怖いで暴力なおすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの怖いで暴力な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月12日の時点で一番の怖いで暴力なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

76.2 1 怖いで暴力なアニメランキング1位
ハッピーシュガーライフ(TVアニメ動画)

2018年夏アニメ
★★★★☆ 3.6 (534)
1988人が棚に入れました
松坂さとうには、好きな人がいます。その人と触れ合うと、とても甘い気持ちになるのです。きっとこれが「愛」なのね。彼女はそう思いました。この想いを守るためなら、どんなことも許される。騙しても犯しても奪っても殺してもいいと思うの。戦慄の純愛サイコホラー。

声優・キャラクター
花澤香菜、久野美咲、花守ゆみり、花江夏樹、洲崎綾、石川界人、井上喜久子
ネタバレ

東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

にがみのエッセンスが醸し出す「フロイト」的な世界観が気に入った!!

作品概要
▼原作:月刊ガンガンJOKER(スクウェア・エニックス)
▼原作者:鍵空とみやき
▼アニメーション制作:Ezo'la(ディオメディア)
▼話数:全12話{netabare}
▼総監督:草川啓造(ディオメディア)
・実績
(監督)
『魔法少女リリカルなのはA's以後のシリーズ』『迷い猫オーバーラン!』『ロウきゅーぶ!』『艦隊これくしょん』『風夏』『アホガール』他
▼監督:長山延好
・実績
(監督)
僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件
▼シリーズ構成:待田堂子
・実績
(シリーズ構成)
『らき☆すた 』『ティアーズ・トゥ・ティアラ』『おおかみかくし』『THE IDOLM@STER』『Wake Up, Girls!』
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』『はるかなレシーブ』他多数
▼キャラクターデザイン:安田祥子
・実績
(キャラクターデザイン)
『銃皇無尽のファフニール』『sin 七つの大罪』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』
▼音楽関係
音楽:亀山耕一郎
OP曲:「ワンルームシュガーライフ」(ナナヲアカリ)
ED曲:「SWEET HURT」(ReoNa)
挿入歌:「カナリア」(ReoNa)第9話
▼キャスト
【声優】項へ{/netabare}

原作未読
リアルタイム視聴済

☆エピローグ
普通のアニメは見飽きたぜ!糖質サイコホラーはドツボだ。
清々しいほどのバッドエンドや、スクイズやヨスガが大好物な私にとって、やっぱねーっ!これぐらいサイコパスで頭逝ってる作品がないとアニメはつまんねぇw
王道や名作、勧善懲悪ばかりじゃ肩が凝るもんね。
本作は世界線やら異世界やらと物理学分野のSFフアンタジー全盛なトレンドに対し、精神医学を世界観の基軸に据えた稀有な作品だ。
したがって、擬似リアリズムであっても、健常な精神感覚では一切のカタルシスを承認しない作品である。

異常心理に興味があったり、最近では『フリップフラッパーズ』を理解できる方々には面白いかも。
本作はストーリーが安定しているから分かり易い。
『ガリナン』もだが、アホアニメ制作会社の評価が定着して社会的には評価が厳しいディオメディアだが、たまに私のツボに入る作品を出すから、目を離せないw

主要キャラでマトモなのは「しょうこ」だけ。
他のキャラは悪い意味で個性が凄まじく、心の闇という健常と異常の行き交う「境界線」の想像どころではなく、真性の「精神病疾患者」であり、ペドフィリア、エフェボフィリア、パラノイア、火病、発達障害etc全員閉鎖病棟の患者でも不思議ではないような連中が繰り広げる異常人格者による基地外純愛群像劇(草)
共感できるキャラが見事に誰もいない稀有な作品ゆえに、様々な矛盾も精神異常が織りなす現象と見ているので許容の範囲であり、作中何が起こっても感情移入が生じることなく、エンタメとして割り切り楽しむことができた☆

タイトルの「フロイト」は精神医学の始祖。
世界的な心理学者「ユング」や「アドラー」の師匠でもある。
原作者はフロイト入門書の『精神分析入門』や『夢判断』を読んでいるな。
フロイトを読むと、読んだ側も精神をやれかねない危険物。
本作も視聴すると、そうなる方向性で演出されている。
異常心理の描写が精神医学的に考察されて「超自我」のメッセージがしっかりプロットされている。
さすがに1クールで精神医学界の巨匠フロイト的世界観を表現するのは厳しいのだが、そこに挑戦したことは評価されよう。
精神分析学的視点に立った考察はメンドクサイし、レビュー読まれる方々の気分を害するからしない。(いや、でも、気が向いたら追記をするかもw)
キャラ設定のベースがフロイト的価値観だから、基地外とは何かを問うているのと同様で、そりゃ陰鬱な世界観にもなるな。

とにかく可愛いOPや絵柄に騙されてはいけない。
マトモな神経では視聴できない作品だから、そこは覚悟した方がいいデス。はい。

それにしてもジエンコって『serial experiments lain』以来、この手の一風変わった作品のプロデュースが好きなんだな。
提供にバップもあったが、ジエンコ+バップ、あーあれか!w

ところで、最近ディオメディアはいろんな名義を使っているね。
「doA」に続いて今度は「絵空」か。
『BEATLESS』は綱渡りだったし、万策(略)に備えて、リスク分散でもしているのか?

