恋愛で秘密なアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の恋愛で秘密な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年02月06日の時点で一番の恋愛で秘密なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

63.4 1 恋愛で秘密なアニメランキング1位
とある飛空士への追憶(アニメ映画)

2011年11月1日
★★★★☆ 3.5 (331)
1538人が棚に入れました
たった二つの戦争中の大国しかない世界―――。『空の上では身分は関係ない』という自論を持つ「シャルル」だが、彼はまさに社会の底辺層であった。両国のハーフであるためにひどい差別を受ける彼は、飛空士としての腕の自信と、ある思い出だけを頼りに生きてきている。そんな彼に対して「ファナ」はシャルルが属する空軍を擁する大国の次期皇妃。天と地ほどの身分の差がある二人が主人公である。物語はシャルルがある作戦を告げられることから回り始める。それは「順調に進んでも五日はかかる広い中央海を、ファナを連れて二人で敵中翔破せよ」というものだった。接点がなかった二人に、つながりが生まれる。

声優・キャラクター
神木隆之介、竹富聖花、小野大輔、富澤たけし

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

端的に子供向け

オイラはよく言うのです、「厨二病」という言葉を使う以前に「子供向け」なラノベってかなり多いです
【良くも悪くも】です
これなら児童文学の方が良く出来てるよなー、何をもってしていい歳の大人にオススメしてるんだろう?
この出版社や書店は???って


誤解の無いように言っておきましょう
今作、『子供と一緒に見る映画としてはなかなかです』
今年のアニメ映画は子供向けに関してドラえもんとプリキュアを除けば正直に不作です
特にプリキュアの方は対象年齢が低めなのでより『子供と観る映画』の範囲が狭い
(余談ですがトランスフォーマーは完全に大人向け、SUPER8はスリラー好き向け、ハリポは・・・観てませぬ><)
そんな中ではこの作品が子供向けとしていい機能を果たしております
小学校高学年前後のお子様をお連れの方には是非にオススメしておいきたい


ちなみに“なぜか”PG12指定をくらってますので保護者同伴での視聴をオススメします
決していかがわしいシーンがあったりや残酷な描写が多いわけではないです
なぜレーティングの対象になったのかオイラには理解不能です┐(ーωー;)┌


お話は貧民街育ちで敵国とのハーフとして虐げられてきた生い立ちを持つ主人公が、いつしかエースパイロットに上り詰め、自国の命運を握る作戦を任せられるというものです
作戦の内容は敵の包囲網を潜り抜け、皇国の次期王妃となる令嬢を婚約者の皇子の下まで送り届けるというものであった
ただしそれをたった一人、たった一機の偵察機で行うのだ・・・


王道を感じる半面に脆弱な部分が目立ちまして、大きな体に細々とした足腰というアンバランスのようなものを感じる作品となってしまいました
オイラが感じた問題点は3つ


まず1つ目にキャラクターの弱さが目に付きます
次期王妃ファナは世間知らずで儚げで弱々しく、戦乱と権力者に振り回されるステレオタイプなお嬢様
実際の史実の上では、男社会が招いた戦乱に女性が巻き込まれてきたのは曲げようの無い事実であり、その反発としてせめてもの思いでフィクションの中の女性は強くあってほしいと願うことは、人類の歴史上当然のことなのです
強いヒロインというのは人々の願望と希望を叶える存在であり、ファナの様なキャラクターの魅力は特に王道フィクションにおいてはそこそこに留まる
(宮崎駿監督作品のヒロインが強くて凛々しいのはまさに具体例)
ですから人々がフィクションの中に強いヒロインを求めることはごく自然であります
恐らく原作者やスタッフは、このお嬢様なファナが旅路の末に成長する様を一番に見せたかったのでしょうが、それには少し演出が力不足という印象を拭い切れず、物語は終わりを迎えます
強いて言うなら「酔っ払う」シーンのところだけはファナが可愛く見えて良かったのですが、その後の二人がどうなるわけでもなしに、そんなところが「端的に子供向け」たる証拠でもあります


2つ目にファンタジーを史実っぽく描くのにはちょっと無理があるという点
公開前のプロモーション等でも『史実から隠匿された恋物語』という部分を押し出していましたが、そもそもに日本をモチーフにしたであろう敵国と連合国を髣髴とさせる自国の設定もやはり安っぽくしか見えず、ファンタジーなのか史実なのか・・・どっちつかずで中途半端な印象しか受けない
エピローグをあとがいちゃうところなんかモロです
宍戸監督の代表作といえばやはり彩雲国物語が挙げられますが、あれもハイファタジーをさも史実の様に描く演出をとっていました
どちらの作品にも【いかにも】な雰囲気しか漂っておらず、リアリティという面では物足りなさを感じてしまいます
(無論ですがドラマ性自体はまた別の話ですよ)


3つ目はチラホラと話題に挙がってはいますが、声優さんの点
まずオイラは神木隆之介くんの大ファンでして、特に彼が声優として主演したサマーウォーズや借りぐらしのアリエッティでの彼の演技は大変素晴らしいものだったと応援しています
しかし今作での彼の役どころはおしとやかなお嬢様のファナとは対比的で、よく喋ります
前2作の主演作とも比べてかなりの量の長ゼリフがあり、単純に演技力自体が進化した彼の実力とは反比例して『喋り疲れ』のような声の出し方が気になります
長旅で疲れ果てる主人公と同じく、(たぶん)喋り疲れているであろう神木くんのかすれていく声
もし演出の範囲内だというなれば、もっとしっかりとメリハリをつけるべきだったでしょう
後半はちょっと聞き取りにくいです
ちなみによく言われる『棒読み』とは全く違うのであしからず
注目していただきたいのはファナ役の竹富聖花さんでして、今作で本格的な演技初挑戦とは思えませぬ
素晴らしい


とまあ散々に言っては来ましたが、ラストシーンに関しては清々しくスッキリとした終わり方で大好きですね
そうそう子供向けなんだからひねりとかいらんのです
美しいラストこそが一番
ちゃんと「ダンス」の伏線も張ってましたし
チョコチョコと「オチがない」というご感想をお持ちの方もいらっしゃってはいるようですが、オイラとしてはあのラスト以外は考えられませんね
あの後、二人は逃避行の旅に、、、、なんてトンデモエンディングだったらオイラは納得しません^q^









ちなみに『空戦』が見所の作品でもありますが、CGによるドッグファイトシーンは割かし地味で、スペックで主人公達を圧倒する敵側の戦闘機のデザインも(やはり旧日本海軍の震電がモチーフなのでしょうが)航空力学などツマラネェ話をすれば「ちゃんと飛びそうにない」です(笑)
同じことが押井監督のスカイクロラでも散々言われましたが、戦闘自体はミニチュアっぽい等の批判に納得しつつも迫力を出さんとする演出であちらの方が圧倒しています;


