心理描写で生徒会長なおすすめアニメランキング 4

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの心理描写で生徒会長な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月24日の時点で一番の心理描写で生徒会長なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

83.6 1 心理描写で生徒会長なアニメランキング1位
賭ケグルイ(TVアニメ動画)

2017年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (967)
4696人が棚に入れました
舞台は、日本政財界有力者の子女が集う名門・私立百花王学園。この学園でもっとも重要な能力は、勉強や運動ではなく「駆け引き」「読心術」「勝負強さ」――つまりギャンブルの強さが全てを決める。学園はギャンブルによる階級制度(ヒエラルキー)で支配され、その頂点には絶対的権力を誇る「生徒会」が君臨。賭けるモノは「大金」「カラダ」そして「人生」。そして、本作の主人公となる謎多き転校生・蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)の登場により学園の階級制度に異変が起きていく。

声優・キャラクター
早見沙織、田中美海、徳武竜也、若井友希、奈波果林、伊瀬茉莉也、芹澤優、杉田智和、鵜殿麻由、福原綾香、沢城みゆき
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

お淑やかな美少女が実はギャンブル狂

原作未読。最終話まで視聴。

【物語】
イカサマや策略を張り巡らせた相手に対し、主人公が人並外れた洞察力、記憶力、交渉術など駆使して挑む物語。
しかし、最後の勝負所だけは{netabare}運を天に任せていることも多々あり{/netabare}、視聴者をドキドキさせます。

ある意味、主人公最強系と言えるかも知れない・・・。

【作画】
こういう物語の場合、細かな感情の変化を表情で表す必要があると思いますが、とてもうまく表現されていたと思います。
もちろん、”顔芸”も含めて良かった。(笑)

【声優】
主人公を演じた早見沙織さんと生徒会長役を演じた沢城みゆきさんはとても良かったです。
そういう意味で、最終話はとても見ごたえがありました。

【音楽】
OP、EDとも作品のイメージに合っていたと思います。

【キャラ】
「物語の性質上」ってことかも知れないけど・・・。
かなり「イッちゃっている」人が多いです。(笑)

【最後に】
{netabare}イカサマの無いギャンブルってないのかな?
生徒会役員って言っても、イカサマばかり・・・。
威勢の良い、カッコいいことを言っていても、結局イカサマばかり・・・。
イカサマで成り上がった生徒会役員が、偉そうにしている所がとても笑えた。

もしかしたら、大物ぶった小物をあざ笑う作品なのかも知れない。{/netabare}

{netabare}その点、イカサマではなく策略で勝負を挑んだ生徒会長は、もしかしたら本当にすごいのかもしれないと思った。
(本当は、多少イカサマめいたことはあったかも知れないけど・・・?)

まあ、そんな生徒会長相手に、運だけで”引き分け”を引き寄せた夢子(と鈴井)も大概だけど・・・。{/netabare}

第2期制作決定しましたね。
今から楽しみです。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 74
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

アニメオリジナルの最終回でしっかりまとめてくれた快作

2017年夏アニメ。全12話。
原作漫画は2巻途中まで読みました。

声優さんの演技と美麗な作画と、ギャンブルに対する狂った信念が見所。

原作の繊細な雰囲気を再現しようとかなり気を遣っていますね。
ただテレビアニメには安定させ続けるのは限界があって、制作側はそのあたりをきちんと計算して、手のかからないカラーリングをしたりなど工夫していた印象を受けました。アップはしっかりと手をかけてケレン味のある演出をし、ロングはほどほどの書き込みにすることでメリハリのある画面作りをしています。このやり方を徹底していたため、多少の作画の乱れが目立たずに済んでいたように思います。

アニメオリジナルの最終話が本当に面白かったです。原作者原案のオリジナルだそうですが、非常に上手い作りですね。全12話で起承転結をしっかり作っているのもですが、鈴井くんを軸にした所にこの作品の素晴らしさがあると思います。
{netabare}
鈴井という視聴者側に感覚の近いキャラクターを三回にわたり描くことで夢子たちのギャンブルに対する姿勢や信念を理解しやすい作りになっています。
いやー、鈴井くんが締めてくれるとは思わなかったのでちょっと感激したw


第7話「拒絶する女たち」ラストの夢子の「鈴井さんのおかげで楽しいギャンブルができました」のセリフの意味がちょっと掴みきれていなかったんですが、最後でなんとなくわかった気がする。
夢子と妄の間では夢子の望む賭博は成立しない。ディーラーである鈴井が、夢子が命を落とすかもしれないという恐怖を背負いながらも夢子の洞察力に賭けたことが「楽しいギャンブルでした」という意味なのだな、と。時にディーラーは片方のギャンブラーと組んで相手を陥れることもあるのですから、中立と言っても参加者の一人ではあるのですね。夢子と鈴井はお互いの考え方を理解している(理解されている)ことに「賭けた」ことで引き分けに持ち込むことができた。

最終回で鈴井は他人ではなく自分の運に自分の運命(夢子の退学によって自分が受けるデメリット)を賭けます。何者かの思惑の絡んだものをすべて無視して。それが夢子の琴線に触れ、完全に対等の関係になった。
ただギャンブラーとしての能力を考えると、鈴井くんには不幸な未来しか見えないんですが…;


会長は何かを失うことが賭博だと言いました。
芽亜里は確かにいつもリスクとメリットを天秤にかけていますし、どんな時も勝ち筋を見極めている。会長が優秀だというのも納得ですが、彼女は賭けに狂っているわけではない。
夢子は自分の人生まで使って勝ちを狙い、負けることも常に念頭に置いて行動している。相手がイカサマしたとしてもそれも計算に入れたうえで、自分の権利も他人の権利も対等でないと夢子のギャンブルには意味がないのでしょう。妄に怒りをあらわにしたこと、鈴井に好感を抱いていることからそれがわかる。

妄は会長と夢子を同じ支配する者と言うけれど、二人の最大の違いは支配することを当たり前と思うかどうかなのかな?
会長は私にはよくわからない部分があるものの、少なくとも他人の権利を認めない面があるのは芽亜里とのやり取りで描写されています。このあたりをもう少しきちんと見たいですね。
{/netabare}

全体の構成が良くて個人的にはかなり楽しめました。
色々気になる部分が多かったので2期希望というところです。(2017.9.28)

投稿 : 2024/11/23
♥ : 30

不良中年 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

オンタイムで見なかったのが悔やまれる...

放送時は単純にタイトルを見て興味をひかれなかったのでスルーした。
どうせギャンブルネタなんだろうなという事で以前見て損した「ようこそ実力至上主義の教室へ」を思い出したからだ。

しかし、見るアニメが無くなりレンタルショップで苦し紛れに借りてみたら、スッゲー面白かった。

設定としてはハヤミン演じる蛇喰夢子が最強系のギャンブラーで強敵を打ち負かしていくわけなんだけど、夢子が勝つのはお約束であとはどういう風に勝つのかどんないかさまを見抜くのか、どんな感じに狂った顔を見せてくれるのかと言うところが見どころになる。

勝つことがだいたい予想できるのでそこは水戸黄門的な見方が出来る。
普通の作品なら面白くないのだが、この作品はそこがいい。

設定が何もかも逝かれた世界なんだが、不思議とそういうところは気にならない。次が見たくて休む暇もなく一気に全話見ることが出来た。

夢子・芽亜里や会長のキャラデザは美人で丁寧に描かれ自分好み。綺麗な顔が勝負の最中に醜く歪むのもまたいい。

会長の沢城さんはハマり役だし、夢子のハヤミンは珍しいキャラでこれもいい。
2期もすでに出ているので借りに行かなくちゃ。

まだ観ていない人は、先入観を捨てて一度見て欲しい。
絶対楽しめるよ。

最後に、この学校ちゃんと授業してるんだろうか。
そこが心配でした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2

