戦争で恋愛なアニメ映画ランキング 11

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の戦争で恋愛な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月28日の時点で一番の戦争で恋愛なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

72.0 1 戦争で恋愛なアニメランキング1位
雲のむこう、約束の場所(アニメ映画)

2004年11月20日
★★★★☆ 3.7 (852)
4708人が棚に入れました
日本が津軽海峡を挟んで南北に分割占領された、別の戦後の世界が舞台。
1996年、北海道は「ユニオン」に占領され、「蝦夷」(えぞ)と名前を変えていた。ユニオンは蝦夷に天高くそびえ立つ、謎の「ユニオンの塔」と呼ばれる塔を建設し、その存在はアメリカとユニオンの間に軍事的緊張をもたらしていた。
青森に住む中学3年生の藤沢浩紀と白川拓也は、津軽海峡の向こうにそびえ立つ塔にあこがれ、「ヴェラシーラ(白い翼の意)」と名づけた真っ白な飛行機を自力で組立て、いつかそれに乗って塔まで飛ぶことを夢見ていた。また2人は同級生の沢渡佐由理に恋心を抱いており、飛行機作りに興味を持った彼女にヴェラシーラを見せ、いつの日にか自分たちの作った飛行機で、佐由理を塔まで連れて行くことを約束する。
しかし、突然佐由理は何の連絡も無いまま2人の前から姿を消してしまう。

声優・キャラクター
吉岡秀隆、萩原聖人、南里侑香、石塚運昇、井上和彦、水野理紗

. さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

宇宙も夢を見るのだそうでございます。

本作品は語ります。宇宙も夢を見るのだそうでございます。宇宙の見る夢は様々な可能性を表した別世界。これを並行世界と呼ぶのだそうです。そしてその並行世界を人は無意識の内に夢等の形で見ているのかも知れないと・・・。とてもロマンチックなお話でございますね。


本作品は”新海誠”様の3作目の監督作品でございます。4作目が「秒速5センチメートル」になりますので、1作品前と言う事になります。「秒速5センチメートル」がどなたにでもお勧め出来る作品なのに対し、本作品は残念ながら少々人を選ぶ作品かと思われます。それ故、冒頭にて少しだけお断りをさせていただきたいと存じます。

先ずパッケージ絵の印象に反し、舞台はリアルな現代では無く、仮想世界の物語となっております。但し荒唐無稽なSF世界と言う事ではなく、日本を舞台とした別の世界と言う設定でございます。
ワタクシの物語に対する評価は☆3.5。少々厳しめでございます。これは壮大なストーリーで有るが故に、世界設定に対する説明、登場人物の感情の変化、心情の描写が少々足りていないと感じたからでございます。また全体時間も長すぎました。良い作品ではございますが、中だるみ感を感じてしまった点が大変残念でございます。これら残念な点を見事に克服し、そして”新海誠”様の本当に描きたかった主題を描いた作品が「秒速5センチメートル」では無いかとワタクシは”勝手”に思っております。

ワタクシ個人の意見で大変恐縮ではございますが、この作品における最大の問題点はOPでの回想描写かと思われます。小説に忠実であるが故の描写かと思われますが、正直この描写は小説を読んでいない方には混乱を招く要因でしかございません。よって、これが有る故にエンディングの解釈をあやふやにしてしまう可能性があると思われます。この点、本当に残念でございます。少々辛口な事を申し上げましたが、ワタクシはこの作品が大好きでございます。それ故にこの作品が酷評を受ける機会を少しでも少なくいたしたく、先にお断りをさせていただきました次第でございます。


それでは本題に参りましょう。
2004年の作品でございますが、今でも十分にトップレベルの作画クオリティーを持っております。さすがに次作品である「秒速5センチメートル」には一歩及びませんが、それでも息を呑むほどの突出した背景描写の美しさ。正に芸術の域では無いかと思うほどでございます。
「秒速5センチメートル」でも印象的でしたが、本作でも”駅の描写”、”電車の中の風景描写”、”草原と風の描写”等がとても印象深く、そして幻想的に描かれておりました。又、本作では飛行機が空を舞う描写が特に素敵でした。静寂な空間を滑るように飛ぶ浮遊感・・・。本当にお見事と言うしかございません。美しい風景描写の中で、3人の青年の追い求める夢と揺れ動く心情を背景に見事に重ね合わせ、とてもファンタジックな作品に仕上がっております。音楽も素敵でございますね。要所×2で掛かるBGMは大変作画にマッチしており、雰囲気を盛り上げてくれます。ED曲の『きみのこえ』も大変印象的な曲でございました。


冒頭で宇宙の夢についてお話させていただきましたが、本作では3人の青年達の叶えたい夢と、人が眠りの中で見る夢をかけている様でございます。
主人公の”藤沢 浩紀”様と”ヒロインの”沢渡 佐由理”はお互いが惹かれあい、そしてその思いはいつしか恋心へと変わっていきます。しかし無情にも2人は引き裂かれてしまう。”藤沢 浩紀”様が”沢渡 佐由理”様を思い、心を詰まらせていく描写。正に「秒速5センチメートル」の主人公を彷彿とさせます。

離ればなれになった2人はお互いを眠りの中で夢見続けます。現実世界では逢う事が叶わない2人。でもお互いが探し合い、激しく求め合うことでいつしか2人の夢はシンクロしていくのです・・・。
2人が交わしたあの日の約束。叶えることの出来なかった夢。
主人公は決意をします。一度は破れた夢だけど、一度は果たすことが出来なかった約束だけど。夢を現実にしようと。あの日の約束を叶えようと・・・。


「雲の向こうのあの場所にいこう。あの日交わした約束を果たしにいこう」 物語は大きく動き出します。
どうぞ2人の夢を、2人の恋を・・・応援してあげて下さい。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 20
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

次元を超えた想い

新海誠監督作品。

北海道が「蝦夷」と呼ばれ、他国の領土に属している、史実とは異なる歴史を歩んだ世界。
青森に住む、藤沢浩紀(ふじさわひろき)、白川拓也(しらかわたくや)は「ヴェラシーラ」という飛行機を作り、沢渡佐由理(さわたりさゆり)を、蝦夷にそびえ立つ白い塔に連れて行くという約束をする。


まず惹かれたのは、その雰囲気。
美しい風景描写、補色を利用したライティング、そして、要所要所で入るBGMの組み合わせが、独特の空気感を作り、視聴者をグイッと物語の世界に引き込んでいきます。
「雰囲気に飲まれる」という言葉がぴったりです。

そして90分をフルに使った、ストーリー展開。
史実と異なり、日本は北海道とそれ以外に分断され、軍事的な緊張下の中にあります。
青函トンネルも未完成で、塔に向かうには、軍事的に支配されている空を経由して行くしかありません。
約束当時、中学3年生だった浩紀と拓也は、それがどれだけ難しいことなのかまだ分かっていませんでした。
果たして、彼らは約束を叶えることはできるのか。


テーマは「体の距離と心の距離の違い」。
壮大な世界感の中、小さな想いに焦点が当てられています。
ここで、補色を使った光の「対比」が生きてきます。

「手が届くほどに見えているのに、行くことができないその場所」
{netabare}
物理的には白いユニオンの塔を指していますが、平行宇宙にいる佐由理のことも比喩しています。
肉体はそこにあるのに、次元を隔てて存在する佐由理の心。
{/netabare}
それが「雲のむこう、約束の場所」。

同じ想いを持ち、歩み始めた、浩紀と拓也という2人の人物を出したことで、距離感の違いをうまく表現できています。
{netabare}
浩紀は白い塔=佐由理=約束の象徴から直接目をそらすことで距離を取っていました。
それでも、夢の世界、つまり、平行宇宙では、常に佐由理を探し求めています。
拓也は白い塔=佐由理=約束の象徴を破壊することで、早く気持ちに整理を付けたいと考えています。
お互い別々の方法を選びつつも、想いは同じ。
{/netabare}
2人の想いは奇跡を起こし、約束を果たすことはできるのか。
ラストシーンでは、完全に雰囲気に飲み込まれ、鳥肌が立ちっぱなしでした。

なお、量子力学、平行世界、量子重力論といった科学用語が出てきますので、少し難しく感じるかもしれません。
しかし、キャラクターたちが端的に説明してくれますし、あくまで焦点は心の動きにあります。
深く構えることなく、ムードに任せるままストーリーを追っていけば大丈夫です。
{netabare}
平行世界を「宇宙の見る夢と捉える」この解釈は面白いですね。
そこに取り残された佐由理。
この設定だけでも、何本もシナリオが作れそうです。
{/netabare}
小さな心の距離感を、SFストーリーで描き、強烈な雰囲気で引き込んでくれる作品。

SFはロマンのかたまり。
恋もロマンのかたまり。

新海誠監督作品の中で一番好きなアニメ。
どちらかというとセカイ系に属し、完全な解決や、分かりやすい説明を求める人には向いていませんが、一度は観ていただきたい作品です。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 48

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

青森が舞台の幻想アニメ<全面改訂>

雲の向こうには何がある?
そこは夢の世界?それとも・・・
蝦夷と本州に隔てられた、あまりにも深く大きな溝。
雲の向こうの高い高い塔へ向け・・・

作画に力の入った幻想的な欝アニメです。
現実よりさらに美しい風景。
それはさながら理想郷のよう。
さすが、新海監督の絵は美しい。

内容はとくに面白いわけではありません。
静かな静かな。
そしてすべてが夢のような感覚。
主人公やヒロインのモノローグが心に静かに響きます。

津軽半島北端から仰ぎ見た北海道。
あの夏の穏やかな風景は忘れられない。
ざわざわと懐かしいにおい。
ノスタルジックを感じながらの視聴でした。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 42

91.4 2 戦争で恋愛なアニメランキング2位
劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(アニメ映画)

2020年9月18日
★★★★★ 4.4 (578)
2745人が棚に入れました
――あいしてるってなんですか?かつて自分に愛を教え、与えようとしてくれた、大切な人。会いたくても会えない。永遠に。手を離してしまった、大切な大切なあの人。代筆業に従事する彼女の名は、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。人々に深い、深い傷を負わせた戦争が終結して数年が経った。世界が少しずつ平穏を取り戻し、新しい技術の開発によって生活は変わり、人々が前を向いて進んでいこうとしているとき。ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、大切な人への想いを抱えながら、その人がいない、この世界で生きていこうとしていた。そんなある日、一通の手紙が見つかる……。

声優・キャラクター
石川由依、浪川大輔
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

最後の手紙(2回目感想を追記)

下手な言葉を使うとネタバレしそうなので、ポスターのキャッチコピーを一部引用しました^^;

 TV版本編の初放送は2018年で初視聴も同時期でした。。

===劇場版:初見での感想===
 2020年9月19日(土)、劇場版本編を観覧。
 (★舞台挨拶ライブビューイング付き)

全国の劇場で舞台挨拶が見られるとのことで、
予定を繰り上げて、あわてて劇場に行きました。

でも、TV版本編を少しでも復習してから、行くべきでした。。
2年の月日は自分にはちょっと長かった。。
ヴァイオレットへの愛情は忘れようがない。
そんな変な自信を持っていましたが、いかんせん物語の詳細をとどめておけるほどの記憶力は、現在の自分には持ち合わせていない事を突き付けられました。。トホホ

いよいよ物語の主人公、ヴァイオレット本人のストーリーが幕を開けます・・

■{netabare}
 ヴァイオレットには幸せになってもらわないと・・
 ひょっとして、社長とくっつくのかなぁ・・

なんて思ってたら、

 まさかと思うけど、少佐の兄?

と思ってしまうような展開でした。。

でもその上を行く、まさか・・・
少佐が生きていたとは、ね。
TV版完走時は死んだと思ってたから、
外伝も感動したんだけど。。

途中辺りから、

 え。ひょっとして生きてる?

