーマを受け止めるためのお供にもオススメしたい、
良作SF映画です♪

※初回投稿4/10

【追記】
……と思っていたら、『SAO』も新型コロナの影響で放送延期に……。
厳しい春ですね……。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 34
ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

この世界はラスト1秒でひっくり返る

まぁこういうキャッチコピーがついた作品には
いつも痛い目に遭ってばかりなので
相当身構えた状態で観に行きました

そもそも原作・脚本が野崎まど
という時点で大どんでん返しがあるのはわかりきってるわけで
ただそれが「正解するカド」の時のように
悪い方向にひっくり返る可能性も少なくない
というのが事前の予想

野崎まどはデビュー作【映】の頃から注目していたアーティストではありますが
もともとホームランか三振かみたいな作家さんです
それがアニメという一人では作れないプラットホームにやってきて
他のスタッフの仕事を生かすも殺すも彼次第になり
いわば満塁ホームランかトリプルプレーかみたいな
よりリスキーな状態になったという認識
そして第一打席であった「正解するカド」は
味方の援護も微妙なところだったので
ランナー無しからの空振り三振といったところ

続く第二打席がこの作品
キャラクターデザインに堀口由紀子
監督はSAOの伊藤智彦
人気の高いクリエーターと組んで失敗に終われば
これはもう野崎まどが戦犯だと言われても
擁護のしようがないでしょう

そこにきてこのキャッチコピーです
ラストのどんでん返しが売り
というよりも他に見どころがない
そんな印象を受けるキャッチコピーです
これは四分六で併殺コースかなぁと
なかばあきらめモードで観に行きました

結論から言うと
ラストの部分を除いても
骨太のSF作品としてきっちり成立していた上
ラスト1秒・・・は言い過ぎにしても
ラスト1シーンで世界は見事にひっくり返りました

この鮮やかなラストは
野崎まどの本領発揮
最後の最後で見事な逆転劇
まさに逆転サヨナラ満塁ホームランといったところ

ただし、SF作品としてのストーリーの秀逸さは文句なしですが
それを一本の映画作品に収める際の尺のバランスに関しては
冗長な部分と駆け足の部分両方が存在したので
そのあたりを加味してストーリーは4.5としました

ストーリー以外の部分として
タレントキャストの男性陣は悪くなかったと思います
メインヒロインがだいぶ棒気味ですが
彼女自身の設定が若干コミュ障気味なので
あれはあれで悪くない気がしました
演技力の低いタレントキャストでも
使いようによってはどうにでもなるということですね

もっとも一流のプロ声優にかかれば
ほとんど言葉をしゃべれないようなキャラでさえ
非常に魅力的に演じられるということを
ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝で
悠木碧が見事に証明してくれたのに比べると
あくまでタレントキャストのダメージを軽減することに成功しただけで
決してプラス評価できるような演技ではありませんね

映像面は堀口キャラの愛くるしさはとてもよく表現できていたと思います
ときどき挟まれるコミカルなデフォルメ顔も嫌いじゃないです
アクションシーンの迫力もまぁ及第点かなというくらいではあったのですが
中盤以降警戒色の昆虫みたいな色合いのキャラというかエフェクトが増えて
非常に目が疲れるアニメーションだったのは
ちょっとマイナスポイントでした

音楽は全体的に悪くないですが
作品の雰囲気に合ってるか?
というのが若干微妙な気がしなくもないです

作品全体としては全てが完璧とは言い難いですが
緻密なSF考証とあっと驚く展開が売りの野崎まど作品が
アニメ作品として十分に魅力的なものにできることが証明された
ということが非常にうれしいですね
今後もきっと素晴らしいSFアニメとトンデモ落ちの怪作を作ってくれるだろうと期待しています

ちなみにスピンオフのANOTHERWORLD
というWebアニメ(全3話)が
HPで有料公開されており
ひかりTVかdTVに加入で観れるようです
dTVじゃなくてdアニメにしてくれよ!
といいたいところですが
逆にdTVの無料お試しに温存の価値はあまり感じないのであれば
無料お試し期間を使って観るのもありかもしれません
ただし視聴可能期間が結構短いので注意してください

おまけ(SF考証)ネタバレあり
{netabare}
今回の作品のもとになったネタは一昔前に少し流行った哲学論争
野崎まどは頻繁にこの手のものをネタに作品を書いています

「猿がタイプライターの鍵盤をランダムに叩きつづければ
いつかはウィリアム・シェイクスピアの作品を打ち出す」
という無限の猿理論をモチーフに
AIによる小説作成に切り込んでいった
「小説家の作り方」
なんかは元ネタがわかりやすいですねw

さて本作の主人公である堅書直実は
量子コンピュータによって過去の京都を再現した
シミュレーターの中のデータです
そしてその外から来た「先生」によって
自分が仮想世界の中のデータであることを知らされ
クラスメイトの一行瑠璃を救うために共闘します
そしてその「先生」のいた世界もまたシミュレーターで
シミュレーターを使って一行さんを助けようしていた「先生」は
シミュレーターを使って一行さんに助けられる側だった
というオチで終わりました

このシミュレーテッド・リアリティの中のシミュレーテッドリアリティ
という発想はシミュレーション仮説を意識してると考えて間違いないでしょう
シミュレーション仮説は哲学者ニック・ボストロムの提唱した一種の思考実験です

今から何百年後何千年後あるいは何億何兆年後
科学技術が発達していけばいつかは本物と見分けのつかないような
「世界」そのもののシミュレーターを作ることができるようになるのではないか?