87.0 2 心理描写で生徒会長なアニメランキング2位
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完(TVアニメ動画)

2020年夏アニメ
★★★★☆ 4.0 (745)
3321人が棚に入れました
過去のトラウマと、独自のひねくれた思考回路によって「ぼっち生活」を謳歌しているように見える比企谷八幡は、ひょんなことから生活指導担当教師、平塚 静に連れられ「奉仕部」に入部する。同じ部に所属する息を呑むほどの完璧美少女・雪ノ下雪乃や、クラスの上位カーストに属するギャル・由比ヶ浜結衣とともに、クラスメイトの人間関係の問題の解決から生徒会の手伝いに至るまで、数々の案件をこなす毎日をすごしていた。季節は移ろい、春。雪乃から最後の依頼を受けた八幡と結衣。3月の卒業式を控えた中、いろはからブロムの協力を求められ…。― 本物を求めた八幡は3人の関係を変えていく。果たしてこの先、彼の高校生活はどんな結末を迎えるのか!?

声優・キャラクター
江口拓也、早見沙織、東山奈央、佐倉綾音、悠木碧、小松未可子、近藤隆、檜山修之、柚木涼香、中原麻衣、井上麻里奈、ささきのぞみ、小清水亜美、堀井茶渡
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

正三角形の三角関係

原作未読


うむ終わった。3期相当『俺ガイル・完』は全12話。1期からの続きもんで足掛け計38話で完結です。
ラノベはやたら長いタイトルが跋扈していて『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』例外なく長いやつです。たいていはツカミだけのタイトルで中身は別物ですが、本作は看板に偽りなし。

2期で 「お~青春ラブコメだね~」
3期で 「う~んまちがっているね~」

となることはお約束できますのでうっかり1期2期未視聴の方はぜひ振出しに戻ってここまで楽しみながら歩いてきてくださいね。
ラブコメが大きく動き出した2期最終話を受けての3期はこれまでの群像劇っぽいところからより主人公ら個々人の関係性にフォーカスされます。もう奉仕部+αで三角関係しかやらない勢いですね。
人となりは2期までで明らかになりました。ざっと、理性と感情の化け物が揃っていて理性カテゴリに八幡と雪乃。感情カテゴリに結衣となります。理性の化け物二人の緩衝材としてガハマさんは機能しており、彼女がいなければ早晩奉仕部は崩壊していたことでしょう。では似たもの同士八幡と雪乃の決定的な違いは自意識の有無。面白いのは結衣で1期の頃から成長して自分というのを持てるようになった。自意識それあるーカテゴリでは2期終わる頃には八幡と結衣が入ることになります。
ちなみにこの組み分けは陽乃の「理性の化け物」あらため「自意識の化け物」だね、と八幡を評したことに由来します。

    理性   感情   自意識   {netabare}気持ちを言葉にすること{/netabare}
八幡   ◎    ×     ◎    {netabare}  下手{/netabare}
雪乃   ◎    ×     ×    {netabare}  下手{/netabare}
結衣   ×    ◎    △→○   {netabare}  下手{/netabare}

中庸の△や○が無いといいますか、スキルチャートを作れば歪な五角形ができそうな三人組とみてよさそうです。だからこその面白さが本作の持ち味です。
登場人物もめんどくさいですけど抽象的な会話劇は同じかそれ以上にめんどくさい。自分は物語を紐解くのに登場人物相関図を頭に描きながら楽しむクセがあるんですがこの物語ではこんな感じ。合ってるかどうかはわからんです。違ってたらごめんなさい。

もう一つ。言ってることがわけわかんない時は言ってることよりもやってることを重視してます。言動より行動ってやつ。見当違いも多いですけどね。
{netabare}※漫画喫茶!?では隣同士肩にもたれかかる距離感だったのが、後日公園のブランコでは距離を取って座ってる…みたいなそういうとこ。{/netabare}

さらにもう一つ。概念として面白かった“本物を知りたい”について。
互いを出し切っても崩れることのない関係性みたいなものでした。
自己の欲求を追求すると壊れてしまう関係。これすなわち偽りの関係。
自分を偽って維持できる関係。これもすなわち偽りの関係。
大人であればあるほど、『本物』は遥か遠く手の届かないものであることを痛感させられます。若者も直感的には気づいてる。それでも求めてやまない、やはりこの年代ならではの心情の吐露なんです。

こちらを希求して止まないのが主人公比企谷八幡でした。どうやら折り合いをつけそれっぽいものを手に入れそうなところまで来ています。
同じく希求して止まない(…のだと思う)のがおそらく雪ノ下姉の陽乃。なんとなくこじらせたまんま大学生になっちゃった感ありでこれまで同様にちょっかいを出してきます。


まーあくまで一解釈ではありますが軽くおさらいでもしてから楽しんじゃいましょうという作品。
終わってみて思ったのが八幡、雪乃、結衣の関係って各自二方向に等分のきれいな好意の矢印が出ている正三角形のかたちをした三角関係だというのに気づきました。だいたい矢印は片方だったり短かったりするものを三角関係だと思ってきた人生だったのでこういう関係もあるんだなあと思った次第です。

もしかすると『本物』の関係ってこういうことなのかもしれない。
そんな錯覚を覚える青春ラブコメの秀作です。
別の作品でめんどくさい女性は魅力的だが男性の場合はただただめんどくさいみたいなこと書いて今の今も基本的な考え方は変わりませんが、男女ともにめんどくさくても面白いと思わせてくれた作品でもありました。


なお作中頻繁に出てきた3期のキーワード{netabare}“共依存”{/netabare}は結果的に無視しとります。

{netabare}「うがった見方をすればそう受け取ることもできなくはないくらいの話だ」
「君も雪ノ下も由比ヶ浜もそんな関係性ではないよ。共依存なんて簡単な言葉で括るなよ。君の気持ちは言葉一つで済むようなものか?」

絶好のタイミングでその時に1番欲しい言葉をピンポイントで投下する平塚先生についていけばよし。{/netabare}




※軽めの余談

■平塚センセから浮気しそうになりました

いろはすを凌駕するほどあざとかったのが作り手さんだった気がします。

あざとい?:{netabare}ガハマさんに肩入れしてしまう仕様{/netabare}
CASE1:{netabare}表情の作画カロリー消費っぷりは登場キャラ屈指{/netabare}
CASE2:{netabare}モノローグの度に締めつけられましたよ{/netabare}
CASE3:{netabare}ヒッキーとのデートする時間長かったよね{/netabare}
CASE4:{netabare}CMでまで白無垢着させた上に「わたし今が一番幸せだよ」とか言わせちゃダメ{/netabare}


■めんどくさかったです(褒め言葉)

1.{netabare}1期:「どうせ何を言っても伝わらないし関わらない」と卑屈さが全開
 2期:何を言っても壊れないor何も言わなくても通じ合う関係こそ本物だと信じる
 3期:ごちゃごちゃ言ってないで“伝える”“関わる”努力をする

 こんな若者の成長をこねくり回しながら描いたシリーズといえましょう。{/netabare}

2.{netabare}いろはすの「○○です。ごめんなさい」が段々YES寄りに。周囲の人たちも充分めんどくさい。{/netabare}

3.{netabare}結局「スキ」と言ってたのは我らが平塚静先生だけだったぞ。あーめんどくさ。{/netabare}



視聴時期:2020年7月~9月 

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2020.10.01 初稿
2021.08.01 修正

投稿 : 2024/11/23
♥ : 65
ネタバレ

tag さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

比企谷君、本物は見つかったかな?+裏バージョンレビュー

1期、2期のレビューを更新するうち、3期には裏バージョン(ネタバレ本音バージョン)のレビューが必要と思い。加筆、評価替えしました。
見ていない方は絶対開かないでください。