てな展開。
ぶっちゃけ、ダマされた、という思いもw

いや・・・でも・・
これで、よかった。

思えばTV版を観ている時、実は少佐は生きていたというストーリーを妄想していたんでした。ちょっと忘れてました。
ヴァイオレットが幸せになる道は、それしかないですよね。

でもでも・・
少佐の生存がわかるシーンの感動が薄いせいか、
その分、ラストに至るまで延ばす延ばすw

 なんだよ、少佐・・
 ナニ自虐的になってんだ、そういうキャラ?
 てめ、ヴァイオレットを泣かすんじゃねーw
 身元を引き受けた責任と、
 何より「愛してる」と言った責任、
 男ならキッチリとりやがれw

てな展開は、個人的にはストレス展開でした。
いやわかりますよ。
その後の感動のための前フリだろうってことは。

でも、それならそれなりの想いの爆発に共感したかった。。
少佐が走り出した時って、なんか自分的には動機づけが弱かったんですよね。。
ドア越しにしゃべった時以上の動機が感じられなかったというか。。
だから、ラストの感動シーンも、ちょっとモヤモヤして感情移入しきれなかった。

さすがに、ラストシーンは感動的でした。
ただ、あんな遠い岸からのあんな掠れたような声が聞こえるのか、とか
ヴァイオレットは義手重いはずなのに泳げるの、とか
細かいところが気になって、これまた感動ボルテージ上昇の阻害要因となってしまいました。。トホホ

躊躇なく海に飛び込んだヴァイオレット、男っぽい。
惚れ直しそうw

そんな彼女も、ようやく・・本当にようやく、たどり着いた少佐の胸では・・ただただ・・泣き崩れるしかなく・・


さて・・
ここで触れずにはおけませんね。
ツイッターにも出ています。
舞台挨拶での石立監督の言葉。

 ~{netabare}
  ヴァイオレットが書いた手紙には、
  セリフに出なかった一文がある。
  これが、少佐をヴァイオレットの元に
  駈け出させた。。

  というもの。

  なんでしょうね。。
  気になる。。
  「あいしてる」かな。
  でもそれはドア越しに言ってたような。

  てかこれ、セリフにしてくれれば
  もっともっと感動できただろうに。。
 {/netabare}~

にしても、ポスター、いい絵ですね♪
ネタバレしそうですがw

でも・・

ああ・・完結してしまった><
(ホントはこれをタイトルに書きたかった)

もっと引き延ばして何作か出してくれてから、こういう結末になるんだと思ってました・・
原作はどうなんでしょう・・

未来からヴァイオレットを過去の人物として振り返る作りは、個人的にはあまり好きとは言えず、どうせなら子孫も見せて欲しかったけど・・

エンドロール後の1ショットは、救われました。
これで、よしとしましょう。

過去だからお幸せに、と言えないのはもどかしい。

ならば・・

良かったね、ヴァイオレット。

{/netabare}■

そう、エンドロールは最後まで、観ないとですね♪

ちなみに劇場で配布された、入場者プレゼントは
~{netabare}「ヴァイオレット・エヴァーガーデン if」{/netabare}~でした。

あ、3種類の短編小説ランダム配布って公式に書いてた。。
急いては事を仕損じる。
ゆっくり読もう。。


===劇場版:二回目の感想===

京アニはご存知のとおり寄付金を受け取ってくれません。
感謝の心、支援の心を込めて、再度劇場へ行きました。
TV版を観直した後、今度は目線を変えて。

その目線とは、ヴァイオレットであり、ギルベルト。
初見ではどうしてもホッジンズ社長というか保護者目線になってしまいましたが、この物語は、二人の物語であり、その目線で観るのは必定かと。

~{netabare}
まずは、1期を再視聴したことで1期を思い出させるシーンがとても胸に響きました。手紙が空を舞うシーンとか主要エピソードとか。
特にアンのエピソードは一番涙を堪えるのが大変だったかも。

感激は初見ほどではありませんでしたが、ギルベルトの気持ちが何となく理解できました。
愛するが故、自分はヴァイオレットにふさわしくない、と。
これは初見でもわかってはいましたが、わかって1期を観なおすと、彼はヴァイオレットを預かり戦場に送ったことをとても後悔していて、結果ヴァイオレットの両腕を失わせ、たとえ自分が生き永らえたとしても、自分の愛を貫くことは資格がないと考えても仕方がないかもしれない、と思えました。
彼がヴァイオレットに会えないと言ったのも、会ってしまえばその信念も揺らぎかねないからで、つまりそれだけヴァイオレットを愛しているからに他なりません。

ヴァイオレット目線で観ると・・・
心からの願いが叶えられないと知り、本当に切なくつらい日々を過ごして。
それが会えるかも知れないとわかり、本当にうれしくて。
でもやはり会えないことになり、とても悲しくて。
それでも生きていてくれたことが、やはりうれしくて。
最後に追いかけてきてくれたことが、最高にうれしくて。
この目線で観るのはとても切ない・・・

むしろ、ラブコメ風に・・・
「このまま会えないまま、どっちか結婚して、その後に会うことになってたらどうするのよ!ギルベルトおおおー!!」
と罵ってあげても良かったのにww

でも、やはりこれは二人の愛のストーリー。
これで、良かった・・

最後に、手紙の一文の考察を。
~{netabare}
映画の冒頭では、sincerelyの文字が出ます。
意味は「心から」かと。

また本シリーズは物語の最後にタイトルが出ます。
本劇場版では「あいしてる」。
つまり・・・
『心から 愛しています』
これが、ヴァイオレットからの、愛する人への最後の手紙の、最後の一文だったのではないでしょうか。

振り返ってみると、ヴァイオレットはドア越しでは「愛してる」は言っていません。彼はその事実を知らず、ただ父親のように慕っているものと勘違いしていたのかも知れません。
だから、この一言が、彼をヴァイオレットの元へ駆け出させたのだと、私は思っています。
{/netabare}~

いつか、ネタ明かしがされる事を期待します。


蛇足ではありますが・・
病院で亡くなる男の子のシーン・・
音がデカ過ぎて感情移入の邪魔になる思いでした。
もっと静かな曲か、むしろセリフのみでも良かったかと。
{/netabare}~

はぁ・・切なくて息が詰まりそう。
この劇場版と、1期・Extra・外伝で無限ループに陥りそうです・・

 制作:京都アニメーション
 監督:石立太一
 脚本:吉田玲子

 2020/09/19 閉館直前のMOVIX利府にて初視聴。
 2020/10/05 同じ映画館にて二回目視聴。


■余談
劇場内で完全新作ARIAの予告編が流れてました・・脚本が同じく吉田さんかな?と思ったら・・

 総監督・脚本:佐藤順一
 監督:名取孝浩
 アニメーション制作:J.C.STAFF

ほへ・・
ストレスフリーの世界でホッとしたい・・
違う作品の話ですみません^^;

投稿 : 2024/12/28
♥ : 57

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

上映してくれてありがとう 感動を与えてくれてありがとう

この劇場版は、世界の多くの人たちが待ち望んでいました。
様々な困難にもめげずに、この劇場版を完成された監督、スタッフ、関係者の皆様、ありがとうございます。


この映画は現代と過去の二つで物語が進行します。

現代での物語の主人公は、デイジー・マグノリア。どこかで聞いたことのある名前が含まれていると思いませんか?
そうです。デイジーは、テレビアニメの第十話で登場したあの少女の孫娘。

お婆さんが亡くなった後、デイジーはおばあさんが最も大切にしていた宝物(ひいばあさんからの手紙)を知り、その手紙を代筆したヴァイオレットに興味を持ちます。
ヴァイオレットのことを調べるうちに、デイジーは彼女の不思議な魅力に魅かれていきます。
やがてデイジーはライデンに行き、愛してるを知るようになったヴァイオレットのその後の足跡をたどるのです。

それと同時に、過去の物語が始まります。もちろん主役はヴァイオレットです。
とても感動する内容です。涙が出てきます。
ぜひとも劇場へ足を運んでください。「見て良かった」と、きっと思いますよ。

デイジーの声の役を諸星すみれさんがやってられました。諸星すみれさんは第十話でもあの少女の声の役をされた方です。
それだけで私は感動しました。


科学技術が進歩し、今では電話やEメール、LINEで遠くの人と気軽に話せるようになりました。
でも、心がこもった話を私たちはしているでしょうか? 相手の気持ちに寄り添った話をしているでしょうか?
特にEメールやLINEは気軽に発信できるので、つい相手の心を傷つけたりすることがあります。

手紙は不便だからこそ、時間をかけて相手の心に寄り添う内容を書けるのかもしれません。
そして手紙は、受け取った人が宝物として大切に保存しておくことができます。

もちろん、EメールやLINEも保存が可能ですが、いつの間にか削除されることが多いような気がします。
大切なEメールやLINEは、特別な場所に格納して一生の宝物にしたいですね。


この映画は、本来は2020年1月に公開されるはずでした。
しかし、2019年7月に、不幸な出来事が発生し、多くの社員の方々が亡くなり、京都アニメーションは存続の危機に立たされました。
それでも京都アニメーションの方々の努力と沢山の人たちの支援により、2020年4月を目指して製作が続けられました。
すると今度は新型コロナウィルスの影響で、またしても製作が困難になり、上映が延期となりました。

でも、なんとしてでも完成させるという信念を持ち続けた京都アニメーションさんのたゆまぬ努力により、2020年9月、ようやく上映されることになったのです。

上映してくれてありがとう。感動を与えてくれてありがとう。
これが私の今の気持ちです。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 75
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

心と時代の火傷が癒やされていく……(ドルビーシネマ版・体験談追記)

【ドルビーシネマ版・体験記】

先日、京都MOVIXにてドルビーシネマ版で再鑑賞。
(大河ドラマ史跡探訪の寄り道)

色域の広さ、コントラストの幅を最大化した映像。
128個の音源により実現したサウンドの360°空間移動による臨場感溢れる音響。
が特徴の映像規格。

嵐の後のエカルテ島の朝焼けは、よりグラデーションが美しく、
光源処理も眩しく鮮やかに。
ライデンの夜景と花火は、通常は同じ黒に見える暗闇の中に、
描き分けられた家屋や夜空の明度の違いがハッキリと伝わり、より味わい深く。
紅葉シーズンの京都に匹敵する絶景が巨大スクリーンいっぱいに広がり、
私も景色で泣いているのか、物語で泣いているのか分らない状態にw


鳥や虫の音、床が軋む音も含む多彩な足音。
など環境音も芸が細かい本作ですが、立体音響により一層リアルに。
今回は空気が流れる微かな音までシッカリ聞こえて驚愕しました。

音が繊細なだけじゃなく、単純に音を振動として人体に伝えるパワーも強く、
心臓の奥まで突き動かされるような音響で、
私は終始、心拍のリズムがおかしかったですw

主題歌「WILL」等も生オーケストラ演奏級の大迫力でした♪

何より恐れ入るのが、誤魔化しの効かないこの規格で
むしろ本領を発揮するだけの手間とコストを京アニがかけていたという事実。

ひょっとすると本作の映像ソフト化では
Ultra HDブルーレイ版の展開等もあるのかもしれません。

私も音響までは無理でも、再生プレイヤーくらいは検討してみましょうか……。



以下、2020.9.21初回投稿


【物語 4.5点】
シリーズ集大成となる本作。メインシナリオ自体は単純。

だが、このシンプルな愛の話が成就するまで
主人公ヴァイオレットや周囲の人々の揺れ動いて来た心の曲折を、
最後まで丹念に描き切ることで“【不変】で【普遍】の愛の物語”が花開く。