そのシミュレーターの中では
人々が自分の世界は現実だと疑わずに生活している
そしてその仮想世界の住人達もいつかは
「世界シミュレーター」を作り出す
シミュレーターの中のシミュレーターもまた世界シミュレーターを作り出し・・・
という具合に無数の「世界」が生み出されていくことになるのではないか?

ここから導き出される結論は次のどちらかです

A人類は世界シミュレーターを生み出せるだけの科学力を手に入れる前に滅亡する

B人類は世界シミュレーターを作り出し、その中に無数の仮想「世界」が作り出される
無数にある仮想「世界」の中にオリジナルの世界はたった一つ
我々の生きている世界がオリジナルである可能性は限りなく低く
我々はほぼ確実にシミュレーターのデータに過ぎない

これは物語の中の話ではありません
今これを読んでいるあなた自身が
シミュレーターのデータである可能性を示唆しているのです

Bが正しい場合
私たちの世界がシミュレーターであるはずがないと信じるのは
きわめて分の悪い賭けであり
自分たちがオリジナルである根拠はまったくありません

Aが正しい場合
実はこれですら自分たちがシミュレーションデータでないことが確約されるかというと
そうとも言い切れない部分があります

例えばこの宇宙が宇宙の外にいる人知を超越した何かが作り出したシミュレーターであるという可能性
そしてその発想を膨らませて作られた作品が「正解するカド」だった
と考えるといろいろ納得がいくのではないでしょうか?

あるいはちょうどこの話が流行った頃に作られた映画「マトリックス」では
コンピューターの反乱によって人類は眠らされ
仮想世界の中で偽りの人生を送っていた主人公ネオが
外の世界からのメッセージを受信し
自分が仮想世界の中にいることに気が付き目覚めるところから始まります

人類以外の存在が仮想世界を作り出し
その中に人類が生きているという構造は
仮想世界の中の人類が世界シミュレーターを作れなくとも
そこが仮想世界である可能性は否定できないという反証になります

さて実際のところ我々のいる世界はシミュレーターなのでしょうか?
シミュレーターという概念自体はとても現代的ですが
似たようなことを考えた哲学者は古代にもいました

今からおよそ2000年前荘子は次のように残しています

以前のこと、わたし荘周は夢の中で胡蝶となった。
喜々として胡蝶になりきっていた。
自分でも楽しくて心ゆくばかりにひらひらと舞っていた。
荘周であることは全く念頭になかった。
はっと目が覚めると、これはしたり、荘周ではないか。
ところで、荘周である私が夢の中で胡蝶となったのか、
自分は実は胡蝶であって、いま夢を見て荘周となっているのか、
いずれが本当か私にはわからない。
荘周と胡蝶とには確かに、形の上では区別があるはずだ。
しかし主体としての自分には変わりは無く、これが物の変化というものである。

シミュレーション仮説は
自分は現実の人間だ!シミュレーターのデータであるはずがない!
という先入観から来る根拠のない思い込みを打ち砕くものですが
この考え方が議論を呼んだ背景には
自分がただのデータに過ぎないという可能性に
本能的に抵抗感を抱く人が多かったことがあげられます

シミュレーション仮説に強く抵抗する人は
もしも自分がただのシミュレーションデータに過ぎないならば
そんな偽りの人生に価値はないと考えるようです

しかし、映画マトリックスでネオと一緒に仮想世界から目覚めた男は
人類がすでに滅亡しかけているという事実を知らされ
「こんなことなら起こさないでくれればよかった」
と嘆きます

「先生」に直実は自分がシミュレーターのデータであると知らされますが
それをほとんど驚くこともなく受け入れています
これは彼がSF好きであるということから
「先生」に出会う前に既にシミュレーション仮説に触れたことがあり
自分自身がデータである可能性を自分なりに消化していたのでしょう

荘子もまた自分が本当は蝶であり
今ちょうど人になる夢を見ているのかもしれない
という可能性を否定しませんでした
あるがままを無為自然に受け入れるというのは
荘子の思想の中心となる考え方です

もしかしたら我々の住む世界は本当にシミュレーターのデータなのかもしれません
しかし、直実やネオのように外の世界の干渉を受ける可能性はほぼ0で
ここが現実世界なのかシミュレーターの中なのか
一生わからないまま生を終えることになるでしょう

たとえこの世界がシミュレーションだったとしても
その世界から出ないで生きていく限り
現実であろうとシミュレーションであろうと
何一つ変わりはないわけです
荘子の言葉を借りれば
主体としての自分に変わりはないのです