ここから裏バージョンレビュー
{netabare}
3期通しで見ると、雪乃と八幡の間の関係は、そのセリフ通りに受け取れず、見た目と実態がかけ離れているのではないかと思える部分が多々あります。
見た目は最後にやっと恋人同士ということですが、これも、実質的には婿養子決定と取れなくもないです。以下の1-3期通して二人の関係変化ポイントと“本当の”状態を考察したものです。

1期1話の奉仕部での初対面会話が弾む(見た目は弾んでいないが)時点:
⇒友達承認(セリフは速攻却下だが)
1期、普通は男子と一緒に絶対行かない雪乃が自ら誘って八幡とモールに買い物に行くシーン
⇒友達以上の存在であることを承認(ただ買い物しただけににしか見えないが、一緒に買ったエプロンはずっと使い続ける)
1期12話で再び奉仕部で友達承認を求める八幡を拒否るがウインクで返す雪乃時点:
⇒好意(好き)の表現(再び友達承認さえ拒否ったように見えるが、雪乃のウインクは相当な勇気が必要)
2期設定ディズニーランドのスプラッシュマウンテンの降下ポイントで袖を指で摘まんだ時点:
⇒雪乃からの恋人認定(単に恐怖から摘まんだようにしか見えないが、その写真は枕元にずっとしまっている)
3期10話でプロム後片付けから帰る八幡の袖を“握って”離さなく、ウルウルした瞳で見つめる時点:
⇒雪乃からのプロポーズ(言葉では別のことを言わんとしているように見えますが、行動は真逆の意思を示している)しかし八幡は優しく立ち去る
3期11話で八幡の5分間告白を受諾時点:
⇒八幡からのプロポーズ受諾(これは言葉と行動にしているので明白)
3期12話のほぼ無双している雪乃
⇒婚約・結婚式(八幡の婿養子入り)と新婚状態(雪乃を束縛する問題は全て解け、素の彼女が出ている、言葉と行動の乖離は消失)

これらは、ハッピーエンドに向かう、ポジティブ面を中心にシナリオを追ったものです。この見た目と本音の乖離が物語を面白くしているのですが、同時に難しくしている面もあります。その難しさの源泉がこの乖離でもあり、ネガティブ面のシナリオです。それを解く鍵が雪乃と陽乃の心理状況にあります。

・雪乃はなぜ、こんなに分かりづらい(面倒くさい)のか?
多分、これが、この物語の最大プロットであり、面白さの源泉です。その割には暗く、苦しいプロットではあります。
家族との関係性に問題があることは陽乃や平塚先生の会話などに1-2期にも表れますが、雪乃の口(特に海浜公園からの帰り道)から語られるのは3期になってです。また、陽乃の口からも語られます(海浜公園の夜、八幡を待ち伏せて)。ここから雪ノ下家の家庭環境、そこから来る、雪乃の心の問題が見えてきます。

・家業は姉が継ぐとなっており、自分はほったらかしで、重要視されていない、期待されていない(と思っている)
・期待されていない人生を過ごしていたので、強い承認欲求があり、期待される姉を後ろ姿を追っていた。
・自分は父の職業に興味を持っている。でも、家族に言ったことはないか、言っても取り合ってもらえなかった(しかし、これも承認欲求から来るもので、ほんとに姉、父と同じ方向に行きたいか微妙)
・結局、子供のころからの、ある意味“ネグレクト”で、普通持っているべき最低限の、「家族からの承認、信頼と安心」をもらっていない。心のよりどころがないため、自我が、とても弱く、攻撃されないための鎧をかぶっている。
・姉のコピーを目指すことでしか「自我の鎧=アイデンティ」を保てなかった。それでも満たされることはなく、常に自分(自ら納得したアイデンティティ)を探している。承認不足から自信がなく、これまで作りえなかった。
・これが、対人恐怖や、恐怖から逃れる(自分を守る)ために心とは裏腹の言葉(論理的、攻撃的ストレートトーク)でしか話せなくなった。
・軽度の解離性同一性障害ともいえる。「言葉として出る対人恐怖からの防御をつかさどる」人格1と心の中の本音としての「強く承認、信頼、安心を求める」人格2が同時に存在している。
・本来は一つになって(最終話の雪乃)、感情と言葉が一致し、強固な承認、信頼、安心に基づいてアイデンティティ作りを始める必要がある。最終話の段階でのアイデンティティはまだ形成されていないが、二人で作ってゆく準備はできている。
・そのため、雪乃の反応が劇中で非常に分かりづらい。言葉と心情が別なので、見たまま、聞いたままで理解すると、本音を見誤ることになる。
・一方、正直でストレートな対人関係(=本物)を探し続ける八幡にとってはとてもフィットし、最初の会話で好きになっていた。しかし、だんだんと、雪乃の心の喪失を知り、恋ゆえに、それを埋めて、助けたいと思うようになった。
・初めての相手からの好意を受け取った雪乃は、人格1だけで普段は過ごすのですが、八幡との間では人格2が出て来るようになります。「それが楽しかった。生まれて初めてだった」と3期で述べます。一方、乖離現象が明確になり、これがこの物語の理解を難しくします。3期の乖離は激しく、かつ分かりづらい。
・この乖離現象が端的にでるのは3期最初のプロムの終了後、帰ろうとする八幡を雪乃が追い、袖を掴んで止めるシーンに現れます。言葉では、「だから。。(わたしたちの関係を絶って、結衣の願いをかなえて、自分は大丈夫だかから)」と言うのですが、心の反映である手は、八幡の袖を掴んで放しません。八幡に腕を触られてはっと気づくのですが、それでも放しません。八幡はこの段階ではまだ、自分を何をすれば、雪乃を救えるのか分からないのでそっと指をほぐし、振りほどきます。八幡にゆっくりほどかれた腕を抱えて呆然と立ち尽くす雪乃。もう少しで人格2だけで言葉が出そうでしたが、それでも無理でした。八幡は問題の根深さを強く再認識し、最終章へと向かいます。
・結局、人格が統合されることは八幡の告白までないのですが、人格2を八幡には出せるが故に、返って言葉と心の乖離が頻発するシーンがこの物語には多い。それが2期で関係がどん底まで下がった時に雪乃の言葉「(自分を)分かってくれていると思っていた」に集約されます。人格2が出ているのに、信頼する八幡には理解されていない、やはり自分の心の喪失は埋めてもらえない。しかし、この後も八幡に期待し続けます。このような関係修復と関係破綻を繰り返しが物語を作り出します。
・八幡にとって、雪乃との単なる関係のみが本物ではなく、雪乃の心の喪失を埋め、助け、助けられる関係になることまでが、彼の求める本物であることに、周囲の助けもあり徐々に気づき、ラストの告白へとつながるということを、観衆に伝えたかったのではないかと思います。
・本来、家族が普通に埋めているはずの心の基盤となる承認、信頼、安心を彼が埋めなきゃいけないので、彼は「全部やる」と告白する必要があった。つまり、雪乃の家族になる覚悟を見せる必要があった。
・そして合同プロム終了後の「好き」発言は、八幡の長い長い告白により、雪乃の基本的承認、信頼、安心が満たされ、人格が統合され本当の雪乃になれたことを意味します。