時系列前後、TVアニメ版エピソードの延長線導入など、
脇にトリッキーなプロットも組んで来るが、

彼女とその想いは時代を越えて確かに存在していたこと。
手紙じゃなきゃ伝えられない事もあるが、大切なのは想いを伝える意志。

といった王道を整備、補強する材料として的確にシナリオがチョイスされ機能している。


【作画 5.0点】
元々、心情を気象現象等に投影する背景美術、アニメーション表現を追求してきた本シリーズ。

いよいよヴァイオレットの感情も開花し猛威を振るう本作では、
天候描写等も、何もここまで作画カロリーMAXにしなくても良いのに
という位の極致に到達。


京都アニメーションはさらにえげつなくなって帰って来ました♪


手元の描写に、顔に出さない心情を吐露させる表現も目立った本作。
ヴァイオレットの義手も、序盤でネジを締め直して調節する描写が入り、
来る感情表現に向けて準備万端。

失われた後で補った偽りの手でも、手紙をタイプすることはできるし、
{netabare}指切りやサムズアップ{/netabare}だってできちゃうんです👍


何より成長したヴァイオレットの笑顔が本当に素敵です。


通常の泣きアニメでは、
外部から露骨に泣かせに来る涙腺攻撃だけ警戒していれば良いのですが、
本作の場合は、心情から背景まで一体となった
ハイレベルな表現に琴線を触れられた心の奥底から
溢れ出て来る感情により、涙腺が内部から崩壊させられる感じ。

ふとしたシーンの何気ない風景や表情にすら、グラッと来るから油断できません。
このパターンで涙腺決壊したら、
以降はずっと涙が氾濫しっぱなしになると思われます。

ファンの間ではハンカチより大型タオルの持参が推奨されていますが、
決して大げさではないと思います。
自身の涙腺耐久度等に応じて備えましょう。


【キャラ 4.5点】
すっかり喜怒哀楽が豊かになったヴァイオレット。
「あいしてる」や、ギャグも少しは分るようになった模様。
但しギャグセンスは『ターミネーター2』のT-800(演:シュワちゃん)レベルでしょうか?w
今後の成長を温かく見守りましょう♪

消息が気になる少佐については、{netabare}心を閉ざしてしまった青年として、
兄・ディートフリートとの関係も含めて掘り下げられる。
それにしても本作のディートフリート兄さんは汚名返上して、
さらに高性能なツンデレとして
ハートを全部持って行きそうな勢いを感じますw{/netabare}


人々との出会いがヴァイオレットの感情を育む。
シリーズのキャラ作りの基本線は本作でも踏襲され、
ヴァイオレットの背中に最後の一押し。

今回は新たな依頼主として{netabare}病気療養中の少年・ユリスが登場。
TVアニメ版のアンのエピソードの、死んでも想いが残る手紙という美談に対して、
生きているうちに想いを伝えなくても良いのか?{/netabare}
という反証材料を提供し、物語の洗練に寄与。


戦乱の時代に武器として傷つけ傷付いて来た少女を、
平和になった時代が恋する乙女として再生させた。

本作は世界が「あいしてる」を取り戻す物語でもあるのです。

【声優 4.5点】
ヴァイオレット役の石川 由依さんが感情を振り切った熱演をする傍ら。

ディートフリート役の木内 秀信さん。
それと{netabare} ギルベルト役の浪川 大輔さんに、ユリス役の水橋 かおりさん。{/netabare}
この辺りの男性役が、憎まれ口で本音を包み隠してしまう素直になれない男共を好演。


誰かさんは女の子を持ったら身が持たない。いや男の子も……。
などと愚痴っておりますがw

本作については、男の私から見ても、男の方が断然、面倒臭いですw


【音楽 4.5点】
足音だけで何種類あるんだろう?と感心させられる、
多彩かつ繊細な効果音、環境音は健在。


私は田舎で選択肢がありませんでしたが、
これから鑑賞される方は、音響にはこだわって欲しいと思います。


劇伴はEvan Call氏の続投。吹き荒れる感情の大嵐に寄り添うべく、
ドイツの映画音楽専用スタジオで収録した音源を提供する本気度。

主題歌はTRUE「WILL」こちらも作曲・Evan Call氏。
相変わらず壮大なオーケストラにも押し負けないパワフルなボーカルで、
作品のキーワードを押さえた歌詞を歌い上げる。
「帰ろ~うか♪ 帰~ろうよ♪」帰宅ソングの新定番が誕生♪
TRUEさんは他に{netabare}本シリーズのボーカルアルバムより
「未来のひとへ」がオーケストラVerでED曲に起用。{/netabare}

また、同じく{netabare}茅原 実里さんの「みちしるべ」もEvan Call氏の劇伴と、
歌詞にマッチしたクライマックスシーンと化学反応し輝きを放つ。{/netabare}

投稿 : 2024/12/28
♥ : 61

79.8 3 戦争で恋愛なアニメランキング3位
超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか(アニメ映画)

1984年7月21日
★★★★☆ 4.0 (463)
2104人が棚に入れました
50万周期にわたり大宇宙で抗争を続ける巨人族の二大勢力、男のゼントラーディ軍と女のメルトランディ軍。西暦2009年、その戦火は地球にも及び、ゼントラーディ軍の奇襲をうけた地球統合軍の巨大宇宙戦艦SDF-1マクロスは、脱出時の動力不調から太陽系外周部へ飛び出すこととなる。追撃をうけながら地球への自力帰還をめざす航海の5か月目、土星の衛星タイタン宙域から物語は始まる。地球を離れる際避難した5万8千人の民間人は、広大な艦内に市街地を建設し生活を営んでいた。バルキリー隊パイロット一条輝はアイドル歌手リン・ミンメイや、上官早瀬未沙と近しい関係になっていく。そんなありふれた日常風景が、接触した巨人族たちの規律に思わぬ混乱を招くことになる。

声優・キャラクター
飯島真理、長谷有洋、土井美加、羽佐間道夫、小原乃梨子、神谷明

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

「歌で戦争を終わらせることができる」この主張が素晴らしい

このアニメは劇場版として映画放映されました。

私は個人的に、ガンダムよりもマクロスが好きです。
なんてったってマクロスシリーズでは「歌で戦争を終わらせることができる」この主張が一貫しています。
それが素晴らしい。
「そんなことできるわけがない」と笑いとばす人もいるでしょうし、馬鹿にする人もいるでしょう。
でも、歌で戦争を終わらせることができたら、素晴らしいと思いませんか?

この劇場版はリン・ミンメイの歌が何曲もBGMとして流れてきます。
心が弾む歌や悲しい歌、美しい歌が、物語のシーンとすごくマッチしています。

マクロスを全く見たことがない人は、是非これを最初に見るとよいですよ(^_^)

ちなみに、この劇場版では一人の登場人物であるはずのリン・ミンメイが、本来主役であるはずの一条輝を押しのけて、物語の中心として活躍しています。
それがまたすごいですよ。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 48

harass さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

80年代を代表する劇場版アニメの一つ

ロボットもののメインストリームの一つであるマクロスシリーズだが、TVシリーズのマクロスを今さら見るのはツライところがある。長いし作画も今から見るとそれなりであるし脚本も粗が目立つ。

そこでこの劇場版をおすすめする。
設定などはTVシリーズと異なり、エッセンスは同じでも全く別物で凝縮昇華した傑作に生まれ変わっている。

アクションシーンなどは現在のアニメレベルでも遜色ないだろう。現在のCG全盛のアニメでもだ。

アイドル・ロボットというオタの大好物がてんこ盛りの記念碑的作品はレンタルでも良いから一見の価値あり。
しかし、ラブコメとロボット物を合体させるってアイデアはホントに基地外じみている。今じゃ当然なんだが。

個人的に見所としては、
柿崎の最後、酎ハイミサイル、ケントギルバート、デカルチャー、羽田健太郎の音楽

投稿 : 2024/12/28
♥ : 7

イムラ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

絵はきれいだけど

<2020/5/29 初投稿>
マクロスシリーズの原点となるテレビシリーズアニメ「超時空要塞マクロス」の映画版。
1983年公開

映像は美麗で、当時同時期に公開された宮崎駿監督作品「風の谷のナウシカ」とその品質を競い合っていたという話を聞いたような気も。
テレビシリーズは、数話に1話は作画が崩れ壊れるので
「美麗な映像で観たかった!」
というファンの方にはさぞかし堪らない作品だったしょう。
私も映画館で夢中になった記憶があります。

まず「宇宙空間の暗闇から要塞マクロスがせせり出てくる」オープニングの映像に震撼しました。
キャラクターは全てきれいで、
板野サーカスと呼ばれる戦闘シーンは手書きの極致のようなスピード感とダイナミックさ!

そしてヒロイン、リン・ミンメイの歌う主題歌「愛、覚えていますか」はアニソンとしては当時異例の大ヒット。

ちょっとしたムーブメントを巻き起こしました。


ただ、今思い起こすと物語はどうなんだろう。
テレビシリーズ知らないで映画版だけ見た人は「何が何やら?」となってしまいそう。

初代マクロスはその重厚な世界観や背景の歴史が丁寧に作り込まれている作品。
2時間でそれをわかりやすく伝えることは難しかったようです。
で、結局、テレビシリーズでハマったコアなファン向けになりました。

・・・そうなっちゃうのは仕方ないのかな。
でもライバル?のナウシカは原作を上手く端折って初見でも没入できる作りになってたしなぁ

本作は骨太な部分も多く、
世間の認知度もそこそこ獲得したのですが、
実際に受け入れたのはコアなファン層で、
そのコアな人たちを「オタク」として「そうでない人」と隔離するきっかけの一つになってしまったような印象があります。
その是非はよくわかんないですけどね。

というわけで本作は
・テレビ版「超時空要塞マクロス」観た人が最も楽しめ
・後のマクロスシリーズ観た人もそれなりに楽しめ
・どちらも観てない人にはちょっとお勧めしづらい
という感じになるんでしょうか。

あ、でもハイレベルな手書き映像を楽しみたいという人には強くお勧めできます。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 35

71.8 4 戦争で恋愛なアニメランキング4位
風立ちぬ(アニメ映画)

2013年7月20日
★★★★☆ 3.8 (815)
4290人が棚に入れました
かつて、日本で戦争があった。大正から昭和へ、1920年代の日本は、不景気と貧乏、病気、そして大震災と、まことに生きるのに辛い時代だった。そして、日本は戦争へ突入していった。当時の若者たちは、そんな時代をどう生きたのか?イタリアのカプローニへの時空を超えた尊敬と友情、後に神話と化した零戦の誕生、薄幸の少女菜穂子との出会いと別れ。この映画は、実在の人物、堀越二郎の半生を描く──。堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて。生きねば。

声優・キャラクター
庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

この映画には大正ロマンがある、昭和モダンがある、美しいメカがあって、薄幸の美少女がいて、正義と恋と挑戦と、挫折と人情と幸せに満ちている。そして宮さんは僕の期待を裏切らない

まずネタバレを気にしている方はこのレビューどころか【予告編を観てはいけない】
あれはほとんど全部を端的に晒してしまっていますからね(笑)










そもそもの出発点は宮さんが模型誌に連載させた【妄想爆発気味】の漫画
零戦の設計者として著名な天才設計士、堀越二郎を主人公のモデルとし
さらに薄幸の美少女との恋物語を描いた堀辰雄の同名小説に着想を得ている【完全なフィクション】


だから間違ってはいけないポイントなのがほとんどの部分が宮さんの妄想であり、そもそも里見菜穂子なるヒロインの存在やイタリアのカプローニが堀越二郎に影響を与えたというのも宮さんの壮大な妄想に過ぎません
だからプロジェクトXどころではなく、かわぐちかいじ辺りを読んでるつもりで心して掛からないとついつい「堀越二郎はこーゆー人なんや」と伝記や再現ドラマでも観ているかのような誤解に引き込まれてしまうわけっす
これには気をつけたい