空戦そのものよりも、むしろ架空の世界観であるが故に美しく切り取られて描かれる情景の数々の方が魅力的に感じましたね


さらに余談中の余談ですが、既存のスチームパンクとは一線を画する・・・内燃機関や外燃機関よりも先に燃料電池が発明されているという独特な世界観には、高校時代に燃料電池を研究していたオイラとしては燃えるポイントでした^q^









「ファナー!」って2回繰り返す必要ないですよね(回想はいらない)
あーゆー余分なことしちゃうのが宍戸監督の良いところというか悪いところというか・・・(´ω`;)

投稿 : 2025/02/01
♥ : 23
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ひとりぼっちの追憶

小さい頃から人に目をつけられやすかった狩乃シャルル。
貧乏で気弱で何もできなかった彼は自由を求め「飛空士」になった。その技術だけは他の者を圧倒するほど抜群だった。
傭兵の身分であり、自分を目の敵にする奴も絶えなかったが、そこでは良い仲間もでき彼にとっては心地良い場所だった。
自分にぴったりの場所だった。(これってね、言葉にできるほど簡単に見つけられるものじゃないんだ。)
そんな彼の腕を見込んで上からある任務が言い渡された。
ある王国で次期皇妃となられるお姫様ファナ・デル・モラルをその王子の国へ引き渡したいとのことだった。
だが、傭兵の分際が運んだと知られればこれは末代の恥である。けれど戦争中であることもあり腕の立つ者が必要だった。
そこで狩乃の腕を借り強靭な警戒網を突破し安全な所で上の連中に引き渡す(引き渡すことで手柄はお偉いさんのもの)といった作戦だった。
狩乃はこれを引き受けた。これから始まります。”お姫様護送任務”


本作では、激しいドッグファイトがあれば、かたや静かな海の描写がある。
また、いますぐ駆け出したい恋を目の前にそれがどうしてもできないことで涙を呑む人間の繊細な描写もある。
人にとって一体何が「大事なもの」なのでしょう。忠義か、自分の意志か、愛するものなのか。
なんでもかんでも従えば良いことではない。かといって全部まとめて海に捨てることもできない。
それはあらゆる意味において危険でnaiveな行為だからだ。
揺れ動く自我に空も海も呆れるほどに綺麗で、人の間に起きていることなんて無関心に見える。
狩乃はどうすることもできず何重にも板挟みにされていく。最新型飛行機は好調に飛行を続けるのだ。

本作は日常的にTV放映されているアニメとは、一部そういう要素を含みながらも一味違ったテイストを持つ作品です。
目的は”お姫様の護送”、テーマはマクロな意味では”身分差の恋”。
大勢の敵と戦うところや、一度負けて一騎打ちでのリベンジなどかっこよく燃える「アニメ」的要素は確かにありました。
それは映像としても群を抜く出来でした。敵と遭遇する恐怖や死と隣り合わせにいることの閉塞感には身が縮むような思いをしました。
空中戦でのGもこちらにそのまま伝わってきます。まさに生死の境を縫うような緊張感です。

このように意図して作られた「バトル」もありましたが、もっとそれ以外のところこそがこの映画の醍醐味です。
たとえば、狩乃とファナの距離を詰めていく過程や、飛行機での長距離移動の描写、そして狩乃シャルルの視点での物語の推移は普通の「アニメ」とはいささか違ったものを感じさせます。
まだよそよそしい2人が海の真ん中で停泊したり、戦線をくぐり抜けたりする中で親密になっていく描き方は明示的過ぎなくて僕の好みでもありました。
それにストーリーの内容にも言えることですが偶然性の描き方も良かったです。
彼らはただ踊らされているわけではなく、物語の中でちゃんと生きていました。ひとつひとつの出来事が常に新鮮でした。
それらの中でも特筆すべきは狩乃シャルルの人生背景を含めた上での本作での描写が何よりも素晴らしいこと。
“上司たちからは最初から最後までドブネズミ扱いされ、不遇な運命の中でやっと見つけた幸せにも手を伸ばすことは許されない。
物語の中で目的達成に向けてひたすら真面目に取り組む姿は凛々しくもあるが、その背中からはわずかに悲しみが漂う。
達成したところで名前の残らない仕事。たくさんの犠牲を払っても自分らには一切目を向けない上の人間たち。
これが終わって自分に残るものはなんだろう。ああ、金だ。それもたくさんの金だ。”
この反動もあってかラストシーンは最高です。もの凄い感動がありました。


どうもあにこれ内での評判は良くありませんが、シャルルの背景やファナとの距離の絶妙な描写は心を震わせてくれます。
この作品にしかないものをそれぞれに見つけられるかどうかはその人のコミットの深さ次第です。
どこまでシャルルという人間を捉え辛い経験やその立場を理解しこちらから共感していくか、彼とファナとの関係にどれだけの想いの温かさとまたその儚さをみることができるか。
これは好みの問題でもあるけれど、少なくとも声優の良しあしや漠然としたファクターを繋げて鳥瞰する以前の問題です。
王道であるとか、無難であるとか、そういうところに留まらない、まぶしいくらいの輝きを秘めた作品です。
一見の価値は十分にあります。
とても良い作品なので観る際にはどうか斜に構えず、まっさらな気持ちで観て頂きたいです。ぜひ一度。そしてもう一度。

{netabare}


レビューのタイトルは原作のこの作品の漫画化を担当したのが小川麻衣子さん。
ただいま『ひとりぼっちの地球侵略』進行中の方です。
そんで、この漫画が大好きなのでタイトルを合体させたというどーでもいい話ですw

閑話休題

ラストは見事でした!
ファナを引き渡した後の金がホントにごみのように見えました。あのシーンはなかなかのインパクトがあります。
そしてなにより最後の飛行です。かっこよかったー!ホントかっこよかった!
最高の愛の表現です。素晴らしい!

物語としては愛の逃避行をしなかったことにより、共同体が阻む苦しみがひしひしと伝わってくる結果になりました。
でも悔しいですねー。んー、歯がゆい!脚本にしてやられましたな。

まあそんなわけでとっても好きなんですよ、この映画。

{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 18

シス子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

ひ・く・う・し・・・ひくうし(-_-(合掌)

      ↑
滝○クリ○テルさんをイメージしてね^^!


某トロピカル系サイトを筆頭に
書籍通信販売系のサイトで「とあるシリーズ」を探そうと
“とある”というキーワードで検索すると
上から5~6番目くらいに必ずといっていいほど候補に出てきたのがこの作品

気にはなっていたのですが
まさかアニメ作品になっていたなんて想像すらしてませんでした

原作はラノベ
ジャンルは恋愛、戦争、ファンタジー

「飛空士シリーズ」というシリーズモノの一作品で
「とある~恋歌」や「とある~誓約」などの作品があります

ちなみに「~恋歌」は2014年1月よりアニメ作品が放送予定だそうです


お話は・・・
タイトルのとおり
とある飛空士さんのお話^^
そのまんまです

ここで注意して欲しいのはタイトルが
「~飛空士~」であるということ・・・

分かりますか?