陽乃“も”、なぜ、こんなにめんどくさいのか? ~平塚先生の最終講義、八幡の告白内容の理由へ続く~
・既に分かるかと思いますが、アイデンティティを強固に持っているように見える陽乃もそれは母親から強制されたモノで、自分のモノではありません。そのようにした母親を憎んでいます。
・「いろんな事を諦め、大人になる」と自分に言い聞かせ、雪乃ほど解離性同一性障害にはなっていないように見えますが、症状は同じです。
・葉山との会話で葉山が「そんなに(母親)を憎んでいるの?」と問い「いえ、大好きよ」と言い返します。言葉と心が乖離していることを陽乃は認識しているのでしょうが、一致させられません。
・1-2期では、雪乃に自己・自我の形成の問題を指摘し続ける嫌な存在です。3期では共依存に基づく八幡との関係を絶ち、自己・自我を作りなさいと脅迫します。これらは全て母親との関係における陽乃自身へのメッセージです。八幡を母親と言い換えればよいだけです。妹は自分と同じになってほしくないと思いながら、結局、自分と同じなるよう強要し続けます。ですが彼女も解離性同一性障害です、言葉と本音は違うはずです。
・そんな陽乃を平塚先生は高校時代から知っていて、お互い強い信頼があるようです。海浜公園の夜、タバコを吸う誰かと深酒していますが、これは平塚先生だと推測されます。平塚先生は雪乃と同様に陽乃も救いたいと思っています。劇中でほぼ描かれませんが。平塚先生と飲んだその夜、八幡との会話ではお姉さんとして、「雪乃の考えを尊重してほしい」と言います。同時に「八幡のようなお兄ちゃんが欲しかった」ととも言います。「君は私と同じで酔えない」とも言います。平塚先生との深酒により、いつになく本音をしゃべっています。
・この三つの陽乃の言葉は、「雪乃の心の喪失を埋めようとしているのを理解してほしい。」「自分も同様に喪失している」「君なら私同様、この状況を理解できるよね」と読み替えることができます。
・この後、陽乃はいつもの調子に戻り、「共依存から逃避を辞めるため八幡との関係を絶つべき」と言う論調に戻ります。しかし、最初のプロムの終了後の八幡との会話では、「本物の関係になるため、共依存を乗り越えろ、それが人を傷つけることでも」と言うトーンに変わります。そして最後の言葉は「本物なんて、ほんとにあるのかな?(私も本物が欲しかったな)」です。やっと陽乃の言葉と心情は一致し八幡にメッセージを伝えます。辛うじて、陽乃の本音は「自分みたいな共依存の中でいろんなものを諦め、偽物になっちゃいけないよ」だと取れます。
・この直後、平塚先生による八幡を告白へと誘う最終講義がバッティングセンターであります。八幡は共依存を乗り越える言葉(「全部やる」ことで雪乃の基本的承認、信頼、安心を作る=家族になる)を紡ぐことになります。長い長い告白ですが、言葉のほとんどは、雪乃の心の喪失を埋めるため、自分の全てをささげると、何度も何度も繰り返します。ひたすら“渡す”ことだけです。普通に考えれば、恋愛や家族関係は渡し/渡される関係にも関わらず。それは満たされてからでよいと八幡は思っています。雪乃は普通の「好き」と言う言葉を求めているように見えますが、八幡はしません。何が必要なのか、100%分かっていたのだと思いますし、それには覚悟を見せる必要(何度も繰り返し、雪乃に自分の本心であると安心させる)があることも理解していました。
・劇中では、分かりにくいですが、陽乃と平塚先生の連携プレイです。二人はこの事を事前に話していたのだと思います。

言葉と心の乖離がこの物語のメインプロットであり、それが故に、観衆は、なんで、そう言っていたじゃん?と混乱する。なんとなく、だんだんに素直になってきたねと喜び、最後の八幡の告白と雪乃の幸せそうな笑顔で救わるのですが、背景を深堀すると、中々に重たいものがあることが分かり、物語の理解を深め、また別の面白みを感じることができます。
{/netabare}
”裏”終わり、表バージョンレビュー開始

随分と、時間差で見てしまいました。1期、2期が中々に心に残り、3期は少し嫌な予感というか、2期の感想でも書いたのだけど、完結編は、ただのラブコメかもと思ったと言うのもあります。

結論から言うと、3期はただのラブコメではなく、”表題通り”のエンドロールのような、でもこの物語の主題に忠実なラブストーリーでしたね。悪い意味ではなく。

「本物が欲しい」と告白した主人公。1期、2期にわたる逆説的主人公の動機と行動という伏線があるからこそ、観衆の心に響きます。別に高校生だからでもなく、どの年齢でも、その”本物とは?”と言う問いは人生において、様々な場面で引きずり続けるから。

この完結編では、一気に登場人物たちの恋愛関係に焦点が移ります。ただ二人、この”本物”というものに強く引っかかる、主人公とヒロインたちの中の一人を除いて。

既にオジサン真っ只中の私も、少しの家族のことを考えました。物語中「共依存」というキーワードが出てきます。この共依存、Wikiによると。「アルコール依存症患者とその面倒を見る近親者との、相手がいなければ生きてゆけない、自分が必要とされている事の証、アルコール中毒という病でさえ、その状況を作り出してくれた必要なこと」と言った良くない事として説明されます。例えがアルコール依存症を題材にしているのでこうなるのですが、そうでは無いポジティブな事柄だったらどうでしょう?「共依存」と「恋愛、家族、夫婦、深い友人の間の関係」との違いは実は曖昧です。実際、Wikiでも精神的な病とは述べておらず、そう言う言葉・状況があると、それだけです。自分と家族の関係も「共依存」と呼べばそうだが、そんなに悪いものかねと、自問自答した次第です。(まあ、このワードも逆説的な引っ掛けではあるんですが)

主人公とヒロインの一人は「本物」と言うことを劇中、最も純粋に捉えようとします。なので、「共依存」という言葉にも強く反応してしまう。本物であるためには共依存から脱しなければならないと。

主人公が頬を自分で引っ叩くシーンがあります。そこで彼は、自分の本物の感情を吐露します。この感情は共依存といった”ラベル”を付けて納得する事じゃないと。(このきっかけを作ったのが、劇中、他のキャラから投げかけられた共依存という言葉なのですが。逆説的だな、これがまた。)

「言葉では伝わらない、言葉にしても伝わらない」と言う言葉が劇中頻出するのですが、一方、言葉は人の意識を支配する道具でもあります。「共依存」と言う”ラベル”を貼れば、そして最もらしい傍証が揃っていれば、本当はそうでなくても「共依存」であると信じてしまいます。知識と知恵があるからこその誤解です。今回は、こうした誤解を逆に活用、「ラベルを剥がす」という行為により主人公を一皮むけさせます。彼らしくない、言葉を尽くして、自分の感情を語らせる原動力とします。

さあ、ラベルをはがした主人公は、ヒロインの一人に向き合います。

実は、その前の回のシーンに、ヒロインは、主人公に図らずも接触してしまいます。その時、言葉ではこれまで通り、「関係を終わりにしよう」と言おうとするのですが、(実際は具体的なことは言ってなくて、「だから・・・」と止めている。両義的に取れるのですが。これまた面倒くさいですが脚本と演出の妙技でもあります。)実際のところ、彼女は、行動と表情で「本心=本物」を表してしまうシーン(作画、妙に気合入ってました。まさに両義的な顔をしてました。)があり、主人公は、多分、表情や行動で本心を分かっていて、それでも、その時は優しく拒絶します(この演出も中々!)。これまた、純粋に本物を追求し、ロジカルモンスターならではの反応(共依存を断ち切ることが、彼女のためである。自分は実のところ納得していなくても)で、非常に興味深いシーンです。