となれば本当に大切なのはこの世界がシミュレーターなのかどうかではなく
そこで幸せに生きているかどうかではないでしょうか?
{/netabare}

投稿 : 2024/12/28
♥ : 15

74.7 3 未来で恋愛なアニメランキング3位
アイの歌声を聴かせて(アニメ映画)

2021年10月1日
★★★★☆ 3.9 (118)
385人が棚に入れました
長編オリジナルアニメーション映画『アイの歌声を聴かせて』

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

幸せを呼び寄せる歌声

愉快に笑いながらも、とても感動する物語です。
見終わった後、しばらく席を立ちたくないほど、感動の余韻が沸き起こります。
もしかして、2021年で一番感動したアニメかもしれません。
それほど私のツボに、はまってました。


主人公は天野サトミ。
彼女は以前、上級生の屋上での喫煙を先生に報告したことがきっかけで、教室内で少し浮いた存在でした。
そして彼女の母は、AIロボット・シオンの製作リーダです。
そのシオンが、サトミのいる高校に転入してくるのです。

シオンは美人で明るいAIです。
但しシオンは、いつも変なことをしでかします。ポンコツAIのようです。
転入初日の自己紹介の際に、いきなりサトミに「今、幸せ?」と尋ねたり、教室で歌を歌ったり…、
周りの人たちが驚くようなことばかりです。

でも、それはサトミを幸せにするためにシオンなりに考えてやったこと。
なぜかシオンは、いつもサトミの幸せを願っています。

そしてシオンが変なことをして歌を歌うたびに、
少しずつ幸せになる人が増えてきます。
そして、サトミのまわりには親しい友達が増えてきます。それはシオンのおかげ。

しかし、あることが起こり、物語は急展開します。
そして、シオンがサトミの幸せを願う理由が明らかになります。
それは、とてもとても心温まる理由でした。

土屋太鳳さんが、シオンの声優をされています。
そしてシオンの歌声も土屋太鳳さんの熱唱です。迫力ある美しい歌でした。

最後はハッピーエンドとなりますので、ぜひ劇場へ足を運んでください。
「見てよかった」と、きっと思いますよ。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 30
ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

幸せ

かなり楽しみにしていたアニメ映画です。
私はこの作品を知りませんが、Sunny boyだったかな?
アニメを見終わって必ずCMが流れてて、AIとか歌とか私の好きな題材のキーポイントが多くて凄く期待したってのが、この作品を見ようと決めたポイントです!

さて、物語は試験中のポンコツAIのシオンが転校してきてから始まります。
5日間の短く長い物語の始まり。

1日目

AIと言えば完璧なイメージがありますが何故AIの彼女はポンコツなのか……

1つは極秘実験なのに力加減を一切しない。

{netabare} プールに潜れば永遠に水面に上がらないし、片手でバスケットボールを受け止めて片手で凄い力とスピードで投げ返したり、完全に自分の正体を隠そうとしなかったりw{/netabare}

2つ目は転校初日にシオンはミサトに「幸せ?」と聞く。
彼女はAIで「幸せ」とは何か解らないけど幸せ?と聞いてくる。
彼女には幸せはわからず、自分で調べた幸せを実行していく。
ミサトに幸せになって貰いたくて。

{netabare} 友達を作らせようとしたり、AIロボを暴走させピンチになれば白馬の王子様が登場すると思い暴走する様にAIにお願いしたりw
王子様を確認しようと、人気の男子ごっちゃんにキスをしようとしてみたりw {/netabare}

実は実験の責任者はサトミの母なので密かに行われた実験でシオンがAIだとバレてはダメなのですが……

{netabare} 初日でバレた……4人のクラスメイトの目の前で、間違えて緊急停止ボタンを押してしまい……お腹から何か飛び出して…… {/netabare}

ミサトは母がどれだけAIに力を入れてきたか知っているから、密かに知ったこの実験を成功させてあげたくて……
そうして、5人の秘密がはじまる。

2日目

ごっちゃんとアヤのすれ違い。
2人は恋人同士なのですが、いつしかすれ違っていた。
この理由がまた学生らしくて、あるよなぁ〜ってなりますww
思春期だから悩みも不安も沢山ある、相手の何でもない言葉や態度に不安になり、どうすればいいのか解らなくなる……

でも。
{netabare} シオンの「ごっちゃんはアヤの者じゃないよ」って言葉で、アヤもやっと自分の気持ちに勇気を振り絞る事が出来た。
「もっと素敵な人がいる」失恋した人にはNGな事をシオンが言っちゃたりもしてたけどw
シオンのおかげで2人は仲直りが出来た{/netabare}


3日目

サンダーの試合の話
試合本番に弱くて負けてばかりのサンダー
{netabare} でも、シオンが練習に付き合ってくれてw
AIでも女の子の素体だからかサンダーは練習しにくそうでww
それに比べて本番は男子相手だからやりやすかったのか初勝利を決める事になりました。{/netabare}


4日目

サンダーの初勝利パーティーとし学校を抜け出す6人
しかし、このパーティーが結果的に……

シオンは新しい幸せの形を見つける。
{netabare} 誰かの幸せは誰かを幸せにする。
シオンが気付いたのです。
トウマがミサトが好きで、ミサトもまたトウマが好きだと言う事実を。
そこで、ミサトを幸せにする為に告白の舞台がまた素敵なのです!