“ひこうし”じゃありませんよ”ひくうし”ですよ”ひ・く・う・し”

分かりにくいのでもう一度書きます

ひ・く・う・し・・・

ちなみに
わたしのパソコンで”ひくうし”を変換したら
最初”引く牛”って出てきて
その後どう頑張っても正しい表記にならないので
「飛行」→一文字消して→「空」→「士」っていう順番に入力
あとはコピペで対応・・・って
どうでもいいことを無駄に書いてしまいました

とりあえず
「飛空士」という肩書きを持つ人がいる
どこか”別の世界”のお話ということです^^

その主人公で”引く牛”・・・じゃなかった^^
“飛空士”の「狩乃シャルル」(かりのしゃるる)くんと
どこかの国のお姫様(になる予定)の「ファナ・デル・モラル」ちゃんの
淡い・・・
だけど
とても熱い恋のお話

観終わって
なんだかよく分からなかったので
とりあえずWikiでリサーチしてみると
“「ローマの休日」と「天空の城ラピュタ」の
切なさと爽やかさを意識しながら執筆された”と
記述されていました

えーと
とりあえず
ラピュタは分かりました
飛行船みたいなものが飛んでいたので・・・

でも
“ローマ”はないでしょ
っていうか
この手のお話ならモチーフになる作品って他にもたくさんあると思うのに
なんで”ローマ”?

ソフトクリーム出てこないじゃん
飛空機(“ひこうき”じゃないよ”ひ・く・う・き”^^)がバイクの代わり?
真実の口は?
グレゴリー・ペックみたいな優男は?(シャルルくん?マジで?ありえない~)

でも原作の先生様がそう仰るのならそうなのでしょう^^


さて
率直な感想を一つ(といいながらダラダラと)書かせていただくと

あの終わり方はない

ストーリー自体が
なんか煮え切らない感じで終わっていて
“もうどうでもいいや^^”
っていうような幕引き

さらに
最後は
二人のその後を
字幕カットで説明ってどういうこと?

二人の行く末がこんな軽いものだなんて・・・

せっかくアニメ作品にしたのに
これじゃあ全く意味がない

なんか・・・
こう・・・
なんというか・・・
もっとドラマチックな演出もあるでしょう?

たとえばエンドロールのとき
その後の二人の姿を
ダイジェストで流すとか・・・(NG集じゃないよ^^)


さらに
憤慨(半分キレた)してしまったのは
ファナちゃんの声

これはもう
小学生が国語の教科書を読んでるか
私がやる気のない上司に啖呵切っているみたいな(知らんわ!)

セリフの棒読みですよ~

そして
今にも舌を噛みそうなくらいの滑舌の悪さ

いっそ噛んじゃって
「かみまみた(>_<)」って言ってくれたほうが
いくらか可愛げがあるのに
(まあどう転んでも私はブチキレます^^)

くわえて完全にキレてしまったのが(もうキレまくってる^^)

ファナちゃんのしつこいくらいの「引く牛さん!」の連呼

セリフの半分くらい「牛さん」引いてるんじゃないの!?

「引く牛さん!」
「引く牛さん!」
「引く牛さん!」
「牛さん・・・引く?(笑」って

あまりにもテンポ良く叫ぶもんだから
「よっ!」
「はっ!」って
思わず
拍子つけてしまったじゃないの!

ファナちゃんの声の人のスキルを考慮して
あえて
「牛さん」のセリフを多くしたのか

原作から既に「牛さん」というセリフが多かったから
ファナちゃんの声の人が決められたのか

って
あれれ
なんか話題が「牛さん」に飛んじゃってますね^^


とにかく
世界観やストーリー
空中戦などのアクションシーンは良かったのですが
細かいところに不満のある作品でした~

あっさり締めてゴメンナサイ~

投稿 : 2025/02/01
♥ : 25

64.7 2 恋愛で秘密なアニメランキング2位
文学少女 劇場版(アニメ映画)

2010年5月1日
★★★★☆ 3.7 (274)
1390人が棚に入れました
文字どおり食べてしまうほど文学が好きなヒロイン・天野遠子と、彼女によって無理やり文芸部に入部させられた男子高校生・井上心葉が様々な事件の解決に乗り出す学園生活の模様を綴った野村美月の人気ライトノベル・シリーズを映画化した劇場版アニメ。『銀河鉄道の夜』がモチーフとなっている原作の第5巻『“文学少女”と慟哭の巡礼者【パルミエーレ】』をベースに、心葉と彼のトラウマとなっている少女・朝倉美羽との運命の再会がもたらす切なくも愛憎入り交じる人間模様を描く。

声優・キャラクター
花澤香菜、入野自由、水樹奈々、宮野真守、小野大輔、豊崎愛生、下田麻美、平野綾
ネタバレ

N0TT0N さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

視聴ルートと個人的適性。

【わたしのタイプと視聴ルート。】

前もって言っておくと、私にとってチャレンジ色の濃い視聴でした。

・普段見ないタイプの作品(恋愛強め)
・キャラデが好きな方ではない(少女漫画風?)
・普段は比較的情報を入れずに視聴するタイプだけど、今回沢山のレビューをじっくり(ネタバレ抜きで)読ませていただいてからの視聴。

3つ目は、どうやら劇場版とOVAが補完関係になっているらしいという構成を知って視聴順を決めるためやむなく‥というのが大きな理由。
先ず、そういうタイプのわたしが書いたレビューなのを前もって言っておきます。原作未読。

で、わたしが選んだ視聴ルートはというと、
OVA(3作品)→劇場版でした。情報比較の甲斐もあり、個人的にはこのルートで正解だったと思うのですが、さらに完璧を期すためには、「プレリュード(OVA)」→「劇場版中盤まで」→「レクイエム(OVA)」→「劇場版クライマックッス」、で、デザートに「OVAのラプソディー」。
これがN0TT0Nお薦めの視聴ルートですw
お試しあれ。



【軽く内容などについて。】

山とガールが、肉食と女子が、ゲスの極みと乙女が出会う遥か以前からまるで四文字熟語か慣用句かのように融合している『文学』と『少女』。
この飛行機雲のようにまっすぐなタイトルから、爽やかで、なにか清廉なイメージを勝手に持ってしまうのですが(キャラデも含めて)、結構、闇な部分を描いた作品だったと言えます。
宮沢賢治の文学作品をモチーフにしている点など文学関連のフィルターを通した表現が多いのですが、この作品の主題は「トラウマ×恋愛」だと思うので、爽やかとか癒される系の物語を、心掻き乱されることなく視たい人にはお薦めできません。要注意です。

ただ、文学少女こと天野遠子先輩の登場している時間帯、特に文芸部の部室シーンは別。逆光などの作画クオリティも手伝ってか、とてもいい感じの空間に仕上がってます。

ですが彼女、ほとんど物語に関わってこない。
この部分は上記の視聴ルートで多少改善されますが、物語を食べる彼女、そもそもこの物語の中での立ち位置も、この特異な設定と同じように読者であったのかもしれません。
ファンタジックな着地も読者目線と捉えればなんとなく合点がいきます。
てか、OVAプレリュードを視聴すると、このはと遠子先輩との出会いの意味が180度変わるエピソードが仕込まれています。
実はこの物語、遠子先輩の思惑がかなり‥‥ry