それと具体的な恋愛描写や航空機技術を延々と語るシークエンスがあるため、子供やメカニックトークに全く興味のない人には【残念ながらオススメすることが出来ません】
予めご了承ください


物語は真面目で正義感が強い秀才として育った青年の堀越二郎が、夢の中で出会ったイタリアのカプローニと飛行機設計士になる夢を語らいながら上京、就職し
その後の様々な困難や挫折を経ても一切挫けず、ひた向きに夢へと前進していく半生を映し出します


大学在学中に関東大震災に見舞われ、偶然にも良家のお嬢様を助けたことが縁となってその後に再会した彼女と結ばれる
しかし彼女の体は結核に蝕まれており、周囲の反対を押しのけての婚約や激務に追われながらの新婚生活では宮さん作品らしからぬ濃厚なラブシーンが描かれます
【深窓の令嬢萌え】を描きたがる72歳、それが宮さん


舞台となる1920年代は震災、世界恐慌、貧困、そして戦争という現代の話題と重なる部分も多々見られながらも兎にも角にも生きるのに苦しい時代であると示唆
宮さんなりに「生きろ」や「生きねば」の問い掛けに答えを出しているのかと思いつつ
その一方で主人公の周辺人物達はその時代では一部の富裕層だけに許されていた贅沢を堪能しており、辛い時代とかキャッチコピーを打った割には矛盾している
しかしこの大正ロマンや昭和初期のレトロモダンといった当時で言うところの華やかなで優雅な暮らしが現代のオイラ達のノスタルジーと憧れを奮い起こします
この辺は時代背景こそ異なるものの『コクリコ坂から』の魅力にも通じるものがある


さらに堀越二郎を取り囲む人々の人情味あふれるキャラクター的魅力も忘れてはいけない
特に同期生(であるとされていますが実在人物は無関係)の本庄くんとのライバル関係とも取れる互いを切磋琢磨しあう近過ぎず遠過ぎない距離感の友情
この辺りはバディもの好きな、特にインテリ系男子に殺されがちな方にはヨダレものでしょう(いやw真面目にw)


そして何より堀越の才能をいち早く見抜き、あえて千尋の谷に落とすかのような難題を突き付けつつも、公私に跨って堀越をフォローし続けた堅物の上司、黒川
菜穂子の健気さに心打たれ、愛する二人の仲人となる役を買って出る黒川夫人
この二人を演じる西村雅彦と大竹しのぶの芝居はもはやアカデミー賞ものの味わい
ホントいい人、理想の上司と理想の妻の姿がここにあります


そして宮さんが渾身を込めて送り出す最終兵器【妹キャラ】、堀越加代
「にぃにぃさんはいつもこんなに遅いのですか?」
これはもうオイラの中で流行語大賞
よくやりましたわ、宮さん
そしてあ~、どっかで聞いた覚えのある声やと思い出せんかったがエンドロールで志田未来ちゃんだと気付くと全て納得であります
そぉよ皆々様方、「アリエッティですよ!」
ジブリ作品へのご帰還、オカエリナサイませですよ


メカヲタ、ミリヲタにとっては劇中でgdgdと語られる航空機技術は興奮モノ
たぶん普通の人にとっては今作の最もツマラン部分になることは必至です(笑)
興味深いのが劇中でも「創造的人生は10年」言われている通り、堀越が戦前に試作した七試艦上戦闘機
そしてインバーターガルウイングが美しい九試単座戦闘機のエピソードのみがピックアップされています
だから肝心要の『ゼロ』を初めとする戦中、戦後のエピソードは一切なし
兵器を描いても戦争は描かないってのは『紅の豚』と一緒で、ミリヲタの癖に戦争反対を訴えている宮さんらしいポインツ
実在の堀越氏が兵器としての飛行機に興味が無かったのかは定かでは無い


本来ならばけたたましい轟音を発する航空機エンジンの騒音も、例の人間が口から発する音だけで作ったという効果音のお蔭でだいぶデフォルメ(というかこの場合は美化)されているのもそんなところからなのか


ちなみに劇中に出て来る枕頭鋲(ちんとうびょう)ってのはリベットのこと
あとインバーターガルウイングは見た目がカッコイイからやるんでなくてプロペラを大きくしたり主脚を短くしたりする工夫です
実名企業の三菱が出ていることや当時の三菱のヘボいエンジンを辞めて中島製エンジンを使用するよう打診した実際の堀越氏のエピソードは語られないため、戦前の三菱の技術力(日本のものづくり力)を賛美するかのようなうさん臭いお話っぽくなってしまっていますが、何度も言うように【宮さんの妄想】なので気にしたら負け


しかしまあw結婚式のくだりの辺りからオイラはニヤニヤがまるでとまらんかったw
72歳の偏屈なおじいさんが作った映画の主演を、53歳のこれまた偏屈なおじさんがやって
その映画のラブシーンで2828してしまう26歳のオイラ
さぞ隣の席のお客に迷惑を掛けたことでしょうw
こりゃ「妻には見られたくない」とアンノが言うわけです
2013年夏、【一番萌えられる映画は間違いなくコレ】


個人的には今までのジブリの中で一番好きな作品になるやもしれません
レトロモダンハァハァ的にも、メカヲタ的観点からも
『コクリコ坂から』のレビューにも同じようなことを書いてしまった気がしますがw


唯一悲しい偶然かな、今年のアカデミー賞で短編アニメーション部門を受賞したジョン・カース監督のディズニー作品『紙ひこうき』(シュガーラッシュと併映)と今作の馴れ初めが“丸被り”しているのには笑いましたがねw
興味ある方はこっちも是非チェックしてもらいたい


最後になりましたが劇中に出てくる『シベリア』なる謎のお菓子は羊羹をカステラで挟んだものですね
(発祥、創作者、名称由来など全てが謎でそもそも洋菓子なのか和菓子なのかすら怪しい)
映画の人気で一時的に復刻したお店もいくつか出ましたが・・・日常的に食べたいのでもっと作ってくれ(笑)

投稿 : 2024/12/28
♥ : 40

にゃんぴ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

引退作品、主題歌「ひこうき雲」

最初の雰囲気は「火垂るの墓」と似てる気がする...
そして、ただ淡々と展開していった
主人公の成長を伴って、なんか心がギュっとなった・・・
私の文章力では、ちょっと上手く言えません。
一言では表せませんが、あえて言うなら、
宮崎駿の集大成とも言えるふさわしい引退作品だと思います。

主題歌「ひこうき雲」 作詞・作曲・歌 - 荒井由実  映画の内容とはぴったりで感動で素晴らしい歌です!!
聞いてて泣きそうになる......

投稿 : 2024/12/28
♥ : 91

唯斗 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

素晴らしい、でも残念

賛否両論でるところですが、自分としてはとてもよかった。

今まで、宮崎駿さんは子供向けに映画を作ってきました。
どれも元気や勇気をもらうばかりで、本当に感動したものです。

今回の作品は、あえていうなら「大人向け」

ただし、それでも難しい作品です。

簡単に言えば、感情移入が難しいからだと思います。

主人公は飛行機を作れば、戦争に使われるのもわかっていて。
それでも作る道を選びます。

何千人、何万人という人々がそれで殺されるというのも知っていて。
そういう時代だったのはわかりますが、大きな葛藤もありません。

そして、なによりも薄い。
内容としては濃いのかもしれませんが、薄い薄い薄い。

テーマが重いだけに、その薄さが目立ちます。

関東大震災がおこり、満州事変もおこり、第二次世界大戦もあり

それに生きる主人公を描くわけですが
あまりにも描写が少ない。

この作品は

どんてん返しがあるわけでもなく、興奮するようなところがあるわけでもありません。

淡々と物語が進んでいく感じです。

登場人物の生き方やその個性はとても良いものでした。
どんなことがあってもめげず、夢に走り
自らの生き方を貫くその姿は感動しました。

作画や音楽、演出は劣ることをしらず、進化をしているようにも思えましたね。
これぞジブリって感じ。
細かいところまでしっかりと書かれていた。

ただ、やはり残念ですね。

一人の人間の半生を描くには少し短い時間だったのかもしれない。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 13

83.0 5 戦争で恋愛なアニメランキング5位
この世界の片隅に(アニメ映画)

2016年11月12日
★★★★★ 4.2 (702)
3108人が棚に入れました
18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。

夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。
配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。

ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。
またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。

1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。

声優・キャラクター
のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、牛山茂、新谷真弓、澁谷天外
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

戦時下でも蝉は鳴く

浦野家の長女として生まれ育ったすず。
明るくて純真な心を持つ少女。
特技は絵を描くこと。
昭和19年2月、すず18歳。
少女に縁談の話が訪れる。
相手は呉に住む北條家の長男周作。
海軍の軍港として栄える呉の街での生活が始まる。

こうの史代原作、片渕須直監督作品。
当時の街並みを再現した素朴で美しい情景。
戦時下の日常を生きる人々を描く傑作アニメ。

そこにあるのは規則正しいささやかな暮らし。
戦争という非日常の中にあっても、
すずは工夫をして食事を作り、洗濯し、
衣服を直し、日々をたくましく優しく生きている。
しかし戦局は悪化の一途を辿り、
物資の配給は減り、空襲の回数は増えていく。
そして昭和20年、運命の夏を迎える。
広島に新型爆弾が投下された。

{netabare}焼け野原と化した広島の街並み。
敗戦の玉音放送を聴き胸が詰まるすず。
張りつめていたこれまでが飛び去っていく。
泣き崩れるすずの胸中に想いを馳せる。
みんなが笑って暮らせますように。
この映画を不滅のものとした名場面がここに。{/netabare}

戦争ものは総じて苦手なのですが、
ここには前向きなメッセージがあります。
すずが暮らした70年前の広島でも、
夏にはスイカを食べ、蝉は鳴くのですね。
そんな当たり前に過ごす日々に感謝をして、
懸命に生きた彼女にまた会いたいと思います。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 99
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

微笑ましい日常を多く描くことで戦争の悲惨さを表現した名作

原作未読。

【はじめに】
「太平洋戦争を題材にした作品(映画・ドラマも含めて)の中で、これだけふり幅の効いている作品を見たことが無い」
これが私の第一印象でした。
作画や主人公・すずの人柄など、ノスタルジックでほのぼのとした日常の中に、悲惨な戦争がある・・・。

この作品の素晴らしさは、微笑ましい日常を多く描くことで、戦争の悲惨さを表現している所だと思います。
そして、絶望的な状況の中でも、前を向いて健気に生き抜いている人々(特に女性)の姿が、とても印象的でした。

太平洋戦争を題材にした作品の多くは、戦争の悲惨さを過剰に描いたり、(例えば特攻隊のような)兵士を英雄視して描かれる作品が多い中で、かなり異色な作品だったと思います。

『太平洋戦争を題材にした作品は苦手』という方にも安心してお勧めできる、傑作です。

【物語】
物語のほとんどが主人公・すずの目線で描かれている所が面白いと思った。
働き者でおっとり、少し内向的だけど明るい・・・。
そんなすずの目線で描かれていることこそが、この作品の一番の魅力だと思う。

【作画】
キャラデザを含めて、柔らかく、ノスタルジックな印象。
物語の印象とぴったりマッチしていて、とても良いと思った。

印象的だったのは{netabare}大好きな姪・晴美と大事な右手を失うきっかけとなった{/netabare}、あの空襲の場面。
まるで、水彩画を描くかのように表現されている。
幼いころから絵を描くのが得意だった、すずならではの見事な表現だと思う。
そして、「まるで現実の事とは思えない」すずの心情を上手く表していると思う。