【音楽】
OP曲はとてもインパクトがあり癖になる電波ソングだ。
不詳私、DLをいたしました。
OPの作画と楽曲『ワンルームシュガーライフ』で本作の世界観をしっかり視聴者に伝えた(伝わったかは別にして)好演出だ。
ED曲『SWEET HURT』は『GGO』の神崎エルザの曲を歌ったReoNa。
彼女のなんとも言えない切ない声質が、本作の無情で悲惨な末路を暗揄していてなかなか良い。これもDL。
EDの作画は折しも同じ精神異常系の『フリップフラッパーズ』と同様の演出。
「さとう」と「しお」が抱えている闇と二人の関係性を1分30秒でしっかりと表現している。
{netabare}「さとう」の幼少期から現在の描写、そこに「しお」が現れて、二人で城に向かって歩く。
ハッピーシュガーライフの描写と、スキップしながら城から旅立ち、二人で躓いたところで「さとう」が消える(さとうの死)でも「しお」の心には「さとう」が生きている、とこんな感じでEDはこの物語の顛末を分かり易い暗喩で演出している点は視聴者に優しい。{/netabare}
{netabare}しょうこが殺される{/netabare}9話の挿入歌『カナリア』も歌詞に込められたメッセージがそのシーンの演出にしっかりと映えていて良い曲だ。

{netabare}本作、9話は「しょうこ」の恋もあり内容が濃く相当の字数が必要だが、割愛して、挿入歌まで用意された「しょうこ(小鳥)」は本作にとって、さとちゃんの狂気を強調する意味でも重要なキャラだったし、彼女の存在が無ければ、ただの基地外ドラマで終わったな。
(7話の展開が殺される伏線だが)さとちゃんと向き合うタイミングを逸したとはいえ、幼女を「彼氏」として拉致しているさとちゃんの素顔を知った「しょうこ」がとった選択は極めて常識的だが、基地外相手には通じず、理不尽な結果となったが{/netabare}共感シーンが皆無な本作にとって唯一の救いだった。

【物語とキャラ】
キャラは本作一番の問題提議点だろう。
{netabare}よくもまー、あるゆるタイプの基地外を設定したものだと感心した。
しかし、「さとう」の叔母と「しお」を除き他のキャラのサイコパスの根源は抑圧され無意識下に封印された記憶、いわゆる「トラウマ」だ。
「さとう」、「太陽」、「あさひ」は過去エピソードの描写があるから分かり易いだろう。
今では「トラウマ」という言葉は普通に用いられるが、その概念を提唱したのがフロイトだ。{/netabare}
現在フロイトの【精神分析学】はポパーの科学定義にぶった斬られて【非科学】とされているが、なお、その研究は医学のほか哲学としても各方面に多大な影響を与えている。
因みに「トラウマ」と似た概念で「PTSD」があるが、こちら医学的な診断名、つまり科学。
医学的なフレームで論じるのが「PTSD」であると理解したらいいだろう。
そして、この三者の異常行動は明確に「PTSD」である。
「さとう」叔母は「トラウマ」の過去描写がないので、その異常性の因果関係は判別しないが、他人への関与が異常な博愛が動機である点から、所謂「離人性人格障害」であることは確かだろう。
{netabare}「しお」は年齢的に幼くまで認知能力が完成されてはいなから、母親との関係や「さとう」の死をきっかけとし「PTSD」を発症するのは想定内だろうし、「さとう」の狂気の正統後継者となるだろう。{/netabare}
基地外の成長物語を望むか望まないかは視聴者しだい。私は(怖いもの見たさで)今後も観察してみたいものだが。

以上、キャラの性格設定を多少考察したが、個人的に気になっているのはネーミング。
ここ突っ込んだレビューが少ないだよね。
物語と主人公とヒロイン?他女の子キャラのファーストネームの関係だが、「さとう」と「しお」。
これは、第三者視点で物語を俯瞰したときに醸される、二人のイメージなんだろう。
{netabare}さとちゃんの心が至福に満たせるときは「あまーい」、ストレスを感じたら「にがーい」と味覚で心理描写をしているのも本作の特徴だ。
これは丁度可知差異(物理学用語)が「フェヒナーの法則」による感覚量でも定式化されており、物理でメシを食っている私の心を擽った直喩だ。
「しお」の存在を「さとちゃん」から見た場合は「あまーい砂糖」だが、第三者視点ではさとちゃんに試練を与える文字通りの【塩】な存在。
自らの「あまーい生活」を守るためにさとちゃんは、せっせとバイトで生活費を稼ぎ、脅迫、傷害、詐欺、挙句の果てには殺人までやってのけた。
ある意味、これほどの純愛ドラマはスクイズ以来かもね。
これが、「しお」が【塩】である所以である。

そして「さとちゃん」の光に立候補し、人の道に戻そうとした「しょうこ」は「胡椒」の捩りで、そのお節介は、さとちゃんにとっては「辛い」味覚、はた迷惑で排除すべき存在として描かれているのではないのだろうか。{/netabare}

次に、苗字についてだが、「神戸」と「飛騨(飛騨しょうこ)」に共通するのは高級和牛ブランド。
さとちゃんの苗字「松坂」を「松阪」とすると、やはり高級和牛だが、これは作者の誤字なのかな?
他にサブキャラの宮崎すみれ、但馬みとりも高級和牛ブランド。
本作と高級和牛の相関関係は謎だが、キャラネーミングには法則があるようだね。

で、本作のキャラ設定だが、精神疾患と異常心理の掘り下げに作者の知識の限界からか詰めの甘さが残るが、これだけの基地外キャラをクリエイトし、物語をプロットした点は評価されよう。