そして物語の主題「トラウマ」に関しても劇場版だけでは消化不良だったと思います。わたしが朝倉美羽というちょっとアレなキャラに高いリアリティを感じたのはOVAレクイエムのおかげだったと思ってます。

全体としては、リアルな葛藤に対してファンタジーな爽やかさを被せてくる演出がう~~ん‥でした。
空気感としては良い「転」→「結」だったと思うけど、この辺がカッチリ融合して説得力をもっていればもう少し楽しめたかと思います。

ということで、わたしの未知のジャンルの適性チャレンジは"保留"という感じになりました。小さな一歩は踏み出しましたが、恋愛度強の作品を堪能できる素養はまだ確認できてません。

作品については、正直劇場版単体ではあまり物語を評価できませんが、OVA込で視るんであれば、それなりに楽しめるかと。突っ込みどころも完備してますしね。

※以下OVAの話込みのネタバレ。

{netabare}

正直言うと劇場版とOVAの連続性が欲しかった。
大人の事情が多大に影響していたのでしょうが。。

キャラデは意外といけたし、髪揺れや光表現などの作画クオリティも高く視やすかった。ちあの身長が完全に1m切ってたシーンあったけど流石に吹いたwだまし絵かとww

内容的にはOVAも含めると美羽のキャラは説得力あったと思う。思うのだけどトラウマ克服の展開が安易なのは否定できない。一言で救われることが絶対に無いとは言わないけど、遠子先輩と初対面なのも含め、積み重ねが無さ過ぎて説得力が‥。

そもそも抱えてる問題はリアルに描いてるのに解決方法が唐突で、しかもファンタジー‥というのがちょっと興ざめでした。
しかも美羽が克服したとみるや遠子先輩に一目散なこのはw
なんたるフットワーク、切り替えの速さ。バロンドール候補に推薦したいレベル。

その遠子先輩は魅力的に描かれてて良かった。魅力的でいて物語に殆ど関わらないという立ち位置がある意味斬新だけど、OVA込みならまあまあ理解できる感じ。物語を食べる設定もOVAで結構お腹いっぱいにはなるんだけど、返す返すも劇場版と連続性を持たせて頂きたかった。

以上です(`_´)ゞ

{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 17
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

ファンタジーだからこそ心の動きが自然でした。

 dアニメのトップにあったので、あまりのなつかしさに視聴しました。本作を見て思うのは、感動とかいい作品って、決してリアリティじゃないですね。

 どんな荒唐無稽な設定の中でも人の心の動きをしっかりと描き切っていれば、一見バカみたいな設定、ちょっと不自然な物語の展開が、かえって感情を強調してくれて深く感動できます。それが、日本のマンガやアニメそしてラノベのいいところだと思います。そしてその代表が「文学少女」なのかもしれません。

 出てくる女がみんな不快になる要素を持っています。ヒロイン遠子も含めてです。彼女は無垢でもありますが、我儘です。でも、深く深く主人公を尊敬し理解しています。しかも、主人公が井上ミウだということを知らなかったのにです。そして、その事実を知ったからED前のあの2人の美しい場面につながってゆきます。

 {netabare} 誰よりも好きで理解していて尊敬しているから一緒にはいられない、{/netabare}という決断って古典的ではあります。が、これを自然に描こうとするのはストーリーに力がないと間抜けになります。遠子の決断に至る心の動きの説得力は、文学を味わうという「文学少女」の不思議なファンタジーな設定だからこそ活きてきます。

 で、本作のメインキャラ、ミウがいるわけです。まあ、この子についてのエピソードは正直不快なだけですが、主人公が小説家になるきっかけとか、遠子との対比という意味で重要です。ミウは主人公にきっかけを与えましたが、結果として彼の小説家としての未来を危うくしてしまいます。でも、遠子は主人公を少しずつ癒し、最後は{netabare}自分の気持ちと引き換えに背中を押します。{/netabare}主人公に対する執着と理解、心を壊したか癒したかが描かれていました。だから、最後の10分くらいの感動につながりました。
 号泣は言い過ぎですが、結構涙が自然にあふれてきました。

 それにしても平野綾さんは、うまいですね。いろいろあって活躍が中途半端なのは残念ですが、声の演技という点では非常に才能がある方でした。素晴らしかったと思います。

 非常に面白いし、懐かしくてさっき原作全巻買い直してしまいました。本作は不思議なことにこの映画の前段となるシリーズがTV等でアニメ化されてないんですよね。で、いきなり映画ってすごいですね。是非TV化希望といいたいですが、今のラノベと比べて作風が古いですし、当時としても異色だったと思います。多分もう無理でしょうね。

 予備知識が無くても、本作だけでも楽しめます。人の設定もストーリー展開上知識無くても読み取れる部分は多いです。
 ただ、やっぱり登場人物とかの関係で入り込むなら原作読んだほうが良いかもしれません。竹田という女の子。原作はかなり強烈でしたが、本作ではあんまり感じませんでした。

 なお、エンドロール後のあれはそういう事です。良かったですね。

追記 皆さんのレビューで知りましたがovaあるんですね。さっそく探してみます。


雑記です。

 宮沢賢治についてはビブリオ古書店でも取り上げられていますし、ピングドラムでは主題でした。銀河鉄道999はまあモチーフにしただけですが。作品そのものは銀河鉄道の夜以外に沢山アニメ化されています。アニメ見るなら一度宮沢賢治はじっくり読んでおいた方がよいかもしれません。

 覆面美少女作家というと、北村薫を思い出しますね。多分作風からいって本作の原作者も読んでいるのではないでしょうか。
 北村薫は意図したわけではないですが、おっさんで学校の先生で身分を隠したら女子大生と勘違いされたみたいですね。この人は人が死なない推理小説の元祖とも言われています。氷菓とかハルチカとか好きな方にお勧めです。

 追記 なお北村薫はリセット、ターン、スキップの3部作で時間跳躍というSF要素を一般推理小説に導入した功績もあります。一般人?が見る普通のTVドラマ化もされているのでその意味では日本のクリエータに多大な影響を与えた人です。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 2