【声優】
主人公・すず役ののん(能年玲奈)さんは、すずの役柄とぴったりだったと思う。
素朴な語り口が、この作品の魅力を最大限に引き出している。

【最後に】
書き出したらきりがないほど印象的な名シーンの多い作品だったと思います。
その内、いくつかを書き出しておきます。

~笑った~
{netabare}憲兵に間諜(スパイ)と疑われたくだりは声を出して笑ってしまった。

妊娠の兆候?➝朝食は2人分➝病院へ➝昼食は1人分。妊娠は気のせいだったんですね。(笑){/netabare}

~切なかった~
{netabare}右手を失ったすずのもとを訪ねた、妹・すみが別れ際に言った一言。
「広島に帰っておいでぇや。ひどい空襲も無いし・・・」
この後の歴史を知る者なら、誰もが切ない思いをするに違いない、地味ながら心に響く名セリフ。

玉音放送の後、人目を避け、泣き崩れた義姉・径子とすず。
誰もが勝利を信じ、色々な事を耐えて、我慢してきて、その結果・・・。
こういう所がとてもリアルで良かった。{/netabare}

投稿 : 2024/12/28
♥ : 94
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

時代と人間を真正面から描き切った傑作アニメ映画

原作コミックは未読。

率直に名作だと思いました。

アニメファンに語り継がれると言うより、
例えば今なお五十年以上前の小津監督作品を名作として語り継いでいるような、
映画通が半世紀後も2010年代の名画として上げるような作品だと思います。
キネ旬一位は伊達じゃありません。

戦前、戦中における庶民の暮らしを中心に、
しっかりとした考証を元に再現された時代背景に、
テンポ良くユーモアも交えて日常を活写し鑑賞者を惹き付ける。
と同時に心理描写と共に巧みに伏線を張っていき、
それらを綺麗にまとめていく際に、
見る者の心の琴線に触れ、価値観を揺さぶっていく……。

本作がクラウドファンディングの成功例となったことは、
アニメ界もとい日本の映画界にとっても非常に大きな出来事だと思います。


以下ネタバレ感想。
{netabare}
本作を観てつくづく思うのは、
昔、数多く作られてきた戦前戦中を舞台にしたドラマ、映画等の諸作品が、
如何に時代や人間を描いて来なかったかということ。

中には見るべき点もある逸品もありましたが……。
特に私が子供の頃、毎年終戦記念日前後に放送されていた
テレビドラマ等は見るに耐えない物が多かったです。
余程、目先の数字が欲しいのか、神風特攻隊をやたらヒロイックに描いてみたり、
旧日本軍が“現地調達”した女をおっぱい丸出しにして陵辱してみたり、
登場人物が駄作ラノベも真っ青の、荒唐無稽なファンタジーぶりで実在感がまるでない。
歴史を重んじる私にとっては論評の価値もない凡作揃いだった印象。

ちなみに本作の原作は2011年に日テレが
終戦スペシャルとしてテレビドラマ化もされたとのこと。
終戦記念日もようやく、人間に興味を示すようになったようで何よりです。


本作は人間が生きた戦前、戦中の時代がしっかりと描かれていて好感できます。

私は戦時中を描いた作品を観る時、
玉音放送をどう描くか?を重要な指標にしていますが、
本作はその点でもスペシャル。

その玉音放送のシーンにて、{netabare}すずさんは敗戦に納得できないとの趣旨の言動を残し、
憤り、号泣するわけですが、
ここまで心理描写の積み重ねを感じてきた鑑賞者にはその涙は、
それが例えば、{netabare}家事をしたり、スケッチを描いて来た利き腕を失い、
自分のせいであの娘を失い、その上、嫁ぎ先で居場所を失う不安だったり……。{/netabare}
諸々の人間的な事情も相まって感極まった故の涙と理解できるはず。

これが凡作戦争ドラマや戦争体験談を自らのイデオロギー流布に役立てたい評論家の場合、
この時代の人々は今と違ってお国のためを思うが故、泣ける愛国者だったのだ。とか、
軍国主義の洗脳って怖いね。とか、
先入観でもって、乱雑に刈り取っていた所。

あのシーンを観た時、私は戦争に社会的単位として総動員されたまま、
戦後もイデオロギー闘争の駒として引き回されたままになっていた、
あの時代の人々の人間的存在がようやく奪還された感慨を覚えました。{/netabare}


だからと言って、本作はちょっと戦地と距離を置きすぎていまいか?
戦争を斜に見すぎていまいか?という見方もあり得ようかと思います。

でも考えてもみて欲しい……。
確かに、日中戦争以来続いた戦乱で、300万以上と言われるおびただしい数の日本人が死んだ。
けど、それでも、戦争で亡くなった人々は7000万以上だった、当時の日本の人口の5%に満たない。

激戦地や大空襲をかい摘まんだ編集イメージを見せられると、
あの時代、何か日本人の大半が亡国の戦火で、悉く死に絶えたものと錯覚しますが、
大多数の日本人はあの苦難の時代を生き抜いたのです。

その苦境は戦争によるものかもしれないし、
嫁ぎ先でのいびりによるものかもしれないし、
女性の自立が難しい風潮によるものかもしれない。

こうして見出された喪失と苦難を耐え抜いた先の幸福の可能性。

それは決して、あの時代を側面から切り崩してこぼれて来たものではなく、
むしろ、真っ正面から時代と人間を描き切った成果ではないかと私は思うのです。{/netabare}


蛇足
{netabare}
ところで本作では、尊氏の好敵手で、戦前戦中、軍神としてやたら高々と持ち上げられていた、
楠木正成公もネタ?として登場しますがw
籠城戦の鬼である正成殿は、乏しい兵糧を水増しする達人として、
少ない配給でやりくりし、生活の知恵を求めるご家庭でも崇拝されていたのですねw

一方、尊氏は南朝びいきの軍国主義に逆賊と貶められ、
ちょっと尊氏を擁護しただけで大臣のクビが飛ぶ有様でしたw
ムキィィィィィーーーーヾ(。`Д´。)ノ彡

国家、国民ぐるみで数百年前に遡って、一方的に特定の武将を持ち上げ、尊氏をディスるw

あんな狭量で失礼千万な時代。ゆめゆめ繰り返そうなどと思ってはなりませぬw{/netabare}

投稿 : 2024/12/28
♥ : 52

72.0 6 戦争で恋愛なアニメランキング6位
千年女優(アニメ映画)

2002年9月14日
★★★★☆ 3.9 (447)
2166人が棚に入れました
芸能界を引退して久しい伝説の大女優・藤原千代子は、自分の所属していた映画会社「銀映」の古い撮影所が老朽化によって取り壊されることについてのインタビューの依頼を承諾し、それまで一切受けなかった取材に30年ぶりに応じた。千代子のファンだった立花源也は、カメラマンの井田恭二と共にインタビュアーとして千代子の家を訪れるが、立花はインタビューの前に千代子に小さな箱を渡す。その中に入っていたのは、古めかしい鍵だった。そして鍵を手に取った千代子は、鍵を見つめながら小声で呟いた。「一番大切なものを開ける鍵…」
少しずつ自分の過去を語りだす千代子。しかし千代子の話が進むにつれて、彼女の半生の記憶と映画の世界が段々と混じりあっていく…。

声優・キャラクター
荘司美代子、小山茉美、折笠富美子、飯塚昭三、津田匠子、鈴置洋孝、京田尚子、徳丸完、片岡富枝、石森達幸、佐藤政道、小野坂昌也、小形満、麻生智久、遊佐浩二、肥後誠、坂口候一、志村知幸、木村亜希子、サエキトモ、野島裕史、浅野るり、大中寛子、園部好德、大黒優美子、山寺宏一、津嘉山正種

shisune さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

だって私…

主人公の藤原千代子の半生をインタビューを通して思い返していく、というお話。
場面の移り変わりがおもしろいんですが、若干混乱しました(最初だけ)。
千代子の一途な恋心がなんとも言えません。

物語のラスト、おもいっきり、監督に突き飛ばされましたね~。
五キロくらい吹っ飛ばされた気がしました。
まさに衝撃のラストです。
最後のシーン、思わず声に出してしまいました(笑。
ものすごい裏切りです。

なんといっても今敏監督。万人におすすめできる良質のアニメーションです。
ほんとに、もっともっと監督のアニメを見たかったです。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 4

お茶 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

千年を納得させる女優の回廊

今敏監督作。

本作は大女優千代子に、取材を行い談笑しながら物語が進まれる。名女優ゆえ、めったに取材に応じないが、何かを開ける鍵を渡すため訪れた取材陣。ただ話はソファーに座りながら、その一女優の出演作を時代と合わせ、女優の年齢の順に流されていく。

本作の面白い所は、何の前触れもなくその映画の世界に入り込ませ、そんな中、取材者2人も同じ世界に入り込み取材を行うという疑似パラレルな展開。それを現代の取材時間(ソファーでの取材)と、疑似パラレルの取材時間(映画の中)を唐突に移り変えて、時間の感覚をずらしてきやがる所。

最初の出演作で女優になる決意をした彼女と同じように、見てる側にも映画(本作)を見る価値ある、風な演出ほどこし、彼女は恋人を探して疑似パラレルの幾つもの世界を渡り歩くことになる。

出てくる疑似パラレルは、関東大震災、満州、戦時中の投獄等々。時代劇からSF風までの彷徨う時の回廊。ここが社会派アニメ的にも魅せられ、深みみたいなものを感じるし、勘ぐって社会派としても見ちゃった回廊。

疑似パラレルの変化を通して様々な役をこなしながら幾つもの物語を魅せてくるし、取材野郎も役者としても噛んでいたりして、一癖あるドキュメンタリーなのか、ロマンティックな恋なのか、社会派アニメなのか、鍵という伏線によるサスペンスなのか、と、いうフェイクらしいものを入れてくる。

「現在の取材による時間」「様々な疑似パラレルによる時間」
「疑似パラレルの中で経過する役と年齢」「演出のフェイクによる感情変化」
そんな側面を持ちながら、一つ芯を通した鍵と恋。だがその芯にも癖演出。

千年を感じさせる為に用意された幾つもの疑似パラレルやメッセージ的フェイクは、重みと不思議な軽さを伴った、心が安堵したような悲しい心地よさに包まれた。私ごときが、ことの顛末まで書くのは野暮ですなこりゃw視聴して頂きたい一作。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 37

もちすい さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

淡くて激しくてしたたかな

とある大女優が自分の人生を“恋心”という部分に焦点を当てて振り返る、という物語。

終始インタビュアー&カメラマンの二人組みとの会話~回想シーンという映像が続くのですが、女優ということで、回想を映画の演技シーンになぞらえて、さらには回想にも二人組が入り込んでくる、という、実験的で、かなり奇抜な映像表現がこの作品の特徴です。

これ、本当に面白い表現だと思うし、この題材とこの表現を組み合わせることを前提にした脚本は完璧すぎるぐらいうまいんですけど、回想と演技のシーンを重ねるということは、どうしても視聴者にとっては感情移入の妨げになると思われます。
回想に入り込んでくる二人組も、説明役、場面転換のアクセント、と効果的な働きもしているのですが、やっぱりこれも感情移入したい人にとってはノイズになってしまいます。

ということで、映像表現としてはとても面白いのですが、同時にあまりの奇抜さに面食らってしまって、全く作品に入り込めない、ということになる可能性もあります。
私の場合は初見がそうで、2回目に観たときにやっと落ち着いて観れました。

あとは感情移入を求める人も注意が必要です。
感情移入できないこともないですが、かなり女性向け、しかも対象年齢高め、と、ものすごく観る人を選ぶ作品です。

とはいえ、今敏さんの作品は、アニメーションという媒体に対してのアプローチがあまりにも個性的で、多くのアニメ作品とは全く違ったベクトルを持っているので、合う合わないは別として、「こういうアニメもあるんだ」と、観ておいて損はないと思いますよー。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 13

63.4 7 戦争で恋愛なアニメランキング7位
とある飛空士への追憶(アニメ映画)