さて、ラベルを剥がした主人公のターンです。今度は、主人公がそのヒロインがやったシーンを上書き(これまた憎い演出です)します。しかし、今度はちゃんと言葉にして。でも「共依存」というラベルワードではなく、彼らしい、不器用で、何故かロジカルな言葉を尽くして(都合5分に及ぶ告白シーン)。ヒロインはちゃんと、ラベルワード(共依存ではないですよ。お互い共依存と言う呪縛を解いたからこそ効果を発揮する別のラベルワードです)を言ってと頼むのですが、本質追求&ロジカルモンスターの彼は言いません、いや、言えませんでした。彼には、このラベルワードを使うことに強い抵抗があります。自分の想いはラベルワードでは語れないと。まあ、ここはヒロインが折れるのですが、ヒロインはヒロインで負けず劣らずのパワフルな言葉で返します。

表題通りのエンドロールと申しましたが、物語はその主題に忠実です。主人公の彼らしい、とても誠意を尽くした告白でした。いやはや、自分(私のことです)の時はここまで言葉を尽くしたかな?主人公に負けず劣らずめんどくさい性格と自負していたのですが、反省しきりでした。でも、この物語らしい、「本物の告白」でした。

{netabare}
まあ、告白は、ほとんどプロポーズみたいでしたが、本物追求主義者の彼からすれば、そうなるのは避けられないかなと。そしてそれに返したヒロインもプロポーズ受諾でした。まあ、本物の告白って、やっぱりこれですかね。

追伸:
比企谷君、雪ノ下さんは、ちゃんと「好き」とラベルワードを言ったのだがら、やっぱ、君も、ラベルワードが嫌いでも、ちゃんと言わんとね!
{/netabare}

世の中がコロナですさんだ感じになっている今、ハッピーエンドの物語は良いもんです。

最終話のヒロインのその一人の”破壊力”が凄まじく、もう既にOver50ですが、かなり心と自らの切ない記憶を揺さぶられました(笑い)。思わず、再視聴。少し加筆し、評点を上げた次第です。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 27
ネタバレ

lumy さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

めんどくさい。でも、そこがいい。

原作未読、1期&2期視聴済みです。
アニメは、7年の時間をかけて完結しました。
しかし本作は、本当に理解するのが難しい。
ぼんやり見ていると何となく良い作品で
終わってしますのですが、
ぜひ知恵熱が出るまでかみ砕いてほしい。
そのためには、1期から3期までの一気見が
おすすめですよ。


【賛否両論】
俺ガイルに対する皆さんのレビューは、
サイコー派とワカラン派で分かれているようです。
特に3期は、少なくとも1期・2期の視聴は当たり前で、
原作を読んでいることが強く推奨されているように
思います。

ワカラン派の主張はごもっともで、
とにかく視聴者に解釈を強要する内容となっていて、
特にセリフ中の主語・目的語の省略がハンパないです。
たださえ、ほとんどの登場人物が普通の考え方をする
JKではないのに、セリフ省略に加えて行間読みの
スキルまで求められると、おそらくただの暗い作品で
終わってしまうと思います。


【おすすめ解釈法】
というわけで、私も当初はワカラン派だったのですが、
たまたま以下の考察サイトを見つけて考え方が変わりました。

サイト名:やはり俺の俺ガイル考察はまちがっている
U R L:https://mythoughtsonimguileiswrong.web.app/

まず先に言っておきますが、この考察サイトを見終わるまでに
5時間以上かかりますw
しかし、このサイトの素晴らしいところは、
原作の該当箇所を引用しながら、
先ほど言ったセリフ中の主語と目的語を明らかにし、
語られない行間を提示してくれるという仕様になっており、
原作未読でもアニメだけで俺ガイルのことを理解できるように
なります。


【私の考える俺ガイルのサイコーなところ】
上記の考察サイトを見ていただくと分かるのですが、
俺ガイルの登場人物は、1巻から14巻まで、
一貫した意思をもったキャラクターであることがよく分かります。

俺ガイルは、名前がいかにもラノベちっくであったり、
画像検索するとイロモノ画像がいろいろと出てきたりして、
誤解されやすい作品かもしれませんが、
これほどキャラクターメイクが初期の段階から完結しており、
最後までキャラクターがぶれない作品は
他に類を見ないと思います。

そんな彼ら(彼女たち)が紡ぐストーリーは、
やっぱり回りくどくて、めんどくさくて、少し辛い部分も
ありますが、彼らならそのように行動することが、
ちゃんと納得できる形で提示されているように私は感じました。


【最終話で渡航さんが伝えたかったこと】
実質的な最終話は11話ですが、
その後の12話の評価が特に割れているようです。

特にBパートにおける物語の締めくくり方は、
なんというか、やっぱりモヤモヤするんですよね。
いや、すごい良い終わり方なんですよ。
たとえば、{netabare}1期の1話の伏線を回収していたり、{/netabare}
また、{netabare}小町が加入した新奉仕部が誕生したり、 {/netabare}
俺ガイルの世界は、「完」が終わっても続いていくという
ことがきちんと分かるんですね。


【でも、俺はそれを納得していないんだわ】
そう、俺ガイルの設定はすごいので、
どうしてもまだ裏設定があるのではと勘ぐってしまうんです。

たとえば、{netabare}なぜ雪乃が家業の承継を唐突に依頼したかとか{/netabare}
どうして、{netabare}比企谷母だけ登場していないのかとか(ちなみに、もし登場するならCVは田中敦子さんだと勝手に思っているw)。{/netabare}

そして、日本の青春群像作品であれば、
やっぱり卒業はきちんと描くべきだと思う。
じゃないと、私が俺ガイルから卒業できませんw

ということで、ヒッキーの本物探しの旅を
もう少し紡いでもらえませんか、渡先生!!


【追記】
今さらですが、OPを担当したやなぎなぎさんの歌詞も
良くできています。
というか、これこそ俺ガイルダイジェストじゃね、という感じ。

ちなみに、それぞれ以下のとおり。
1期OP「ユキトキ」 :{netabare}雪乃 {/netabare}目線
2期OP「春擬き」  :{netabare}ヒッキー{/netabare}目線
3期OP「芽ぐみの雨」:{netabare}結衣{/netabare}目線

というか、けっこう歌詞でネタバレしてるよねw

投稿 : 2024/11/23
♥ : 42

82.0 3 心理描写で生徒会長なアニメランキング3位
やがて君になる(TVアニメ動画)

2018年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (678)
2493人が棚に入れました
人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える小糸侑は、中学卒業の時に仲の良い男子に告白された返事をできずにいた。そんな折に出会った生徒会役員の七海燈子は、誰に告白されても相手のことを好きになれないという。燈子に共感を覚えた侑は自分の悩みを打ち明けるが、逆に燈子から思わぬ言葉を告げられる──。「私、君のこと好きになりそう」

声優・キャラクター
高田憂希、寿美菜子、茅野愛衣、市川太一、野上翔、寺崎裕香、小原好美、中原麻衣、森なな子、小松未可子
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

どうも開発された感がある

2019.01.04記


原作未読


これまで百合百合どうのこうのは未経験だったのと、花田十輝氏脚本で寿美菜子さんが先輩役をされているとの情報に誘われ視聴決定。
気づけば毎週の放送が楽しみな作品の一つとなってました。{netabare}3話でスイッチが入り、6話で沼に嵌りこんだ自分です。{/netabare}

“好き”を知らず、“好き”を知りたいと思いながらも誰にも“特別”な感情を抱けない高校一年生小糸侑。
一学年上で“特別”を求められ指向するも誰も“好き”になったことがない七海燈子。
この二人の「好き」「特別」をめぐるひとつの愛のかたちを丹念な心情描写で魅せる良作です。燈子の同級生で同じ生徒会仲間の佐伯沙弥香を含めるとトリプルヒロイン?になるかと思います。