野菜炒め帝国950円 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

(他人の)愛憎劇。それは最高のご馳走。

アニメ見ると感想書く習慣がついたせいで最近よくやる(エロ)同人RPG
クリア後の感想書かないとなんかモヤモヤする体にされてしまった。

ドロドロ検索シリーズ。
今回はこの文学少女。110分かそんくらい。
原作はあるらしいのだけど知らなくても特に問題無し。勿論私も知りません。

タイトルがドロドロ劇に似つかわしくないので視聴前は半信半疑ではあったけど考えてみればあのスクイズだってタイトルは学校の日々という割りとさわやかなタイトルでした。

結論から言えばそれなりに良作。多分マイナーなんだろうけど掘り出し物だったと言ってもいいレベルだったようには思います。

今回のヒロインズは3人。ttと同じですね。
主人公はいつものドロドロ劇専用主人公だと思って頂いて大体構わないかと。

この作品。ヒロインのキャラは比較的立ってたと思います。
この手のお話の肝はヒロイン達がどれだけ魅力があるかに掛かってると思うのです。

では3人のヒロインを簡単に見てみましょう。

タイトルにもなってる文学少女。これが主人公の1個上の先輩にして文芸部の部長?
見た目はいかにも文学少女って感じの地味ながらも可愛い感じですね。
地味故に個性を持たせるつもりだったのかこの子は本が好きな余りに本を食べてしまう妙な癖?があります。
ああ、いや本を食べるはさすがに人外すぎでしたね。正確にはページをちぎって食べる・・・ですね。
お前は山羊の生まれ変わりかよと突っ込みたくもなりますがこのおかげかインパクトは強いです。

続いて美羽。
所謂ヤンデレに近い存在で本作品のドロドロ劇の8~9割程度は彼女が担ってると言っても過言ではないでしょう。
先輩が光だとすれば完全にこちらは闇ですね。
実際にいれば関わりたくないお方ですがこういう物語だと彼女のような存在は実に映えます。
お前石仮面被っただろと言いたくなるくらいタフネスなのはさすがに変な笑いが出てしまいますが。

んで3人目。
こういう話の3人目のヒロインてのは何故か扱いが軽いことが多いですが彼女には見せ場もあり比較的恵まれたポジションだったのではないでしょうか。少なくとも私は好きでした。

3者3様の魅力はあるんですが悲しい共通点として全員が身内にカイジ君いますか?と問いたくなるような立派な顎をお持ちな点が多少気になると言えば気になるかもですね。
1度気にするとね。どうしてもそこに目が行くのは人間の悲しい性なんでしょうかね。

序盤は穏やかな普通の物語してますが暗雲立ち込めるのは大体中盤辺り以降でしょうか。

先輩が妙に魅力あるせいかこのままドロドロ抜きのさわやか恋愛でもいいかなぁと不覚にも思ってしまった時期もありましたが物語が荒れてくるとやはりそれはそれで心躍るものがあるのです。

それと一応タイトルが文学少女となってますので宮沢賢治とかは頻繁に出てきますが特別詳しくなくても多分支障はないかと思います。

全体的に見ても上手く纏めてある印象が強いのですが出来れば12~13話くらいでもう少し深くしたものも見たかったかなぁというのは本音ですかね。


ネタばれ無しじゃ詳しく聞けないのだけどラストの先輩の決断がなぁ・・。

どうしてこんなことなったのか、私にはわかりません。
これをあなたが読んだなら、その時、私は死んでいるでしょう。
…死体があるか、ないかの違いはあるでしょうが。

これを読んだあなた。どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。 byひぐらし

いや死んではないけどまさにこんな気分。
なんとなく察しはつくもののなんだかなぁて感じです。

まぁ終わってみれば良作だったと思います。少なくとも見て損することは無いのではないでしょうか。
劇場版ということを考えれば程よい愛憎劇具合で御座いました。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 20

70.3 3 恋愛で秘密なアニメランキング3位
少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録(アニメ映画)

1999年8月14日
★★★★☆ 3.9 (115)
610人が棚に入れました
その独特な世界観と音楽性で大人気を博したTVシリーズ「少女革命ウテナ」。本作品は'99年夏、全国東映洋画系にて公開された劇場版「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」。全寮制の名門鳳学園に転校してきた美少年、天上ウテナ。彼の正体は、ある事件をきっかけに、志高く生きる決心をし、その決意から男装するようになった少女だった。鳳学園でウテナはかつての恋人、桐生冬芽と再会する。彼の指には、薔薇の刻印の指輪が妖しく光っていた。それと同じ指輪を手に入れたことがきっかけで、ウテナは学園の生徒会副会長である西園寺と、決闘することになってしまい…。TVシリーズ同様、ミステリアスな展開は健在。ミッチーこと及川光博が声優に初挑戦したことでも話題を呼んだ。
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

さぁ革命だ!

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。90分くらいの学園ファンタジー。
 おすすめされたのをきっかけに視聴しました。テレビ版の続編ではないということでしたが、一応5話まで視聴しております。5話で切ったわけではなく、1・2話の段階でストーリーの外観がはっきりしていることと、5話までで序盤の安定期に入っていそうでしたので、映画にシフトしました。非常に面白かったので、テレビ版も継続的に視聴していこうとは思っています。映画版はまごう事なき傑作でした。

 この映画は、キャラクターに関してはわかりませんが、世界観に関してはテレビ版を踏襲しているようです。テレビ版のレビューで書いた説明は端折りますので、適宜テレビ版のレビューもご参照ください。

世界観の概要①(テレビレビューまとめ):{netabare}
 テレビ版で書いたこの作品の世界観をまとめます。

・この作品では、「絶対運命黙示録」、つまりメタフィクションをしたい。
・製作者は、このアニメを「学園モノ」、主人公を「王子様」に決めた。
・主人公は、創作の世界では絶対的な存在であり、創作の世界を自由に革命できる。
・登場人物は、この力を欲しがり、「王子様(主人公)」になりたがっている。

・主人公になっても、変えられないものがある。それはアニメの設定である。
・これを変えるためにはアニメの世界を壊し、現実の世界に行かなければならない。
・これこそが真の革命である。


 製作者が言っている「世界を革命する力」とは、「アニメの世界」を脱し、「現実の世界」へ到達することです。しかし、「アニメの世界」にいることを知らない登場人物たちは、主人公になり、アニメの中を自由に変えることだと思っています。

 つまり、この作品の革命者とは、
  ①主人公になり学園(アニメの世界)を支配する仮の革命者
  ②「アニメの世界」を脱し、「現実の世界」へ到達する真の革命者
という2種類の革命者がいるのです。

 また、製作者が言う革命を起こすためには、
  ①登場人物が「アニメの世界」にいることを「自覚」し、
   「アニメの世界」を壊そうと「決意」する「意識の革命」
  ②実際に「アニメの世界」を壊し「現実の世界」に到達する「構造の革命」
という次の二つの革命が必要となります。
 なお、映画では、「現実の世界」は「外の世界」と表現されていました。
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世界観の概要②(映画内での表現):{netabare}
 「構造の革命」に関する生徒会の革命宣言がなくなってしまいましたが、同じことを示したセリフが散在しています。まずはジュリのセリフから。
  ジュリ「この暗闇の奥は、世界の果てへと続いている。」
     「もうすぐ始まる。革命が。」
     「私は(私を縛り付ける)全てを断ち切るために、この力が欲しいんだ。」

