空知 さんの感想・評価
4.4
人命救助という仕事の難しさや苦悩を垣間見ることのできる秀作
放送当時、居住地では視聴することができなかったのですが、最近再放送があったので視聴しました。
非常に素晴らしい作品でした。
2話目からグイグイと引き込まれてしまい、全13話を3日間で一気に観てしまうほどでした。(放送当時は12話だったそうですが、レンタルなどでは未放送分も含めて全13話となっています。)
{netabare}
航空自衛隊による人命救助の作品です。正確に言うと、航空自衛隊航空救難団と言うそうです。
人名救助の作品と言えば、例えば映画「海猿」が有名です。「海猿」では実際にはあり得ない救助を行なっており、ドラマティックな脚色をし鑑賞者をハラハラさせます。
しかし、本作はあくまでもリアルに人名救助のプロ達を描いています。
餅は餅屋とは良く言ったものです。
プロフェッショナルとは何かを考えさせてくれる作品です。
救助のプロは、二次災害を避けることを第一とします。
自分の命を危険にさらして他者の命を救おうとすることは、傍目には立派に見えるでしょうが、二次災害が起きると隊員の士気が下がるため、救助のプロはそのような無謀なことはしないのです。
作中では、自衛隊員が亡くなる場面も出て来ており、その家族の悲しみも描いています。常に、死と隣り合わせの仕事ですから、家族は常に緊張しているはずです。
本作は航空自衛隊の協力を得て制作されており、内容はリアリティーに富んでいます。
どちらかというと、ドキュメンタリー的なアニメです。
それでも尚、心を打つ内容でした。
地震や災害時に、自衛隊の方々が私達国民の命を必死に救助する姿は誰でもテレビ等で見たことはあるでしょう。
私自身、自衛隊の方々には災害時にお世話になりましたので、国民の1人として感謝しています。
作中で、テレビで評論家が好き勝手言っている場面が出て来ますが、なかなかにしてマスコミの醜さを表現していました。
数年前に大雨の影響で河川が氾濫して多くの家屋が浸水してしまい、救助を待っているとき、マスコミのヘリコプターが何機も上空を飛んでおり、救助隊のヘリコプターが非常に迷惑したらしいですが、マスコミというのは、逆に邪魔もしてるんです。
そういう場面も本作には実際に出てきており、マスコミ批判がハッキリと打ち出されている点は同感しました。
第6話のOPと第7話のEDが「ひょっこりひょうたん島」の主題歌であったことは、素晴らしい演出。
元々はファイター(戦闘機のパイロット)を目指していた内田が成長する姿は描かれているのですが・・・
第12話で、元ファイターで上司の本郷が、
「自分が空から拒絶されているようで、飛ぶのが少しも楽しくなかった。
ところがあるとき分かった。空が俺を拒絶してるんじゃない。俺のほうが空を拒絶していたんだ。」
と内田に言う場面があります。
そして、本郷は内田に「お前にはまだ分からんだろう」と。
つまり、本作だけでは、主人公の内田には、「空がよみがえっていない」のです。2期があれば良かったのと思います。
この点だけが少し残念です。
{/netabare}
ヒロインが良かったです。
主人公が職業人として成長していく様子と、ヒロインも自分の仕事を通じて成長していく姿を描いた点も良い演出です。
絵に関しては、2006年ということを勘案した上での評価です。
OP『明日をとめないで』が良かったです。
6話OPと7話のED曲、これは素晴らしかった。
これは本当の「お仕事アニメ」。
こんな良い作品を今まで観ていなかったなんてもったいないことをしました。
秀作です。
名作に近い秀作の上です。