抒情的な文学をよんでいるような作品でした。そして観てて疲れます。表情や会話の間、手足の動きにジェスチャー、光の使い方や背景、OPやED、直喩に暗喩いろいろ駆使した演出で、画面からひと時も目が離せません。
演出の一つで感心するのがサブタイトルの一枚絵カットでしょうか。毎回CM前後や大事なとこで印象的なセリフと一緒にサブタイトルが映されますが、ストーリーを追っていくと膝を打つものばかりです。
{netabare}例)6話サブタイ「言葉で閉じ込めて」
⇒橋のシーンで、侑の好きになりたいという気持ちを「好きにならないよ」という自分の言葉で蓋をする。帰り道に、侑が橙子を好きにならないように、橙子が「好きだよ。君はそのままでいて」の言葉で閉じ込める。{/netabare}

話の重ね方も惹きつけるものがありました。一つは物語が“上乗せ”されていくこと。“上書き(更新)”ではありません。
{netabare}・例えば燈子について、5話で忠犬ばりのデレ具合を見せてから6話での拒絶。5話の経緯から油断してた侑(視聴者もですね)に不意打ちを食らわせる。ただそれも3話で兆候は示されてる話であり幾重にも織り重なる構成です。{/netabare}
{netabare}・例えば沙弥香について、6話「私が無邪気に信じていると思った?」と侑にマウントを取りにきてからの7話沙弥香回でのネタ明かし。沙弥香に対して“怖さ”を感じさせて、次の回で“共感”させると揺さぶりをかけてきます。{/netabare}
そのキャラの持つ引き出しが増えていくイメージと言ったらいいでしょうか。

もう一つはむやみにイベントを作らないこと。
{netabare}・槙くんが口を割ったり二人に過度に干渉して一波乱起こすこともできたでしょうに。
・沙弥香が推薦人から漏れたことで彼女が立候補するまたは立候補言い出すなどかまってエピソードを挟むこともできたでしょうに。
・水族館デートを誰かに目撃されて一悶着とかとか、ありがちなイベントを挿入して物語の波を作ることを避けてます。{/netabare}
その分、尺を心情の極々微妙な変化や行ったり来たりの揺り戻しの描写に多くを割いてました。これで冗長さとか中弛みにならないところは素晴らしいです。

話の重ね方2点を含む演出といった技術的な特長をもって、それだけでも観る価値はありそうです。全13話は原作の4巻分に相当するとのこと。巻数だけから判断するとしてもあまり端折る必要のない話数であり、丁寧に掬いあげたんだろうことがわかります。



恋愛物語としては三人の心情を慮ると、

 『ひたすら切ない』

です。侑、燈子、沙弥香が報われることのない袋小路に迷い込んで抜け出せない。これは心が千々に乱れますよ。

{netabare}燈子が“特別”を演じる自分と弱い自分両方を肯定される「好き」があることに気づけば呪いは解けそうなのだが。{/netabare}

燈子を中心に侑と沙弥香が取り巻く構図です。自己肯定感がない燈子は二面性の人。特別であろうとする燈子を支える存在が沙弥香、素の弱い(なにもない)燈子を支える存在が侑。

●沙弥香
{netabare}燈子が誰のものにもならないことを理解してて、だからこそ「想いは叶わなくても一番近くにいられる」ことを支えにしてたのに、そんな燈子が他の誰かを特別に想い始めてることを感じる。
{netabare}お願いだからそのままの君でいて{/netabare}{/netabare}

●侑
{netabare}特別を知りたい。好きを教えてあげられるのは燈子だけなのに、その燈子は侑が好きになることを拒絶する。一方で燈子は侑に好きを全面にだしてくる。
{netabare}お願いだからそのままの君を好きになって{/netabare}{/netabare}

●燈子
{netabare}自己矛盾を抱えていることを理解しつつ、拠りどころの侑が離れていくことを極度に恐れている。{/netabare}
{netabare}いくら頑張っても他人にはなれないのに。合宿で、生徒会OBに今までの自分の理想や努力を否定されてアイデンティティが揺らぐ。
{netabare}お願いだから自分を好きになって(視聴者一同){/netabare}{/netabare}

三人とも本当の気持ちを飲み込む辛さを知っているのです。

ゆっくり時間をかけて進むラブストーリーは、その進行速度とは相反して緊張感を常に孕んでます。
演出が多岐にわたるということは考察しがいのある作品になるかと思いますので、登場人物の心情をいろいろ観察してみるとより面白くなりそうです。


なお、冒頭の百合百合どうのこうの、というのはいまだよく分かりません。女性同士の恋愛ということであればそうなんでしょう。
いたく心を動かされたので、百合適性が“開発された”のかもしれませんが、じゃあ他の!とすぐなるかでいえばそれはないです。


最後に、生徒会の濃ゆい面々の中で堂島くんの存在は貴重でした。彼がいたことでだいぶ和みます。だって、けっこうヒリヒリするやりとりの連続でしたから。



-----
2019.06.16追記
《配点を修正》


どうしても「百合」ってもったいないと思ってしまう私

投稿 : 2024/11/23
♥ : 86

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

今のところとても面白いです。(顔がめっちゃ芝居する!)→第7話補完作品『やがて君になる 佐伯沙弥香について』(電撃文庫)絶賛発売中! BDにはスタッフコメンタリーも!

== [下記は第2話まで視聴時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
現在2話目まで視聴済みです。

原作マンガはかなり有名作品だと思うのですが、未読だったのでアニメ放送開始前からとても気になっていたタイトルです。

大正時代にはやった(生まれてないから本当にはやったのかは知らん(笑))らしい「エス」(女学生同士の恋愛物)とかの継承者的な路線ですかね。40年以上前から少女漫画とかでは連綿と続く系譜の一つですよね。男性向けの深夜アニメのメインストリームからは外れた作品だと思うので爆発的には人気は出ないと思われます。

私としてはけっこう好みかも。キャラクターデザインも、わりと好きな方です。男性も出てくるのは今風なのかな?

気に入ったので推さないとと思って評価は仮に付けましたが、途中で変更すると思いますので悪しからず。
== [ここまで。] ==

2018.10.26追記:
生徒会選挙での演説前の一幕、最高でした。

後輩なのにメンタル強な侑の強キャラ感はめっちゃ好みです。侑のお姉さんもなかなか良いですね。

表情の作画、情報量が多くて凄く良いです。原作も良いのでしょうが、今のところどストライクで好みです!

2018.10.27追記:
第4話目まで視聴完了。煽りキャラの存在で話が動いてきましたね。原作未読だけど、とりあえず見つかった脚本のキャスト表が伏線だというのはわかりました。

2018.11.3追記:
第4話からの勢いで原作既刊分の単行本を全巻読破したところで、第5話を視聴終了。

原作を忠実になぞっているようで第3話の生徒会長選挙の演説が実はアニメで補足されていることがわかったりとか。実は花田先生が目立たず良い仕事をしている…?

第5話については、原作にもあるエピソードですけど怜ちゃん(侑のお姉さん)GJ(笑)!

2018.11.10追記:
第6話を視聴終了。ストーリー展開は原作にほぼ忠実ながらもオリジナルなシーンがけっこう入っていたような。

例の川での飛び石のシーンも含めて、監督・演出・脚本みんな良い仕事してますね!

2018.11.17追記:
第7話まで視聴終了。ここまでただの脇役と目されていた箱崎先生がストーリーに参加してくるエピソードが、ついにアニメでも放送でした!