 ジュリは、革命の力は、ジュリというキャラクターを縛り付ける全てのものを断ち切ることができる、と言っています。また、「アニメの世界」は「世界の果て」へ通じており、革命が始まることで「世界の果て」へ到達することを示しています。「世界の果て」を越えた先が「外の世界」です。ジュリ自体は革命の力を誤解していますが、どちらの革命であっても、ある程度「断ち切れる」のは事実です。

 トウガとアキオのセリフ。次のセリフは、「アニメの世界」を説明したものです。
  トウガ「全て王子様を中心に作られた場所なのに、生身の王子様だけがいない。」
  アキオ「生きながらに死んでいられる、あの閉じた世界」

 トウガの「全て王子様を中心に作られた場所」というのは、ここが「王子様」を主人公とした創作の世界であることを示唆したものです。実際、「王子様」決定戦である「決闘」をすることで、主人公の座の奪い合いが行われています。
 また、トウガは、「本物」と表現せずに「生身」の王子様がいないと言っています。「アニメの世界」だからこそ「生身」がないのです。「現実の世界」の生がないために、アキオの言う「生きながらに死んでいられる」世界なのです。テレビ版の「生まれているのに、生れずに死んでいく雛」という概念に対応するセリフです。
 そして、アンシー・トウガ・アキオという死者すらも生きていられる世界、これが「アニメの世界」です。「現実の世界」では有りえないことが、起こりうる世界です。

 アキオは「どうせ行き着く先は世界の果て」だと言っています。彼は、ハイウェイでお城をクリアしたその先から出てくる人物です。アンシー殺害シーン(車の鍵を探すシーン)でも、この世界がアニメであることを知っていることが明かされています。
 彼は、この世界が「アニメの世界」であると「自覚」していながら、革命を「決意」しなかった人物です。そして、「アニメの世界」にいることを選んだ「仮の革命者」なのです。

 彼に対してアンシーは「でも私たちの意志でそこに行ける」と言っています。これは「外の世界」へ行こうとする「意識の革命」の話です。アンシーも元々は「自覚」していながらも「決意」しなかった人物ですが、ウテナに感化されて「決意」をしたのです。
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終盤①ウテナの「自覚」:{netabare}
 終盤で描かれているのは、「意識の革命」がもたらした「構造の革命」です。まずはウテナが「車」に変わる直前から確認してみます。

 ウテナはトウガとの対話により、トウガが死者であることを思い出しました。この世界が、死者でも生きていられる「アニメの世界」であることを「自覚」したのです。

 このあとのアンシーのセリフです。
  「あなたは今、学園の王子様。
   どんな奇跡もどんな永遠もその手に掴める。この世界にいる限り。」
 「アニメの世界」にいるかぎり、主人公であれば、思いのままだと言っています。
 アンシーは、自分が死んでいることを知っています。つまり、この世界が「アニメの世界」であることを「自覚」しているのです。ですが、この世界を壊すことを「決意」せずに、仮の革命者を歓迎しているのです。
 ウテナはアンシーの申し出を断り、「外の世界」へと誘います。なぜ、アンシーを誘ったのか。
 アンシーに「バラの花嫁」というキャラクターを捨てさせることは、この「アニメの世界」にいては達成できないからです。つまり、二人ともが真の革命者にならなければいけなかったのです。ここから先の展開は、ウテナとアンシーの起こした革命です。
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終盤②二人の革命と車:{netabare}
 最初の革命者はウテナです。ウテナは製作者が用意した「王子様になりたい少女」というキャラクターを捨てました。これが「自覚」と「決意」に基づく「意識の革命」です。これにより「馬車を模した車」に変化します。

 ウテナがもたらした「構造の革命」は、非常にシンプルです。「車」になるということは、中世的かつファンタジックな世界を捨て、現代的かつ科学的な世界へシフトすることです。また、「車」が走ることで、「学園モノ」から脱し、ハイウェイに至りました。「車」が馬車を模しているのは、王子様のいる中世的な世界が現代に変わったことへのメタファーです。
 つまり、「中世的かつファンタジックな学園モノ」という「少女革命ウテナ」を作っている世界を、「現代的かつ科学的な現実の世界」へと「構造の革命」を起こしたのです。「少女革命ウテナ」という「アニメの世界」を「車」という存在のみで革命してみせたのが、この終盤の意義です。

 次の革命者はアンシーです。アンシーも少女というキャラクターを捨てました。「車」の運転というのは、男性的であり大人の象徴です。これがアンシーの「意識の革命」です。
 アンシーの革命は、ウテナの革命を押し進めるものです。アンシーの「意識の革命」により、「車」はF1マシンのような形態に変化しました。前輪にあった馬のモチーフが、後輪になりました。ウテナが作った現代的な世界を未来的な世界へとシフトさせたのです。ウテナを近代的として、アンシーを現代的でも構いません。いずれにせよ、もう一段階前進させる「構造の革命」を起こしたのです。

 ウテナとアンシーは、真の革命者となることで、互いにないものを補完しました。
 革命前のウテナは、男性的な振る舞いという特徴を持っていました。
 革命前のアンシーは、人間ではなく所有物であると自ら認識しています。
 革命により、ウテナは物へと変化し、アンシーは男性的な振る舞いを獲得しました。互いに不足している部分を補完し、真の革命者として同質化されたのだと思います。

 なお、「車」の鍵はバラの刻印でした。トウガは「これが俺をここに導いた」と言っています。バラの刻印は、製作者がキャラクターに送った主要人物の証であり、「絶対運命黙示録」の一部なわけですが、それは「外の世界」と「アニメの世界」をつなぐものでもあるのです。
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終盤③革命の結末:{netabare}
 このウテナとアンシーの革命の結果は描かれていません。その答えは明らかです。「絶対運命黙示録」が革命されたからです。革命がもたらしたのは、「アニメの世界」からの離脱と「現実の世界」への到達です。
 「アニメの世界」を描かないのは、ウテナとアンシーがいなくなるです。
 「現実の世界」を描かないのは、私たちの世界(実写の世界)だから描く必要がないのです。

 荒野を走るウテナとアンシーのセリフを引用します。
  ウテナ「これから僕たちの行くところは、道のない世界なんだ」
  アンシー「私たちはもともと、その外の世界で生まれたんだわ」
 「現実の世界」は、「アニメの世界」のような設定もなく、未来も分からない道なき世界です。でも、彼女たちキャラクターを産むことができたのも、この「現実の世界」だけなのです。
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エンディングのキスシーン①アドゥレセンス黙示録:{netabare}
 エンディングは、ウテナとアンシーのキスシーンです。これは「アドゥレセンス黙示録」に関する事柄です。

 「アドゥレセンス黙示録」、カタカナだと分かりにくいのですが、おそらく「adolescence黙示録」です。テレビ版は分かりませんが、少なくとも映画版では、「思春期の恋愛を示す」ことが重要な要素として加わってきているのが分かります。