{netabare}最終回はオリジナル展開だが、さとちゃんを「あさひ」に殺させ、それでも「しお」に切られ、自殺を図る展開も悪くないと思ったが、さとちゃんを死なせて、「しお」を生き残らせ、「あさひ」を切った展開は前述のとおり、{/netabare}これからの「しお」の異常人格発揮を十分妄想できる余韻を残した意味でも評価できる。

あと「しお」の失踪だが、{netabare}物語の通り捨て子であっても「しお」は小学生だ。
失踪すれば、社会的に何らかにリアクションがあるはずだが「あさひ」が述べたように警察で相手にされないのは不自然すぎる。{/netabare}
欠席が続けば「しお」の担任教師が家庭訪問をするし、親に不審な点があれば、児相とも連絡を取り合い世間にバレるはず。
その過程で事件性があれば警察が動くが、事件性はないとする裏設定でもあるのかな。
「しお」の境遇を考えると、無戸籍である可能性もあるが、視聴者が納得できる線で簡単にでも触れておくべきだったろう。

【作画】
全般的にディオメディアクオリティであり、動かす場面も少ないから、ボロも出ず可もなく不可もなくといったところだが、シャドーの用い方、基地外の表情など、サイコホラーとしての演出は頑張っていたと思う。
ただし、9話は{netabare}本作の神回であるにもかかわらず、作画が演出についていけていない。
挿入歌とナレーションを背景にCVを入れずに「さとう」と「しょうこ」の葛藤シーンが描かれた。
前述したとおり、演出は素晴らしかった反面「しょうこ」の表情が「棒」であり、迫力が全く伝わってこなかった。
基地外表現の作画に手一杯で、健常者の必死の訴えの表情演技まで手が及ばなかったようだ。
CVなしで映像表現のみを用いて視聴者へ訴えるのは、自信と相当の作画センスが要求される。
試しに、スクイズとの見比べで「誠」殺害後の「言葉」と「世界」の葛藤シーンを音声なしで視ると分かるが、迫力が全然違う。
ディオメディアの作画センスの限界が、この素晴らしい演出を削いでしまったと思うと残念でならない。

ただ、小鳥の演出を含めてだが「さとう」が文化包丁を「しょうこ」の首に突き刺し殺す描写は、頸動脈からの血飛沫には違和感を感じつつも、「さとう」を引っ掻き断末魔に喘ぐ描写や小鳥の死を比喩した痙攣描写など殺人過程はしっかり描ききっている。
ただし、グロ描写を強調し過ぎたことで視聴を打ち切った方々を出したという負の作用もあったが、{/netabare}これを斟酌して私的には高い評価をしたいと思う。

【声優】
原作を読んでいる方々には花澤さんはミスキャストだとの意見も多いが、原作を読んでいない私にとって可もなく不可もなしだ。
寧ろ、客寄せパンダ役も兼ねて、演技力が要求される「さとちゃん」役には適任だったのではないだろうか。
個人的には「しお」役の久野美咲さんの演技が輝いていた。
『WIXOSS』や『LOST SONG』でも思ったが、主役よりも準主役や重要キャラをやらせると巧いタイプかもしれない。
さとうの叔母役の井上喜久子さん。
『らんま1/2』から活躍しているだけあって、ベテランらしく味のある演技でサイコパスを演じていたのが印象的だ。
難しいキャラの「三星太陽」を演じた花江夏樹氏も好演だった。

ゆえに総じて高評価とする。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 62

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ヤバい、面白い…。

語彙力ぅ!

そういえば天狼のレビューを書いたときにこいつの存在を忘れていました。

2018年7月期で原作付きの大物。観ますっていうか、観てますってだけで情報量ゼロです、すみません……。

2018.9.29追記:
とりあえず、虐待に傷ついた二人の少女が真実の愛を求めてあがいたあげくに、犯罪レベルの奇行に走るお話。

第12話(最終回)まで観終わったので、少し真面目に書いてみます。

まず、一見して松坂さとうが主人公のようで物語の中心は神戸しおですよね。それと「作中の登場人物が(飛騨しょうこを除いて)異常な人物ばかり」に見えはするんですけど、「罪無き者のみ石を投げよ」っていう感じで、みんなちょっとした行き違いや不幸(ちょっとしてないのもある)がきっかけでたまたま異常に見える行動が発現してしまったというだけの話で、メインキャラには理解不能レベルなことをやっている人物はいなかったです。

自分がはっきり嫌いと言えるのはしおちゃんの父親と、次点でさとちゃんの叔母さんくらいかなあ。

まあとにかく、他の人物に関しては共感まではいかないにしても理解は及ぶ感じでとても良く書けたお話だったと思いました。漫画原作ですけど小説っぽいストーリーでしたね。最終話、しおちゃんの言動によって受けたあさひのショックはいかばかりか想像を絶する…。

……って、これかなり面白かったけどウケないだろうなあ。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 52
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

胸糞キャラのケーキバイキングなのだがペロリと完食

2018.09.30記


原作未読


サイコだねぇ
サイコだねェ

サムネと内容とにものすごい乖離のある作品でした。

主人公は容姿端麗JK松坂さとう。愛を求め男を漁ってた過去を持ち、しおと出会って本物の愛を知る。
サブヒロインに8歳の幼い少女神戸しお。同居するさとうに幼子らしい愛を振りまく。
二人はもともと赤の他人。血縁でもありません。

どうして二人は一緒に暮らしているのか?