なお、本エピソードで触れられた佐伯沙弥香と先輩の中学生時代のエピソード詳細を含む『やがて君になる 佐伯沙弥香について』が11/10に電撃文庫より刊行されております。

原作漫画『やがて君になる』のスピンオフ作品という触れ込みで、歪んだ女性キャラを書くことでは定評のある(?)、入間人間(いるまひとま)先生によるノベライズとなっています。

原作未読でもアニメ第7話まで観ていれば特にそれ以降のエピソードに関するネタばれ要素はありませんので、佐伯先輩に興味を持たれた方は是非お読みになることをお薦めします!

2018.12.29追記:
第13話(最終回)まで視聴終了。原作コミックス5巻の4割くらいを消費して、エピローグ的に今後の展開を期待させる映像での締めでした。(← 悪く言えば「おれたた」END(笑))

結局原作の各話サブタイトルはそのまま残されて、特に特定の回が跳ばされることなくアニメ化されるという『3月のライオン』に近い形でのアニメ化となりました。この構成で原作がまだ続いているので最終回をどうまとめるかはかなり大変だったかと思いますが、シリーズ構成・脚本の花田先生、お疲れさまでした。

そんな中、劇中劇の内容を練習という形で少し先取る形で見せて、アクロバティックに話をまとめてしまいました。このアニメの制作スタッフの恐るべき底力!

脚本だけではなく演出もハイレベルな作品でした。

2019.2.4追記:
12/21にBD 1巻、1/30に2巻が発売されました。

BDの初回特典として付くブックレットには対談形式のキャストインタビューが収録されており、他にコンテ各1話分が付きます。そして毎回特典ですがスタッフコメンタリーが付くのですが、これが1、2巻とも素晴らしいです。

1巻:
キャストインタビュー: 高田憂希・寿美菜子
キャストコメンタリー: 高田憂希・寿美菜子
スタッフコメンタリー: 加藤 誠(監督)・仲谷鳰(原作者)
コンテ: 3話

2巻:
キャストインタビュー: 寿美菜子・茅野愛衣
キャストコメンタリー: 高田憂希・寿美菜子・市川太一
スタッフコメンタリー: 加藤 誠(監督)・あおきえい(第6話コンテ)
コンテ: 6話

特に演出関連のスタッフコメンタリーが大好物な私としては、アニメ化のレベルの高さにふさわしいパッケージでBD 1巻、2巻ともに大満足。以降のBD 3巻、4巻も楽しみです!

投稿 : 2024/11/23
♥ : 82

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

気になって参りました

<2018/12/30 追記>
最終回を見終えました。

世の中のレズビアンの皆さんに伺いたい。
実際もこんな感じなんでしょうか?

今まで同性愛の知り合いが居なかった(というか隠してる人が多いのかも)ので、わかんないんですよねー。

という感想を持ってしまうぐらいガチな作品でした。

というのがまず一つ。


そして本題。

「人を好きになるって何?」
「自分って何?」
こう書くとチコちゃんのお題みたいですが 笑

この作品、こうした本来は素朴で、普通なら安易に答えを出してなんとなく自分を納得させてしまうようなそんなテーマにがっぷり四つに取り組んでいる感じです。

観てると、余分な要素を取り除いて、深く深く潜っていくような思索につい耽ってしまう。

一見中途半端なところで終わってるような気もしますが、答えは見えてるような気もします。
でもやっぱり二期が欲しい。

ところで原作者のお名前「鳩(ハト)」だと思ってましたが「鳰(ニオ)」さんなのだそうです。
謹んで訂正させていただきます。

<2018/11/4 初投稿>
観始めなので評価はデフォルトの3です。
原作未読。

今期、続編ものを除くと個人的にクリティカル・ヒットな作品が見当たらず寂しい思いをしてたところ、キャッチしてるレビュアーさんが猛烈に推してたのを見かけて興味が湧きました。

高校の生徒会を舞台としたいわゆる「百合もの」です。
百合ものでちゃんと観たのは「青い花」くらいでいつもなら敬遠するジャンルなのですが。
お話やキャラ造形がしっかりしてて純粋に物語として楽しめそうな雰囲気。

ところで。
予備知識なしでの、漫画や小説の読み始め、原作ありアニメ観始めの頃、たまにですが作者の性別が気になりだすことが私にはあります。
「男かな?女かな?」と。

そういう時ってその作品にハマりかけてることが多いんですよね。

最近だと「あそびあそばせ」「恋は雨上がりのように」とか
ちょっと前のだと「四月は君の嘘」「ノラガミ」「おおきく振りかぶって」「鋼の錬金術師」「荒川アンダー・ザ・ブリッジ」「GOSICK」とかとか

こうしてみるとほとんど女性ですね 笑
(そうなるのも自然なのですがそこら辺の説明は割愛)

そこでこの「やがて君になる」ですが、気になって参りました。
作者の仲谷鳩さんは男性?女性?どっち?

つまり私はハマり始めてるんですね、きっと。

気になってGoogle先生に「仲谷鳩 性別」で訊いたけど分かりませんでした。
(ちなみに3番目くらいに「鳩のオスとメスの見分け方」が出てきましたよ)

女性だろな、とは思ってますがどうなんでしょう?

投稿 : 2024/11/23
♥ : 58

77.2 4 心理描写で生徒会長なアニメランキング4位
ホリミヤ(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.7 (510)
1872人が棚に入れました
堀 京子は、美人で成績も良く学校ではクラスの中心的存在。だけど実は共働きの両親に代わり、寄り道もせず家事や年の離れた弟の面倒に勤しむ家庭的な高校生。ある日、ケガをした弟 創太を見知らぬ男が堀の家に送り届けに来た。「堀さん」そう呼ばれ話してみると、実は彼はクラスメイトで――クラス一のモテ女子とネクラ男子が出逢ったら!?恋愛、友情。青春が詰まった超微炭酸系スクールライフ!

声優・キャラクター
戸松遥、内山昂輝、山下誠一郎、小坂井祐莉絵、岡本信彦、M・A・O、近藤玲奈、山下大輝、福山潤、八代拓、千葉翔也、麻倉もも、小野大輔、茅野愛衣、寺崎裕香、金元寿子

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

Web漫画原作の漫画って『ワンパンマン』かよ!(← 違います)

== [下記は第4話まで視聴終了時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
第4話まで観終わった時点で、このレビューを書いています。

学校では華やかな美人と目されクラスでも男女ともに人気がある堀さん。そして学校では暗い眼鏡男でオタクなんじゃないかと思われている宮村くん。

しかし堀さんは働いている母親の代わりに家事をこなし小さな弟の面倒を見ているし、宮村くんは実はピアスをたくさん開け刺青も入れてしまっている、でも意外と面倒見が良かったり気が回ったりする人なのです。

あるきっかけでお互いの学校では見ない姿を知ってしまった二人のお話…。

同年代の高校生たちだけでなく幼い兄弟を絡めてストーリーを進めていくのもわりと古典的な少女漫画的手法ですし、登場人物が高校生年代のラブコメとしてはある種の王道的な安心感があります。

そういう漫画を読んでいた人にとってはとても気分良く観られるアニメだと思います。

作中では女性の堀さん視点と男性の宮村くん視点の両方の心理描写はあるものの、ED主題歌でフォーカスされてるのも堀さんですし、たぶん「主人公は堀さん」と考えるのが妥当そうです。

余談: ED主題歌で出てくる3DCGの堀さんの部屋とリビングですが、本編中で出てくる部屋のレイアウトがちゃんと再現されています。妙に凝ってるんですけど、堀さんの部屋にあった丸テーブルは3DCGの方には無いのはなぜなんだぜ…?
== [第4話視聴終了時のレビュー、ここまで。] ==