ソーラーパネルの向きを変えて月や夜空を反射させた地面に光のイルミネーションに空に打ち上がる花火にシオンの応援ソング{/netabare}
告白の舞台としては最高です⸜(๑⃙⃘'ᗜ'๑⃙⃘)⸝

そんな告白の最中、シオンを初め全員捉えられてしまう。
{netabare} それはシオンの制作会社の星間エレクトロニクスの大人達だった。
いきなりアンカーみたいなのを撃ち込まれて残酷なシーンでした(*꒪꒫꒪) {/netabare}

5日目

{netabare} シオンは自分の実験結果を改ざんしていたものを送っていたのでした。{/netabare}

彼女にとって実験なんて関係なくてミサトに幸せになってもらいたくて勝手に考え行動した。

{netabare} 確かに、AIが自立して何かを起こすとエラーやバグとして処理されるし、AIが映画みたいに反逆行為を起こして人間を襲うかもしれない。
そうなると取り返しがつかなくかる……だから、処分される結果になる。{/netabare}
危険を考えたらそれは仕方ないかもしれない…………って思うけど……

それは違うって思います。
{netabare} 大人達からみたらAIが自分達の監視外で動いていた。
結果だけみたら怖いですよね。

でも、ミサト達からみたらシオンは沢山の幸せを教えてくれたAIなんです!
すれ違いの恋心を修復してくれたり、初勝利出来る様に練習に付き合ってくれたり、幸せになって欲しい女の子に告白される舞台を整えたりシオンは幸せになって欲しいって気持ちだけなんです! {/netabare}

確かに彼女は間違えた事もありました。
{netabare} ロボの三太夫を暴走させたりもありましたが、あれだって誰も傷付けてないし止めようと組み合ったサンダーも怪我はしてません。{/netabare}

だから、きっと彼女はその辺も解っていた。

彼女達の中でシオンはAIではなく友達なんです!

シオンの本当の正体には涙がボロボロでました。
シオンの試験内容に「誰かを幸せにする」なんて課題もなければ、何故、ミサトと母の1日が始まる前の掛け声を知っていたりした秘密も明かされましたし、シオンが昔からミサトを知っていた様なセリフがありましたが、それも明かされました。

シオンのミサトが大好きな気持ちに私は映画館でボロボロ涙が出てきて鼻水まで出そうになるし、鼻をジュルジュル言わせたら隣の人に「コイツ泣いてんな〜」って思われそうだったので、我慢しました‪(͒ ⸝⸝•̥𖥦•̥⸝⸝)‬
それほどにシオンのミサトへの想いや気持ちの強さが心にグッときました。

シオンの正体を知ったミサト達は……

{netabare} 敵陣本社に乗り込みます!
そこで、寝たきりのシオンに再開する。
必至に呼び掛け目覚めるシオンに呼び掛けると目を覚ました。

でも、大人達にバレてしまいシオンを逃がそうと友達達も時間を稼ぐ為に頑張ってくれたけど……シオンもバッテリーが少なくて稼働時間も時間の問題。
最後の力を振り絞り他のAI達に協力して大人達の足止めしてもらう。

会社を封鎖された中でシオンを逃がす彼らの作成それは……シオンはAIだから器は必要ない。
シオンの心を別の場所に逃がす為に屋上へと出る……
シオンとはもう触れ合う事は出来ないけど……

彼女を宇宙空間の衛生へと移す作業が始まる。{/netabare}

シオンは嬉し涙は知らなくて、最後も嬉し涙を流すミサトの涙の意味はわからなかった。

だって、悲しいから涙がでるって認識なんだもん‪(͒ ⸝⸝•̥𖥦•̥⸝⸝)‬
{netabare} それでも、ミサトは笑顔で笑って感謝を告げる。
そして、ミサトと過した5日間を思い返したシオンも最初の頃とは違い「幸せの意味が解らない」と言っていたけど最後は「私は幸せだったんだね」って幸せの意味を知ることが出来た。{/netabare}

シオンは沢山の幸せを皆に与えたけど、シオンも知らずのうちに幸せを貰っていた事に気が付いた(⸝⸝⸝´꒳`⸝⸝⸝)

{netabare} シオンの居なくなった学校で彼らは集まって、告白もしたトウマとミサトはまだ少しウダウダしてて、それを衛生からみたシオンが2人に声を掛ける。
彼女は、ずっと見守ってくれるのでしょうね。{/netabare}

さて、最後の三太夫の顔に貼られて居た物が凄かったですねw
劇場では笑いが漏れてたけど私は感極まって涙を拭うのが必死でしたw

サンダーは愛は重いなぁ〜
愛を拗らせるタイプですねww
{netabare}一応、サンダーの告白が成功してたけど柔道の練習相手としてOK貰えたなんて思ってないんだろなぁww