最初のハテナが視聴者に提供され、しおを探している家族、さとうを怪しむ高校やバイト先の友人・知人などが絡む仕掛け。
この甘い幸せに満ちた、でもどこか歪で危うい共同生活を守ろうとするのはさとう、といったところから物語は進行していきます。


JKと年端もいかない少女との共同生活と、その設定自体がイカれてる(褒め言葉)し、出てくる面々がモブ以外は頭のネジの何本かどこかへいってしまったような人たちばかりのサイコでスリラーなサスペンスといったところでしょう。
そしてヒロインさとうを演じる花澤香奈さんの怪演が光る一品。
今夏は観る作品ざーさんのヒット率が異様に高かった気がします。そのどれもが主役・準主役級だったりと、ちょっと働き過ぎなんじゃないですかね。本作も、「はたらく細胞」「Phantom in the Twilight」「パンドーラ」「メジャーセカンド」「シュタゲゼロ」のアフレコ後、変なテンションかゾーンに入ったような状態でアフレコしたんじゃないかと。
それぐらい松坂さとうのヤバい感じが出ておりました。この一点でも観る価値はあります。


サイコ、サイコと言ってもとってつけたようなサイコっぷりだとただの感じ悪い作品で終わりますが、本作では普通だった人間が壊れていく経緯だったり、壊れざるを得なかった生い立ちだったりを割ときっちり描いているため、胸糞の中にキャラへの同情にも似た共感を覚えることもあろうかと思います。
ふんわりとしたキャラデザインは、ハッピーでシュガー(甘い)なライフ(生活/人生)を表現するにはちょうど良かったかも。

人間の狂気を描いた作品が好き!という方には薦められる佳作だと思います。


■ネタバレ所感
作品の面白いところを語ろうとするとどうしてもネタバレは避けられないので畳んどきます。
{netabare}飛騨しょうこ殺害あたりを起点に、綻びが出始めていた歯車の狂いが加速していきます。それまで狡猾だったさとうに焦りが見えて行動や言動が純化していきます。それと反比例してほんわか天使しおちゃんがこれまで見せてなかった自我を発動していく。それも悲劇的な顛末が予想されるかたちで、といった終盤の展開は良かったですね。{/netabare}
{netabare}結局残されたしおちゃんがこれまた救われない。理想のバッドエンドでうまい感じに締めました。{/netabare}


それにしても砂糖と塩の示唆することは何だったんでしょうか?
同時利用可能な調味料は共生できるという意味なのか。
白は何にでも染められるという意味なのか。
相反する味覚の刺激は対立という意味なのか。

同質で異質。矛盾したものを内包したのが人生だよん、という至極真っ当で浅い考えしか思い浮かびませんでした。

陳腐だねぇ
陳腐だねェ



-----
2019.03.10追記
《配点を修正》


レビュー初稿書き上げた後のレビュアーさん達とのやり取りで、「登場人物はブランド牛の産地だ」「OPムービーのアレはこうで」…その他考察やこう思うといったネタがけっこう出てきた作品でした。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 50

82.1 2 怖いで暴力なアニメランキング2位
進撃の巨人 The Final Season(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 4.0 (502)
2077人が棚に入れました
「その巨人はいついかなる時代においても、自由を求めて進み続けた。自由のために戦った。名は――進撃の巨人」ついに明かされた壁の外の真実と、巨人の正体。ここに至るまで、人類はあまりにも大きすぎる犠牲を払っていた。それでもなお、彼らは進み続けなければならない。壁の外にある海を、自由の象徴を、まだその目で見ていないのだから。――やがて時は流れ、一度目の「超大型巨人」襲来から6年。調査兵団はウォール・マリア外への壁外調査を敢行する。「壁の向こうには海があって、海の向こうには自由がある。ずっとそう信じてた……」壁の中の人類が、初めて辿り着いた海。果てしなく広がる水平線の先にあるのは自由か、それとも……?エレン・イェーガーの物語は、新たな局面を迎える。

声優・キャラクター
梶裕貴、石川由依、井上麻里奈、下野紘、小林ゆう、三上枝織、谷山紀章、細谷佳正、朴璐美、神谷浩史、子安武人、花江夏樹、佐倉綾音、村瀬歩、川島悠美、松風雅也、沼倉愛美、増田俊樹
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

大義名分で舗装された道

原作は途中から控えたMEN
1クールにしてはボリューミー全16話です。
※以下3期までのネタバレは隠してないのでご注意を。


エレンたちが海に辿りついてから4年。太平の世が終わりエレンのおかんが食われて9年後の世界。

本放送中に原作が完結したりいよいよか!な〝FINAL”と銘打ちながらまだまだ続きがあるようです。
放送時期毎に感想書いてるとネタがつきてくるもんですが、そうはならない数少ない作品。毎度新たな一面を見せてくれ、それでいて一本筋が通ってるのが特長。

「あれ!?なんか観るアニメ間違えたかしら?」
{netabare}「あれ!?どちらのゴールデンカムイでしたっけ?」{/netabare}

そんな冒頭でさえ不安にならないのはひとえに積み上げたものへの信頼です。きっと回収するはず!
そんなひとつ。見上げた空に羽ばたく鳥たちのオープニングカットは1期第1話を彷彿とさせました。

「あーいよいよ完結するんだなぁ」 
「あーこのあと壁の中はえらいことになってたよなぁ」

そんなオープニングカットからの連想。前者は大河ドラマ並に重厚な物語が終焉を迎える高揚感と一抹の寂しさ。一方で後者が示唆するものはやや不穏。1期で壁内人類を襲った悪夢の再来です。
そうしてFinalseasonはお馴染みの面々抜きで海の向こうの国〝マーレ”側の視点から幕が開きます。ひとまず此度の16話をまとめるなら