2011年11月1日
★★★★☆ 3.5 (331)
1538人が棚に入れました
たった二つの戦争中の大国しかない世界―――。『空の上では身分は関係ない』という自論を持つ「シャルル」だが、彼はまさに社会の底辺層であった。両国のハーフであるためにひどい差別を受ける彼は、飛空士としての腕の自信と、ある思い出だけを頼りに生きてきている。そんな彼に対して「ファナ」はシャルルが属する空軍を擁する大国の次期皇妃。天と地ほどの身分の差がある二人が主人公である。物語はシャルルがある作戦を告げられることから回り始める。それは「順調に進んでも五日はかかる広い中央海を、ファナを連れて二人で敵中翔破せよ」というものだった。接点がなかった二人に、つながりが生まれる。

声優・キャラクター
神木隆之介、竹富聖花、小野大輔、富澤たけし

hiroshi5 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

良作と駄作の境界線を鮮明に表した、ある意味重要な作品

中身が無さ過ぎて泣けてくる( ;∀;)

作画は良好。素晴らしいデキです。空を描く作品って作画のレベルを試されていますよねw
この作品は空を描くことが大半なので、重要な要素なんですが、完成度が非常に高いと思います。

それだけに物語はがっかりですね(;´Д`)
恋愛ものと言えば聞こえは良いですが、実際は恋愛ではなく、規制に縛られたお姫様が自由を味わうという単純な話です。
キャッチフレーズは「そこに自由はあるか。」というありきたりなもの。

しかし、姫であるファナの可愛さは異常と言っても良いでしょう。「天空の城ラピュタ」を意識して作られたらしいのですが、それも頷けます。
ファナを拝むだけの為にこのアニメを視聴するのも良いかも知れませんw

ちなみに、原作は「このライトのベルがすごい2009」の作品総合ランキングで10位を獲得しています。


物語は色々複雑な設定があるのですが、この映画ではどうも生かせてなかったですね。
私は原作を読んでいませんので、本ではどのぐらいこの帝国制度や格差社会といったものが反映されているのか分かりません。しかし、私の予測では映画よりはこの設定を生かせていたのではないでしょうか。

一つ言えることは、この作品は「借りぐらしのアリエッティー」に似ています。
設定は面白い。序盤は当たり前ながらも、独自の世界観を魅力的に表現しています。しかし、本題に入ると「え?これだけ?!」という感想を抱かずにはいられない。

やはり、この作品はB級という表現が適切のようです。
この作品で注目すべきは作画とキャラ。それ以外はむしろ目を瞑っても良い。

声優陣は豪華とは言えませんが、そこそこのメンツ。
注目すべきはシャルル役の神木隆之介さんかな?(シャルルって名前本当に多いな・・・汗)
まぁ、そこまで期待する必要は無いかも・・・。

今まで作画が良ければそれなりに良いものが出来ると考えて来ましたが、やはり内容も重要ですね。
心に残る作品を作るのは難しい。1,2クールアニメの製作も難しいけど、映画の製作も難しいですね。

人気になる作品と人気にならない作品の違いを明確に表した、ある意味重要な映画です。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 16
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ひとりぼっちの追憶

小さい頃から人に目をつけられやすかった狩乃シャルル。
貧乏で気弱で何もできなかった彼は自由を求め「飛空士」になった。その技術だけは他の者を圧倒するほど抜群だった。
傭兵の身分であり、自分を目の敵にする奴も絶えなかったが、そこでは良い仲間もでき彼にとっては心地良い場所だった。
自分にぴったりの場所だった。(これってね、言葉にできるほど簡単に見つけられるものじゃないんだ。)
そんな彼の腕を見込んで上からある任務が言い渡された。
ある王国で次期皇妃となられるお姫様ファナ・デル・モラルをその王子の国へ引き渡したいとのことだった。
だが、傭兵の分際が運んだと知られればこれは末代の恥である。けれど戦争中であることもあり腕の立つ者が必要だった。
そこで狩乃の腕を借り強靭な警戒網を突破し安全な所で上の連中に引き渡す(引き渡すことで手柄はお偉いさんのもの)といった作戦だった。
狩乃はこれを引き受けた。これから始まります。”お姫様護送任務”


本作では、激しいドッグファイトがあれば、かたや静かな海の描写がある。
また、いますぐ駆け出したい恋を目の前にそれがどうしてもできないことで涙を呑む人間の繊細な描写もある。
人にとって一体何が「大事なもの」なのでしょう。忠義か、自分の意志か、愛するものなのか。
なんでもかんでも従えば良いことではない。かといって全部まとめて海に捨てることもできない。
それはあらゆる意味において危険でnaiveな行為だからだ。
揺れ動く自我に空も海も呆れるほどに綺麗で、人の間に起きていることなんて無関心に見える。
狩乃はどうすることもできず何重にも板挟みにされていく。最新型飛行機は好調に飛行を続けるのだ。

本作は日常的にTV放映されているアニメとは、一部そういう要素を含みながらも一味違ったテイストを持つ作品です。
目的は”お姫様の護送”、テーマはマクロな意味では”身分差の恋”。
大勢の敵と戦うところや、一度負けて一騎打ちでのリベンジなどかっこよく燃える「アニメ」的要素は確かにありました。
それは映像としても群を抜く出来でした。敵と遭遇する恐怖や死と隣り合わせにいることの閉塞感には身が縮むような思いをしました。
空中戦でのGもこちらにそのまま伝わってきます。まさに生死の境を縫うような緊張感です。

このように意図して作られた「バトル」もありましたが、もっとそれ以外のところこそがこの映画の醍醐味です。
たとえば、狩乃とファナの距離を詰めていく過程や、飛行機での長距離移動の描写、そして狩乃シャルルの視点での物語の推移は普通の「アニメ」とはいささか違ったものを感じさせます。
まだよそよそしい2人が海の真ん中で停泊したり、戦線をくぐり抜けたりする中で親密になっていく描き方は明示的過ぎなくて僕の好みでもありました。
それにストーリーの内容にも言えることですが偶然性の描き方も良かったです。
彼らはただ踊らされているわけではなく、物語の中でちゃんと生きていました。ひとつひとつの出来事が常に新鮮でした。
それらの中でも特筆すべきは狩乃シャルルの人生背景を含めた上での本作での描写が何よりも素晴らしいこと。
“上司たちからは最初から最後までドブネズミ扱いされ、不遇な運命の中でやっと見つけた幸せにも手を伸ばすことは許されない。
物語の中で目的達成に向けてひたすら真面目に取り組む姿は凛々しくもあるが、その背中からはわずかに悲しみが漂う。
達成したところで名前の残らない仕事。たくさんの犠牲を払っても自分らには一切目を向けない上の人間たち。
これが終わって自分に残るものはなんだろう。ああ、金だ。それもたくさんの金だ。”
この反動もあってかラストシーンは最高です。もの凄い感動がありました。


どうもあにこれ内での評判は良くありませんが、シャルルの背景やファナとの距離の絶妙な描写は心を震わせてくれます。
この作品にしかないものをそれぞれに見つけられるかどうかはその人のコミットの深さ次第です。
どこまでシャルルという人間を捉え辛い経験やその立場を理解しこちらから共感していくか、彼とファナとの関係にどれだけの想いの温かさとまたその儚さをみることができるか。
これは好みの問題でもあるけれど、少なくとも声優の良しあしや漠然としたファクターを繋げて鳥瞰する以前の問題です。
王道であるとか、無難であるとか、そういうところに留まらない、まぶしいくらいの輝きを秘めた作品です。
一見の価値は十分にあります。
とても良い作品なので観る際にはどうか斜に構えず、まっさらな気持ちで観て頂きたいです。ぜひ一度。そしてもう一度。

{netabare}


レビューのタイトルは原作のこの作品の漫画化を担当したのが小川麻衣子さん。
ただいま『ひとりぼっちの地球侵略』進行中の方です。
そんで、この漫画が大好きなのでタイトルを合体させたというどーでもいい話ですw

閑話休題

ラストは見事でした!
ファナを引き渡した後の金がホントにごみのように見えました。あのシーンはなかなかのインパクトがあります。
そしてなにより最後の飛行です。かっこよかったー!ホントかっこよかった!
最高の愛の表現です。素晴らしい!

物語としては愛の逃避行をしなかったことにより、共同体が阻む苦しみがひしひしと伝わってくる結果になりました。
でも悔しいですねー。んー、歯がゆい!脚本にしてやられましたな。

まあそんなわけでとっても好きなんですよ、この映画。

{/netabare}

投稿 : 2024/12/28
♥ : 18

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

期待せず見たら、意外と面白かった。掘り出し物のアニメ映画です。

素人な声優もほとんど気にならないくらいの、雰囲気を持った作品です。
シンプルな中にも深みがあり、緊張感と感動が適度に加わります。
そして、短い期間での話ですが、次期王妃の成長が手に取るようにわかります。

次期王妃が2回も海に落ちる演出が好きです。
次期王妃の不器用なかわいさを表していて、ポイント高いです。

映画らしい映画、素直なシナリオと思います。
私にとっては、掘り出し物のアニメ映画です。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 26

61.6 8 戦争で恋愛なアニメランキング8位
EXMACHINA-APPLESEED SAGA[エクスマキナ・アップルシード サガ](アニメ映画)

2007年10月20日
★★★★☆ 3.7 (67)
302人が棚に入れました
『APPLESEED アップルシード』の続編として製作された士郎正宗原作、荒牧伸志監督による3DライブアニメをBD化。サイボーグと人間の遺伝子で作られた“バイオロイド”と人間が共存する2138年を舞台に特殊部隊の活躍を描く。プロデュースはジョン・ウー。

h02dvvd さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

前作よりおとなしくなった印象

【萌え】★☆☆☆☆ 【シリアス】★★★★☆
【ヒューマンドラマ】★★★☆☆ 【アカデミック】★☆☆☆☆
【ギャグ】★☆☆☆☆ 【演出】★★☆☆☆

 映画「アップルシード」の続編です。前作のキャラクターが何の説明もなく出てくるので前作視聴推奨。


 ぬるぬる動くアクションシーンは今作でも健在です。前作よりキャラクターが少し気持ち悪くなくなった気もしますがどうでしょう。音楽担当も相変わらず豪華。YMO・コーネリアス・rei harakami・m-floなどなど……よくもまあこんなに集めたもんだ。ブンブンがリストラされたことは個人的に残念ですが。
 ということで、この2つは前作同様よろし。

 で・す・が、
 物語がとってもわかりやすくなってしましました(悪い意味で)。「ハリウッド映画あるある」を地で行っている感じです。そのため展開が先に読めてしまいます。うむ。これは、

 (´・ω・`)「TSU ☆ MA ☆ RA ☆ NA ☆ I」

 と私は感じたのですが、どうやら(`・ω・´)「おもろかった~」と感じた方もいるようで。前作より物語のレベルが落ちた気がするのですが、それでもストライクゾーンに入る人は楽しめるかな?
 分かりやすいハリウッド映画を期待して観ましょう!物語は期待しない方がいいぞ!