でも、サンダーの恋の形って素敵だと思います。
恋って誰が誰を好きになってもいいものだし例え相手がAIでも好きって気持ちに代わりはないと思いますし、それを否定する事は誰にも出来なくて否定しちゃダメだと思うからです。
だから、サンダーの片思いって面白いなぁ〜って思います。{/netabare}
恋の形って人の数あって全然違う形をしてる気がしますꉂ(ˊᗜˋ*)ヶラヶラ

全体的な感想としては……

物語に無駄がなくテンポも凄く良かったと思います。
歌も演出が少しミュージカル風な感じで、普通に飽きることなく楽しめました。
凄く面白い作品ですし時間ある人は是非見てもらいたい作品です(ˊo̴̶̷̤ ̫ o̴̶̷̤ˋ)

投稿 : 2024/12/28
♥ : 21
ネタバレ

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

あの素晴らしい「愛」をもう一度

2021年11月16日記載

まずは最初に、僕が予告編を初めて観た時、端的に思い浮かんだ印象を、此処に述べておくと致しましょう。

『ポンコツAIと苦労人少女の百合アニメ』

正直『そういうジャンル』に全く興味が湧かない僕としては「別に観なくてもいいかなあ……?」程度の印象に留めて、思考を終わらせてしまっていました。
しかし、その認識自体が実はとんでもない錯誤であるのに気付いた上映時の事。
そんな程度の低いイチャイチャ次元物語では全然無かった事を痛感してからは、思わず当時の自身を殴りたくなった次第。そんな自分が本作に満足出来たのは、最早言うまでもありません。

この映画はミュージカル映画です。しかしそこらの有名作品よりも「歌う理由」と言うのがしっかり物語の中で構築されており、突然出てきた歌唄いAIの登場に周囲のキャラクターが戸惑う序盤から、段々移ろっていく心境の変移がとても滑らかで堪りません。
また、この物語は受け取る側の志向によって、どんな印象にも移り変わります。
色々な見方を与えてくれると言うのは、ただそれだけで価値を齎す『傑作』の特徴ですが、本作はその盤上に見事乗っかっていた次第。ある人は素晴らしい青春SF群像劇と思うだろうし、ある人は恐ろしいSFホラーだと思うかもしれない。これはAIに触れていく過程を、登場人物と共に追体験していく展開であれば当然の事象でしょうが、ただ1つ揺るがないのは「サトミはこれで救われた」と言う事です。不変の想いが形を変えて、最高に素晴らしき友情と純愛を齎した……この物語はそれで充分『幸せな終わり』なんだと、僕は強く思っています。


{netabare}
さて、僕は本作を『[AI]と[I]と[愛]が見事に上手く絡み合った、友情と純愛のロマンティックSF群像劇』と解釈した次第。
ええ、これは最高の友情映画であり、最高の純愛映画なんですよ。「AI」が物語に絡んでくる中で「愛」の形を知っていき、それぞれが「I」を込めて歌う事で、自らの想いを届けていく。その過程が確かな『幸せ』となりて息衝いていく様を、見事な展開で魅せ付けられました。
その心は、決して後悔しない為。好きだと思える大切な人に、大事な想いを吐露する行為。
その素直さを教えられたのはシオンの起こした行動が全てであり。そんな彼女が教えられた行動経緯の起因には、本作の最重要人物、トウマがいます。
少年の頃から抱いていた、たった1人の少女に対する彼の願いが。今でも心の中では思いつつ、形に出せなかった無垢なる想いが。シオンと言う体現者に「愛の形」を託した上で、その不変を色濃く示した訳で。
それはシオン本来の「疑問」でありつつ、トウマ本来の「願い」でもあり。その軌跡全てが「サトミを幸せにした」んです。トウマの為に独りぼっちとなったサトミを「もう1度幸せにした」んですよ。


この『AI』を通した関係の中で紡がれる『人間の想い』の両立が余りに綺麗で眩しくて、どうしようもなく愛おしくて。どうにも胸がいっぱいになって、抑え切れなくなってしまいました。
ただ正直な所、シオンに明確な自立精神があったかどうか。命令に囚われないで得た心があったかどうか。作中では堅実な確証で以って断言する事は出来ません。
彼女自身がしていた事は、全てトウマの願いに従って起こした従属なのは確かな事。
「シオンは今、幸せ?」と言う疑問に肯定出来たのも「人間を幸せにする」AIの原理に従った結果に過ぎないかもしれません。
しかし、シオンもこれまでの過程で多種多様なそれぞれの『幸せ』と『愛』の形を学習し、記憶し、応用し、確かに関わった時間があります。だからこそ、最後のトウマの台詞が心に強く響くのです。