 〝16話分のキャラ回”

1クール群像劇なら6話~8話あたりで適宜挿入されるアレ。キャラ評価の逆転を狙う目的なら終盤10話あたりまでと何処にでも挿入可能性あるアレ。敵味方問わず登場人物たちを深掘りし物語に深みをもたらすアレをまるまるやっていただいた印象。
思えば主人公エレン(それとアルミン)の原動力は〝駆逐してやる!”と〝璧外への憧憬”の二つ。憧れを象徴する台詞が「海を見たい」だったと思います。海をイタリア語で〝マーレ(Mare)”と言いますが、そんな海を冠した壁内人類との因縁浅からぬ国と対峙するぞ!というところで3期は終幕してました。
おさらい兼ねて駆け足で振り返る59話↓

 第1期(#01-#25) 人類対巨人の絶望的なパワー差でも抗う人類の意志を描き
 第2期(#26-#37) 絶対真理と思っていた『打倒巨人』の前提に揺らぎが生じ
 第3期(#38-#49) 揺らぎや萌芽が形となって壁内の人間同士の争いへと発展
 第3期(#50-#59) 明かされる世界の仕組み。壁内人類の災難はマーレ起因らしいことが判明
 第4期(#60-#75) 今ここ

そのままマーレを敵認定した組み立ても成立したでしょうがそうはしません。キャラ回をあっさり1話ちょっとで終わらせず、新キャラも順次投入し厚みを持たせていました。代表はガビ♀とファルコ♂の四月に嘘ついてそのうち神様になりそうな実力派声優コンビで息もぴったり。

 戦争は対峙する両者がそれぞれの正義を掲げ絶対的な善悪など存在しない

散々言われてきた使い古されたモチーフです。善悪二元論に傾かない最近の例で超絶ヒットした『鬼○の刃』でも鬼側の事情を丁寧に描くことに奏功してました。

そこに良い意味でえげつなく足を踏み込んでるのがこのFinalseasonではなかったでしょうか。単に相手側の事情説明に終わっていないのが良い。
対立してる二つの視点を擬似体験させる手法が徹底しているため、今目の前で繰り広げられてることや向けられるセリフ随所に〝かつての○○と同じ”フラッシュバックする場面わんさか。その意味ではガビ&ファルコはニコイチでかつてのエレンと見立ててました。死にたがり野郎成分多め「駆逐してやる」状態エレンを担当するのがガビ。その対極、勘はいいけど思慮浅めで戦士適正が低い落ちこぼれエレンなファルコ。


明かされていく伏線に唸るのももちろん楽しいですが、〝かつての○○”がいちいち刺さり、その最たる犠牲者!?ともいえるライナーが第1話(#60)声優紹介のトップを飾っていることがなによりのメッセージかと思われるFinal前半でした。
ただの知識でしかなかった善悪の曖昧さを疑似的に体験できる貴重な経験を得られるかと。文科省推薦にして夏休みの課題アニメにしたらいいと思います。
善悪に関する哲学的な思考。歴史観。各々の価値観次第でなにかしら引っかかるものがある傑作なことは言うまでもないでしょう。



※ネタバレ所感

■仕方なかったってやつだ

{netabare}「尊敬してたのに」とエレンを面罵するファルコ。昔同じこと言われたライナーの表情が蒼ざめる。
「友達だと思ってたのに」と姉の仇ガビに憎しみをぶつけるカヤ。そりゃそうなのです。

「人類を救うためです」シャーディス教官に答えた若き日のライナー。そう!人類を救うためなのよ。

パラディ視点で始まったこの物語は100年続いた安寧をマーレ側が破ったことが発端。抗戦の大義名分ありまくりです。
一方世界からみればパラディ(壁内エルディア人)は長年巨人使って残虐行為の限りを尽くしてきたわけで、それが辺境の島に残存戦力抱えて逃げ込んだ挙句〝地ならし”なんて切り札持ってる連中から「平和を望んでいる」と言われたところでそんなん信じられるか、ボケ!ってのは頷ける話です。

作者の性癖かもわからん。悉くブーメランがライナーに刺さるのが痛ましいのであります。
そして信じてたものが切り崩されてく絶望というものをガビとファルコが受け止めてくれました。おかげでガビの心がガビガビに…(自粛){/netabare}


■まあそう思っちゃうよね

ワルシャワのゲットー(跡地)をほっつき歩いた経験から、居住制限区域が対ユダヤ人のそれに見える。
{netabare}その前提に立つと、腕章での住民ラベリングやちょび髭の閣下風なあの人の登場だったりで、国家マーレにおけるマーレ人とエルディア人の関係はゲルマン人(アーリア人)とユダヤ人とのそれですわな。
密告社会だし、少年兵はヒ○ラーユーゲントだし、ヴィリーダイバーの真実の中に適度に嘘を散りばめた演説がゲッペ○スのそれにも見えるわけでして。

ドイツ人これ観てどう思うんだろ?{/netabare}


■そしてこんな風にも見えるよね

『山河燃ゆ』って大河ドラマをアメリカで放送した時、現地の日系人から猛烈に抗議を受けたそうな。どんな内容か?
{netabare}原作は山崎豊子の『二つの祖国』。その名の通り、大東亜戦争時の日系人の葛藤を描いた意欲作。
それで猛抗議する日系人の事情も配慮しないとですよね。アメリカ人として日本のことなど全く考えもしないという姿勢を見せないと移民国家では悲しいかな生きていけないのです。