 この映画で描かれている恋愛模様は、全て異常なものです。サイオンジとアンシーは、人間と所有物。ウテナとトウガは、生者と死者。アキオとアンシーは、兄と妹、などなど。ここに並列されるのが、ウテナとアンシーの女と女、です。
 最も異常性の低いものは、ジュリとミキの女性が年上、でしょうか。現代の価値観ではあまり異常性は感じませんが、「姉さん女房」という「女房が年下であることを前提とした言葉」があるわけですから、やはり異常なものの枠内に入れるべきなのでしょう。少なくとも、ごく一般的な普通の恋愛は皆無だったと思います。なぜ普通の恋愛が描かれなかったかというと、「アドゥレセンス」を革命するためです。
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エンディングのキスシーン②アドゥレセンス黙示録の意義:{netabare}
 「アドゥレセンス黙示録」の革命が意味するところを理解するために、もう一度、「絶対運命黙示録」の革命をおさらいしてみます。
 ◆今の世界が、「アニメの世界」であることを「自覚」して、
  まとったキャラクターを捨てる「決意」をすることで、
  「アニメの世界」を壊し、「現実の世界」に到達しよう、です。

 これを一般化してみます。
 ◆今の世界が、普通の世界ではないことを「自覚」して、
  固定観念を捨てる「決意」をすることで、
  今の世界を壊し、新たな世界を創造しよう、となります。

 これを「アドゥレセンス黙示録」の革命で言い換えます。
 ◆普通の恋愛に基づく世界が、普通の世界ではないことを「自覚」して、
  普通の恋愛を捨てる「決意」をすることで、
  普通の恋愛に基づく世界を壊し、新たな恋愛に基づく世界を創造しよう、となります。
 普通の恋愛を捨てる「決意」を見せるために、異常な恋愛を描き続けたのです。

 製作者は、「アドゥレセンス黙示録」、つまり、この世界は普通の恋愛により成り立っているんだ、と示した上で、「あなた達が思っている普通の恋愛に基づく世界って、本当に普通なんですか?」という問題提起をしているのです。その「決意」を先に見せることで、アニメのキャラクターではなく、私たちに「無自覚を自覚しろ」と言っているのです。
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エンディングのキスシーン③アドゥレセンス黙示録の結末:{netabare}
 恋愛は精神面の問題ですから、「意識の革命」に属するものです。
 この映画では、革命が起こった先は描かれておりません。なぜなら、「意識の革命」とそれによる「構造の革命」が起こってしまうと、「現実の世界」に至る、つまり私たちの問題になってしまうからです。

 このような異常な恋愛がまかり通る恋愛革命が起き、そのような思春期が一般化されると、「構造の革命」は起こるのでしょうか。おそらく「起こる」というべきでしょう。

 少なくとも現代社会においては、LGBTの認知度が上がるにつれ、性転換や同性婚が許容される世界になり、いくつかの国では法制化も進んでいます。その可否はともかくとして、恋愛革命は確かに社会の構造を革命しているのです。そして、構造の革命が起こると、革命前の異常を正当化させる力を持ち、批判を許しません。

 これは今だからこそ「起こった」と言えるものです。当時の製作者がどこまでこれを予期していたかは分かりませんが、少なくとも預言(予言じゃないよ)ではあったのでしょう。「アドゥレセンス黙示録」の先見性は、非常に高いものでした。
 ウテナとアンシーは、異常性愛であるレズを現実の世界へ持ち込むことで、私たちの世界を革命してみせたのです。「アドゥレセンス」の革命を、「絶対運命」の革命により現実化したのです。
{/netabare}

ウテナ・女性像・男性像について。随分長文になってしまったので、駆け足で。

まずはウテナから:{netabare}
 映画のウテナは、その性別に対するニュートラルさが強調されていました。オープニングのトウガとの再会シーンでは、十字架に絡みついたバラが描かれています。これは「女性の死」を描いたものです。男性側にシフトするかと思いきや、サイオンジとのバトルでは「男だと行った覚えはないぜ!」ですから、男と女の両方を否定しています。
 バトル中では、剣を抜くとともに、髪の毛が伸びます。男性の象徴を手にすると同時に女性化しますから、やはり性別に対して中立さを維持し続けます。
 女性側へのシフトのきっかけは、トウガだと思われますが、確定するのは「車」が壊れたあとの長髪全裸のウテナです。王子様のコスチュームを脱ぎ去り、誰が見ても女性になりました。女性ウテナが女性アンシーとキスをして、「アドゥレセンス黙示録」の革命となりました。
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続いて女性像:{netabare}
 この作品の女性像は二つだけです。お姫様と魔女です。お姫様は男性に守ってもらうもの、魔女は男性をたぶらかすものです。
 もちろんウテナはどちらにも該当しません。そもそも女性を否定していますし、サイオンジとのバトルでは露骨にホウキ(魔女の象徴物)を壊しています。
 ウテナが両方を否定しているせいで、両方を背負ったのがアンシーです。バラの花嫁の正体は、お姫様兼魔女で、全ての女性像を内包したものです。男性は当然求めますし、女性は否定したくともこの魅力に贖えません。その反面、象徴化が過ぎるためモノ化してしまい、所有物になってしまいました。この傾向は、アンシーが「車」に乗るまで続きます。自我を持って物から人間になり、女性を捨て男性化することで、バラの花嫁ではなくなりました。
{/netabare}

最後に男性像:{netabare}
 男性像は王子様だけです。本物の王子様と偽物の王子様。
 本物の王子様は、個人的なものであって、一般的なものではないというのが結論のようです。王子様を自称する人は、演じているだけで、偽物の王子様だとされていました。

 偽物の王子様の最たるものはアキオでした。このサイトのレビューを見る限り、アキオの声優である及川光博さんへの風当たりは相当強いようです。私は加点対象にしたんですが…(涙)。
 上手いか下手かと言われると、下手です。超下手です。どれくらい下手かと言うと、聞いているこっちが恥ずかしくなるくらい下手でした。でも、これが良かったんです。

 ほかの声優さんが「声優」を全うしている中、一人だけ「声優」をやっていないんです。現実の声なんです。異様な現実感を生んでいるんです。ハイウェイのシーンで、この現実感を見せられてしまうと、「外の世界」つまり「現実の世界」が確かにこの先にあるような強い説得感を持っていました。
 アンシー殺害シーンもとても良かったです。このシーンは、一般的な王子様なんていないんだ、そんなことを言っているやつは偽物の王子様なんだ、と暴かれるシーンです。この時のヘタレっぷりというか、偽物っぷりが輝いていました。
 「現実の偽の王子様」である及川光博さんが、「少女革命ウテナ」の世界でも「現実の偽の王子様」を存分に発揮してくれました。文句なしの偽物の王子様でした(←褒めてます)。
{/netabare}

 キャベツ畑とか、蝿の王とか、たくさんの黒い車とか、藁人形とか、まだまだ言いたいことはたくさんあるんですが、そちらは皆さんにお任せします。

対象年齢等:
 女性はまず大丈夫でしょう。芸術性が高いので男性も問題なし。年齢的には少し高めの方がいいですかね。性表現ではなく、象徴物の処理の難易度の高さゆえです。
 象徴物が多いからというか、象徴物と暗喩でしか語らないから難しいという作品です。逆に、打開策が見えると芋づる式、という感じもありますけどね。お腹いっぱい。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ウテナ=見晴らし台ですから、主役はアンシーなのでしょう。