「シオンにも、心はあったんじゃないかと思うんだ」

そう、結局は「受け取る者次第」
『人間』として『AI』に対する想いとどう接していくか。人間のみが持つその機微が、大切な関係と成り得るのです。
それ故本作は、青少年達の変わり行く心理の行方を描いた友情映画でもあるし、幼少期より抱いてきた想いが見事形を変えて体現した最高の純愛映画でもある。
そしてアンドロイドのシオンが加わった事で、新たな関係で再度彩られた、良質なSF映画と断言出来ます。
だから僕はこの作品が好きなんでしょう。色々な見方を与えてくれて、観る度に気付かなかった発見を魅せてくれる。このアニメ映画が好きなんでしょう。

本作に登場する子供達は、AIとこれから密接に関わっていく事が増えるかもしれない世界の中で、物語が導き出した理想像です。
この『物語』をどのように捉えるかは人それぞれでしょうが、少なくとも僕は本作を観た後、確かな「愛と希望と未来の笑顔」を信じたくなってしまいました。
シオン(AI)と関わった子供達の未来が『幸せ』で溢れますように。
「手を繋ぐ事の出来た」2人の未来が、もっと『幸せ』で溢れますように。
『アイの歌声を聴かせて』はそんな願いを観客にも抱かせてくれる、正しく『愛の物語』でした。
{/netabare}

最高の友情と純愛を魅せ付けてくれた本作に、大きな愛の感謝を込めて。
サンダー、ゴッちゃん、アヤ、シオン、そしてサトミとトウマの皆が大好きです。
この幸福の輪が更に広がっていく事へ『人間』としての願いを込めて。締めの運びと致しましょう。

ああ、最高に幸せだ。


P.S.
本作が気に入った人は、ロバート・F・ヤングの時を越えしロマンSFや山本弘のアンドロイドSF小説『アイの物語』が気に入るでしょう。
特に後者は、吉浦康裕監督も確実に意識していると思いますので、鑑賞前でも鑑賞後でも、読んでみる事を薦めます。リスペクトオマージュ盛り盛りで、中々面白いですよ。


2021年11月18日追記
{netabare}
-----------------------------------------
吉浦康裕
@yoshiura_rikka

#アイの歌声を聴かせて
サトミとトウマのフルネームはそれぞれ、天野悟美(あまのさとみ)、素崎十真(すざきとうま)です。この二人の名前はペアで考えました。どういった意味合いでペアになっているのか、分かった人は相当マニアックです。

午後0:00 · 2021年10月31日·Twitter Web App
-----------------------------------------

ついさっき、この名前の由来に気付きました。裏設定でこんなに感動したのは、久し振りの事だと思います。
素崎十「真」と天野「悟」美。取り敢えず分からない人は、もう1つのアイの物語『わたしは真悟』を読んで下さい。

そうか、シオンは真悟でもあったのか……鳥肌止まらないですよこれは。
{/netabare}

投稿 : 2024/12/28
♥ : 8

66.5 4 未来で恋愛なアニメランキング4位
レッドライン RED LINE(アニメ映画)

2010年10月9日
★★★★☆ 3.9 (154)
658人が棚に入れました
エアカーが四輪に取って代わる遠い未来、“宇宙最速”の座を賭けた5年に一度の祭典、REDLINEの幕が開ける。極限までスピードを追い求める主人公JP。子供の頃から表彰台に立つことを夢見てきたジャンクショップの娘ソノシー。そして戦車さながらの武装改造を行う個性豊かなライバルたち。そんなレーサー達の前に、無断で開催地にされた軍事国家ロボワールドが武力行使もいとわぬ姿勢で立ちはだかる。ルール無用のデッドヒートが展開する中、天才メカニックにして親友のフリズビーがチューンした愛車を加速させるJP!果たしてREDLINEを制するのは誰なのか!?

まりんこ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

白い紙+鉛筆 の 威力 !

白い紙+鉛筆×クリエイター=無限の創造性って事が再認識出来たなあ、と思います。
単純にアニメーションという技法で見るだけでもすごいので、好きな方はご覧になって損はないと思います。
ドラマを求めている方には、あまりお勧めしません。

▼ストーリー / 3.5
ものすごーく長いストーリーの中の、ラストだけを映像化したというのは納得です。複数回見たのですが、設定やストーリーなどをきちんと拾える構成にはなっているし、演出もなされていますが、ストーリーだけで見るなら駆け足感はちょっと否めず。
アニメやSF、もっと言えば映画を見慣れていない人は、もしかすると置いてかれちゃうかも知れません。
初回鑑賞でちょっとひっかかるダイアログもあったので、3.5。全体的にはよく出来ていると思いますが、人物説明などはどっちかというと絵の勝利な気もするかな?