被差別民族の忠誠心競争も、そんな彼らを地雷原や最前線に送り込むのもよくある話。
冒頭の戦役は203高地攻略っぽいし、エレン派のクーデターは二・二六事件になぞらえることも可能です。エルディア人=ジャパニーズ説。だいたい鎖国してる島国に列強が襲ってくる図式なんてまんまそれに見えなくもない。{/netabare}


ドイツにせよ日本にせよまたそれだけに限らず、歴史の表裏や機微を上手く表現してるからどの歴史にも代入できるんでしょう。外人さん政治/歴史大好きだから海外でウケるのには納得しますわ。

{netabare}始祖の巨人奪還作戦も示唆に富む気がします。始原への執着は宗教戦争に発展するわけで…
ユダヤ・キリスト・イスラムと聖地エルサレムを巡る三すくみの例は言うまでもなく、人類の始原をアーリア人(インドヨーロッパ語族)とすることで優秀なアーリア人とそれ以外はオマケと見做す選民思想に酔ったハーケンクロイツな面々なんかそうでしょう。これは麻薬にも似た誘惑があるのか、隣国からナンデモ起源説が無くなることもありません。

 優れた我々のルーツ

合理性とは異なる尺度で争いは始まります。2000年単位のエルサレム界隈では対処するための知恵を蓄積してますが、うしろ二つは歴史の長い文脈でいえばまだまだ若い。
始祖マンセーな歴史と最終兵器としての〝始祖の巨人”とでは厳密には話は異なりますが、〝ルーツ”を争いの元としてる点が一つのメッセージのように思えるのでした。{/netabare}



■オマケ

1.制作会社変更
私にはあまり違和感なく移行できてるように見えました。
{netabare}ただピークちゃんのデザインがなんとなく伊藤潤二氏の漫画に出てきそうな見た目だったのが残念。{/netabare}

2.道半ば
2021秋からスタートするクールで完結するらしい。。。
{netabare}まだまだどうなるかわからんですね。いったん地ならししないと収まらん気がします。エレンがミカサやアルミンら守るために偽悪を演じてる可能性も捨てきれず。それで次世代への継承みたいな感じでファルコやガビが新たな世界を歩んでいくような。いずれにせよエレンの未来は暗そう。{/netabare}

3.楽園
イタリア語でもう一つ。楽園を〝パラディソ(Paradiso)”言いますもんね。
{netabare}囲われた島パラディが楽園というのも皮肉が効いております。作中でも罪を犯したエルディア人にお注射ちっくんして島に置き去ることを『楽園送り』と称してるあたり、楽園は薔薇色ではないんですよね。{/netabare}


 地獄への道は善意で舗装されている

ポジティブさの裏に潜む地獄。作中用語であれば〝善意”を〝仕方なかった”に置き換えればよい。



視聴時期:2021年1月~4月 地上波リアタイ

-----



2021.05.07 初稿
2022.02.27 修正

投稿 : 2024/11/09
♥ : 41
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

業火に薪をくべる

原作、諫山創。

地下室で見つけたグリシャの手記。
エルディア帝国、パラディ島、マーレ、
九つの巨人、力の継承者たち。
エレンが辿り着いた海の向こう側、
いつ終わるとも知れない戦争が続き、
ここに物語の根幹が開示され始める。

原作者による英断であろうか、
ジーク、ライナー側からの描写を置いた。
大国マーレの現状と野望である。
物語を重厚なものへと発展させるには、
必要不可欠だと判断したのだろう。
いささか体感速度を落とすことになるが、
{netabare}始祖ユミルフリッツを知る事に意味はある。{/netabare}

双方向に、他民族を、
征服し浄化した歴史がある。
人の悪業を以て歴史は、
業火に焼き尽くされようとしている。

我々はどちらにしろ薪をくべる。

最終話視聴追記。
{netabare}マーレ潜入、混迷を極める戦場。
あまりにも大きすぎる幾多の犠牲に、
これが正しい選択なのかと揺らぎ始める。
運命と対峙し乗り越えなければならない。
救済とはいったい何であろうか!?
自身への揺らぎ、信仰、他者への信頼、{/netabare}
ここが描かれた最終章前半の物語でしょう。

いよいよ決断、断罪の時が迫る。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 39
ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ただただすごい!

原作は昔1巻だけ読みましたがほぼ未読です。

3期(~59話)まではWIT STUDIO制作でしたが、今期はMAPPA制作に変わりました。
制作会社が変わると雰囲気などが変わる作品が多いので、大丈夫かなと心配しましたけど皆さんの評判が良いみたいなので、ちょっと期待しながら視聴を始めました。

これはすごい!
様々な謎の提示とそれが徐々に明らかになっていくところももちろん面白いんですが濃密な人間ドラマも丁寧に描かれていて、見終わった直後の感想は「ただただすごい!」でした。

いきなりマーレと連合国との戦争シーンから始まりちょっと面食らいますが、マーレとそこで生きるエルディア人を最初に丁寧に描くことで、それが後ですごく効いてきます。

今までずっと攻められていたパラディ島の人々が{netabare} ついにマーレを攻撃する{/netabare}展開は、3期までしか見ていないのならカタルシスを得られる展開かもしれませんでしたが、前記のとおりマーレでの人々を丁寧に描くことでもっと深みのあるドラマになっていると感じました。