投稿 : 2024/12/28
♥ : 2

69.7 9 戦争で恋愛なアニメランキング9位
劇場版 はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~(アニメ映画)

2017年11月11日
★★★★☆ 3.7 (77)
299人が棚に入れました
大和和紀「はいからさんが通る」の40周年を記念した作品。

大正時代の東京を舞台に、活発でおてんばな“はいからさん“ こと花村紅緒と、許嫁である陸軍少尉・伊集院忍との波乱万丈な恋模様を描く。

声優・キャラクター
早見沙織、宮野真守、櫻井孝宏、中井和哉、梶裕貴、瀬戸麻沙美

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

浪漫の香りに満ちたこの東京 時代を超えて進んでいく勇気を私にください

2017年公開の劇場版アニメ 「はいからさんが通る」前編 97分

原作 大和和紀 監督脚本 古橋一浩 キャラデザ 西位輝美 音楽 大島ミチル
制作 日本アニメーション

主題歌「夢の果てまで」竹内まりや 唄 早見沙織

1975年から「週刊少女フレンド」に連載された少女コミックが原作。
当時のコミックは人気のあるなしにかかわらず、初期設定のストーリーで終了する場合が多く、
この作品もその代表格ともいえる文学的コミックだったと思う。

「世界名作劇場」「未来少年コナン」「釣りキチ三平」などを制作し、
20世紀五大制作会社の一つと言われた日本アニメーションによって、
1978年にテレビアニメ化。
4クールの予定であったが、42話で打ち切りで原作のラストは描かれなかった。
その後、三田寛子主演のテレビドラマ版など作られたが、
今回初めて原作のストーリーが最後まで映像化されることになりました。
それも、経営悪化から立ち直った日本アニメーション制作と言うことで感激もひとしおです。

舞台は大正時代、花の都東京の跡無女学館(モデルが跡見学園なので神田かな?現在は大塚)
徳川家旗本の没落した家の娘「花村紅緒」CV早見沙織と、
伯爵伊集院家(名前からして薩摩)の御曹司「伊集院忍」CV宮野真守の恋の物語。

4クールアニメだったものを100分程度の前後編では酷い詰め込みが予想されましたが杞憂でした。
原作に癖がありまして、当時のサブカルチャーをネタにしたギャグが全編を覆っていて、
本筋である日本版「ドクトルジバゴ」とも言うべきラブストーリーの部分は、
この劇場版前後編と言う長さが調度良いと感じました。

もちろん、監督でもある古橋一浩の脚本の出来が素晴らしいのも要因です。

昭和版「はいからさんが通る」は視聴済みのため物語は知っているのですが、
非常に良い出来で、ほろりとする部分もあり大満足の一作でした。
女房はギャグ部分が削られたことに怒っていました。
「牛五郎さんが~」とか訳の分からないことを口走っていましたが、
そんな寒いキャラはどうでもいいのです。

もともと原作や昭和アニメ版に不満があった私としてはこちらのほうがずっといいです。
泥沼の戦争へと向かう日本、ロシアの世界を震わせることになる革命。
大正ロマンに浮かれる日本から始まる美しいラブストーリーの前編は満足のいく作品になりました。
 
後編は2018年公開、初めて映像化されるラストシーンに期待は膨らみます。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 28
ネタバレ

明日は明日の風 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

昭和の作品を平成の時代にリメイクした大正ロマンの名作ラブコメ

「はいからさんが通る」は再放送視聴になります。何せ、この裏で放送していたのが日本昔ばなしでした。テレビが一家に一台しかない時代、ゴールデンタイムに親子で見ることができた作品が優先されました。まぁ、小学校の中学年だったし、少女漫画原作作品なんて、恥ずかしくて見れないというのもありましたけどね…。

再放送で見たのは思春期に入る頃。その時に見た印象は「紅緒が可愛い…」。とにかくおてんばで、でも一途な紅緒に惚れてしまいました。それとストーリーとおちゃらけた場面の面白さがとにかく引き付けて、自分のラブコメ好きはこの作品が原点といっても過言ではありません。ただ、ワケわからないところで終わってしまい、心残りでした。このあと原作は読んだのですが、やっぱり動く紅緒が見たかった…。

あれからウン十年、まさかまさかのはいからさん。なんで今ごろ?という思いはありましたが、楽しみにしてました。が、キャラデザイン見たときに2017流行語大賞のノミネート言葉が真っ先に出てしまい…「ちーがうだ~ろ~‼」。正直、楽しみは不安に変わりました。そして、映画館へ。

不安と違和感は3分で消えてしまいました。そこに描き出されていたのはまさしく「はいからさんが通る」。制作会社が一緒だし、長い間喉に突き刺さったままだった中途半端な作品を仕上げようというスタッフの思いが伝わりました。そして何より中の人たちの演技力、特に紅緒のはやみんは特筆もの。あぁ、紅緒ってこういう子だったなという感じを思い起こしました。

物語は原作にしたがっています。ただ、前半とはいえ、結構なボリュームを90分にまとめてますので、どうしても無理が出ています。例えば{netabare}紅緒と忍がそれぞれ互いを好きになっていく過程や伊集院家での生活、紅緒と蘭丸と環の微妙な関係、忍の出征への過程、忍亡き後(死んではいないが)の伊集院家{/netabare}等々、上げたらきりがないかも…。それでも物語に破綻がないようにうまくまとめたと思いますし、原作も過去アニメも知らない人でも楽しめる内容にはなっていたと思います。また、ギャグになるシーンは懐かしいし、過去アニメ知っている人向けにはラスト付近で流れるインストバージョンのあの曲が涙ものです。

客層はけっこう広い印象でしたが、なかでもドストライク世代であったろう女性の姿が多かったのが他のアニメ映画では見られないなと思います。彼女たちがよみがえったはいからさんを見て、何を感じたのかな…。

大正ロマンを元にしたラブコメの名作。懐かしさも感じつつも、いつの時代にも通じるラブコメだと改めてストーリーの素晴らしさを実感しました。後半も見に行きたいと思いますし、ラブコメ好きな人にはぜひ見てもらいたい作品です。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 25

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

ハイッハイハーイ あの先あるなん~て 知らなかっ~た

 私の記憶が正しければ、私が物心ついた後か?幼い頃に見た、「はいからさんが通る」では、少尉が戦争に駆り出され、屋敷を後にする少尉を紅緒が見送ったところで、終わりを迎えた記憶があるです。蘭丸も女性声優?さんが演じていたせいか?、メイド服姿が印象に残り、男であること自体が当時の私には、理解できなかったです。主題歌の歌が忘れられない、個性的なOPと歌であったことも覚えているです。

 劇場版が今になって、作画、キャラデザ、声優さんも一新され、生まれ変わった「はいからさんが通る」だったです。原作は未だに読んだことはないけど、当時私がTVで見た「はいからさんが通る」の先も描かれていたことには、興味深いものがあったです。

 紅緒と伊集院少尉の出会いが上映開始、数分で起きたことには少し驚いたです。少尉と紅緒の戦いは、見所の一つです。

 紅緒が反発しいろいろ騒動起こしながらも、伊集院家に花嫁修業に駆り出さるです。少尉を初め伊集院家の人達と関わるうちに、徐々に紅緒は少尉に惹かれるという訳です。親友の環や、芸者の吉次さんもいたなぁと思い起こすです。TVアニメだとその出来事が、劇場版より濃かった気がするです。

 そして、私も知らない少尉が戦争に駆り出された後の話もあるのだから、私には初めて見たときそれが驚きだったです。
 まさかの展開になるとは!、紅緒との約束はどうなるのか?、展開に直面したときの紅緒のとった行動とは!、離れて会えない日々が続けば続くほど、少尉を愛おしく思う紅緒を見たです。
 それに応じた紅緒の伊集院家と少尉に対する強い思い、芯の強さというのか?大きな決断をしたと思うです。

 私の知っていた紅緒のロン毛の袴姿から、見違える姿には驚いたです。そこからの新展開、新たな人達との出会い、思いもよらない愛おしい人を求めて急展開に・・・・。
 こんな先があったとは・・・・です。それとないラストに後編、見なくてはと気になる気になるでしたです。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 14

73.6 10 戦争で恋愛なアニメランキング10位
劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!(アニメ映画)

2021年10月1日
★★★★☆ 4.0 (50)
210人が棚に入れました
マクロスΔの完全新作。

歌うことは生きること。
ネタバレ

石ころ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

油断して観たら、痛い目にあった...

同時上映の短編マクロスFの新作目当てで、合わせて観ました。正直Δの方にはあまり期待していませんでしたが、いい意味で裏切りられました。

詳述は避けますが、マクロスシリーズの肝とも呼べるストーリを占める柱は、歌、戦闘、そして三角関係という認識で、私はシリーズを通して視聴していました。テレビ版Δが公開されたとき、三角関係が薄まってると思って三本柱の一本が揺らいだと思って、やや残念に思っていました。

今回の劇場版視聴後、シリーズの三本柱と思っていた「三角関係」の要素は誤りで、歌、戦闘、そして「{netabare}悲恋{/netabare}」が本当の柱なのではと、思わずにはいられませんでした。今一度、この要素の視点でもって、シリーズを改めて視聴し直したいと思った次第です。河森監督、そして劇場版Δに携わった方々に、気付きをいただけたこと、素晴らしい作品に仕上げ公開していただいたこと、深く御礼申し上げます。心を入れ替えて出直してきたいと思います。

追記:マクロスプラス、7、そして若干Fの要素も、劇場版では含まれています。併せて視聴すればより楽しめると思います。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 5

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ごりごり、燃えた 燃え尽きたんよー

 マクロスΔの続きで、ハヤテやワルキューレら共に故郷に帰ったフレイヤだったです。
 突然の奇襲に立ち向かうワルキューレ、Δ小隊、特にフレイヤが命を賭けて歌うお話です。再び愛の告白、マクロスファン必見驚きのサプライズキャラ登場もあったです。

 以前の「劇場版マクロスΔ 劇場のワルキューレ」は、TV放送のアレンジ構成で少し話をラストも含め変えていたです。今回は完全新作、ワルキューレの歌が目立ちすぎる前回とは違い、フレイヤを軸にハヤテ、美雲、カナメ、レイナ、マキナ、ミラージュなどの絡み、以前明かされた謎を盛り込んだ作りになっていたです。

 フレイヤの里帰りも含めライブを行ったウィンダミアで、一体何が起こるのか?突然の出来事に話は、盛り上がりを見せるです。
 戦いのさなかに、全力を出すフレイヤに一体何が起きるのか?注目です。フレイヤを思うハヤテであったり、美雲であったりとどうなるのかなぁと思ったです。ワルキューレそのものの存在意義も見た気がしたです。

 敵の正体、目的、対抗戦力も何なのかな?設定だったです。「マクロス+」の要素を取り入れたΔならではな、演出も施されていたです。

 自分の身を顧みないフレイヤの決断、その先に何がおころのだろうか?衝撃の展開へと進むのです。人間にしかわからないともいうべき、歌の力を見せたと思うです。以前の戦いの終わった直後、地球人とウインダミアの間で互い全てを受け入れられなかった面も見れた流れで、一つにまとめることができたように見えたです。

 ED後のシーンは、ハヤテたちが受け入れた展開の中で残された希望のように、ハヤテと新たな命を見せたように思えたです。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 5

ルド さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

想像以上に面白かった

私自身はマクロスFの短編映画のついでという感じでの鑑賞でした。
マクロスΔのTVシリーズは可もなく不可もなし(ここの評価でだと3.0~3.5程度)で、この映画も何も期待していませんでした。

ただし見終わった後はマクロスΔのTVシリーズも実は出来が良かったのではないかと錯覚するほど満足が高く、失礼ですが本当に想像以上に面白かったです。
マクロスFもマクロスΔも映画はコンパクトに纏まっており、河森監督は本当に映画を作るが上手いと感心させられました。

まさかマクロスΔがお気に入りの作品になるとは。。。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 1

74.1 11 戦争で恋愛なアニメランキング11位
金の国 水の国(アニメ映画)

2023年1月27日
★★★★☆ 3.9 (54)
198人が棚に入れました
100年断絶している2つの国。“金の国”の誰からも相手にされないおっとり王女サーラと“水の国”の家族思いの貧しい建築士ナランバヤル。敵国同士の身でありながら、国の思惑に巻き込まれ“偽りの夫婦”を演じることに。深刻な水不足によるサーラの未来を案じたナランバヤルは、戦争寸前の2つの国に国交を開かせようと決意する。お互いの想いを胸に秘めながら、真実を言い出せない不器用な2人の<やさしい嘘>は、国の未来を変えるのか―。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