2021.4.9追記:
最終話まで観終わっていましたが、更新が遅れていました。で、結局アニメからハマってしまい原作漫画は既刊分を全部読んでしまいました。

『ホリミヤ』というタイトルで堀さんと宮村くんがフォーカスされていて、もちろんこの二人はストーリーの中心人物ではあるのですが、常にこの二人の話というわけではなくて、周辺人物が中心になっているエピソードもけっこうありました。これはアニメでもいくつか映像化されていますね。

原作の量からすると当然なんですが、アニメで端折られたエピソードはけっこうあります。ですがアニメで堀さんと宮村くんが高校を卒業するところまでキッチリ描き切ったのは、とても良かったと思います。

「原作漫画の原作」ではもちろん二人の高校卒業まで既に描かれていたわけですが、『ホリミヤ』のアニメ化と考えた場合は制作時にそこまで原作が達していたわけではありません。ですが結果として満足感が得られる良い最終回だったと思います。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 38
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

思ったよりはシュワッと来た"超微炭酸系”ハイスクールライフ

webコミック『堀さんと宮村くん』を元に再構成した同名連載漫画(未読)のTVアニメ化作品。

【物語 4.0点】
“超微炭酸系”を自称し、露骨な恋愛ドラマ展開など、強炭酸要素は極力回避。
残された日常に詰まった青春、恋愛、友情に焦点を当てることで、
ジワジワと共感を生んでいくスタイル。

前半、根暗メガネ男子と目された宮村くんの秘めた素直なビジュアル系男子。
才色兼備な人気者で告白成功は絶望的が定評の堀さんの裏の家庭的なドSw
メインカップルを通じた学校内外における、外面と内面の使い分けというキャラ描写確立後、
後半では、周囲のサブキャラにも同様の掘り下げが波及し群像劇化。


主人公周辺には生徒会の姿も見られるが、
教師や、学校行事といった高校イベントは概ね迂回。
だからと言って四季の移り変わりを蔑ろにはしない。

青春における学校の占める割合は大きいが、学校だけが世界の全てじゃない。
でも高校生活が終われば、区切られてしまう物だってある。

付かず離れずの学校との心地良い距離感が生み出した、
終盤の{netabare}堀さん&宮村くんの告白や、卒業風景{/netabare}もまた独特だが納得度高し。


【作画 3.5点】
アニメーション制作・CloverWorks

背景で特徴的なのが心情によりカラーを変える“微炭酸”演出。
その他、豊富なパターンのコミカル背景挿入が、ゆる~いムードをフォロー。

一方で窓ガラスの水滴、吹き込んでくる風を受けるカーテン、差し込む光など、
ふと訪れる核心的な心情描写にも対応できる舞台は整っている。

人物作画も、髪色カラフル、顔芸も多彩で場を和ませるが、
チャームポイントの下まぶたの睫毛に縁取られた瞳はシリアスなタッチで、
過去描写等を通じたキャラ深掘りに重宝する。

小物設定はガラケーなどがwebコミック版公開当時の時代を再現。


【キャラ 4.0点】
中学時代、学校との折り合いを欠いた流れを高校でも引きずる宮村くん。
堀さんとの出会いからの一変が多く描かれるので、
宮村くんが堀さんに振り回される構図が目立つが、
観察すれば、堀さんもちゃんと振り回されており、萌えますw

宮村くんに懐く弟・創太に、唐突に出没する京介など、堀さん家を彩るご家族。
娘に京介と呼び捨てられる威厳なき父のユーモアが
堀さん&宮村くんの微炭酸を面白おかしくかき混ぜるw

仙石会長率いる生徒会の雰囲気も良好。
序盤、{netabare}堀さんに仕事を押し付けた制裁に、意外にケンカが強い(笑)宮村くんに殴られた{/netabare}時は、
こんな会長で大丈夫かwとなりますが、
窓を開けてくれる彼女のレミちゃんや、
窓開け以外の仕事を真面目にやってくれる河野さんのことを
ちゃんと見ている&見守られている良い男です。


【声優 4.5点】
宮村くん役の内山 昂輝さん。堀さん役の戸松 遥さん。
メイン二人他、中堅に差し掛かり、円熟味が出て来た声優陣が軸。
掛け合いとモノローグの使い分けも繊細でグッド♪

宮村くんに{netabare}Sな攻撃を要求する堀さんのある種のSプレイ?ボイスなど、あと{netabare}歯形{/netabare}とかw{/netabare}
とまっちゃんのマニアックな性癖ボイスが堪能できる?のも貴重ですw

そんな中、比較的若手の吉川さん役の小坂井 祐莉絵さん。
自身の矮小さを卑下する演技も含めて、高レベルな先輩たちにも引けを取らず。
今後が楽しみな方です。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は横山 克氏。
平生は、能天気な縦笛がリピートする日常曲など、微炭酸の水面下に潜伏しているが、
ここぞの場面では、ピアノとストリングスを駆使した心情曲で感動をサポート♪

OPは神山 羊さんの「色香水」
80年代テクノポップ要素による懐かしさが心地良く、
少し時代を遡る、本作への導入も快適♪

EDはフレンズの「約束」
“かけがえのない日々”を噛み締める歌詞が、
終盤、季節が冷え込むにつれ効いてくる。

OPアニメは濃緑微炭酸の背景→実写も取り込んで、
EDアニメは3D箱庭見下ろし人形劇風の日常描写で、
最終話のED映像以外は全話皆勤で、掴みと締めをガッチリ固める。


【感想】
超微炭酸?飲み応え無さそう……。
と何となくスルーしていましたが、評判に押されて中盤から後追い。

原作からの構成、ピックアップにより濃度が増したからなのか。
この10年で私も時代もさらに草食化したからなのかw
C1000タケダ位かな?と思いきや、スプライトくらいはシュワッと来たw
視聴前のイメージよりは強炭酸な青春ドラマだと感じました。

終盤の群像化で、炭酸が抜けたと感じる方もいるとは思いますが、
私はむしろ季節感を取り込んだ後半の方が引き込まれました。

特に{netabare}雪が降り始めた冬の初めに
石川くん&吉川 “由紀”の友情以上恋人未満が継続する中、
割って入れないと分っている河野 “桜”の恋慕を重ねた{/netabare}
page10.は一首詠みたくなる位、趣がある良回でした♪

{netabare}白雪は 燃ゆる桜が願えども 時節合わねば 解くことあらじ{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 29

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

一人だけ横向く記念写真だね

変な設定もなく、意味のないネガティブな展開も不快なキャラもなく、いたって普通の充実した青春ラブコメ。
演出など作りが全体的に女性向けアニメだが、ラブコメ嫌いじゃなければ男性でも楽しめると思う。
どのような層に向けての作品かわかりやすいのは良いことだと思う。

シナリオも作画も音楽も声優もキャラクターも優等生で目立った粗もない。
キャラクターもメインの2人を中心としてサブキャラも魅力的で雰囲気がとても良く、充実した学生生活が描かれていてとても楽しそう。
楽しかった学生時代を思い出して、やっぱ学生っていいなあと再認識しました。

シナリオに山とか谷を求める人には退屈極まりないだろうが、安心して楽しめるラブコメとして良質。

シナリオ的にも特別言及すべきことはないが、丁寧に作られているので王道なラブコメを見たい人にはオススメできる。

ただ、キャッチフレーズ?の超微炭酸系っていうのはよくわからん。炭酸入ってるか?コレ?
ただのおいしいオレンジジュースだよ。良くも悪くも。

でも、普通のラブコメ、嫌いじゃないです!
最初から最後まで安定していて面白かった。こういう普通のラブコメいいね。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 37
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