エリンがライナーに語った「お前と同じだよ」という言葉が重いです。

そして67話。悲しすぎる。
サシャも、 {netabare}ライフルを撃った{/netabare}ガビも・・
70話で{netabare}逃げたガビたちを迎えてくれた一家がサシャの実家だったという展開、そしてマーレから来たと知りながらも友達になってくれたサシャの妹のカヤが、サシャを殺したのがガビだと知ったとたん、憎しみの表情を浮かべてガビを殺そうとする {/netabare}展開など、色々と考えてしまう目の離せない展開が続き、そしてやるせない気持ちになりました。

ほかにも、{netabare}ジークの裏切り、そしてエレンの離反と、{/netabare}先の読めない展開が続いてあっという間の75話。
名作だと思います。

続きのFinalパート2が今冬予定ということですが、今からとても楽しみです!

投稿 : 2024/11/09
♥ : 27

62.9 3 怖いで暴力なアニメランキング3位
アシュラ(アニメ映画)

2012年9月29日
★★★★☆ 3.6 (156)
577人が棚に入れました
15世紀中期、相次ぐ洪水、旱魃(かんばつ)、飢饉で荒野と化した京都。
それに追い打ちをかけるように始まった日本史上最大の内戦・応仁の乱。その死者数・行方不明者はあまりに膨大で、歴史のページには刻むこともできなかった。こんな時代に産み落とされたアシュラは、ケダモノとしてサバイバルを続けながら生き抜いていく。
 そんな時一人の少女・若狭の優しさと愛、そして法師の教えに触れ、アシュラは次第に人間性を備えていく。
言葉を覚え、笑い、喜ぶ日々。しかしそれは苦しみと悲しみの始まりでもあった。やがて天災と貧困が起こり、人間性を失っていく人々。ついには若狭さえも……。
果たしてアシュラの運命は?

声優・キャラクター
野沢雅子、北大路欣也、林原めぐみ、玄田哲章、平田広明、島田敏、山像かおり、山口勝平、水島裕

米麹米子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

眼を、そむけるな

以下はwikiの引用になります。

平安時代末期、飢饉によって屍が累々と横たわり、
ある者達は人を殺して人肉を貪り食らっていた。
その一人である妊娠した狂女は、やがて赤ん坊を産み落とす。
狂女は「アシュラ」と名付けたその子を可愛がるが、
やがて空腹に耐えかね焼いて食おうとする。
その時、落雷によってアシュラは川に押し流され、
岸に辿り着くも誰にも育てられないまま獣同然に生き抜く。

----------------------引用ここまで-------------------------

生まれながらにして悲しい宿命を背負ったアシュラの話です。
久々にダークでエグみがあって人間の醜さ、美しさ、優しさ、汚さを
75分という時間に閉じ込めた事
生きる美しささえ感じさせるのは見事なものだと。

映像不可と言われた問題作ですが素晴らしいです。
カニバリズム描写も入ってる為
この手のお話が苦手な方にはおすすめできませんが
出来れば一度見て欲しい。

胸に詰まる思いと言いますか
色んな人の気持ちがわかるぶん哀しみ辛さもひとしお。
10代の頃に見ていたら確実に号泣していたでしょうね。

原作はジョージ秋山先生。銭ゲバってドラマが有名かな。
監督はタイバニのさとうけいいち。
いくつかの受賞も納得の出来。

何故嫌われるかも怒られるかもわからないであろうアシュラ。
心の底のずっと奥にある優しさを見た時
愛おしいと感じました。

あなたはこの状況で「ひとでなし」でなく人間でいられますか?

投稿 : 2024/11/09
♥ : 45

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

ダークな情景とカニバリズムの中に確かに感じる“生きること”へのメッセージ・・・今こそ『まどマギ』以上の絶望へと目を向けよ

原作は1970年の週間少年マガジンにて連載されていたジョージ秋山先生のマンガ
その残酷な描写から有害図書指定され、当時は社会問題にまで発展したそうな曰く付きの問題作


というのも、物語のプロローグとなるのは大飢饉に見舞われた平安時代の京都
腹に子を宿しながらも貧困に喘ぐ妊婦が一人・・・
妊婦の周りでは飢えへの苦しみから、人を殺してその肉を食すことを覚えてしまった狂者が出る程の始末
いつしか妊婦も辺りに平然と転がる死体を喰らうことを意識しはじめる
やがて子は産み落とされ、一時は母性を目覚めさせるものの、飢えはすぐに女の理性を歪ませる
そしてとうとう我が子の肉を食さんと、焚き火の中に赤ん坊を投げつけてしまう・・・


このショッキングな幕開け、そりゃ問題作にもなるわな;


やがて顔の焼け爛れたその赤ん坊は、親の手も無しに育ち、人語も解さず、人を襲ってはその肉を喰らう、、、というまさに【ケダモノ】として生きていた・・・


さてさて、この物語の魅力はいよいよここからなんです
だいぶ原作とは異なる部分も多いようですが、この作品には強く“生きろ”というメッセージが込められているんです


【ケモノのような子】はある日に一人の屈強な法師と出会い命を救われ、『アシュラ』と名付けられます
しかしまだ満足に言葉も話せず、暴力を振るうことでしか感情を表現出来ないアシュラ
怒りに任せた結果、偶然にも地頭の息子を殺してしまうのです
追われる身となったアシュラを匿ったのは、貧しいながらにも慈愛に満ちた『若狭』という少女でした
法師から教わった道徳、若狭と触れて学んだ優しさ、、、やがて人間として感情豊かになっていくアシュラ
しかしそんなアシュラの成長とは裏腹に、天災と貧困が人々を徐々に追い詰めていくのです・・・