数十年先も人生に示唆を与えてくれそうなジンワリ系

【あらすじ】
{netabare} 経済発展は目覚ましいが水資源等は乏しい“金の国”アルハミト。
自然豊かだが貧困に喘ぐ“水の国”バイカリ。
犬猫レベルの名目で戦争と国交断絶を繰り返してきた両国。
“金の国”のおっとり第93王女・サーラ。
“水の国”で持て余している設計技師・ナランバヤル。
二人が“偽りの夫婦”を演じることで両国関係が動き出す。{/netabare}

同名コミック(全1巻・未読)の劇場アニメ化作品(117分)

【物語 4.0点】
両国対立の理由が表面上は短絡的に見えて実は構造的。
そこから展開する物語も意外と長期視点。

よって本作は鮮やかな伏線回収等によるカタルシスでガツン!と来る感動系ではない。
温かい空気の中で、広い視野から家族観や文明観を語り、鑑賞者の人生観に引き出しを与える。
後になってジワジワと価値を噛みしめることができる良作。

恋愛や家族愛など様々な愛の形について。
{netabare} 理想の結婚相手について尋ねられ答える男性アニメ主人公{/netabare} とか中々いないかと。

文明や名声について。
{netabare} 今回の両国の開戦危機は、あと50年で水資源が枯渇し廃墟になってしまう“金の国”の中長期の課題が背景。
加えて“金の国”の開戦派の国王・ラスタバン3世には、“水の国”への弱腰外交で愚王の歴史評価を受けたラスタバン2世から継承した汚名を、戦勝で返上したいとの晩節の焦りがある。

さらにラスタバン3世は外交のため娘たちを砂漠の向こうの国々へ嫁がせた。
第一王女の反戦派・レオポルディーネとは内紛状態。
老父の寂しい親心を優しく包み込んだサーラ。おっとりしているけど凄い娘だと感心しました。{/netabare}

解決策もスケールが大きい。
{netabare} ナランバヤルが提唱した両国和平により水路を引き“金の国”へ水を供給する。
工期見積もりは50年なので即断が求められる。{/netabare}
今、現実世界に、これ程の国家大計を構想、実行できる傑物はいるのでしょうか?


総じて刺激的ではないが、深イイ話だったとの余韻が何時までも続きます。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・マッドハウス

“水の国”の風光明媚。“金の国”の荘厳美麗。
百聞より説得力のある一見を再現するだけの画力は十二分。

終盤、{netabare} かつて両国の親交を深めたラスタバン2世が腰抜け王ではなく、
平和をもたらし民から愛された名君だった。
肖像画の出来栄えがそれを物語っている。
と論述する{/netabare} 件がありますが、これも相応の画力があればこそのシーン。

“水の国”≒中国風。“金の国”≒中東風。
必然チベットやアラブ諸国等が主な参考資料に。
一方、意外な所では、“金の国”の栄華を象徴する“漕がなくても登れる川”の再現に、
富山県のパナマ運河式の「中島閘門(こうもん)」が参照されたこと。
これは思わぬ聖地。“金の国”は富山県にありますw


【キャラ 4.0点】
“水の国”の技師・ナランバヤルが開戦阻止のための盟友として接近した
“金の国”左大臣・サラディーン。
イケメン俳優から政界入り。反戦派の第一王女・レオポルディーネの愛人。
一見、お飾りのプレイボーイ大臣に見えますが、これが中々の曲者。
{netabare} 俳優として“金の国”で名を馳せる前は遊牧民。
水問題含めた“金の国”の隠された危機を、よくある定住国家の栄枯盛衰として、
良くも悪くもドライに捉えている。{/netabare}
世界観にいっそう深みを与える視点を持ったキーキャラクターでした。

こうした戦争阻止のシナリオは得てして勧善懲悪となりがち。
ですが本作は決して愚昧な開戦派を、賢明な反戦派が諭すだけの軽薄な人物相関ではありません。
一見、悪徳な祈祷師に思える“金の国”開戦派筆頭の右大臣・ピリパッパでさえも、
言動には国王を慕う故の理由がある。

複雑な人物像が絡み合うからこそ、ナランバヤル技師が暗殺含みの宮廷政治を綱渡りするのがスリリングですし、
野心と無縁なサーラ王女が彼の癒やしになり得るのです。


そんな伏魔殿を暗躍する正体不明の黒づくめ暗殺部隊・ライララが私のツボ。
キャストの沢城 みゆきさんいわく「1人だけ一筆書きで描けそう……!」
確かにこれなら私でも描けそうw
単純明快なデザインで忍ぶわ煙玉投げるわ。神出鬼没なライララさんオススメですw


【声優 3.5点】
主人公“水の国”ナランバヤル技師役の俳優・賀来 賢人さん。
飄々とした言い回しの中に強い意志を込める。
中々の難役でしたが、左大臣サラディーン役の神谷 浩史さんのアドバイスも良かったのか、まずまずの対応。

ヒロイン“金の国”サーラ王女役。こちらも、おっとりした中に芯もある声が求められる難役。
ナチュラルにフィットする声の選定は難航の末、俳優・浜辺 美波さんに落ち着く。
声はそれなりに合っていましたが、漫画的なリアクションを求められるシーンは正直苦しいかなと感じました。

ここは人工的でもボイスを作れる声優からキャスティングしても良かった気もします。
脇で戸田 恵子さんや、銀河 万丈さん、茶風林さんらベテラン勢が渋い演技を決めていたから余計に。
何なら、みゆきちがライララと王女を兼任しても良かったのですよw


アニメ『ラブライブ!』シリーズでアルパカ、ふくろうと多種多様な動物を全受けして来た動物声優・麦穂 あんなさん。
本作では両国の犬猫のじゃれ合いを一手に引き受け、架け橋となる貫禄を示す。


【音楽 4.0点】
担当はエバン・コール氏。
アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズ。
アニメ映画版『ジョゼと虎と魚たち』
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
そして本作と連続エンカウント中の私。
今回も中華VS中東への対応力も求められましたが、
多彩な世界観を表現してきた氏のオーケストラならお手の物。

今回は琴音さんをボーカルに迎えて劇中歌も提供。
PVでも使用された「Brand New World」辺りは疾走感もある良曲。
ですが、どの歌も2分弱程度の劇中歌サイズというのが勿体ないです。
今後は是非フルサイズの挿入歌まで作曲して頂き、ヘビロテしたいです。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 22

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

"オトナを魅せる" 恋のお話。

このマンガがすごい! 2017 オンナ編 第1位(宝島社)。

以前から本屋さんに並んでいるのは知ってはいたんです。
なので、映像化されると耳にしてから、期待ばっかりが膨らんで、矢も楯もたまらず原作を読み耽りました。


読後の印象としては、「うーん、あんまり絵が動いていないなぁ。」という感じでした。
紙芝居といってはなんですが、アニメの「止め絵」的な表現を多用している感覚です。

これってアニメではセリフ重視でお話を進めていくときによく使う手法です。
なので、どんな演出で動きを仕上げていくのかが、わたし的ポイントになりました。


それから、描画がとても繊細で、すごく緻密な線で表現されているんです。
それって、風景全体が均質的に見えてしまって平べったい印象になってしまう弱点にもなるんですね。

ちょっと薄味というか、物足らないかなっていうか、そんなふうに思えるところもありました。
でも、そのぶんキャラクターの造形や所作に心を砕いてる様子がありありと窺えました。
心情の表現性にぐっと配点を寄せている感じです。

もとより共感性の高い作品なのは承知のところ。
だから、映像を早く観たくて仕方なかった、というのが本音です。
そそくさと封切初日に足を運んでしまいました。


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まず驚いたのは、作画の動きも、風景の遠近も、色彩の豊かさも、全てが私の予想を超えて作り込まれてありました。
でも、もっともっとびっくりしたのは "声のアテ" だったんです。

主人公のナランバヤル役に賀来賢人さん、サーラ役に浜辺美波さん。
お二方の声が私のイメージをはるかに超えていて、それはもうとんでもなく良かったです。

実は、本を読みながら、いろんな声優・俳優さんの声を脳内アテレコしていたんですが、ドンピシャとはこのことか~とストンと腑に落ちました。

なので、漫画の魅力指数が瞬間的にポポーンと跳ね上がりました。
劇場での期待度数も開始数分でドドーンと膨れ上がりました。


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物語の展開は、原作をきっちりと踏んでいますので安心して観ることができました。
意外だったのは、漫画のような止め絵がいくらもないのに、気持ちがどんどん温まっていくのです。

そのくせ声もいいものですから、主人公の心情を語れば抜群に響いてきますし、いっそう感情が解きほぐされ、やさしく揺さぶられます。

ほかのキャラクターの声も、皆さん十分にはまり役だったと思います。
大きな冒険はありませんが、大きな破綻もありませんでした。

なので、本当に安心して物語に没入できました。


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"初見の方" へは、オフィシャルのイメージボードの通り、と申し上げておきます。

「国が、動いたー 2人だけの"小さな嘘"から。」

どんないきさつから?
どんなやりとりを?

それは "観てのお愉しみ" です。
私としては "大人の方にこそ観ていただきたい作品" って思います。

女性はもちろん、男性の皆さんのキモチも優しく包んでくれるといいかなって思っています。

だって・・・ボードの2人の笑顔。
ステキだと思いませんか?


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さらりと書きましたが、色彩映像が本当に美しくて、いつまでも見惚れていたい、何回でも見初められたらと思いました。
(すでに2回、劇場に行ってしまっています・・・。)

特に、クライマックスシーンの色彩の豊かさが、ナランバヤルとサーラに愛らしい息吹を与え、揺るぎない国の未来図を楽し気に予感させています。

金の国 水の国

この物語があなたの心にどのような顛末を見せるのか、ぜひご鑑賞のあとでお確かめになってみてくださいね。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 17
ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

優しい気持ちになれた素敵な童話

アルハミドとヴァイカリという2つの国がありました。
1000年前につまらないことで争いが起こり、500年前に一度和解しようとするけどまたつまらないことで再び争いになり、いつしか2つの国の間には壁が作られてしまいました。
お互いの国は一番美しい娘と一番賢い男を相手の国の婿・嫁にするという500年前に結ばれた約束をもとに嫁と婿が贈られることになるけど・・で始まる物語。

原作は岩本ナオさんの漫画全1巻でこのマンガがすごいにも選ばれたみたいですが未読です。

絵は綺麗で、細かいところまでよく描かれていて好印象です。
中東っぽい文化の世界なところもいいですね。ヨーロッパ風な感じの作品が多いので。

おっとりして優しそうな感じだけど芯が強いサーラ王女と賢くて機転がきいて優しい建築士のナランバヤルの二人はお似合いだなぁって思いながら見てました。

サーラの姉のレオポルディーネに良い相手を選ぶにはどうしたら良いかと聞かれたナランバヤルの答えがすごくわかるなぁって。

きつそうに見えたレオポルディーネが{netabare}妹のサーラを気にかけていて、ナランバヤルが本当に賢い男でサーラにふさわしいか、わざと時計の部品を隠して試したり、自分の国をとても愛していて戦争に反対だったりといい人だったり、それから軽そうな感じの左大臣のサラディーンが意外としっかりしてたりと映画の短い時間ながらも人物に深みを感じるところもあったりして、{/netabare}そういうところも良かったです。

意外と好きだったのはレオポルディーネの配下のライララ。黒い布で顔を隠していて眼だけ出してるんだけど、ときおり見せる表情とか言葉でいい人なのが分かるし、なによりかっこいい!

ラスト。{netabare}それから10年後くらいの後日談があったのと、EDのスタッフロールの絵も含めてその後の様子が描かれていたのも満足でした。{/netabare}

感想も少ないみたいであまり知られていないみたいですけど、優しい感じの作品が見たい方におすすめします。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 19
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