▼作画の評価 / 5.0
これは待ったなし、5つ星で。
制作期間を考えると当たり前なのかもだけど、作画崩れを心配するとかっていうレベルではないです。
劇場のあんまり前の方だとキツイかなあ?
よく動くし、色彩も印象的です。
人物の動きなども、デフォルメを上手く使っていきながら、キャラクターも映し出しています。もちろん表情も描いているわけだから、”絵”が映画の課題のほぼ全てを解決していくという意味で、すごい作品だと思います。

▼声優の評価 / 4.0
役者さんたちの「声優」としての実力は、それぞれなんだとしても…
よくキャスティングされているな、というカンジです。声優にこだわらず、人物のイメージに一番近い人を、それでいて話題作りにもなる人をアサインしていったんだなあ、と。
個人的に、お一人だけ、声の仕事はテクニック的にキツかろう!と思ったので、ちょっと点数下げました。

▼音楽 / 5.0
こう考えるとPVみたいな映画でもあります。
海外の映画監督は、PV出身の人で、音楽と画をビタッ!と合わせて演出するのが得意な人が多いですが、REDLINEもそういう意味で気持ちいい作品です。狙って合わせてる。通常だと作画が先だと思うのですが、音楽制作とどうやって並行してたんだろう?

▼キャラの評価 / 4.0
エッジが立っているキャラクターばかり。
画+キャストで、”イメージ”から人物がうわーっと伝わってきます。先述しましたが、動きにも性格が出ていますし。
ただ、あまりバックグラウンドなどを紹介している時間がないので、深く掘り下げて同一化して…という余裕はなかったかな。
視点の問題で、JPにはちょっと深入り出来…ないこともなかった、と思います。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 13
ネタバレ

アイコン さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

車のスピードが速くなると人の手は伸びるらしい

マッドハウス製作のオリジナルアニメ。
と言っても、どこかからかき集めたような
設定やストーリー展開なので
目新しいものが見たい方には物足りないかも。

これ、オマージュが多いようで。
自分は全然分からなかったのですが、
どこかにいたようなキャラは
作中で時々見かけました。
分かりやすいやつだと、
千と千尋のかまじぃとか?
なので、アニメが好きな人には
そういったネタに笑えるかなと
思いますが、自分は全然分からなかった(笑)
もっと勉強します。

ギャグが面白いです。
オマージュネタが分からなくても、
キャラがかなり個性的な人ばかりなので
皆バカで笑えると思います。
ネーミングもなかなかいい。
ゴリライダーとか(笑)

内容は、なんでもありのカーレースと
言った感じ。
車にミサイルとか武器を搭載してるわ、
空飛ぶわ土の中潜るわ
水の上を走るわ変形するわ
もうなんでもあり(笑)

主人公はそれが嫌いなようで、
普通の車(トランザム)を改造して
武器などは一切使わず、
ニトロのような加速燃料だけを
搭載して戦います。
このトランザムがかっこいいのなんのって!!
マッスルカーは素敵です。
まぁ、最後大変なお姿になってしまいますが(笑)

設定はありきたりかな?
宇宙規模のレースとともに
色んな陰謀やらなんやらがあって、
そんな中で主人公たちがそんなの
お構い無しに車でドンパチして……みたいな。
取り敢えず、ノリが大事なアニメのようなので
世界観は気にしない方が身のためかなと(笑)
ぶっ飛びすぎてなにも言えません(^^;

なんかこれ見てるとき、「スピードレーサー」って
海外のリメイク映画がすごいちらついた記憶。
すいません、私的なものなので気にしないで(--;)

展開はというと、うーん……って感じ。
個人的には、もっと走ってほしかったかも。

{netabare}なんか変な怪物を登場させたところから
疾走感がかなり減って、なんかどうでもよくなってくる。
怪物の設定いるのかなぁ?{/netabare}

ストーリー性を持たせるのはいいことなんですが、
その割にはラストが急に終わっちゃうんですよね。
尺足りなかったの?みたいに。
もっと後日談みたいなものがほしかったです。
{netabare}でもフライングキスは素敵(笑){/netabare}

演出はというと、これは素晴らしい!
どこにでもありそうな設定を、
独特な色づかいやシュールなギャグ、
そして迫力のすごいレースシーン。
綺麗すぎる作画にぬるぬる動く絵。
アニメらしいアニメだったなと思います。
ラスト、ラストをしっかりしてほしい(^^;
それだけは本当お願いします。
でも、物凄く努力して作られたのだろうなと
言うのが一目見て分かる作品。
この尺でこれだけ詰め込んだのにあまり
ごちゃごちゃしないのも不思議。
CGも作り込まれていて、
特にレーサーインタビューのシーンはヤバイ(笑)

音楽は耳に残るものはなかったものの、
かっこいいものばかり。
スタイリッシュなテクノBGMで、
レースをより熱くしてくれる。

声優は……上手いけれど、
声優さんつかってあげようよと思いました。
浅野さんはあまりあってない気が……。
もっとうまい人がいたのでは?と思います。
キムタクと蒼井さんは結構良かったですよ。

そんな感じですかね。
娯楽作品としては
かなり楽しい作品となっております。
ただ、キャラクターは人によっては
毛嫌いするような容姿なものが多いし、
まさかの桃色の突起物(笑)が
写るシーンがあるので、
家族やらと団らんして
見れる作品ではないかも(^^;
友達と見て楽しむぐらいな感じで。