一見すると『ノートルダムの鐘』にも似た構図を持つ作品
ですが比較にならないほどあまりに過酷な世界観、過激な描写、そして終盤に押し迫る哀愁
どれをとっても一級品のシリアスドラマ


監督の『さとうけいいち』と言えばテレビシリーズ『タイガー&バニー』の監督でもありましたが、今年度のタイバニ劇場版の制作を、彼はあえて別の監督に託し、今作の制作に打ち込んだようです


昨年度の東日本大震災の影響からか、過激な描写をあえて避ける映画も多々あった傾向の中で、今作はあえてダークな世界観、シリアスなストーリー、過激な描写に挑戦し、最高潮の緊張感の中で改めて【命あっての物種】という言葉を思い出させようという明白な方向性が見て取れます


なにより、カニバリズムという非人道的な行為の裏に「食べなければ生きていけない」という切なくも力強いメッセージを打ち出していることに拍手したいです
特に「食べなければ・・・」のキーワードを全く偶然にも同時期に扱った映画『伏』と比較するとその差は歴然としていて、今作の説得力の強さに感服しますm(__)m
(そしてこの「食べなければ・・・」がラストシーンの悲劇を生む・・・)
また、『まどマギ』においての魔法少女の宿命の一つでもある「戦わなければ生きていけない体」と比較をしても、今作はより身近で深刻な問題として捉えることが出来ます










さとうけいいち監督作品らしく、全編はCGで描かれていますが、日本ならではの2D(作画)アニメの手法を欧米主流のCGアニメへと転用するべく、様々な新手法が今作のために発明されたのも見どころ


日本画のような毛筆タッチの背景画をパーツ化、立体化して動かす(細田守の『おおかみこども』でも近いことをやってました)
キャラの影にハッチング(斜線)を自動生成するソフトの新規開発
いわゆるアニメパース(遠近法のデフォルメ。近くの物を極端に大きく、遠くの物を極端に小さく描いて迫力を出す)をCGで作り出すために、カット毎に異なるキャラモデルを作成


これらに加え、CGアニメならではのカメラワークとエフェクトの自由度が駆使され、度々挿入されるアクションシーンを盛り上げています










そしてオイラが最も注目してほしいポイントなのが声優
今作の主人公、アシュラを演じるのは大ベテラン『野沢雅子』
物語の序盤でアシュラは人語もままならないというだけあって、前半のセリフが全て“雄叫びのみ”なのです
この難しい役どころを演じきれるのはやはり大ベテラン、全く持って御見逸れいたします;


さらに中盤から登場のヒロイン、若狭にはめぐさんこと『林原めぐみ』
実は中盤以降、ほとんどがこのアシュラと若狭の二人だけの会話で進むという昨今珍しい狭いやり取り
まさにこの二人のベテラン役者だからこそ成り立ったであろうレベルの高い演技は、アニメのみならず邦洋実写を問わずしても屈指の【魅せる演技】であったと思います!
とにかく凄いんです、是非ともチェックしていただきたい!


最後になりましたが、音楽はタイバニに引き続き『池頼広』さん
この劇伴がまた最高に素晴らしい!
ですが小南泰葉さんが歌うEDテーマにはちょっと疑問です;
キュートな魅力とダークネスな妖艶さを兼ね備えた小南さんのロックな楽曲は、実は個人的にもファンではあるのですが、今作の重すぎるテーマに対して少し前向き過ぎるし可愛過ぎたかな?と感じました;

投稿 : 2024/11/09
♥ : 30
ネタバレ

ゴリラの唐揚げ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

とめどない苦しみや混乱の中で

15世紀中期、応仁の乱勃発により数え切れないくらいの死者が出た。そんな最悪の時代に産み落とされたアシュラ。

生きるために人を殺し、食べなければ生きていけない、そんな時代。

アシュラも例外ではなく、人を食らいながら生きてきた。

{netabare} そして8歳になったアシュラは、橋の上で法師と出会う。
法師や村に住んでいる少女、若狭と出会い段々言葉や人の心を覚えていきます。

しかし、アシュラは若狭の恋仲である七郎に嫉妬し殺しにかかってしまい、若狭にも見放されます。


そんな時、村は洪水に見舞われて食べるものもなくなり、わずかな食料を巡って村人は争い、殺し合う日々が始まります。

幼くして「こんな苦しいところに生まれてこなければよかった」と叫ぶアシュラの姿は見ていて辛いものがありました。

地頭の息子を殺してしまったアシュラは、「アシュラを殺せば米一年分を取らせる」という報酬に乗ってアシュラを狩ろうとする村人たちに追い詰められます。

アシュラはなんとか生きながらえるのですがこの過酷な時代の情景もさることながら、生きるためなら子供でも躊躇泣く殺しにかかる人々に恐怖を覚えてしまいました。 {/netabare}




この作品には見ていて辛いくらいの人間の苦悩や悲しみといった感情がうまく映像に表現されています。

人々は極限なまでの飢餓や苦しみに見舞われた時、自我を保っていられるのか。


人は命を奪い、生きていかなければならないという悲しき運命を背負っています。
でもだからこそ、命があるがゆえにあがく。


今の食べる物が豊富な時代にこの作品は、飢える人々の苦しみと、人間の業を、これ以上ない描写で表現してくれたと思います。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 27
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