 心に残る作品でした。本作は映像が美麗で幻想的で非常に感覚に訴えてきました。そして短いながら感動的な物語の中に深い意味を落とし込んでいました。劇場版アニメ映画の中では、90年代ではベスト5には間違いなく入ると思います。

 トロフィーワイフの姫宮アンシーと男女の間を揺れ動くウテナの物語です。自分で考えることに価値がある話ですので、まだ見ていない人は、いろいろ知識を入れる前に見る事をお勧めします。


 考察はしますが正解かどうかわかりません。それが、なぜ本作が言いたい事をはっきり言わないのかという答えだと思います。 
 つまり、考えるためです。「少女革命」するのに考えないで答えがそこにあれば革命など起こりようがありません。だから、平易な言葉で説明してはいけないのだと思います。

 で、私見です。結論について考えてみると、{netabare} 最後の廃墟となった学校に、藁人形となったアンシーとウテナがいます。天上ウテナの藁人形は物語の男性用の学生服でも美麗な衣装ではなくセーラー服を着て名札を付けていました。{/netabare}
 つまり、本当のウテナが学校で過ごしていた姿というのは画面通りではないということでしょう。そして、学校の構造やデュエルといったものは、現実ではなくなにかの象徴であるということでしょう。
 薔薇の花が画面に出ているときはどういうことかを考えるとちょっといろいろわかる気がします。
 
 本作は、学校生活=少女時代から大人の世界に旅立ってゆく話なのでしょう。王子様の否定とかセクシャルなシーンもあるので、大きな意味でのジェンダー論と捉えたくなりますが、それは根拠の無い拡大解釈な気がします。話通りに受け取れば、少女が実社会に旅立つときは裸だよ、ということだと思います。
 あるいは永遠に学校生活のようなお姫様ごっこをしている女性に対するアンチテーゼともいえます。

 お城が偽物なのは、外の世界のきらびやかさに憧れて無条件に近づく危険ですし、女性たちが集団で襲ってくるのは嫉妬とか悪い意味の仲間意識ですよね。戦った敵が最後助けてくれたのは、学園生活で切磋琢磨したライバルたちとの友情ですし、そういう人たちは目標を持って外を目指せるということだと思います。

 男性の否定というより女性、特にティーンや社会に出ても学生気分で甘えが残っている女性たちに対するメッセージな気がします。また人と群れるな、人を陥れるな、自分の力でそこから抜け出せ、ということでしょう。

 ウテナというのは、つまりお釈迦様が乗っかっている台が蓮の「うてな」です。また、上が平らな高い建物の意味もあります。
 つまり、ウテナは世界を見渡すための見晴らし台ですから、主役はアンシーなのでしょう。アンシーは美貌で男の間をセックスを使っていったり来たりする少女です。1999年という年ではそれがティーンのリアルだったと思います。それがウテナとの出会いで変わった、つまりウテナのおかげで視座が上がったということでしょう。
 真の友情…と捉えるとちょっと違う…いえ狭い気がします。最後のキスシーンもありますし、男女問わない心のつながり…でしょうか。

 車のシーンは、アンシー側で言えば、アンシーは戦い、自分で判断、決断しています。だからウテナは姿形を消失しているのでしょう。いままでお姫様だったアンシーが自立への準備をしたところです。

 で車そのものの考察ですね。普通は男性の象徴ですから、ここもちょっとややこしいですね。ピンクの車の意味するところは…


 なお、TV版見てないです。そちらで別の答えあるかもしれませんが、映画から読み取れることのみです。

 アドゥレセンスはadolescenceで思春期でした。黙示録は、最後の審判ですね。つまり、青春期の終わりに何が起こるか、と題名で言ってました。



 




 

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

TVアニメ版からたった2年…ですがキャラデザはかなり良くなっていると思います。

この作品は、少女革命ウテナの完全新作の長編アニメーション映画です。
完全新作ではありますが、TVアニメ版を視聴してからの方が物語の世界観を含め入り込み易いと思います。そのため、39話ありますがTVアニメ版を未視聴の方はそちらからの視聴をお勧めします。

・ウテナが転校生
・生徒会長である桐生冬芽とは幼馴染
・姫宮アンシーは眼鏡をかけておらず、髪もストレートのロングヘア
この様にTVアニメ版とは若干設定が異なりますが、登場人物の立ち位置や薔薇の花嫁を廻る決闘は変わらないので、すんなり物語の中に入ることができます。

物語の序盤…TVアニメ版のウテナに慣れ親しんできたせいか、ウテナの姿にはちょっとビックリしました。黒の学生服に赤のスパッツ…ピンクのロングヘアが彼女の特徴でしたが、劇場版では学生服が白と黒…これはまだ許容範囲でしたが、一番ビックリだったのは髪の毛がショートカットになっていたことです。あのピンクのロングヘア…綺麗で魅力的だったのに…と思いましたが、ショートカットのウテナも捨て難いのは事実です。

でもデュエリストの姿に変身すると髪の毛はTVアニメ版の様なロングヘアに戻ります。
変身に伴って髪の毛の長さも変わるのかな…と思って視聴していましたが、レビューを書くためにwikiをチラ見したところ、普段はロングヘアをショートカットに編み込んでいたのだそうです。
プリキュアだって変身したら髪の毛の長さが変わるんです…ウテナが変わっても違和感は無いと個人的には思っていましたが…^^;

一方物語の方ですが「革命が再び訪れる…」という表現がピッタリだと思います。
TVアニメ版でも革命は起きました。それについては理解も納得もしています…
けれど、情報が断片的だった事から消化不良感が否めないのも事実です。

でもこの劇場版では、しっかり尺をとって「革命」について描いています。
そのため、TVアニメ版のラストが分かりづらいと思った方もこの劇場版を視聴する事で腑に落ちる事もあるかと思います。

革命を起こすのは決して簡単な事じゃない…
革命は誰かが起こしてくれるものじゃない…だから雛鳥は卵の殻を割らなくちゃいけない…
革命は起こして終わりではなく、むしろそれが出発点にしかすぎない…
革命には決まった形は無い…だから革命の形は十人十色…
これからの道は決して平坦ではなく、荒れた険しい道が続いている…
一人では乗り越えられない壁が待ち受けているかもしれない…
でも…

ウテナは革命のカードを切ります…
それがどんなカードだったのか、気になる方は是非本編でご確認下さい。
「革命に携わった者の大いなる意思…」が感じられる展開だったと思います。

劇中で使われた挿入歌で印象に残ったのは、やはりTVアニメ版のオープニングでもあった「輪舞-revolution」です。やっぱりこの曲…恰好良いです。

約90分弱の作品ですが中身は濃厚で時間が過ぎるのがあっという間でした。
TVアニメ版を視聴された方は一見の価値のある作品だと思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 11
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