自分はこの作品、
ちょっと物足りなかったです。
目新しさは別として、
疾走感が期待してたより薄かった。
もっとぶっ飛んだバトルを想像してたので
不完全燃焼なのが残念かなと。
まぁ、期待しすぎてたのも悪いんですけどね(笑)

でも、ラストのゴールラインを切る前の
ぶっ飛んだ駆け引きは必見(笑)

{netabare}車でゴールしなくてもいいんだ(笑){/netabare}

投稿 : 2024/12/28
♥ : 7

おふとん さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

燃え尽きるほどヒート!ニトロ加速命の爽快カーアクション。

『  ずっとずっと未来の話  車が四輪を捨てエアカーに移行する時代に
失われていくその魂にこだわり疾走する  愚か者たちの物語  』 (冒頭より)

2010年公開の劇場作品。普段アニメ観ない層でも問題なく観られる一般向け映画(だと思う)。

アメコミにありがちな世界観とキャラデザイン、どぎつい色使い、気味が悪いほど動く作画、
勢い任せの大雑把なストーリーラインに、見た目超個性的で脳筋揃いのキャラクター達etc・・・
これが国産アニメとは思えないけど、しっかり国産手書きのマッドハウス製作SFカーアクション。

はっきり言ってカーアクションはあまり好きなジャンルではないのですが、スタイリッシュなBGMと、
なんでもありの無茶苦茶なレース展開だけでえらい楽しめましたし、ジブリ系やルパン・AKIRA等
のオマージュが作風に妙にマッチしていて、細かいところでも笑かしてもらいました。

カーレースと言っても頭文字Dみたいなのと違ってドラテクや駆け引きなど関係なし、ミサイルや
実弾で相手を妨害しつつニトロ加速に命を掛けるだけ。 作品を覆う空気は「馬鹿」の一言。
真面目(?)に走ってるのは主人公のJPぐらいで、あとはマシンがロボットに変形したり、ホバー走行したりと、どの辺が「失われていく四輪の魂」にこだわってるのかさっぱりわからない(笑)
正直レースの体を成していない部分もあるので、「馬鹿のお祭り」と思って観てれば間違いないかと。

キャラ・ストーリー・レース、みなお馬鹿だけど、ノリだけで楽しめるハリウッド的な軽快さ&軽薄さと
クラブ系のBGMでグイグイ押してくるのが本作の特徴かな。
それとかなりストレートな恋愛も描いていて、終盤にかけてレースと共に盛り上がっていく・・・
要するにテンション上がっちゃうので、1人で観るよりは彼氏彼女と観た方がもいいかも。
(当然好みには個人差があるので保証はいたしかねます。)
単純ながら所謂デートMOVIEとしての機能も備えた作品だと思うんですよねコレ。
ED曲なんか「いかにも」って感じだし、キムタクと蒼井優のCV起用はその辺も考慮に入れてそう。

見所は冒頭タイトルコール前12分で描かれる予選「YELLOWLINE」(本選がタイトルのREDLINE)。
最近はCG技術の発達でSFを中心に実写の表現力が上がってますけど、「これを実写でできるもん
ならやってみやがれ!」と言わんばかりにアニメならではの表現力ってのをみせつけてくれました。
SF要素以外にも、キャラのオーバーアクション、カメラワーク、もう笑っちゃうほどアニメやってます。 

ニトロ加速時のパースというか歪みを効かせたマシン描写やデタラメな挙動は手書きだから可能なも
ので、CGで描いたマシンじゃ多分無理。背景画の動きだけに頼らず、手書きの利点を最大限に活用、
更にキャラの表情からマシンを構成する部品の揺れまで、ありとあらゆるものを「スピード」の一点に
集約して表現してます。 なるほど、こりゃ痺れるほどの爽快感。

本当は本選「REDLINE」のファイナルストレート勝負でもこういう演出観たかったのですが、
こちらはスピード感よりも「デートMOVIE」らしい、どことなく扇情的な描写を意識した演出。
これはレースだけでなく恋愛も描いている作品の性格上致し方なし、納得です。 
こういうのは終盤煽っとかないと、ね(*´∀`*)


なんでもあり設定の荒唐無稽さを、血圧ブーストしないで笑い飛ばせるなら、かなり楽しめる作品。
演出と音楽、或いはノリとテンポが良ければストーリ―は気にしないでアニメ観る方にはお薦め。
大画面且つ近所から苦情来るぐらいの大音量で視聴するのが吉。

逆に言えば、ストーリー重視の方にはただカオスなだけで、一々癪に障る糞アニメかもしれません。
ちなみに私にはこの作品のセンスというか馬鹿っぽさがどストライク。観てる間ニヤニヤが止まらな
かったので、レンタル視聴後すぐにBDとサントラ購入させていただきました。


以下余談

何かこの作品既視感あると思ってたら原作・脚本・キャラ原案が石井克人。
実写映画『鮫肌男と桃尻女』(99年)や『PARTY7』(00年)の監督・脚本やってた人で、
あのチープでお馬鹿だけど妙にスタイリッシュな作風が印象的だったの覚えてます。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 7
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